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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010880
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】作業車両の制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20240118BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20240118BHJP
   A01B 69/00 20060101ALI20240118BHJP
   A01D 34/64 20060101ALI20240118BHJP
   B62D 11/04 20060101ALN20240118BHJP
【FI】
B60L15/20 S
B60L1/00 L
A01B69/00 303A
A01D34/64 A
B62D11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112435
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000125853
【氏名又は名称】株式会社 神崎高級工機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 文彰
(72)【発明者】
【氏名】小倉 康平
【テーマコード(参考)】
2B043
2B083
3D052
5H125
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB19
2B043BA02
2B043BA09
2B043BB11
2B043DA01
2B043DA03
2B043DA15
2B083AA02
2B083BA12
2B083BA18
2B083DA03
2B083DA04
2B083HA21
2B083HA52
3D052DD01
3D052EE02
3D052FF03
3D052GG02
3D052HH03
5H125AA20
5H125AC12
5H125BA06
5H125BC25
5H125EE41
5H125EE51
5H125FF28
(57)【要約】
【課題】作業車両の制御システムにおいて、後進作業許可スイッチがOFF操作されている場合における安全性をさらに高くすることである。
【解決手段】作業車両の制御システムは、作業操作部の操作に応じて作業部の駆動を制御する制御装置であって、その後進時に作業部を強制停止する制御装置と、ユーザのON操作によって、作業車両の後進開始時における作業部の強制停止を無効にする後進作業許可スイッチとを含む。制御装置は、後進作業許可スイッチがON操作されている状態で、かつ作業操作部がON操作されている場合に、作業車両が後進した場合には作業部を駆動し、後進作業許可スイッチがOFF操作されている状態で、かつ作業操作部がON操作されている場合には、作業車両が後進中の場合と、作業車両が後進から停止に移行した場合との両方で、作業部を強制停止する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業部を備える作業車両の制御システムであって、
ユーザのON操作によって前記作業部の駆動を指示する作業操作部と、
前記ユーザの操作によって、前記作業車両の前進、後進及び停止を指示する走行操作部と、
前記作業操作部の操作に応じて前記作業部の駆動を制御し、前記走行操作部の操作に応じて前記作業車両の走行を制御する制御装置であって、その後進時に前記作業部を強制停止する前記制御装置と、
前記ユーザのON操作によって、前記作業車両の後進開始時における前記作業部の強制停止を無効にする後進作業許可スイッチと、を備え、
前記制御装置は、前記後進作業許可スイッチがON操作されている状態で、かつ前記作業操作部がON操作されている場合に、前記作業車両が後進した場合には前記作業部を駆動し、前記後進作業許可スイッチがOFF操作されている状態で、かつ前記作業操作部がON操作されている場合には、前記作業車両が後進中の場合と、前記作業車両が後進から停止に移行した場合との両方で、前記作業部を強制停止する、
作業車両の制御システム。
【請求項2】
作業部を備える作業車両の制御システムであって、
ユーザのON操作によって前記作業部の駆動を指示する作業操作部と、
前記ユーザの操作によって、前記作業車両の前進、後進及び停止を指示する走行操作部と、
前記作業操作部の操作に応じて前記作業部の駆動を制御し、前記走行操作部の操作に応じて前記作業車両の走行を制御する制御装置であって、その後進時に前記作業部を強制停止する前記制御装置と、
前記ユーザのON操作によって、前記作業車両の後進開始時における前記作業部の強制停止を無効にする後進作業許可スイッチと、を備え、
前記制御装置は、前記後進作業許可スイッチがON操作されている状態で、かつ前記作業操作部がON操作されている場合に、前記作業車両が後進した場合には前記作業部を駆動し、前記後進作業許可スイッチがOFF操作されている状態で、かつ前記作業操作部がON操作されている場合であって、前記作業車両が後進した場合には前記作業部を強制停止し、前記作業部を強制停止した後では、前記作業車両が後進を終了し、前記作業操作部がOFF操作に移行した後、ON操作に再度移行した場合にのみ、前記作業部を駆動する、
作業車両の制御システム。
【請求項3】
左右2つの車輪に接続され互いに独立して駆動される左右2つの走行モータと、
運転席の左右に分かれて配置され、前後方向の移動によって対応する側の前記車輪の回転方向及び回転速度を指示する2つの操作レバーと、
作業部と、を備える作業車両の制御システムであって、
ユーザのON操作によって前記作業部の駆動を指示する作業操作部と、
前記作業操作部の操作に応じて前記作業部の駆動を制御し、前記2つの操作レバーの操作に応じて前記作業車両の走行を制御する制御装置であって、その後進時に前記作業部を強制停止する前記制御装置と、
前記ユーザのON操作によって、前記作業車両の後進開始時における前記作業部の強制停止を無効にする後進作業許可スイッチと、を備え、
前記制御装置は、前記後進作業許可スイッチがOFF操作されている状態で、かつ前記作業操作部がON操作されている場合には、前記左右2つの車輪が後進側に回転すると判定された場合、及び、前記左右2つの車輪の平均速度が後進側の速度で所定値以上に高くなっていると判定された場合の少なくとも一方に該当する場合に、前記作業部を強制停止する、
作業車両の制御システム。
【請求項4】
請求項1に記載の作業車両の制御システムにおいて、
