(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108781
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】給水装置および異常検知システムならびに給水装置の異常検知方法
(51)【国際特許分類】
F04B 49/10 20060101AFI20240805BHJP
F04B 49/06 20060101ALI20240805BHJP
F04B 51/00 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
F04B49/10 311
F04B49/06 321A
F04B51/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013344
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小堀 智之
【テーマコード(参考)】
3H145
【Fターム(参考)】
3H145AA06
3H145AA23
3H145AA42
3H145BA41
3H145CA10
3H145CA14
3H145DA03
3H145DA47
3H145EA17
3H145EA38
3H145FA02
3H145FA16
3H145FA23
3H145FA26
(57)【要約】
【課題】フート弁の異常を早期に検知できる給水装置を提供する。
【解決手段】受水槽内で配管に設けられたフート弁と、受水槽からフート弁を介して配管に流入する水を昇圧するポンプと、ポンプを駆動する電動機と、電動機を制御するコントローラと、を備え、ポンプは、電動機に接続されて電動機の駆動により回転するシャフトと、シャフトに固定される羽根車と、を有し、コントローラは、ポンプの自動運転停止期間中におけるシャフトの回転量である第1回転量を検出し、検出した第1回転量に基づいてフート弁の異常を検知する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受水槽内で配管に設けられたフート弁と、
前記受水槽から前記フート弁を介して前記配管に流入する水を昇圧するポンプと、
前記ポンプを駆動する電動機と、
前記電動機を制御するコントローラと、を備え、
前記ポンプは、前記電動機に接続されて前記電動機の駆動により回転するシャフトと、前記シャフトに固定される羽根車と、を有し、
前記コントローラは、前記ポンプの自動運転停止期間中における前記シャフトの回転量である第1回転量を検出し、検出した前記第1回転量に基づいて前記フート弁の異常を検知する、
給水装置。
【請求項2】
請求項1に記載の給水装置において、
前記コントローラは、前記第1回転量として、前記ポンプの自動運転停止時における前記シャフトの位相位置である第1位相と、前記ポンプの自動運転再開時における前記シャフトの位相位置である第2位相との間の変位量を検出する、
給水装置。
【請求項3】
請求項2に記載の給水装置において、
前記コントローラは、前記シャフトの前記変位量が予め設定された設定変位量よりも大きい場合に、前記フート弁に異常が有ると判定する、
給水装置。
【請求項4】
請求項1に記載の給水装置において、
前記コントローラは、前記シャフトの前記第1回転量から、前記ポンプの自動運転停止期間中における前記シャフトの変位速度を検出し、前記シャフトの変位速度が、予め設定された設定速度よりも大きい場合に、前記フート弁に異常が有ると判定する、
給水装置。
【請求項5】
請求項1に記載の給水装置において、
前記コントローラは、前記ポンプの試運転停止期間中における前記シャフトの回転量である初期回転量を記憶しており、前記第1回転量と前記初期回転量とに基づいて、前記フート弁の異常を検知する、
給水装置。
【請求項6】
請求項5に記載の給水装置において、
前記コントローラは、前記第1回転量から前記初期回転量を減算した第2回転量が、予め設定された設定回転量よりも大きい場合に、前記フート弁に異常が有ると判定する、
給水装置。
【請求項7】
請求項1に記載の給水装置において、
前記コントローラは、前記ポンプの自動運転停止期間中における前記シャフトの回転方向を検出し、前記第1回転量と前記シャフトの回転方向とに基づいて前記フート弁の異常を検知する、
給水装置。
【請求項8】
請求項7に記載の給水装置において、
前記コントローラは、前記ポンプの自動運転停止期間中における前記シャフトの回転方向が、前記ポンプの自動運転中における前記シャフトの回転方向とは逆方向であることを条件として、前記フート弁に異常が有ると判定する、
給水装置。
【請求項9】
請求項1に記載の給水装置において、
前記ポンプを複数備え、
前記コントローラは、複数の前記ポンプの運転時間が平準化されるように前記ポンプを駆動させる平準化制御を行い、
前記自動運転停止期間が、前記平準化制御に伴う前記ポンプの運転停止期間である、
給水装置。
【請求項10】
受水槽内で配管に設けられたフート弁と、
前記受水槽から前記フート弁を介して前記配管に流入する水を昇圧するポンプと、
前記ポンプを駆動する電動機と、
前記電動機を制御するコントローラと、を備える給水装置と、
通信網を介して前記給水装置に接続されるサーバ装置と、を備え、
前記ポンプは、前記電動機に接続されて前記電動機の駆動により回転するシャフトと、前記シャフトに固定される羽根車と、を有し、
前記コントローラは、前記ポンプの自動運転停止期間中における前記シャフトの回転量である第1回転量を検出し、検出した前記第1回転量を前記サーバ装置に出力し、
前記サーバ装置が、前記第1回転量に基づいて前記フート弁の異常を判定する、
異常検知システム。
【請求項11】
受水槽内で配管に設けられたフート弁と、
前記受水槽から前記フート弁を介して前記配管に流入する水を昇圧するポンプと、
前記ポンプを駆動する電動機と、を備え、
前記ポンプが、前記電動機に接続されて前記電動機の駆動により回転するシャフトと、前記シャフトに固定される羽根車と、を有する給水装置の異常検知方法であって、
前記ポンプの自動運転停止期間中における前記シャフトの回転量である第1回転量を検出し、検出した前記第1回転量に基づいて前記フート弁の異常を検知する、
給水装置の異常検知方法。
【請求項12】
請求項11に記載の給水装置の異常検知方法において、
