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  • 特開-ソーラパネルフロートユニット 図1
  • 特開-ソーラパネルフロートユニット 図2
  • 特開-ソーラパネルフロートユニット 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108833
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】ソーラパネルフロートユニット
(51)【国際特許分類】
   H02S 10/40 20140101AFI20240805BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20240805BHJP
   H02S 40/12 20140101ALI20240805BHJP
【FI】
H02S10/40
B63B35/00 T
H02S40/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013430
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 和夏希
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 浩久
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
5F151JA15
5F151JA30
5F251JA15
5F251JA30
(57)【要約】
【課題】ソーラパネルに積雪した雪を除去しつつ、発電が効率的に行われるソーラパネルフロートユニットを提供する。
【解決手段】ソーラパネルフロートユニット1は、水面Sに配置されるフロート本体2と、フロート本体に支持されたソーラパネル6とを有する。通常時の喫水線Lの上側の部分である上側フロート本体4は、通常時の浮心B1に対して水平方向の所定の側に偏っている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソーラパネルフロートユニットであって、
水面に配置されるフロート本体と、
前記フロート本体に支持されたソーラパネルとを有し、
通常時の喫水線の上側の前記フロート本体の部分が、通常時の浮心に対して水平方向の所定の側に偏っている、ソーラパネルフロートユニット。
【請求項2】
前記ソーラパネルが前記所定の側から他方の側に向けて下向きに傾斜している、請求項1に記載のソーラパネルフロートユニット。
【請求項3】
前記フロート本体は、前記所定の側に設けられた上向きに突出する部分を含む、請求項2に記載のソーラパネルフロートユニット。
【請求項4】
前記ソーラパネルを支持するための複数の支柱を更に有する、請求項3に記載のソーラパネルフロートユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソーラパネルを水上に支持するためのソーラパネルフロートユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光を電力に変換する太陽光発電では、ソーラパネル(太陽電池パネル、太陽電池モジュール等とも称される)が用いられている。ソーラパネルは、これまで主に建築物の屋根や壁面、地面等に、発電に最適な所定の角度をもって傾斜して設置されてきたが、近年では、遊休化している池や湖等の水上への設置が進んできている。特許文献1では、ソーラパネルを、発電に最適な所定の角度をもって傾斜させつつ、水上に配置するためのフロートが開示されている。フロートは、平面視で矩形状の環状フロートを有する。
【0003】
ところで降雪地帯では、積雪によってソーラパネルの上面が覆われるため、発電の効率が低下する。特許文献2に記載のフロート(フロートテーブル)には、噴水、即ち水中に配置された吸水ポンプ及び、吸水ポンプにより汲み上げられた水をフロートの上方に向けて拡散するためのノズルが設けられている。ノズルによってフロートの上方に向けて拡散された水は、ソーラパネルの上面に降りかかる。これにより、ソーラパネルの上面に積雪した雪が融けて水となって流れることにより、ソーラパネルが露出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許6592876号公報
【特許文献2】特開2011-238890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載の吸水ポンプの駆動には、ソーラパネルにて発電された電力のうちの一部が使用される。そのため、ソーラパネルにて発電された電力に対する、蓄電又は、電力会社へ売却などに利用されるべき電力の比率、即ち発電の効率が低下する。
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑み、ソーラパネルに積雪した雪を除去しつつ、発電が効率的に行われるソーラパネルフロートユニットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明はソーラパネルフロートユニット(1)であって、水面(S)に配置されるフロート本体(2)と、前記フロート本体に支持されたソーラパネル(6)とを有し、通常時の喫水線(L)の上側の前記フロート本体(4)の部分が、通常時の浮心(B1)に対して水平方向の所定の側に偏っている。
【0008】
この態様によれば、ソーラパネルに積雪した雪の重さにより、ソーラパネルフロートユニットが通常時よりも水中に沈み込んだとき、その浮心は水平方向の所定の側に移動する。これにより、ソーラパネルフロートユニットは他方の側に傾動するため、ソーラパネルに積雪した雪の落雪が誘引される。したがって、ソーラパネルに積雪した雪を除去しつつ、発電を効率的に行うことができる。
