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特開2024-108793熱硬化性樹脂用難燃剤組成物及び繊維強化熱硬化性樹脂
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108793
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂用難燃剤組成物及び繊維強化熱硬化性樹脂
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240805BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20240805BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240805BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20240805BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20240805BHJP
   C08K 7/06 20060101ALI20240805BHJP
   C09K 21/04 20060101ALI20240805BHJP
   C09K 21/02 20060101ALI20240805BHJP
   C09K 21/12 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/32
C08K3/22
C08K5/3492
C08K7/14
C08K7/06
C09K21/04
C09K21/02
C09K21/12
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013362
(22)【出願日】2023-01-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】000208260
【氏名又は名称】大和化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】森本 尚規
(72)【発明者】
【氏名】河内 雄介
(72)【発明者】
【氏名】中村 隆
【テーマコード(参考)】
4H028
4J002
【Fターム(参考)】
4H028AA07
4H028AA10
4H028AA12
4H028AA35
4H028AA38
4H028BA06
4J002AA021
4J002BG001
4J002CC031
4J002CC161
4J002CC181
4J002CD001
4J002CF211
4J002CK021
4J002CM041
4J002CP031
4J002DA019
4J002DE077
4J002DE128
4J002DE147
4J002DE188
4J002DE238
4J002DH036
4J002DJ008
4J002DK008
4J002DL009
4J002EU188
4J002FA049
4J002FD019
4J002FD136
4J002FD137
4J002FD138
4J002GL00
4J002GN00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】熱硬化性樹脂用難燃剤組成物及び繊維強化熱硬化性樹脂として、十分な耐熱性を備え、かつ着火した後であっても十分な機械的強度の維持性を有する樹脂組成物を得ること。
【解決手段】下記難燃剤A及び下記難燃剤Bを含有し、さらに任意に下記難燃剤Cを含有し、難燃剤A100重量部に対して、難燃剤Bを30~5000重量部含有する熱硬化性樹脂用難燃剤組成物。
難燃剤A:亜リン酸金属塩化合物
難燃剤B:水酸化マグネシウム及び/又は水酸化アルミニウム、
難燃剤C:メラミン誘導体、リン酸塩、ハロゲン化リン酸エステル、非ハロゲン化リン酸エステル、臭素系及び塩素系化合物、ホウ酸塩、ホウ砂、錫酸亜鉛、酸化アンチモン、モリブデン酸塩、ケイ酸マグネシウム、水和石こう、ケイ酸塩類、炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、ヒンダードアミン類、から選ばれた1種又は2種以上
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記難燃剤A及び下記難燃剤Bを含有し、さらに任意に下記難燃剤Cを含有し、
難燃剤A100重量部に対して、難燃剤Bを30~5000重量部含有する熱硬化性樹脂用難燃剤組成物。
難燃剤A:下記式(1)で表されるリン化合物
【化1】

(式中、MはMg、Al、Ca、Ti又はZnであり、mは2,3又は4である。)
難燃剤B:水酸化マグネシウム及び/又は水酸化アルミニウム、
難燃剤C:リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、フタル酸メラミン、メラミン、シアヌル酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸亜鉛、ハロゲン化リン酸エステル、非ハロゲン化リン酸エステル、臭素系化合物、塩素系化合物、ホウ酸バリウム、ホウ砂、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、水和石こう、カオリン・クレー、雲母、炭酸カルシウム、ミョウバン石、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、ウォラストナイト、ヒンダードアミン類(光安定化剤として使用されるものを除く)及びゼオライト構造のリン酸-水素亜鉛とエチレンジアミンとの包摂化合物、から選ばれた1種又は2種以上
【請求項2】
上記難燃剤Aは、上記式(1)におけるMがAlであり、
