(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108820
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】流体用ホース
(51)【国際特許分類】
F16L 11/06 20060101AFI20240805BHJP
C08L 9/02 20060101ALI20240805BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
F16L11/06
C08L9/02
C08K3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013408
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】平 真由香
(72)【発明者】
【氏名】平戸 元基
(72)【発明者】
【氏名】平井 亮
【テーマコード(参考)】
3H111
4J002
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA12
3H111BA15
3H111BA32
3H111BA34
3H111CB02
3H111DA12
3H111DA26
3H111DB08
3H111DB09
4J002AC07W
4J002BD04X
4J002DA036
4J002FD016
4J002FD020
4J002FD030
4J002FD07X
4J002FD140
4J002FD150
4J002GM00
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】耐オゾン性、耐抽出性に優れる流体用ホースを提供する。
【解決手段】ニトリル系ゴム(A)を主成分とするニトリル系ゴム組成物からなる流体用ホースであって、前記ニトリル系ゴム組成物のモジュラス(M10)が、0.1~0.5MPaであり、前記ニトリル系ゴム組成物が、パラフィン系ワックスを含有しない、流体用ホース。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニトリル系ゴム(A)を主成分とするニトリル系ゴム組成物からなる流体用ホースであって、
前記ニトリル系ゴム組成物のモジュラス(M10)が、0.1~0.5MPaであり、
前記ニトリル系ゴム組成物が、パラフィン系ワックスを含有しない、流体用ホース。
【請求項2】
前記ニトリル系ゴム(A)が、ポリ塩化ビニルを含有する、請求項1記載の流体用ホース。
【請求項3】
前記ニトリル系ゴム組成物が、カーボンブラック(B)を含有する、請求項1または2記載の流体用ホース。
【請求項4】
前記カーボンブラック(B)の含有量が、前記ニトリル系ゴム(A)100質量部に対して10~150質量部である、請求項3記載の流体用ホース。
【請求項5】
前記カーボンブラック(B)の平均粒子径が15~75nmである、請求項3記載の流体用ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体用ホースに関し、より詳しくは耐オゾン性、耐抽出性に優れた流体用ホースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ジエン系ゴムは、耐摩耗性に比較的優れるものの、耐候性、特に耐オゾン性に劣り、オゾンの存在下では劣化が進行し、表面に亀裂、いわゆるオゾンクラックが発生する。この亀裂は、ゴム物品に係る静的および動的応力により進行し、その結果、ゴム物品が破壊に至ってしまう。
【0003】
前記ジエン系ゴムに耐オゾン性を付与するために、ワックスを添加することが知られている。
例えば、特許文献1には、ジエン系ポリマー、融点が40℃以上の高級脂肪酸エステル、炭素数40以上50以下のマイクロワックス、炭素数30以上40未満のパラフィンワックスを含有するホースカバー用ゴム組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示のホースカバー用ゴム組成物を液体用のホースとし、特定の溶媒(例えば、低分子量のオイル)を送液した場合、パラフィン系ワックスが、溶媒に抽出(溶出)される恐れがある。
一方、成分の抽出を抑制するために、パラフィン系ワックスを除去した場合、十分な耐オゾン性を有さなくなる恐れがある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、耐オゾン性、耐抽出性に優れる流体用ホースの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために、研究を重ねた結果、ジエン系ゴムとして、ニトリル系ゴムを選択し、モジュラスを特定範囲にすれば、耐オゾン性、耐抽出性に優れる流体用ホースが得られることを見いだし、本発明に到達した。
【0008】
即ち、本発明は、以下の[1]~[5]をその要旨とする。
[1] ニトリル系ゴム(A)を主成分とするニトリル系ゴム組成物からなる流体用ホースであって、
前記ニトリル系ゴム組成物のモジュラス(M10)が、0.1~0.5MPaであり、
前記ニトリル系ゴム組成物が、パラフィン系ワックスを含有しない、流体用ホース。