前記制御装置は、前記後進作業許可スイッチがOFF操作されている状態で、かつ前記作業操作部がON操作されている場合であって、前記作業車両が後進した場合には前記作業部を強制停止し、前記作業部を強制停止した後では、前記作業車両が後進を終了し、前記作業操作部がOFF操作に移行した後、ON操作に再度移行した場合にのみ、前記作業部を駆動する、
作業車両の制御システム。
【請求項5】
請求項4に記載の作業車両の制御システムにおいて、
左右2つの車輪に接続され互いに独立して駆動される左右2つの走行モータと、
運転席の左右に分かれて配置され、前後方向の移動によって対応する側の前記車輪の回転方向及び回転速度を指示する前記走行操作部としての2つの操作レバーと、を備え、
前記制御装置は、前記後進作業許可スイッチがOFF操作されている状態で、かつ前記作業操作部がON操作されている場合には、前記左右2つの車輪が後進側に回転すると判定された場合、及び、前記左右2つの車輪の平均速度が後進側の速度で所定値以上に高くなっていると判定された場合の少なくとも一方に該当する場合に、前記作業部を強制停止する、
作業車両の制御システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業部を備える作業車両の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
作業部を備える作業車両が従来から知られている。例えば、芝刈り作業を行うために駆動される作業部としての芝刈装置を備える芝刈車両が、従来から知られている。また、このような作業車両において、車輪を駆動する電動モータである走行モータと、作業部を駆動する電動モータである作業モータとを備える電動作業車両も考えられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、左右の電動モータである走行モータが、対応する側の車輪を駆動し、作業モータが、芝刈装置(作業部)の回転ブレードを駆動する作業車両が記載されている。
【0004】
特許文献1に記載された車両では、さらに、後進作業許可スイッチに対応するROSスイッチを有することが記載されている。車両は、芝刈装置を作動させた状態で、後進方向に移動しようとすると、通常時には芝刈装置のブレードが停止する。ROSスイッチを閉じる、すなわちオンした場合には、車両を後進方向に走行させる操作が行われた場合に、作業モータの操作を可能にするとされている。これにより、後進方向の芝刈りを中断することなく行えるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第10440880号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された車両では、後進作業許可スイッチがOFF操作されている場合における安全性を高くする観点からまだ改良の余地がある。
【0007】
本発明の目的は、作業車両の制御システムにおいて、後進作業許可スイッチがOFF操作されている場合における安全性をさらに高くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る第1の作業車両の制御システムは、作業部を備える作業車両の制御システムであって、ユーザのON操作によって前記作業部の駆動を指示する作業操作部と、前記ユーザの操作によって、前記作業車両の前進、後進及び停止を指示する走行操作部と、前記作業操作部の操作に応じて前記作業部の駆動を制御し、前記走行操作部の操作に応じて前記作業車両の走行を制御する制御装置であって、その後進時に前記作業部を強制停止する前記制御装置と、前記ユーザのON操作によって、前記作業車両の後進開始時における前記作業部の強制停止を無効にする後進作業許可スイッチと、を備え、前記制御装置は、前記後進作業許可スイッチがON操作されている状態で、かつ前記作業操作部がON操作されている場合に、前記作業車両が後進した場合には前記作業部を駆動し、前記後進作業許可スイッチがOFF操作されている状態で、かつ前記作業操作部がON操作されている場合には、前記作業車両が後進中の場合と、前記作業車両が後進から停止に移行した場合との両方で、前記作業部を強制停止する、作業車両の制御システムである。
【0009】
上記の第1の作業車両の制御システムによれば、作業の効率を向上できると共に、後進作業許可スイッチがOFF操作されている場合における車両の安全性をさらに高くすることができる。具体的には、後進作業許可スイッチがONされている場合の制御によって、車両が後進した場合でも、作業部を駆動できるので、車両の後進中の作業が可能となり、作業の効率を向上できる。また、後進作業許可スイッチがOFFされている場合の制御によって、車両が後進中の場合だけでなく、車両が後進から停止に移行した場合も、作業部が強制停止される。これにより、運転者の意思で後進作業許可スイッチをOFF操作している場合に、運転者が車両の進行方向前側が前進時より見えにくくなる後進時の、作動中の作業部に障害物が接近することをより防止しやすくなるので安全性をさらに高くできる。また、車両が後進から停止した場合に、運転者が意図せずに急に作業部の駆動が再開されることを防止できる。これによっても安全性をさらに高くできる。
【0010】
本発明に係る第2の作業車両の制御システムは、作業部を備える作業車両の制御システムであって、ユーザのON操作によって前記作業部の駆動を指示する作業操作部と、前記ユーザの操作によって、前記作業車両の前進、後進及び停止を指示する走行操作部と、前記作業操作部の操作に応じて前記作業部の駆動を制御し、前記走行操作部の操作に応じて前記作業車両の走行を制御する制御装置であって、その後進時に前記作業部を強制停止する前記制御装置と、前記ユーザのON操作によって、前記作業車両の後進開始時における前記作業部の強制停止を無効にする後進作業許可スイッチと、を備え、前記制御装置は、前記後進作業許可スイッチがON操作されている状態で、かつ前記作業操作部がON操作されている場合に、前記作業車両が後進した場合には前記作業部を駆動し、前記後進作業許可スイッチがOFF操作されている状態で、かつ前記作業操作部がON操作されている場合であって、前記作業車両が後進した場合には前記作業部を強制停止し、前記作業部を強制停止した後では、前記作業車両が後進を終了し、前記作業操作部がOFF操作に移行した後、ON操作に再度移行した場合にのみ、前記作業部を駆動する、作業車両の制御システムである。
【0011】
上記の第2の作業車両の制御システムによれば、第1の作業車両の制御システムと同様に、作業の効率を向上できると共に、後進作業許可スイッチがOFF操作されている場合における車両の安全性をさらに高くすることができる。さらに、作業車両の後進時に作業部の強制停止後には、作業部の駆動が再開されるのを運転者が意図を持って作業操作部をOFF操作からON操作に切り換えた場合に限定できるので、運転者にさらに高い安心感を持たせることができる。
