(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108786
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】樹脂組成物、ペレット、および、成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20240805BHJP
C08K 5/43 20060101ALI20240805BHJP
C08K 5/29 20060101ALI20240805BHJP
C08L 79/00 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
C08L69/00
C08K5/43
C08K5/29
C08L79/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013352
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】青野 剛直
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CG011
4J002CM052
4J002ER007
4J002EV266
4J002FD032
4J002FD037
4J002FD136
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】 難燃性に優れ、かつ、湿熱処理後も透明性を高く維持できる成形品を提供可能な樹脂組成物、ならびに、ペレット、および、成形品の提供。
【解決手段】 ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)0.04~0.11質量部と、カルボジイミド(C)0.003~0.15質量部とを含む、樹脂組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、
フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)0.04~0.11質量部と、
カルボジイミド(C)0.003~0.15質量部とを含む、樹脂組成物。
【請求項2】
前記カルボジイミド(C)と、前記フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)の含有量の質量比率である(C)/(B)が0.05~3.0である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)を、前記ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.04~0.08質量部含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記カルボジイミド(C)を、前記ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.003~0.11質量部含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)がアルカリ金属塩である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩が、それぞれ、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩およびセシウム塩の少なくとも1種である、請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)が、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩を含む、請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩が、それぞれ、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩およびセシウム塩の少なくとも1種である、請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)が、ジフルオロメタンスルホニル(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(b)を含み、かつ、前記(b)成分の含有量が、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.01~60質量ppmである、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記カルボジイミド(C)と、前記フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)の含有量の質量比率である(C)/(B)が0.05~3.0であり、
前記フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)を、前記ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.04~0.08質量部含み、
前記カルボジイミド(C)を、前記ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.003~0.11質量部含み、
前記フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)が、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩を含み、
前記ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩が、それぞれ、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩およびセシウム塩の少なくとも1種であり、
前記フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)が、ジフルオロメタンスルホニル(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(b)を含み、かつ、前記(b)成分の含有量が、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.01~60質量ppm含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1、2または10に記載の樹脂組成物のペレット。
【請求項12】
請求項1、2または10に記載の樹脂組成物から形成された成形品。
【請求項13】
請求項11に記載のペレットから形成された成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、ペレット、および、成形品に関する。特に、ポリカーボネート樹脂を主要成分とする樹脂組成物に関する。
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、耐熱性、機械的物性、電気的特性に優れた樹脂であり、例えば自動車材料、電気電子機器材料、住宅材料、その他の工業分野における部品製造用材料等に幅広く利用されている。特に、難燃化されたポリカーボネート樹脂組成物は、コンピューター、ノートブック型パソコン、携帯電話、プリンター、複写機等のOA・情報機器等の部材として好適に使用されている。
【0003】
ポリカーボネート樹脂に難燃性を付与する手段としては、従来、ハロゲン系難燃剤やリン系難燃剤をポリカーボネート樹脂に配合することがなされてきた。しかしながら、塩素や臭素を含有するハロゲン系難燃剤を配合したポリカーボネート樹脂組成物は、熱安定性の低下を招いたり、成形加工時における成形機のスクリューや成形金型の腐食を招いたりすることがあった。また、リン系難燃剤を配合したポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂の特徴である高い透明性を阻害したり、耐衝撃性、耐熱性の低下を招いたりするため、その用途が制限されることがあった。
加えて、これらのハロゲン系難燃剤およびリン系難燃剤は、製品の廃棄、回収時に環境汚染を惹起する可能性があるため、近年ではこれらの難燃剤を使用することなく難燃化することが望まれている。
【0004】
これに対し、パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩や芳香族スルホン酸ナトリウム等の有機アルカリ金属塩化合物および有機アルカリ土類金属塩化合物に代表される金属塩化合物が、ポリカーボネート樹脂の有用な難燃剤として検討されている。これらの金属塩タイプの難燃剤は、燃焼時にポリカーボネート樹脂の分解を促進することによって、難燃性を達成するものである。しかしながら、これらの難燃剤を用いた場合、難燃性が十分ではなかったり、透明性を阻害してしまったりする場合がある。