[2] 前記ニトリル系ゴム(A)が、ポリ塩化ビニルを含有する、[1]に記載の流体用ホース。
[3] 前記ニトリル系ゴム組成物が、カーボンブラック(B)を含有する、[1]または[2]に記載の流体用ホース。
[4] 前記カーボンブラック(B)の含有量が、前記ニトリル系ゴム(A)100質量部に対して10~150質量部である、[3]に記載の流体用ホース。
[5] 前記カーボンブラック(B)の平均粒子径が15~75nmである、[3]に記載の流体用ホース。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐オゾン性、耐抽出性に優れる流体用ホースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る流体用ホースの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
【0012】
以下、本発明の流体用ホースを形成するニトリル系ゴム組成物に含まれる各成分について説明する。
【0013】
〔ニトリル系ゴム(A)〕
前記ニトリル系ゴムとしては、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、水添アクリロニトリルブタジエンゴム(H-NBR)、アクリロニトリルブタジエンゴムとポリ塩化ビニル(PVC)とのブレンドポリマー(NBR-PVC)等があげられる。これらは単独であるいは2種以上併せて用いられる。
【0014】
前記ニトリル系ゴム(A)のアクリロニトリル量(AN量)は、通常15~48質量%であり、好ましくは15~35質量%である。すなわち、ニトリル系ゴム(A)のAN量が前記範囲未満であると、耐油特性が劣る傾向があり、逆に、ニトリル系ゴム(A)のAN量が前記範囲を超えると、耐寒性等が低下する傾向がある。
【0015】
前記ニトリル系ゴム(A)は、耐オゾン性の観点から、PVCを含有することが好ましい。すなわち、ニトリル系ゴム(A)は、PVCとのブレンドポリマー(NBR-PVC)を含むことが好ましい。
【0016】
前記NBR-PVC中のPVCの含有量は、特に限定されないが、一般的な耐オゾン性を考慮して、上記NBR-PVC中の15~45質量%であることが好ましい。すなわち、PVCの含有量が15質量%未満であると耐オゾン性に劣る傾向があり、PVCの含有量が45質量%を超えると加工性等の面で問題が生じる傾向がある。
【0017】
本発明においては、ゴム成分としてニトリル系ゴム(A)以外のゴムを含んでいてもよいが、前記ニトリル系ゴム組成物のゴム成分の80質量%以上がニトリル系ゴム(A)であることが好ましく、より好ましくは前記ゴム成分の90質量%以上がニトリル系ゴム(A)であり、さらに好ましくは前記ゴム成分がニトリル系ゴム(A)のみからなることである。
【0018】
また、前記ニトリル系ゴム(A)は、ニトリル系ゴム組成物の主成分である。ここで、主成分とは、ニトリル系ゴム組成物の特性に大きな影響を与える成分の意味であり、その成分の含有量は、通常、ニトリル系ゴム組成物の30質量%以上であり、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上である。
【0019】
前記ニトリル系ゴム組成物には、カーボンブラック(B)を含むことが好ましい。
【0020】
<カーボンブラック(B)>
前記カーボンブラック(B)としては特に限定されず、例えば、SAF、ISAF、HAF、MAF、FEF、SRF、GPF、APF、FF、CF、SCFおよびECFのようなファーネスブラック(ファーネスカーボンブラック);アセチレンブラック(アセチレンカーボンブラック);FTおよびMTのようなサーマルブラック(サーマルカーボンブラック);EPC、MPCおよびCCのようなチャンネルブラック(チャンネルカーボンブラック);グラファイト等をあげることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ファーネスブラックが好ましく、SRF、GPFがより好ましい。前記ファーネスブラックを用いることにより、後述するモジュラスを特定範囲にできる傾向がある。
【0021】
カーボンブラック(B)の平均粒子径は、100nm以下が好ましく、90nm以下がより好ましく、75nm以下が更に好ましい。下限は特に設定されないが、15nm以上が好ましい。カーボンブラック(B)の平均粒子径を前記範囲内とすることにより、後述するモジュラスを特定範囲にできる傾向があり、耐オゾン性に優れる傾向がある。なお、カーボンブラック(B)の平均粒子径は、TEM等を用いることで測定できる。
【0022】
前記カーボンブラック(B)のジブチルフタレート(DBP)吸収量は、40~250ml/100gであることが好ましく、50~200ml/100gであることがより好ましく、50~160ml/100gであることが特に好ましい。前記カーボンブラック(B)のDBP吸収量が前記範囲内であることにより、後述するモジュラスを特定範囲にできる傾向があり、耐オゾン性に優れる傾向がある。
前記DPB吸収量は、JIS K6217-4(2017)に従い非圧縮試料について測定することができる。
【0023】