前記第1回転量として、前記ポンプの自動運転停止時における前記シャフトの位相位置である第1位相と、前記ポンプの自動運転再開時における前記シャフトの位相位置である第2位相との間の変位量を検出する、
給水装置の異常検知方法。
【請求項13】
請求項12に記載の給水装置の異常検知方法において、
前記シャフトの前記変位量が予め設定された設定変位量よりも大きい場合に、前記フート弁に異常が有ると判定する、
給水装置の異常検知方法。
【請求項14】
請求項11に記載の給水装置の異常検知方法において、
前記ポンプの試運転停止期間中における前記シャフトの回転量である初期回転量を記憶しておき、前記第1回転量から前記初期回転量を減算した第2回転量が、予め設定された設定回転量よりも大きい場合に、前記フート弁に異常が有ると判定する、
給水装置の異常検知方法。
【請求項15】
請求項11に記載の給水装置の異常検知方法において、
前記ポンプの自動運転停止期間中における前記シャフトの回転方向を検出し、前記第1回転量と前記シャフトの回転方向とに基づいて前記フート弁の異常の有無を判定する、
給水装置の異常検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水装置および異常検知システムならびに給水装置の異常検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対象施設へ水を供給する給水装置としては、送水ポンプによって地下等に設置される受水槽から配管内に水を吸い込み、配管を介して対象施設に給水するものが知られている。このような給水装置では、送水ポンプの運転を停止した際に配管内の水が受水槽に戻る、いわゆる落水が発生することがある。配管内で落水が発生すると、送水ポンプが運転を再開しても受水槽内の水を吸い上げることができず、対象施設への送水が不十分となる虞がある。
【0003】
特許文献1には、このような配管内での落水を抑制するために、配管の受水槽側の端部付近にフート弁を設ける構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、配管にフート弁が設けられた場合でも、フート弁に異常が発生してフート弁が閉まり切らなくなると、配管内で落水が発生する虞がある。
【0006】
本発明の目的は、フート弁の異常を早期に検知できる給水装置および異常検知システムならびに給水装置の異常検知方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の代表的な実施の形態は、以下に示す構成を有する。実施の形態の給水装置は、受水槽内で配管に設けられたフート弁と、前記受水槽から前記フート弁を介して前記配管に流入する水を昇圧するポンプと、前記ポンプを駆動する電動機と、前記電動機を制御するコントローラと、を備え、前記ポンプは、前記電動機に接続されて前記電動機の駆動により回転するシャフトと、前記シャフトに固定される羽根車と、を有し、前記コントローラは、前記ポンプの自動運転停止期間中における前記シャフトの回転量である第1回転量を検出し、検出された前記第1回転量に基づいて前記フート弁の異常を検知する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の代表的な実施の形態によれば、フート弁の異常を早期に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態の給水装置の概略構成を示す図である。
【
図2】一実施形態のポンプおよび電動機の概略構成を示す斜視図である。
【
図3】自動運転停止期間中のシャフトの変位量を説明する図である。
【
図4】一実施形態の給水装置におけるフート弁の異常検知方法を示すフローチャートである。
【
図5】一実施形態の給水装置を含む異常検知システムの概略構成を示す図である。
【
図6】一実施形態の給水装置におけるポンプの初期回転量の登録処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】一実施形態の給水装置におけるフート弁の異常検知方法を示すフローチャートである。
【
図8】一実施形態の給水装置におけるフート弁の異常検知方法を示すフローチャートである。
【
図9】一実施形態の給水装置におけるフート弁の異常検知方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
(実施形態1)
<給水装置の全体構成>
図1は、一実施形態の給水装置の全体構成を示す図である。
図2は、ポンプおよび電動機の概略構成を示す図である。
【0011】
一実施形態の給水装置10は、
図1に示すように、例えば、地下に設置された受水槽100から対象施設200へ送水するための装置であり、加圧給水ポンプシステムとも呼ばれる。給水装置10は、受水槽100と対象施設200とを繋ぐ配管20と、この配管20を介して受水槽100内の水を対象施設200へ送水する加圧給水ユニット30と、を有する。
【0012】
配管20は、受水槽100から引き出される複数本の流入管21を備える。一実施形態として、配管20は、第1流入管21Aおよび第2流入管21Bと、これら第1流入管21Aと第2流入管21Bとがそれぞれ接続される共通管22と、を有する。共通管22は、第1流入管21Aと第2流入管21Bとに共通する管路であり、対象施設200まで延設されている。なお第1流入管21Aと第2流入管21Bとを総称して流入管21と呼ぶ。
【0013】
第1流入管21Aの取水側(言い換えれば、一次側)の末端には、第1フート弁40Aが配設されている。また第2流入管21Bの取水側の末端には第2フート弁40Bが配設されている。これら第1フート弁40Aと第2フート弁40Bとを総称してフート弁40と呼ぶ。フート弁40が流入管21の取水側の末端に設けられていることで、流入管21に吸い上げられた水が受水槽100に戻る現象、いわゆる落水、の発生が抑制されている。
【0014】
加圧給水ユニット30は、複数のポンプ50(50A,50B)と、これら複数のポンプ50を駆動するための複数の電動機60(60A,60B)と、電動機60等の各種機器を制御するための制御装置70を含む制御盤80と、受水槽100内の水位を検出する水位センサ90と、を備えている。
【0015】
