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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108864
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】ブローアウトパネル閉止装置
(51)【国際特許分類】
   G21C 9/004 20060101AFI20240805BHJP
   G21C 13/02 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
G21C9/004
G21C13/02 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013476
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 真吾
(72)【発明者】
【氏名】江村 裕太
【テーマコード(参考)】
2G002
【Fターム(参考)】
2G002EA03
(57)【要約】
【課題】より簡素な構成を有し、さらなる密閉性を確保することが可能なブローアウトパネル閉止装置を提供する。
【解決手段】ブローアウトパネル閉止装置は、原子炉建屋の壁部に形成された開口部を閉塞するブローアウトパネルが開放された際に、開口部を閉止するブローアウトパネル閉止装置であって、開口部から上下方向に離間した待機位置に、壁部に沿って配置された閉止パネルと、閉止パネルの幅方向の両端部に設けられたローラと、開口部及び待機位置の閉止パネルの幅方向の両端で上下方向に延びるように配置されて、ローラを上下方向に案内するガイド部材と、待機位置の閉止パネルを上下方向に昇降させることで、閉止パネルが開口部を閉止する閉止位置に位置させる昇降機構と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉建屋の壁部に形成された開口部を閉塞するブローアウトパネルが開放された際に、前記開口部を閉止するブローアウトパネル閉止装置であって、
前記開口部から上下方向に離間した待機位置に、前記壁部に沿って配置された閉止パネルと、
前記閉止パネルの幅方向の両端部に設けられたローラと、
前記開口部及び前記待機位置の前記閉止パネルの幅方向の両端で上下方向に延びるように配置されて、前記ローラを上下方向に案内するガイド部材と、
前記待機位置の前記閉止パネルを上下方向に昇降させることで、該閉止パネルが前記開口部を閉止する閉止位置に位置させる昇降機構と、
を備えるブローアウトパネル閉止装置。
【請求項2】
前記ローラは、前記閉止パネルの法線方向に延びる回転軸回りに回転可能に支持され、
前記ガイド部材は、
上下方向に延びる一対のフレームと、
各前記フレームの前記閉止パネル側を向く面に設けられ、前記ローラを前記閉止パネルの法線方向の両側から挟むように配置された一対のガイドレールと、
を有する請求項1に記載のブローアウトパネル閉止装置。
【請求項3】
前記壁部における前記待機位置、及び前記閉止位置に対応する位置にそれぞれ設けられ、前記閉止パネルを前記壁部に対して押圧可能な押圧部材と、
該押圧部材を駆動する駆動部と、
をさらに備える請求項1又は2に記載のブローアウトパネル閉止装置。
【請求項4】
前記駆動部は、
駆動源と、
該駆動源によって自身の中心軸回りに回転駆動するシャフトと、
シャフトに設けられた主歯車と、
前記押圧部材に設けられ、前記主歯車と噛み合うことで該押圧部材を前記壁部に向かって進退動させるウォームホイールと、
を有する請求項3に記載のブローアウトパネル閉止装置。
【請求項5】
前記押圧部材、及び前記シャフトは、前記待機位置、及び前記閉止位置における前記閉止パネルの辺部に沿って複数設けられ、
前記駆動部は、互いに交差する一対の前記シャフト同士を連動可能に接続する連動部をさらに有する請求項4に記載のブローアウトパネル閉止装置。
【請求項6】
前記押圧部材に併設され、前記ウォームホイールに加えられるトルクが予め定められた閾値を超えた場合に前記主歯車の回転を規制するトルクリミッターをさらに備える請求項4に記載のブローアウトパネル閉止装置。
【請求項7】
前記待機位置、及び前記閉止位置における前記閉止パネルの上下方向を向く辺の一方に設けられたストッパー部と、該閉止パネルを前記ストッパー部側に向かって押圧するロック部と、
前記シャフトの回転を前記ロック部に伝達可能な伝達部と、