前記カーボンブラック(B)の含有量は、ニトリル系ゴム(A)100質量部に対して、好ましくは5~200質量部、より好ましくは20~150質量部、更に好ましくは30~130質量部、特に好ましくは35~110質量部である。カーボンブラック(B)の含有量が、上記範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる傾向がある。
【0024】
前記ニトリル系ゴム組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲において、例えば、可塑剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤、加工助剤、老化防止剤、カーボンブラック(B)以外の充填剤、シランカップリング剤等、通常ゴム業界で用いられる配合剤を混練してもよい。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0025】
〔可塑剤〕
前記可塑剤としては、例えば、ポリエステル系可塑剤、フタル酸系可塑剤、アジピン酸系可塑剤等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、アジピン酸系可塑剤が好ましい。
【0026】
前記アジピン酸系可塑剤としては、例えば、一分子中にエーテル結合とエステル結合の双方を有する可塑剤、具体的には、アジピン酸ビス[2-(2-ブトキシエトキシ)エチル]等のアジピン酸エーテルエステル系可塑剤等があげられる。また、前記エーテルエステル系可塑剤の市販品としては、例えば、アデカサイザーRS-107、アデカサイザーRS-700、アデカサイザーRS-735、アデカサイザーRS-830、アデカサイザーRS-966、アデカサイザーRS-1000(以上、ADEKA社製);チオコールTP-95、チオコールTP-759(以上、HALLSTAR社製)等があげられる。
【0027】
前記可塑剤を用いる場合、その含有量は、ニトリル系ゴム(A)100質量部に対して、通常10~60質量部であり、好ましくは20~40質量部である。
【0028】
〔加硫剤〕
前記加硫剤としては、例えば、硫黄、過酸化物加硫剤(パーオキサイド加硫剤)等が、単独でもしくは併用される。このなかでも、貯蔵安定性、コストの点で、硫黄が好ましい。
【0029】
前記過酸化物加硫剤としては、例えば、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキ
サン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)オクタン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート等のパーオキシケタール類や、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、α,α'-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、α,α'-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3等のジアルキルパーオキサイド類や、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m-トリオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類や、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウリレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクテート等のパーオキシエステル類や、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3,-テトラメチルブチルパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、臭気の問題がない点で、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサンが好適に用いられる。
【0030】
前記加硫剤として硫黄を使用する場合、その含有量は、ニトリル系ゴム(A)100質量部に対して、0.1~15質量部の範囲が好ましく、特に好ましくは0.3~3質量部の範囲である。
また、前記加硫剤として過酸化物加硫剤を使用する場合、その含有量は、ニトリル系ゴム(A)100質量部に対して、1.5~20質量部の範囲が好ましく、特に好ましくは5~10質量部の範囲である。加硫剤の含有量が少なすぎると、加硫が不十分で、ホースの強度に劣る傾向があり、加硫剤の含有量が多すぎると、硬くなりすぎ、ホースの柔軟性に劣る傾向がみられる他、スコーチタイムが短くなり、加工性が悪化する傾向がある。
【0031】
〔加硫促進剤〕
前記加硫促進剤としては、例えば、チアゾール系,スルフェンアミド系,チウラム系,アルデヒドアンモニア系,アルデヒドアミン系,グアニジン系,チオウレア系等の加硫促進剤があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、加硫反応性に優れる点で、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤が好ましい。
