(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108817
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】浸透促進剤
(51)【国際特許分類】
A01N 25/30 20060101AFI20240805BHJP
A01P 21/00 20060101ALI20240805BHJP
A01N 27/00 20060101ALI20240805BHJP
A01N 37/44 20060101ALI20240805BHJP
A01N 57/16 20060101ALI20240805BHJP
A01N 57/12 20060101ALI20240805BHJP
C09K 23/42 20220101ALI20240805BHJP
C09K 23/12 20220101ALI20240805BHJP
【FI】
A01N25/30
A01P21/00
A01N27/00
A01N37/44
A01N57/16 104C
A01N57/12 F
C09K23/42
C09K23/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】30
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013402
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】苅谷 悟
(72)【発明者】
【氏名】石野 暢好
【テーマコード(参考)】
4D077
4H011
【Fターム(参考)】
4D077AB20
4D077BA07
4D077DC04Y
4D077DC59Y
4D077DD32Y
4D077DD33Y
4D077DE02Y
4D077DE04Y
4D077DE07Y
4H011AB03
4H011BA05
4H011BB01
4H011BB06
4H011BB17
4H011BB19
4H011BC03
4H011BC07
4H011BC19
4H011DA13
4H011DA16
4H011DH03
4H011DH15
(57)【要約】
【課題】植物成長促進活性有機物質の植物組織内への浸透促進を図ることのできる浸透促進剤および農業用組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】アニオン性界面活性剤(スルホ琥珀酸エステルを除く)とノニオン性界面活性剤との混合物(アルキル(C12~C16)酸の少なくとも1種のアルキル(C1~C8)エステルを含まない)を含む、植物成長促進活性有機物質の浸透促進剤。(a)アニオン性界面活性剤(スルホ琥珀酸エステルを除く)とノニオン性界面活性剤との混合物(アルキル(C12~C16)酸の少なくとも1種のアルキル(C1~C8)エステルを含まない);および(b)少なくとも1種類の植物成長促進活性有機物質を含む農業用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン性界面活性剤(スルホ琥珀酸エステルを除く)とノニオン性界面活性剤との混合物(アルキル(C12~C16)酸の少なくとも1種のアルキル(C1~C8)エステルを含まない)を含む、植物成長促進活性有機物質の浸透促進剤。
【請求項2】
前記ノニオン性界面活性剤が、エーテル型ノニオン性界面活性剤である請求項1記載の浸透促進剤。
【請求項3】
前記ノニオン性界面活性剤が、フェニルエーテル型ノニオン性界面活性剤である請求項2記載の浸透促進剤。
【請求項4】
前記ノニオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベへニルエーテル、ポリオキシエチレン2-エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル、またはポリオキシエチレン(18)ノニルフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種以上である請求項2記載の浸透促進剤。
【請求項5】
前記ノニオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン(18)ノニルフェニルエーテルである請求項3記載の浸透促進剤。
【請求項6】
前記アニオン性界面活性剤が、アルキルベンゼンスルホン酸またはアルキルベンゼンスルホン酸塩である請求項1記載の浸透促進剤。
【請求項7】
前記アニオン性界面活性剤が、デシルベンゼンスルホン酸(C=10)、デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(C=10)、ウンデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(C=11)、直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(C=12)、トリデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(C=13)およびテトラデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(C=14)から選ばれる少なくとも1種以上である請求項6記載の浸透促進剤。
【請求項8】
前記アニオン性界面活性剤が、直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである請求項6記載の浸透促進剤。
【請求項9】
前記植物成長促進活性有機物質が、植物成長に関わる植物ホルモンまたは前記植物ホルモンの生合成における前駆物質である請求項1記載の浸透促進剤。
【請求項10】
前記植物成長促進活性有機物質が、植物の成長促進剤、成長刺激剤、有機エリシターおよび機能性栄養素からなる群より選ばれる少なくとも1種またはその前駆物質である請求項1記載の浸透促進剤。
【請求項11】
前記植物成長促進活性有機物質が、テルペン、核酸、アミノ酸およびリン脂質からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の浸透促進剤。
【請求項12】
前記混合物の浸透促進剤全体に対する含有比率が、浸透促進剤100重量部に対して、0.05~2.0重量部である請求項1記載の浸透促進剤。
【請求項13】
前記アニオン性界面活性剤と前記ノニオン性界面活性剤の比率が、重量比でアニオン性界面活性剤/ノニオン性界面活性剤=0.1~10である請求項1記載の浸透促進剤。
【請求項14】
(a)アニオン性界面活性剤(スルホ琥珀酸エステルを除く)とノニオン性界面活性剤との混合物(アルキル(C12~C16)酸の少なくとも1種のアルキル(C1~C8)エステルを含まない);および
(b)少なくとも1種類の植物成長促進活性有機物質
を含む農業用組成物。
【請求項15】
前記植物成長促進活性有機物質が、植物成長に関わる植物ホルモンまたは前記植物ホルモンの生合成における前駆物質である請求項14記載の農業用組成物。
【請求項16】
前記植物成長促進活性有機物質が、植物の成長促進剤、成長刺激剤、有機エリシターおよび機能性栄養素からなる群より選ばれる少なくとも1種またはその前駆物質である請求項14記載の農業用組成物。
【請求項17】
前記植物成長促進活性有機物質が、テルペン、核酸、アミノ酸およびリン脂質からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項14記載の農業用組成物。
【請求項18】
前記ノニオン性界面活性剤が、エーテル型ノニオン性界面活性剤である請求項14記載の農業用組成物。
