(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108798
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】フィードバック制御装置及びフィードバック制御方法並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 13/02 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
G05B13/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013367
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】竹友 孝裕
【テーマコード(参考)】
5H004
【Fターム(参考)】
5H004GA06
5H004GB04
5H004HA03
5H004HB04
5H004KB02
5H004KB04
5H004KC39
5H004LB03
5H004LB04
(57)【要約】
【課題】ハンチング現象抑制の信頼性を向上させること。
【解決手段】フィードバック制御装置50は、入力信号の変化率が所定の閾値以上である場合に、ハンチングが発生していると判定するハンチング判定部80と、入力信号の値及び変化の方向に基づいて、制御感度を低下させる変更タイミングか否かを判定するタイミング判定部90と、ハンチングが発生していると判定され、変更タイミングであると判定された場合に、制御感度を低下させる制御ゲイン変更部53とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号の変化率が所定の閾値以上である場合に、ハンチングが発生していると判定するハンチング判定手段と、
前記入力信号の値及び変化の方向に基づいて、制御感度を低下させる変更タイミングか否かを判定するタイミング判定手段と、
前記ハンチングが発生していると判定され、かつ、前記変更タイミングであると判定された場合に、制御感度を低下させる制御感度変更手段と
を具備するフィードバック制御装置。
【請求項2】
前記タイミング判定手段は、前記入力信号の値が目標値に基づいて決定される所定の範囲内であり、かつ、前記入力信号が降下している場合に、変更タイミングであると判定する請求項1に記載のフィードバック制御装置。
【請求項3】
前記所定の範囲内は、前記目標値以下の範囲に設定されている請求項2に記載のフィードバック制御装置。
【請求項4】
前記タイミング判定手段は、前記入力信号の値が目標値に基づいて決定される所定の範囲内であり、かつ、前記入力信号が上昇している場合に、変更タイミングであると判定する請求項1に記載のフィードバック制御装置。
【請求項5】
前記所定の範囲内は、前記目標値以下の範囲に設定されている請求項4に記載のフィードバック制御装置。
【請求項6】
制御ゲインを変更可能な制御器を備え、
前記制御感度変更手段は、前記制御器の制御ゲインを変更する請求項1に記載のフィードバック制御装置。
【請求項7】
前記ハンチング判定手段は、前記入力信号の変化率が所定の閾値以上である第1条件、前記入力信号の上限値が許容上限値以上である第2条件、前記入力信号の下限値が許容下限値以下である第3条件が、所定期間内にすべて満たされた場合に、ハンチングが発生していると判定する請求項1に記載のフィードバック制御装置。
【請求項8】
前記入力信号が前記許容上限値以上である状態が所定期間にわたって維持された場合に第2条件を満たすと判定し、
前記入力信号が前記許容下限値以下である状態が所定期間にわたって維持された場合に第3条件を満たすと判定する請求項7に記載のフィードバック制御装置。
【請求項9】
プラントにおけるプロセス値の制御に用いられる請求項1に記載のフィードバック制御装置。
【請求項10】
前記プラントの挙動が整定しているか否かを判定するプラント整定判定手段を備え、
前記制御感度変更手段は、前記プラントの挙動が整定していると判定され、ハンチングが発生していると判定され、かつ、前記変更タイミングであると判定された場合に、前記制御感度を低下させる請求項9に記載のフィードバック制御装置。
【請求項11】
バイアス量を算出するバイアス量設定手段を有し、制御要求値に前記バイアス量を加算することで目標値を算出する目標値算出手段を備え、
前記制御感度変更手段は、前記バイアス量の変化速度に関する制御パラメータを変更する請求項1に記載のフィードバック制御装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載のフィードバック制御装置を備えるボイラ。
【請求項13】
請求項12に記載のボイラを備える発電プラント。
【請求項14】
入力信号の変化率が所定の閾値以上である場合に、ハンチングが発生していると判定するハンチング判定工程と、
前記入力信号の値及び変化の方向に基づいて、制御感度を低下させる変更タイミングか否かを判定するタイミング判定工程と、
前記ハンチングが発生していると判定され、かつ、前記変更タイミングであると判定された場合に、制御感度を低下させる制御感度変更工程と
をコンピュータが実行するフィードバック制御方法。
【請求項15】
コンピュータを請求項1から11のいずれかに記載のフィードバック制御装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィードバック制御装置及びフィードバック制御方法並びにプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フィードバック制御装置は、制御対象の制御量をセンサ等によって検出し、その検出信号(入力信号)と目標値との偏差に対して制御器によってPI制御、PID制御などの所定の制御を行い、その出力信号を制御対象の制御を行うための操作量として出力するものである。
フィードバック制御では、フィードバック信号が目標値へ漸近するまでの時間を短縮することが望ましい。このため、一般的には、制御器の感度(ゲイン)は高い方が好ましいとされている。しかしながら、制御器の感度が高いと、外乱が発生した場合に、プロセス値が変動を繰り返すハンチング現象が発生する。
このハンチングの抑制手法として、例えば、特許文献1には、制御器に対して複数組のゲインを用意しておき、ハンチング現象が発生した場合に、制御器のゲインをハンチング低減用ゲインに変更する手法が開示されている。また、特許文献1には、ハンチング現象が収束した場合に、制御器のゲインを通常のゲインに戻すことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、制御器のゲインを変更する場合、適切なタイミングでゲインを変更しないとフィードバック信号が収束せずに拡散してしまい、ハンチングを助長してしまう可能性がある。
【0005】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ハンチング現象抑制の信頼性を向上させることのできるフィードバック制御装置及びフィードバック制御方法並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一参考例としての第一態様は、入力信号の変化率が所定の閾値以上である場合に、ハンチングが発生していると判定するハンチング判定手段と、前記入力信号の値及び変化の方向に基づいて、制御感度を低下させる変更タイミングか否かを判定するタイミング判定手段と、前記ハンチングが発生していると判定され、かつ、前記変更タイミングであると判定された場合に、制御感度を低下させる制御感度変更手段とを具備するフィードバック制御装置である。
