(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108821
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 41/675 20180101AFI20240805BHJP
F21S 41/148 20180101ALI20240805BHJP
F21S 41/32 20180101ALI20240805BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240805BHJP
F21Y 115/15 20160101ALN20240805BHJP
【FI】
F21S41/675
F21S41/148
F21S41/32
F21Y115:10
F21Y115:15
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013409
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小野間 慶
(57)【要約】
【課題】配光パターンを有効適切に拡張することができる車両用灯具を提供する。
【解決手段】光源2と、光源2からの光を反射する反射面Rを有するリフレクタ3と、反射面Rからの反射光を車両の前方に照射して配光パターンを形成する投影レンズ4と、を備え、反射面Rは、光源2側から投影レンズ4方向へ向けて主反射領域Xと拡張領域Yとをこの順に有し、主反射領域Xは、光源2又はその近傍に位置する第1焦点F1と、第1焦点F1よりも投影レンズ4側に位置する第2焦点F2とを有し、投影レンズ4は、後方側焦点が、第2焦点F2よりも光源2側に位置しており、拡張領域Yは、光源2からの光を第2焦点F2よりも光源2側の位置を通って投影レンズ4方向へ反射する領域である、車両用灯具1とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、前記光源からの光を反射する反射面を有するリフレクタと、前記反射面からの反射光を車両の前方に照射して配光パターンを形成する投影レンズと、を備え、
前記反射面は、前記光源側から前記投影レンズ方向へ向けて主反射領域と拡張領域とをこの順に有し、
前記主反射領域は、前記光源又はその近傍に位置する第1焦点と、前記第1焦点よりも前記投影レンズ側に位置する第2焦点とを有し、
前記投影レンズは、後方側焦点が、前記第2焦点よりも前記光源側に位置しており、
前記拡張領域は、前記光源からの光を前記第2焦点よりも前記光源側の位置を通って前記投影レンズ方向へ反射する領域である、車両用灯具。
【請求項2】
前記主反射領域は、回転楕円面又は回転楕円面を基調とする面で構成されており、
前記拡張領域の曲率半径は、前記主反射領域の前記投影レンズ側の端部より小さい曲率半径とされている、請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記拡張領域は、前記光源からの光を反射する箇所が前記光源側から前記投影レンズ側に向けて変移するにしたがい、前記拡張領域で反射した光と前記投影レンズの光軸との交差する箇所が前記投影レンズ側から前記光源側へ向けて徐変するように構成されている、請求項1又は2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記反射面は、前記拡張領域を含む面が前記投影レンズから前記光源へ向けて段差のない連続した面で構成されている、請求項1又は2に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記投影レンズの後方側焦点が、前記拡張領域の先端より前記光源側に位置している、請求項1又は2に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記投影レンズの像面の一部が、前記リフレクタと交差する構成とされている、請求項1又は2に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用灯具に関する。より詳しくは、プロジェクタタイプの車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なプロジェクタタイプの車両用灯具は、投影レンズと、投影レンズの後方側焦点よりも車両の後方側に配置された光源と、光源からの光を反射させるリフレクタと、反射光の一部を遮るシェードを備えている(例えば、特許文献1)。光源を点灯すると、光源からの出射光がリフレクタで反射され、その反射光が投影レンズに入射して投影レンズから照射され、所定の配光パターンが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、従来の車両用灯具として、