【0012】
本発明に係る第3の作業車両の制御システムは、左右2つの車輪に接続され互いに独立して駆動される左右2つの走行モータと、運転席の左右に分かれて配置され、前後方向の移動によって対応する側の前記車輪の回転方向及び回転速度を指示する2つの操作レバーと、作業部と、を備える作業車両の制御システムであって、ユーザのON操作によって前記作業部の駆動を指示する作業操作部と、前記作業操作部の操作に応じて前記作業部の駆動を制御し、前記2つの操作レバーの操作に応じて前記作業車両の走行を制御する制御装置であって、その後進時に前記作業部を強制停止する前記制御装置と、前記ユーザのON操作によって、前記作業車両の後進開始時における前記作業部の強制停止を無効にする後進作業許可スイッチと、を備え、前記制御装置は、前記後進作業許可スイッチがOFF操作されている状態で、かつ前記作業操作部がON操作されている場合には、前記左右2つの車輪が後進側に回転すると判定された場合、及び、前記左右2つの車輪の平均速度が後進側の速度で所定値以上に高くなっていると判定された場合の少なくとも一方に該当する場合に、前記作業部を強制停止する、
作業車両の制御システムである。
【0013】
上記の第3の作業車両の制御システムによれば、単に2つの車輪の両方が後進側に回転する場合だけでなく、2つの車輪の平均速度が後進側の速度で所定値以上に高くなっている場合も、車両が後進中と判定される。これにより、2つの車輪の回転方向が逆になりながら全体として車両が後進側に旋回しながら移動するといった、運転者が目視だけでは進行方向が見えにくくなる旋回も後進と設定される。このため、後進作業許可スイッチがOFF操作されている場合の後進判定によって、作業部を強制停止させる制御が行われることにより、安全性をさらに高くできる。
【0014】
上記の第1の作業車両の制御システムにおいて、前記制御装置は、前記後進作業許可スイッチがOFF操作されている状態で、かつ前記作業操作部がON操作されている場合であって、前記作業車両が後進した場合には前記作業部を強制停止し、前記作業部を強制停止した後では、前記作業車両が後進を終了し、前記作業操作部がOFF操作に移行した後、ON操作に再度移行した場合にのみ、前記作業部を駆動する構成としてもよい。
【0015】
上記の構成によれば、上記の第2の作業車両の制御システムと同様に、作業車両の後進時に作業部の強制停止後には、作業部の駆動が再開されるのを運転者が意図を持って作業操作部をOFF操作からON操作に切り換えた場合に限定できるので、運転者にさらに高い安心感を持たせることができる。
【0016】
上記の構成において、左右2つの車輪に接続され互いに独立して駆動される左右2つの走行モータと、運転席の左右に分かれて配置され、前後方向の移動によって対応する側の前記車輪の回転方向及び回転速度を指示する前記走行操作部としての2つの操作レバーと、を備え、前記制御装置は、前記後進作業許可スイッチがOFF操作されている状態で、かつ前記作業操作部がON操作されている場合には、前記左右2つの車輪が後進側に回転すると判定された場合、及び、前記左右2つの車輪の平均速度が後進側の速度で所定値以上に高くなっていると判定された場合の少なくとも一方に該当する場合に、前記作業部を強制停止する構成としてもよい。
【0017】
上記の構成によれば、上記の第3の作業車両の制御システムと同様に、2つの車輪の回転方向が逆になりながら全体として車両が後進側に旋回しながら移動するといった、運転者が目視だけでは進行方向が見えにくくなる旋回も後進と設定される。このため、後進作業許可スイッチがOFF操作されている場合の後進判定によって、作業部を強制停止させる制御が行われることにより、安全性をさらに高くできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る作業車両の制御システムによれば、後進作業許可スイッチがOFF操作されている場合における安全性をさらに高くするができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る実施形態の制御システムを組み込んだ作業車両の斜視図である。
図2図1の作業車両の概略構成図である。
図3図1の作業車両の制御システムを示すブロック図である。
図4A図3の制御システムを構成する制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図4B図4Aに示す各判定部と、各判定部から制御部に送る情報との関係を示す図である。
図5】実施形態において、後進作業許可スイッチがON操作された場合において、車両の走行、作業部駆動スイッチ、後進作業許可スイッチ、作業部の各状態の時間的変化の1例を示す図である。
図6】実施形態において、後進作業許可スイッチがOFF操作された場合において、車両の走行、作業部駆動スイッチ、後進作業許可スイッチ、作業部の各状態の時間的変化の1例を示す図である。
図7】実施形態において、作業部の制御方法の1例を示すフローチャートである。
図8図7において、作業部の後進判定処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を詳細に説明する。以下では、作業車両が芝刈り車両である場合を説明するが、作業車両は、これに限定せず、除雪作業、掘削作業、土木作業、農作業のいずれか1つ以上の作業を行う作業部を有する他の作業車両としてもよい。また、以下では、基本的に、走行指示具が旋回指示具も兼ねる左右2つの操作レバーを装備した車両に適用する場合を説明するが、これは例示であって、ステアリングハンドルを旋回指示具として使用し、座席の前側に設けられたアクセルペダルを走行指示具として使用する車両に適用してもよい。このとき、走行指示具の走行は旋回を除く走行の意味で用いる。以下で説明する形状、個数、部品の配置関係等は、説明のための例示であって、作業車両の仕様に合わせて適宜変更することができる。以下ではすべての図面において同様の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略もしくは簡略化する。
【0021】
図1から図8において、実施形態の作業車両10の制御システムを説明する。以下では、作業車両10は、車両10と記載する。図1は、実施形態の制御システムを組み込んだ車両10の斜視図である。図2は、車両10の概略構成図である。なお、図1から図8の構成では、左右の駆動輪である車輪12,13が後側に配置され、キャスタ輪15,16が前側に配置された場合を説明するが、駆動輪である車輪が前側でキャスタ輪が後側でもよい。
【0022】
