(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010883
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】モールドコイル
(51)【国際特許分類】
H01F 37/00 20060101AFI20240118BHJP
G01K 1/14 20210101ALI20240118BHJP
H01F 41/12 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
H01F37/00 K
G01K1/14 L
H01F37/00 M
H01F37/00 H
H01F41/12 D
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112440
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 孝輔
【テーマコード(参考)】
2F056
5E044
【Fターム(参考)】
2F056CL07
5E044AD07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】センサの検出部の変形や位置ずれを抑制することができるモールドコイルを提供する。
【解決手段】モールドコイルは、コイルと、モールドコイルの物理量を検出する検出部11を有するセンサと、コイルの周囲を覆うコイルカバーと、コイルとセンサを一体化するコイルモールド樹脂5と、を備える。コイルモールド樹脂5は、モールド成型時にコイルモールド樹脂5を注入した痕であるゲートGを有する。コイルカバーは、検出部11を支持する検出部支持部45を有する。検出部支持部45とゲートGは対向に配置されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルと、
モールドコイルの物理量を検出する検出部を有するセンサと、
前記コイルの周囲を覆うコイルカバーと、
前記コイルと前記センサを一体化するコイルモールド樹脂と、
を備え、
前記コイルモールド樹脂は、モールド成型時に前記コイルモールド樹脂を注入した痕であるゲートを有し、
前記コイルカバーは、前記検出部を支持する検出部支持部を有し、
前記検出部支持部は、前記ゲートに対して対向に配置されていること、
を特徴とするモールドコイル。
【請求項2】
前記検出部支持部は、前記ゲートと対向する前記検出部の反対側の端面を支持する支持面のみ有していること、
を特徴とする請求項1に記載のモールドコイル。
【請求項3】
前記センサの周囲を覆うセンサカバーを更に備え、
前記センサは、
外部機器と接続するコネクタと、
前記検出部と前記コネクタを繋ぐリード線と、
を更に有し、
前記センサカバーは、前記リード線の少なくとも一部を覆うリード線カバーを有し、
前記リード線カバーは、前記コイルカバーに嵌合されるフランジを有し、
前記センサ及び前記センサカバーは、モールド成型前において、前記フランジが前記コイルカバーに嵌合することで固定されること、
を特徴とする請求項1又は2に記載のモールドコイル。
【請求項4】
前記支持面は、前記検出部とリード線の境界部分から前記検出部の先端まで前記検出部を支持していること、
を特徴とする請求項2に記載のモールドコイル。
【請求項5】
前記支持面は、素子が設けられている前記検出部の先端部分のみ前記検出部を支持していること、
を特徴とする請求項2に記載のモールドコイル。
【請求項6】
前記コイルカバーは、前記検出部支持部と一体に成型されていること、
を特徴とする請求項1又は2に記載のモールドコイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサとともにモールド成型されたモールドコイルに関する。
【背景技術】
【0002】
OA機器、太陽光発電システム、自動車など様々な用途にリアクトル等のコイル部品が用いられている。コイル部品は、磁性材から成るコアの外周にコイルを巻回して成る。また、コアとコイルの間には、コアとコイルを絶縁するため、樹脂部材が設けられている。
【0003】
近年、樹脂部材でモールド成型したモールドコイルが各所において使用されている。モールドコイルは、コイルを金型を所定の位置に配置し、樹脂を金型内に注入し、固化させる。このようにして、コイルの内周面及び外周面を樹脂部材で被覆させたモールドコイルが作製される。
【0004】
コイル部品には、センサが設けられる場合がある。センサは、コイル部品の物理量、例えば温度、を検出する。センサは、コイルの物理量を検出する素子を有する検出部を備えている。モールドセンサにセンサを配置する場合、モールド成型時にコイルとともにセンサも樹脂部材で被覆して一体化する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