【0005】
一方、特許文献1には、カーボネートポリマーと、(a)高フッ素化メチド、(b)高フッ素化イミド、(c)高フッ素化アミド、およびそれらのいずれかの組合せ、からなる群より選択されたアニオンを含む添加金属塩と、を含む難燃性組成物が開示されている。また、特許文献1には、前記難燃性組成物が透明性にも優れることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ポリカーボネート樹脂に、有機アルカリ金属塩化合物および/または有機アルカリ土類金属塩化合物を配合すると、難燃性が向上することは知られている。しかしながら、本発明者が検討を行ったところ、湿熱処理後の透明性が悪化する場合があることが分かった。本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、難燃性に優れ、かつ、湿熱処理後も透明性を高く維持できる成形品を提供可能な樹脂組成物、ならびに、ペレット、および、成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、ポリカーボネート樹脂(A)とフルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)に加え、カルボジイミド(C)を配合することにより、上記課題は解決された。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、
フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)0.04~0.11質量部と、
カルボジイミド(C)0.003~0.15質量部とを含む、樹脂組成物。
<2>前記カルボジイミド(C)と、前記フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)の含有量の質量比率である(C)/(B)が0.05~3.0である、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)を、前記ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.04~0.08質量部含む、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
<4>前記カルボジイミド(C)を、前記ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.003~0.11質量部含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5>前記フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)がアルカリ金属塩である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6>前記フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩が、それぞれ、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩およびセシウム塩の少なくとも1種である、<5>に記載の樹脂組成物。
<7>前記フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)が、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩を含む、<5>または<6>に記載の樹脂組成物。
<8>前記ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩が、それぞれ、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩およびセシウム塩の少なくとも1種である、<7>に記載の樹脂組成物。
<9>前記フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)が、ジフルオロメタンスルホニル(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(b)を含み、かつ、前記(b)成分の含有量が、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.01~60質量ppmである、<1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<10>前記カルボジイミド(C)と、前記フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)の含有量の質量比率である(C)/(B)が0.05~3.0であり、
前記フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)を、前記ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.04~0.08質量部含み、
前記カルボジイミド(C)を、前記ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.003~0.11質量部含み、
前記フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)が、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩を含み、
前記ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩が、それぞれ、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩およびセシウム塩の少なくとも1種であり、
前記フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)が、ジフルオロメタンスルホニル(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(b)を含み、かつ、前記(b)成分の含有量が、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.01~60質量ppm含む、<1>~<9>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<11><1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物のペレット。
<12><1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された成形品。
<13><11>に記載のペレットから形成された成形品。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、難燃性に優れ、かつ、湿熱処理後も透明性を高く維持できる成形品を提供可能な樹脂組成物、ならびに、ペレット、および、成形品を提供可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書で示す規格で説明される測定方法等が年度によって異なる場合、特に述べない限り、2023年1月1日時点における規格に基づくものとする。
【0011】
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)0.04~0.11質量部と、カルボジイミド(C)0.003~0.15質量部とを含むことを特徴とする。このような構成とすることにより、難燃性に優れ、かつ、湿熱処理後も透明性を高く維持できる成形品を提供可能な樹脂組成物が得られる。
フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)(以下、「(B)成分」ということがある)は、本来的にアルカリ金属またはアルカリ土類金属を放出しやすい。放出されたアルカリ金属またはアルカリ土類金属は、湿熱高温下ではポリカーボネート樹脂を攻撃し、ポリカーボネート樹脂中に小さい気泡を発生させ、得られる成形品を白濁させてしまうと推測された。
これに対し、ポリカーボネート樹脂の難燃剤として、一般的に用いられるパラトルエンスルホン酸ナトリウムやジフェニルスルホン酸カリウム塩などの金属塩や、リン系難燃剤を用いた場合、湿熱高温下では、難燃剤自体が分解されて、発泡し、得られる成形品が白濁してしまう。