車両10は、芝刈に適した乗用自走型の芝刈り車両である。車両10は、左右2つの車輪である左車輪12及び右車輪13(図2)と、キャスタ輪15,16と、作業部である芝刈装置18と、左走行モータ30及び右走行モータ31(図2)と、作業モータである3つのデッキモータ60(図2)と、走行操作部32を構成する左右2つの操作レバー22,23と、作業操作部である作業部駆動スイッチ33(図3)と、後進作業許可スイッチ34(図3)とを備える。車両10は、さらに、制御部100を構成する左右2つの走行インバータ84,86、3つのデッキインバータ88、及び制御装置40(図3)と、バッテリ82(図2)とを備える。左走行モータ30、右走行モータ31及びデッキモータ60は、それぞれ電動モータである。デッキインバータ88は、作業インバータに相当する。
【0023】
左車輪12及び右車輪13は、車体であるメインフレーム20の後側の左右両側に支持される後輪であり、かつ主駆動輪である。メインフレーム20は、鋼材等の金属により、梁構造等に形成される。メインフレーム20は、左右両端で略前後方向に伸びる側板部20a、20bと、左右両側の側板部20a、20bを連結する連結部20cとを含む。左右の側板部20a、20bの後端部の間で、上側にはユーザとしての運転者が座る運転席21が固定される。
【0024】
運転席21の左右には、左右の操作レバー22,23が分かれて配置され、それぞれ前後方向の移動によって対応する側の左車輪12または右車輪13の回転方向及び回転速度を指示する。具体的には、メインフレーム20において、運転席21の左右両側には2つの案内パネル26,27が固定されており、2つの案内パネル26,27のそれぞれから左右2つの操作レバー22,23が上側に突出するように、メインフレーム20に支持されている。左の操作レバー22は、左走行モータ30の加減速、停止ならびに正逆転を指示する走行指示具に相当し、右の操作レバー23は、右走行モータ31の加減速、停止ならびに正逆転を指示する走行指示具に相当する。各操作レバー22,23の先端部は、運転者が掴んで左車輪12及び右車輪13の回転方向及び回転速度を指示するために用いられる。左操作レバー22は、左車輪12の駆動状態を指示するために操作される。右操作レバー23は、右車輪13の駆動状態を指示するために操作される。各操作レバー22,23は、略L字形であり、上端部に左右方向に伸びる把持部24が形成される。把持部24は、運転者に掴まれて操作される。各操作レバー22,23は、下端部において、左右方向に沿う軸を中心として揺動可能である。各操作レバー22,23は、直立位置に近いニュートラル位置であるN位置を基準に、前側に倒された場合に、操作レバー22(または23)と同じ側のモータ30(または31)を、前進に対応する目標回転速度としての、単位時間当たりの目標回転数(sec-1)で駆動することを指示する。目標回転速度として、毎分当たりの目標回転数(min-1)で設定してもよい。操作レバー22,23は、倒れ量が高くなるほど目標回転数が高くなることを指示する。操作レバー22,23は、N位置を基準に、後側に倒された場合に、操作レバー22(または23)と同じ側のモータ30(または31)を、後進に対応する目標回転数で駆動することを指示し、倒れ量が高くなるほど目標回転数が高くなることを指示する。操作レバー22,23は、N位置に移動されることにより、操作レバー22(または23)と同じ側のモータ30(または31)の駆動を停止することを指示する。これにより、各操作レバー22,23は、ユーザの操作によって、対応する走行モータ30,31の目標回転数を指示することにより、車両の前進、後進及び停止を指示する。
【0025】
左右2つの操作レバー22,23の前後方向における傾動位置は、それぞれレバー位置センサである左レバーセンサ50及び右レバーセンサ51(図3)により検出される。各レバーセンサ50,51は、例えばポテンショメータを含む。各レバーセンサ50,51の検出信号は制御装置40に送信される。
【0026】
左右の2つのキャスタ輪15,16は、メインフレーム20の前端部に支持される操向輪であり、かつ前輪である。各キャスタ輪15,16は、車両10の前後方向において、左車輪12及び右車輪13に対し前後方向に離れて設けられる。各キャスタ輪15,16は、鉛直方向(図1の上下方向)の軸を中心として360度以上の自由回転が可能である。なお、キャスタ輪は、車両に2つ配置される構成に限定するものではなく、1つのみ、または3つ以上が車両に配置されてもよい。
【0027】
図2に示すように、左走行モータ30は、メインフレーム20の後側に支持される左側の減速歯車装置58を介して左車輪12に接続される。右走行モータ31は、メインフレーム20の後側に支持される右側の減速歯車装置59を介して右車輪13に接続される。左走行モータ30及び右走行モータ31は、それぞれメインフレーム20の後側で、左側と右側とにそれぞれ支持される。これにより、左右2つの走行モータ30,31は、それぞれ左右2つの車輪12,13に接続され、互いに独立して駆動される。
【0028】
左走行モータ30には、左走行インバータ84(図3)を介してバッテリ82(図3)が接続され、バッテリ82から電力が供給される。右走行モータ31には、右走行インバータ86(図3)を介してバッテリ82が接続され、バッテリ82から電力が供給される。左走行モータ30及び右走行モータ31は、例えば3相モータである。図2に示すように、バッテリ82は、運転席21より後側において、メインフレーム20の上面側、または下面側に固定される。
【0029】
図1図2に示すように、芝刈装置18は、メインフレーム20の長手方向中間部の下側に支持されている。これにより、芝刈装置18は、前後方向において、キャスタ輪15,16及び左右車輪12,13の間に配置される。芝刈装置18は、カバーであるモアデッキ19の内側に配置された芝刈回転工具である3つの芝刈ブレード18a、18b、18c(図2)を含む。芝刈ブレード18a、18b、18cはモアデッキ19により上側を覆われる。各芝刈ブレード18a、18b、18cは鉛直方向(図2の紙面の表裏方向)に向いた軸の周りに回転する複数のブレード要素を有する。これにより、ブレード要素が回転して芝を破断して刈取り可能である。3つの芝刈ブレード18a、18b、18cのそれぞれには、作業モータである3つのデッキモータ60のうち、対応するデッキモータ60が接続される。各デッキモータ60には、対応するデッキモータ60用のインバータであるデッキインバータ88(図3)を介してバッテリ82が接続され、バッテリ82から電力が供給される。各デッキモータ60は、例えば3相モータである。
【0030】
芝刈装置は、芝刈り用回転工具として、地表に平行な回転軸に例えばらせん状の刃を配置し、芝等を刈り取る機能を有し、デッキモータにより駆動される芝刈りリールを備える構成としてもよい。
【0031】