【0007】
本開示の一参考例としての第一態様は、上記フィードバック制御装置を備えるボイラである。
【0008】
本開示の一参考例としての第一態様は、上記ボイラを備える発電プラントである。
【0009】
本開示の一参考例としての第一態様は、入力信号の変化率が所定の閾値以上である場合に、ハンチングが発生していると判定するハンチング判定工程と、前記入力信号の値及び変化の方向に基づいて、制御感度を低下させる変更タイミングか否かを判定するタイミング判定工程と、前記ハンチングが発生していると判定され、かつ、前記変更タイミングであると判定された場合に、制御感度を低下させる制御感度変更工程とをコンピュータが実行するフィードバック制御方法である。
【0010】
本開示の一参考例としての第一態様は、コンピュータを上記フィードバック制御装置として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本開示のフィードバック制御装置及びフィードバック制御方法並びにプログラムによれば、ハンチング現象抑制の信頼性を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る発電プラントの全体概略構成図である。
【
図2】本開示の第1実施形態に係るボイラの概略構成図である。
【
図3】本開示の第1実施形態に係る脱硝装置の概略構成図である。
【
図4】本開示の第1実施形態に係るフィードバック制御装置が備える機能の一例を示した機能構成図である。
【
図5】本開示の第1実施形態に係るプラント整定判定部が備える機能の一例を示した機能構成図である。
【
図6】本開示の第1実施形態に係るハンチング判定部が備える機能の一例を示した機能構成図である。
【
図7】本開示の第1実施形態に係るハンチング判定部の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図8】本開示の第1実施形態に係るタイミング判定部の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図9】プラントが整定している状態において、入力信号が入力された場合のプラント整定信号、ハンチング信号、タイミング信号及び制御感度変更信号の一例を示した図である。
【
図10】本開示の第1実施形態に係るフィードバック制御装置の作用効果について説明するための図である。
【
図11】本開示の他の実施形態に係るフィードバック制御装置の作用効果について説明するための図である。
【
図12】本開示の第2実施形態に係るフィードバック制御装置が備える機能の一例を示した機能構成図である。
【
図13】本開示の第2実施形態に係るバイアス量設定部が備える機能の一例を示した機能構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔第1実施形態〕
以下に、本開示に係るフィードバック制御装置及びフィードバック制御方法並びにプログラムの第1実施形態について、図面を参照して説明する。以下、フィードバック制御装置を、発電プラントのボイラにおいて発生する排ガス中のNOxを除去する脱硝装置に適用する場合を例示して説明するが、フィードバック制御装置の適用先はこれに限られない。本開示に係るフィードバック制御装置は、様々な分野におけるフィードバック制御に適用でき、また、制御対象の制御量である入力信号として様々な信号を採用することが可能である。
【0014】
以下の説明において、上や上方とは鉛直方向上側を示し、下や下方とは鉛直方向下側を示すものであり、鉛直方向は厳密ではなく誤差を含むものである。
図1は、本開示の第1実施形態に係る発電プラント1の全体概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態の発電プラント1は、ボイラ10と、ボイラ10で生成した蒸気によって回転駆動される蒸気タービン2と、蒸気タービン2に連結され蒸気タービン2の回転力によって発電を行う発電機3とを主な構成として備えている。蒸気タービン2を駆動した後の蒸気は、復水器4において復水され、ボイラ10に戻される。
【0015】
ボイラ10は、例えば、固体燃料を粉砕した微粉燃料をバーナにより燃焼させ、この燃焼により発生した熱を給水や蒸気と熱交換して過熱蒸気を生成することが可能なボイラである。固体燃料としては、石炭、バイオマス燃料、石油コークス(PC:Petroleum Coke)燃料、石油残渣などが使用される。なお、ボイラ10の燃料は、固体燃料に限られず、例えば、重油、軽油、重質油などの石油類や工場廃液、液化アンモニアなどの液体燃料も使用することができる。また、天然ガスや各種石油ガス、製鉄プロセスなどで発生する副生ガス、水素ガス、アンモニアガスなどの気体燃料も使用することができる。さらに、これらの各種燃料を組み合わせて使用することも可能である。
【0016】
図2は、本実施形態に係るボイラ10の概略構成図である。
図2に示すように、ボイラ10は、例えば、火炉11と、燃焼ガス通路12と、煙道13とを有している。
【0017】
火炉11は、例えば、四角筒の中空形状をなして鉛直方向に沿って設置されている。火炉11の下部領域には燃焼装置として複数のバーナ14が設けられている。複数のバーナ14は、それぞれ複数の微粉燃料供給管19を介して複数のミル(粉砕機)15に連結されている。ミル15は、固体燃料を粉砕して微粉燃料を生成する。微粉燃料は、一次空気と混合され、微粉燃料混合気としてバーナ14に供給される。バーナ14から火炉11に投入された微粉燃料混合気が着火し、バーナ14から別途投入される二次空気と反応することで火炎を形成する。これにより、高温の燃焼ガスが火炉11内を上昇し、燃焼ガス通路12に流入する。
【0018】
燃焼ガス通路12は、火炉11の鉛直方向上部に連結されている。燃焼ガス通路12には、燃焼ガスの熱を回収するための熱交換器(図示略)が設けられている。熱交換器として、過熱器、再熱器、及び節炭器等が挙げられる。これら熱交換器で燃焼ガスと熱交換されることにより蒸気が生成され、上述した蒸気タービン2に供給される。
【0019】
燃焼ガス通路12の下流側には、熱交換器で熱回収された燃焼ガスが排出される煙道13が連結されている。煙道13には、風道16との間に空気予熱器(エアヒータ)17が設けられており、風道16を流れる空気と、煙道13を流れる燃焼ガスとの間で熱交換を行い、ミル15に供給する一次空気やバーナ14に供給する二次空気を加熱することで、水や蒸気との熱交換後の燃焼ガスから、さらに熱回収を行う。
【0020】
また、煙道13には、空気予熱器17よりも上流側の位置に、脱硝装置20が設けられている。脱硝装置20は、アンモニア、尿素水等の窒素酸化物を還元する作用を有する還元剤を、煙道13内を流通する燃焼ガスに供給し、還元剤が供給された燃焼ガス中の窒素酸化物(NOx)と還元剤との反応を、脱硝装置20内に設置された脱硝触媒の触媒作用により促進させることで、燃焼ガス中の窒素酸化物を除去、低減するものである。なお、脱硝装置20の詳細については後述する。
【0021】