図10に示す車両用灯具も知られている。
図10の車両用灯具100は、光源200と、光源200からの光を反射させるリフレクタ300と、投影レンズ400と、リフレクタ300からの反射光の一部を遮るシェード500と、を備えている。リフレクタ300の第1焦点F1及び第2焦点F2は、投影レンズ400の光軸Z上に位置する。光源200は、リフレクタ300の第1焦点F1に一致するように配置されている。リフレクタ300の第2焦点F2は、投影レンズ400の後方側焦点F3に一致する、又はその近傍に位置している。リフレクタ300の反射面は、投影レンズ400の光軸Zを回転軸とする回転楕円面で構成されている。
【0005】
車両用灯具100において、光源200を点灯すると、光源200からの出射光L0がリフレクタ300で反射され、その後、第2焦点F2に集光する。リフレクタ300の第2焦点F2は、投影レンズ400の後方側焦点F3に一致する、又はその近傍に位置しているので、リフレクタ300で反射された反射光L1、L2、L3は、投影レンズ400の後方側焦点F3、又はその近傍を通過する。言い換えると、リフレクタ300で反射された反射光L1、L2、L3は、リフレクタ300の第2焦点F2、又はその近傍を通過する。なお、このとき、反射光の一部はシェード500で遮られる。その後、反射光L1、L2、L3は、投影レンズ400に入射し、
図11に示すようにスクリーンのHL-HR線よりも上側(VU側)に所定の配光パターンP100として照射される。
図11の点線で示される領域は、シェード500により遮られた反射光が、シェード500がない場合に照射するはずであった領域を示す。
【0006】
ところで、上記特許文献1及び
図10に示す車両用灯具は、車両用灯具として一般的に広く用いられているものであるが、このような車両用灯具においては、必要に応じて目視できる領域を広げるために配光パターンの拡張が要請される場合がある。
そこで、配光パターンの拡張が可能な車両用灯具としては、
図12に示す車両用灯具110が知られている。
【0007】
図12の車両用灯具110は、
図10の車両用灯具100の配光パターン(
図11)を上方向に拡張するものである。車両用灯具110は、リフレクタ301の形状が車両用灯具100のリフレクタ300と異なることを除き、車両用灯具100と同じ構成を有している。
図12のリフレクタ301は、
図11のリフレクタ300の反射面が回転楕円面で構成されているのに対して、
図12のリフレクタ301の反射面が回転楕円を基調とする自由曲面で構成されている点で、
図11のリフレクタ300と形状が異なっている。
【0008】
リフレクタ301は、光源200に近い側で反射した光ほど第2焦点F2の近傍を通過し、光源から遠い側で反射した光ほど投影レンズ400の光軸Z上において第2焦点F2よりも投影レンズ400側(車両の前方向側)を通過するように、反射面が徐変されている。
【0009】
リフレクタ301は、上記したように、反射面が回転楕円を基調とする自由曲面で構成されている。リフレクタ301の反射面のうち、光源200に近い側に位置する領域は、投影レンズ400からの出射光L11が
図13に示すようにスクリーンのHL-HR線付近(主に集光パターン)に照射されるように、反射光L1が第2焦点F2の近傍を通過する曲率で設けられている。一方、リフレクタ301の反射面のうち、光源200から遠い側に位置する領域は、スクリーンのHL-HR線から遠い側(主に拡散パターン)に照射されるように、反射光L2、L3が光軸Zにおいて第2焦点F2から離れた箇所F20、F21を通過する曲率で設けられている。すなわち、反射面は、光源200から遠い側で反射された光ほど、第2焦点F2よりも前方(光軸において光源200から離れた方向、つまり投影レンズ400側)を通過するように調整されている。反射面の曲率は、反射された光がシェード500により遮られず、かつ投影レンズ400へ入射することが考慮されて決定される。