【請求項19】
前記ノニオン性界面活性剤が、フェニルエーテル型ノニオン性界面活性剤である請求項18記載の農業用組成物。
【請求項20】
前記ノニオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベへニルエーテル、ポリオキシエチレン2-エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル、またはポリオキシエチレン(18)ノニルフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種以上である請求項18記載の農業用組成物。
【請求項21】
前記ノニオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン(18)ノニルフェニルエーテルである請求項19記載の農業用組成物。
【請求項22】
前記アニオン性界面活性剤が、アルキルベンゼンスルホン酸またはアルキルベンゼンスルホン酸塩である請求項14記載の農業用組成物。
【請求項23】
前記アニオン性界面活性剤が、デシルベンゼンスルホン酸(C=10)、デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(C=10)、ウンデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(C=11)、直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(C=12)、トリデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(C=13)およびテトラデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(C=14)から選ばれる少なくとも1種以上である請求項22記載の農業用組成物。
【請求項24】
前記アニオン性界面活性剤が、直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである請求項22記載の農業用組成物。
【請求項25】
前記混合物が、農業用組成物100重量部に対して、0.05~2重量部である請求項14記載の農業用組成物。
【請求項26】
前記植物成長促進活性有機物質の、前記混合物に対する比率が、重量比で0.1~100である請求項14記載の農業用組成物。
【請求項27】
前記アニオン性界面活性剤と前記ノニオン性界面活性剤の比率が、重量比でアニオン性界面活性剤/ノニオン性界面活性剤=0.1~10である請求項14記載の農業用組成物。
【請求項28】
その中に含まれている植物成長促進活性有機物質を植物に施用するための、請求項14記載の農業用組成物の使用。
【請求項29】
前記植物成長促進活性有機物質の前記植物に対する浸透性を向上させるための、請求項14記載の農業用組成物の使用。
【請求項30】
茎葉散布のための、請求項14記載の農業用組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸透促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
穀物植物や園芸植物の供給効率を向上させること等を目的として、植物の成長を調整する農業製剤が開発されてきた。農業製剤には農薬薬効成分の化学的または物理的安定性の向上もしくは分解の抑制のため、または施用性能の向上のために界面活性剤が用いることが多い。農業製剤、特に植物の地上部に散布される茎葉処理農薬においては、茎葉処理農薬の活性は、農薬薬効成分自身の活性だけでなく、茎葉面上の散布液の付着量と広がりおよび植物体組織への吸収および移行量にも影響される。界面活性剤は、植物体組織への生物活性成分の浸透を補助することが知られている。より浸透能力の高い界面活性剤が望まれている。
【0003】
特許文献1には、特定のエステル型ノニオン性界面活性剤と特定の2系統のエステル琥珀酸塩とからなる農薬製剤用界面活性剤組成物が開示されている。
【0004】
特許文献2には、アルキル(C12~C16)酸の少なくとも1種のアルキル(C1~C8)エステルと、アニオン性界面活性剤と、非イオン性界面活性剤とを含む液体抗病原性農業用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-95606号公報
【特許文献2】特表2022-517958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
植物の成長を促進させ、人や動物の主食・常食として利用される澱粉や蛋白質を豊富に含む子実の収量を増加させることは、非常に重要である。
【0007】
特許文献1の農薬製剤用界面活性剤組成物は、農薬薬効成分の乳化、分散、核酸等の施用性能を向上することを目的としており、植物成長促進活性のある有機物質を浸透させる能力については開示されていない。また、特許文献1に開示の琥珀酸エステルは、量産を考慮するとコストが高い。
【0008】
特許文献2の液体抗病原性農業用組成物は、殺虫剤、殺菌剤、殺線虫剤および/または殺ダニ剤としての使用のための組成物であり、特許文献2にも植物成長促進活性のある有機物質を浸透させることは開示されていない。
【0009】
本発明は、植物に適宜適用することで、植物成長促進活性有機物質の植物における浸透を補助することができ、その結果、植物の成長を促進させることのできる浸透促進剤、および、該浸透促進剤を含む組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、アニオン性界面活性剤(スルホ琥珀酸エステルを除く)とノニオン性界面活性剤との混合物(アルキル(C12~C16)酸の少なくとも1種のアルキル(C1~C8)エステルを含まない)を含む、植物成長促進活性有機物質の浸透促進剤に関する。
【0011】
前記ノニオン性界面活性剤が、エーテル型ノニオン性界面活性剤であることが好ましい。
【0012】
前記ノニオン性界面活性剤が、フェニルエーテル型ノニオン性界面活性剤であることが好ましい。
【0013】
前記ノニオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベへニルエーテル、ポリオキシエチレン2-エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル、またはポリオキシエチレン(18)ノニルフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0014】
前記ノニオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン(18)ノニルフェニルエーテルであることが好ましい。
【0015】
前記アニオン性界面活性剤が、アルキルベンゼンスルホン酸またはアルキルベンゼンスルホン酸塩であることが好ましい。
【0016】
前記アニオン性界面活性剤が、デシルベンゼンスルホン酸(C=10)、デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(C=10)、ウンデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(C=11)、直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(C=12)、トリデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(C=13)およびテトラデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(C=14)から選ばれる少なくとも1種以上であることが望ましく、直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムであることが好ましい。