図3は、車両10の制御システム80を示すブロック図である。制御装置40には、始動スイッチ35と、作業部駆動スイッチ33と、後進作業許可スイッチ34と、左右2つのレバーセンサ50,51と、左右2つの走行インバータ84,86と、デッキインバータ88と、左右2つのモータ速度センサ54,55とが接続される。始動スイッチ35、後進作業許可スイッチ34及び作業部駆動スイッチ33は、左右2つの操作レバー22,23の一方の操作レバーを案内する一方の案内パネル26(または27)、またはその近くに設けられる。始動スイッチ35は、運転者によって操作可能に設けられ、その操作に基づいてバッテリ82から制御装置40に電力を供給して制御装置40を起動させる。作業部駆動スイッチ33は、運転者によって操作可能に設けられ、そのON操作によって、芝刈装置18の駆動を指示し、OFF操作によって芝刈装置18の停止を指示する。作業部駆動スイッチ33によって芝刈装置18の駆動が指示されると、制御装置40は、後述のデッキインバータ88を制御してデッキモータ60を所定の目標回転数で回転し続けるように駆動させる。
【0032】
一方、車両が、左右2つの走行モータ30,31の代わりに走行モータを1つのみ備え、3つのデッキモータ60の代わりに作業モータを1つのみ備え、操作レバー22,23が、1つの走行モータの目標回転数を指示すると共に、作業部駆動スイッチ33が1つの作業モータの駆動を指示する構成としてもよい。
【0033】
制御装置40は、作業部駆動スイッチ33の操作に応じて芝刈装置18の駆動を制御し、操作レバー22,23の操作に応じて車両10の走行を制御する。さらに、制御装置40は、車両10の後進時に、後述の後進作業許可スイッチ34がON操作されない通常時には、デッキモータ60の停止により芝刈装置18の駆動を強制停止する。
【0034】
後進作業許可スイッチ34は、運転者によってONまたはOFFの操作が可能であり、運転者のON操作によって、車両10の後進開始時における芝刈装置18の強制停止を無効にする。この強制停止の無効によって、車両10は後進時に、作業部駆動スイッチ33のON操作によって芝刈装置18を駆動させ、または芝刈装置18の駆動中の場合にはその駆動を維持することができる。これにより、後進しながらの芝刈り作業が可能となる。
【0035】
制御システム80は、始動スイッチ35と、作業部駆動スイッチ33、後進作業許可スイッチ34及び左右2つの操作レバー22,23と、左右2つのレバーセンサ50,51と、左右2つの走行モータ30、31及び走行インバータ84,86と、左右2つのモータ速度センサ54,55と、3つのデッキモータ60及びデッキインバータ88と、3つのデッキモータ速度センサ52と、制御装置40とを含む。図3では、デッキモータ60、デッキインバータ88、デッキモータ速度センサ52がそれぞれ1つのみ図示されているが、実際には図2で示したようにデッキモータ60は3つが設けられるので、制御システム80では、それに対応してデッキインバータ88、デッキモータ速度センサ52がそれぞれ3つずつ設けられる。
【0036】
左走行インバータ84は左走行モータ30を駆動し、右走行インバータ86は右走行モータ31を駆動する。各走行インバータ84,86は、例えば、電気的に直列接続した2つのスイッチング素子をそれぞれ有する3つのアームを含む走行インバータ回路と、走行インバータ回路を制御する走行インバータ制御装置とを有する。
【0037】
各走行インバータ84,86の作動は、制御装置40により制御される。これにより、左走行モータ30は、左走行インバータ84を介して制御装置40により制御される。右走行モータ31は、右走行インバータ86を介して制御装置40により制御される。このため、左走行モータ30及び右走行モータ31は、制御装置40により、回転方向及び回転数について、互いに独立して駆動される。したがって、左走行モータ30及び右走行モータ31は、回転方向及び回転数について、左車輪12及び右車輪13を独立して駆動する。
【0038】
さらに、左走行インバータ84の左走行インバータ制御装置には、左モータ速度センサ54から左走行モータ30の回転数n(sec-1)の検出値が入力される。右走行インバータ86の右走行インバータ制御装置には、右モータ速度センサ55から右走行モータ31の回転数n(sec-1)の検出値が入力される。左右2つのモータ速度センサ54,55は、左右2つの走行モータ30,31のそれぞれの回転数を検出する。各モータ速度センサ54,55の回転数の検出値は、制御装置40に出力される。
【0039】
各デッキインバータ88は、対応するデッキモータ60を駆動する。各デッキインバータ88も、各走行インバータ84,86の走行インバータ回路及び走行インバータ制御装置と同様に、デッキインバータ回路と、デッキインバータ回路を制御するデッキインバータ制御装置とを有する。
【0040】
図4Aは、制御システム80を構成する制御装置40の機能構成を示すブロック図である。図4Bは、図4Aに示す各判定部41~44,47,48と、各判定部から制御部45,46に送る情報との関係を示している。制御装置40は、作業制御部45と走行制御部46とを有する。作業制御部45は、各デッキインバータ88の駆動を制御する。これにより、各デッキモータ60は、デッキインバータ88を介して作業制御部45により制御される。このため、各芝刈ブレード18a、18b、18cは、対応するデッキモータ60によって回転駆動される。各デッキモータ60は、基本的に所定の目標回転数を維持するように駆動される。芝刈装置18で刈り取られた芝は、モアデッキ19の左右方向一方側に設けられた排出ダクト18dを通じて車両10の左右方向一方側に排出される。
【0041】
さらに、各デッキインバータ88のデッキインバータ制御装置には、デッキモータ速度センサ52からデッキモータ60の回転数n(sec-1)の検出値が入力される。各デッキモータ速度センサ52は、対応するデッキモータ60の回転数を検出する。デッキモータ速度センサ52の回転数の検出値は、対応するデッキインバータ88を介して制御装置40に出力される。なお、図3では、バッテリ82からの電力供給経路が太い実線で示されている。また、図3では信号伝達経路を細い実線で示している。
【0042】
制御装置40は、CPU等の演算部及びメモリ等の記憶部を含むものであり、例えばマイクロコンピュータにより構成される。制御装置40は、左右2つのレバーセンサ50,51の検出信号から2つの操作レバー22,23の操作位置を取得して、各操作レバー22,23の操作位置に応じて左走行モータ30及び右走行モータ31のそれぞれの目標回転数を設定する。
【0043】