【0032】
前記チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、ジベンゾチアジルジスルフィド(DM)、2-メルカプトベンゾチアゾール(M)、2-メルカプトベンゾチアゾールナトリウム塩(NaMBT)、2-メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩(ZnMBT)等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、加硫反応性に優れる点で、ジベンゾチアジルジスルフィド(DM)、2-メルカプトベンゾチアゾール(M)が好ましい。
【0033】
前記スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(NOBS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CM)、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾイルスルフェンアミド(BBS)、N,N'-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾイルスルフェンアミド等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0034】
前記チウラム系加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド(TT)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TET)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBZTD)等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0035】
前記加硫促進剤を用いる場合、その含有量は、ニトリル系ゴム(A)100質量部に対して、通常0.1~10質量部であり、好ましくは0.5~6質量部である。
【0036】
〔加硫助剤〕
加硫助剤としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート、N,N'-m-フェニレンビスマレイミド、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、i-ブチルメタクリレート、sec-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、メタアクリロキシエチルホスフェート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、N-メチロールメタクリルアミド、2,2-ビス(4-メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、メタクリル酸アルミニウム、メタクリル酸亜鉛、メタクリル酸カルシウム、メタクリル酸マグネシウム、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、酸化亜鉛一種、酸化亜鉛二種、酸化亜鉛三種、微細酸化亜鉛等の酸化亜鉛、および酸化マグネシウム等があげられる。加硫助剤は単独でもしくは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
前記加硫助剤を用いる場合、その含有量は、ニトリル系ゴム(A)100質量部に対して、通常0.05~15質量部であり、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは1~8質量部である。
【0038】
〔加工助剤〕
加工助剤としては、例えば、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪酸;ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩;脂肪酸エステル;およびエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコールが挙げられる。加工助剤は、単独でもしくは2種以上併用することもできる。なかでも、脂肪酸が好ましく、ステアリン酸がより好ましい。
【0039】
前記加工助剤を用いる場合、その含有量は、ニトリル系ゴム(A)100質量部に対して、通常0.2~10質量部であり、好ましくは0.3~5質量部である。
【0040】
〔老化防止剤〕
前記老化防止剤としては、アミン・ケトン系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、硫黄系老化防止剤、燐系老化防止剤等が挙げられる。老化防止剤は、単独でもしくは2種以上併用することもできる。
【0041】
前記老化防止剤を用いる場合、その含有量は、ニトリル系ゴム(A)100質量部に対して、通常1~10質量部であり、好ましくは2~8質量部である。
【0042】
〔ワックス〕
前記ワックスとしては、パラフィン系ワックスを除くものである。