ポンプ50は、配管20内の水を昇圧して受水槽100側である一次側から対象施設200側である二次側に送出するためのものであり、配管20を構成する各流入管21に設けられている。一実施形態として、第1ポンプ50Aが第1流入管21Aに設けられ、第2ポンプ50Bが第2流入管21Bに設けられている。電動機60は、例えば、三相交流永久磁石同期電動機であり、各ポンプ50に対応して設けられている。すなわち、第1ポンプ50Aには第1電動機60Aが接続され、第2ポンプ50Bには第2電動機60Bが接続されている。なお、第1ポンプ50Aと第2ポンプ50Bとを総称してポンプ50と呼び、第1電動機60Aと第2電動機60Bとを総称して電動機60と呼ぶ。
【0016】
各ポンプ50は、
図2に模式的に示すように、シャフト51と、羽根車52と、を備えている。シャフト51は、ポンプ50の主軸を構成し、且つ電動機60の回転軸を構成する。すなわちポンプ50の主軸であるシャフト51は、電動機60の回転軸と一体的に形成されている。羽根車52は、シャフト51に固定されており、電動機60の駆動により、シャフト51と共に回転する。
【0017】
また第1流入管21Aの第1ポンプ50Aよりも吐出側(言い換えれば、二次側)には、第1逆止弁91Aと、第1仕切弁92Aと、が設けられている。同様に、第2流入管21Bの第2ポンプ50Bよりも吐出側には、第2逆止弁91Bと、第2仕切弁92Bと、が設けられている。なおこれら第1逆止弁91Aおよび第2逆止弁91Bを総称して逆止弁91と呼び、第1仕切弁92Aおよび第2仕切弁92Bを総称して仕切弁92と呼ぶ。
【0018】
また、第1流入管21Aおよび第2流入管21B、つまり複数の流入管21が接続される共通管22には、圧力タンク93が接続されている。圧力タンク93は、共通管22内の圧力を維持して、ポンプ50の作動頻度を抑制するために設けられている。さらに、共通管22の圧力タンク93よりも吐出側には圧力センサ94が設けられている。圧力センサ94は、共通管22内の圧力を計測する。
【0019】
制御盤80には、コントローラである制御装置70と、ポンプ50を作動させる電動機60の回転数を制御するためのインバータ81と、インバータ81を制御するインバータ制御部82とが設けられている。より詳しくは、制御盤80には、第1電動機60Aに対応する第1インバータ81Aおよび第1インバータ制御部82Aと、第2電動機60Bに対応する第2インバータ81Bおよび第2インバータ制御部82Bと、が設けられている。なお第1インバータ81Aと第2インバータ81Bとを総称してインバータ81と呼び、第1インバータ制御部82Aと第2インバータ制御部82Bとを総称してインバータ制御部82と呼ぶ。
【0020】
インバータ81は、入力される直流電圧を交流電圧に変換して電動機60へ出力する。またインバータ81は、例えば、図示しない電流センサを有し、電流センサによる検出結果は、インバータ制御部82へ入力される。インバータ制御部82は、制御装置70からの運転指令および速度指令に基づいて、インバータ81から出力される出力周波数、出力電圧等を適宜制御する。具体的には、インバータ制御部82は、例えば、電流センサの検出結果から電動機60の回転軸を構成するシャフト51の回転位置(言い換えれば、位相位置)を推定し、このシャフト51の位相位置に応じて、インバータ81内の複数のスイッチング素子をスイッチング制御する。
【0021】
<制御装置の構成>
制御盤80に設けられた制御装置70は、電動機60を含む給水装置10の各種機器の制御を行う。制御装置70は、一実施形態として、制御装置70は、液晶ディスプレイ等からなる表示部71、プロセッサを含むMCU(Micro Controller Unit)で構成される処理部72、メモリ73、センサ・インタフェース部74等を備える。メモリ73は、例えば、RAM(Random Access Memory)およびEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)で構成される。EEPROMには、例えば、制御プログラムや各種データが記憶されている。センサ・インタフェース部74は、各種の外部センサが接続できるように構成されている。センサ・インタフェース部74には、外部センサとして、例えば、受水槽100の水位を検出する水位センサ90と、共通管22内の圧力を検出する圧力センサ94とが接続されている。
【0022】
制御装置70は、水位センサ90や圧力センサ94等の外部センサからの情報に基づいて、例えば、ポンプ50に接続される電動機60の動作を制御する。すなわち制御装置70は、外部センサからの情報に基づいて、所定のインバータ制御部82に対して電動機60の運転を指示する運転指令等を送信する。制御装置70からの運転指令等を受信したインバータ制御部82は、この運転指令等に基づきインバータ81を制御し、電動機60を適宜作動させる。
【0023】
また制御盤80には、外部機器との無線通信を行うための無線通信機器83が設けられている。無線通信機器83は、加圧給水ユニット30が備えるアンテナ95に接続されている。加圧給水ユニット30は、これら無線通信機器83およびアンテナ95を介して、後述する管理サーバとの通信が可能に構成されている。
【0024】
<制御装置によるポンプの制御の一例>
次に、制御装置70によるポンプ50の制御の一例について説明する。通常時、給水装置10では、共通管22の圧力が適切な圧力となるように、制御装置70によってポンプ50の自動運転が行われる。具体的には、制御装置70によって、ポンプ50に接続された電動機60の駆動が制御される(自動運転モード)。上述のように自動運転モードでの運転開始時、各ポンプ50が運転停止の状態であるとする。この状態で、圧力センサ94で検出された共通管22内の圧力が予め設定された始動値未満になると、制御装置70は、インバータ制御部82およびインバータ81を介して複数のポンプ50のうちの少なくとも一つについて運転を開始させる。一実施形態として、制御装置70は、第1ポンプ50Aおよび第2ポンプ50Bの少なくとも一方の運転を開始させる。より詳しくは、制御装置70は、第1ポンプ50Aに接続される第1電動機60Aおよび第2ポンプ50Bに接続される第2電動機60Bの少なくとも一方を始動させる。
【0025】