制御装置40は、左レバーセンサ50から検出値が送られ、その検出値から左操作レバー22の現在の傾動位置を決定する左レバー判定部47と、右レバーセンサ51から検出値が送られ、その検出値から右操作レバー23の現在の傾動位置を決定する右レバー判定部48とを有する。走行制御部46には、図4A図4Bの丸内の5~6で示すように、左レバー判定部47から左操作レバー22の傾動位置を表す情報が送られると共に、右レバー判定部48から右操作レバー23の傾動位置を表す情報が送られる。走行制御部46は、各操作レバー22,23の傾動位置に応じて、左右2つの走行モータ30,31の目標回転数を設定することにより、車両10が直進走行または旋回走行を行うように、各走行モータ30,31を制御する。さらに、図1の車両10では、左車輪12及び右車輪13が互いに逆方向に回転することにより、その場旋回、いわゆるゼロターンと呼ばれる旋回半径0の旋回が可能である。その場旋回は、後進及び前進のいずれでもない旋回である。
【0044】
さらに、本例の車両10は、後進作業許可スイッチ判定部41と、走行判定部42と、作業判定部43と、作業部駆動スイッチ判定部44とを有する。後進作業許可スイッチ判定部41は、後進作業許可スイッチ34がOFF操作されているか、またはON操作されているかを判定する。走行判定部42は、車両の走行状態、すなわち、前進しているか、後進しているか、または走行停止しているか、または旋回しているかを判定する。このとき、走行判定部42は、後述の図8にフローチャートを用いて説明する場合と同様に、左右2つの車輪12,13が後進側に回転すると判定された場合、及び、左右2つの車輪12,13の平均速度が後進側の速度で所定値以上に高くなっていると判定された場合の少なくとも一方に該当する場合に、車両が後進中であると判定する。
【0045】
左右2つの車輪12,13が後進側に回転するか否かの判定は、左右レバーセンサ50,51の検出信号から得られた左右レバー22,23の操作位置、または左右のモータ速度センサ54,55の検出信号から得られた左右の走行モータ30,31の回転方向に応じて行う。例えば、各操作レバー22,23の操作位置が後進側である場合に、左右2つの車輪12,13が後進側に回転し、車両が後進中と判定される。また、左右の走行モータ30,31の回転方向が後進側である場合に、左右2つの車輪12,13が後進側に回転し、車両が後進中と判定される。
【0046】
左右2つの車輪12,13の平均速度が後進側の速度で所定値以上に高くなっているか否かの判定も、左右レバーセンサ50,51の検出信号から得られた左右レバー22,23の操作位置、または左右のモータ速度センサ54,55の検出信号から得られた左右の走行モータ30,31の回転速度に応じて行う。例えば、各操作レバー22,23の操作位置から、左右2つの車輪12,13の平均速度が推定され、その平均速度が後進側に車両が移動する速度であって(後進側の速度)、所定値以上に高い速度である場合に、車両が後進中と判定される。また、左右の走行モータ30,31の回転速度から、左右2つの車輪12,13の平均速度が推定され、その平均速度が後進側の速度であって、所定値以上に高い速度である場合に、車両が後進中と判定される。
【0047】
このように単に2つの車輪12,13の両方が後進側に回転する場合だけでなく、2つの車輪12,13の平均速度が後進側の速度で所定値以上に高くなっている場合も、車両が後進中と判定するので、2つの車輪12,13の回転方向が逆になりながら全体として車両が後進側に旋回しながら移動するといった、運転者が目視だけでは進行方向が見えにくくなる旋回も後進と設定される。そして、後述のように後進作業許可スイッチ34がOFF操作されている場合の後進判定によって、芝刈装置18の駆動を強制停止させる制御を行うことにより、安全性をさらに高くできる。
【0048】
作業判定部43は、デッキモータ速度センサ52の検出信号から得られたデッキモータ60の回転速度から、芝刈装置18が駆動中か、または停止中かを判定する。作業部駆動スイッチ判定部44は、作業部駆動スイッチ33がOFF操作されているか、またはON操作されているかを判定する。
【0049】
作業制御部45には、後進作業許可スイッチ判定部41、走行判定部42、作業判定部43、及び、作業部駆動スイッチ判定部44から、図4A図4Bの丸内の1~4で示すように、対応する判定結果を表す情報が送られる。作業制御部45は、後進作業許可スイッチ判定部41、走行判定部42、作業判定部43、及び、作業部駆動スイッチ判定部44の判定結果を用いて、芝刈装置18の駆動を制御する。例えば、作業制御部45は、後進作業許可スイッチ34がON操作されている状態で、かつ作業部駆動スイッチ33がON操作されている場合に、車両10が後進した場合には芝刈装置18を駆動するように制御するON操作制御を行う。また、作業制御部45は、後進作業許可スイッチ34がOFF操作されている状態で、かつ作業部駆動スイッチ33がON操作されている場合には、車両10が後進中の場合と、車両10が後進から停止に移行した場合との両方で、芝刈装置18の駆動を強制停止するように制御する第1のOFF操作制御を行う。
【0050】
また、第1のOFF操作制御と共に、または第1のOFF操作制御の代わりに、第2のOFF操作制御を行う構成としてもよい。第2のOFF操作制御は、作業制御部45が、後進作業許可スイッチ34がOFF操作されている状態で、かつ作業部駆動スイッチ33がON操作されている場合であって、車両10が後進した場合には、芝刈装置18を強制停止する。また、第2のOFF操作制御は、作業制御部45が、芝刈装置18をその強制停止した後では、車両10が後進を終了し、作業部駆動スイッチ33がOFF操作に移行した後、ON操作に再度移行した場合にのみ、芝刈装置18を駆動するように制御する。
【0051】
上記の制御システム80によれば、芝刈作業の効率を向上できる。具体的には、上記のON操作制御によって、車両10が後進した場合でも、後進作業許可スイッチ34がON操作されている場合には、芝刈装置18を駆動できるので、車両10の後進中の芝刈り作業が可能となり、芝刈り作業の効率を向上できる。また、上記の第1、第2のOFF操作制御の一方または両方によって、後進作業許可スイッチ34がOFF操作されている場合における車両10の安全性をさらに高くすることができる。
【0052】