一般的にニトリル系ゴムに耐オゾン性を付与するため、パラフィン系ワックスが添加される。しかし、パラフィン系ワックスを用いた流体用ゴムホースは、流体が低分子量のオイル等である場合に、パラフィン系ワックスが溶出しやすくなる傾向がある。したがって、本発明で用いるニトリル系ゴム組成物は、パラフィン系ワックスを含有しないものである。
【0043】
前記ワックスとしては、例えば、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックス等があげられる。これらのワックスは単独でもしくは2種以上を併せて用いることができるが、本発明においては、耐抽出性の観点から、ニトリル系ゴム組成物がワックスを含有しないことが好ましい。
【0044】
〔カーボンブラック(B)以外の充填剤〕
カーボンブラック(B)以外の充填剤としては、シリカ、炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、クレー、リサージュ、珪藻土等の無機充填剤;再生ゴム、粉末ゴム等の有機充填剤が挙げられる。前記充填剤は、単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
【0045】
前記充填剤を用いる場合、その含有量は、ニトリル系ゴム(A)100質量部に対して、通常5~200質量部、好ましくは20~100質量部である。
【0046】
<製造方法>
前記ニトリル系ゴム組成物は、例えば、前記ニトリル系ゴム(A)とともに、必要に応じて、前記の、カーボンブラック(B)、可塑剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤、加工助剤、老化防止剤等を配合し、これらをニーダー,バンバリーミキサー,ロール等の混練機を用いて混練することにより、調製することができる。
【0047】
前記ニトリル系ゴム組成物は、厚さ2mmの加硫ゴムシートとした際のモジュラス(M10)が、0.1~0.5MPaと低いモジュラスであることが、耐オゾン性の点から重要であり、好ましくは0.2~0.49MPaである。モジュラス(M10)が、前記範囲内であることにより、耐オゾン性に優れたものとすることができる。また、モジュラス(M10)が前記範囲より低い場合は、接合部の締結部のシール性が低下する。
【0048】
本発明においては、モジュラス(M10)を低い特定の範囲とすることにより、変位が加えられた時にゴム材料が外から受ける力(応力)を抑制することができるため、耐オゾン性に優れるものと推測される。
【0049】
前記モジュラス(M10)は、下記のようにして測定することができる。
ニトリル系ゴム組成物を、プレス加硫機によりプレス成形し、厚み2mmの加硫ゴムシートを作製する。
つぎに、前記加硫ゴムシートをサンプルとし、JIS K6251-2017(加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム-引張特性の求め方)に従って引張試験を行い、10%伸長時の応力(MPa)の中央値を読み取り、モジュラス(M10)とする。
【0050】
前記ニトリル系ゴム組成物のモジュラスを前記範囲とするには、例えば、平均粒子径が特定範囲のカーボンブラックを用いる方法、特定範囲のDBP吸収量を有するカーボンブラックを用いる方法、カーボンブラックの含有量を特定範囲とする方法等があげられる。これらの方法を単独でもしくは2種以上組み合わせることによりニトリル系ゴム組成物のモジュラスを前記範囲にできる傾向がある。なかでも、平均粒子径が特定範囲のカーボンブラックを用いる方法が好ましい。
平均粒子径が特定範囲のカーボンブラックはゴムの補強性に優れるため、より少ないカーボンブラックの含有量でモジュラス(M10)の応力設計が可能となる。
【0051】
また、本発明の流体用ホースは、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、前記ニトリル系ゴム組成物を調製し、これを単軸の押出成形機を用いて円筒状に押し出した後、所定の条件で加熱して加硫(架橋)することにより、例えば、
図1に示すような単層構造の燃料ホースを作製することができる。なお、前記押出成形に際し、必要に応じて、マンドレルを使用しても差し支えない。
【0052】
本発明の流体用ホースは、前記のような単層構造に限定されるものではなく、必要に応じ、樹脂層、補強糸層、他のゴム組成物からなる層等を、前記単層構造のホースの外周に形成してもよい。また、このような複数の層からなる流体用ホースとする場合、本発明のニトリル系ゴム組成物の架橋体からなる層は、流体に接する層(最内層)として用いることが好ましいが、これに限定されず、中間層や最外層であってもよい。
【0053】
このようにして得られる本発明の流体用ホースは、ホース内径が2~100mmの範囲であることが好ましく、より好ましくは5~50mmの範囲である。また、ホース肉厚が0.5~20mmの範囲であることが好ましく、より好ましくは1~10mmの範囲である。
【0054】
本発明の流体用ホースは、例えば、自動車、飛行機、鉄道、フォークリフト、ショベルカー、クレーン等の輸送機械等に好適に用いることがでる。なかでも、自動車に用いられる流体を輸送するためのホースとして好適に用いることができる。具体的には、例えば、燃料ホース、オイルホース、ラジエターホース、ヒーターホース、エアコンホース等や、電気自動車や燃料電池自動車用の電池パックの冷却用ホース等に用いることができる。
