(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108827
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
B25D 16/00 20060101AFI20240805BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
B25D16/00
B25F5/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013420
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡部 太郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 英貴
【テーマコード(参考)】
2D058
3C064
【Fターム(参考)】
2D058AA14
2D058CA06
2D058CB06
2D058CC28
3C064AA04
3C064AB01
3C064AB02
3C064AC03
3C064BA12
3C064BA36
3C064BB01
3C064CA03
3C064CA08
3C064CA26
3C064CA72
3C064CA74
3C064CA75
3C064CA78
3C064CA80
3C064CB03
3C064CB06
3C064CB08
3C064CB17
3C064CB32
3C064CB63
3C064CB72
3C064DA02
3C064DA23
3C064DA37
3C064DA43
3C064DA56
3C064DA59
3C064DA78
3C064DA89
(57)【要約】
【課題】作業機の利便性を向上させる。
【解決手段】ハンマドリル10は、モータ19と、相手材12に当接可能な先端工具8と、モータ19の駆動力により先端工具8に回転力を与える回転力伝達部14と、モータ19の駆動力により先端工具8に打撃力を与える打撃力伝達部15と、先端工具8に伝達される回転力及び打撃力を制御する制御部13と、を有する。制御部13は、制御モードとして、打撃力伝達部15を介して先端工具8に打撃力を伝達する第1モードと、先端工具8に伝達する打撃力が第1モードより小さい第2モードと、を有し、先端工具8が相手材12に当接すると、第2モードで先端工具8に打撃力を伝達し、所定条件を満たすと、第2モードから第1モードに移行する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
相手材に当接可能な先端工具と、
前記モータの駆動力により前記先端工具に回転力を与える回転力伝達部と、
前記モータの駆動力により前記先端工具に打撃力を与える打撃力伝達部と、
前記先端工具に伝達される回転力及び打撃力を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
制御モードとして、前記打撃力伝達部を介して前記先端工具に打撃力を伝達する第1モードと、前記先端工具に伝達する打撃力が前記第1モードより小さい第2モードと、を有し、
前記先端工具が前記相手材に当接すると、前記第2モードで前記先端工具に打撃力を伝達し、所定条件を満たすと、前記先端工具に伝達される打撃力を前記第1モードに移行する、作業機。
【請求項2】
前記打撃力伝達部は、空気室を含み、前記空気室の圧縮空気の圧力により前記先端工具に打撃力を伝達する、請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記打撃力伝達部は、内部に前記空気室を形成可能なシリンダと、前記シリンダ内で往復動するピストンと、前記ピストンの往復動に追従して移動し、前記先端工具を打撃する打撃子と、を含み、前記ピストンの往復動に前記圧縮空気を介して追従する前記打撃子の往復動により前記先端工具に打撃力を伝達する、請求項2に記載の作業機。
【請求項4】
前記第2モードにおける前記モータの回転数は、前記第1モードにおける前記モータの回転数より大きい、請求項1に記載の作業機。
【請求項5】
前記打撃力伝達部は、前記モータから前記先端工具への打撃力の伝達を遮断可能なクラッチを有し、
前記第1モードでは、前記クラッチによる打撃力の伝達の遮断を実行しないことで前記モータの駆動力が打撃力として前記先端工具に伝達され、
前記第2モードでは、前記クラッチによる打撃力の伝達の遮断を実行することで前記モータの駆動力の打撃力としての前記先端工具への伝達が遮断される、請求項1に記載の作業機。
【請求項6】
前記クラッチとして、前記打撃力伝達部に電磁クラッチが設けられている、請求項5に記載の作業機。
【請求項7】
前記所定条件は、前記先端工具が前記相手材に当接してから予め設定された所定の時間が経過することである、請求項1に記載の作業機。
【請求項8】
前記所定条件は、前記モータの電流値が予め設定された所定の電流値以上となることである、請求項1に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンマドリル等の作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機の一例として、モータと、前記モータによって駆動される先端工具と、前記モータの駆動を制御する制御部と、を備えた電動工具が提案されている。