そこで、本実施形態においては、難燃剤として上記(B)成分を用いると共に、カルボジイミド(C)を配合することとした。カルボジイミド(C)を配合することにより、カルボジイミドが有する窒素原子が、ポリカーボネート樹脂が有する水酸基と結合して、得られる成形品の白濁を抑制できたと推測された。また、カルボジイミド(C)の含有量が多すぎると、カルボジイミド(C)自体がポリカーボネート樹脂をも攻撃し、得られる成形品が白濁してしまうと推測された。
以上の見解に基づき、難燃剤として上記(B)成分を用いると共に、カルボジイミド(C)を配合し、さらにその含有量を精密に調整することにより、難燃性に優れ、かつ、湿熱処理後も透明性を高く維持できる成形品を提供可能な樹脂組成物が得られたと推測される。
以下、本実施形態の詳細について説明する。
【0012】
<ポリカーボネート樹脂(A)>
本実施形態の樹脂組成物が含有するポリカーボネート樹脂(A)は、その種類に制限はなく、また、1種のみを用いてもよく、2種以上を、任意の組み合わせおよび任意の比率で、併用してもよい。
ポリカーボネート樹脂(A)は、一般式:-[-O-X-O-C(=O)-]-で示される炭酸結合を有する基本構造の重合体である。上記式中、Xは、一般には炭化水素であるが、種々の特性付与のためヘテロ原子、ヘテロ結合の導入されたXを用いてもよい。
【0013】
ポリカーボネート樹脂(A)としては、特には芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。芳香族ポリカーボネート樹脂とは、炭酸結合に直接結合する炭素がそれぞれ芳香族炭素であるポリカーボネート樹脂をいう。芳香族ポリカーボネートは、各種ポリカーボネートの中でも、耐熱性、機械的物性、電気的特性等の観点から、優れている。
【0014】
芳香族ポリカーボネート樹脂の具体的な種類に制限はないが、例えば、ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを反応させてなる芳香族ポリカーボネート重合体が挙げられる。この際、ジヒドロキシ化合物およびカーボネート前駆体に加えて、ポリヒドロキシ化合物等を反応させるようにしてもよい。また、二酸化炭素をカーボネート前駆体として、環状エーテルと反応させる方法も用いてもよい。また芳香族ポリカーボネート重合体は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよい。さらに、芳香族ポリカーボネート重合体は1種の繰り返し単位からなる単独重合体であってもよく、2種以上の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。このとき共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体等、種々の共重合形態を選択することができる。なお、通常、このような芳香族ポリカーボネート重合体は、熱可塑性の樹脂となる。
【0015】
芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、芳香族ジヒドロキシ化合物の例を挙げると、
1,2-ジヒドロキシベンゼン、1,3-ジヒドロキシベンゼン(すなわち、レゾルシノール)、1,4-ジヒドロキシベンゼン等のジヒドロキシベンゼン類;
【0016】
2,5-ジヒドロキシビフェニル、2,2'-ジヒドロキシビフェニル、4,4'-ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類;
【0017】
2,2'-ジヒドロキシ-1,1'-ビナフチル、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;
【0018】
2,2'-ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3'-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4'-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4'-ジヒドロキシ-3,3'-ジメチルジフェニルエーテル、1,4-ビス(3-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン等のジヒドロキシジアリールエーテル類;
【0019】
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(すなわち、ビスフェノールA)、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
α,α'-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、
1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)(4-プロペニルフェニル)メタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-ナフチルエタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、
4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ドデカン、
等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
【0020】
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3-ジメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,4-ジメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,5-ジメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-プロピル-5-メチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-tert-ブチル-シクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-tert-ブチル-シクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン、
等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
【0021】
9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、
【0022】
4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、
【0023】
4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;
【0024】
4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;
等が挙げられる。
【0025】
これらの中でもビス(ヒドロキシアリール)アルカン類が好ましく、中でもビス(4-ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、特に耐衝撃性、耐熱性の点から2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(すなわち、ビスフェノールA)が好ましい。
なお、芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
【0026】
また、脂肪族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーの例を挙げると、
エタン-1,2-ジオール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール、2-メチル-2-プロピルプロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、デカン-1,10-ジオール等のアルカンジオール類;
【0027】
シクロペンタン-1,2-ジオール、シクロヘキサン-1,2-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、4-(2-ヒドロキシエチル)シクロヘキサノール、2,2,4,4-テトラメチル-シクロブタン-1,3-ジオール等のシクロアルカンジオール類;
【0028】