【実施例0055】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0056】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
【0057】
〔ニトリル系ゴム(A)〕
・Krynac 3370(ARLANXEO社製、NBR、AN量:33質量%)
・Nipol 1203W(日本ゼオン社製、NBR-PVC、AN量:32質量%、PVC含有量:29質量%)
【0058】
〔カーボンブラック(B)〕
・シーストV(東海カーボン社製、DBP吸収量:87ml/100g、平均粒子径:62nm)
・VULCUN 6J(キャボットジャパン社製、DBP吸収量:115ml/100g、平均粒子径:22nm)
・SPHERON 5200(キャボットジャパン社製、DBP吸収量:125ml/100g、平均粒子径:62nm)
・シーストS(東海カーボン社製、DBP吸収量:68ml/100g、平均粒子径:66nm)
・シーストG-116HM(東海カーボン社製、DBP吸収量:158ml/100g、平均粒子径:38nm)
【0059】
〔可塑剤〕
・アデカイザーRS-107(ADEKA社製、エーテルエステル系可塑剤)
【0060】
〔加硫剤〕
・硫黄(鶴見化学工業社製)
【0061】
〔加硫剤促進剤〕
・サンセラーCM-G(三新化学工業社製)
・サンセラーTET-G(三新化学工業社製)
【0062】
〔加硫助剤〕
・酸化亜鉛(三井金属鉱業社製)
【0063】
〔加工助剤〕
・ステアリン酸(花王社製)
【0064】
〔老化防止剤〕
・ノクラックB(大内新興化学工業社製)
・ANTAGENBC(川口化学工業社製)
【0065】
〔ワックス〕
・サンタイトR(精工化学社製)
【0066】
〔実施例1~6、比較例1~3〕
前記加硫剤および加硫促進剤以外の各成分を後記の表1に示す割合で配合し、バンバリーミキサーを用いて混練した。つぎに、加硫剤および加硫促進剤を後記の表1に示す割合で配合し、ロールを用いて混合することにより、ニトリル系ゴム組成物を調製した。
【0067】
また、得られた各ニトリル系ゴム組成物を、プレス加硫機によりプレス成形し、厚み2mmの加硫ゴムシートを作製した。この加硫ゴムシートを用いて、下記の基準に従い、各特性の評価を行った。これらの結果を、後記の表1に併せて示す。
【0068】
<モジュラス(M10)>
前記加硫ゴムシートを用い、JIS K6251-2017(加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム-引張特性の求め方)に従って引張試験を行い、10%伸長時の応力(MPa)の中央値を読み取り、モジュラス(M10)とした。
【0069】
<耐オゾン性>
前記加硫ゴムシートを用い、JIS K6259-1(加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム-耐オゾン性の求め方-第1部:静的オゾン劣化試験および動的オゾン劣化試験)に従って、試験温度40℃、オゾン濃度50ppm、引張ひずみ10%の条件で静的オゾン劣化試験を行い、加硫ゴムシートの亀裂発生の有無を目視にて確認し、下記の評価基準にて評価した。
[評価基準]
◎〇:168時間後まで亀裂が発生しなかった
◎ :48時間後まで亀裂が発生しなかった
〇 :24時間後まで亀裂が発生しなかった
× :24時間までに亀裂が発生した
【0070】
<耐抽出性>
前記加硫ゴムシートを7mm角のゴム片となるように切断し、その6gを採取した。これを試験容器に入れ、試験油(イソオクタン)を25mL加え、試験温度80℃で70時間保持した後、室温(25℃)で24時間静置した。静置後、試験油(イソオクタン)からゴム片を取り出し、試験液10mLを遠心分離管に移し、これを-15℃の冷却槽に5時間静置した後、1900rpmで30分間遠心分離を行った。その後、試験管底の沈殿物の体積(mL)を読み取り、下記式から沈殿物量を算出し、下記の評価基準にて評価した。
沈殿物量(体積%)=沈殿物の体積(mL)/試験液(10mL)×100
[評価基準]
〇:沈殿物量が1体積%以下
△:沈殿物量が1体積%を超え、2体積%未満
×:沈殿物量が2体積%以上
【0071】
【0072】
前記表1の結果より、実施例1~6の各ニトリル系ゴム組成物は、耐オゾン性、耐抽出性に優れるものであった。
【0073】
これに対し、モジュラスが0.5MPaを超える比較例1、3の各ニトリル系ゴム組成物は、耐オゾン性に劣る結果となり、耐オゾン性と耐抽出性を両立できなかった。
【0074】
また、比較例2では、パラフィン系ワックスを用いているため、耐抽出性に劣る結果となり、耐オゾン性と耐抽出性を両立できなかった。
【0075】
以上のことから、実施例1~6の各ニトリル系ゴム組成物から公知の方法で流体用ホースを製造した場合、得られる流体用ホースは、耐オゾン性、耐抽出性に優れるものである。
本発明のニトリル系ゴム組成物からなる流体用ホースは、耐オゾン性と耐抽出性に優れるため、例えば、自動車、飛行機、鉄道、フォークリフト、ショベルカー、クレーン等の輸送機械等に好適に用いることができる。