をさらに備える請求項4に記載のブローアウトパネル閉止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブローアウトパネル閉止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉建屋には、有事の際に内部の圧力を逃がすために、数m四方の開口部が形成されている。この開口部は、通常時はブローアウトパネルと呼ばれる部材で閉塞されている(下記特許文献1参照)。有事の際は、ブローアウトパネルを開くことで開口部を通じて内圧を開放することが可能とされている。
【0003】
一方で、内圧が十分に低下した際には、放射性物質の飛散・散逸を防ぐために開口部を再び閉止する必要がある。そのための技術の具体例として、下記特許文献1に記載されたものが知られている。下記特許文献1に係る装置では、建屋の内壁側に設けられた複数のローラによって閉止パネルを案内しながらスライドさせ、開口部を閉じることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7039934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように建屋側にローラを設けて閉止パネルを案内する構成では、ローラが閉止パネルと壁面との間に介在することから、閉止パネルと壁面との間の密閉性を確保することが難しい。このため、有事の際の事後処理に支障を来たす虞があった。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、より簡素な構成を有し、さらなる密閉性を確保することが可能なブローアウトパネル閉止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係るブローアウトパネル閉止装置は、原子炉建屋の壁部に形成された開口部を閉塞するブローアウトパネルが開放された際に、前記開口部を閉止するブローアウトパネル閉止装置であって、前記開口部から上下方向に離間した待機位置に、前記壁部に沿って配置された閉止パネルと、前記閉止パネルの幅方向の両端部に設けられたローラと、前記開口部及び前記待機位置の前記閉止パネルの幅方向の両端で上下方向に延びるように配置されて、前記ローラを上下方向に案内するガイド部材と、前記待機位置の前記閉止パネルを上下方向に昇降させることで、該閉止パネルが前記開口部を閉止する閉止位置に位置させる昇降機構と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、より簡素な構成を有し、さらなる密閉性を確保することが可能なブローアウトパネル閉止装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係る原子炉建屋の構成を示す模式図である。
図2】本開示の実施形態に係る閉止パネル、及びその周辺の構成を示す正面図である。
図3】本開示の実施形態に係るローラ、ガイド部材、シャフト、及び押圧部材の構成を示す拡大断面図である。
図4】本開示の実施形態に係るロック部、及びストッパー部の構成を示す拡大断面図である。
図5】本開示の実施形態に係る閉止パネルの変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(原子炉建屋100の構成)
以下、本開示の実施形態に係るブローアウトパネル閉止装置1について、図1から図4を参照して説明する。図1に示すように、原子炉建屋100の壁部101には、有事の際に内圧を逃がすための開口部102が形成されている。開口部102は矩形をなしている。通常時、開口部102は、ブローアウトパネル103によって閉止されている。ブローアウトパネル103は、開口部102の端縁に設けられた複数の固定部材104によって壁部101に対して固定されている。
【0011】
(ブローアウトパネル閉止装置1の構成)
ブローアウトパネル103が脱離して開口部102が開放され、内圧が一定程度まで下がった場合、当該開口部102からの汚染物質の飛散を防ぐ必要がある。そこで、開口部102を、ブローアウトパネル閉止装置1によって再び閉止することが可能とされている。
【0012】
図2に示すように、ブローアウトパネル閉止装置1は、閉止パネル10と、ローラ11と、ガイド部材12と、昇降機構13と、押圧部材14と、駆動部15と、ストッパー部16と、ロック部17と、を備える。
【0013】