上記難燃剤Cは、メラミン、シアヌル酸メラミン、ポリリン酸メラミン、リン酸メラミン、リン酸水素二アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、非ハロゲン化リン酸エステル、塩化リン酸エステル、臭化リン酸エステル、臭素系化合物、塩素系化合物、ウォラストナイト、ヒンダードアミン類(光安定化剤として使用されるものを除く)及びゼオライト構造のリン酸-水素亜鉛とエチレンジアミンとの包摂化合物、から選ばれた1種又は2種以上、である請求項1に記載の熱硬化性樹脂用難燃剤組成物。
【請求項3】
上記難燃剤A100重量部に対し、上記難燃剤Cを0~100重量部含む、請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂用難燃剤組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂用難燃剤組成物、及び、ガラス繊維及び/又は炭素繊維、さらに、熱硬化性樹脂を含有する繊維強化熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
上記熱硬化性樹脂が、不飽和ポリエステル、及び、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ポリウレタン、熱硬化性ポリイミドから選ばれた1種又は2種以上である、請求項4に記載の繊維強化熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
ISO-5660のコーンカロリーメーター試験での評価が、以下の全てを満たす請求項4に記載の繊維強化熱硬化性樹脂組成物。
総発熱量 :30.0MJ/m未満
最大発熱速度 :300.0kW/m未満
最大平均発熱速度:60.0kW/m未満
着火時間 :60.0秒以上
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂用難燃剤組成物であり、燃焼時にも溶融滴下がなく炭化層を容易に形成する熱硬化性樹脂用難燃剤組成物、及び、その熱硬化性樹脂用難燃剤組成物を含有した繊維強化熱硬化性樹脂に関する。
本発明の熱硬化性樹脂用難燃剤組成物は、各種の熱硬化性樹脂に含有させることができる。
【背景技術】
【0002】
一般に、熱可塑性樹脂より熱硬化性樹脂は耐熱性に優れている。そのため、熱硬化性はより耐熱性が求められる用途に用いられる。しかしながら、十分な耐熱性と、着火した後であっても十分な機械的強度の維持されること、樹脂組成物を得ることまでは達成できていなかった。
下記特許文献1に記載のように、アクリル樹脂からなる感圧性接着剤にシアヌル酸メラミンと次亜リン酸アルミニウムを含有する接着剤組成物は公知である。しかし、このような接着剤組成物に使用されるアクリル樹脂は、通常熱可塑性であり、かつ接着剤であることから、得られた層は薄層であって、燃焼後も接着剤層自体がある程度の強度を維持することは期待されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2016-500748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、熱硬化性樹脂用難燃剤組成物及び繊維強化熱硬化性樹脂として、十分な耐熱性を備え、かつ着火した後であっても十分な機械的強度が維持されることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、特定の難燃剤A及び難燃剤Bと、必要に応じて特定の難燃剤Cを含む難燃剤組成物を、熱硬化性樹脂の難燃剤組成物として用いることによって、優れた難燃性能、すなわち、総発熱量、最大発熱速度、及び最大平均発熱は全て低く、着火時間が長く、形状保持性に優れた熱硬化性樹脂組成物が得られることを見出した。すなわち、特定の難燃剤Aを使用することにより、燃焼時にも溶融滴下がなく炭化層を容易に形成し、高度な難燃性を発揮できる熱硬化性樹脂用の難燃剤組成物、及び、その熱硬化性樹脂用難燃剤組成物を含有した繊維強化硬化性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、以下の通りである。
1.下記難燃剤A及び下記難燃剤Bを含有し、さらに任意に下記難燃剤Cを含有し、
難燃剤A100重量部に対して、難燃剤Bを30~5000重量部含有する熱硬化性樹脂用難燃剤組成物。
難燃剤A:下記式(1)で表されるリン化合物
【化1】

(式中、MはMg、Al、Ca、Ti又はZnであり、mは2,3又は4である。)
難燃剤B:水酸化マグネシウム及び/又は水酸化アルミニウム、
難燃剤C:リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、フタル酸メラミン、メラミン、シアヌル酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸亜鉛、ハロゲン化リン酸エステル、非ハロゲン化リン酸エステル、臭素系化合物、塩素系化合物、ホウ酸バリウム、ホウ砂、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、水和石こう、カオリン・クレー、雲母、炭酸カルシウム、ミョウバン石、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、ウォラストナイト、ヒンダードアミン類(光安定化剤として使用されるものを除く)及びゼオライト構造のリン酸-水素亜鉛とエチレンジアミンとの包摂化合物、から選ばれた1種又は2種以上
2.上記難燃剤Aは、上記式(1)におけるMがAlであり、
上記難燃剤Cは、メラミン、シアヌル酸メラミン、ポリリン酸メラミン、リン酸メラミン、リン酸水素二アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、非ハロゲン化リン酸エステル、塩化リン酸エステル、臭化リン酸エステル、臭素系化合物、塩素系化合物、ウォラストナイト、ヒンダードアミン類(光安定化剤として使用されるものを除く)及びゼオライト構造のリン酸-水素亜鉛とエチレンジアミンとの包摂化合物、から選ばれた1種又は2種以上、である1に記載の熱硬化性樹脂用難燃剤組成物。