【0017】
前記植物成長促進活性有機物質が、植物成長に関わる植物ホルモンまたは前記植物ホルモンの生合成における前駆物質であることが好ましい。
【0018】
前記植物成長促進活性有機物質が、植物の成長促進剤、成長刺激剤、有機エリシターおよび機能性栄養素からなる群より選ばれる少なくとも1種またはその前駆物質であることが好ましい。
【0019】
前記植物成長促進活性有機物質が、テルペン、核酸、アミノ酸およびリン脂質からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0020】
前記混合物の浸透促進剤全体に対する含有比率が、浸透促進剤100重量部に対して、0.05~2.0重量部であることが好ましい。
【0021】
本発明の浸透促進剤においては、アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤の比率は、重量比でアニオン性界面活性剤/ノニオン性界面活性剤=0.1~10であることが望ましい。この重量比の範囲の活性剤を含む促進剤は、効率的に有機物質を植物の茎葉に浸透させることができるからである。
【0022】
本発明は、
(a)アニオン性界面活性剤(スルホ琥珀酸エステルを除く)とノニオン性界面活性剤との混合物(アルキル(C12~C16)酸の少なくとも1種のアルキル(C1~C8)エステルを含まない);および
(b)少なくとも1種類の植物成長促進活性有機物質
を含む農業用組成物に関する。
【0023】
前記植物成長促進活性有機物質が、植物成長に関わる植物ホルモンまたは植物ホルモンの生合成における前駆物質である農業用組成物が好ましい。
【0024】
前記植物成長促進活性有機物質が、植物の成長促進剤、成長刺激剤、有機エリシターおよび機能性栄養素からなる群より選ばれる少なくとも1種またはその前駆物質である農業用組成物が好ましい。
【0025】
前記植物成長促進活性有機物質が、テルペン、核酸、アミノ酸およびリン脂質からなる群より選ばれる少なくとも1種である農業用組成物が好ましい。
【0026】
前記ノニオン性界面活性剤が、エーテル型ノニオン性界面活性剤である農業用組成物が好ましい。
【0027】
前記ノニオン性界面活性剤が、フェニルエーテル型ノニオン性界面活性剤である農業用組成物が好ましい。
【0028】
前記ノニオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベへニルエーテル、ポリオキシエチレン2-エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル、またはポリオキシエチレン(18)ノニルフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種以上である農業用組成物が好ましい。
【0029】
前記ノニオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン(18)ノニルフェニルエーテルである農業用組成物が好ましい。
【0030】
前記アニオン性界面活性剤が、アルキルベンゼンスルホン酸またはアルキルベンゼンスルホン酸塩である農業用組成物が好ましい。
【0031】
前記アニオン性界面活性剤が、デシルベンゼンスルホン酸(C=10)、デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(C=10)、ウンデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(C=11)、直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(C=12)、トリデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(C=13)およびテトラデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(C=14)から選ばれる少なくとも1種以上である農業用組成物であることが望ましく、直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである農業用組成物が好ましい。
【0032】
前記混合物が、農業用組成物100重量部に対して、0.05~2.0重量部である農業用組成物が好ましい。
【0033】
植物に対する有機物質の、前記混合物に対する比率が、重量比で0.1~100である農業用組成物であることが望ましく、2~45である農業用組成物が好ましい。例えば、本発明の農業用組成物に含有される植物に対する有機物質としては、後述されるテルペン、核酸、アミノ酸およびリン脂質等が例示され得るが、例えばアニオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤の混合物0.5%に対して、テルペン1%、アミノ酸9%、核酸22.5%、リン脂質5%である。
【0034】
また、本発明の農業用組成物においては、アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤の比率は、重量比でアニオン性界面活性剤/ノニオン性界面活性剤=0.1~10であることが望ましい。この重量比の範囲の活性剤を含む組成物は、効率的に有機物質を植物の茎葉に浸透させることができるからである。
【0035】
本発明は、また、その中に含まれている植物成長促進活性有機物質を植物に施用するための、農業用組成物の使用に関する。
【0036】
本発明は、前記植物成長促進活性有機物質の前記植物に対する浸透性を向上させるための、農業用組成物の使用に関する。
【0037】
本発明は、茎葉散布のための農業用組成物の使用に関する。
【発明の効果】
【0038】
本発明の浸透促進剤は、植物において、植物に対して有用な効果を有する有機物質、特には植物成長促進活性有機物質の植物内部構造への浸透および/または植物による取り込みを顕著に促進し得る。また、本発明の浸透促進剤を含む農業用組成物により、植物成長促進活性有機物質の植物への浸透性および植物による取り込みが顕著に増大され、植物に対する高い成長促進効果が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】イネにおけるテルペン浸透量の分析結果を示す図である。
【
図2】イネにおけるアミノ酸浸透量の分析結果を示す図である。
【
図3】イネにおける核酸浸透量の分析結果を示す図である。
【
図4】イネにおけるリン脂質浸透量の分析結果を示す図である。
【
図5】大豆におけるテルペン浸透量の分析結果を示す図である。
【
図6】大豆におけるアミノ酸浸透量の分析結果を示す図である。
【
図7】大豆における核酸浸透量の分析結果を示す図である。
【
図8】大豆におけるリン脂質浸透量の分析結果を示す図である。
【
図9】リーフレタスにおけるテルペン浸透量の分析結果を示す図である。
【
図10】リーフレタスにおけるアミノ酸浸透量の分析結果を示す図である。
【
図11】リーフレタスにおける核酸浸透量の分析結果を示す図である。
【
図12】リーフレタスにおけるリン脂質浸透量の分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の浸透促進剤は、アニオン性界面活性剤(スルホ琥珀酸エステルを除く)とノニオン性界面活性剤との混合物(アルキル(C12~C16)酸の少なくとも1種のアルキル(C1~C8)エステルを含まない)を含む、植物成長促進活性有機物質の浸透促進剤である。