【0003】
上述のような電動工具として、例えば、特許文献1には、モータの駆動力によって先端工具に打撃力と回転力とを伝達することが可能な電動工具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された電動工具では、制御部は、先端工具が作業状態になる前にはモータの回転数が低くなるように制御し、先端工具が作業状態になった後はモータの回転数が高くなるように制御する。
【0006】
しかしながら、先端工具を相手材に当接させて作業状態とした直後(例えば、穿孔作業の開始直後)において通常の打撃(打撃力が大きい打撃)が行われると、穿孔箇所で縁欠けが生じる虞がある。穿孔箇所で縁欠けが生じると、その修復作業が発生したり、あるいは先端工具の種類やサイズの変更等の作業が必要となり穿孔作業の進捗度が低下する。その結果、電動工具の利便性が損なわれる可能性がある。
【0007】
本発明の目的は、利便性を向上させた作業機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の作業機は、モータと、相手材に当接可能な先端工具と、前記モータの駆動力により前記先端工具に回転力を与える回転力伝達部と、前記モータの駆動力により前記先端工具に打撃力を与える打撃力伝達部と、前記先端工具に伝達される回転力及び打撃力を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、制御モードとして、前記打撃力伝達部を介して前記先端工具に打撃力を伝達する第1モードと、前記先端工具に伝達する打撃力が前記第1モードより小さい第2モードと、を有し、前記先端工具が前記相手材に当接すると、前記第2モードで前記先端工具に打撃力を伝達し、所定条件を満たすと、前記先端工具に伝達される打撃力を前記第1モードに移行する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業機の利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態の作業機の構造を示す側面断面図である。
【
図2】
図1に示す作業機に先端工具を取り付けた構造を示す側面断面図である。
【
図3】
図1に示す作業機の制御系を示すブロック図である。
【
図4】
図1に示す作業機の時間検知における時間とモータの回転数の関係を示すグラフである。
【
図5】
図1に示す作業機の時間検知における時間とモータの電流値の関係を示すグラフである。
【
図6】
図1に示す作業機のモータの回転数と打撃力の関係を示すグラフである。
【
図7】
図1に示す作業機の時間検知によるモータ制御を示すフローチャートである。
【
図8】
図1に示す作業機の電流検知における時間とモータの回転数の関係を示すグラフである。
【
図9】
図1に示す作業機の電流検知における時間とモータの電流値の関係を示すグラフである。
【
図10】
図1に示す作業機の電流検知によるモータ制御を示すフローチャートである。
【
図11】
図1に示す作業機の時間検知による相手材当接時点を示す時間とモータの回転数のグラフである。
【
図12】
図1に示す作業機の時間検知による相手材当接時点を示す時間とモータの電流値のグラフである。
【
図13】
図1に示す作業機の電流検知による相手材当接時点を示す時間とモータの電流値のグラフである。
【
図14】本発明の実施の形態の変形例の作業機におけるクラッチ接続状態を示す側面断面図である。
【
図15】本発明の実施の形態の変形例の作業機におけるクラッチ切り離し状態を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
本実施の形態では、作業機の一例として、ハンマドリルを取り上げて説明する。
【0013】
本実施の形態に係るハンマドリルの用途は、特に限定されないが、コンクリート壁や石材等の対象物に穿孔等のハツリ処理を施したり、対象物を破砕したりする作業に適している。
【0014】
図1及び
図2に示されるように、ハンマドリル(作業機)10は、作業機本体1と、動力源である電動のモータ19と、相手材12に対して当接可能な先端工具8と、を有する。先端工具8は、例えば、ビット等であり、作業機本体1に着脱可能に取り付けられる。また、ハンマドリル10は、作業機本体1の下側に配置される駆動部4と、作業機本体1に接続されたハンドル部2と、を有する。作業機本体1は、シリンダハウジング1a,中間ハウジング1b及びモータハウジング1cから構成されており、これらは相互に固定されて一体化している。シリンダハウジング1aは全体として円筒形である。そして、シリンダハウジング1aの長手方向の一端とハンドル部2との間に、中間ハウジング1b及びモータハウジング1cが配置されている。以下の説明では、シリンダハウジング1aの長手方向を前後方向P1と定義する。また、シリンダハウジング1aの長手方向の両側のうち、中間ハウジング1b及びモータハウジング1cが配置されている側を後方と定義し、反対側を前方と定義する。すなわち、中間ハウジング1b及びモータハウジング1cは、シリンダハウジング1aの後端とハンドル部2との間に配置されている。
【0015】