3.上記難燃剤A100重量部に対し、上記難燃剤Cを0~100重量部含む、1又は2に記載の熱硬化性樹脂用難燃剤組成物。
4.1~3のいずれかに記載の熱硬化性樹脂用難燃剤組成物、及び、ガラス繊維及び/又は炭素繊維、さらに、熱硬化性樹脂を含有する繊維強化熱硬化性樹脂組成物。
5.上記熱硬化性樹脂が、不飽和ポリエステル、及び、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ポリウレタン、熱硬化性ポリイミドから選ばれた1種又は2種以上である、1~4のいずれかに記載の繊維強化熱硬化性樹脂組成物。
6.ISO-5660のコーンカロリーメーター試験での評価が、以下の全てを満たす4に記載の繊維強化熱硬化性樹脂組成物。
総発熱量 :30.0MJ/m未満
最大発熱速度 :300.0kW/m未満
最大平均発熱速度:60.0kW/m未満
着火時間 :60.0秒以上
【発明の効果】
【0007】
本発明の熱硬化性樹脂用難燃剤組成物によれば、十分な耐熱性を備え、かつ着火した後であっても十分な機械的強度が維持された樹脂組成物を得るという効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<難燃剤A>
本発明に用いられる難燃剤Aは下記式(1)で表される化合物である。
【化2】

(式中、MはMg、Al、Ca、Ti又はZnであり、mは2,3又は4である。)
【0009】
上記式(1)のMとしては、Alが好ましい。
上記式(1)で表される難燃剤Aの具体例としては、ホスフィン酸亜鉛、ホスフィン酸アルミニウム、ホスフィン酸マグネシウム、ホスフィン酸カルシウム等が挙げられる。
これら式(1)で表されるリン化合物は、通常は無色又は白色の粉体であるため、製品の着色性を阻害することなく使用可能である。これらの中では特にアルミニウム塩が難燃性、炭化性能において優れた効果を有している。
【0010】
難燃剤Aである上記式(1)で表されるリン化合物は、ホスフィン酸、又はホスフィン酸のアルカリ金属塩のいずれか一つと、水溶性のアルミニウム、亜鉛、マグネシウム又はカルシウムの硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩及び水酸化物のいずれか一つとが、水溶液状態で、加熱され、反応することによって得られる。これは水溶液中の酸塩基反応又は塩反応の一種であり、反応が速やかに進行し、目的とする化合物が1~3時間という比較的短時間で生成する点で好適である。
難燃剤Aの含有量としては熱硬化性樹脂100重量部に対して、2重量部以上であり、4重量部以上が好ましく、6重量部以上がより好ましい。また30重量部以下であり、25重量部以下が好ましく、22重量部以下がより好ましい。
難燃剤Aの含有量が、熱硬化性樹脂100重量部に対して2重量部以上であると、成形体にしたときの総発熱量、最大発熱速度及び最大平均発熱速度が低く、さらに着火時間を延ばすことができる。これら難燃剤A、難燃剤B及び難燃剤Cと組み合わせて使用することにより、加熱後における形状保持性に優れる結果になる。
【0011】
<難燃剤B>
本発明の難燃剤組成物は難燃剤Aである式(1)のリン化合物と共に、難燃性能向上のために難燃剤Bを含有する。
そのような難燃剤Bとしては、水酸化マグネシウム及び/又は水酸化アルミニウムであり、その含有量としては熱硬化性樹脂100重量部に対して、30重量部以上であり、50重量部以上が好ましく、100重量部以上がより好ましい。また500重量部以下であり、400重量部以下が好ましく、300重量部以下がより好ましく、200重量部以下がさらに好ましく、150重量部以下が最も好ましい。
難燃剤Bの含有量が、熱硬化性樹脂100重量部に対して30重量部以上であると、成形体にしたときの総発熱量、最大発熱速度及び最大平均発熱速度が低く、さらに着火時間を延ばすことができる。さらに難燃剤A及び難燃剤Cと共に組み合わせて使用すると、加熱後における形状保持性に優れる結果になる。
また、難燃剤A100重量部に対して、難燃剤Bを30~5000重量部含有する。難燃性と形状保持性を全体的にみて、特に難燃剤A100重量部に対する難燃剤Bの含有量としては、100重量部以上が好ましく、500重量部以上がより好ましい。そして、3500重量部以下が好ましく、3000重量部以下がより好ましい。
【0012】
<難燃剤C>
本発明の難燃剤組成物は難燃剤A及び難燃剤Bに加えて、難燃性能向上のために難燃剤Cを含有できる。また、難燃剤Cは任意に含有させる成分であり、これを含有させなくてもよい。具体的には、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、フタル酸メラミン、メラミン、シアヌル酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸亜鉛、非ハロゲン化リン酸エステル、ハロゲン化リン酸エステル、臭素系化合物、塩素系化合物、ホウ酸バリウム、ホウ砂、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、水和石こう、カオリン・クレー、雲母、炭酸カルシウム、ミョウバン石、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、ウォラストナイト、ヒンダードアミン類(光安定化剤として使用されるものを除く)及びゼオライト構造のリン酸-水素亜鉛とエチレンジアミンとの包摂化合物、から選ばれた1種又は2種以上を挙げることができる。
なお非ハロゲン化リン酸エステル、ハロゲン化リン酸エステル、臭素系化合物及び塩素系化合物を含有しても良く、しなくても良い。
【0013】
難燃剤Cとしては、シアヌル酸メラミンとホウ酸亜鉛から選ばれた1種以上を採用したり、さらに、難燃性Cから他の併用難燃剤を選択して採用したりすることが好ましい。