エチレングリコール、2,2'-オキシジエタノール(すなわち、ジエチレングリコール)、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、スピログリコール等のグリコール類;
【0029】
1,2-ベンゼンジメタノール、1,3-ベンゼンジメタノール、1,4-ベンゼンジメタノール、1,4-ベンゼンジエタノール、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,3-ビス(ヒドロキシメチル)ナフタレン、1,6-ビス(ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、4,4'-ビフェニルジメタノール、4,4'-ビフェニルジエタノール、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、ビスフェノールAビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル、ビスフェノールSビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル等のアラルキルジオール類;
【0030】
1,2-エポキシエタン(すなわち、エチレンオキシド)、1,2-エポキシプロパン(すなわち、プロピレンオキシド)、1,2-エポキシシクロペンタン、1,2-エポキシシクロヘキサン、1,4-エポキシシクロヘキサン、1-メチル-1,2-エポキシシクロヘキサン、2,3-エポキシノルボルナン、1,3-エポキシプロパン等の環状エーテル類;等が挙げられる。
【0031】
ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、カーボネート前駆体の例を挙げると、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が使用される。なお、カーボネート前駆体は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
【0032】
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
カーボネートエステルとしては、具体的には例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;ジヒドロキシ化合物のビスカーボネート体、ジヒドロキシ化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等のジヒドロキシ化合物のカーボネート体等が挙げられる。
【0033】
ポリカーボネート樹脂(A)の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。
【0034】
また、ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv)(樹脂組成物が2種以上のポリカーボネート樹脂を含む場合は、その混合物の粘度平均分子量(Mv)は、10,000以上であることが好ましく、より好ましくは12,000以上であり、さらに好ましくは15,000以上である。前記ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)の上限値は、100,000以下であることが好ましく、より好ましくは80,000以下であり、さらには50,000以下であってもよく、35,000以下であってもよい。
【0035】
本実施形態のポリカーボネート樹脂は、ブレンド物であってもよい。ブレンド形態の一例は、高分子量のポリカーボネート樹脂と低分子量のポリカーボネート樹脂をブレンドする形態である。高分子量のポリカーボネート樹脂は滴下防止剤の役割を果たし、難燃性をより向上させる傾向にある。また、別途、PTFE等の滴下防止剤を配合しないことにより、ポリカーボネート樹脂が本来的に有する優れた透明性を維持することができる。
高分子量のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、40,000以上であることが好ましく、より好ましくは50,000以上であり、さらに好ましく55,000以上である。前記ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)の上限値は、100,000以下であることが好ましく、より好ましくは80,000以下であり、さらに好ましくは75,000以下である。一方、低分子量のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、10,000以上であることが好ましく、より好ましくは12,000以上であり、さらに好ましく14,000以上である。前記ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)の上限値は、40,000未満であることが好ましく、より好ましくは35,000以下であり、さらに好ましくは30,000以下である。
上記ブレンド形態における高分子量のポリカーボネート樹脂と低分子量のポリカーボネート樹脂の質量比率は、高分子量のポリカーボネート樹脂と低分子量のポリカーボネート樹脂の合計を100質量部としたとき、高分子量のポリカーボネート樹脂の割合が15質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、25質量部以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、燃焼時の垂れ落ち抑制効果がより向上する傾向にある。また、前記高分子量のポリカーボネート樹脂の割合は、高分子量のポリカーボネート樹脂と低分子量のポリカーボネート樹脂の合計を100質量部としたとき、90質量部以下であることが好ましく、85質量部以下であることがよりこのましい。前記上限値以下とすることにより、流動性・射出成形性がより向上する傾向にある。
【0036】
ここで、粘度平均分子量[Mv]とは、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10
-4Mv
0.83から算出される値を意味する。また極限粘度[η]とは、各溶液濃度[C](g/dl)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
【数1】
【0037】
ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、通常1,000ppm以下、好ましくは800ppm以下、より好ましくは600ppm以下である。このようにすることで、樹脂組成物の滞留熱安定性および色調をより向上させることができる。また、その下限は、特に溶融エステル交換法で製造されたポリカーボネート樹脂では、通常10ppm以上、好ましくは30ppm以上、より好ましくは40ppm以上である。これにより、分子量の低下を抑制し、樹脂組成物の機械的特性をより向上させることができる。
なお、末端水酸基濃度の単位は、ポリカーボネート樹脂の質量に対する、末端水酸基の質量をppmで表示したものである。その測定方法は、四塩化チタン/酢酸法による比色定量(Macromol.Chem.88 215(1965)に記載の方法)にて行われる。
【0038】
さらにポリカーボネート樹脂は、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂(いわゆるマテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂)であってもよい。前記の使用済みの製品としては、例えば、光学ディスク等の光記録媒体;導光板;自動車窓ガラス、自動車ヘッドランプレンズ、風防等の車両透明部材;水ボトル等の容器;メガネレンズ;防音壁、ガラス窓、波板等の建築部材などが挙げられる。また、製品の不適合品、スプルー、ランナー等から得られた粉砕品またはそれらを溶融して得たペレット等も使用可能である。
ただし、再生されたポリカーボネート樹脂は、樹脂組成物に含まれるポリカーボネート樹脂のうち、80質量%以下であることが好ましく、なかでも50質量%以下であることがより好ましい。再生されたポリカーボネート樹脂は、熱劣化や経年劣化等の劣化を受けている可能性が高いため、このようなポリカーボネート樹脂を前記の範囲よりも多く用いた場合、色相や機械的物性を低下させる可能性があるためである。
【0039】