中間ハウジング1bとモータハウジング1cは上下に重なっており、ハンドル部2の一端がモータハウジング1cに接続され、ハンドル部2の他端が中間ハウジング1bに接続されている。以下の説明では、中間ハウジング1bに接続されているハンドル部2の他端を上端、モータハウジング1cに連結されているハンドル部2の一端を下端と定義する。換言すれば、ハンドル部2の延びる方向を、前後方向P1と直交する上下方向Q1と定義する。
【0016】
また、ハンマドリル10は、モータ19の駆動力により先端工具8に回転力を与える回転力伝達部14と、モータ19の駆動力により先端工具8に打撃力を与える打撃力伝達部15と、先端工具8に伝達される回転力及び打撃力を制御する制御部13と、を有している。なお、制御部13は、モータ19の駆動力を制御することで、先端工具8に伝達される回転力及び打撃力を制御する。
【0017】
そして、シリンダハウジング1aの内部には、回転力伝達部14として、円筒形のシリンダ17及びリテーナスリーブ25が収容されている。シリンダ17及びリテーナスリーブ25は同心であり、リテーナスリーブ25の一部である先端工具保持部7は、シリンダハウジング1aの先端から突出している。シリンダ17及びリテーナスリーブ25は相対回転不能に係合しており、シリンダ17に回転力が伝達されると、シリンダ17及びリテーナスリーブ25が軸線C1を回転軸として一体回転する。
【0018】
また、先端工具8の一部がリテーナスリーブ25の先端工具保持部7に挿入され、先端工具8は、リテーナスリーブ25によって支持される。リテーナスリーブ25の先端工具保持部7に挿入された先端工具8は、リテーナスリーブ25に対して、回転方向には移動不能、かつ、前後方向P1には所定範囲で移動可能に係合する。よって、シリンダ17及びリテーナスリーブ25が回転すると、リテーナスリーブ25の先端工具保持部7も回転し、これにより、先端工具8に回転力が伝達され、先端工具8が回転する。
【0019】
一方、シリンダ17内には、打撃力伝達部15として、ピストン9、ストライカ(打撃子)22及びセカンドハンマ(中間子)24が往復動可能に収容されている。セカンドハンマ24は、シリンダ17とリテーナスリーブ25とに跨って収容されている。これらピストン9,ストライカ22及びセカンドハンマ24は、シリンダ17の後方から前方に向かってこの順で一列に並んでいる。さらに、シリンダ17内には、打撃力伝達部15の一部として、ピストン9とストライカ22との間に空気室23が設けられている。
【0020】
したがって、ピストン9が往復移動することで、空気室23を介してストライカ22及びセカンドハンマ24によって先端工具8に打撃力が伝達される。すなわち、打撃力伝達部15は、空気室23を含んでおり、ピストン9とストライカ22との間に介在される空気室23の圧縮空気20の圧力により先端工具8に打撃力を伝達する。別の表現で述べると、打撃力伝達部15は、内部に空気室23を形成可能なシリンダ17と、シリンダ17内で往復動するピストン9と、ピストン9の往復動に追従して移動し、先端工具8を打撃する打撃子であるストライカ22と、先端工具8を打撃する中間子であるセカンドハンマ24と、を含んでいる。この構成において、ピストン9の往復動に圧縮空気20を介して追従するストライカ22により打撃力がセカンドハンマ24に伝達される。詳細には、ピストン9の往復動によって空気室23の圧縮空気20の圧力が変化し、この圧力の変化によってストライカ22及びセカンドハンマ24が前後動する。そして、セカンドハンマ24によって打撃力が先端工具8に伝達される。
【0021】
先端工具8に打撃力が伝達されると、先端工具8は前後方向P1に所定範囲で往復動し、
図2に示される相手材12に対して打撃方向E1に打撃力を加える。なお、先端工具8は、軸線C1方向に沿って延びる略円柱形状を有しており、モータ19の駆動力により前後方向P1に動作して所望の作業を行うビットである。
【0022】
また、電動のモータ19は、モータハウジング1c内の駆動部4に収容されている。つまり、モータ19はモータハウジング1cによって支持される。そして、モータ19は、例えば、インナーロータ型のブラシレスモータであって、筒形状のステータ19aと、ステータ19aの内側に配置されたロータ19bと、ロータ19bの内側に配置された出力軸19cと、を有する。出力軸19cはロータ19bに固定されており、ロータ19bを貫通して上下に伸びている。出力軸19cの軸線D1とシリンダ17及びリテーナスリーブ25の軸線C1とは直交している。
【0023】
ロータ19bから突出している出力軸19cの上部は、モータハウジング1cと中間ハウジング1bとの間の隔壁を貫通して中間ハウジング1bの内側に進入している。中間ハウジング1b内に突出している出力軸19cの上端側にはファン19dが設けられており、さらに上端にはピニオンギヤ19eが設けられている。中間ハウジング1b内であって、出力軸19cの一方側には、第1駆動軸30が回転自在に配置され、出力軸19cの他方側には、第2駆動軸40が回転自在に配置されている。これら出力軸19c,第1駆動軸30及び第2駆動軸40は互いに平行である。
【0024】