【0041】
本発明において「植物」とは、植物全体、植物器官(例えば葉、枝、幹、根、細根、シュート、果実など)または植物細胞を意味し得、特には、葉などの植物器官を意味する。本明細書で用いられる場合、「植物」は、畑作物、野菜作物および果実を含む。
【0042】
本発明の浸透促進剤は、アニオン性界面活性剤(スルホ琥珀酸エステルを除く)とノニオン性界面活性剤との混合物を含んでおり、植物に施用することによって、植物成長促進活性有機物質の植物への浸透性を高めることができる。この結果、植物における植物成長促進活性有機物質の取り込み量が増え、施用された植物において優れた成長促進効果が得られ得る。
【0043】
本発明の農業用組成物は、
(a)アニオン性界面活性剤(スルホ琥珀酸エステルを除く)とノニオン性界面活性剤との混合物(アルキル(C12~C16)酸の少なくとも1種のアルキル(C1~C8)エステルを含まない);および
(b)少なくとも1種類の植物成長促進活性有機物質
を含む農業用組成物である。
【0044】
本明細書において、「植物の成長を促進する(以下、「植物成長促進」と記すことがある。)」とは、葉面積増加、草丈の増加、植物体重量の増加、種子数または重量の増加、子実の数または重量の増加、根の断面の直径または長さ等の増加をいう。「植物成長促進活性」とは、葉面積増加、草丈の増加、植物体重量の増加、種子数または重量の増加、子実の数または重量の増加、根の断面の直径または長さ等の増加を植物において誘導することのできる能力を有していることをいう。
【0045】
本発明の「植物成長促進活性有機物質」としては、上述のような植物成長促進活性を有する物質であれば特に制限される訳ではなく、例えば、植物の成長の刺激、植物の全身獲得抵抗性および全身誘導抵抗性の刺激などの効果を有する化合物またはそれらの化合物の生合成における前駆物質であってよい。例えば、植物成長促進活性有機物質は、植物成長調整剤すなわち植物の健康、成長および/または収穫量を向上させるための物質、植物成長のための植物の免疫応答を改善する物質、または、それらの生合成における前駆物質であってよい。好ましくは、植物成長促進活性有機物質は、植物の成長促進剤、植物成長刺激剤、有機エリシターもしくは機能性栄養素、またはそれらの組み合わせ、またはそれらの前駆物質であり得る。
【0046】
本発明において、スルホ琥珀酸エステルとは、特許文献1の特開2000-95606号公報にあるように、スルホ琥珀酸のカルボキシル基にアルコールが脱水縮合して結合した化合物であり、例えば下記[式1]および[式2]で表されるものである。
【0047】
[式1]
[式2]
[式1および式2において、R
1,R
2,R
3,R
4:炭素数6~18の炭化水素基
A
1,A
2,A
3,A
4:炭素数2~4のオキシアルキレン
単位の繰り返しで構成された(ポリ)オキシアルキレン基であって、そのオキシアルキレン単位の繰り返し数が1~10であり、且つ該オキシアルキレン単位としてオキシエチレン単位を50モル%以上有するポリオキシアルキレン基
p,q,r,s:0または1
M
1:アルカリ土類金属
M
2:アルカリ金属またはアンモニウム]
【0048】
ここで、式1で示されるスルホ琥珀酸塩には、1)式1中のpおよびqが1である場合の、分子中に二つの(ポリ)オキシアルキレン基を有するスルホ琥珀酸アルカリ土類金属塩、2)式1中のpおよびqのうちで一方が1であり、他方が0である場合の、分子中に一つの(ポリ)オキシアルキレン基を有するスルホ琥珀酸アルカリ土類金属塩、3)式1中のpおよびqが0である場合の、分子中に(ポリ)オキシアルキレン基を有しないスルホ琥珀酸アルカリ土類金属塩が包含される。
【0049】
なお、式1におけるR1およびR2は炭素数6~18の炭化水素基であり、ヘキシル基、オクチル基、デカニル基、ドデカニル基、テトラデカニル基、ヘキサデカニル基、オクタデカニル基、8-ヘキサデセニル基、9-オクタデセニル基が含まれる。
【0050】
また、式1におけるA1およびA2は、オキシエチレン単位、オキシプロピレン単位、オキシブチレン単位等の炭素数2~4のオキシアルキレン単位で構成された(ポリ)オキシアルキレン基であり、該オキシアルキレン単位として、オキシエチレン単位を50モル%以上、好ましくは100モル%の割合で有する。該(ポリ)オキシアルキレン基を構成するオキシアルキレン単位の繰り返し数は、1~10である。
【0051】
また、式1におけるM1は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属である。
【0052】
さらに、式2で示されるスルホ琥珀酸塩には、1)式2中のrおよびsが1である場合の、分子中に二つの(ポリ)オキシアルキレン基を有するスルホ琥珀酸アルカリ金属塩またはアンモニウム塩、2)式2中のrおよびsのうちで一方が1であり、他方が0である場合の、分子中に一つの(ポリ)オキシアルキレン基を有するスルホ琥珀酸アルカリ金属塩またはアンモニウム塩、3)式2中のrおよびsが0である場合の分子中に(ポリ)オキシアルキレン基を有しないスルホ琥珀酸アルカリ金属塩またはアンモニウム塩が包含される。
【0053】
なお、式2におけるR3およびR4は、式1のR1およびR2について前述したことと同じであり、A3およびA4も、式1のA1およびA2について前述したことと同じである。
【0054】
また、式2におけるM2は、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属またはアンモニウムである。
【0055】
なお、上記式1で示されるスルホ琥珀酸塩および式2で示されるスルホ琥珀酸塩は、公知の方法で合成され得る。例えば、無水マレイン酸と脂肪族アルコールおよび/または脂肪族アルコキシポリアルキレングリコールモノオールとを酸触媒存在下でエステル化反応させて相当するマレイン酸ジエステルを得た後、これを亜硫酸水素ナトリウムを用いてスルホン化し、スルホ琥珀酸ナトリウム塩を得る。さらにスルホ琥珀酸ナトリウム塩とアルカリ土類金属の塩化物とを複分解反応させて、スルホ琥珀酸アルカリ土類金属塩を得る。
【0056】
このような、スルホ琥珀酸エステルは、皮膚刺激性があるため取り扱いしにくく、また、量産を考慮すると合成コストが高くなるなどの問題がある。このため、スルホ琥珀酸エステルは、本発明のアニオン性界面活性剤から除かれる。
【0057】
本発明において、アルキル(C12~C16)酸の少なくとも1種のアルキル(C1~C8)エステルとは、特許文献2の特表2022-517958号公報にあるように、天然または合成、直鎖または分岐状、飽和または不飽和、修飾または非修飾を含む群から選択され得、アルキルエステルは、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、イソプロピルエステル、イソブチルエステル、イソペンチルエステル、2~エチルヘキシルエステル、またはそれらの構成成分もしくは組合せの群から選択される化合物である。また、アルキル(C12~C16)酸の少なくとも1種のアルキル(C1~C8)エステルは、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、およびそれらの組合せを含む群から選択されるアルキル酸から誘導される。
【0058】
アルキル(C12~C16)酸の少なくとも1種のアルキル(C1~C8)エステルは、ラウリン酸イソブチル、ラウリン酸イソペンチル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸2~エチルヘキシル、パルミチン酸2~エチルヘキシル、ラウリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、およびそれらの組合せを含む群から選択される。