【0010】
上記の車両用灯具110において、光源200を点灯すると、光源200からの出射光L0がリフレクタ301で反射される。リフレクタ301の光源200に近い側で反射した反射光L1は、第2焦点F2又はその近傍(つまり、投影レンズ400の後方側焦点F3又はその近傍、
図12では省略している)を通過する。リフレクタ301の光源200から遠い側で反射された反射光L2は、第2焦点F2よりも投影レンズ400側(車両の前方向側)の箇所F20を通過する。リフレクタ301の光源200からさらに遠い側で反射された反射光L3は、第2焦点F2よりもさらに投影レンズ400に近い側(車両のより前方向側)の箇所F21を通過する。つまり、リフレクタ301の光源200から遠い側で反射された反射光ほど、投影レンズ400の光軸Zと交差する箇所F20、F21が、投影レンズ400側(車両の前方向側)に近づく。これにより、投影レンズ400から照射される配光パターンP200を上方向に延ばすことができる。
図13の矢印で示すように、得られる配光パターンP200は、点線で示される
図11の配光パターンP100よりも上端部が上方向に延びている。
【0011】
上記の車両用灯具110によれば、リフレクタ301の形状を、光源200から遠い側で反射された光ほど、第2焦点F2よりも前方(光軸において光源200から離れた方向、つまり投影レンズ400側)を通過するように調整することによって、配光パターンの上端部を上方へ拡張することができる。
【0012】
ところで、この種の車両用灯具は、車両の形式によってレンズ縦寸の薄型化が要請されることがある。薄型化するためには、例えば、シェードをなくしたり、投影レンズの後方側焦点の位置を変更したりすることが有効であるが、上記特許文献1及び
図10~13に示すように、反射面の第2焦点をレンズ側に徐変させる従来の方法では、配光パターンを拡張することができないという問題がある。
本開示は、配光パターンの適宜箇所を有効適切に拡張することができる車両用灯具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示に係る車両用灯具は、光源と、前記光源からの光を反射する反射面を有するリフレクタと、前記反射面からの反射光を車両の前方に照射して配光パターンを形成する投影レンズと、を備え、前記反射面は、前記光源側から前記投影レンズ方向へ向けて主反射領域と拡張領域とをこの順に有し、前記主反射領域は、前記光源又はその近傍に位置する第1焦点と、前記第1焦点よりも前記投影レンズ側に位置する第2焦点とを有し、前記投影レンズは、後方側焦点が、前記第2焦点よりも前記光源側に位置しており、前記拡張領域は、前記光源からの光を前記第2焦点よりも前記光源側の位置を通って前記投影レンズ方向へ反射する領域であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、配光パターンを有効適切に拡張することができる車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の一実施形態として示した車両用灯具の斜視図である。
【
図4】本開示の一実施形態として示した車両用灯具の概念図である。
【
図5】
図4において符号Nで示す部分の拡大図である。
【
図6】
図4に示す車両用灯具が照射する配光パターンを示す図である。
【
図7】リフレクタの反射面に拡張領域Yが存在しない車両用灯具の概念図である。
【
図8】リフレクタの反射面に拡張領域Yが存在しない車両用灯具が照射する配光パターンを示す図である。
【
図10】従来のプロジェクタタイプの車両用灯具の一構成例を示す概念図である。
【
図11】
図10に示す車両用灯具が照射する配光パターンを示す図である。
【
図12】従来の車両用灯具において配光パターンを拡張する場合の一構成例を示す概念図である。
【
図13】
図12に示す車両用灯具において拡張された配光パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本開示に係る車両用灯具の実施形態の一例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