第1駆動軸30の下部にはピニオンギヤ19eと噛合う第1ギヤ31が設けられており、第1駆動軸30の上部には偏心ピン32が設けられている。そして、この偏心ピン32がコンロッド33を介してピストン9に連結されている。すなわち、往復動機構部18として、コンロッド33とピストン9が設けられている。
【0025】
第2駆動軸40の下部にはピニオンギヤ19eと噛合う第2ギヤ41が設けられ、さらに、第2駆動軸40の上部にはベベルギヤ42が設けられており、このベベルギヤ42がシリンダ17の周囲に配置されているリングギヤ43と噛合っている。リングギヤ43は滑り軸受(メタル)を介してシリンダ17の外周面に装着されており、シリンダ17に対して自由に回転する。
【0026】
シリンダ17の外周面には、リングギヤ43に加えてクラッチ44が設けられている。クラッチ44は、シリンダ17と一体回転し、かつ、単独でシリンダ17の軸方向(前後方向P1)にスライドする。
【0027】
また、ハンドル部2の下端部には、電源ケーブル3が取り付けられており、電源ケーブル3は、外部の商用電源である電源(バッテリ)28(
図3参照)に接続される。さらに、ハンドル部2にはトリガ5によりオン・オフ操作されるトリガスイッチ6が設けられている。作業者が、トリガ5を操作すると、モータ19が作動する。そして、モータ19が作動すると、出力軸19cの回転がピニオンギヤ19e及び第1ギヤ31を介して第1駆動軸30に伝達され、第1駆動軸30が回転する。
【0028】
第1駆動軸30が回転すると、第1駆動軸30の上端に設けられている偏心ピン32が第1駆動軸30の中心軸を回転軸として回転する。すなわち、第1駆動軸30の中心軸の周囲を偏心ピン32が旋回する。この結果、コンロッド33を介して偏心ピン32と連結されているピストン9がシリンダ17内で往復動する。ピストン9がストライカ22から離反する方向に移動すると、つまりピストン9が後退すると、空気室23内の圧縮空気20の圧力が低下し、ストライカ22が後退する。一方、ピストン9がストライカ22に近接する方向に移動すると、つまりピストン9が前進すると、空気室23内の圧縮空気20の圧力が上昇し、ストライカ22が前進する。ストライカ22が前進すると、該ストライカ22によってセカンドハンマ24が打撃され、セカンドハンマ24によって先端工具8が打撃される。このようにして先端工具8に断続的に打撃力が伝達される。
【0029】
第2駆動軸40が回転すると、第2駆動軸40の上端に設けられているベベルギヤ42が回転し、ベベルギヤ42と噛合っているリングギヤ43が回転する。そして、リングギヤ43の回転がクラッチ44を介してシリンダ17に伝達され、シリンダ17及びリテーナスリーブ25が一体回転する。よって、リテーナスリーブ25に保持されている先端工具8には、断続的に打撃力が伝達され、かつ、連続的に回転力が伝達される。これにより、先端工具8によって対象物に所望の作業が行われる。
【0030】
なお、ハンマドリル10の作業機本体1の上部には、ハンマドリル10の動作モードを切り替え可能な操作レバー11が設けられている。この操作レバー11を操作することで、クラッチ44によってリングギヤ43の回転の伝達を遮断可能である。これにより、作業者は、ハンマドリル10の動作モードを、先端工具8に回転力は加えずに打撃力を加えるハンマモードと、先端工具8に回転力及び打撃力の双方を加えるハンマドリルモードと、の間で切り替えることができる。
【0031】
また、
図3に示されるように、ハンマドリル10の制御部13は、マイコンを有しており、該マイコンによってインバータ回路16を介してモータ19の駆動を制御する。そして、ハンマドリル10には、モータ19のロータ19bの回転位置を検出する回転位置検出部21と、モータ19に印加される電流値を検出する電流検出部26と、が設けられている。モータ19の回転数は、回転位置検出部21の検出結果から求めることが可能である。さらに、ハンマドリル10には、電磁クラッチ34や距離センサ27等が設けられている。電磁クラッチ34は、モータ19の駆動力の先端工具8への伝達を繋げたり遮蔽したりする切り替えスイッチである。距離センサ27は、例えば、赤外線センサ等であり、ハンマドリル10の穿孔深さを計測したり、先端工具8と相手材12との距離を計測したり際に用いられるセンサである。ただし、ハンマドリル10は、必ずしも電磁クラッチ34や距離センサ27を備えていなくてもよい。
【0032】
本実施の形態のハンマドリル10の制御部13は、制御モードとして、打撃力伝達部15を介して先端工具8に打撃力を伝達する第1モードと、先端工具8に伝達する打撃力が第1モードより小さい第2モードと、を有している。そして、先端工具8が相手材12に当接すると、制御部13は、上記第2モードで先端工具8に打撃力を伝達し、さらに、所定条件を満たすと、先端工具8に伝達される打撃力を上記第1モードに移行する制御を行う。
【0033】
ここで、ハンマドリル10の穿孔作業等で発生する縁欠けについて説明する。ハンマドリル10の穿孔作業では、相手材12に先端工具8を押し付けた状態(当接した状態)でモータ19が回転すると、先端工具8に打撃力と回転力とが伝達される。穿孔作業を開始する際に、最初の段階から先端工具8に打撃力と回転力とが伝達されると、先端工具8の回転によって相手材12に十分な深さの孔が開くより先に先端工具8の軸方向の衝撃が相手材12に伝わり、孔を開けたい箇所の周りが欠けてしまう。所謂縁欠けが発生する。