モールド成型において、樹脂を細部まで充填させるため、樹脂は高い射出圧で金型内に注入される。そのため、センサの検出部が射出圧で変形したり、所定の位置からずれる場合があった。センサが変形したり、位置がずれたりすると、コイル部品の物理量を正確に検出できず、場合によって検出が不可能になる虞があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、センサの検出部の変形や位置ずれを抑制することができるモールドコイルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のモールドコイルは、コイルと、モールドコイルの物理量を検出する検出部を有するセンサと、前記コイルの周囲を覆うコイルカバーと、前記コイルと前記センサを一体化するコイルモールド樹脂と、を備え、前記コイルモールド樹脂は、モールド成型時に前記コイルモールド樹脂を注入した痕であるゲートを有し、前記コイルカバーは、前記検出部を支持する検出部支持部を有し、前記検出部支持部と前記ゲートは対向に配置されていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、センサの検出部の変形や位置ずれを抑制することができるモールドコイルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】モールドコイルの全体構成を示す斜視図である。
【
図2】コイルカバーをコイルに装着した状態を示す図である。
【
図4】センサカバーを固定部に固定した状態を示す図である。
【
図6】検出部支持部が検出部を支持する状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態)
実施形態に係るモールドコイルについて図面を参照しつつ説明する。
図1は、モールドコイルの全体構成を示す斜視図である。各図面においては、理解容易のため、厚み、寸法、位置関係、比率又は形状等を強調して示している場合があり、本発明は、それら強調に限定されるものではない。
【0012】
モールドコイル10は、モールド成型によってセンサ1とコイル3をコイルモールド樹脂5で被覆させることにより形成される。センサ1は、モールド成型時に射出圧から保護するためのセンサカバー2が装着されている。また、コイル3は、金型が直接当接すると被膜が損傷する虞があるため、コイルカバー4が設けられている。即ち、モールドコイル10は、センサ1、センサカバー2、コイル3、コイルカバー4及びコイルモールド樹脂5を備える。モールドコイル10は、後述するようにリアクトルの構成部材として用いられる。
【0013】
センサ1は、モールドコイル10に関する物理量を検出する。センサ1は、例えば、温度センサである。センサ1は、検出部11、リード線12及びコネクタ13を有する。
【0014】
検出部11は、モールドコイル10に関する物理量を検出する。本実施形態では、検出部11としては、モールドコイル10の温度を検出する素子であり、例えばサーミスタを用いることができる。検出部11は概略直方体形状である。検出部11は、一対設けられているコイル3間に配置されている。
【0015】
リード線12は、一方端部が検出部11と接続されており、他方端部がコネクタ13と接続される。リード線12は、金属線とそれを被覆する被覆部とから成る。金属線の材質としては、銅、ニッケル、アルミ、銀、金又はこれら2種以上を含むことができる。金属線は、1本のみの単線、または複数本をより合わせたより線を使用できる。被覆部は、ビニール、シリコンゴム、フッ素ゴムなどの絶縁性部材で金属線を被覆する。なお、検出部11側の一部の金属線は被覆部に被覆されていない。
【0016】
コネクタ13は、外部機器のコネクタと接続される部材である。コネクタ13は、外部機器のコネクタを着脱自在に構成されている。検出部11は検出した情報は、リード線12及びコネクタ13を介して、コネクタ13に接続された外部機器に伝送される。
【0017】
センサカバー2は、センサ1を保護する部材であり、センサ1の周囲に配置される。センサカバー2は、センサ1とは別体となっており、センサ1に装着することでセンサ1に固定される。即ち、センサカバー2とセンサ1は一体化されておらず、センサカバー2はセンサ1から着脱可能である。
【0018】
センサカバー2は樹脂から成り、樹脂の種類としてはエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、BMC(Bulk Molding Compound)、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)等が挙げられる。特に、PPSが好ましい。PPSは、耐熱性が高いため、モールド成型時の樹脂の熱でセンサカバー2が変形することを防止でき、センサカバー2によってもセンサ1の変形や位置ずれを抑制することができる。