図6、8、11、13において、符号「VU-VD」は、スクリーンの上下の垂直線を示す。符号「HL-HR」は、スクリーンの左右の水平線を示す。本明細書において、前、後、上、下、左、右とは、車両用灯具を車両に装備した際の前、後、上、下、左、右である。
【0017】
以下、この実施形態における車両用灯具の構成及び作用について
図1~9に基づいて説明する。ここでは、一例として、自動車用前照灯のヘッドランプについて、特にハイビーム(走行用ビーム)配光パターン照射用灯具について説明する。ロービーム(すれ違い用ビーム)照射用灯具は、ハイビーム配光パターン照射用灯具において上下が反転した構成を有している。
【0018】
(車両用灯具1)
図1~4において、符号1は、この実施形態における車両用灯具である。車両用灯具1は、車両の前部の左右両側にそれぞれ搭載されている。車両用灯具1は、光源2と、リフレクタ3と、投影レンズ4とを備えている。また、
図1及び
図2において、符号5はヒートシンク部材5であり、光源2、リフレクタ3、投影レンズ4が取り付けられている。なお、
図1、2においては、光源2、リフレクタ3及び投影レンズ4が、車両の幅方向に複数組設けられる場合の一構成例を示している。
【0019】
光源2、リフレクタ3、投影レンズ4及びヒートシンク部材5は、所定の配光パターン(この例では
図6に示すハイビーム配光パターン)を外部、すなわち車両の前方に照射するプロジェクタタイプのランプユニットを構成する。光源2、リフレクタ3、投影レンズ4及びヒートシンク部材5は、灯室内に配置されていて、かつ、上下方向用光軸調整機構(図示せず)及び左右方向用光軸調整機構(図示せず)を介してランプハウジングに取り付けられている。
【0020】
なお、灯室内には、光源2、リフレクタ3、投影レンズ4及びヒートシンク部材5以外のランプユニット、例えば、ロービーム配光パターン照射ランプユニット、クリアランスランプユニット、ターンシグナルランプユニット、デイタイムランニングランプユニット等が配置される場合がある。また、灯室内には、インナーパネル(図示せず)やインナーハウジング(図示せず)やインナーレンズ(図示せず)等が配置される場合がある。
【0021】
(ヒートシンク部材5)
ヒートシンク部材5は、必要に応じて使用される部材であり、例えば、金属製ダイカスト(アルミダイカスト)等の熱伝導率が高い材料で構成されている。ヒートシンク部材5には、光源2、リフレクタ3及び投影レンズ4が取り付けられている。ヒートシンク部材5は、ここでは放熱部材と取付部材とを兼用している。
【0022】
ヒートシンク部材5は、取付部としての板部51と、放熱部としての複数枚のフィン部52と、を備えている。複数枚のフィン部52は、板部51の上面に垂直にかつ前後方向に平行若しくはほぼ平行に一体に設けられている。
【0023】
(光源2)
光源2は、半導体型光源であり、例えば、LED、OEL又はOLED(有機EL)等の自発光半導体型光源である。この実施形態においては、光源2は、板形状の基板20を介してヒートシンク部材5に取り付けられている。基板20の上面は、ヒートシンク部材5の板部51の下面に取り付けられ、基板20の下面にはリフレクタ3の反射面Rに対向する位置に光源2が実装されている。光源2には、点灯回路(図示せず)からの電流が供給される。
【0024】
光源2は、光を放射する発光面Sを有する。発光面Sは、この例では、
図3及び
図4に示すように下向きであって、正方形形状をなす。なお、発光面は長方形であってもよい。発光面Sの中心点は、リフレクタ3の反射面Rが有する主反射領域Xの第1焦点F1と一致する、又はほぼ一致する。発光面Sが長方形の場合、発光面Sの長手方向は、投影レンズ4の光軸Zに対して、左右方向に直交若しくはほぼ直交する。
図4の例においては、発光面Sは、投影レンズ4の光軸Zよりも上にある。
【0025】
(リフレクタ3)
リフレクタ3は、例えば、樹脂部材などの耐熱性が高くかつ光不透過性の材料で構成されている。この実施形態においては、リフレクタ3は、ヒートシンク部材5に取り付けられている。リフレクタ3は、前側部分および上側部分が開口し、かつ、後側部分および下側部分および左右両側部分が閉塞した中空形状になっている。リフレクタ3は、光源2からの光を反射する反射面Rを有する。反射面Rは、収束型反射面であり、光源2の近傍から投影レンズ4側へ向かって延びている。反射面Rは、光源2の発光面Sに対向している。