本実施形態の樹脂組成物におけるポリカーボネート樹脂の含有量は、樹脂組成物中、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが一層好ましく、97質量%以上であることがより一層好ましい。また、前記ポリカーボネート樹脂の含有量の上限は、樹脂組成物中、(B)成分とカルボジイミド(C)以外のすべての成分がポリカーボネート樹脂(A)となる量以下であることが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0040】
<フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)((B)成分))>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)0.04~0.11質量部を含む。(B)成分を含むことにより、難燃性に優れた成形品が得られる。
【0041】
本実施形態で用いる(B)成分は、1種または2種以上の下記式(X)で表される化合物であることが好ましい。
式(X)
【化1】
(式(X)中、Xは水素原子またはフッ素原子を表す。Yはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を表す。Mは、Yがアルカリ金属のときは1であり、Yがアルカリ土類金属のときは2である。)
Mが2のときは、アニオンは1価のアニオンが2つあることを示している。
5つのXのうちフッ素原子の数は、0~5であることが好ましく、1~5であることがより好ましく、2~5であることがさらに好ましく、3~5であることが一層好ましく、4~5であることがより一層好ましく、5であること、すなわち、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(以下、(BF)成分ということがある)であることがより一層好ましく、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩であることがさらに一層好ましい。
Yは、アルカリ金属であることが好ましい。
アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、または、フランシウムが好ましく、リチウム、ナトリウム、カリウムまたはセシウムがより好ましく、リチウム、カリウムまたはセシウムがさらに好ましく、リチウムまたはカリウムが一層好ましく、カリウムがより一層好ましい。
アルカリ土類金属としては、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、または、ラジウムが好ましく、カルシウム、または、バリウムがより好ましい。
【0042】
上記(B)成分が、アルカリ金属塩であるとき、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩およびフランシウム塩が挙げられ、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩およびセシウム塩の少なくとも1種であることが好ましく、リチウム塩、カリウム塩およびセシウム塩からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、リチウム塩および/またはカリウム塩であることがさらに好ましく、カリウム塩であることが一層好ましい。また、上記(B)成分が、アルカリ土類金属塩であるとき、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩、および、ラジウム塩からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、カルシウム塩、および、バリウム塩からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
特に、上記(B)成分として、アルカリ金属塩、さらにはカリウム塩を用いることにより、難燃性、湿熱処理後の透明性等のバランスにより優れた樹脂組成物になる傾向にあり、好ましい。
【0043】
また、本実施形態の樹脂組成物においては、(B)成分が、ジフルオロメタンスルホニル(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(b)(以下、(b)成分ということがある)を含むことも好ましい。より具体的には、(B)成分が、ジフルオロメタンスルホニル(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(b)を、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.01~20質量ppm含むことが好ましい。
特に、本実施形態の樹脂組成物においては、(B)成分が、上記(BF)成分と上記(b)成分の両方を含むことが好ましく、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩と、ジフルオロメタンスルホニル(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩を含むことがより好ましい。前記(BF)成分と(b)成分を組み合わせて含むことにより、透明性を低下させず、ポリカーボネート樹脂が本来的に達成している透明性を効果的に維持できる傾向にある。
本実施形態では、特に、(BF)成分として、カリウム塩を用いることにより、難燃性がより向上する傾向にある。また、配合量を多くしても、透明性、特に耐湿熱後の透明性に優れる傾向にある。
一方、(b)成分として、カリウム塩を用いることにより、カチオンの攻撃性(反応性)が低いため、湿熱試験後のヘイズを低く保つことが可能になる。
本実施形態において、上記(BF)成分および(b)成分は、同じアルカリ金属塩またはアルカリ金属塩であってもよいし、異なるアルカリ金属塩および/またはアルカリ金属塩であってもよいが、同じアルカリ金属塩またはアルカリ金属塩であることが好ましい。また、(BF)成分は2種以上のアルカリ金属塩を含んでいてもよく、(b)成分も2種以上のアルカリ金属塩を含んでいてもよい。以下に、アルカリ金属塩の好ましい組み合わせを示す。
(1)(BF)成分:リチウム塩、(b)成分:リチウム塩
(2)(BF)成分:セシウム塩、(b)成分:セシウム塩
(3)(BF)成分:カリウム塩、(b)成分:カリウム塩
(4)(BF)成分:リチウム塩、(b)成分:セシウム塩
(5)(BF)成分:リチウム塩、(b)成分:カリウム塩
(6)(BF)成分:セシウム塩、(b)成分:リチウム塩
(7)(BF)成分:カリウム塩、(b)成分:リチウム塩
(8)(BF)成分:セシウム塩、(b)成分:カリウム塩
(9)(BF)成分:カリウム塩、(b)成分:セシウム塩
(10)上記(1)~(9)の2つのブレンド物
【0044】
本実施形態において、(BF)成分の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.04質量部以上であることが好ましい。また、前記(BF)成分の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.11質量部以下であることが好ましく、0.08質量部以下であることがより好ましく、0.07質量部以下であることがさらに好ましく、0.06質量部以下であることが一層好ましい。
【0045】
本実施形態において、(b)成分の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.01質量ppm以上であることが好ましく、0.1質量ppm以上であることがより好ましく、1質量ppm以上であることがさらに好ましく、1質量ppm以上であることが一層好ましく、5質量ppm以上であることがより好ましく、10質量ppm以上であることがより一層好ましく、15質量ppm以上であることがさらに一層好ましい。また、前記(b)成分の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、60質量ppm以下であることが好ましく、50質量ppm以下であることがより好ましく、40質量ppm以下であることがさらに好ましく、30質量ppm以下であることが一層好ましく、25質量ppm以下であることがより一層好ましく、20質量ppm以下であることがさらに一層好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、(b)成分を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0046】