難燃剤Cを含有させる場合には、難燃剤Aである式(1)で表されるリン化合物100重量部に対して、難燃剤Cを含有しなくても良いが、難燃剤Cの含有量は1重量部以上が好ましく、3重量部以上がより好ましく、20重量部以上が更に好ましく、40重量部以上が最も好ましい。また100重量部以下が好ましく、90重量部以下がより好ましく、80重量部以下がさらに好ましく、70重量部以下が最も好ましい。
また、難燃剤B100重量部に対して、難燃剤Cを10重量部以下、好ましくは7重量部以下、好ましくは1重量部以上、より好ましくは2重量部以上、さらに好ましくは3重量部以上含有させることにより、難燃性に優れた低密度の樹脂組成物を得ることができる。
さらに、上記難燃剤C中の非ハロゲン化リン酸エステル、ハロゲン化リン酸エステル、臭素系化合物、塩素系化合物は、以下の化合物を挙げることができる。
なお、本発明の熱硬化性樹脂用難燃剤組成物には赤リン及び/又は有機ホスフィン酸塩を含有しない。ここでいう含有しないとは、難燃作用を発揮する程度の量を含有しないこと、又は全く含有しないことをいう。
【0014】
(非ハロゲン化リン酸エステル)
含有しても良い非ハロゲン化リン酸エステルとしては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニル)ホスフェート、ビスフェノールA-ビス(ジフェニル)ホスフェート、ビスフェノールA-ビス(ジクレジル)ホスフェート等である。
【0015】
(ハロゲン化リン酸エステル)
含有しても良いハロゲン化リン酸エステルとしては、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、テトラキス(2-クロロエチル)ジクロロイソペンチルジホスフェート、ポリオキシアルキレンビス(ジクロロアルキル)ホスフェート、ポリ[オキシ[(2-クロロ-1-メチルエトキシ)ホスフィニリデン]オキシ-1,2-エタンジイルオキシ-1,2-エタンジイル]、α-(2-クロロ-1-メチルエチル)-ω-[[ビス(2-クロロ-1-メチルエトキシ)ホスフィニル]オキシ]等の塩化リン酸エステルや臭化リン酸エステル、が挙げられる。
【0016】
(臭素系化合物)
含有しても良いその他の臭素系化合物としてはヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、デカブロモジフェニルエタン、テトラブロモビスフェノールA、ジブロモネオペンチルグリコール、トリブロモネオペンチルアルコール、トリスジブロモネオペンチルホスフェート等が挙げられる。
【0017】
(塩素系化合物)
含有しても良いその他の塩素系化合物としては、塩素化パラフィン、塩素化ポリオレフィン、パークロロシクロペンタデカン等が挙げられる。
【0018】
難燃剤Aと難燃剤Cの組合せの中では、難燃剤Aがアルミニウム塩であり、難燃剤Cがメラミン、シアヌル酸メラミン、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、リン酸水素二アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、非ハロゲン化リン酸エステル、塩化リン酸エステル及び臭化リン酸エステル等のハロゲン化リン酸エステル、臭素系化合物、塩素系化合物、ウォラストナイト、ヒンダードアミン類(光安定化剤として使用されるものを除く)及びゼオライト構造のリン酸-水素亜鉛とエチレンジアミンとの包摂化合物、その他臭素系化合物、その他塩素系化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上である組み合わせが好ましい。
【0019】
また、難燃剤Cの中でも、シアヌル酸メラミン、ホウ酸亜鉛、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン、三酸化アンチモン、塩化ビニル樹脂、(光安定化剤として使用されるものを除く)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の難燃剤Cである場合がより好ましい。
【0020】
本発明の熱硬化性樹脂用難燃剤組成物は、熱硬化性樹脂用難燃剤組成物中の熱硬化性樹脂100重量部に対して、難燃剤Aと難燃剤Bと難燃剤Cを合計で100重量部以上含有することが好ましく、120重量部以上含有することがより好ましく、130重量部以上含有することが更に好ましい。また500重量部以下含有することが好ましく、200重量部以下含有することがより好ましい。添加量が、500重量部を超えると熱硬化性樹脂組成物燃焼後の物性が劣るおそれがあり、100重量部未満であると、十分な難燃性能が得られないおそれがある。
【0021】
[繊維強化熱硬化性樹脂組成物]
本発明の繊維強化熱硬化性樹脂組成物は、公知の強化用繊維、熱硬化性樹脂及び本発明の熱硬化性樹脂用難燃剤組成物を含有するが、必要に応じて、更に、架橋剤を配合した熱硬化性樹脂用添加剤を含有して製造される。以下、それぞれの成分について説明する。
また発泡して多孔体としてもよく、多孔体にしなくても良い。
【0022】
(強化用繊維)
強化用繊維としては、公知のガラス繊維及び炭素繊維等から1種以上を選択して使用できる。このような繊維としては、公知の繊維強化樹脂に含有できる繊維であれば良い。
繊維の長さ、形状、種類は特に限定されないが、作業性の観点から0.3mm~10mmが好ましく、2mm~7mmがより好ましく、2mm~5mmがさらに好ましい。ただし、樹脂組成物を調製するときの押出成形において、ガラス繊維が折れることもある。ガラス繊維の径も特に限定はなく、平均繊維径(D)は1~25μm、好ましくは5~17μmである。
その強化用繊維の含有量は、本発明の熱硬化性樹脂用難燃剤組成物に含有された熱硬化性樹脂全体との重量の比として、好ましくは熱硬化性樹脂:強化用繊維=25~95:75~5であり、さらに好ましくは熱硬化性樹脂:強化用繊維=45~85:55~15である。