【0019】
センサカバー2は、矩形の1辺が開口となる断面コの字形状となっている。この開口部分からセンサ1をセンサカバー2の内部スペースに収容する。センサカバー2は、センサ1の検出部11を保護する検出部カバー21と、リード線12を保護するリード線カバー22を有する。
【0020】
検出部カバー21は、少なくとも検出部11の一部の周囲に設けられていれば足りる。本実施形態では、検出部カバー21は、リード線12側の検出部11の一部分に設けられている。換言すれば、検出部カバー21は、検出部11の先端部分、即ち、素子部分の周囲は被覆していない。検出部カバー21の内部スペースは、検出部11と略同一の大きさである。検出部カバー21に検出部11を圧入することで、検出部カバー21と検出部11が密着し、センサカバー2は検出部11に固定される。
【0021】
リード線カバー22は、少なくともセンサ1とコイル3をコイルモールド樹脂5でモールド成型する際に金型内に配置されるリード線12部分の周囲に配置されていれば足りる。リード線カバー22は、フランジ23を有する。フランジ23は、リード線カバー22の一対ある側壁の外周面から当該側壁と直交する方向に突出している。
【0022】
コイル3は、エナメル被覆等の絶縁被覆が施された導電性部材を筒状に巻いた巻回体である。コイル3は、巻軸に沿って1ターンごとに巻位置をずらしながら螺旋状に巻回することで形成される。コイル3は、4つの平坦面と4つの湾曲面が交互に形成されている。コイル3の導電性部材は、例えば平角線であり、導電性部材の幅広面がコイル3の巻軸との直交方向に拡がるように、導電性部材が巻回されて成る螺旋状のエッジワイズコイルである。もっとも、コイル3の線材や巻き方は、平角線のエッジワイズコイルに限定されず、他の形態であってもよい。
【0023】
コイル3は、2つ設けられている。各コイル3は、巻軸が平行になるように対向に配置される。2つのコイル3は連結線32(
図6参照)によって連結されている。コイル3からは引出線31が延びており、引出線31はバスバー6の一方端部と接続している。バスバー6の他方端部は外部機器の端子と接続され、コイル3はバスバー6を介して通電される。
【0024】
図2は、コイルカバーをコイルに装着した状態を示す図である。コイルカバー4は、
図2に示すように、コイル3の外周に設けられている。コイル3は、導電性部材を巻き回して形成されるため、寸法にばらつきが生じることがある。そのため、モールド成型時に金型をコイル3に強く押し付けて、コイル3の寸法のばらつきを矯正させる。このとき、コイル3を直接金型で押し付けると、導電性部材の絶縁被膜を破損させるなどの虞があるため、コイル3の外周をコイルカバー4で被覆してコイル3を保護する。
【0025】
コイルカバー4は樹脂から成り、樹脂の種類としてはエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、BMC(Bulk Molding Compound)、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)等が挙げられる。
【0026】
コイルカバー4は、上部カバー41、下部カバー42、環状カバー43を有する。ここでいう上下方向は、金型に収容される際の上下方向である。上部カバー41は、板状の部材であり、コイル3の上面を覆っている。
【0027】
下部カバー42は、コイル3の下面に配置される。
図3は、下部カバーの全体構成を示す斜視図である。下部カバー42は、
図3に示すように、下部支持部421と環状板422を有する。下部支持部421と環状板422は、一体成型により継ぎ目無く一繋がりに連接している。下部支持部421は、コイル3の下面側の湾曲面と当接し、コイル3を支持している。
【0028】
環状板422は、下部支持部421の端部から下部支持部421に対して直交に延びている。環状板422は、巻軸と直交するコイル3の端面を覆っている。環状板422には、コイル3の内周と略同一に開口が形成されている。この開口には、リアクトルを構成する際にコアの脚部が挿入される。なお、下部支持部421及び環状板422は、各コイル3にそれぞれ設けられている。
【0029】
下部カバー42は、固定部44及び検出部支持部45を更に有する。固定部44及び検出部支持部45は、下部支持部421及び環状板422とともにモールド成型によって一体に成型されている。
図4は、センサカバー2を固定部44に固定した状態を示す図である。固定部44は、センサカバー2を装着したセンサ1を固定する。固定部44は、環状板422の上端からモールドコイル10の外方、即ち、コイル3とは反対方向に延設する。固定部44は、コイル3の間に設けられている。