図5は、実施形態において、後進作業許可スイッチ34がON操作された場合において、車両10の走行、作業部駆動スイッチ33、後進作業許可スイッチ34、芝刈装置18(作業部)の各状態の時間的変化の1例を示している。図5の例では、作業部駆動スイッチ33がON操作されており、車両10が停車状態から運転者Pの左右操作レバー22,23の後側への操作によって後進し、その後、再度停車する。このとき、車両10の最初の停車状態で作業部駆動スイッチ33のON操作によって芝刈装置18は駆動しているが、2度目の停車状態で、作業部駆動スイッチ33がON操作からOFF操作に切り替えられると、芝刈装置18が停止する。次に、この停車状態で、作業部駆動スイッチ33が再度ON操作に切り替えられると、芝刈装置18が再度駆動する。このように運転者の後進作業許可スイッチ34をON操作したという意思があり、周囲の安全性が高いことを運転者が確認している可能性が高い場合に、後進中の作業を行えるので、作業効率を向上できる。なお、図5では作業部駆動スイッチ33が押し釦式であり、押圧動作で交互にON、OFFが切り換わる場合を示しているが、作業部駆動スイッチ33はこれに限定せず、トグル式、またはロッカー式等、種々の構成を採用できる。また、図5では作業部駆動スイッチ33がプッシュ式でオルタネイトの2位置切換式、すなわち、ON状態では操作部の押し下げ位置が維持され、OFF状態では内部のバネ力で操作部が上に戻った位置となる場合を示している。この他、作業部駆動スイッチ33はプッシュ式でオルタネイトの1位置切換式であっても構わない。例えば、作業部駆動スイッチ33を1位置切換式とする場合には、押圧動作でON、OFFが交互に切り換わるが、ON状態でも操作部の押下位置が維持されず、OFF位置と同じ位置に戻る。作業部駆動スイッチ33を1位置切換式とする場合も、停車状態で作業部駆動スイッチ33のON状態でプッシュすることによりOFFとなり、芝刈装置18が停止する。その後、作業部駆動スイッチ33を再度プッシュすることによりONとなり、芝刈装置18が再駆動する。後進作業許可スイッチ34も作業部駆動スイッチ33と同様に、押し釦式等、種々の構成を採用できる。
【0053】
また、上記の各OFF操作制御によって、車両10が後進中の場合だけでなく、車両10が後進から停止に移行した場合も、芝刈装置18が強制停止される。これにより、運転者の意思で後進作業許可スイッチ34をOFF操作している場合に、運転者が車両10の進行方向前側が前進時より見えにくくなる後進時の、作動中の芝刈装置18に障害物が接近することをより防止しやすくなるので安全性をさらに高くできる。また、車両10が後進から停止した場合に、運転者が意図せずに急に芝刈装置18の駆動が再開されることを防止できる。また、運転者に、芝刈装置18の駆動が再開される前に車両周囲の障害物の有無の確認等、安全な状況であることを確認する時間を与えて、運転者により高い安心感を持たせることができる。これによっても、安全性をさらに高くすることができる。
【0054】
図6は、実施形態において、後進作業許可スイッチ34がOFF操作された場合において、車両10の走行、作業部駆動スイッチ33、後進作業許可スイッチ34、芝刈装置18(作業部)の各状態の時間的変化の1例を示している。図6では、第1、第2のOFF操作制御の両方を行う場合を示している。図6の場合も、図5の場合と同様に、作業部駆動スイッチ33がON操作されており、車両10が停車状態から後進し、その後、再度停車する。このとき、車両10の最初の停車状態で作業部駆動スイッチ33のON操作によって芝刈装置18は駆動しているが、車両10が後進に移行することで芝刈装置18の駆動が強制停止される。この強制停止状態は、車両の2度目の停車状態でも続く。これにより、運転者Pに、芝刈装置18の駆動が再開される前に安全確認の時間を与えて、運転者Pにより高い安心感を持たせることができる。
【0055】
また、第2のOFF操作制御によって、車両10が後進した場合には、車両10が後進を終了し、作業部駆動スイッチ33がOFF操作に移行した後、ON操作に再度移行した場合にのみ、芝刈装置18が駆動するように制御される。これにより、図6において、2度目の停車状態で、運転者Pが作業部駆動スイッチ33をON操作からOFF操作に切り換えた後、再度ON操作を行った場合にのみ、芝刈装置18が駆動を再開する。このため、芝刈装置18の駆動が再開されるのを運転者Pが意図を持って作業部駆動スイッチ33を操作した場合に限定できるので、運転者Pにさらに高い安心感を持たせることができる。また、作業部駆動スイッチ33を1位置切換式とする場合も、停車状態から後進に移行することで芝刈装置18の駆動が強制停止され、その後、車両の停車状態で、作業部駆動スイッチ33をプッシュすることによりOFFとした後、作業部駆動スイッチ33を再度プッシュすることによりONとして、芝刈装置18を再駆動する。作業部駆動スイッチ33を1位置切換式とする場合、例えば、表示部でON/OFF状態を表示させてもよい。なお、上記では、作業部駆動スイッチ33のONからOFFの操作への切り換えを、車両10の停止状態で行っているが、後進の終了後であれば、車両10の前進時におこなってもよく、前進時に上記の切り換えを行うことにより芝刈装置18が駆動される構成としてもよい。
【0056】
図7は、実施形態において、芝刈装置18(作業部)の制御方法の1例を示すフローチャートである。図8は、図7の後進判定処理のサブルーチンを示すフローチャートである。上記のON操作制御、及び第1、第2の各OFF操作制御は、図7図8のフローチャートで示す制御方法によって実行されてもよい。また、制御装置40の作業制御部45は、後進作業許可スイッチ34がOFF操作されている状態で、かつ作業部駆動スイッチ33がON操作されている場合には、左右2つの車輪12,13が後進側に回転すると判定された場合、及び、左右2つの車輪12,13の平均速度が後進側の速度で所定値以上に高くなっていると判定された場合の少なくとも一方に該当する場合に、芝刈装置18の駆動を強制停止する。さらに、作業制御部45は、後進作業許可スイッチ34がOFF操作されている状態で、かつ車両10が後進中ではなく、芝刈装置18が駆動中でない場合には、芝刈装置18の停止後に作業部駆動スイッチ33のON動作(OFF→ON)がされた状態でない場合に、芝刈装置18の停止を維持する。一方、作業制御部45は、芝刈装置18の停止後に作業部駆動スイッチ33のON動作がされた状態である場合には、芝刈装置18を駆動させるか、または駆動を維持する。このために、作業制御部45は、作業部駆動スイッチ判定部44から作業部駆動スイッチ33がONされているか、またはOFFされているかの情報に加えて、作業部駆動スイッチ33のON動作がされたときに、そのON動作が芝刈装置18の停止後の動作であるか否かの情報も受け取る。なお、作業制御部45が、作業部駆動スイッチ判定部44から作業部駆動スイッチ33がON動作されたことの情報を受け取ったときに、それまでに受け取って記憶されていた作業判定部43からの芝刈装置18の駆動または停止の情報から、作業部駆動スイッチ33のON動作が芝刈装置18の停止後の動作であるか否かを判定する構成としてもよい。
【0057】
具体的には、まず、図7のステップS10において、作業部駆動スイッチ33がONされているか否かが判定される。ステップS10の判定結果が肯定(YES)の場合には、ステップS11に移行する。ステップS10の判定結果が否定(NO)の場合には、ステップS25において芝刈装置18を停止させるか、または停止を維持する。ステップS11では、後進作業許可スイッチ34がOFFされたか否かが判定される。ステップS11の判定結果が肯定(YES)の場合には、ステップS12において、車両10が後進中であるか否かが判定される。一方、ステップS11の判定結果が否定(NO)の場合には、ステップS21に移行する。