【0026】
反射面Rは、
図4に示すように、光源2側から投影レンズ4方向に向かって、主反射領域Xと、拡張領域Yとをこの順に有する。主反射領域Xは、投影レンズ4の光軸Zを回転軸とする回転楕円面又は回転楕円面を基調とする面で構成されており、拡張領域Yは、自由曲面で構成されている。主反射領域Xは、光源2側から投影レンズ4方向へ向けて漸次曲率半径が大きくなるように形成された反射面であり、拡張領域Yは、主反射領域Xの投影レンズ4側の先端部Tより小さい曲率半径とされている反射面である。この構成の下に、主反射領域Xは、光源2側から投影レンズ4方向に向かうにしたがい、漸次曲率半径が大きくなり(曲率が小さくなる、つまりカーブが緩くなる)、さらにその前方の投影レンズ4側に位置する拡張領域Yに至ると、主反射領域Xの曲率半径よりも小さな曲率半径を持つ(曲率が大きくなる、つまりカーブが急になる)湾曲面となる。主反射領域Xと拡張領域Yとは、滑らかに連続した面とされている。すなわち、反射面Rは、拡張領域Yを含む面が、投影レンズ4から光源2へ向けて段差のない連続した面で構成されている。
【0027】
(投影レンズ4)
投影レンズ4は、例えば、PC材、PMMA材などの樹脂製のレンズである。この実施形態においては、投影レンズ4は、ヒートシンク部材5に直接もしくは別個のホルダ(図示しない)等を介して取り付けられている。
【0028】
投影レンズ4は、非球面を基調とする投影レンズである。投影レンズ4は、後面の入射面E1と、前面の出射面E2と、から構成されている。
入射面E1は、リフレクタ3と対向する。入射面E1は、平面若しくはリフレクタ3に対して凸面あるいは凹面をなす。出射面E2は、非球面の凸面をなす。
【0029】
(光源、リフレクタ及び投影レンズについての光学系の説明)
ここでの説明においては、一か所の光源を特定し、その光源から発した光をもとに
図4を参照して説明する。
【0030】
この車両用灯具1において、光源2は、下向きに出射光L0を照射する。投影レンズ4は、後方側焦点(レンズ像面Mを構成する焦点)が、光源2の近傍の符号F3で示す位置にある。上記したように、光源2は、リフレクタ3の反射面Rの主反射領域Xの第1焦点F1と一致する、又はほぼ一致するので、投影レンズ4の後方側焦点F3は、拡張領域Yの先端U(リフレクタ3の投影レンズ4側の端部)よりも光源2側(後方側)に位置している。また、投影レンズ4のレンズ像面Mの一部は、リフレクタ3の一部と交差している。つまり、投影レンズ4のレンズ像面Mの一部は、リフレクタ3の一部を横切っている。また、
図4において、拡張領域Yは、レンズ像面Mよりも前方(投影レンズ4側)に設けられている。
【0031】
光源2を点灯させたとき、この光源2から下向きに照射される出射光L0は、リフレクタ3の反射面Rで反射される。リフレクタ3の反射面Rにおける主反射領域Xは、光源2又はその近傍に位置する第1焦点F1と、第1焦点F1よりも投影レンズ4側に位置する第2焦点F2とを有している。すなわち、主反射領域Xの第1焦点は、光源2又はその近傍の符号F1で示す位置にある。主反射領域Xの第1焦点は、投影レンズ4の光軸Zよりもやや上側に位置している。
【0032】
主反射領域Xの第2焦点は、投影レンズ4の光軸Z上において投影レンズ4の近傍の符号F2で示す位置にある。第2焦点F2と、投影レンズ4の後方側焦点F3との位置は一致しておらず、第2焦点F2は、投影レンズ4の後方側焦点F3よりも前側(投影レンズ4側)に位置している。すなわち、第2焦点F2は、投影レンズ4と後方側焦点F3との間に位置している。
【0033】
拡張領域Yは、上記したように、主反射領域Xの先端部Tより曲率半径が小(曲率が大)であるため、光源2からの出射光L0を受けるとその反射光L3bは光軸Z上において主反射領域Xの第2焦点F2より光源2側の箇所F20で交わり、投影レンズ4方向へ向かう。すなわち、拡張領域Yは、光源2からの出射光L0を、主反射領域Xの第2焦点F2よりも光源2側の箇所F20を通って投影レンズ4方向へ反射する。
【0034】