【0030】
固定部44は、載置部441及び側壁442を有する。載置部441は、平板状の部材でセンサカバー2のリード線カバー22を載置する。側壁442は一対設けられており、載置部441の両端から載置部441に直交して延びている。一対の側壁442の間は、リード線カバー22が収容できる程度に空いていればよい。リード線カバー22は、リード線カバー22の開口から固定部44に向かって挿入され、リード線カバー22の開口は載置部441によって塞がれる。載置部441にはリード線12に向かって突出する突出部が設けられており、リード線カバー22が固定部44に挿入されると、突出部はリード線カバー22の内面に入り込み、リード線12は、リード線カバー22の内面と突出部で画成されたスペースに収容される。
【0031】
側壁442には、切り欠き46が設けられている。切り欠き46は、側壁の延び先端から載置部441に向かって側壁442を切り欠いている。この切り欠き46には、リード線カバー22のフランジ23が収容される。切り欠き46の深さは、フランジ23を収容できる大きさであれば足りる。
【0032】
検出部支持部45は、コイル3間に設けられている。
図5は、検出部支持部45の拡大図である。
図6は、検出部支持部45が検出部11を支持した状態を示す断面図である。検出部支持部45は、コイル3間の下部支持部421から上下方向に沿って延びている板状の部材である。検出部支持部45は、
図6に示すように、検出部11を保持する。即ち、検出部支持部45は、検出部11を支持する支持面451を有する。
【0033】
なお、
図6に示すように、検出部支持部45と環状板422の間には隙間Sが設けられている。これは、コイル3の連結線32を収容するために設けられている。そのため、コイル3が連結コイルではない場合には、検出部支持部45は、環状板422とも連接していることが好ましい。このように構成することで、検出部支持部45の強度を上げることができる。
【0034】
支持面451は、モールド成型時にコイルモールド樹脂5が注入されるゲートGと対向するように配置される。ここでいう対向とは、支持面451とゲートGと支持面451は、ゲートGから注入されたコイルモールド樹脂5が直線状に支持面451に向かってくる位置関係にあれば足りる。
【0035】
支持面451は、環状板422側がもっとも高い位置にあり、そこから下方へ向かう傾斜面である。本実施形態では、検出部カバー21の先端辺りで支持面451には段差が形成されているが、この段差は必須の構成ではない。即ち、支持面451は、段差が形成されていない平坦な傾斜面でもよい。支持面451の傾斜角度は、45度~90度が好ましく、本実施形態では、45度である。なお、ここでいう90度とは、支持面451がゲートGに対して対向する、即ち、金型に収容される際の上下方向と平行であることを意味する。つまり、支持面451は、傾斜面でなくてもよい。
【0036】
支持面451は、ゲートGと対向する検出部11や検出部カバー21の端面とは反対側の端面を支持する。換言すれば、支持面451は、検出部11や検出部カバー21の一面のみを支持している。支持面451は、リード線カバー22を固定部44に固定した際に、検出部11や検出部カバー21と当接している。支持面451は、検出部11をリード線12との境界部分から素子が設けられている検出部11の先端まで延びている。即ち、支持面451は、検出部11の一面全体を支持している。
【0037】
なお、支持面451と検出部11や検出部カバー21の間に若干隙間が空いていてもよい。この隙間は、モールド成型時の射出圧で検出部11や検出部カバー21が移動した際に当接でき、大きな位置ずれを防止できる程度の大きさである。
【0038】
環状カバー43は、
図2に示すように、下部カバー42の環状板422とは反対側の巻軸と直交するコイル3の端面を覆っている。環状カバー43は、コイル3の内周と略同一の開口を有し、この開口とコイル3の内周が重なるようにコイル3の端面を覆っている。環状カバー43は、コイル3の内周に延びる板状部を有する。この板状部によってコイル3の内周面は支持される。
【0039】
コイルモールド樹脂5は、
図1に示すように、センサカバー2を装着したセンサ1とコイル3を樹脂により被覆し、センサ1とコイル3を一体化する。ここでは、バスバー6もセンサ1、コイル3とともに一体化している。コイルモールド樹脂5は、後述するモールドコアの凸部と嵌合する凹部51を有する。凹部51は巻軸と直交する端面の上方角部に設けられている。
【0040】