煙道13の空気予熱器17より下流側には、ガスダクト18が連結されている。ガスダクト18には、燃焼ガス中の灰などを除去する電気集じん機などの集じん装置21、硫黄酸化物を除去する脱硫装置などの環境装置22、また、それらの環境装置に排ガスを導くための誘引通風機(IDF:Induced Draft Fan)23が設けられている。ガスダクト18の下流端部は、煙突24に連結されており、環境装置22で処理された燃焼ガスが、排ガスとして系外に排出される。
【0022】
図3は、本実施形態に係る脱硝装置20の概略構成図である。脱硝装置20は、例えば、燃焼ガスGの流れ方向上流側から、入口ダクト32、反応部31、出口ダクト33を備えている。脱硝装置20では、入口ダクト32から導入された燃焼ガスGに対して、還元剤であるアンモニアが注入され、反応部31において脱硝処理されて、出口ダクト33に排出される。
【0023】
入口ダクト32には、アンモニアを注入するためのアンモニア注入器34が設けられている。アンモニア注入器34は、アンモニア供給配管35に連結されている。アンモニア供給配管35には、アンモニアの流量を計測するアンモニア流量計39、及びアンモニアの流量を調整するためのアンモニア流量調節弁40が設けられている。アンモニア流量調節弁40の弁開度が後述するフィードバック制御装置50によって制御されることにより、入口ダクト32を流通する燃焼ガスG中のNOx濃度に見合ったアンモニアがアンモニア注入器34から注入される。
【0024】
反応部31には、脱硝触媒が充填されている。反応部31に導入された燃焼ガスG中のNOxは、アンモニア注入器34から供給されるアンモニアと、反応部31に充填された脱硝触媒のはたらきによって、無害な水蒸気と窒素ガスに分解されることで、除去される。
【0025】
通常、脱硝装置20の運用は、燃焼ガスGの発生源(例えばボイラ10等)の負荷変化時など、入口ダクト32における燃焼ガスG中のNOx濃度(以降、「入口NOx濃度」と言う。)が変動する場合においても、出口ダクト33における燃焼ガスG中のNOx濃度(以降、「出口NOx濃度」と言う。)が規定値以下になるように制御される。ここで、入口NOx濃度は入口NOx分析計37で、出口NOx濃度は出口NOx分析計38で計測される。
【0026】
次に、本実施形態に係るフィードバック制御装置50について図面を参照して説明する。
図4は、本実施形態に係るフィードバック制御装置50が備える機能の一例を示した機能構成図である。
フィードバック制御装置50は、例えば、マイクロコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)、主記憶装置(Main Memory)、二次記憶装置(Secondary storage:メモリ)などを備えている。
【0027】
フィードバック制御装置50が備える機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で二次記憶装置などに記憶されており、このプログラムをCPU(プロセッサ)が主記憶装置に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、二次記憶装置に予めインストールされている形態や、他の非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体の一例として、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどが挙げられる。
【0028】
本実施形態に係るフィードバック制御装置50は、制御ゲイン(制御感度)を変更可能な制御器52を備えている。例えば、フィードバック制御装置50は、入力信号(本実施形態においては、アンモニア流量計39によって計測されたアンモニア流量)と目標値(本実施形態においては、アンモニア流量目標値)との偏差を演算する減算器51と、偏差に対してフィードバック演算を行う制御器52と、制御器52の制御ゲインを変更する制御ゲイン変更部(制御感度変更手段)53と、変更判定部54とを備えている。本実施形態における制御ゲインとは、制御弁の開閉速度(操作端の操作量変化幅)に関する感度である。例えば、制御ゲインを低下させると、対象となる制御弁が指令を受けてから目標開度にいたるまでの所要時間が長くなる、つまり弁の開閉スピードが遅くなる。
【0029】
変更判定部54は、例えば、プラント整定判定部(プラント整定判定手段)70と、ハンチング判定部(ハンチング判定手段)80と、タイミング判定部(タイミング判定手段)90とを備えている。
【0030】
制御器52は、例えば、偏差に対してPI(Proportional-Integral)制御を行う。なお、制御器52が実行するフィードバック演算はこの例に限られない。例えば、PID(Proportional-Integral-Differential)制御を行うこととしてもよいし、フィードバックに関する他の公知の演算を行うこととしてもよい。
【0031】
制御ゲイン変更部53は、複数の制御ゲインを備えている。例えば、通常時に採用する第1制御ゲインと、ハンチング抑制時に採用する第2制御ゲインとを保有している。第1制御ゲイン及び第2制御ゲインのそれぞれは、複数の制御ゲインの組み合わせであってもよい。たとえば、制御器52がPI制御器であった場合、第1制御ゲインは、比例制御用ゲインと、積分制御用ゲインとの組み合わせであってもよい。第2制御ゲインについても同様である。
【0032】
プラント整定判定部70は、発電プラント1の挙動が整定しているか否かを判定する。例えば、プラント整定判定部70は、発電プラント1の要求出力指令が一定である状態が所定期間維持された場合に、プラントの挙動が整定していると判定する。例えば、定格出力での運転や一定の部分出力での運転など、プラントの出力が変動していない時は整定している状態であり、起動時、停止時、及び負荷変化時など、プラントの出力が変動している間は整定していない状態である。
【0033】
図5は、プラント整定判定部70が備える機能の一例を示した機能構成図である。
図5に示すように、プラント整定判定部70は、例えば、上昇中判定回路71、降下中判定回路72、OR回路(論理和回路)73、NOT回路(否定回路)74、及びオンディレータイマ75を備えている。
【0034】
上昇中判定回路71は、例えば、発電プラント1の発電機出力指令MWDが上昇中か否かを判定し、上昇中である場合にオン信号「1」を出力する。降下中判定回路72は、発電プラント1の発電機出力指令MWDが降下中か否かを判定し、降下中である場合にオン信号「1」を出力する。OR回路73は、上昇中判定回路71の出力と降下中判定回路72との論理和を出力する。これにより、いずれか一方の出力が「1」の場合には、OR回路73の出力はオン信号「1」となる。いずれの出力も「0」の場合には、OR回路73の出力はオフ信号「0」となる。
【0035】
NOT回路74は、OR回路73の出力の否定信号を出力する。すなわち、OR回路73の出力が「1」の場合は、オフ信号「0」を、OR回路73の出力が「0」の場合は、オン信号「1」を出力する。
オンディレータイマ75は、NOT回路74からオン出力が入力されてから所定期間後にもオン入力が継続されている場合に、オン信号「1」を出力する。所定期間は、例えば、数十分(具体的には、30分程度)に設定されている。これにより、例えば、発電プラント1の発電機出力指令MWDが上昇も降下もしない状態となってから所定期間後に、発電プラント1が整定していることを示すプラント整定信号S1が出力される。