閉止パネル10は、開口部102よりも大きな面積を有する板状をなしている。閉止パネル10は、壁部101の外側(つまり、原子炉建屋100から見た屋外側)で、上下方向にスライド可能に支持されている。さらに、閉止パネル10における壁部101を向く面の端縁には、パッキン18が設けられている。パッキン18は、閉止パネル10と壁部101との間の密閉性を高めることを目的として設けられている。閉止パネル10の幅方向(つまり、上下方向に直交する方向)の両側には、複数ずつのローラ11が取り付けられている。ローラ11は、一例として幅方向両側に3つずつ設けられている。図3に示すように、ローラ11は、閉止パネル10の幅方向を向く端縁に形成された凹部19に収容されている。ローラ11は、この凹部19に収容された状態で、閉止パネル10の法線方向に延びるローラ軸O回りに転動可能に支持されている。ローラ11は、このローラ軸Oを中心とする円盤状をなしている。
【0014】
閉止パネル10が上下方向に昇降する際、ローラ11はガイド部材12によって案内される。ガイド部材12は、閉止パネル10、及び開口部102を幅方向から挟むようにして設けられた一対のフレーム21と、このフレーム21における閉止パネル10側を向く端面に設けられた一対のガイドレール22と、を有する。ガイドレール22は、フレーム21の表面から閉止パネル10側に向かって突出するとともに、上下方向に延びている。ガイドレール22同士の間には溝23が形成されている。ローラ11は、これら一対のガイドレール22の間の溝23を通過しながら転動する。つまり、これらガイドレール22によってローラ11の転動方向が案内される。溝23の幅寸法(つまり、ガイドレール22同士の間の離間距離)は、ローラ11の幅寸法よりも大きく設定されている。このため、後述する押圧部材14によって閉止パネル10を壁部101に押圧する際には、当該ローラ11、及び閉止パネル10が、壁部101に向かう方向にわずかに変位することが可能とされている。
【0015】
図2に示すように、昇降機構13は、閉止パネル10を上下方向に昇降させるための装置である。具体的には、昇降機構13は、ケーブル31と、滑車32と、ウインチ33と、を有する。ケーブル31は、閉止パネル10の上端面に2つ接続されている。これらケーブル31は、滑車32による支持を経て、床面上に配置されたウインチ33まで延びている。ウインチ33によってケーブル31を巻き取ったり巻き出したりすることで、閉止パネル10が上下方向に昇降することができる。この時、閉止パネル10は、上述のローラ11とガイド部材12によって案内されながら昇降する。通常時において、閉止パネル10は開口部102の上方に位置している。この状態の閉止パネル10の位置を「待機位置P1」と呼ぶ。反対に、有事の際には閉止パネル10は開口部102の全面を覆うことができる位置まで下降する。この状態の閉止パネル10の位置を「閉止位置P2」と呼ぶ。
【0016】
押圧部材14は、駆動部15によって駆動されることで、閉止パネル10を壁部101に対して押圧するための機構である。これは、地震等の振動発生時における閉止パネル10の動揺を防ぐためである。図2に示すように、押圧部材14は、閉止パネル10の待機位置P1と閉止位置P2にそれぞれ対応して、各位置に12個ずつ設けられている。押圧部材14は、矩形をなす閉止パネル10の4つの辺部に沿って3つずつ設けられている。図3に示すように、押圧部材14は、閉止パネル10に対して屋内側から当接可能な当接部41と、この当接部41の屋外側の端部に一体に設けられた支持部42と、を有する。当接部41は、一例として、閉止パネル10の法線方向から見て円形をなしている。また、当接部41は、屋外側から屋内側に向かうに従って断面積が次第に大きくなる円錐台状をなしている。支持部42は、棒状をなし、その外周面には後述する駆動部15の一部であるウォームホイール56が取り付けられている。ウォームホイール56は、支持部42の延びる方向の一方側から他方側に向かうに従って周方向に旋回する螺旋状の凹溝を有する。
【0017】
図2に示すように、駆動部15は、駆動源51と、メインシャフト52と、接続シャフト53と、複数のシャフト54と、複数の主歯車55と、複数のウォームホイール56と、複数の連動部57と、複数のトルクリミッター58と、を有する。一例として、駆動源51は、床面上には位置された電動機である。駆動源51としての電動機の出力軸には、メインシャフト52の端部が接続されている。電動機を駆動することで、メインシャフト52が自身の中心軸回りに回転駆動される。
【0018】