本実施形態の樹脂組成物における(B)成分(上記(BF)成分、(b)成分、及びその他の(B)成分)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.04質量部以上である。前記下限値以上とすることにより、難燃性がより向上する傾向にある。また、前記(B)成分の含有量の上限値は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.11質量部以下であり、0.10質量部以下であることが好ましく、0.08質量部以下であることがより好ましく、0.07質量部以下であることがさらに好ましく、0.06質量部以下であることが一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、上記難燃性を保持しながら湿熱処理後のヘイズ上昇を抑制する効果がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、(B)成分を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0047】
<カルボジイミド(C)>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、カルボジイミド(C)0.003~0.15質量部を含む。カルボジイミド(C)を含むことにより、(B)成分を配合しても、得られる成形品の湿熱処理後の透明性を高く維持することができる。
【0048】
本実施形態で用いるカルボジイミド(C)は、分子内に少なくともひとつのカルボジイミド基を有する化合物である。これらのカルボジイミド(C)は、脂肪族、脂環族、芳香族のいずれでもよいが、脂環族カルボジイミドであることが好ましく、ポリ(ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)であることが好ましい。カルボジイミド(C)がポリカルボジイミドである場合、カルボジイミド基の数は2~20であることが好ましい。
【0049】
カルボジイミド(C)の数平均分子量は、GPC測定値のスチレン換算値が500~5000であることが好ましい。上記範囲内とすることにより、耐加水分解性や熱安定性が向上する傾向にある。
【0050】
上記の他、カルボジイミド(C)としては、特開2022-067329号公報の段落0109~0112の記載、特開2022-153322号公報の段落0080~0086の記載、特開2021-021027号公報の段落0138の記載、特開2017-165901号公報の段落0018~0019の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0051】
本実施形態の樹脂組成物におけるカルボジイミド(C)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.003質量部以上であり、0.004質量部以上であることが好ましく、0.006質量部以上であることがより好ましく、0.007質量部以上であることがさらに好ましく、0.008質量部以上であることが一層好ましく、0.01質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、上記難燃性を保持しながら湿熱処理後のヘイズ上昇をより効果的に抑制できる傾向にある。また、前記カルボジイミド(C)の含有量の上限値は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.15質量部以下であり、0.14質量部以下であることが好ましく、0.13質量部以下であることがより好ましく、0.11質量部以下であることがさらに好ましく、0.09質量部以下であることが一層好ましく、0.07質量部以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、湿熱処理後のヘイズ上昇を効果的に抑制できる傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、カルボジイミド(C)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0052】
本実施形態の樹脂組成物においては、前記カルボジイミド(C)と、前記フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)の含有量の質量比率である(C)/(B)が0.05~3.0であることが好ましい。前記下限値以上及び上限値以下とすることにより、難燃性と湿熱処理後のヘイズ上昇抑制をバランスよく向上させることができる。前記質量比率である(C)/(B)は、0.07以上であることが好ましく、0.08以上であることがより好ましく、0.11以上であることがさらに好ましく、0.15以上であることが一層好ましく、0.20以上であることがより一層好ましい。
【0053】
本実施形態の樹脂組成物は、式(Y)で表される化合物を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。本実施形態の樹脂組成物における式(Y)で表される化合物の合計含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.01質量ppm未満であることが好ましく、0.001質量ppm未満であることがより好ましく、0.0001質量ppm未満であることがさらに好ましい。
式(Y)
【化2】
(式(X)中、Yはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を表す。Mは、Yがアルカリ金属のときは1であり、Yがアルカリ土類金属のときは2である。)
Mが2のときは、アニオンは1価のアニオンが2つあることを示している。YおよびMの好ましい範囲は、式(X)におけるYおよびMと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0054】
<その他の成分>
本実施形態の樹脂組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて、上記以外の他成分を含有していてもよい。その他の成分の例を挙げると、各種樹脂添加剤などが挙げられる。
樹脂添加剤としては、例えば、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤等)、紫外線吸収剤、帯電防止剤、上記以外の難燃剤、難燃助剤、滴下防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤、撥水・溌油剤(界面活性剤)、相溶化剤、キレート剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせおよび比率で含有されていてもよい。
帯電防止剤としては、特開2016-216534号公報の段落0063~0067の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、本実施形態の樹脂組成物は、(B)成分を含むため、帯電防止剤を配合しなくても、帯電防止性能を発揮しうる。
また、本実施形態の樹脂組成物には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、国際公開第2021/241471号の段落0047~0103に記載の添加剤を配合でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0055】
<<安定剤>>
安定剤としては、熱安定剤や酸化防止剤が挙げられる。
安定剤としては、フェノール系安定剤、アミン系安定剤、リン系安定剤、チオエーテル系安定剤などが挙げられる。中でも本実施形態においては、リン系安定剤およびフェノール系安定剤が好ましい。
リン系安定剤としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜リン酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられるが、有機ホスファイト化合物が特に好ましい。
【0056】
有機ホスファイト化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には、例えば、ADEKA社製「アデカスタブ(登録商標。以下同じ)1178」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブHP-10」、城北化学工業社製「JP-351」、「JP-360」、「JP-3CP」、BASF社製「イルガフォス(登録商標。以下同じ)168」等が挙げられる。
【0057】
フェノール系安定剤としては、ヒンダードフェノール系安定剤が好ましく用いられる。ヒンダードフェノール系安定剤の具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフェート、3,3',3'',5,5',5''-ヘキサ-tert-ブチル-a,a',a''-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0058】