ポンプ50の運転が開始されると、制御装置70は、圧力センサ94からの情報、つまり共通管22内の圧力に応じて、インバータ制御部82を介してインバータ81から電動機60に出力されている交流電力の出力周波数等を適宜制御する。ポンプ50が運転されている間に、例えば、共通管22内の圧力が予め設定された始動値である第1圧力よりも低くなり、対象施設200に供給される水量が過少であることが検出されると、制御装置70は、インバータ制御部82を介してインバータ81から電動機60に出力されている交流電力の出力周波数を上げるように制御する。これにより、圧力タンク93の内部圧力が上昇し、それに伴い共通管22内の圧力(水圧)が上昇する。
【0026】
そして共通管22内の圧力が予め設定された第2圧力(>第1圧力)に達すると、制御装置70はポンプ50の運転を停止させる。すなわち制御装置70は、ポンプ50を作動させている電動機60への電力供給を停止させる。なお圧力タンク93が設けられていることで、ポンプ50を停止しても、その後しばらくの期間は、共通管22の内部圧力が適正な範囲に維持される。
【0027】
ポンプ50が停止されている自動運転停止期間を経て、例えば、共通管22内の圧力が、再び上記第1圧力未満になると、制御装置70は、再びポンプ50の運転を開始させる。共通管22内の圧力が再び第1圧力未満になると、制御装置70は、例えば、第1ポンプ50A又は第2ポンプ50Bの少なくとも一方の運転を開始させる。このように制御装置70は、自動運転モード中、共通管22内の圧力が第1圧力未満になる度にポンプ50の運転を適宜開始させ、共通管22内の圧力が第2圧力に達する度に、作動中のポンプ50の運転を停止させる。これにより、共通管22内の圧力は所定範囲内に維持され、対象施設200には良好に水が供給される。
【0028】
さらに制御装置70は、複数のポンプ50の運転時間が平準化されるように、各ポンプ50を作動させる平準化制御を行っている。一実施形態として、制御装置70は、第1ポンプ50Aおよび第2ポンプ50Bの運転時間が平準化されるように、共通管22内の圧力が第1未満になる度に、第1ポンプ50Aと第2ポンプ50Bとを交互に作動させている。また制御装置70は、共通管22内の圧力にかかわらず、各ポンプ50の駆動時間に応じて、各ポンプ50の運転状態の切換えを行う場合もある。勿論、このような平準化制御は必ずしも行わなくてもよい。
【0029】
<給水装置の異常検知方法>
上述のように給水装置10では、流入管21に設けられたフート弁40によって、配管20内での落水を抑制している。しかしながら、制御装置70による自動運転モード中にポンプ50を停止させた際、故障等によりフート弁40が完全に閉じなくなっていると、逆止弁91よりも一次側の配管20内で落水が発生してしまう。配管20で落水が発生すると、それに伴い、ポンプ50のシャフト51は、電動機60の作動時の回転方向である正方向とは逆方向の回転が生じる。
【0030】
給水装置10では、このようなポンプ50の自動運転停止期間中におけるシャフト51の回転量である第1回転量を検出し、この第1回転量に基づいてフート弁40の異常の検知を行っている。すなわち給水装置10では、検出したポンプ50の回転量に基づいてフート弁40の異常の有無を判定している。一実施形態として、給水装置10は、以下に説明する方法でフート弁40の異常を検知する。なおフート弁40の異常発生(故障)の要因としては、例えば、異物の噛み込み、経年劣化、錆の発生等が挙げられる。
【0031】
上述のようにポンプ50が制御装置70によって自動運転モードで運転されている場合、制御装置70は、ポンプ50の自動運転停止期間中におけるシャフト51の回転量である第1回転量を適宜検出する。なお、ポンプ50の「自動運転停止期間」とは、ポンプ50が制御装置70によって自動運転モードで制御されている状態で、制御装置70が圧力センサ94等の情報に基づいてポンプ50の運転を停止させる期間をいう。
【0032】
制御装置70は、シャフト51の上記第1回転量として、ポンプ50の自動運転停止時におけるシャフト51の位相位置である第1位相と、その後の自動運転再開時におけるシャフト51の位相位置である第2位相との間の変位量、言い換えれば、第1位相と第2位相との角度差(位相差ともいう)を検出する。このシャフト51の第1回転量である変位量について、
図3を参照して説明する。
図3は、自動運転停止期間におけるシャフト51の変位量を説明するための図である。
【0033】
図3に示すように、シャフト51の回転中心Oを原点とするシャフト座標系としてX-Y座標系を定義する。Y軸方向は、回転中心Oからシャフト51の断面に任意に設定された設定点P1に向かう方向とし、X軸方向はY軸方向とは直交する方向とする。また、ポンプ50の自動運転停止時におけるシャフト座標系の状態をXs-Ysで示し、ポンプ50の自動運転再開時(つまり、自動運転停止後、次に再始動した時)のシャフト座標系の状態をXr-Yrで示す。なおシャフト51は、電動機60の駆動により正方向(
図3中反時計回り)に回転するものとする。
【0034】
例えば、自動運転停止中に流入管21で落水が発生したとすると、ポンプ50のシャフト51は電動機60の駆動時の回転方法である正方向とは逆方向(
図3中時計回り)に回転する。このため、流入管21で落水が発生した場合、自動運転停止時と、自動運転再開時とで設定点P1の位置が異なる。言い換えると、シャフト51の回転に伴い、X軸およびY軸が設定点P1の移動に対応した量で回転する。これにより、Xs-YsおよびXr-Yrは、図示するように、異なる位相に対応した向き(位置)となる。すなわちXs軸とXr軸とは、第1位相および第2位相に対応した異なる向きとなる。同様に、Ys軸とYr軸とは、第1位相および第2位相に対応した異なる向きとなる。そこで制御装置70は、上記第1位相と上記第2位相との間のシャフト51の変位量として、例えば、Ys軸とYr軸との角度差Δθを算出する。
【0035】
自動運転停止時に電動機60への電力供給が停止されると、シャフト51の回転速度は、その時点から徐々に低下する。ポンプ50の「運転停止時」とは、電動機60への電力供給が停止されるタイミングではなく、その後、シャフト51の回転速度が略ゼロとなるタイミングである。一方、ポンプ50の「運転再開時」とは、シャフト51が回転し始めるタイミングであり、電動機60への電力供給が再開されるタイミングとほぼ一致する。
【0036】
また電動機60は、同期電動機であるため、電動機60の制御データ(例えば、出力電力)から、自動運転停止時のシャフト51の位相位置である第1位相や、自動運転再開時のシャフト51の位相位置である第2位相を取得あるいは推定できる。したがって、シャフト51の第1位相と第2位相との角度差は、演算によって比較的容易に求めることができる。