シャフト54は、待機位置P1、及び閉止位置P2における閉止パネル10の各辺部に沿うようにして、壁部101上に計8つ設けられている。互いに隣接する一対のシャフト54同士は、90°交差した状態で連動部57によって接続されている。連動部57は、一方のシャフト54の回転力を他方のシャフト54に対して伝達することが可能な装置である。この種の装置として具体的にはマイターギアボックスが用いられる。マイターギアボックス内では、軸の方向が互いに直交する一対のベベルギアを介して一対のシャフト54が機械的に接続されている。これらシャフト54のうち、待機位置P1、及び閉止位置P2における下辺に位置するシャフト54は、連動部57、及び接続シャフト53を介してメインシャフト52に接続されている。つまり、駆動源51の駆動力によってメインシャフト52が回転すると、接続シャフト53を介して当該下辺の一対のシャフト54に駆動力が伝達される。その後、連動部57を通じて残余のシャフト54にも駆動力が伝達される。
【0019】
図3に示すように、各シャフト54には、主歯車55が一体に設けられている。主歯車55は、一例として平歯車であり、上述した押圧部材14に取り付けられているウォームホイール56と噛み合っている。シャフト54とともに主歯車55が回転すると、当該回転力はウォームホイール56を介して押圧部材14に伝達される。これにより、押圧部材14が閉止パネル10の法線方向に進退動する。つまり、シャフト54の回転方向を切り替えることで、閉止パネル10を押圧する位置と解放する位置との間で押圧部材14が進退動する。
【0020】
さらに、押圧部材14にはトルクリミッター58が併設されている。トルクリミッター58は、押圧部材14のウォームホイール56に加わるトルクが、予め定められた閾値を超えた場合に、シャフト54、及び主歯車55の回転を規制する。つまり、押圧部材14が閉止パネル10に完全に当接することでウォームホイール56に加わるトルクが一定値を超えると、シャフト54の回転力がウォームホイール56に伝達されないように、これらが機械的に切り離される。さらに言い換えれば、上記のトルクを越えた後には、シャフト54は空転した状態となる。
【0021】
図2に示すように、閉止パネル10の待機位置P1、及び閉止位置P2にそれぞれ対応するようにして、当該閉止パネル10の鉛直方向の変位を規制するためのロック部17、及びストッパー部16が設けられている。ロック部17は、待機位置P1にある閉止パネル10の下辺、又は閉止位置P2にある閉止パネル10の下辺をそれぞれ上方、又は下方に向かって押圧する。ロック部17と対応するようにして、当該ロック部17が設けられている辺の反対側には、ストッパー部16が設けられている。つまり、ロック部17による上下方向への荷重は、これらストッパー部16によって負担される。
【0022】
具体的には図4に示すように、ロック部17は、伝達部61と、トルクリミッター62と、ウォームホイール63と、ロック部本体64と、を有する。伝達部61は、上述したシャフト54の回転力をウォームホイール63に伝達するための装置である。伝達部61とウォームホイール63との間にはトルクリミッター62が設けられている。ロック部本体64は、歯車部71と、歯車部71に一体に設けられたレバー部72と、を有する。歯車部71は、ウォームホイール63に噛み合っている。レバー部72は、歯車部71から径方向に突出することで、閉止パネル10の端縁に当接することが可能な位置に設けられている。ウォームホイール63が回転すると、歯車部71を介して回転力がレバー部72に伝達され、当該レバー部72が閉止パネル10の端縁に対して当接する位置と離間する位置との間で回動する。トルクリミッター62は、レバー部72が閉止パネル10に当接した状態で、その押圧力が一定値を超えた場合に、シャフト54からウォームホイール63への回転力の伝達を規制する。つまり、トルクリミッター62によって、シャフト54とウォームホイール63との間の機械的な接続が解除される。これにより、レバー部72が閉止パネル10に当接した後に、さらにレバー部72に無用なトルクがかかってしまうことが回避される。
【0023】
(作用効果)
次いで、上記のブローアウトパネル閉止装置1の動作について説明する。通常時には、閉止パネル10は待機位置P1にあり、開口部102はブローアウトパネル103によって閉止されている。一方で、異常が発生して原子炉建屋100の内圧が高まると、当該内圧によってブローアウトパネル103が開口部102から外側に脱離する。これにより、開放された開口部102を通じて原子炉建屋100の内圧が外部に逃がされる。内圧が十分に低下した後には、汚染物質の外部への飛散を防ぐために開口部102を再び閉止する必要がある。そこで、ブローアウトパネル閉止装置1が用いられる。
【0024】