【0059】
特許文献2にも記載されているように、アルキル(C12~C16)酸の少なくとも1種のアルキル(C1~C8)エステルは、パラフィンワックスの溶解能力をもっており、標的作物または有害生物のエピクチクラを通した活性成分の浸透の改善を提供するとされている。このようなアルキル(C12~C16)酸の少なくとも1種のアルキル(C1~C8)エステルは親油性であり、本発明のアニオン性界面活性剤(スルホ琥珀酸エステルを除く)とノニオン性界面活性剤との混合物の作用によって、植物の茎葉に浸透してしまい、本来浸透させたい有機物質の浸透を阻害してしまう。このため、本発明においては、親油性のエステル類であるアルキル(C12~C16)酸の少なくとも1種のアルキル(C1~C8)エステルは含有されるべきではないのである。
【0060】
一実施形態において、植物成長促進活性有機物質は、植物成長に関わる植物ホルモンまたは植物ホルモンの生合成における前駆物質である。植物成長に関わる植物ホルモンとしては、例えば、根の伸長、着果促進、子実の収量増加、花芽形成促進、子房の成長(肥大)促進、結莢率の向上などの生理作用をもつ植物ホルモンが挙げられ、それに類似した活性をもつ有機化合物も含まれる。例えば、オーキシン、ジベレリン、サイトカイニン、アブシシン酸、ブラシノステロイドなど、またはそれらの前駆物質であり得る。前駆物質としては、テルペン類、アミノ酸、核酸などが挙げられる。
【0061】
また、植物に対する有機物質としては、代謝に関わる物質であってもよく、具体的にはリン脂質などが挙げられる。
【0062】
本発明の浸透促進剤は、上述の植物成長促進活性有機物質の植物における取り込みを増進させることができる。また、本発明の農業用組成物を用いることにより、農業用組成物に含有されている植物成長促進活性有機物質の植物組織内への送達が増大されるため、生物学的活性の高い農業用組成物が提供され得る。
【0063】
有機物質が植物の茎葉などに施用される場合、その生物学的活性は、植物の表面のワックス-クチクラ層に浸透する有機物質の能力および葉の多層バリヤーを介して葉内組織に入り込む有機物質の移動性により影響され得る。本発明のアニオン性界面活性剤(スルホ琥珀酸エステルを除く)とノニオン性界面活性剤との混合物は、有機物質のワックス-クチクラ層に対する浸透・透過を促進し得る。したがって、本発明のアニオン性界面活性剤(スルホ琥珀酸エステルを除く)とノニオン性界面活性剤との混合物は、植物に付着した散布液の液滴を拡張させて接触面積を増大させる水滴湿展作用やクチクラ膜への透入によりクチクラ膜内拡散速度を促進させるクチクラ膜活性化作用を有していると考えられる。
【0064】
本発明の農業用組成物は、上述される有機物質のワックス-クチクラ層に対する浸透・透過を促進する効果を有するアニオン性界面活性剤(スルホ琥珀酸エステルを除く)とノニオン性界面活性剤との混合物を含んでおり、含有する植物成長促進活性有機物質の有効性を顕著に増強することができる。同様の植物成長促進活性有機物質を含有する従来技術の農業用組成物と比較して少ない農業用組成物の適用量で改良された効力を発揮することができると考えられる。
【0065】
本発明において使用されるアニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤との混合物において、ノニオン性界面活性剤は、エーテル型ノニオン性界面活性剤である。好ましくは、ノニオン性界面活性剤は、フェニルエーテル型ノニオン性界面活性剤である。さらに好ましくは、前記ノニオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベへニルエーテル、ポリオキシエチレン2-エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレン(18)ノニルフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種以上である。
【0066】
本発明において使用されるアニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤との混合物において、アニオン性界面活性剤がスルホ琥珀酸エステルを含まないことが好ましい。琥珀酸エステルは、一般的に生分解を受けにくく環境負荷が高いためである。好ましくは、アニオン性界面活性剤は、アルキルベンゼンスルホン酸またはアルキルベンゼンスルホン酸塩が望ましく、具体的にはデシルベンゼンスルホン酸(C=10)、デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(C=10)、ウンデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(C=11)、直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(C=12)、トリデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(C=13)およびテトラデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(C=14)から選ばれる少なくとも1種以上のものが挙げられ、直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい。本発明の浸透促進剤および農業用組成物において、界面活性剤成分として、ポリオキシエチレン(18)ノニルフェニルエーテルと直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムとの組み合わせが使用されることが最も好ましい。植物成長促進活性有機物質の植物組織内への顕著に高い浸透性が提供され得る。
【0067】
上記植物成長促進活性有機物質としては、例えば、テルペン、核酸、アミノ酸およびリン脂質からなる群より選ばれる少なくとも1種以上が挙げられる。
【0068】
テルペンは、子実の収量増加、花芽形成促進および子房の成長促進の生理作用をもつ植物ホルモンであるジベレリンの生合成における前駆物質である。
【0069】
テルペンとしては、任意のテルペンが好適に利用され得るが、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペンおよびそれらの誘導体が好ましい。特に、好ましい例としては、α-ピネン、β-ピネン、シルベストレン、リモネンのようなモノテルペンが植物ホルモンの中核物質であるため望ましい。さらにテルピネオールを含んでいてもよい。テルピネオールは、その異性体として、α-テルピネオール、β-テルピネオールおよびγ-テルピネオールを含むが、α-テルピネオールであることがさらに好ましい。しかしながら、例えば、通常市販されているテルピネオールは、α-テルピネオールを主成分として、β-テルピネオールとγ-テルピネオールとの混合物であることがあり、すなわち、α-テルピネオールを主に含むものであれば、異性体の混合物をそのまま使用可能である。α-ピネンを主成分として含むパインオイルなどが、本発明において好適に使用され得る。
【0070】
核酸は、例えばサイトカイニンなどの種々の植物成長に関わる植物ホルモンの生合成における前駆物質である。核酸を施用することにより、当該植物における植物ホルモンの生合成を増加させることができる。サイトカイニンは、植物における細胞分裂を促進し、葉の緑化や植物の成長促進、落花・落莢の抑制、および莢の伸長促進、個体あたりの子実重および/または子実数の増加等の生理作用を有する植物ホルモンである。