また、この実施形態においては、拡張領域Yは、光源2からの光が光軸Zと交わる箇所が、主反射領域Xの第2焦点F2から徐々に後方(光源2方向)へ徐変するように形成されている。すなわち、拡張領域Yは、光源2からの光を反射する箇所が光源2側から投影レンズ4側に向けて変移する(移動する)にしたがい、拡張領域Yで反射した光と投影レンズ4の光軸Zとの交差する箇所F20が、投影レンズ4側から光源2側へ向けて徐変するように構成されている。また、主反射領域Xの第1焦点F1と拡張領域Yによる反射光L3bが光軸Zと交差する箇所F20との距離(拡張領域Yにおける焦点間距離)は、主反射領域Xの第1焦点F1と第2焦点F2との焦点間距離(主反射領域Xにおける焦点間距離)よりも短い。また、第1焦点F1と拡張領域Yによる反射光L3bが光軸Zと交差する箇所F20との距離(拡張領域Yにおける焦点間距離)は、拡張領域Yにおいて光源2から離れるほど短くなる。
【0035】
(車両用灯具1の作用)
まず、本開示の内容の理解を深めるために、リフレクタの反射面に拡張領域Yが存在しない場合について説明する。
図7、8は、それを説明するための図である。
図7に示す車両用灯具10は、拡張領域Yに替えて、主反射領域を延長させて(つまり、主反射領域のみで)リフレクタ3の反射面Rを構成したこと以外は、
図4の車両用灯具1と同じ構成を有している。この反射面Rは、回転楕円面又は回転楕円面を基調とする面で構成されている。車両用灯具10は、
図8に示す配光パターンP1を照射する。
【0036】
車両用灯具10において、リフレクタ3の反射面Rの光源2から近い領域で反射された反射光L1は、投影レンズ4の光軸Zに近い領域に入射して出射光L11としてスクリーンのHL-HR線付近に照射され配光パターンP1の中央付近を形成する。反射面Rの光源2からやや離れた領域で反射された反射光L2は、投影レンズ4の光軸Zよりも上側の領域に入射して出射光L21としてHL-HR線よりも離れた領域に照射され、配光パターンP1の中央付近よりも上側(符号VU側)を形成する。反射面Rの光源2からさらに離れた領域で反射された反射光L3aは、投影レンズ4の光軸Zよりもさらに上側の領域に入射して出射光L31としてHL-HR線よりもさらに離れた領域に照射され、
図8に示す配光パターンP1の上端部付近を形成する。
【0037】
次に、
図4~6を参照して、上記の
図7に示す構成を変更しリフレクタの反射面に拡張領域Yを形成した場合の作用について説明する。拡張領域Yは、光源2からの光を主反射領域Xの第2焦点F2より光源2側の位置を通って投影レンズ4方向へ反射することによって配光パターンの適宜箇所(この例では上端部)を拡張する作用を有する。車両用灯具1は、
図6に示す配光パターンP2を照射する。
【0038】
図4~6に示すように、光源2から照射された出射光L0のうち、リフレクタ3の反射面Rの主反射領域Xにおいて光源2付近で反射された反射光L1は、光軸Z付近を通って主反射領域Xの第1焦点を通過し、投影レンズ4の光軸Zに近い領域(投影レンズ4の中央付近)に入射して出射光L11としてスクリーンのHL-HR線付近に照射され、
図6に示す配光パターンP2の中央付近を形成する。光源2よりやや離れた主反射領域Xで反射された反射光L2は、例えば、第2焦点F2を通って投影レンズ4の光軸Zよりもやや上側の領域に入射して出射光L21としてHL-HR線よりも離れた領域に照射され、配光パターンP2の中央付近よりもやや上側(符号VU側)を形成する。そして、光源2からさらに離れた、拡張領域Yで反射された反射光L3bは、主反射領域Xの第2焦点F2よりも光源2側の箇所F20において投影レンズ4の光軸Zを通過し、投影レンズ4の光軸Zよりもさらに上側の領域に入射して出射光L31としてHL-HR線よりもさらに上側(符号VU側)に照射され、配光パターンP2の上端部付近を形成する。このとき、
図4に示す反射光L3bは、
図7に示す上記拡張領域Yが存在しない場合の反射光L3aよりも、光軸Zと交差する角度が大きい。また、反射光L3bは、上記拡張領域Yが存在しない場合の反射光L3aよりも、投影レンズ4に入射する位置がより上方向である。これにより、
図7の車両用灯具10により照射される配光パターンP1の上端部(
図6において点線で示される)を上方向(
図6の矢印方向;スクリーンのVU方向)に延ばした(つまり、拡張した)配光パターンP2を照射することができる。つまり、車両用灯具1は、車両用灯具10の配光パターンP1の上端部をHL-HR線からより遠ざけることができる。