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなヒンダードフェノール系安定剤としては、具体的には、例えば、BASF社製「Irganox(登録商標。以下同じ)1010」、「Irganox1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO-50」、「アデカスタブAO-60」等が挙げられる。
【0059】
本実施形態の樹脂組成物における安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下である。安定剤の含有量を前記範囲とすることにより、安定剤の添加効果がより効果的に発揮される。
本実施形態の樹脂組成物は、安定剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0060】
<<離型剤>>
本実施形態の樹脂組成物は、離型剤を含んでいてもよい。
離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸の塩、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200~15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイル、ケトンワックス、ライトアマイドなどが挙げられ、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸の塩、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルが好ましく、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルがより好ましい。
【0061】
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は炭素数6~36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6~36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラトリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。また、脂肪族カルボン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩が例示される。
【0062】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族または脂環式飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。
【0063】
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2-ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙
げられる。
【0064】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
【0065】
数平均分子量200~15,000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ-トロプシュワックス、炭素数3~12のα-オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、脂肪族炭化水素の数平均分子量は好ましくは5,000以下である。これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
【0066】
本実施形態の樹脂組成物が離型剤を含む場合、その含有量は、樹脂組成物中、0.05~3質量%であることが好ましく、0.1~0.8質量%であることがより好ましく、0.2~0.6質量%であることがさらに好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、離型剤を、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0067】
<<紫外線吸収剤>>
紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物などの有機紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの中では有機紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾトリアゾール化合物がより好ましい。有機紫外線吸収剤を選択することで、樹脂組成物の透明性や機械物性が良好なものになる。
【0068】
ベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、例えば、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2'-ヒドロキシ-3',5'-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-tert-ブチル-フェニル)-ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3'-tert-ブチル-5'-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-tert-ブチル-フェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール)、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-tert-アミル)-ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2'-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]等が挙げられ、なかでも2-(2'-ヒドロキシ-5'-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2'-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]が好ましく、特に2-(2'-ヒドロキシ-5'-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましい。
【0069】
このようなベンゾトリアゾール化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製(商品名、以下同じ)「シーソーブ701」、「シーソーブ702」、「シーソーブ703」、「シーソーブ704」、「シーソーブ705」、「シーソーブ709」、共同薬品社製「バイオソーブ520」、「バイオソーブ580」、「バイオソーブ582」、「バイオソーブ583」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ71」、「ケミソーブ72」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV5411」、ADEKA社製「LA-32」、「LA-38」、「LA-36」、「LA-34」、「LA-31」、BASF社製「チヌビンP」、「チヌビン234」、「チヌビン326」、「チヌビン327」、「チヌビン328」等が挙げられる。
【0070】
本実施形態の樹脂組成物が紫外線吸収剤を含む場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。
本実施形態の樹脂組成物は、紫外線吸収剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0071】
本実施形態の樹脂組成物は、(B)成分以外の難燃剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。本実施形態の樹脂組成物における(B)成分以外の難燃剤の含有量は、樹脂組成物の(B)成分の含有量の10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが一層好ましく、1質量%以下であることがより一層好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、滴下防止剤(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。滴下防止剤を含まないことにより、得られる樹脂組成物の透明性をより向上させることができる。本実施形態の樹脂組成物における滴下防止剤の含有量は、樹脂組成物の1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることが一層好ましく、0.01質量%以下であることがより一層好ましい。