【0036】
なお、発電プラント1が整定しているか否かの判断はこの態様に限定されない。例えば、発電機出力が所定範囲内である状態が所定期間維持された場合、又は、発電機出力の変動量が所定範囲内である状態が所定期間維持された場合に、発電プラント1が整定していると判定することとしてもよい。
また、プラント整定判定部70の具体的な制御ロジックについても上記例に限られず、様々な公知の制御ロジックを適宜設計することにより同様の判定を実現することとしてもよい。
【0037】
ハンチング判定部80は、ハンチングが発生しているか否かを判定する。ハンチング判定部80は、例えば、入力信号の変化率に基づいてハンチングが発生しているか否かを判定する。例えば、ハンチング判定部80は、入力信号の変化率が所定の閾値以上である場合に、ハンチングが発生していると判定する。
【0038】
より具体的には、ハンチング判定部80は、入力信号の変化率が所定の閾値以上である第1条件、入力信号の上限値が許容上限値以上である第2条件、入力信号の下限値が許容下限値以下である第3条件が、所定期間内にすべて満たされた場合に、ハンチングが発生していると判定する。
【0039】
図6は、ハンチング判定部80が備える機能の一例を示した機能構成図である。
図6に示すように、ハンチング判定部80は、例えば、上限値比較回路81、オフディレータイマ82、下限値比較回路83、オフディレータイマ84、及びAND回路(論理積回路)85を備えている。また、ハンチング判定部80は、微分回路86、変化率判定回路87、オフディレータイマ88、及びAND回路89を備えている。
【0040】
上限値比較回路81は、入力信号の値と許容上限値とを比較し、入力信号の値が許容上限値以上である場合にオン信号「1」を出力する。オフディレータイマ82は、上限値比較回路81からオン信号が入力された場合にオン信号「1」を出力し、オフ信号「0」が出力されてから設定期間後にオフ信号「0」を出力する。設定期間は実機での調整次第であるが、例えば5分程度に設定されている。
これにより、上限値比較回路81の出力信号S21が設定期間内にオフからオンに変化した場合には、オン信号が維持されることとなる。
【0041】
下限値比較回路83は、入力信号の値と許容下限値とを比較し、入力信号の値が許容下限値以下である場合にオン信号「1」を出力する。オフディレータイマ84は、下限値比較回路83からオン信号が入力された場合にオン信号「1」を出力し、オフ信号「0」が出力されてから設定期間後にオフ信号「0」を出力する。設定期間は実機での調整次第であるが、例えば5分程度に設定されている。これにより、下限値比較回路83の出力信号S23が設定期間内にオフからオンに変化した場合には、オン信号が維持されることとなる。
AND回路85は、オフディレータイマ82,84からの出力信号S22、S24の論理積を出力する。
【0042】
微分回路86は、入力信号を微分して出力する。変化率判定回路87は、微分回路86からの出力、換言すると、入力信号の変化率(傾き)が所定の閾値以上である場合に、オン信号「1」を出力する。オフディレータイマ88は、変化率判定回路87からオン信号が入力された場合にオン信号「1」を出力し、オフ信号「0」が出力されてから設定期間後にオフ信号「0」を出力する。設定期間は実機での調整次第であるが、例えば5分程度に設定されている。これにより、変化率判定回路87の出力信号が設定期間内にオフからオンに変化した場合には、オン信号が維持されることとなる。
【0043】
AND回路89は、AND回路85の出力信号S25と、オフディレータイマ88の出力信号S26との論理積を出力する。
【0044】
図7は、ハンチング判定部80の動作を説明するためのタイミングチャートである。例えば、
図7に示すような入力信号U(例えば、NH3流量)が入力された場合、時刻t1において入力信号Uが許容上限値以上となると、上限値比較回路81の出力信号S21がオフ「0」からオン「1」となり、オフディレータイマ82の出力信号S22もオフ「0」からオン「1」となり、この状態が維持される。
【0045】
続いて、時刻t3において、入力信号Uが許容下限値以下となると、下限値比較回路83の出力信号S23がオフ「0」からオン「1」となり、オフディレータイマ84の出力信号S24もオフ「0」からオン「1」となり、この状態が維持される。
【0046】
また、時刻t3において、オフディレータイマ82,84からの出力信号S22、S24がともにオン「1」となると、AND回路85の出力信号S25がオフ「0」からオン「1」となる。
【0047】
時刻t1からt5の期間において、上限値比較回路81、下限値比較回路83の出力信号S21、S23は、入力信号Uの変動に伴いオフ「0」とオン「1」の状態を繰り返すが、この繰り返しがオフディレータイマ82、84に設定されている設定期間よりも短い周期で発生している期間においては、
図7に示すように、オフディレータイマ82,84の出力信号S22、S24は、オン「1」が保持される。
そして、時刻t4において上限値比較回路81の出力信号S21がオフとなり、その後、オフディレータイマ82に設定されている設定期間にわたってオフ状態が維持されると、時刻t4から設定期間後である時刻t6において、オフディレータイマ82の出力信号S22がオフ「0」となる。これにより、AND回路85の出力信号S25がオン「1」からオフ「0」に変化する。また、仮に上限値比較回路81の出力信号S21とオフディレータイマ82の出力信号S22がオンの時間帯であっても、下限値比較回路83の出力信号S23とオフディレータイマ84の出力信号S24がオフとなった場合は、AND回路85の出力信号S25がオン「1」からオフ「0」に変化する。
【0048】
また、時刻t2において、入力信号Uの変化率(制御ロジックとして正負は問わず)が所定値以上となると、変化率判定回路87(
図7では不図示)からオン信号「1」が出力され、これに伴い、オフディレータイマ88の出力信号S26もオフ「0」からオン「1」に変化する。また、変化率判定回路87の出力信号は、時刻t2以降において、入力信号Uの変動に伴いオフ「0」とオン「1」の状態を繰り返すが、この繰り返しがオフディレータイマ88に設定されている設定期間よりも短い周期で発生している期間においては、
図7に示すように、オフディレータイマ88の出力信号S26は、オン「1」が維持される。そして、変化率判定回路87の出力信号がオフ「0」となってから所定の設定期間後である時刻t5において、オフディレータイマ88の出力信号S26がオフ「0」となる。
【0049】
これにより、AND回路89の出力信号であるハンチング信号S2は、
図7に示すように時刻t3~t5の期間においてオン信号「1」が出力される。換言すると、ハンチング判定部80は、時刻t3~t5の期間においてハンチングが発生していると判定し、この期間においてハンチングが発生していることを示すハンチング信号S2(オン信号)を出力する。
【0050】
なお、ハンチングが発生しているか否かの判定はこの態様に限定されない。例えば、許容上限値及び許容下限値を用いる代わりに入力信号の振幅を用いてハンチングの発生を判定することとしてもよい。また、ハンチング発生の判定手法として公知の判定手法を用いることとしてもよい。
【0051】
タイミング判定部90は、例えば、入力信号の値及び入力信号の変化の方向に基づいて、制御器52の制御ゲイン(制御感度)を低下させるタイミングか否かを判定する。