コイルモールド樹脂5を構成する樹脂の種類としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、BMC(Bulk Molding Compound)、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)等が挙げられる。特に、熱伝導性の高い樹脂を用いることが望ましい。熱伝導性の高い樹脂を用いることで、コイル3の熱を外部に伝達することができる。
【0041】
コイルモールド樹脂5は、ゲートGを有する。ゲートGは、モールド成型時に樹脂を注入した注入痕である。ゲートGは、検出部支持部45の支持面451と対向する端面に設けられている。即ち、ゲートGは、環状カバー43側のコイル3間に形成されている。このゲートGと支持面451の間にはモールドコイル10の構成部材は存在していない。そのため、このゲートGから注入されたコイルモールド樹脂5は支持面451に向かって射出される。なお、ゲートGは、コイル3の間以外にも、環状カバー43側のそれぞれ凹部51の下部にも設けられている。ゲートGが複数設けられている場合、そのうちの1つが支持面451と対向関係にあればよい。
【0042】
以上のモールドコイル10と、一対のモールドコアを組み合わせることでリアクトルと成る。リアクトルは、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換して蓄積及び放出する電磁気部品であり、OA機器、太陽光発電システム、自動車など様々な用途で使用される。
【0043】
モールドコアは、コアをコアモールド樹脂でモールド成型して作製される。コアは、圧粉磁心、フェライトコア、積層鋼板、又はメタルコンポジットコア等を用いることができる。メタルコンポジットコアとは、磁性粉末と樹脂とが混練され、樹脂が硬化されて成る磁性体である。
【0044】
コアは、一対の脚部と、一対の脚部を連結するヨーク部とを有するU字型コア部材から成る。U字型コア部材は、2つ設けられ、互いの脚部を接着剤で接合することで環状形状となる。
【0045】
コアモールド樹脂は、コアの表面の少なくとも一部を被覆する。コアモールド樹脂として用いる樹脂の種類としては、コイルモールド樹脂5と同一のものを用いることができる。コアモールド樹脂は、モールドコイル10の凹部51に対応する位置に凸部を有する。凸部は、モールドコイル10に向かって突出する。凸部は、凹部51の凹み形状に対応する形状で突出し、凸部が凹部51に嵌合することで、モールドコアはモールドコイル10に保持、固定される。
【0046】
(モールド成型)
次に、モールドコイル10を作製するモールド成型について説明する。まず、コイル3を下部カバー42の上に載せ、環状カバー43及び上部カバー41を装着し、コイル3の周囲を上部カバー41、下部カバー42及び環状カバー43で覆う。その後、センサカバー2を装着したセンサ1を固定部44に固定する。この時、検出部11及び検出部カバー21は、検出部支持部45の支持面451に当接している。そして、この組立体を金型に収容する。
【0047】
組立体を金型に収容した後、ゲートGの位置からコイルモールド樹脂5を金型内に注入する。コイル3の間に位置するゲートGから注入されたコイルモールド樹脂5は、検出部11や検出部カバー21に向かって射出される。特に、ゲートGと支持面451の間に障害となるモールドコイル10の構成部材がないため、コイルモールド樹脂5は減圧することなく、検出部11に向かってくる。そのため、検出部11が変形する虞や位置がずれる虞がある。
【0048】
しかし、本実施形態では、ゲートGと対向する位置に支持面451が設けられており、検出部11や検出部カバー21は支持面451と当接し、支持されている。よって、検出部11が変形したり、位置がずれることが抑制される。
【0049】
(効果)
以上のとおり、本実施形態のモールドコイル10は、コイル3と、モールドコイル10の物理量を検出する検出部11を有するセンサ1と、コイル3の周囲を覆うコイルカバー4と、コイル3とセンサ1を一体化するコイルモールド樹脂5と、を備える。コイルモールド樹脂5は、モールド成型時にコイルモールド樹脂5を注入した注入痕であるゲートGを有する。コイルカバー4は、コイル3の下面に配置される下部カバー42を有し、下部カバー42は、検出部11を支持する検出部支持部45を有する。そして、検出部支持部45とゲートGは対向に配置されている。
【0050】
これにより、モールド成型時において、検出部11に向かってコイルモールド樹脂5が射出された場合でも、検出部支持部45によって検出部11が支持される。そのため、検出部11の変形や位置ずれが抑制され、センサ1は精度良くモールドコイル10の温度を検出できる。
【0051】