【0023】
ガラス繊維のアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径=L/D)は1~100、好ましくは5~70の範囲にあり、50以下であることがさらに好ましいが、異なるアスペクト比のガラス繊維を適当な比率で混合して用いてもよい。アスペクト比が上記範囲内にあると、表面光沢性と機械物性のバランスに優れる無機強化材成形用樹脂組成物を得ることができる。ガラス繊維の断面形状についても特に限定されず、円形、まゆ型、ひょうたん型、だ円型など、いずれでもありうる。ガラス繊維の長さは、成形品を溶解濾過して繊維のみを観察することで調べることができる。
【0024】
ガラス繊維としては、ロービングストランド、チョップドストランド、ミルドガラスなどを用いることができる。また、これらは1種類でも、2種類以上を混合して用いてもよい。
ガラス繊維は、表面処理されていてもよい。表面処理は、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤等で処理することで行われる。シランカップリング剤の例には、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びγ-クロロプロピルトリメトキシシランなどが含まれる。
【0025】
ガラス繊維は、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂等で集束処理されていてもよい。集束処理に用いられるオレフィン樹脂やウレタン系樹脂は、成形用組成物の物性に影響のない範囲で用いられる。さらにガラス繊維は、メッキ法及び蒸着法などにより、ニッケル、銅、コバルト、銀、アルミニウム、鉄など及びこれらの合金などの金属でコーティングされていてもよい。
【0026】
本発明の繊維強化熱硬化性樹脂組成物中の熱硬化性樹脂用難燃剤組成物の添加量としては、形状保持性を向上させる点において、熱硬化性樹脂100重量部に対して2~200重量部の範囲であり、なかでも10~150重量部の範囲が好ましい。添加量が、200重量部を超えると強化繊維への浸透性阻害のおそれまたは形状保持性低下のおそれがあり、2重量部未満であると、十分な難燃性能が得られないおそれがある。
【0027】
[熱硬化性樹脂]
本発明における熱硬化性樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂、及び、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド樹脂から選ばれた1種又は2種以上である。
熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂(グリコールと、不飽和及び飽和二塩基酸から誘導される不飽和ポリエステルと、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の他のビニルモノマーとの架橋共重合物など)、エポキシ樹脂(ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂の、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等、ポリアミン、酸無水物などによる硬化樹脂など)、熱硬化性ポリウレタン樹脂(ポリウレタンフォームを含む)、高吸水性樹脂(架橋ポリアクリルアミドの部分加水分解物、架橋されたアクリル酸-アクリルアミド共重合体など)などが挙げられる。
【0028】
(不飽和ポリエステル樹脂)
不飽和ポリエステル樹脂は、脂肪族不飽和ジカルボン酸と脂肪族ジオールとをエステル化反応させることにより得られる樹脂である。例えばマレイン酸やフマル酸等の不飽和ジカルボン酸を、必要によりオルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸又はアジピン酸等の飽和ジカルボン酸と共に、エチレングリコールやジエチレングリコール等のジオールとをエステル化反応して得られる不飽和ポリエステルであり、必要により硬化剤や硬化促進剤の存在下で、他のビニルモノマーと反応させて加熱硬化する樹脂である。
また、臭素化不飽和ポリエステル樹脂を採用できる。臭素化不飽和ポリエステル樹脂は、多価アルコール成分にジブロモネオペンチルグリコール等を使用したり、飽和二塩基酸またはその無水物としてテトラブロムフタル酸およびその無水物を用いたり等して得ることができる。
このとき、上記のように、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有させて熱硬化性樹脂部分にすることができる。このような熱硬化性樹脂であるとき、不飽和ポリエステル樹脂を100重量部に対して、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを、好ましくは3重量部以上、より好ましくは10重量部以上、更に好ましくは15重量部以上、また好ましくは30重量部以下、より好ましくは25重量部以下、更に好ましくは20重量以下である。
【0029】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂は、例えば芳香族ジオール(例えばビスフェノールA)とエピクロルヒドリンとをアルカリの存在下に反応させて得た、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などである。このようなエポキシ樹脂は、ポリアミン、酸無水物などにより加熱硬化される。例えばエポキシ樹脂として、例えば、エポキシ当量170~5000のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂が挙げられる。
また、臭素化エポキシアクリレート樹脂を採用できる。このとき、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、テトラブロムビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート、テトラブロムビスフェノールS型エポキシ(メタ)アクリレート等が好ましい。