【0071】
なお、本明細書において使用される場合、用語「核酸」は、核酸塩基、ヌクレオシド、リボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドから選ばれる少なくとも1種を意味する。
【0072】
本発明の核酸としては、特に限定されず、一般的な核酸塩基5種すなわちアデニン、グアニン、チミン、シトシン、ウラシル、ヌクレオシド5種すなわちアデノシン、グアノシン、チミジン、シチジン、ウリジン、これら5種のリボヌクレオシド、これら5種に1~3個のリン酸がエステル結合したリボヌクレオチド15種(AMP(アデノシンモノリン酸)、ADP(アデノシン二リン酸)、ATP(アデノシン三リン酸)、GMP(グアノシンモノリン酸)、GDP(グアノシン二リン酸)、GTP(グアノシン三リン酸)、TMP(チミジル酸/チミジン-リン酸)、TDP(チミジン二リン酸)、TTP(チミジン三リン酸)、CMP(シチジンモノリン酸)、CDP(シチジン二リン酸)、CTP(シチジン三リン酸)、UMP(ウリジンモノリン酸)、UDP(ウリジン二リン酸)、UTP(ウリジン三リン酸)、またはこれらリボヌクレオチドのリボースの2位のヒドロキシル基が水素に置換されたデオキシリボヌクレオチド15種(dAMP、dADP、dATP、dGMP、dGDP、dGTP、dTMP、dTDP、dTTP、dCMP、dCDP、dCTP、dUMP、dUDP、dUTP)、5-メチルウリジン(m5U)などの修飾塩基等から適宜選択されてよく、また、これらのうちの2種以上の混合物であってもよい。
【0073】
アミノ酸は、植物において重要な窒素源であると共に、植物の代謝において多岐に渡る機能を呈するタンパク質のビルディングブロックである。アミノ酸は、植物成長に関わる種々の酵素や植物成長に関わる植物ホルモンの生合成に関わる代謝物および前駆体として、ならびに種々の二次化合物の前駆体として使用され得る。
【0074】
本発明で使用されるアミノ酸としては、特に限定されず、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン(スレオニン)、トリプトファン、バリン、ヒスチジン、チロシン、システイン、アスパラギン酸、アスパラギン、セリン、グルタミン酸、グルタミン、プロリン、グリシン、アラニン、アルギニンから適宜選択されてよく、また、これらのうちの2種以上の混合物であってもよい。
【0075】
リン脂質は、例えば細胞膜修復を強化する効果を有する。本発明で使用されるリン脂質としては、天然に存在するリン脂質であってもよく、合成リン脂質であってもよい。例えば、天然に存在するリン脂質としては、例えば、大豆レシチン、卵レシチン、水添大豆レシチン、水添卵レシチン、スフィンゴシン、ガングリオシド、およびフィトスフィンゴシンなどが挙げられ、また、これらのうちの2種以上の混合物であってもよい。合成リン脂質としては、例えば、ジアシルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスホコリン、ホスホエタノールアミン、ホスホグリセロール、ホスホセリン、混合鎖リン脂質、リゾリン脂質、ペグ化リン脂質などが挙げられ、また、これらのうちの2種以上の混合物であってもよい。
【0076】
本発明の浸透促進剤および農業用組成物は、固体として提供され得る。例えば、固体の剤型としては、粉末、水和性粉末、水溶性粉末、散粉性粉末、フローダスト、結晶、粒剤、カプセル化粒剤、細粒剤、微粒剤、マイクロカプセル、ペレット、錠剤、フレーク等が挙げられる。代替的には、本発明の浸透促進剤および農業用組成物は、液体として提供され得る。例えば、液体の剤型としては、溶液、濃縮溶液、水溶液、懸濁液、マイクロカプセル懸濁液、ペースト、スラリー、ゲル、液体可溶性ゲルなどが挙げられる。好ましくは、本発明の浸透促進剤および農業用組成物は、溶媒をさらに含み、液体として製剤化される。使用される溶媒は水であることが望ましい。アニオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤を溶解させやすいからである。
【0077】
本発明の浸透促進剤または農業用組成物において、アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤との混合物は、浸透促進剤または農業用組成物100重量部に対して、0.05~2重量部程度であることが好ましい。また、本発明の農業用組成物における植物成長促進活性有機物質の、アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤との混合物に対する比率は、重量比で0.1~100であることが望ましく、2~45であり得る。農業用組成物に含有される植物成長促進活性有機物質の植物体組織中への浸透を効果的に促進させることができる。
【0078】
本発明の浸透促進剤および農業用組成物においては、アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤の比率は、重量比でアニオン性界面活性剤/ノニオン性界面活性剤=0.1~10であることが望ましい。この重量比の範囲の活性剤を含む促進剤は、効率的に有機物質を植物の茎葉に浸透させることができる。
【0079】
本発明による農業用組成物の施用量は、農業用組成物に含有される特定の植物成長促進活性有機物質の特性およびそれらの当該農業用組成物中の量に依存して、広い範囲内で変えることができる。本発明の農業用組成物における植物成長促進活性有機物質の含有比率も、農業用組成物に含有される特定の植物成長促進活性有機物質の特性に依存して、また、植物に対する植物成長促進活性有機物質の有効な施用量に適するように、適宜選択されてよい。
【0080】
本発明は、本発明の浸透促進剤を使用することによる、植物体組織中への植物成長促進活性有機物質の浸透を向上させる方法、および、植物体組織による植物成長促進活性有機物質の取り込みおよび/または吸収を向上させる方法に関する。
【0081】
本発明の浸透促進剤は、植物の成長および/または収穫量を増進するために使用され得る。したがって、本発明は、本発明の浸透促進剤を施用することによって、植物の成長および/または収穫量を増進する方法に関する。本発明の浸透促進剤は、植物への取り込みを促進させたい植物成長促進活性有機物質の種類や特性に依存して、任意の方法で植物に施用することができる。例えば、水に懸濁させて用いる水和剤として用いられ得、例えば、植物の茎葉や根に接触させる噴霧剤や浸漬用薬剤として使用されてもよい。具体的な施用方法は、施用される栽培植物や使用形態によって適宜選択され得るが、例えば、地上液剤散布、空中液剤散布、液面散布、施設内施用、塗布処理等の表面処理、育苗箱施用、単花処理、株元処理等が例示され得る。例えば本発明の浸透促進剤は、植物に噴霧によって施用され得る。
【0082】
本発明の農業用組成物には、必要に応じて、農薬製剤などに通常用いられる、農業的に許容され得る薬剤がさらに含有されていてもよい。これらの薬剤としては特に限定されないが、例えば、希釈剤、凍結融解安定剤、殺生物剤、防腐剤、顔料、染料、着色剤、緩衝剤またはpH調整剤または中和剤、泡抑制剤または消泡剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、および安定剤等が挙げられる。このような薬剤は、商業的に製造され、様々な会社を通して利用可能である。なお、本明細書における「農業的に許容され得る薬剤」とは、農業的または園芸的使用のための組成物の調製のための技術分野において既知であり且つ許容される薬剤を意味する。