【0052】
例えば、タイミング判定部90は、入力信号の値が目標値に基づいて決定される所定の範囲内であり、かつ、入力信号が降下している場合に、変更タイミングであると判定する。ここで、所定の範囲は、目標値付近(例えば、目標値+aから目標値-bの範囲、ここで、a≧0、b≧0であり、aとbとは同じ値でもよいし、異なる値でもよい。)に設定されるのが好ましい。より好ましくは、所定の範囲は、目標値よりも小さい範囲(例えば、目標値-cから目標値-d、ここで、c≧0、d>c)に設定されるとよい。
タイミング判定部90は、変更タイミングであると判定した場合に、オン状態「1」のタイミング信号S3を出力する。
【0053】
図8は、タイミング判定部90の動作を説明するためのタイミングチャートである。例えば、
図8に示すような入力信号U(例えば、NH3流量)が入力された場合、時刻T1~T2、T3~T4、T5~T6、T7~T8の期間において、タイミング判定部90は、オン信号のタイミング信号S3を出力する。
【0054】
なお、タイミング判定部90は、更に、入力信号の変化率を加味して変更タイミングの判定を行うこととしてもよい。例えば、入力信号の値、入力信号の変化の方向、及び入力信号の変化率に基づいて変更タイミングか否かを判定することとしてもよい。より具体的には、入力信号の値が目標値に基づいて決定される所定の範囲内であり、かつ、入力信号が降下しており、かつ、入力信号の変化率が所定の閾値以上である場合に、変更タイミングであると判定してオン信号のタイミング信号S3を出力してもよい。
【0055】
プラント整定判定部70の出力信号であるプラント整定信号S1、ハンチング判定部80の出力信号であるハンチング信号S2、及びタイミング判定部90の出力であるタイミング信号S3は、AND回路(論理積回路)100に出力される。AND回路100は、プラント整定信号S1、ハンチング信号S2、及びタイミング信号S3の全てがオン信号「1」であるときに、オン信号「1」の制御感度変更信号S4を出力する。
【0056】
例えば、
図9に、プラントが整定している状態において入力信号Uが入力された場合のプラント整定信号S1、ハンチング信号S2、タイミング信号S3及び制御感度変更信号S4を示す。
図9に示すように、入力信号Uが入力された場合には、時刻T3~T4、T5~T6、T7~T8の期間において、オン信号「1」の制御感度変更信号S4が出力される。
【0057】
制御ゲイン変更部53は、制御感度変更信号S4がオンの期間において、制御器52の制御ゲインをハンチング抑制用の制御ゲインである第2制御ゲインに切り替える。第2制御ゲインは、第1制御ゲインよりも小さい値(低感度)に設定されている。また、第1制御ゲインから第2制御ゲインへの変更時、第2制御ゲインから第1制御ゲインへの変更時において、制御ゲイン変更部53は、所定のレートでゲインを変更する。これにより、制御ゲインが所定のレートで緩やかに変更されることとなる。制御偏差に応じて操作端の操作量変化幅が変化するため、ゲインを瞬時に変更すると操作量変化幅が突変する可能性がある。そのため、突変を防止する為に所定のレートで緩やかに変更することが好ましい。
【0058】
次に、本実施形態に係るフィードバック制御装置50の動作について説明する。
まず、減算器51(
図4参照)には、アンモニア流量計39(
図3参照)によって計測されたアンモニア流量が入力信号として減算器51に入力されると共に、入口NOx分析計37によって計測された入口NOx濃度から、目標のNOx濃度まで脱硝するために必要となるアンモニア流量が目標値として入力される。目標値は、例えば、入口NOx濃度を、脱硝装置20における脱硝反応に基づく所定の演算式に代入することで算出される。
【0059】
減算器51は、入力信号であるアンモニア流量と目標値との偏差を演算し、制御器52に出力する。制御器52は、制御ゲイン変更部53によって設定された制御ゲインを用いてPI制御を行い、アンモニア流量調節弁40の弁開度指令を算出する。具体的には、制御ゲイン変更部53は、上述したAND回路100からオフ信号「0」である制御感度変更信号が入力されている期間においては、第1制御ゲインを制御器52に設定し、AND回路100からオン信号「1」である制御感度変更信号が入力されている期間においては、第2制御ゲインを制御器52に設定する。また、制御ゲイン変更部53は、第1制御ゲインから第2制御ゲインへの切り替え時、及び、第2制御ゲインから第1制御ゲインへの切り替え時においては、所定のレートで制御ゲインを変更する。
【0060】
これにより、例えば、発電プラント1が整定状態であり、かつ、ハンチングが発生していると判定される期間であって、入力信号であるアンモニア流量が所定の範囲内、かつ、降下状態にある期間において、オン信号「1」の制御感度変更信号S4が出力されることにより、制御器52の制御ゲインとして比較的低感度である第2制御ゲインが設定される。
【0061】
制御器52から出力された弁開度指令は、アンモニア流量調節弁40に出力され、アンモニア流量調節弁40の弁開度が制御される。これにより、脱硝装置20の出口NOx濃度のハンチングを抑えることができ、脱硝装置20の出口NOx値を所定の規制値範囲内に維持することが可能となる。
【0062】
以上、説明してきたように、本実施形態に係るフィードバック制御装置50及びフィードバック制御方法並びにプログラムによれば、入力信号の変化率が所定の閾値以上である場合に、ハンチングが発生していると判定するハンチング判定部80と、入力信号の値及び変化の方向に基づいて、制御ゲインを低下させる変更タイミングか否かを判定するタイミング判定部90と、ハンチングが発生していると判定され、かつ、変更タイミングであると判定された場合に、制御ゲインを低下させる制御ゲイン変更部53とを備えている。
【0063】
このように、ハンチングが発生している場合に、入力信号の値及び変化の方向に基づいて制御ゲインを低下させるタイミングを決定するので、制御対象に対して適切なタイミングで制御ゲインを変更することが可能となる。これにより、ハンチング現象抑制の信頼性を向上させることが可能となる。
【0064】
具体的には、タイミング判定部90は、入力信号の値が目標値以下に設定された所定の範囲内であり、かつ、入力信号が降下している場合に制御ゲインを低下させるタイミングであると判定する。例えば、
図10に示すように、入力信号が領域3(更に好ましくは上述した所定の範囲内)にある場合に制御ゲインを低下させる。この領域3において、制御ゲインを低下させることにより、後述するように、ハンチングを助長させることを回避することができ、ハンチング収束に向けて適切な操作端制御を行うことが可能となる。
【0065】
例えば、
図10に示す領域1、2において制御ゲインを低下させる場合、以下に説明するように、ハンチングを助長してしまう可能性がある。
【0066】
例えば、入力信号(プロセス値)が目標値以上であり、かつ、入力信号が上昇している領域である領域1において制御ゲインを低下させると、入力信号の上昇にアンモニア流量調節弁(操作端)40の増加(開度上昇)が追いつかず、許容上限値よりも大きな値に設定された警報点まで入力信号が上昇してしまい、ハンチングを収束するどころか助長してしまう可能性がある。
【0067】