【0037】
勿論、シャフト51の第1回転量としての角度差Δθを検出する方法は、特に限定されない。例えば、エンコーダを用いて第1位相および第2位相を計測し、エンコーダによる計測結果から、シャフト51の第1回転量としての角度差Δθを演算により求めてもよい。さらに、この例では、ポンプ50の自動運転停止期間中におけるシャフト51の第1回転量として、シャフト51の上記変位量を検出するようにしたが、第1回転量の検出方法は、特に限定されない。例えば、シャフト51の第1回転量として、ポンプ50の自動運転停止期間中における羽根車52等の回転量等を検出してもよい。例えば、シャフト51の第1回転量として、ポンプ50の自動運転停止時の羽根車52の位相位置と、ポンプ50の自動運転再開時の羽根車52の位相位置との間の変位量を検出してもよい。
【0038】
そして制御装置70は、シャフト51の第1回転量としての角度差Δθに基づいて、フート弁40の異常を検知する。すなわち制御装置70は、シャフト51の角度差Δθの大きさから、フート弁40の異常の有無を判定する。具体的には、制御装置70は、例えば、シャフト51の角度差Δθが予め設定された設定変位量である閾値Δθth1よりも大きい場合に、フート弁40の異常有りと判定する。このような方法でフート弁40の異常を検知することで、フート弁40の異常を早期に検知することができる。フート弁40の異常を早期に検知することができる。したがって、ユーザは、フート弁40の異常に対し、早期の対応が可能となる。その結果、受水槽100から対象施設200への送水不足を回避することが可能となる。
【0039】
なお、この閾値Δθth1は、給水装置10の設置状況等に応じて適宜設定されればよい。また一実施形態として、シャフト51の角度差Δθについて正負は考慮しておらず、角度差Δθの大きさ、つまり自動運転停止期間中におけるシャフト51の第1回転量のみでフート弁40の異常の有無を判定している。
【0040】
以下、第1回転量としてのシャフト51の角度差に基づくフート弁40の異常検知方法の一例について、
図4のフローチャートを参照して説明する。
図4は、シャフトの角度差に基づく異常検知方法を示すフローチャートである。
【0041】
制御装置70によるポンプ50の自動運転が実施されると、それと共に制御装置70によるフート弁40の異常検知が実施される。例えば、ユーザによりポンプ50の運転モードとして自動運転モードが選択されると、
図4に示すように、ステップS1で平準化制御によるポンプ50の自動運転が開始されて、一方のポンプ50、例えば、第1ポンプ50Aが始動される。次いで、例えば、平準化制御によるポンプ50の切換えのタイミングとなると、第1ポンプ50Aの運転が停止され、他方のポンプである第2ポンプ50Bが始動される(ステップS12)。
【0042】
このとき、制御装置70によって、第1ポンプ50Aについて、自動運転停止時におけるシャフト51の位相位置である第1位相が検出される(ステップS13)。そして例えば、所定時間が経過し、ポンプ50を切換える次のタイミングになると、第1ポンプ50Aの運転が再開され、他方のポンプ50である第2ポンプ50Bの運転が停止される(ステップS14)。このとき、第1ポンプ50Aについて、自動運転開始時におけるシャフト51の位相位置である第2位相が検出される。また第2ポンプ50Bについて、自動運転停止時におけるシャフト51の位相位置である第1位相が検出される(ステップS15)。
【0043】
次に、第1ポンプ50Aについて、シャフト51の変位量である角度差Δθを、シャフト51の第1位相および第2位相から算出する(ステップS16)。次いで、第1ポンプ50Aについて、シャフト51の変位量である角度差Δθが、予め設定された閾値Δθth1よりも大きいか否かを判定する(ステップS17)。ここで、シャフト51の角度差Δθが、閾値Δθth1よりも大きい場合(ステップS17:Yes)、制御装置70は、第1ポンプ50Aが設けられた第1流入管21Aの第1フート弁40Aに異常が有ると判定する(ステップS18)。その後、給水装置10は、ユーザに対して、第1フート弁40Aに異常を検知した旨の警報を送信する(ステップS19)。
【0044】
一方、ステップS17で、シャフト51の角度差Δθが、閾値Δθth1以下である場合には(ステップS17:No)、制御装置70は、第1フート弁40Aに異常が無いと判定する(ステップS20)。その後、ステップS12に戻り、給水装置10は、フート弁40の異常検知を継続する。
【0045】
以上のように、シャフト51の第1回転量としての角度差Δθに基づいてフート弁40の異常を検知することで、フート弁40の異常を早期に検知することができる。したがって、ユーザは、フート弁40の異常に対し、早期の対応が可能となる。その結果、受水槽100から対象施設200への送水不足を回避することが可能となる。
【0046】
なお上記の例では、第1ポンプ50Aについてシャフト51の第1回転量としての角度差Δθを算出し、その算出結果に基づいて第1フート弁40Aの異常検知を行うことについて説明した。ただし、平準化制御により、次にポンプ50が切換えられるタイミングでは、他方のポンプである第2ポンプ50Bについてシャフト51の第1回転量としての角度差Δθが算出され、その算出結果に基づいて第2フート弁40Bの異常検知が行われる。つまり、ポンプ50の切換えのタイミング毎に、第1フート弁40Aの異常検知と第2フート弁40Bの異常検知とが交互に実施される。
【0047】
また一実施形態として、配管20が、2本の流入管21(第1流入管21Aおよび第2流入管21B)を備える構成を例示したが、配管20の構成は、これに限定されない。配管20は、3本以上の流入管21を備えていてもよい。この場合には、ポンプ50の切換えのタイミング毎に、複数の流入管21に設けられた各フート弁40の異常検知が順に実施される。またこの例では、平準化制御におけるポンプ50の切換え時にフート弁40の異常検知を行うようにしたが、フート弁40の異常検知を実施するタイミングは、特に限定されず、任意に設定できるF。
【0048】
また、上述したステップS19におけるユーザに対する警告の方法は、特に限定されないが、例えば、以下に説明するように、異常検知システムの管理サーバを経由してユーザに対して警告メールを送信する。