【0034】
したがって、穿孔作業において縁欠けを抑制するためには、モータ19の駆動を開始してから穿孔の開始直後の初期状態においては低打撃(打撃力が小さい打撃)とし、ある程度穿孔作業が進んで穿孔深さが深くなってから高打撃(打撃力が大きい打撃)とすることが望ましい。ただし、穿孔作業の初期状態において穿孔が進まないうちに打撃力が大きくなると、縁欠けが発生し易い。そこで、穿孔作業の初期状態においてある程度先端工具8の回転速度を確保して回転力のみで穿孔を進め、その後、所定条件を満たした時点で先端工具8に打撃力と回転力を伝えて高打撃力及び通常回転速度で穿孔を進めるように制御する。
【0035】
なお、穿孔作業の初期状態において所望の穿孔速度を確保するためには、穿孔作業の初期状態のモータ19の回転数を通常回転数以上(高い回転数)とすることが望ましい。具体的には、穿孔作業の初期状態において、ストライカ22がピストン9の往復動に追従できない程度にモータ19の回転数を大きくする(高速回転数制御)。この場合、ストライカ22がピストン9の往復動に追従できないため、先端工具8には打撃力が僅か程度にしか伝達されずに回転力のみが伝達される。これにより、穿孔作業の初期状態においては、低打撃力として略回転力のみで穿孔を進める。そして、ある程度穿孔が進み、設定された所定条件を満たしたら、打撃力も加え(通常回転数制御)、打撃力と回転力とによる高打撃力で穿孔を行うようにモータ駆動を制御する。
【0036】
本実施の形態のハンマドリル10において、上記制御モードを用いた具体的な制御について説明する。
【0037】
まず、ハンマドリル10の制御部13による制御において、モータ19の駆動開始から所定時間の経過に基づいて第2モードから第1モードに移行する場合について説明する。つまり、第2モードから第1モードに移行する所定条件を、先端工具8が相手材12に当接してから予め設定された所定の時間が経過した時点とすることである。すなわち、先端工具8が相手材12に当接してから予め設定された所定の時間が経過した時点で所定条件を満たしたものとし、この時点で第2モードから第1モードに移行して先端工具8に打撃力を伝達する制御である。以降、この所定時間の経過に基づいて第2モードから第1モードに移行する制御を時間検知制御と呼ぶ。なお、第2モードにおけるモータ19の回転数は、第1モードにおけるモータ19の回転数より大きい。
【0038】
ハンマドリル10の時間検知制御による具体的な制御手順を
図7に示されるフローに従い、さらに
図4の時間と回転数の関係、
図5の時間と電流値の関係、及び
図6の回転数と打撃力の関係を参照しながら説明する。なお、第2モードから第1モードに切り替える所定時間の閾値を時間T3Cとする。
【0039】
最初に、
図7のステップS1のようにコントローラ(制御部13)による電源供給開始を実行する。続いてステップS2のトリガON?を判定する。トリガON?の判定がONであれば(ステップS2のYes)、ステップS3のモータ駆動を実行し、モータ19の高速回転数制御を行う。すなわち、
図4の時間T1でトリガONによりモータ19の駆動を開始する。なお、
図4の時間T1においては、既に先端工具8が相手材12に当接している。続いて時間T2でコントローラによってモータ19の高速回転数N2の制御を行う。このモータ19の高速回転数N2の制御は、先端工具8に伝達される打撃力が小さくなる第2モードの制御である。つまり、第2モードでは、モータ19の制御が高速回転数N2の制御であるため、ハンマドリル10においてストライカ22がピストン9の往復動に追従することができず、先端工具8に対して打撃力は僅か程度にしか伝達されない。したがって、穿孔の初期状態では先端工具8に伝達される打撃力は僅か程度の低打撃力である。
【0040】
一方、回転力は、モータ19の駆動力により回転力伝達部14を介して先端工具8に伝達される。したがって、穿孔の初期状態では先端工具8は略回転力のみによって低打撃力で穿孔を行う。モータ19に流れる電流としては、
図5の時間T1でモータ19への電流の印加を開始し、続いて時間T2でモータ19に電流I1が印加される。なお、ステップS2のトリガON?の判定がNoであれば(ステップS2のNo)、再度ステップS2のトリガON?を判定する。
【0041】
図7のステップS3のモータ駆動を高速回転数制御で実行した後、ステップS4のトリガON?を判定する。トリガON?の判定がONであれば(ステップS4のYes)、ステップS5の駆動時間閾値以上?を判定する。一方、トリガON?の判定がNoであれば(ステップS4のNo)、コントローラはステップS6のモータ停止を実行し、モータ19の駆動を停止した後、再度ステップS2のトリガON?を判定する。
【0042】
図7のステップS5の駆動時間閾値以上?の判定が閾値以上であれば(ステップS5のYes)、ステップS7の通常回転数制御を実行する。つまり、第2モードから第1モードに移行してモータ19の通常回転数制御を行う。言い換えると、
図4の時間T3Cで時間閾値到達となり、先端工具8に伝達される打撃力を第2モードから第1モードに移行する。続いて時間T4でコントローラによってモータ19の通常回転数N1の制御を行う。この通常回転数N1のモータ制御が先端工具8に伝達される打撃力が大きくなる制御であり、通常回転数N1<高速回転数N2である。