また、入力信号が目標値以上であり、かつ、入力信号が降下している領域である領域2において制御ゲインを低下させる場合には、領域1のときよりはハンチング収束までの時間短縮を望むことが可能である。しかしながら、この領域2は、アンモニア流量が目標値よりも大きい領域であることから、アンモニア流量調節弁40の弁開度は開き気味の状態から徐々に閉める方向に制御される。この過程において、制御ゲインを低下させてしまうと、目標値に向けてのアンモニア流量調節弁40の絞りをゆるむ方向に制御する(弁を閉めるスピードが低下する)こととなるため、目標値に対して多めのアンモニアが注入されることとなる。これにより、入口NOx濃度に対してアンモニア注入量が過多の状態がしばらく続いてしまうこととなり、結果として、ハンチングを助長してしまう可能性がある。
領域3であれば、アンモニア流量調節弁40を目標値から徐々に絞る過程において、アンモニア流量調節弁40の絞りの速度を緩和させることができる。これにより、ハンチングを助長させることを回避することができ、ハンチング収束に向けて適切な操作端制御を行うことが可能となる。なお、調節弁の絞りの速度を緩和させるとは、調節弁の動作スピード(操作端の操作量変化幅)を緩和して弁の開閉スピードが低下することである。
【0068】
なお、本実施形態では、脱硝装置20のアンモニア流量のフィードバック制御に本開示のフィードバック制御装置50を適用する場合について例示したが、これに限られない。本開示のフィードバック制御装置50は、例えば、プラントのプロセス値(温度、圧力、流量等)の制御に適用可能である。また、プロセス値に操作量を与える操作端の一例として、ダンパ、調節弁、ヒーター、シリンダー等が挙げられる。
【0069】
また、本実施形態では、目標値、さらに言えば、許容上限値よりも警報値が大きい値に設定されている場合において、入力信号の値が目標値以下に設定された所定の範囲内であり、かつ、入力信号が降下している場合に制御ゲインを低下させるタイミングであると判定することとしたが、ゲイン低下のタイミングは、制御対象の特性やプロセス値の規定値、警報値などに応じて適宜規定する必要がある。
【0070】
例えば、
図11に示すように、目標値、さらに言えば、許容下限値よりも警報値が小さい値に設定されている場合には、入力信号が目標値以下であり、かつ、入力信号が上昇している領域(
図11の領域4)において制御ゲインを低下させるとよい。
【0071】
例えば、入力信号(例えば、制御対象であるプロセス値)が上昇しており、すなわち、警報値から離れていく方向であり、かつ、入力信号が目標値を超えた領域1で制御ゲインを低下させると、入力信号の上昇抑制の妨げになる可能性がある。
【0072】
また、入力信号が降下しており、すなわち、警報値へ近づいていく方向であり、かつ、入力信号が目標値よりも大きい領域2で制御ゲインを低下させると、入力信号が警報値に向かう勢いが加速する場合があり、入力信号の目標値への収束の妨げになる可能性がある。
【0073】
また、入力信号が降下しており、かつ、入力信号が目標値以下の領域3では、上述した領域2と同様の事象が発生する可能性があり、この場合もハンチングを助長させる可能性がある。
【0074】
これに対し、入力信号が上昇しており、かつ、入力信号(プロセス値)が目標値以下の領域4は、入力信号の変化方向は安全側であり、かつ、操作端指令値も入力信号が目標値付近であれば整定ポイントであることから、ハンチングを助長させるような状況が起こりにくい。したがって、領域4において、制御ゲインを低下させることにより、ハンチングを助長させることを回避することができ、ハンチング収束に向けて適切な操作端制御を行うことが可能となる。
【0075】
〔第2実施形態〕
次に、本開示の第2実施形態に係るフィードバック制御装置50aについて図面を参照して説明する。上述した第1実施形態では、制御器52の制御ゲインを入力信号の挙動に応じて変更していたが、第2実施形態では、制御器52の制御ゲインを変更するのではなく、目標値(アンモニア流量目標値)を設定する際に用いられるバイアス量の変化速度に関する制御パラメータを変更する点で上述した第1実施形態と異なる。このように、本実施形態では、制御器52の制御ゲインを直接的に変更するのではなく、フィードバック制御に用いられる目標値に加算されるバイアス量を変更することで、間接的に制御感度を可変とする。
以下、本実施形態に係るフィードバック制御装置50aについて、第1実施形態と共通の構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について主に説明する。
【0076】
図12は、本実施形態に係るフィードバック制御装置50aが備える機能の一例を示した機能構成図である。
図12に示すように、本実施形態に係るフィードバック制御装置50aは、アンモニア目標値設定部55と、減算器51と、制御器52とを備えている。
【0077】
アンモニア目標値設定部55は、乗算器531、加算器532、及びバイアス量設定部533を備えている。
乗算器531は、入口NOx分析計37によって計測された入口NOx濃度と、必要モル比(NOx1モルを還元するために必要なアンモニアのモル数。通常の脱硝反応においては、モル比=1が設定される。)とを乗算することにより、アンモニア要求値(NH3要求値)を算出する。
加算器532は、アンモニア要求値(制御要求値)に、後述するアンモニアバイアス量(NH3バイアス量)を加算することにより、アンモニア目標値(NH3目標値)を算出する。バイアス量設定部(バイアス量設定手段)533は、アンモニアバイアス量を算出する。
【0078】
図13は、バイアス量設定部533が備える機能の一例を示した機能構成図である。
図13に示すように、バイアス量設定部533は、例えば、減算器541、関数発生器542、関数発生器543、一次遅れ要素544、乗算器545、及び時定数変更部(制御感度変更手段)546を備えている。
【0079】
減算器541は、出口NOx分析計38によって計測された出口NOx信号と、予め設定されているNOx目標値との偏差であるNOx偏差を算出し、出力する。
関数発生器542は、予め設定されているバイアス関数を用いてNOx偏差からバイアス基準量を算出し、出力する。例えば、バイアス関数は、NOx偏差がプラス方向に大きくなるほど、バイアス基準量がプラス方向に大きくなり、NOx偏差がマイナス方向に大きくなるほど、バイアス基準量がマイナスの方向に大きくなるように設定されている。すなわち、バイアス基準量は、出口NOx濃度の変動を効果的に緩和させるための補正量であり、偏差が大きいほどバイアス量を大きくして弁開度指令値を増やす方向になる。また、バイアス関数には、出口NOx濃度の制御性向上のために、NOx偏差がゼロ付近にある場合には、バイアス基準量をゼロとするためのデットバンドが設けられていてもよい。
関数発生器542のバイアス関数は、脱硝装置20の構造、内蔵された脱硝触媒の構造、成分、性能、排ガス発生源の特性等により適宜規定することが可能である。
【0080】
関数発生器543は、予め設定された補正ゲイン関数を用いて、NOx偏差から補正ゲインを算出し、出力する。例えば、補正ゲイン関数は、NOx偏差の絶対値が大きくなるほど、補正ゲインが大きくなるような関数とされている。NOx偏差が所定範囲内の場合には、補正ゲインをゼロとしてもよい。補正ゲインが変わることでNH3アンモニアバイアス量が変化しアンモニア要求値が変化するため、アンモニア流量調節弁40(操作端)の操作量変化幅に繋がる。
【0081】