このとき、上記のように、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有させて熱硬化性樹脂部分にすることができる。このような熱硬化性樹脂であるとき、エポキシ樹脂を100重量部に対して、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを、好ましくは3重量部以上、より好ましくは10重量部以上、更に好ましくは15重量部以上、また好ましくは30重量部以下、より好ましくは25重量部以下、更に好ましくは20重量以下である。
【0030】
(フェノール樹脂)
フェノール樹脂は、ノボラック型やレゾール型のフェノール樹脂等である。
【0031】
(ポリウレタン樹脂)
ポリウレタン樹脂は、公知のポリオール、イソシアネート及び触媒等を使用して、加熱硬化をして得ることができる。さらに、発泡剤や所望により整泡剤を併用して公知の手段によりポリウレタンフォームを得てもよい。
【0032】
[熱硬化性樹脂用難燃剤組成物]
本発明の熱硬化性樹脂用難燃剤組成物は、難燃剤Aと難燃剤Bを必須成分とするものであり、必要に応じ、さらに難燃剤Cを含有することも可能である。難燃剤Cを含有する場合は、それぞれの含有割合は難燃剤A100重量部に対して難燃剤Cを含有する場合には0~100重量部である。
また、難燃剤Aである式(1)のリン化合物としては、Mg、Al、Ca、Ti又はZnの塩を使用することができ、難燃剤Cとしては、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、塩素系化合物、ホウ酸バリウム、ホウ砂、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、三酸化アンチモン、五酸化アラミン、フタル酸メラミン、メラミン、シアヌル酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸亜鉛、非ハロゲン化リン酸エステル、ハロゲン化リン酸エステル、臭素系化合物、塩素系化合物、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、水和石こう、カオリン・クレー、雲母、炭酸カルシウム、ミョウバン石、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、ウォラストナイト、及びゼオライト構造のリン酸-水素亜鉛とエチレンジアミンとの包摂化合物、からなる群より選ばれる1種又は2種以上を使用することができる。
【0033】
難燃剤Aと難燃剤Cとの組み合わせでは、式(1)のリン化合物としてアルミニウム塩、併用難燃剤としてメラミン、シアヌル酸メラミン、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、リン酸水素二アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、非ハロゲン化リン酸エステル、塩化ビニルレジン、ウォラストナイト、及び、ゼオライト構造のリン酸-水素亜鉛とエチレンジアミンとの包摂化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上を選択した場合が最も好ましい難燃性能を示す。
【0034】
[他の添加剤]
本発明の繊維強化熱硬化性樹脂は、上記強化用繊維、熱硬化性樹脂、難燃剤A、難燃剤B、及び難燃剤C以外の成分として、必要に応じて、触媒、発泡剤、整泡剤、低粘度化剤、架橋剤、発泡助剤、脱水剤、可塑剤、耐候剤、着色剤、充填剤等の各種成分を、本発明の効果を損なわない範囲の量で含んでもよい。これら各種成分は、前もって熱硬化性樹脂に添加される場合もあるが、上記熱硬化性樹脂と、強化用繊維、熱硬化性樹脂、難燃剤A、難燃剤B、又は難燃剤Cを混合する際に添加することもできる。なお、膨張性黒鉛を含有させてもよく、含有させなくても良い。
上記低粘度化剤及び架橋剤として、メタクリル酸メチルやスチレン等を含有させた後に熱硬化をさせることもできる。
【0035】
前記整泡剤としては、熱硬化性樹脂に発泡剤を含有させる際に用いられる市販の整泡剤等が挙げられる。特に限定されないが、例えば、整泡剤としては、界面活性剤が挙げられ、有機シロキサン-ポリオキシアルキレン共重合体、シリコーン-グリース共重合体等の非イオン系界面活性剤等の有機シリコーン系界面活性剤等が挙げられる。前記シリコーン化合物からなる整泡剤の量は、前記熱硬化性樹脂100重量部に対して0.5重量部以上が好ましい。
【0036】
本発明は、熱硬化性樹脂用難燃剤組成物を使用して、熱硬化して得られた繊維強化された成形体についてのISO-5660のコーンカロリーメーター試験での評価(評価方法は実施例にて記載)が、以下の全てを満たすことが必要である。
総発熱量 :30.0MJ/m未満
最大発熱速度 :300.0kW/m未満
最大平均発熱速度:60.0kW/m未満
着火時間 :60.0秒以上
【0037】
中でも総発熱量は、好ましくは28.5MJ/m以下、より好ましくは25.0MJ/m以下、さらに好ましくは24.0MJ/m以下、最も好ましくは23.0MJ/m以下である。
中でも最大発熱速度は、好ましくは220kW/m以下、より好ましくは190kW/m以下、さらに好ましくは170kW/m以下、最も好ましくは150kW/m以下である。
中でも最大平均発熱速度は、好ましくは55kW/m以下、より好ましくは50kW/m以下、さらに好ましくは45kW/m以下、最も好ましくは40kW/m以下である。
中でも着火時間は、好ましくは65秒以上、より好ましくは70秒以上、さらに好ましくは75秒以上、最も好ましくは80秒以上である。
【0038】