【0039】
また、車両用灯具1について、
図4の符号N部分の拡大図である
図5を参照してさらにその作用の詳細を説明する。
図5において、符号Kで示す点線は、主反射領域Xを、先端部Tからさらに投影レンズ4側へ延長した延長領域Kを示す。延長領域Kを有する反射面は、
図7に示す上記拡張領域Yが存在しない場合のリフレクタの反射面と同じ形状となっている。延長領域Kは、主反射領域Xに引き続き、先端部Tから投影レンズ4方向へ向けて漸次曲率半径が大きくなるように形成されている。
図5に示すように、延長領域Kに向かった出射光L0は、小さい角度で反射され(反射光L3a)、符号D1方向へ向かう。一方、拡張領域Yは、
図5の白矢印で示すように、延長領域Kよりも小さい曲率半径となっており(大きい曲率となっており)、延長領域Kより上側に湾曲している。拡張領域Yに向かった出射光L0は、延長領域Kで反射された反射光L3aよりも大きい角度で上側に向かって反射され(反射光L3b)、D1方向よりも上側の符号D2方向へ向かう。これにより、拡張領域Yを有する構成においては、投影レンズ4から照射される配光パターンの上端部を上方向に延ばした配光パターンP2を照射することができる。
【0040】
また、
図5において、符号Aで示す点線は、拡張領域Yで反射された反射光L3bの光路を投影レンズ4のレンズ像面M側へ延ばした線(逆光路)であり、符号Bで示す点線は、延長領域Kで反射された反射光L3aの光路をレンズ像面M側へ延ばした線(逆光路)である。
図5に示すように、拡張領域Yで反射された反射光L3bの逆光路Aとレンズ像面Mとが交差する箇所は、延長領域Kで反射された反射光L3aの逆光路Bとレンズ像面Mとが交差する箇所よりも、光源から離れている。これにより、投影レンズ4から照射される配光パターンP1の上端部を上方向に延ばした配光パターンP2を照射することができる。
【0041】
上記の車両用灯具1によれば、リフレクタ3の反射面Rが、投影レンズ4側端部又は投影レンズ4側端部近傍に形成されかつ光源2からの光を反射面Rの第2焦点より光源2側の位置を通って投影レンズ4方向へ反射する拡張領域Yを有することによって、配光パターンの上端部を上方へ拡張することができる。光源とリフレクタの上下を逆にすると下方への配光パターンを拡張することも可能である。このように、光源2からの光を第2焦点F2よりも光源2側の位置を通って投影レンズ4方向へ反射することにより、配光パターンの適宜箇所を有効適切に拡張することができる。
【0042】
さらに、上記の車両用灯具1は、拡張領域Yが、光源2からの光が光軸Zと交わる箇所が、主反射領域Xの第2焦点F2から徐々に後方(光源2方向)へ徐変するように形成されているので、拡張領域Yにおいて光源2からの光を反射する箇所が投影レンズ4側に向けて遠くなるほど、投影レンズ4のより上側に向けて反射され、配光パターンの上端部をより上方へ拡張することができる。どの程度上方へ拡張するかは、視認性を高めることが求められる対象がある位置や方向に応じて、拡張領域Yの長さや曲率を変更することによって適宜調整することができる。
【0043】
また、上記の車両用灯具1は、投影レンズ4の後方側焦点F3が、リフレクタ3の反射面Rに近い位置にあるので、リフレクタ3に映されたパターンが、照射される配光パターンに近似する。これにより、リフレクタ3の反射面Rからの反射光の一部を遮って配光パターンの形状を調整するシェードを備える必要がなく、車両用灯具の小型化を図ることができる。また、光源2とリフレクタ3との距離が近いので、リフレクタ3に当たる照度値を高めることができ、それにより照射される光の光度を高めることができる。
また、リフレクタ3の反射面Rにおいて、主反射領域Xと拡張領域Yとが段差のない連続した面で構成されているので、配光パターン内にスジ斑が発生しにくい。
【0044】
上記の実施の形態においては、リフレクタ3の反射面Rを構成する主反射領域Xの第2焦点は、投影レンズ4の近傍に設けたが、その位置は限定されず、投影レンズ4の後方側焦点F3よりも前側(投影レンズ4側)において、適宜変更することができる。主反射領域Xの第1焦点は、投影レンズ4の光軸Zよりもやや上側に位置しているが、投影レンズ4の光軸Z上に位置していてもよい。
また、拡張領域Yは、自由曲面で構成されているが、主反射領域Xよりも曲率半径が小さい回転楕円面(投影レンズ4の光軸Zを回転軸とする)を基調とする自由曲面であってもよい。