一次遅れ要素544は、時定数変更部546によって設定された時定数で関数発生器543から出力された補正ゲインを補正して出力する。これにより、一次遅れ要素544から出力される補正ゲイン(遅れ補正ゲイン)は、緩やかに変化することとなる。
【0082】
時定数変更部546は、複数の時定数(バイアス量の変化速度に関する制御パラメータ)を保有しており、変更判定部54(
図3参照)から出力される制御感度変更信号に基づいて、一次遅れ要素544が用いる時定数を変更する。例えば、制御感度変更信号がオフ信号「0」の場合に、第1時定数を設定し、制御感度変更信号がオン信号「1」の場合に、第2時定数を設定する。すなわち、発電プラント1が整定状態であり、かつ、ハンチングが発生していると判定される期間であって、入力信号であるアンモニア流量が目標値以下、かつ、降下状態にある期間において、オン信号である制御感度変更信号が出力され、時定数として第2時定数が設定される。
第2時定数は、第1時定数よりも大きな値に設定されている。すなわち、第2時定数が設定されているときの方が、第1時定数が設定されているときよりも補正ゲインの変化が緩やかとなる。
【0083】
乗算器545は、関数発生器542からのバイアス基準量に対して一次遅れ要素544から出力された遅れ補正ゲインを乗じることにより、アンモニアバイアス量(NH3バイアス量)を算出する。算出されたアンモニアバイアス量は、
図12に示したアンモニア目標値設定部55の加算器532に入力される。
【0084】
アンモニア目標値設定部55(
図12参照)によって設定されたアンモニア目標値は、減算器51に入力される。減算器51において、入力信号であるアンモニア供給量とアンモニア目標値との偏差が算出され、算出された偏差に対して制御器52において比例積分演算が行われることにより、弁開度指令が算出される。
【0085】
次に、本実施形態に係るフィードバック制御装置50の動作について、
図12及び
図13を参照して説明する。
【0086】
図12に示すように、まず、乗算器531において、入口NOx分析計37(
図3参照)によって計測された入口NOx濃度と必要モル比とが乗算されてアンモニア要求値(NH3要求値)が算出され、加算器532において、アンモニア要求値にバイアス量設定部533から出力されたアンモニアバイアス量(NH3バイアス量)が加算されて、アンモニア目標値(NH3目標値)が算出される。
【0087】
減算器51においてアンモニア目標値と、アンモニア流量計39(
図3参照)によって計測されたアンモニア流量との偏差であるアンモニア偏差(NH3偏差)が演算され、アンモニア偏差に対して所定の制御演算(例えば、比例積分制御)が制御器52において実行されることにより、アンモニア流量調節弁40の弁開度指令値が算出される。ここで、制御器52の制御ゲインは、第1実施形態と同様に、変更判定部54から出力される制御感度切替信号に基づいて変更される。なお、上述した第1実施形態では、ハンチング判定部80及びタイミング判定部90に入力される入力信号としてアンモニア流量を用いていたが、本実施形態においては、アンモニア流量に代えて出口NOx濃度を入力信号として用いてもよい。
これにより、入口NOx濃度に応じた適切なアンモニア量がアンモニア注入器34から反応部31に供給されることとなる。
【0088】
次に、アンモニアバイアス量の算出工程について、
図13を参照して説明する。
まず、減算器541において、出口NOx分析計38(
図3参照)によって計測された出口NOx濃度とNOx濃度目標値との偏差であるNOx偏差が算出され、関数発生器542において、NOx偏差からバイアス基準量が算出される。
【0089】
他方、関数発生器543において、NOx偏差から補正ゲインが算出され、一次遅れ要素544を介して遅れ補正ゲインが出力される。この場合において、一次遅れ要素544の時定数は、変更判定部54から出力される制御感度切替信号に基づいて変更される。すなわち、制御感度切替信号がオン信号の場合に、第2時定数が設定され、制御感度切替信号がオフ信号の場合に、第1時定数が設定される。第2時定数は、第1時定数よりも大きな値に設定されているので、制御感度切替信号がオン信号の場合には、通常時よりも補正ゲインの変化が緩やかになる。
【0090】
乗算器545において、バイアス基準量に遅れ補正ゲインが乗算されることにより、アンモニアバイアス量が算出され、このアンモニアバイアス量が加算器532に出力され、アンモニア目標値が算出される。
【0091】
以上説明してきたように、本実施形態に係るフィードバック制御装置50aによれば、アンモニアバイアス量を算出するバイアス量設定部533と、制御要求値であるアンモニア要求値にアンモニアバイアス量を加算することでアンモニア目標値を算出する加算器532とを有するアンモニア目標値設定部55を備えている。そして、バイアス量設定部533は、変更判定部54からの制御感度切替信号に基づいて、バイアス量の変化速度に関する制御パラメータである時定数を変更する時定数変更部546を備えている。
【0092】
このように、入力信号の挙動に応じて、フィードバック制御の目標値を設定する際に用いるバイアス量の変化速度を変更するので、適切なタイミングで制御感度を低下させることが可能となる。これにより、ハンチングを助長させることを回避でき、ハンチングを速やかに収束させることが可能となる。
【0093】
以上、本開示について実施形態を用いて説明したが、本開示の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本開示の技術的範囲に含まれる。また、上記実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0094】
以上説明した各実施形態に記載のフィードバック制御装置及びフィードバック制御方法並びにプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0095】
本開示の第1態様に係るフィードバック制御装置(50、50a)は、入力信号の変化率が所定の閾値以上である場合に、ハンチングが発生していると判定するハンチング判定手段(80)と、前記入力信号の値及び変化の方向に基づいて、制御感度を低下させる変更タイミングか否かを判定するタイミング判定手段(90)と、前記ハンチングが発生していると判定され、前記変更タイミングであると判定された場合に、制御感度を低下させる制御感度変更手段(53,546)とを備える。
【0096】
この態様によれば、例えば、ハンチングが発生していると判定された場合に、制御対象の入力信号(プロセス値)の挙動に応じた適切なタイミングでフィードバック制御の制御感度を低下させることが可能となる。これにより、ハンチング現象抑制の信頼性を向上させることができ、ハンチングを速やかに収束させることが可能となる。
【0097】
本開示の第2態様に係るフィードバック制御装置(50、50a)は、上記第1態様において、前記タイミング判定手段は、前記入力信号の値が目標値に基づいて決定される所定の範囲内であり、かつ、前記入力信号が降下している場合に、変更タイミングであると判定する。
【0098】
この態様によれば、入力信号の値が目標値に基づいて決定される所定の範囲内であり、かつ、入力信号が降下している場合に、フィードバック制御の制御感度を低下させる。これにより、例えば、目標値、更には、許容上限値よりも警報値が大きい値に設定されている場合において、ハンチングを助長させることを回避でき、ハンチング収束に向けて適切な操作端制御を行うことが可能となる。