【0049】
<異常検知システム>
図5は、異常検知システムの概略構成を示す図である。
図5に示すように、給水装置10が備える加圧給水ユニット30は、通信網(例えば、公共通信網である広域通信ネットワーク)300を介して、異常検知システム400を構成するサーバ装置である管理サーバ410に接続されている。すなわち加圧給水ユニット30は、管理サーバ410との間で双方向のデータ通信が可能となっており、管理サーバ410と共に異常検知システム400を構成している。
【0050】
管理サーバ410は、例えば、クラウドコンピューティングサービス上に構築された仮想サーバにより構成され、加圧給水ユニット30との間で双方向のデータ通信が可能である。また管理サーバ410は、例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォン等のユーザ端末500とも、通信網300を介して通信可能となっている。なお管理サーバ410は、仮想サーバに限定されず、例えば、プロセッサやメモリ等を備える1台以上のサーバ機器で構成されていてもよい。
【0051】
制御装置70を備える加圧給水ユニット30は、この管理サーバ410に対し、給水装置10の各種情報を必要に応じて送信する。加圧給水ユニット30は、例えば、電動機60の稼働データ(周波数、電流値、シャフトの位置変化等)を管理サーバ410に逐次送信する。加圧給水ユニット30から送信された各種情報は、管理サーバ410に蓄積される。これにより、被監視設備である給水装置10のトレンドデータによる監視が可能となる。また加圧給水ユニット30は、上述のように制御装置70によってフート弁40の異常が検知されると、その検知情報も管理サーバ410に逐次送信する。
【0052】
一実施形態として、管理サーバ410は、受信サーバ411と、システム情報データベース412と、稼働情報データベース(記憶部)413と、演算部414と、メール送信サーバ415と、表示Webサーバ416と、を備えて構成されている。
【0053】
受信サーバ411は、加圧給水ユニット30から送信される各種情報、例えば、上記の稼働データや検知情報等を受信する。システム情報データベース412には、加圧給水ユニット30の登録情報、例えば、加圧給水ユニット30が備えるポンプ50や電動機60の型式、製品番号等が格納されている。稼働情報データベース413には、受信サーバ411が受信した各種情報が、例えば、加圧給水ユニット30の登録情報に紐づけて格納される。演算部414は、稼働情報データベース413に蓄積された情報に基づいて各種の演算処理を行う。例えば、演算部414は、稼働情報データベース413に蓄積された情報に基づいて演算処理を行い、給水装置10のトレンドデータを作成する。
【0054】
メール送信サーバ415は、受信サーバ411によってフート弁40の異常を検知した旨の検知情報が受信されると、ユーザ端末500に対して、フート弁40の異常を警告する警告メールを送信する。
【0055】
また表示Webサーバ416は、通信網300を介して、Webページの形式で給水装置10に関する各種情報をユーザに対して提供する。ユーザは、例えば、ユーザ端末500から管理サーバ410のWebページにアクセスすることで、給水装置10の各種情報を閲覧することができる。勿論、このWebページにおいても、フート弁40の異常を警告する情報を提供するようにしてもよい。
【0056】
これにより、ユーザは、フート弁40の状態を比較的容易に監視することができ、またフート弁40の異常の情報も得られ易くなる。したがって、ユーザは、早期に設備の保守対応が可能となる。またユーザは、給水装置10の各種情報、例えば、シャフト51の変位量である角度差Δθを常時監視することができる。したがって、ユーザは、トレンドデータを参照し、フート弁40の異常の有無をユーザ自身で判定することも可能となる。
【0057】
(実施形態2)
ポンプ50の自動運転停止時には、フート弁40が正常な状態であっても、電動機60の駆動中の回転方向とは逆方向の回転がシャフト51に生じる場合がある。そこで、例えば、ポンプ50の新設時、或いはポンプ50の交換時等には、ポンプ50の試運転を行い、その際、制御装置70が、試運転停止期間中におけるシャフト51の回転量である初期回転量を検出してメモリ73に記憶させるようにした。なおポンプ50の試運転では、ポンプ50の始動・停止が複数回繰り返される。「試運転停止期間」とは、試運転中に、駆動しているポンプ50が停止され、その後、再始動されるまでの期間をいう。
【0058】
そして、この実施形態では、制御装置70が、シャフト51の第1回転量と、この初期回転量とに基づいてフート弁40の異常判定を行う。
【0059】
以下、シャフト51の第1回転量と初期回転量とに基づくフート弁40の異常検知方法の一例について、
図6および
図7のフローチャートを参照して説明する。
図6は、シャフトの初期回転量の記憶処理の一例を示すフローチャートである。
図7は、第1回転量および初期回転量に基づく異常検知方法の一例を示すフローチャートである。なお給水装置10および異常検知システム400の構成自体は、実施形態1と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0060】
例えば、新設時等に行われるポンプ50の試運転において、各ポンプ50のシャフト51について初期回転量の記憶処理が行われる。具体的には、ポンプ50の試運転を開始すると、
図6に示すように、手動運転により所定のポンプ50、例えば、第1ポンプ50Aを始動させる(ステップS31)。すなわち、ユーザが給水装置10を手動で操作することで第1電動機60Aへの電力供給が開始される。次に第1ポンプ50Aを構成するシャフト51の回転が安定した状態で、手動運転により第1ポンプ50Aを停止させる(ステップS32)。その際、制御装置70は、試運転停止時のシャフト51の位相位置である第3位相を検出し、この第3位相をメモリ73に一時的に記憶させる(ステップS33)。
【0061】