【0009】
上記の態様において、前記ソーラパネルが前記所定の側から他方の側に向けて下向きに傾斜しているとよい。
【0010】
この態様によれば、ソーラパネルが傾斜する向きと、ソーラパネルフロートユニットが通常時よりも水中に沈み込んだときに傾動する向きとが合致する。したがって、ソーラパネルに積雪した雪の落雪が効果的に誘引される。
【0011】
上記の態様において、前記フロート本体が、前記所定の側に設けられた上向きに突出する部分を含むとよい。
【0012】
この態様によれば、突出する部分が浮心の移動に寄与する。また、突出する部分を利用してソーラパネルを傾斜させた状態で支持することができる。
【0013】
上記の態様において、該ソーラパネルフロートユニットは、前記ソーラパネルを支持するための複数の支柱(5)を更に有するとよい。
【0014】
この態様によれば、ソーラパネルフロートユニットの重心を水面からより高い位置に設定することができる。これにより、ソーラパネルフロートユニットに作用する積雪荷重が小さくても十分にソーラパネルフロートユニットが傾動する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、ソーラパネルに積雪した雪を除去しつつ、発電が効率的に行われるソーラパネルフロートユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るソーラパネルフロートユニットの斜視図
図2】本発明に係るソーラパネルフロートユニットの積雪時の挙動を示す図
図3】本発明に係るソーラパネルフロートユニットの変形例を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係るソーラパネルフロートユニット1について説明する。図1に示すように、ソーラパネルフロートユニット1は、水面Sに配置されるフロート本体2と、フロート本体2に支持されたソーラパネル6とを有する。ソーラパネル6は、水平方向に対して傾斜した状態、具体的には地域などに応じて発電に最適な傾斜角θ1をもって、フロート本体2に支持されている。以下、ソーラパネル6の傾斜する方向の水平成分の方向を前後方向と規定する。
【0018】
フロート本体2は、樹脂製の中空構造体であって、水面Sに設置されたとき、一部(下部)が水没することによって浮力を発生させる。具体的にはフロート本体2は、ソーラパネルフロートユニット1が水面Sに設置されたとき、その大部分が水没する下側フロート本体3と、下側フロート本体3と一体に形成された上側フロート本体4とを有する。なお、下側フロート本体3はその全部が水没してもよい。
【0019】
下側フロート本体3は、上下方向に薄い扁平な略直方体に形成されている。下側フロート本体3の体積は、ソーラパネルフロートユニット1の自重と等しい浮力を発生させるために必要な体積よりもやや大きく設定されている。また下側フロート本体3は、後述する下側フロート本体3の浮力の中心、即ち第1浮心B1が、ソーラパネルフロートユニット1の第1重心G1を通る鉛直線上に位置するように構成されている。
【0020】
上側フロート本体4は、左右方向に長い略直方体に形成されており、下側フロート本体3の後部上方に配置されている。上側フロート本体4の前後方向の長さは、下側フロート本体3の後端から中央部に至る前後方向の長さに等しく、上側フロート本体4の左右方向の幅は、下側フロート本体3の左右方向の幅に等しい。これにより上側フロート本体4は、下側フロート本体3の後部から中央部に亘る上の部分に設けられた、上向きに突出した部分をなす。
【0021】
ソーラパネルフロートユニット1は、ソーラパネル6を支持するための複数の支柱5を更に有する。各支柱5は、ステンレス及びアルミなどの鋼材から形成され、下側フロート本体3の前部の左右両側及び、上側フロート本体4の後部の左右両側に配置されている。下側フロート本体3の前部の左右両側に配置された各支柱5の長さ及び、上側フロート本体4の前部の左右両側に配置された各支柱5の長さは等しく設定されてよい。この場合、ソーラパネル6の後部はソーラパネル6の前部よりも、上側フロート本体4の高さ分だけ高い位置に配置される。ソーラパネル6は後部から前方に向けて下向きに傾斜した傾斜角θ1をもって支柱5により支持される。
【0022】
なお、他の実施形態では、支柱5は樹脂から形成されもよい。或いは、支柱5が設けられていなくともよい。この場合、ソーラパネル6は、上側フロート本体4の上面の前端と下側フロート本体3の上面の前縁とによって支持されてよい。即ち下側フロート本体3から上方に突出した上側フロート本体4を利用して、ソーラパネル6は後部から前方に向けて下向きに傾斜した傾斜角θ1をもってフロート本体2に支持される。
【0023】
図2(a)に示すように、ソーラパネルフロートユニット1が水面Sに設置されたとき、下側フロート本体3の一部は、ソーラパネルフロートユニット1の自重によって水没する。この状態において上側フロート本体4は、喫水線Lよりも上側にある。即ち、喫水線Lの上側のフロート本体2の部分は、後側に偏っている。
【0024】
水没した下側フロート本体3は、ソーラパネルフロートユニット1の自重と等しい浮力を発生させる。このとき浮力の中心、即ち第1浮心B1はソーラパネルフロートユニット1の第1重心G1を通る鉛直方線上に位置する。これにより、ソーラパネルフロートユニット1は、下側フロート本体3の底面が水平方向に対して平行になるように静止した状態、即ち通常時の状態をとる。
【0025】