そして、総発熱量が28.5MJ/m以下、最大発熱速度が220kW/m以下、最大平均発熱速度が60kW/m未満、及び着火時間が65秒以上、の全てを同時に満たすことが好ましい。
又は、総発熱量が25.0MJ/m以下、最大発熱速度が220kW/m以下、最大平均発熱速度が50kW/m以下、及び着火時間が60秒以上、の全てを同時に満たすことが好ましい。
又は、総発熱量が25.0MJ/m以下、最大発熱速度が220kW/m以下、最大平均発熱速度が45kW/m以下、及び着火時間が60秒以上、の全てを同時に満たすことが好ましい。
又は、総発熱量が25.0MJ/m以下、最大発熱速度が190kW/m以下、最大平均発熱速度が45kW/m以下、及び着火時間が60秒以上、の全てを同時に満たすことが好ましい。
又は、総発熱量が25.0MJ/m以下、最大発熱速度が190kW/m以下、最大平均発熱速度が45kW/m以下、及び着火時間が60秒以上、の全てを同時に満たすことが好ましい。
あるいは、総発熱量が23.0MJ/m以下、及び、最大発熱速度が190kW/m以下、及び、最大平均発熱速度が45kW/m以下、及び、着火時間が80秒以上、の4つの要件のうちの少なくとも1つを満たすことも好ましい。
【0039】
[繊維強化熱硬化性樹脂の製造方法]
本発明の繊維強化熱硬化性樹脂の製造方法は特に限定されず、通常の方法で製造することができる。
例えば、上記の繊維と上記難燃剤及び上記熱硬化性樹脂を混合して、金型等により成型・加熱硬化をして製造することができる。
【0040】
本発明の難燃剤組成物は何れの熱硬化性樹脂にも使用でき、繊維強化された樹脂成形体を得るものでもよく、ポリウレタンフォームのように、発泡された成形体を得るためにも使用できる。得られる熱硬化樹脂成形体は、建築材料、車両用樹脂成形体等の公知の用途に使用できる。さらに、繊維強化樹脂成形体として、構造用樹脂成形体として使用することも可能である。
発泡された成形体の用途は、自動車用吸音・防音・防振材や建築用断熱材に限定されるものではなく、例えば、車両用、鉄道用、航空機用、船舶用の断熱材又は内装材として用いられる座席シートクッション、フロアーカーペット、天井材やエンジンフィルター、オイルフィルター、インシュレーター、家具用のクッション材、電装部材(配線ケーブルボックスや配管パイプ貫通部等の隙間の充填物用)、包装材、緩衝材等にも使用することが可能である。
繊維強化樹脂成形体の用途は、自動車、鉄道車両、船舶及び航空機等の部品、壁材、バスタブ等の建築物の材料や設備、家具等にも使用することが可能である。
【0041】
(繊維強化熱硬化性樹脂成形体)
本発明の繊維強化熱硬化性樹脂成形体は、上記の難燃剤、樹脂及び繊維を含有して、成型した後に各樹脂に応じた条件により熱硬化してなる成形体である。
そして、繊維強化熱硬化性樹脂成形体としては、ISO-5660のコーンカロリーメーター試験での評価がOKとなるとき、つまり、総発熱量:30MJ/m未満、最大発熱速度:300kW/m未満、最大平均発熱速度:60kW/m未満、及び着火時間:60秒以上、の全ての条件を満たす繊維強化熱硬化性樹脂組成物である。
このような成形体であれば、加熱後においても十分な強度を保って形状保持できる効果を有する。
【0042】
(実施例及び比較例)
下記表に記載の材料を用いて樹脂組成物を得て、下記の試料の作成に従って繊維強化熱硬化性樹脂成形体を得た。
得られた繊維強化熱硬化性樹脂成形体について、下記の評価を行い、その結果を下記表に記載した。なお、測定しなかった結果については空欄とした。
【0043】
[難燃性等の評価]
(試料の作成)
繊維強化熱硬化性樹脂成型体を以下の方法で製造し、難燃性等の試験に供した。
熱硬化性樹脂及び難燃剤をPETカップにはかりとり、20℃、60分間以上撹拌機にて撹拌した。撹拌後の混合物に対して硬化促進剤、硬化剤の順に加え、撹拌棒を使用して20℃、2分間以上撹拌して混合物を得た。
上記の混合物を、1枚のガラスマット#450に塗布して浸透させた。その上に新たなガラスマット#450を1枚置き、上記の混合物を塗布して浸透させた。さらに、その上に新たなガラスマット#450を1枚置き、上記の混合物を塗布して浸透させた。このようにして、ガラスマット#450を合計で3枚使用し、それぞれ上記の混合物を塗布して浸透させて、硬化前の積層した樹脂成形体を得た。これを翌日まで静置し、その後60℃、120分、その後80℃、120分、その後120℃、120分乾燥加熱し、繊維強化熱硬化性樹脂成型体を作成した。
【0044】
[評価方法]
(ISO-5660の結果)
上記の方法で作成した繊維強化熱硬化性樹脂成型体から10cm×10cmになるようにコーンカロリーメーター試験用サンプルを切り出し、ISO-5660に準拠し、放射熱強度50kW/mにて10分間加熱した。そしてそれぞれの試験用サンプルについて、総発熱量、最大発熱速度、最大平均発熱速度及び着火時間を求めた。
総発熱量(試験時間全体で放出された発熱量の合計)
発熱速度(酸素の発熱量(1kg当たり13kJ)から換算された試験用サンプルの1秒ごとの発熱量)
最大発熱速度(発熱速度の最大値)
平均発熱速度((1秒間の発熱量+その1秒前の1秒間の発熱量)/2で求めた値を、発熱試験の毎秒毎に求める。求めた毎秒毎の値を発熱試験時間まで合計し、これを発熱試験時間で除して得た値)
最大平均発熱速度(平均発熱速度の最大値)
着火時間(初めて火が付いた時間)
以上の評価結果の基準は以下の通り。
総発熱量 :30.0MJ/m未満
最大発熱速度 :300.0kW/m未満
最大平均発熱速度:60.0kW/m未満
着火時間 :60.0秒以上
【0045】
上記コーンカロリーメーター試験での評価結果の基準をすべて満たした場合は「OK」とし、ひとつでも満たさなかった場合は「-」として、これらを結果とした。測定しなかった項目は空欄にした。
【0046】
(形状保持性)
上記ISO-5660の試験実施後で1日以上静置した試料を、机の端から9cmはみ出るように固定し、はみ出ている部分の机に対して最も離れた辺から内側1cm(机の端から8cm)の位置に、400g、800g、1000gの分銅をフックにより吊り下げて、試料が折れたかどうかを確認する。折れなかった場合は「OK」、折れた場合は「-」とする。