検出部支持部45は、ゲートGと対向する検出部11の反対側の端面を支持する支持面451のみ有している。このように、検出部11の周囲には、支持面451が一面あるだけであり、その他の端面は検出部支持部45に被覆されていない。例えば、検出部支持部45が検出部11の周囲全てを覆うように設けられていると、検出部11とコイル3の間に検出部支持部45が介在するため、温度の検出精度は悪くなる虞がある。そこで、支持面451を検出部11の一面のみにすることで、検出部11の変形や位置ずれを抑制するとともに、モールドコイル10の温度をより正確に検出することができる。
【0052】
センサ1の周囲を覆うセンサカバー2を更に備え、センサ1は、外部機器と接続するコネクタ13と、検出部11とコネクタ13を繋ぐリード線12と、を更に有する。センサカバー2は、リード線12の少なくとも一部を覆うリード線カバー22を有し、リード線カバー22は、コイルカバー4の固定部44に嵌合されるフランジ23を有する。センサ1及びセンサカバー2は、モールド成型前において、フランジ23がコイルカバー4の固定部44に嵌合することで固定されている。
【0053】
検出部11は、ゲートGと対向に配置されているので、センサ1やセンサカバー2を検出部11の周囲で固定すると、モールド成型時において、コイルモールド樹脂5が固定箇所に直撃し、固定箇所が破損してしまい、センサ1の位置ずれする虞がある。そこで、本構成のように、検出部11から離れたリード線カバー22にフランジ23を設け、このフランジ23と固定部44によって固定することでコイルモールド樹脂5の直撃を避け、モールド成型時の射出圧によって固定箇所が破損することを防止できる。また、検出部11の周囲にコイル3からの熱の伝達の障壁となる部材はないので、モールドコイル10の温度検出の精度が上がる。
【0054】
支持面451は、検出部11とリード線12の境界部分から検出部11の先端まで検出部11を支持している。このように、支持面451は、検出部11の一面全体を支持している。これにより、検出部11をより強固に支持でき、モールド成型時の射出圧が大きくても検出部11の変形や位置ずれを抑制できる。
【0055】
下部カバー42は、検出部支持部45と一体に成型されている。例えば、検出部支持部45が下部カバー42とは別体であり、接着剤等で接合されている場合、モールド成型時の射出圧で検出部支持部45が剥がれ取れる虞がある。また、接着工程という作業も要する。そのため、検出部支持部45を下部カバー42と一体に成型することで、検出部支持部45の強度を上げるとともに、作業性が向上する。
【0056】
(他の実施形態)
本明細書においては、本発明に係る実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。上記のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0057】
本実施形態では、センサカバー2はセンサ1と別体で、センサ1に装着させていたが、これに限定されない。センサカバー2を構成する樹脂によってモールド成型し、センサ1とセンサカバー2を一体に成型してもよい。
【0058】
また、センサカバー2は、固定部44に嵌合するフランジ23を有するリード線カバー22のみを有し、検出部カバー21は設けなくてもよい。即ち、検出部11はセンサカバー2で覆われていなくてもよい。さらに、センサ1はセンサカバー2によって被覆されていなくてもよい。
【0059】
本実施形態では、支持面451は、検出部11とリード線12との境界部分から素子が設けられている検出部11の先端まで延び、検出部11の一面全体を支持していた。もっとも、支持面451は、検出部11の先端部分(素子を有する部分)のみ支持する構成であってもよい。検出部11の先端部分の変形や位置ずれを抑制できれば、センサの検出精度が上がる。また、検出部11の一面全体を支持するより、検出部支持部45を構成する樹脂量を削減でき、コスト削減となる。なお、検出部支持部451は、下部カバー42に設けられている必要はなく、コイルカバー4あれば、例えば、上部カバー41に設けられていてもよい。
【0060】
本実施形態では、ゲートGは環状カバー43側のコイル3間に形成していたが、支持面451と対向する位置であり、コイル3の上面のコイル3間に形成してもよい。即ち、コイルモールド樹脂5は、コイル3の上面から射出してもよい。特に、支持面451の傾斜角度は45度なので、支持面451の構成を変更することなく、検出部11を支持面451で支持することができる。
【符号の説明】
【0061】
10 モールドコイル
1 センサ
11 検出部
12 リード線
13 コネクタ
2 センサカバー
21 検出部カバー
22 リード線カバー
23 フランジ
3 コイル
31 引出線
32 連結線
4 コイルカバー
41 上部カバー
42 下部カバー
421 下部支持部
422 環状部
43 環状カバー
44 固定部
441 載置部
442 側壁
45 検出部支持部
451 支持面
46 切り欠き
5 コイルモールド樹脂
51 凹部
6 バスバー
G ゲート