【0099】
本開示の第3態様に係るフィードバック制御装置(50、50a)は、上記第2態様において、前記所定の範囲内は、前記目標値以下の範囲に設定されている。
【0100】
この態様によれば、ハンチング収束の抑制効果を更に高めることが可能となる。
【0101】
本開示の第4態様に係るフィードバック制御装置(50、50a)は、上記第1態様において、前記タイミング判定手段は、前記入力信号の値が目標値に基づいて決定される所定の範囲内であり、かつ、前記入力信号が上昇している場合に、変更タイミングであると判定する。
【0102】
この態様によれば、入力信号の値が目標値に基づいて決定される所定の範囲内であり、かつ、入力信号が上昇している場合に、フィードバック制御の制御感度を低下させる。これにより、例えば、目標値、更には、許容下限値よりも警報値が小さい値に設定されている場合において、ハンチングを助長させることを回避でき、ハンチング収束に向けて適切な操作端制御を行うことが可能となる。
【0103】
本開示の第5態様に係るフィードバック制御装置(50、50a)は、上記第4態様において、前記所定の範囲内は、前記目標値以下の範囲に設定されている。
【0104】
この態様によれば、ハンチング収束の抑制効果を更に高めることが可能となる。
【0105】
本開示の第6態様に係るフィードバック制御装置(50、50a)は、上記第1態様から第5態様のいずれかにおいて、制御ゲインを変更可能な制御器(52)を備え、前記制御感度変更手段(53)は、前記制御器の制御ゲインを変更する。
【0106】
この態様によれば、ハンチングが発生していると判定され、かつ、入力信号の値が目標値に基づいて決定される所定の範囲内であり、かつ、入力信号が上昇している場合に、制御器の制御ゲインが低下される。これにより、ハンチングを効果的に収束させることが可能となる。
【0107】
本開示の第7態様に係るフィードバック制御装置(50、50a)は、上記第1態様から第6態様のいずれかにおいて、前記ハンチング判定手段は、前記入力信号の変化率が所定の閾値以上である第1条件、前記入力信号の上限値が許容上限値以上である第2条件、前記入力信号の下限値が許容下限値以下である第3条件が、所定期間内にすべて満たされた場合に、ハンチングが発生していると判定する。
【0108】
この態様によれば、入力信号の変化率だけでなく、入力信号の上限値及び下限値も用いて、ハンチングが発生しているか否かを判定するので、ハンチング発生の判定精度を向上させることが可能となる。
【0109】
本開示の第8態様に係るフィードバック制御装置(50、50a)は、上記第7態様において、前記入力信号が前記許容上限値以上である状態が所定期間にわたって維持された場合に第2条件を満たすと判定し、前記入力信号が前記許容下限値以下である状態が所定期間にわたって維持された場合に第3条件を満たすと判定する。
【0110】
この態様によれば、第2条件、第3条件を満たすときと満たさないときとが頻繁に繰り返されることを抑制することができるので、安定したハンチング発生判定を実現することが可能となる。
【0111】
本開示の第9態様に係るフィードバック制御装置(50、50a)は、プラント(1)におけるプロセス値の制御に用いられる上記第1態様から第8態様のいずれかに係るフィードバック制御装置である。
【0112】
この態様によれば、プラントにおけるプロセス値のハンチングが助長されるのを回避することができ、ハンチングを速やかに収束させることが可能となる。
【0113】
本開示の第10態様に係るフィードバック制御装置(50、50a)は、上記第9態様において、前記プラントの挙動が整定しているか否かを判定するプラント整定判定手段(70)を備え、前記制御感度変更手段は、前記プラントの挙動が整定していると判定され、ハンチングが発生していると判定され、かつ、前記変更タイミングであると判定された場合に、前記制御感度を低下させる。
【0114】
例えば、プラントが整定していない状態では、プラントの挙動に応じて変動するプロセス値に合わせて操作端が動作していることから、このような期間に制御感度を低下させることは好ましくない。この態様によれば、プラントの挙動が整定しているか否かも加味して制御感度を変更するので、制御感度をより適切なタイミングで低下させることが可能となる。
【0115】
本開示の第11態様に係るフィードバック制御装置(50、50a)は、上記第1態様から第5態様のいずれか又は第7態様又は第9態様において、バイアス量を算出するバイアス量設定手段(533)を有し、制御要求値に前記バイアス量を加算することで目標値を算出する目標値算出手段(55)を備え、前記制御感度変更手段(546)は、前記バイアス量の変化速度に関する制御パラメータを変更する。
【0116】
この態様によれば、フィードバック制御の目標値を設定する際に用いるバイアス量の変化速度を変更することにより、間接的に制御感度を変更する。例えば、目標値に加算するバイアス量を大きくするほど、目標値と制御対象であるプロセス値との偏差は大きくなり、目標値に加算するバイアス量を小さくするほど、目標値と制御対象であるプロセス値との偏差は小さくなる。このように、バイアス量を変更することによって、制御ゲインを変更した場合と同様の効果を得ることが可能となる。
【0117】
本開示の第12態様に係るボイラ(10)は、上記第1態様から第11態様のいずれかに係るフィードバック制御装置を備える。
【0118】
本開示の第13態様に係る発電プラント(1)は、上記第12態様に係るボイラを備える。
【0119】
本開示の第14態様に係るフィードバック制御方法は、入力信号の変化率が所定の閾値以上である場合に、ハンチングが発生していると判定するハンチング判定工程と、前記入力信号の値及び変化の方向に基づいて、制御感度を低下させる変更タイミングか否かを判定するタイミング判定工程と、前記ハンチングが発生していると判定され、かつ、前記変更タイミングであると判定された場合に、制御感度を低下させる制御感度変更工程とをコンピュータが実行する。
【0120】
本開示の第15態様に係るプログラムは、コンピュータを上記第1態様から第11態様のいずれかに係るフィードバック制御装置として機能させる。
【符号の説明】
【0121】
1 :発電プラント
2 :蒸気タービン
3 :発電機
4 :復水器
10 :ボイラ
20 :脱硝装置
31 :反応部
32 :入口ダクト
33 :出口ダクト
34 :アンモニア注入器
37 :入口NOx分析計
38 :出口NOx分析計
39 :アンモニア流量計
40 :アンモニア流量調節弁
50 :フィードバック制御装置
50a :フィードバック制御装置
51 :減算器
52 :制御器
53 :制御ゲイン変更部
54 :変更判定部
55 :アンモニア目標値設定部
70 :プラント整定判定部
71 :上昇中判定回路
72 :降下中判定回路
73 :OR回路
74 :NOT回路
75 :オンディレータイマ
80 :ハンチング判定部
81 :上限値比較回路
82 :オフディレータイマ
83 :下限値比較回路
84 :オフディレータイマ
85 :AND回路
86 :微分回路
87 :変化率判定回路
88 :オフディレータイマ
89 :AND回路
90 :タイミング判定部
100 :AND回路
531 :乗算器
532 :加算器
533 :バイアス量設定部
541 :減算器
542 :関数発生器
543 :関数発生器
544 :一次遅れ要素
545 :乗算器
546 :時定数変更部