【0047】
臭素化不飽和ポリエステル:ユピカFLH-350R(日本ユピカ株式会社)
不飽和ポリエステル :ユピカ4007A(日本ユピカ株式会社)
エポキシアクリレート :ネオポール8112(日本ユピカ株式会社)
メタクリル酸メチル :メタクリル酸メチルモノマー(富士フィルム和光製薬株式会社)
硬化促進剤 :PR-CBZ01(日本ユピカ株式会社)
硬化剤 :MethylEthylKetonePeroxide(ca.50% in DimethylPhthalate)(東京化成工業株式会社)
水酸化アルミニウム :水酸化アルミニウムB-103(日本軽金属株式会社)
シアヌル酸メラミン :STABIACE MC-2010N(堺化学工業株式会社)
ホウ酸亜鉛 :ZB2335(キンセイマテック株式会社)
有機ホスフィン酸Al :ExolitOP930(クラリアントケミカルズ株式会社)
ポリリン酸アンモニウム :FR CROSS 584(CBC株式会社)
ポリリン酸メラミン :BUDIT341(CBC株式会社)
リン酸-水素亜鉛 :ZPO-3(株式会社鈴裕化学)
ハロゲン化リン酸エステル:トリス(クロロプロピル)ホスフェート(大八化学工業株式会社)
非ハロゲン化リン酸エステル:クレジルジフェニルホスフェート(大八化学工業株式会社)
デカブロモジフェニルエタン:SAYTEX8010(アルベマール日本株式会社)
塩ビレジン :リューロンペースト851(東ソー株式会社)
強化用繊維 :FRPガラスマット#450(日本特殊塗料株式会社)
【0048】
(表1)


【0049】
(表2)


【0050】
(表3)


【0051】
(表4)
【0052】
本発明に沿った例である各実施例によれば、得られた繊維強化熱硬化性樹脂成型体は、総発熱量、最大発熱速度及び最大平均発熱速度がいずれも低く、かつ着火時間が長いという特性と、燃焼後における形状保持性にも優れるという効果を発揮した。
これに対して、各比較例によれば、総発熱量、最大発熱速度及び最大平均発熱速度及び着火時間の少なくとも1つについて、上記評価結果の基準を満たしておらず、難燃性に劣っていた。又は、800g及び1000gの分銅を吊り下げて試験したときの形状保持性に劣っており、燃焼後における形状保持が不十分であった。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記難燃剤A及び下記難燃剤B並びに任意に下記難燃剤Cからなる難燃剤を含有し、
難燃剤A100重量部に対して、難燃剤Bを30~5000重量部含有し、かつ、ISO-5660のコーンカロリーメーター試験での総発熱量、最大発熱速度、最大平均発熱速度及び着火時間に関する全ての評価が、以下の範囲を満たす熱硬化性樹脂組成物。
難燃剤A:下記式(1)で表されるリン化合物
【化1】

(式中、MはMg、Al、Ca、Ti又はZnであり、mは2,3又は4である。)
難燃剤B:水酸化マグネシウム及び/又は水酸化アルミニウム、
難燃剤C:リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、フタル酸メラミン、メラミン、シアヌル酸メラミン、リン酸アンモニウム、リン酸亜鉛、ホウ酸バリウム、ホウ砂、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、水和石こう、カオリン・クレー、雲母、炭酸カルシウム、ミョウバン石、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、ウォラストナイト、及びヒンダードアミン類(光安定化剤として使用されるものを除く)から選ばれた1種又は2種以上
ISO-5660のコーンカロリーメーター試験での評価
総発熱量 :30.0MJ/m 未満
最大発熱速度 :300.0kW/m 未満
最大平均発熱速度:60.0kW/m 未満
着火時間 :60.0秒以上
(但し、アクリルエラストマー、熱硬化性成分、ピロガロール、ホスフィン酸金属塩、無機充填剤、及びシリコンエラストマーを含むフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物を除く)
【請求項2】
上記難燃剤Aは、上記式(1)におけるMがAlであり、
上記難燃剤Cは、メラミン、シアヌル酸メラミン、リン酸メラミン、リン酸水素二アンモニウム、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、ウォラストナイト、及びヒンダードアミン類(光安定化剤として使用されるものを除く)から選ばれた1種又は2種以上、である請求項1に記載の熱硬化性樹脂用難燃剤組成物。
【請求項3】
上記難燃剤Cは、シアヌル酸メラミン、ホウ酸亜鉛、三酸化アンチモン及びヒンダードアミン類(光安定化剤として使用されるものを除く)、から選ばれた1種又は2種以上、である請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂用難燃剤組成物。
【請求項4】
上記難燃剤A100重量部に対し、上記難燃剤Cを0~100重量部含む、請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂用難燃剤組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂用難燃剤組成物、及び、ガラス繊維及び/又は炭素繊維、さらに、熱硬化性樹脂を含有する繊維強化熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
上記熱硬化性樹脂が、不飽和ポリエステル、及び、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ポリウレタン、熱硬化性ポリイミドから選ばれた1種又は2種以上である、請求項に記載の繊維強化熱硬化性樹脂組成物。