ブローアウトパネル閉止装置1を使用するに当たっては、まず待機位置P1にある閉止パネル10を押圧している押圧部材14を解放する。つまり、駆動源51によってシャフト54を回転させて、各押圧部材14を閉止パネル10から離間した状態とする。この時、同時にロック部17も解放されて、閉止パネル10は上下方向に昇降可能な状態となる。次に、昇降装置によって閉止パネル10を開口部102が覆える位置、つまり閉止位置P2まで下降させる。その後、再び駆動源51によってシャフト54を回転させて、押圧部材14による閉止パネル10の押圧と、ロック部17によるロックとを行う。以上により、ブローアウトパネル閉止装置1による開口部102の閉止作業が完了する。
【0025】
ここで、従来の同種の装置では、建屋の内壁側に設けられた複数のローラによって閉止パネル10を案内しながらスライドさせる構成が一般的であった。しかしながら、建屋側にローラを設けて閉止パネル10を案内する構成では、ローラが閉止パネル10と壁面との間に介在することから、閉止パネル10と壁面との間の密閉性を確保することが難しい。このため、有事の際の事後処理に支障を来たす虞があった。そこで、本実施形態に係るブローアウトパネル閉止装置1は、上述の各構成を採用している。
【0026】
上記構成によれば、閉止パネル10自体にローラ11が設けられ、このローラ11をガイド部材12が案内することで、円滑に閉止パネル10を昇降させることができる。これにより、建屋側にローラ11のような案内部材を設けた場合に比べて、構成を簡素にすることが可能となり、部品点数の削減を実現することができる。したがって、装置の製造やメンテナンスに要するコストを削減することができる。また、閉止パネル10と壁部101との間に介在するものがないため、当該閉止パネル10による開口部102の密閉性を高めることも可能となる。したがって、汚染物質等が外部に漏洩してしまう可能性をさらに低減することが可能となる。また、原子炉建屋100側にローラ11を設けた場合には、ローラ11が突出することで当該建屋における使用可能スペースが制約を受けてしまう可能性がある。しかし、上記構成によれば、ローラ11が閉止パネル10と一体に設けられていることから、スペース上の制約を生じることがない。これにより、原子炉建屋100内部の有効面積が増加し、さらなる作業の安全性を確保することにつながる。
【0027】
さらに、上記構成によれば、ガイドレール22によってローラ11が案内されることで、閉止パネル10と開口部102との距離を小さくしつつ一定に保ったまま、当該閉止パネル10を昇降させることができる。これにより、閉止パネル10が昇降中に引っかかる等して不用意に停止する可能性を低減することができる。また、閉止パネル10による密閉性をさらに高めることができる。さらに、閉止パネル10が上下方向に昇降するように構成されていることから、左右両側にスペース上の制約がある場合であっても、上記のブローアウトパネル閉止装置1を設置することができる。
【0028】
また、上記構成によれば、待機位置P1、及び閉止位置P2の双方で、閉止パネル10が押圧部材14によって壁部101に押圧された状態となる。これにより、通常時と異常時とを問わず、閉止パネル10が壁部101に対して離間と当接を繰り返す事象を回避することができる。特に、地震発生時に振動が加わっても、閉止パネル10を壁部101に対して密接させた状態を維持することができる。これにより、閉止パネル10の不用意な動揺が抑制されるため、施設の安全性をさらに高めることができる。
【0029】
さらに、上記構成では、駆動部15は、駆動源51と、駆動源51によって自身の中心軸回りに回転駆動するシャフト54と、シャフト54に設けられた主歯車55と、押圧部材14に設けられ、主歯車55と噛み合うことで押圧部材14を壁部101に向かって進退動させるウォームホイール56と、を有する。この構成によれば、駆動源51によってシャフト54を回転させることのみによって押圧部材14を壁部101に向かって進退動させることができる。これにより、例えばジャッキ等の複雑で高価な装置を用いることなく、閉止パネル10を壁部101に対して当接・離間させることができる。したがって、閉止パネル10の密閉性と耐震性とをさらに確実に確保することができる。
【0030】
加えて、上記構成によれば、閉止パネル10の各辺部にそれぞれ押圧部材14が設けられていることから、閉止パネル10を壁部101に対して各辺部で均等に押圧し、密着させることができる。これにより、閉止パネル10の密閉性をより一層高めることが可能となる。また、連動部57によってシャフト54同士の間で回転力が伝達されることから、単一の駆動源51によって一のシャフト54を回転駆動すれば、他の全てのシャフト54を同様に回転させることができる。これにより、装置の構成が簡素に保たれるため、製造コストやメンテナンスコストをさらに削減することが可能となる。