また、光源2は、板形状の基板20を介してヒートシンク部材5に取り付けられているが、ヒートシンク部材5に替えて他の取り付け部材に取り付けられていてもよい。
また、投影レンズ4の後方側焦点F3は、光源2の近傍に位置しているが、光源2よりも前側(投影レンズ4側)であってもよく、後ろ側であってもよい。
また、車両用灯具1は、リフレクタ3の反射面Rからの反射光の一部を遮るシェードを有していてもよいが、小型化することができる点で、特に配光パターンを形成するためのシェードを有しないことが好ましい。
また、投影レンズ4のレンズ像面Mは、その一部がリフレクタ3の一部と交差しているが、リフレクタの後方側に位置していてもよい。
【0045】
上記の実施の形態においては、配光パターンを上下方向に拡張する場合の例について説明したが、拡張領域Yを光軸Zの水平断面に近い位置まで形成することにより、配光パターンを左右方向に拡張することも可能である。
図9に基づいて詳細に説明すると、拡張領域Yを光源2に近い高さまで形成することにより、光源2に近い領域Oにおいて拡張領域Yの曲率が主反射領域Xの曲率よりも大きくなる。領域Oの拡張領域Yにおいて反射された光は、第2焦点F2よりも光源2側の位置を通って投影レンズ4方向へ反射され、
図6におけるスクリーンのVU-VD線よりもHL側及びHR側を照射することができる。これにより、配光パターンを左右方向に拡張することが可能となる。
【0046】
上記の実施の形態においては、光源2、リフレクタ3及び投影レンズ4が、車両の幅方向に複数組設けられる場合の一構成例を示したが、光源2、リフレクタ3及び投影レンズ4を一組以上備えていればよく、その数は車種等に対応させて適宜選択することができる。また、一組以上の光源2、リフレクタ3及び投影レンズ4と、異なる光学系とを組み合わせて用いることもできる。
【0047】
本開示の構成をまとめると以下のとおりである。
[1]光源と、前記光源からの光を反射する反射面を有するリフレクタと、前記反射面からの反射光を車両の前方に照射して配光パターンを形成する投影レンズと、を備え、
前記反射面は、前記光源側から前記投影レンズ方向へ向けて主反射領域と拡張領域とをこの順に有し、
前記主反射領域は、前記光源又はその近傍に位置する第1焦点と、前記第1焦点よりも前記投影レンズ側に位置する第2焦点とを有し、
前記投影レンズは、後方側焦点が、前記第2焦点よりも前記光源側に位置しており、
前記拡張領域は、前記光源からの光を前記第2焦点よりも前記光源側の位置を通って前記投影レンズ方向へ反射する領域である、車両用灯具。
[2]前記主反射領域は、回転楕円面又は回転楕円面を基調とする面で構成されており、
前記拡張領域の曲率半径は、前記主反射領域の前記投影レンズ側の端部より小さい曲率半径とされている、[1]に記載の車両用灯具。
[3]前記拡張領域は、前記光源からの光を反射する箇所が前記光源側から前記投影レンズ側に向けて変移するにしたがい、前記拡張領域で反射した光と前記投影レンズの光軸との交差する箇所が前記投影レンズ側から前記光源側へ向けて徐変するように構成されている、[1]又は[2]に記載の車両用灯具。
[4]前記反射面は、前記拡張領域を含む面が前記投影レンズから前記光源へ向けて段差のない連続した面で構成されている、[1]から[3]のいずれかに記載の車両用灯具。
[5]前記投影レンズの後方側焦点が、前記拡張領域の先端より前記光源側に位置している、[1]から[4]のいずれかに記載の車両用灯具。
[6]前記投影レンズの像面の一部が、前記リフレクタと交差する構成とされている、[1]から[5]のいずれかに記載の車両用灯具。
【符号の説明】
【0048】
1、10、100、110 車両用灯具
2、200 光源
3、300、301 リフレクタ
4、400 投影レンズ
5 ヒートシンク部材
20 基板
51 板部
52 フィン部
500 シェード
E1 入射面
E2 出射面
F1 第1焦点
F2 第2焦点
F3 投影レンズの後方側焦点
K 延長領域
L0 光源からの出射光
L1、L2、L3、L3a、L3b 反射光
L11、L21、31 出射光
M レンズ像面
P1、P2、P100、P200 配光パターン
R 反射面
S 発光面
T 先端部
X 主反射領域
Y 拡張領域
Z 光軸