【0043】
モータ19に流れる電流としては、
図5の時間T2以降、第2モードによる穿孔において先端工具8が掘り進むため、ピストン9への負荷も大きくなり、電流値Iが上昇する。先端工具8が孔を掘り進むと、
図5の時間T3Cで時間閾値到達となり、モータ19に印加される電流値Iがさらに上昇する。このとき第2モードから第1モードに移行したことで、ハンマドリル10においてストライカ22がピストン9の往復動に追従し始める。その結果、ピストン9に掛かる負荷が増え始めて電流値Iがさらに上昇する。続いて
図5の時間T4でモータ19に電流I2を印加してモータ19の通常回転数N1の制御を行う。このとき、電流I1<電流I2である。通常回転数N1のモータ制御では、ハンマドリル10においてストライカ22がピストン9の往復動に追従するため、先端工具8に回転力と打撃力とが伝達され、高打撃力を先端工具8に伝達することができる。言い換えると、第1モードでは、高打撃力で先端工具8は穿孔を行う。
【0044】
ここで、
図6に示されるモータ19の回転数と先端工具8の打撃力の関係について説明する。
図6に示されるように、回転数Nが小さい状態から大きくなるにつれて徐々に打撃力Fも大きくなる。これは、ピストン9の往復動にストライカ22が追従可能な状態であり、ストライカ22によって先端工具8に十分な打撃力が伝達されるためである。この状態で、回転数Nが通常回転数N1となると、打撃力Fは高打撃力F1となる。そして、回転数Nがさらに大きくなると、打撃力Fはピークに到達する。打撃力Fがピークに到達した後さらに回転数Nが大きくなると、打撃力Fは低下していく。これは、ピストン9の往復動にストライカ22が追従しきれなくなり、ストライカ22による先端工具8への打撃力の伝達が少なくなるためである。その結果、先端工具8に伝わる打撃力Fは低下していく。この状態で、回転数Nが通常回転数N1より大きい高速回転数N2となると、打撃力Fは低打撃力F2となる。
【0045】
次に、
図7のステップS7のモータ制御を通常回転数制御で実行した後、ステップS8のトリガON?を判定する。トリガON?の判定がONであれば(ステップS8のYes)、通常回転数制御の高打撃力による穿孔を続ける。一方、トリガON?の判定がNoであれば(ステップS8のNo)、コントローラはステップS9のモータ停止を実行し、モータ19の駆動を停止する。具体的には、時間T5でトリガ5をオフとし、コントローラがモータ19の駆動を停止することにより、時間T6でモータ停止となる。
【0046】
以上のように本実施の形態の時間検知制御では、穿孔作業の初期状態を第2モードで行う。すなわち、穿孔作業の初期状態を高速回転数N2による低打撃力F2で孔を掘り進む。そして、所定条件である時間閾値到達となると、第2モードから第1モードに移行して第1モード(打撃力と回転力による高打撃力)で孔を掘る。すなわち、時間閾値に到達した後は、通常回転数N1による高打撃力F1で孔を掘る制御を行う。
【0047】
次に、ハンマドリル10の制御部13による制御において、モータ19の駆動開始からモータ電流値の所定の閾値への到達に基づいて第2モードから第1モードに移行する場合について説明する。つまり、第2モードから第1モードに移行する所定条件を、モータ19の電流値が予め設定された所定の電流値(閾値)以上となる時点とすることである。すなわち、モータ19の電流値が予め設定された所定の電流値(閾値)に到達した時点で所定条件を満たしたものとし、この時点で第2モードから第1モードに移行する制御である。以降、このモータ19の電流値の閾値への到達に基づいて第2モードから第1モードに移行する制御を電流検知制御と呼ぶ。
【0048】
ハンマドリル10の電流検知制御による具体的な制御手順を
図10に示されるフローに従い、さらに
図8の時間と回転数の関係、
図9の時間と電流値の関係を参照しながら説明する。なお、第2モードから第1モードに移行する電流閾値への到達時間を時間T3Dとする。
【0049】
最初に、
図10のステップS11のようにコントローラ(制御部13)による電源供給開始を実行する。続いてステップS12のトリガON?を判定する。トリガON?の判定がONであれば(ステップS12のYes)、ステップS13のモータ駆動を実行し、モータ制御として高速回転数制御を行う。すなわち、
図8の時間T1でトリガONによりモータ19の駆動を開始する。なお、
図8の時間T1においては、既に先端工具8が相手材12に当接している。続いて時間T2でコントローラによってモータ19の高速回転数N2の制御を行う。この高速回転数N2のモータ制御が第2モードである。第2モードでは、高速回転数N2のモータ制御であるため、ハンマドリル10においてストライカ22がピストン9の往復動に追従することができず、先端工具8に対して打撃力は僅か程度にしか伝達されない。したがって、穿孔の初期状態で先端工具8に伝達される打撃力は僅か程度の低打撃力である。
【0050】
一方、回転力は先端工具8に伝達されるため、穿孔の初期状態では先端工具8は略回転力のみによって低打撃力で穿孔を行う。モータ19に流れる電流としては、
図9の時間T1でモータ19への電流の印加を開始し、続いて時間T2でモータ19に電流I1が印加される。なお、ステップS12のトリガON?の判定がNoであれば(ステップS12のNo)、再度ステップS12のトリガON?を判定する。