【0083】
本発明による農業用組成物を用いて、種々の植物および植物の部分を効果的に処理することができる。本発明による農業用組成物は、植物成長促進活性有機物質を特に有利な方法で植物および/またはそれらの生息環境に送達することが可能である。したがって、本発明は、その中に含まれている植物成長促進活性有機物質を植物に施用するための、本発明による農業用組成物の使用を包含する。本発明による農業用組成物を使用することによって、植物成長促進活性有機物質のより少ない適用量で、増進された植物成長促進効果を得ることができる。
【0084】
本発明は、さらに、その中に含まれている植物成長促進活性有機物質の植物に対する浸透性を向上させるための本発明による農業用組成物の使用に関する。
【0085】
本発明の農業用組成物を用いた植物および植物の部分の本発明による処理は、慣習的な処理方法に従って、例えば、浸漬、散布、噴霧、もしくは塗布などによって、直接的に行うか、または、それらの周囲、生息環境もしくは貯蔵所等に作用させることにより行われ得る。特には、本発明は、茎葉散布のための、本発明による農業用組成物の使用に関する。
【実施例0086】
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
【0087】
・浸透促進剤溶液の調製
[実施例1]
[実施例1]
ポリオキシエチレン(18)ノニルフェニルエーテル(富士フイルム和光純薬(株)製)5gと直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬(株)製)5gとをイオン交換水2000mLに溶解したものを浸透促進剤溶液1とした。
【0088】
[比較例1]
対照としてイオン交換水を浸透促進剤溶液2とした。
【0089】
[比較例2]
炭酸カリウム(富士フイルム和光純薬(株)製)2.16g、およびリン酸水素二カリウム(富士フイルム和光純薬(株)製)2.8gを蒸留水130mLに溶解した。得られた溶液の0.2mLをイオン交換水で2000mLに希釈し、浸透促進剤溶液3とした。
【0090】
[比較例3]
純度90%のリノール酸(日油(株)製)5.8gを、炭酸カリウム(富士フイルム和光純薬(株)製)2.16gおよびリン酸水素二カリウム(富士フイルム和光純薬(株)製)2.8gにて蒸留水130mLに分散させた。得られた溶液の0.2mLをイオン交換水で2000mLに希釈し、浸透促進剤溶液4とした。
【0091】
[比較例4]
ポリオキシエチレン(18)ノニルフェニルエーテル(富士フイルム和光純薬(株)製)10gをイオン交換水2000mLに溶解したものを浸透促進剤溶液5とした。
【0092】
[比較例5]
直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬(株)製)10gをイオン交換水2000mLに溶解したものを浸透促進剤溶液6とした。
【0093】
・試験用浸透液の調製
A)テルペン浸透試験用
2000mLの浸透促進剤溶液1~6それぞれにパインオイル(ease社製)40μL(20mg)を添加した溶液をテルペン試験用浸透液とした。
【0094】
B)アミノ酸浸透試験用
2000mLの浸透促進剤溶液1~6それぞれにアミノ酸サプリメント(ファンケル社製 商品名:マルチアミノ酸(成分:イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン(スレオニン)、トリプトファン、バリン、ヒスチジン、チロシン、システイン、アスパラギン酸、アスパラギン、セリン、グルタミン酸、グルタミン、プロリン、グリシン、アラニン、アルギニン)をすり潰したもの180mgを溶解した液をアミノ酸試験用浸透液とした。
【0095】
C)核酸浸透試験用
2000mLの浸透促進剤溶液1~6それぞれに核酸粒((株)健康応援団製)をすり潰したもの450mgを溶解した液を核酸試験用浸透液とした。
【0096】
D)リン脂質浸透試験用
2000mLの浸透促進剤溶液1~6それぞれに大豆由来レシチン(富士フイルム和光純薬(株)製)100mgを分散させた液をリン脂質試験用浸透液とした。
【0097】
・試験用浸透液を用いた各有機物質の浸透性試験
i)イネにおける浸透性試験
人工気象機(LH-60FL3-DT:(株)日本医化器械製作所製)内で温度15℃、消灯下で、イネ(品種:日本晴)種籾を水に5日間浸漬した後、半日間温度を30℃とした。得られた鳩胸状の種籾を滅菌した種まき培土(タキイ種苗(株)製)を入れた72穴セルトレイにセル当り4つ播種した。人工気象機内で温度28℃、蛍光灯下14時間と温度23℃、消灯下10時間を1日のサイクルとして2葉期となるまで育成させた。
【0098】
重量0.1~0.12gの大きさの揃った葉を茎から切り離し、各試験用浸透液10mLを入れた9cmφシャーレに切断部から1cmを除いて1枚ずつ浸漬させ蓋をした。10分、30分、および60分後にシャーレから葉を取出し、大量のイオン交換水にて洗浄後、キムタオルで表面をぬぐい、付着成分と水とを取り除いた。なお、浸透性試験は、それぞれの試験用浸透液において、各時間毎のサンプル数N=3で行った。得られた葉は直ちに-80℃の冷凍庫内に移され、24時間凍結された。
【0099】
上述の凍結されたサンプルに、エタノール:水:酢酸=80:20:1の混合液をサンプル0.1g当たり混合液1mLの濃度となるように添加した。混合液添加後、サンプルをビーズ破砕し、続いて、超音波処理を10分間行った。処理後サンプルを1時間静置した後、遠心分離機(himac CT6E:エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ(株)製)で3000rpm、5分間遠心分離した上澄みをメンブレンフィルターでろ過し分析サンプルとした。
【0100】
ii)大豆における浸透性試験
大豆(品種:ふくゆたか)の種を、野菜と花の種まき培土(タキイ種苗(株)製)を入れた3号ポットにポット当り4つ播種した。人工気象機(LH-60FL3-DT:(株)日本医化器械製作所製)内で温度25℃、蛍光灯下14時間と温度20℃、消灯下10時間を1日のサイクルとして20日間育成させた。
【0101】
新葉のうち重量0.27~0.30gの大きさの揃った葉を茎から切り離し、9cmφシャーレに1枚ずつ置き、葉の表側に各試験用浸透液2mLを染み込ませた縦×横×厚さ=1.5cm×1.5cm×0.5cmに裁断した脱脂綿を置き、蓋をした。10分、30分、および60分後にシャーレから葉を取出し、大量のイオン交換水にて洗浄後、キムタオルで表面をぬぐい、付着成分と水を取り除いた。なお、浸透性試験は、それぞれの試験用浸透液において、各時間毎のサンプル数N=3で行った。得られた葉は直ちに-80℃の冷凍庫内に移され、24時間凍結された。
【0102】
上述の凍結されたサンプルに、エタノール:水:酢酸=80:20:1混合液をサンプル0.1g当たり混合液1mLの濃度となるように添加した。混合液添加後、サンプルをビーズ破砕し、続いて、超音波処理を10分間行った。処理後サンプルを1時間静置した後、遠心分離機(himac CT6E:エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ(株)製)で3000rpm、5分間遠心分離した上澄みをメンブレンフィルターでろ過し分析サンプルとした。
【0103】
iii)リーフレタスにおける浸透性試験
リーフレタス(品種:グランドラピット)の種を、野菜と花の種まき培土(タキイ種苗(株)製)を入れた200穴の育苗ピットトレイに播種した。人工気象機(LH-60FL3-DT:(株)日本医化器械製作所製)内で温度23℃、蛍光灯下14時間と温度20℃、消灯下10時間を1日のサイクルとして発芽させた。同条件にて育苗を進め、本葉2~3枚の時期に6cmポットに移植し、本葉4~5枚期まで育成させた。