【0031】
また、上記構成によれば、複数の押圧部材14の一部によって閉止パネル10が壁部101に押圧され、残余の一部が閉止パネル10を押圧するに至っていない場合であっても、トルクリミッター58が設けられていることによって、既に押圧が完了している押圧部材14のそれ以上の進退動を規制することができる。また、その間に、残余の押圧部材14の進退動を続けることで、最終的に全ての押圧部材14による閉止パネル10の押圧を完了させることができる。これにより、閉止パネル10と壁部101とを各辺部で均等な押圧力のもとで密着させることが可能となる。
【0032】
さらに加えて、上記構成によれば、ロック部17からストッパー部16に向かう方向に力を加えることで、閉止パネル10を上下方向から拘束することができる。これにより、特に鉛直方向の振動が加わった場合であっても、閉止パネル10を当該振動から保護することができる。したがって、特に閉止位置P2においては閉止パネル10の密閉性をさらに安定的に維持することが可能となる。
【0033】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0034】
例えば、上記実施形態では、開口部102に対して上方で閉止パネル10が待機し、有事の際には当該閉止パネル10を下降させることで開口部102を覆う例について説明した。しかしながら、閉止パネル10の待機位置P1と閉止位置P2とは入れ替わってもよい。つまり、図5に変形例として示すように、開口部102の下方に待機位置P1にある閉止パネル10が配置されていてもよい。これらは、原子炉建屋100におけるスペース上の制約や各種の設計・仕様に応じて適宜選択されてよい。いずれの構成であっても、上述したものと同様の作用効果を得ることができる。
【0035】
また、上記実施形態で説明した昇降装置のケーブル31の数は2つに限定されず、1つや3つ以上であってもよい。閉止パネル10の重量やケーブル31の径、許容荷重に基づいて、ケーブル31の数を適宜決定することが可能である。なお、ケーブル31が1つのみである場合、振動等の外力が閉止パネル10に加わった際に、当該閉止パネルの法線方向を軸とするモーメントが生じる虞がある。モーメントが生じると、閉止パネル10がケーブル31から脱落したり、昇降中に不用意に停止したりする可能性がある。このようなモーメントに抗することができるため、ケーブル31は複数設けられていることが望ましい。
【0036】
同様に、押圧部材14の数も、上記実施形態によっては限定されず、閉止パネル10の寸法や形状に応じて適宜変更することが可能である。
【0037】
また、閉止パネルの形状は、上述の実施形態で示した長方形状の他、正方形であってもよい。開口部の寸法に応じて、閉止パネルの寸法、及び形状は適宜決定されることが望ましい。
【0038】
さらに、ロック部17の変形例として、レバー部72が上下方向に延びる回動軸回りに回動するように構成してもよい。この場合、歯車部71の回転方向と閉止パネル10の移動方向とが一致しないため、歯車部71にトルクがかかりにくく、当該歯車部71のバックラッシ等による損傷を防ぐことができる。
【0039】
また、上述した昇降装置のウインチ33は、電動による他、手動によって駆動できる構成を採ってもよい。同様に、駆動源51としての電動機と併設して、手動によってシャフト54を回転駆動できる機構を設けてもよい。これにより、電源喪失時におけるブローアウトパネル閉止装置1の可用性を確保することが可能となる。よって、施設の安全性とロバスト性をさらに向上させることができる。
【0040】
さらに、上記実施形態では、主歯車55が各押圧部材14について1つずつのみ設けられている例について説明した。しかしながら、主歯車55の数は上記実施形態によっては限定されない。即ち、適正な減速比を実現することを目的として、主歯車55の数や径は適宜に決定されてよい。また、押圧部材14の設けられている位置に応じて主歯車55の数や径がそれぞれ異なる構成を採ることも可能である。
【0041】
<付記>
各実施形態に記載のブローアウトパネル閉止装置1は、例えば以下のように把握される。
【0042】