【0072】
<樹脂組成物の物性>
本実施形態の樹脂組成物は難燃性に優れている。
例えば、本実施形態の樹脂組成物を1.5mm厚の試験片に成形し、UL94試験に従った難燃性がV-0を達成することが好ましい。
このような優れた難燃性は、例えば、(B)成分を配合することによって達成される。
【0073】
本実施形態の樹脂組成物は透明性に優れている。
例えば、本実施形態の樹脂組成物を3mm厚の試験片に成形したときの初期ヘイズが5.0%以下であることが好ましく、3.0%以下であることがより好ましく、2.0%以下であることがさらに好ましく、1.5%以下であることが一層好ましく、1.0%以下であることがより一層好ましく、1.0%未満であることがさらに一層好ましく、0.9%以下であることが特に一層好ましい。このような低いヘイズは、例えば、メインの樹脂としてポリカーボネート樹脂(A)を用いたこと、湿熱安定性を発揮させる成分として、カルボジイミド(C)を用いたこと、あるいは、難燃剤の種類の選定や、カルボジイミド(C)の含有量を少なくすること等によって達成される。前記ヘイズの下限値は0%が理想であるが、0.1%以上が実際的である。
さらに、本実施形態の樹脂組成物は、湿熱後のヘイズが低いことが好ましい。
例えば、本実施形態の樹脂組成物を3mm厚の試験片に成形し、121℃、相対湿度100%の環境下で50時間処理した後のヘイズが40.0%以下であることが好ましく、30.0%以下であることがより好ましく、27.0%以下であることがさらに好ましく、25.0%以下であることが一層好ましく、24.0%以下であることがより一層好ましく、22.0%以下であることがさらに一層好ましく、さらには、20.0%以下、15.0%以下、12.0%以下、10.0%以下、9.0%以下、6.0%以下であることが好ましい。このような低い湿熱処理後のヘイズは、例えば、(B)成分とカルボジイミド(C)を併用したことによって達成される。前記湿熱処理後のヘイズの上限値は0%が理想であるが、0.1%以上が実際的である。
【0074】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知の樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、ポリカーボネート樹脂(A)、(B)成分、および、カルボジイミド(C)、ならびに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240~320℃の範囲である。
【0075】
<成形品>
本実施形態の成形品は、本実施形態の樹脂組成物ないしペレットから形成される。上記した樹脂組成物ないしペレットは、各種の成形法で成形して成形品とされる。成形品の形状としては、特に制限はなく、成形品の用途、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィルム状、ロッド状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状、ボタン状のもの等が挙げられる。
【0076】
成形品を成形する方法としては、特に制限されず、従来公知の成形法を採用でき、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、異形押出法、トランスファー成形法、中空成形法、ガスアシスト中空成形法、ブロー成形法、押出ブロー成形、IMC(インモールドコ-ティング成形)成形法、回転成形法、多層成形法、2色成形法、インサート成形法、サンドイッチ成形法、発泡成形法、加圧成形法等が挙げられる。特に、本実施形態の樹脂組成物は、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法で得られる成形品に適している。しかしながら、本実施形態の樹脂組成物がこれらで得られた成形品に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0077】
本実施形態の樹脂組成物および成形品は、ポリカーボネート樹脂を含む成形品、特に、難燃性、透明性および湿熱処理後の透明性が求められる用途に広く用いることができる。
具体的には、電気電子機器/部品、OA機器/部品、情報端末機器/部品、機械部品、家電製品、車輌部品(自動車内外装)、建築部材、各種容器、レジャー用品・雑貨類、照明機器、透明部品、電力系カバーなどに好ましく用いられる。
特に、本実施形態の樹脂組成物および成形品は、LED(light emitting diode、発光ダイオード)カバー用、電力メーターカバー用に好ましく用いられる。
【実施例0078】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
【0079】
1.原料
表1に示す原料を用いた。
【0080】
【0081】
2.実施例1~8、比較例1~13
<樹脂ペレットの製造>
表1に記載した各成分を、表3~6に記した割合(全て質量部で表示)となるように配合し、タンブラーミキサーで均一に混合して、混合物を得た。この混合物を、スクリュー径50mmのベント付き単軸押出機(田辺プラスチック社製「VS50-34V」)により、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数80rpmで混練し、押出されたストランドを切断してペレットを作製した。
【0082】
<燃焼試験>
上記で得られた樹脂組成物のペレットについて、射出成形機(住友重機械工業社製「SE50DUZ」)を用い、樹脂温度290℃、金型温度80℃の条件下で射出成形を行い、長さ127mm、幅12.7mm、厚さ1.5mmのUL試験用試験片を得た。
得られたUL試験用試験片を、23℃、相対湿度50%の恒温室の中で48時間調湿し、米国アンダーライターズ・ラボラトリーズ(UL)が定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼試験)に準拠して試験を実施した。
UL94試験とは、鉛直に保持した試験片にバーナーの炎を10秒間接炎した後の残炎時間やドリップ性から難燃性を評価する方法であり、V-0、V-1およびV-2の難燃性を有するためには、以下の表2に示す基準を満たすことが必要となる。
【0083】
【0084】
<ヘイズ>
得られた各樹脂組成物のペレットについて、日本製鋼所社製射出成形機「J85AD」を用い、樹脂温度280℃、金型温度80℃の条件下で射出成形を行い、厚さ3mmの試験片を得た。
日本電色工業社製SH7000を用い、上述の方法で得られた試験片のヘイズ(初期ヘイズ、単位:%)を測定した。ヘイズが小さい程、透明性が優れることを意味している。
さらに、得られた厚さ3mmの試験を高度加速寿命試験装置(エスペック株式会社製 EHS-221MD)で121℃、相対湿度100%の環境下で50時間処理し、成形後と同様にヘイズ(湿熱50hヘイズ、単位:%)の測定を行った。
結果を下記表3~6に示した。
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
上記結果から明らかなとおり、本発明の樹脂組成物から形成された成形品は、難燃性に優れ、かつ、湿熱処理しても高い透明性を維持できていた。
これに対し、カルボジイミド(C)を配合しない場合(比較例1)、湿熱処理後のヘイズ上昇が抑制されなかった。
また、カルボジイミド(C)の配合量が多すぎる場合(比較例2)、湿熱処理後のヘイズ上昇が抑制されなかった。
フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)の配合量が多すぎる場合(比較例3~6)、湿熱処理後のヘイズ上昇が抑制されなかった。
一方、フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)の配合量が少な過ぎる場合(比較例7)、難燃性が劣ってしまった。また、フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)以外の金属塩を配合した場合(比較例8、9)、難燃性が劣ってしまった。
また、難燃剤として、縮合リン酸エステルを用いた場合(比較例10、11)、湿熱処理後の透明性が高くなってしまった。一方、縮合リン酸エステルの配合量を本発明の(B)成分相当にした場合(比較例12、13)、湿熱処理後のヘイズ上昇は抑制されたが、難燃性が劣ってしまった。