【0051】
図10のステップS13のモータ駆動を高速回転数制御で実行した後、ステップS14のトリガON?を判定する。トリガON?の判定がONであれば(ステップS14のYes)、ステップS15の電流閾値以上?を判定する。一方、トリガON?の判定がNoであれば(ステップS14のNo)、コントローラはステップS16のモータ停止を実行し、モータ19の駆動を停止した後、再度ステップS12のトリガON?を判定する。
【0052】
図10のステップS15の電流閾値以上?の判定が閾値以上であれば(ステップS15のYes)、ステップS17の通常回転数制御を実行する。つまり、モータ19の駆動制御を通常回転数制御にする。すなわち、
図8の時間T3Dで電流閾値到達となり、先端工具8に伝達される打撃力を第2モードから第1モードに移行する。このとき、
図9に示されるように、時間T3Dにおいて電流値Iは、閾値の電流IXとなっている。つまり、時間T3Dにおいて電流値Iが閾値の電流IXに到達したことでモータ19の制御を切り替え、先端工具8に伝達される打撃力を第2モードから第1モードに移行する。
【0053】
続いて時間T4でコントローラによってモータ19の通常回転数N1の制御を行う。この通常回転数N1のモータ制御が第1モードによる先端工具8への打撃力の伝達であり、通常回転数N1<高速回転数N2である。モータ19に流れる電流としては、
図9の時間T2以降、第2モードによる穿孔において先端工具8が掘り進むため、ピストン9への負荷も大きくなり、電流値Iが上昇する。先端工具8が孔を掘り進むと、
図9の時間T3Dで電流閾値到達となる。すなわち、時間T3Dでモータ19の電流値が予め設定された所定の電流値(閾値)に到達したため、コントローラによってモータ駆動を切り替える。
【0054】
そして、モータ19の駆動を切り替えたことで先端工具8に伝達される打撃力が第2モードから第1モードに移行される。これにより、ハンマドリル10においてストライカ22がピストン9の往復動に追従し始める。その結果、ピストン9に掛かる負荷が増え始めて電流値Iがさらに上昇する。続いて
図9の時間T4でモータ19に電流I2を印加してモータ19の通常回転数N1の制御を行う。このとき、電流I1<電流IX<電流I2である。通常回転数N1のモータ制御では、ハンマドリル10においてストライカ22がピストン9の往復動に追従するため、先端工具8に打撃力と回転力が伝達され、高打撃力を先端工具8に伝達することができる。言い換えると、第1モードでは、高打撃力で先端工具8は穿孔を行う。
【0055】
図10のステップS17のモータ駆動を通常回転数制御で実行した後、ステップS18のトリガON?を判定する。トリガON?の判定がONであれば(ステップS18のYes)、通常回転数制御の高打撃力による穿孔を続ける。一方、トリガON?の判定がNoであれば(ステップS18のNo)、コントローラはステップS19のモータ停止を実行し、モータ19の駆動を停止する。具体的には、時間T5でトリガ5をオフとし、コントローラがモータ19の駆動を停止することにより、時間T6でモータ停止となる。
【0056】
以上のように本実施の形態の電流検知制御においても、穿孔作業の初期状態を第2モードで行う。すなわち、穿孔作業の初期状態を高速回転数N2による低打撃力F2で孔を掘り進む。そして、所定条件である電流閾値到達となると、第2モードから第1モードに移行して第1モードで孔を掘る。すなわち、電流閾値に到達した後は、通常回転数N1による高打撃力F1(打撃力と回転力による打撃力)で孔を掘る制御を行う。
【0057】
図11と
図12では、時間T1において先端工具8が相手材12に当接していない。なお、上記電流検知制御において先端工具8が相手材12に当接する時間は、
図11と
図12に示される通りである。すなわち、時間T2でモータ19の駆動制御を第2モードとして開始し、その直後の時間T3Aで先端工具8を相手材12に当接させる。
図11に示されるように、時間T3Aにおけるモータ19の回転数Nは、高速回転数N2である。また、
図12に示されるように、時間T3Aにおけるモータ19の電流値Iは、電流I1である。そして、時間T3Dで、モータ19の駆動開始から経過した駆動時間が駆動時間閾値を上回ることと、モータ19の電流値Iが閾値の電流IXを上回ることと、の少なくとも一方の条件が満たされると、モータ19の回転数を通常回転数N1へと切り替える。
【0058】
また、上記電流検知制御において先端工具8が相手材12に当接する時間を、予め設定された電流閾値によって検出することも可能である。例えば、
図13に示されるように、先端工具8が相手材12に当接する時間T3Bの閾値として電流IYを予め設定しておく。そして、時間T2でモータ19の駆動制御を開始した後、電流値Iが閾値である電流IYに到達すると、先端工具8が相手材12に当接したことを示す。このように先端工具8が相手材12に当接した時間として時間T3Bを検出することが可能である。
【0059】