そして所定時間経過後、手動運転により第1ポンプ50Aを再始動させる(ステップS34)。その際、制御装置70は、試運転再始動時のシャフト51の位相位置である第4位相を検出し、この第4位相をメモリ73に一次的に記憶させる(ステップS35)。次いで、制御装置70は、メモリ73に記憶した第3位相と第4位相との間でのシャフト51の変位量である角度差Δθ0を算出し、この角度差Δθ0を、試運転停止期間中のシャフト51の初期回転量として設定する(ステップS36)。つまり制御装置70は、角度差Δθ0を第1ポンプ50Aの初期回転量としてメモリ73に記憶させる。その後、第2ポンプ50Bについても、同様の手順で初期回転量の記憶処理が行われる。
【0062】
このようにポンプ50の初期回転量の記憶処理が行われた後、実施形態1と同様に、制御装置70によるポンプ50の自動運転、およびフート弁40の異常検知が実施される。例えば、平準化制御によるポンプ50の自動運転が開始されると、
図7に示すように、一方のポンプ、例えば、第1ポンプ50Aが始動される。次いで、例えば、平準化制御によるポンプ50の切換えタイミングとなると、第1ポンプ50Aの運転が停止され、他方のポンプである第2ポンプ50Bが始動される(ステップS52)。このとき、制御装置70によって、第1ポンプ50Aについて第1位相が検出さる(ステップS53)。そして例えば、所定時間が経過して次のポンプ50の切換えタイミングになると、第1ポンプ50Aの運転が再開され、第2ポンプ50Bの運転が停止される(ステップS54)。このとき、第1ポンプ50Aについて第2位相が検出される。また第2ポンプ50Bについて第1位相が検出される(ステップS55)。次に、第1ポンプ50Aについて、シャフト51の第1回転量である角度差Δθを、シャフト51の第1位相および第2位相から算出する(ステップS56)。なおステップS51~ステップS56は、実施形態1におけるステップS11~ステップS16と同様のステップである。
【0063】
次に、第1ポンプ50Aについて算出したシャフト51の変位量としての角度差Δθから、シャフト51の初期回転量としての角度差Δθ0を減算する(ステップS57)。すなわち第1回転量としての角度差Δθから初期回転量としての角度差Δθ0を減算した第2回転量(Δθ-Δθ0)を求める。
【0064】
次いで、第1ポンプ50Aについて、シャフト51の第2回転量(Δθ-Δθ0)が、予め設定された設定回転量である閾値Δθth2よりも大きいか否かを判定する(ステップS58)。ここで、シャフト51の第2回転量(Δθ-Δθ0)が、閾値Δθth2よりも大きい場合(ステップS58:Yes)、制御装置70は、第1ポンプ50Aが設けられた第1流入管21Aの第1フート弁40Aに異常が有ると判定する(ステップS59)。その後、ユーザに対して、第1フート弁40Aに異常を検知した旨の警報を送信する(ステップS60)。
【0065】
一方、ステップS58で、シャフト51の第2回転量(Δθ-Δθ0)が、閾値Δθth2以下である場合には(ステップS58:No)、制御装置70は、第1フート弁40Aに異常が無いと判定する(ステップS61)。その後、ステップS52に戻り、給水装置10は、フート弁40の異常検知を継続する。
【0066】
以上のような方法でフート弁40の異常を検知することで、フート弁40の異常を早期に検知することができる。したがって、ユーザは、フート弁40の異常に対し、早期の対応が可能となる。その結果、受水槽100から対象施設200への送水不足を回避することが可能となる。
【0067】
また、この実施形態では、シャフト51の第1回転量としての角度差Δθと、シャフト51の初期回転量としての角度差Δθ0とに基づいてフート弁40の異常の有無を判定しているため、フート弁40の異常をより正確に検知することができる。ポンプ50を新設等した場合、初期回転量である角度差Δθ0は極めて小さいと考えられる。しかしながら、設置されるフート弁40の仕様等によっては、ポンプ50の運転停止時にフート弁40が閉じるタイミングが遅れ、新設時であってもシャフト51の初期回転が発生する場合がある。このため、シャフト51の初期回転量としての角度差Δθ0を記憶しておき、シャフト51の角度差Δθと、角度差Δθ0とに基づいてフート弁40の異常検知を行うことで、フート弁40の異常をより正確に検知できる。
【0068】
また、ステップS60におけるユーザに対する警告の方法は、特に限定されないが、例えば、実施形態1と同様に、異常検知システム400の管理サーバ410を経由してユーザ端末500に対して警告メールを送信する。
【0069】
(実施形態3)
上述の実施形態1では、ポンプ50の自動運転停止期間中におけるシャフト51の変位量である角度差Δθを算出し、その算出結果に基づいてフート弁40の異常検知を行う例について説明した。実施形態3では、自動停止期間中におけるシャフト51の変位速度、つまりシャフト51の単位時間あたりの変化量を算出し、この算出結果に基づいてフート弁40の異常検知を行う例について説明する。
【0070】
図8は、変位速度に基づく異常検知方法の一例を示すフローチャートである。なお給水装置10および異常検知システム400の構成自体は、実施形態1と同様であるため、説明は省略する。またステップS11からステップS16までの工程は、実施形態1と同一の工程であるため、説明は省略する。
【0071】
図8に示すように、ステップS11からステップS16で、第1ポンプ50Aについて、シャフト51の変位量である角度差Δθを算出すると、次いで、ステップS71に進み、自動運転停止期間中におけるシャフト51の変位速度V1、言い換えれば、自動運転停止期間中におけるシャフト51の単位時間あたりの変位量を算出する。一例として、ポンプ50の自動運転停止時刻t1と、ポンプ50の自動運転再開時刻t2とから、自動停止時間t3=t2-t1を算出する。また、算出したポンプ50の自動停止時間t3と、シャフト51の角度差Δθとから、シャフト51の変位速度V1=Δθ/t3を算出する(ステップS72)。
【0072】
その後、第1ポンプ50Aについて、シャフト51の変位速度V1が、予め設定された設定速度である閾値Vthよりも大きいか否かを判定する(ステップS73)。ここで、シャフト51の変位速度V1が、閾値Vthよりも大きい場合(ステップS73:Yes)、制御装置70は、第1ポンプ50Aが設けられた第1流入管21Aの第1フート弁40Aに異常が有ると判定し(ステップS74)、ユーザに対して、第1フート弁40Aに異常を検知した旨の警報を送信する(ステップS75)。
【0073】