【0058】
図8のA,B,Cは、図7のA、B、Cに対応する。図8の処理では、ステップS13で、左右の操作レバー22,23の両方が後側に倒されているか否かが、各レバーセンサ50,51の検出信号から判定される。ステップS14では、左右2つの車輪12,13が両方とも後進側に回転しているか否かが、各モータ速度センサ54,55の検出信号から判定される。ステップS15では、左右2つの車輪12,12の平均速度が後進側の速度で所定値以上に高いか否かが、各モータ速度センサ54,55の検出信号から判定される。ステップS16では、左右の操作レバー22,23の操作位置を検出する各レバーセンサ50,51の検出信号から、左右2つの車輪12,13の平均速度が後進側の速度で所定値以上に高いと推定されたか否かが判定される。
【0059】
各ステップS13~S16の少なくとも1つで、判定結果が肯定(YES)の場合には、ステップS18で車両10が後進中と判定され、ステップS20に移行する。ステップS20では、芝刈装置18の駆動が強制停止される、すなわち、芝刈装置18の駆動中であれば停止に移行し、停止中であれば停止が維持される。一方、各ステップS13~S16の全部で判定結果が否定(NO)となった場合には、ステップS17で車両10が後進中でないと判定され、ステップS21に移行する。図8のステップS13~S16の判定の順序は限定されない。
【0060】
ステップS21では、芝刈装置18が駆動中であるか否かが判定される。ステップS21の判定結果が肯定の場合にはステップS24に移行して、芝刈装置18を駆動させるか、または駆動を維持する。ステップS21の判定結果が否定の場合には、ステップS22で、芝刈装置18の停止後に作業部駆動スイッチ33のON動作であるOFF操作からON操作への切り換えがされた状態であるか否かが判定される。ステップS22の判定結果が肯定の場合には、ステップS24に移行して、芝刈装置18を駆動させるか、または駆動を維持する。
【0061】
一方、ステップS22の判定結果が否定の場合には、芝刈装置18の停止が維持される。ステップS25,S23、S24、S20の処理の後は、ステップS10の処理に戻る。
【0062】
図7図8に示す制御方法を実行する構成によれば、図8のサブルーチンで示す処理によって後進判定を行うことにより、単に2つの車輪12,13の両方が後進側に回転する場合だけでなく、2つの車輪12,13の平均速度が後進側の速度で所定値以上に高くなっている場合も、車両が後進中と判定される。これにより、2つの車輪12,13の回転方向が逆になりながら全体として車両10が後進側に旋回しながら移動するといった、運転者が目視だけでは進行方向が見えにくくなる旋回も後進と設定される。このため、後進作業許可スイッチ34がOFF操作されている場合の後進判定によって、芝刈装置18の駆動を強制停止させる制御が行われることにより、安全性をさらに高くできる。
【0063】
また、図7図8に示す制御方法を実行する構成によれば、上記の第2のOFF操作制御を行う場合と同様に、後進作業許可スイッチ34がOFF操作されている場合において、車両10が後進後、走行を停止した場合には、車両10が後進中ではなく、芝刈装置18が強制停止によって駆動中でない場合となる。また、この場合に、車両10が後進終了後の停止状態で、作業部駆動スイッチ33がOFF操作に移行した後、ON操作に再度移行した場合にのみ、芝刈装置18の駆動が再開される。これにより、図6の場合と同様に、後進終了後の停車状態で、運転者が作業部駆動スイッチ33をONからOFF操作した後、再度ON操作を行った場合にのみ、芝刈装置18の駆動が再開される。このため、芝刈装置18の駆動が再開されるのを運転者が意図を持って作業部駆動スイッチ33を操作した場合に限定できるので、運転者にさらに高い安心感を持たせることができる。
【0064】
なお、図8の判定処理において、ステップS13,S14の処理と、ステップS15,S16の処理との一方のみを行う構成としてもよい。一方、図8のように各ステップS13~S16の判定処理を行うことで、後進判定の精度を高めることができる。
【0065】
また、上記では、左右の駆動輪である車輪12,13が電動モータで駆動される場合を説明したが、左右の駆動輪が油圧モータで駆動される構成としてもよい。このとき、油圧モータに圧油を供給する油圧ポンプの駆動のために車両がエンジンを備えていてもよい。また、電動モータで駆動輪を駆動する場合に、車両がエンジンを備え、エンジンで駆動される発電機からの発電電力がバッテリに供給され充電される構成としもよい。
【0066】
また、上記の実施形態の構成を、ステアリングハンドルを旋回指示具として使用し、座席の前側に設けられたアクセルペダルを走行指示具(単一ペダルのシーソー式あるいは2ペダル式)として使用する車両に適用する場合に、左右の駆動輪を1つの電動モータで駆動する構成としてもよい。この場合、電動モータの動力は差動装置を介して、左右の駆動輪が接続された左右車軸に差動的に伝達される。このため、左右2つの駆動輪は独立して駆動されない。この場合には、図8の後進判定処理の代わりに、電動モータ、または電動モータから車輪に至る動力伝達経路における回転部材(車輪でもよい)の回転方向及び回転速度を検出するセンサを設けて、そのセンサの検出信号に応じて後進判定を行う。また、アクセルペダルが後進側に操作されているか否かを表す検出信号を、アクセルペダルセンサから制御装置が受け取って、後進判定を行ってもよい。なお、アクセルペダルには前後進切替指示機能を持たせず、アクセルペダルとは別に車両に前後進切替指示具を設けてもよい。このときは前後進切替指示具の指示方向を検出するセンサを設けて、そのセンサの検出信号に応じて制御装置が後進判定を行えばよい。
【符号の説明】
【0067】
10 電動作業車両(車両)、12 左車輪、13 右車輪、15,16 キャスタ輪、18 芝刈装置、18a~18c 芝刈ブレード、18d 排出ダクト、19 モアデッキ、20 メインフレーム、20a,20b 側板部、20c 連結部、21 運転席、22,23 操作レバー、24 把持部、26,27 案内パネル、30 左走行モータ、31 右走行モータ、32 操作部、33 作業部駆動スイッチ、34 後進作業許可スイッチ、35 始動スイッチ、40 制御装置、50 左レバーセンサ、51 右レバーセンサ、52 デッキモータ速度センサ、54 左モータ速度センサ、55 右モータ速度センサ、60 デッキモータ、82 バッテリ、84 左走行インバータ、86 右走行インバータ、88 デッキインバータ。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8