図2(b)に示すように、降雪によりソーラパネル6の上面に雪8が所定の厚さをもって積雪したとき、ソーラパネルフロートユニット1には、ソーラパネルフロートユニット1の自重に加え、雪8による荷重(等分布荷重)が作用する。雪8による荷重が付加されたときの第2重心G2は、通常時の第1重心G1を通る鉛直線上の第1重心G1よりも高い位置にある。
【0026】
また、雪8による荷重が作用することによって、フロート本体2は通常時の状態よりも深く水没する。即ち、下側フロート本体3の全部と、上側フロート本体4の下部とが、雪8の荷重と等しい浮力を発生させるために必要な体積をもって水没する。上側フロート本体4の下部が水没することにより、水没時の第2浮心B2は、通常時の第1浮心B1よりも後方、即ちソーラパネルフロートユニット1の通常時の第1重心G1よりも後方へ移動する。
【0027】
図2(c)に示すように、ソーラパネルフロートユニット1の自重及び、積雪による荷重と、上側フロート本体4の水没により移動した第2浮心B2に作用する浮力とによって、ソーラパネルフロートユニット1は、傾動角θ2をもって前方に傾動する。ソーラパネルフロートユニット1の傾動によって、ソーラパネル6は、傾斜角θ1に傾動角θ2が加算された傾斜角θ3をもって傾斜する。これにより、ソーラパネル6の上面に積雪した雪8が前方に滑り落ちることとなり、ソーラパネル6が外部に露出する。
【0028】
図2(d)に示すように、ソーラパネル6の上面に積雪した雪8が前方に滑り落ちたとき、フロート本体2は、ソーラパネルフロートユニット1の自重と等しい浮力が作用するように、ソーラパネル6が傾斜角θ3をもって傾斜した状態で浮上する。このとき、下側フロート本体3の中央部から前方の部分が水没する一方、下側フロート本体3の後部の上部が喫水線Lよりも上側に配置される。これにより浮上時の第3浮心B3は、通常時の第1浮心B1よりも前方、即ちソーラパネルフロートユニット1の第1重心G1を通る鉛直線よりも前方にある。したがってソーラパネルフロートユニット1は、ソーラパネルフロートユニット1の自重及び、浮力によって後方に傾動することとなり、通常時の状態に戻る。
【0029】
図2(a)に示すように、ソーラパネルフロートユニット1が水面Sに設置された通常時のとき、喫水線Lの上側のフロート本体2の部分は、下側フロート本体3から上向きに突出した上側フロート本体4によって、通常時の第1浮心B1に対して後側に偏っている。図2(b)に示すように、ソーラパネル6に積雪した雪8の荷重により、ソーラパネルフロートユニット1が通常時よりも水中に沈み込んだとき、その第2浮心B2は後側に移動する。これにより、ソーラパネルフロートユニット1は前側に傾動するため、ソーラパネル6に積雪した雪8の落雪が誘引される。したがって、ソーラパネルフロートユニット1は、ソーラパネル6に積雪した雪8を除去しつつ、発電を効率的に行うことができる。
【0030】
図1に示すように、ソーラパネルフロートユニット1は、ソーラパネル6を支持するための複数の支柱5を更に有する。これにより、ソーラパネル6の後部が、ソーラパネル6の前部よりも、上側フロート本体4の鉛直方向の高さに相当する高さ位置に配置されることとなり、ソーラパネル6が後部から前方に向けて下向きに傾斜した傾斜角θ1をもって支持される。したがって、ソーラパネル6が傾斜する向きと、ソーラパネルフロートユニット1が通常時よりも水中に沈み込んだときに傾動する向きとが合致する。即ち、効率的にソーラパネル6に積雪した雪8の落雪が誘引される。
【0031】
また支柱5によって、ソーラパネルフロートユニット1の第1重心G1が、水面Sからより高い位置に設定できる。これにより、ソーラパネルフロートユニット1が傾動するときの回転中心から、第1重心G1、延いては第2重心G2までの長さ(うでの長さ)を長くすることができる。したがって、ソーラパネルフロートユニット1の自重に付加される荷重が小さくても十分にソーラパネルフロートユニット1が傾動する。
【0032】
以上で具体的な実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態や変形例に限定されることなく、幅広く変形実施することができる。上記実施形態では、下側フロート本体3は略直方体に形成されているが、底面が下方に向けて湾曲されて形成されてもよい。図3(a)に示すように、上側フロート本体4は、下側フロート本体3の前後方向の長さに等しい下底及び、前方に向けて下向きに傾斜する脚を有する台形に形成されてもよい。また図3(b)に示すように、上側フロート本体4は、前方に向けて下向きに傾斜する斜辺を有する略直角三角形に形成されてもよい。更に図3(c)に示すように、上側フロート本体4は、略直方体に形成され、下側フロート本体3の後部に配置されてもよい。更に図3(d)に示すように、下側フロート本体3と、上側フロート本体4とが側面視で同形状をなしてもよい。この場合、フロート本体2には、上下方向に貫通する貫通孔12が設けられ、上側フロート本体4の貫通孔12が、下側フロート本体3側の貫通孔12よりも、前方にオフセットしてよい。また、各部材や部位の具体的構成や配置、数量、素材等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更することができる。また、上記実施形態に示した各構成要素は全てが必須ではなく、適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 :ソーラパネルフロートユニット
2 :フロート本体
4 :上側フロート本体(上側のフロート本体)
5 :支柱
6 :ソーラパネル
B1 :第1浮心(浮心)
S :水面
L :喫水線
図1
図2
図3