一方、ステップS73で、シャフト51の設定速度V1が閾値Vth以下である場合には(ステップS73:No)、制御装置70は、第1フート弁40Aに異常が無いと判定し(ステップS76)、ステップS12に戻る。
【0074】
以上のようにシャフト51の変位速度V1に基づいてフート弁40の異常を判定することで、フート弁40の異常をより判定し易くなる。例えば、ポンプ50の自動停止期間が極わずかな時間である場合、フート弁40に異常があっても、角度差Δθが閾値Δθth1に達しない状況が考えられる。このような状況でも、変位速度V1に基づいてフート弁40の異常を判定することで、フート弁40の異常をより正確に判定し易くなる。
【0075】
なお実施形態3では、シャフト51の変位速度V1が閾値Vthよりも大きいか否かのみで、フート弁40の異常を判定するようにしたが、フート弁40の異常判定の手順は、これに限定されない。例えば、実施形態1で説明したように、ステップS17で、シャフト51の角度差Δθが閾値Δθth1以下である場合に(ステップS17:No)、変位速度V1に基づくフート弁40の異常判定を行ってもよい。また例えば、ポンプ50の自動運転停止期間、つまり上記自動運転停止時間t3が予め設定された設定時間よりも短い場合に、変位速度V1に基づくフート弁40の異常判定を行うようにしてもよい。
【0076】
(他の実施形態)
以上、本発明者によってなされた発明を、各実施形態に基づき詳細に説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることはいうまでもない。すなわち本発明は、上記の実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0077】
例えば、一実施形態として、給水装置10が備えるコントローラである制御装置70が、フート弁40の異常を検知する例について説明したが、フート弁40の異常の検知は、必ずしも制御装置70が行わなくてもよい。例えば、制御装置70が、各ポンプ50のシャフト51の位相位置である第1位相および第2位相や、シャフト51の変位量としての角度差Δθ等の情報を稼働データとして管理サーバ410に逐次送信し、例えば、管理サーバ410の演算部414が、この稼働データに基づいてフート弁40の異常を検知するようにしてもよい。つまり管理サーバ410の演算部414が、フート弁40の異常の有無を判定するようにしてもよい。
【0078】
また一実施形態として、給水装置10の加圧給水ユニット30が、管理サーバ410を介してユーザ端末500に接続される構成を説明したが、給水装置10の構成はこれに限定されない。例えば、無線通信機器83が、Bluetooth(登録商標)やWi-Fiなどの無線の通信規格に基づく近距離通信機能を備えるようにし、給水装置10の加圧給水ユニット30が、管理サーバ410を介することなくユーザ端末500に接続可能に構成されていてもよい。すなわち給水装置10は、管理サーバ410を経由することなく、ユーザ端末500に警告メール等を送信可能に構成されていてもよい。
【0079】
また一実施形態として、自動運転停止期間中におけるシャフト51の第1回転量に基づいてフート弁40の異常を検知するようにしたが、さらにシャフト51の回転方向に基づいて、フート弁40の異常を検知するようにしてもよい。具体的には、制御装置70は、ポンプ50の自動運転停止期間中におけるシャフト51の回転方向が、ポンプ50の自動運転中におけるシャフト51の回転方向とは逆方向であることを条件として、フート弁に異常が有ると判定するようにしてもよい。
【0080】
実施形態1で説明したフート弁40の異常判定を行う際、例えば、
図9に示すように、ステップS116にて角度差Δθを算出し、例えば、その算出結果からシャフト51の回転方向を検出する。なおステップS111~ステップS115の工程は、実施形態1のステップS11~ステップS15の工程と同様であるので、これらの工程の説明は省略する。次いで、第1ポンプ50Aについて、シャフト51の変位量としての角度差Δθが、閾値Δθ
th1よりも大きく、且つシャフト51の回転方向が電動機60の駆動時のシャフト51の回転方向とは逆方向か否かを判定する(ステップS117)。
【0081】
ここで、第1ポンプ50Aについて、シャフト51の変位量としての角度差Δθが閾値Δθth1よりも大きく、且つシャフト51の回転方向が電動機60の駆動時のシャフト51の回転方向とは逆方向である場合に(ステップS117:Yes)、第1フート弁40Aに異常が有ると判定する(ステップS118)。フート弁40に異常がある場合、つまり(フート弁40が閉まり切らない状態である場合)、シャフト51は正方向に回転することはなく、常に正方向とは逆方向に回転する。したがって、このように自動運転停止期間中のシャフト51の回転方法に基づいてフート弁40の異常検知を行うことで、フート弁40の異常検知の精度が高められる。
【0082】
ステップS118にて第1フート弁40Aの異常を検知すると、その後、上述したステップS19と同様に、給水装置10は、ユーザに対して、第1フート弁40Aに異常を検知した旨の警報を送信する(ステップS119)。一方、ステップS117で、シャフト51の角度差Δθが、閾値Δθth1以下であるか、シャフト51の回転方向が電動機60の駆動時のシャフト51の回転方向と同方向である場合には(ステップS117:No)、制御装置70は、第1フート弁40Aに異常が無いと判定する(ステップS120)。その後、ステップS112に戻り、給水装置10は、フート弁40の異常検知を継続する。
【符号の説明】
【0083】
10…給水装置、 20…配管、 21…流入管、 22…共通管、 30…加圧給水ユニット、 40…フート弁、 50…ポンプ、 51…シャフト、 52…羽根車、 60…電動機、 70…制御装置(コントローラ)、 71…表示部、 72…処理部、 73…メモリ(記憶部)、 74…センサ・インタフェース部、 80…制御盤、 81…インバータ、 82…インバータ制御部、 83… 無線通信機器、 90…水位センサ、 91…逆止弁、 92…仕切弁、 93…圧力タンク、 94…圧力センサ、 95…アンテナ、 100…受水槽、 300…通信網、 400…異常検知システム、 410…管理サーバ(サーバ装置)、 411…受信サーバ、 412…システム情報データベース、 413…稼働情報データベース、 414…演算部、 415…メール送信サーバ、 416…表示Webサーバ、 500…ユーザ端末