【0104】
外側の葉のうち重量0.45~0.50gの大きさの揃った葉を茎から切り離し、9cmφシャーレに1枚ずつ置き、葉の表側に各試験用浸透液2mLを染み込ませた縦×横×厚さ=1.5cm×1.5cm×0.5cmに裁断した脱脂綿を置き、蓋をした。10分、30分、および60分後に葉を取出し、大量のイオン交換水にて洗浄後、キムタオルで表面をぬぐい、付着成分と水を取り除いた。なお、浸透性試験は、それぞれの試験用浸透液において、各時間毎のサンプル数N=3で行った。得られた葉は直ちに-80℃の冷凍庫内に移され、24時間凍結された。
【0105】
上述の凍結されたサンプルに、エタノール:水:酢酸=80:20:1混合液をサンプル0.1g当たり混合液1mLの濃度となるように添加した。混合液添加後、サンプルをビーズ破砕し、続いて、超音波処理を10分間行った。処理後サンプルを1時間静置した後、遠心分離機(himac CT6E:エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ(株)製)で3000rpm、5分間遠心分離した上澄みをメンブレンフィルターでろ過し分析サンプルとした。
【0106】
・各有機物質の浸透量分析
A)テルペン浸透量の分析
分析サンプルをLC-MS/MS装置(LC部:DIONEX Ultimate3000、MS/MS部:Q Exactive Focus:サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製)にて次の条件で、テルペン量について分析を行った。カラム=Aclaim PR-MS2.1mmφ×150mm(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製)、溶媒=60%アセトニトリル/酢酸水→95%アセトニトリル/酢酸水、流速=0.25mL/min.、カラム温度=40℃、検出=MS-(SIM)、導入=サンプル液2μL。パインオイル(ease社製)に含まれるαピネンのMS-のピーク面積値から定量し、各浸透促進剤溶液1~6(実施例1、および比較例1~5)によるテルペンの葉内組織への浸透量の比較を行った。
【0107】
イネにおける結果を
図1に、大豆における結果を
図5に、および、リーフレタスにおける結果を
図9に示す。
【0108】
B)アミノ酸浸透量の分析
分析サンプルをLC-MS/MS装置(LC部:DIONEX Ultimate3000、MS/MS部:Q Exactive Focus:サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製)にて次の条件で、アミノ酸量について分析を行った。カラム=Aclaim PR-MS2.1mmφ×150mm(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製)、溶媒=0%アセトニトリル/酢酸水→30%アセトニトリル/酢酸水、流速=0.25mL/min.、カラム温度=40℃、検出=MS-(SIM)、導入=サンプル液2μL。アミノ酸サプリメント(ファンケル社製 商品名:マルチアミノ酸)に含まれるアミノ酸のうち植物の代謝が最も緩慢であるバリンのMS-のピーク面積値から定量し、各浸透促進剤溶液1~6(実施例1、および比較例1~5)によるアミノ酸の葉内組織への浸透量の比較を行った。なお、アミノ酸は、元来葉に含まれているため、無処理葉5枚のアミノ酸量分析値の平均値を差し引いて評価を行った。
【0109】
イネにおける結果を
図2に、大豆における結果を
図6に、および、リーフレタスにおける結果を
図10に示す。
【0110】
C)核酸浸透量の分析
分析サンプルをLC-MS/MS装置(LC部:DIONEX Ultimate3000、MS/MS部:Q Exactive Focus:サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製)にて次の条件で、核酸量について分析を行った。カラム=Aclaim PR-MS2.1mmφ×150mm(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製)、溶媒=0%アセトニトリル/酢酸水→30%アセトニトリル/酢酸水、流速=0.25mL/min.、カラム温度=40℃、検出=MS-(SIM)、導入=サンプル液2μL。核酸粒((株)健康応援団製)に含まれる核酸のうち植物の代謝が最も緩慢であるアデノシンモノリン酸のMS-のピーク面積値から定量し、各浸透促進剤溶液1~6(実施例1、および比較例1~5)による核酸の葉内組織への浸透量の比較を行った。なお、核酸は、元来葉に含まれているため、無処理葉5枚の核酸量分析値の平均値を差し引いて評価を行った。
【0111】
イネにおける結果を
図3に、大豆における結果を
図7に、および、リーフレタスにおける結果を
図11に示す。
【0112】
D)リン脂質浸透量の分析
分析サンプルをLC-MS/MS装置(LC部:DIONEX Ultimate3000、MS/MS部:Q Exactive Focus:サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製)にて次の条件で、リン脂質量について分析を行った。カラム=Aclaim PR-MS2.1mmφ×150mm(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製)、溶媒=90%アセトニトリル/酢酸水→100%アセトニトリル/酢酸水、流速=0.25mL/min.、カラム温度=40℃、検出=MS-(SIM)、導入=サンプル液2μL。大豆由来レシチン(富士フイルム和光純薬(株)製)に含まれるリン脂質のうちホスファチジルコリン(C16:C16)のMS-のピーク面積値から定量し、各浸透促進剤溶液1~6(実施例1、および比較例1~5)によるリン脂質の葉内組織への浸透量の比較を行った。なお、リン脂質は、元来葉に含まれているため、無処理葉5枚のリン脂質量分析値の平均値を差し引いて評価を行った。
【0113】
イネにおける結果を
図4に、大豆における結果を
図8に、および、リーフレタスにおける結果を
図12に示す。
【0114】
図1~12に示されるように、アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤との混合物を含む本発明の浸透促進剤溶液(実施例1)が適用された植物の葉内には、従来の界面活性剤を含む浸透促進剤溶液(比較例4および5)が適用された場合と比較して、より多くの植物成長促進活性有機物質が取り込まれていた。なお、リノール酸やカリウム塩のみ(比較例2および3)では、植物成長促進活性有機物質に対する浸透促進効果はほとんど見られなかった。本発明の浸透促進剤溶液が、施用された植物の葉の表面での、テルペン、アミノ酸、核酸、およびリン脂質などの植物成長促進活性有機物質の吸収を促進していることがわかる。
【0115】
以上の結果から、本実施例の浸透促進剤は、植物成長促進活性有機物質の植物組織内への浸透および/または取り込みを増大させる効果を有しており、この結果、植物の成長を促進することができることがわかる。浸透される有機物質としては、オクタノール/水分配係数が7.73以下程度の有機物質であれば、好適に使用され得る。
【0116】
また、本発明の浸透促進剤には、余分な親油性のエステル類を含まないため、本来浸透させたい有機物質の浸透を阻害することがなく、植物の茎葉に対して効率的に有機物質を浸透させることができるのである。