本実施の形態のハンマドリル10によれば、穿孔作業の初期状態を高速回転数による低打撃力(第2モード)で孔を掘り進み、その後、予め設定された時間やモータ電流等で所定条件を満たすと、通常回転数による高打撃力(第1モード)に移行して孔を掘ることができる。すなわち、先端工具8が相手材12に当接してから穿孔作業の初期状態では、先端工具8に略回転力のみを与えて孔を掘るため、穿孔の開始時に発生しやすい縁欠けの発生を抑制することができる。そして、ある程度穿孔が進んでから打撃力と回転力を先端工具8に与えて所望の深さまで孔を掘る。また、初期状態においては先端工具8を高速回転させるため、低打撃力の状態であっても穿孔を充分進めることができ、スムーズに通常回転数による制御に移行できる。
【0060】
このようにモータ19を駆動させて先端工具8に伝達される打撃力を変更する制御を行うことで、穿孔箇所において縁欠けの発生を抑制することができる。その結果、縁欠けの修復作業や先端工具8の変更等の作業が不要となるため、ハンマドリル10における穿孔作業の進捗度の低下を回避することができる。したがって、ハンマドリル10を用いた穿孔作業を予定通りに進めることができ、ハンマドリル10の利便性を向上させることができる。
【0061】
次に、
図14及び
図15に示される本実施の形態のハンマドリル10の変形例について説明する。
図14に示される変形例のハンマドリル10は、その打撃力伝達部15に、モータ19から先端工具8への打撃力の伝達を遮断することが可能なクラッチが設けられているものである。ここでは、上記クラッチとして、打撃力伝達部15に電磁クラッチ34が設けられている場合を説明する。
【0062】
例えば、モータ19の回転数を通常回転数として高打撃力で穿孔を行う第1モードの制御では、ハンマドリル10の打撃力伝達部15において、電磁クラッチ34による打撃力の伝達の遮断を実行しないことでモータ19の駆動力が打撃力として先端工具8に伝達され、高打撃力で穿孔を行う。具体的には、ソレノイド35をオフにすることで電磁クラッチ34がソレノイド35に吸引されないため、電磁クラッチ34が上方側に移動することはなく電磁クラッチ34と第1ギヤ31とが係合した状態となる。これにより、モータ19の駆動力が打撃力及び回転力として先端工具8に伝達され、高打撃力で穿孔を行う。
【0063】
一方、モータ19の回転数を高速回転数として低打撃力で穿孔を行う第2モードの制御では、
図15に示されるように、ハンマドリル10の打撃力伝達部15において、電磁クラッチ34による打撃力の伝達の遮断を実行することでモータ19の駆動力の先端工具8への伝達が遮断され、低打撃力で穿孔を行う。具体的には、ソレノイド35に印加される電流によりソレノイド35が電磁クラッチ34を吸引して電磁クラッチ34が上方側に移動する。これにより、電磁クラッチ34と第1ギヤ31との係合が外れてモータ19の駆動力が電磁クラッチ34側には伝達されない状態となる。その結果、モータ19の駆動力が打撃力としては先端工具8に伝達されずに、先端工具8は回転力のみの低打撃力で穿孔を行う。
【0064】
以上のように、電磁クラッチ34の動作によってモータ19の駆動力のうちの打撃力の先端工具8への伝達のオンとオフとを切り替えることが可能である。
【0065】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。上記実施の形態では、先端工具8に伝達される打撃力を切り替える所定条件として経過時間の閾値を設定する場合と、電流値の閾値を設定する場合とを説明したが、例えば、穿孔深さを閾値として設定することも可能である。
図3に示されるように、ハンマドリル10に設けられた赤外線センサ等の距離センサ27によって穿孔深さを検出する。すなわち、距離センサ27による穿孔深さの検出が予め設定された穿孔深さを検出すると、モータ19の駆動が切り替えられて先端工具8に伝達される打撃力が第2モードから第1モードに切り替えられる。
【0066】
さらに、この距離センサ27を用いて先端工具8が相手材12に当接した時点を検出することも可能である。例えば、距離センサ27によって検出される先端工具8と相手材12との距離が0(零)になると、先端工具8が相手材12に当接したと判断する。
【符号の説明】
【0067】
1…作業機本体、1a…シリンダハウジング、1b…中間ハウジング、1c…モータハウジング、2…ハンドル部、3…電源ケーブル、4…駆動部、5…トリガ、6…トリガスイッチ、7…先端工具保持部、8…先端工具、9…ピストン、10…ハンマドリル(作業機)、11…操作レバー、12…相手材、13…制御部、14…回転力伝達部、15…打撃力伝達部、16…インバータ回路、17…シリンダ、18…往復動機構部、19…モータ、19a…ステータ、19b…ロータ、19c…出力軸、19d…ファン、19e…ピニオンギヤ、20…圧縮空気、21…回転位置検出部、22…ストライカ(打撃子)、23…空気室、24…セカンドハンマ(中間子)、25…リテーナスリーブ、26…電流検出部、27…距離センサ、28…電源、30…第1駆動軸、31…第1ギヤ、32…偏心ピン、33…コンロッド、34…電磁クラッチ(クラッチ)、35…ソレノイド、40…第2駆動軸、41…第2ギヤ、42…ベベルギヤ、43…リングギヤ、44…クラッチ、C1,D1…軸線、E1…打撃方向、F1,F2…打撃力、I1,I2,IX,IY…電流、N1,N2…回転数、P1…前後方向、Q1…上下方向、T1,T2,T3A,T3B,T3C,T3D,T4,T5,T6…時間