(1)第1の態様に係るブローアウトパネル閉止装置1は、原子炉建屋100の壁部101に形成された開口部102を閉塞するブローアウトパネル103が開放された際に、前記開口部102を閉止するブローアウトパネル閉止装置1であって、前記開口部102から上下方向に離間した待機位置P1に、前記壁部101に沿って配置された閉止パネル10と、前記閉止パネル10の幅方向の両端部に設けられたローラ11と、前記開口部102及び前記待機位置P1の前記閉止パネル10の幅方向の両端で上下方向に延びるように配置されて、前記ローラ11を上下方向に案内するガイド部材12と、前記待機位置P1の前記閉止パネル10を上下方向に昇降させることで、該閉止パネル10が前記開口部102を閉止する閉止位置P2に位置させる昇降機構13と、を備える。
【0043】
上記構成によれば、閉止パネル10にローラ11が設けられ、このローラ11をガイド部材12が案内することで、円滑に閉止パネル10を昇降させることができる。これにより、建屋側にローラ11のような案内部材を設けた場合に比べて、構成を簡素にすることが可能となり、部品点数の削減を実現することができる。したがって、装置の製造やメンテナンスに要するコストを削減することができる。また、閉止パネル10と壁部101との間に介在するものがないため、当該閉止パネル10による開口部102の密閉性を高めることも可能となる。
【0044】
(2)第2の態様に係るブローアウトパネル閉止装置1は、(1)のブローアウトパネル閉止装置1であって、前記ローラ11は、前記閉止パネル10の法線方向に延びる回転軸回りに回転可能に支持され、前記ガイド部材12は、上下方向に延びる一対のフレーム21と、各前記フレーム21の前記閉止パネル10側を向く面に設けられ、前記ローラ11を前記閉止パネル10の法線方向の両側から挟むように配置された一対のガイドレール22と、を有する。
【0045】
上記構成によれば、ガイドレール22によってローラ11が案内されることで、閉止パネル10と開口部102との距離を小さくしつつ一定に保ったまま、当該閉止パネル10を昇降させることができる。これにより、閉止パネル10が昇降中に不用意に停止する可能性を低減することができる。また、閉止パネル10による密閉性をさらに高めることができる。
【0046】
(3)第3の態様に係るブローアウトパネル閉止装置1は、(1)又は(2)のブローアウトパネル閉止装置1であって、前記壁部101における前記待機位置P1、及び前記閉止位置P2に対応する位置にそれぞれ設けられ、前記閉止パネル10を前記壁部101に対して押圧可能な押圧部材14と、該押圧部材14を駆動する駆動部15と、をさらに備える。
【0047】
上記構成によれば、待機位置P1、及び閉止位置P2の双方で、閉止パネル10が壁部101に押圧された状態となる。これにより、通常時、異常時を問わず、閉止パネル10が壁部101に対して離間と当接を繰り返す事象を回避することができる。
【0048】
(4)第4の態様に係るブローアウトパネル閉止装置1は、(3)のブローアウトパネル閉止装置1であって、前記駆動部15は、駆動源51と、該駆動源51によって自身の中心軸回りに回転駆動するシャフト54と、シャフト54に設けられた主歯車55と、前記押圧部材14に設けられ、前記主歯車55と噛み合うことで該押圧部材14を前記壁部101に向かって進退動させるウォームホイール56と、を有する。
【0049】
上記構成によれば、駆動源51によってシャフト54を回転させることのみによって押圧部材14を壁部101に向かって進退動させることができる。これにより、例えばジャッキ等の複雑な装置を用いることなく、閉止パネル10の密閉性と耐震性とを確保することができる。
【0050】
(5)第5の態様に係るブローアウトパネル閉止装置1は、(4)のブローアウトパネル閉止装置1であって、前記押圧部材14、及び前記シャフト54は、前記待機位置P1、及び前記閉止位置P2における前記閉止パネル10の辺部に沿って複数設けられ、前記駆動部15は、互いに交差する一対の前記シャフト54同士を連動可能に接続する連動部57をさらに有する。
【0051】
上記構成によれば、閉止パネル10の各辺部にそれぞれ押圧部材14が設けられていることから、閉止パネル10を壁部101に対して均等に押圧し、密着させることができる。これにより、閉止パネル10の密閉性をより一層高めることが可能となる。また、連動部57によってシャフト54同士の間で回転力が伝達されることから、単一の駆動源51によって一のシャフト54を回転駆動すれば、他の全てのシャフト54を回転させることができる。
【0052】
(6)第6の態様に係るブローアウトパネル閉止装置1は、(4)又は(5)のブローアウトパネル閉止装置1であって、前記押圧部材14に併設され、前記ウォームホイール56に加えられるトルクが予め定められた閾値を超えた場合に前記主歯車55の回転を規制するトルクリミッター58をさらに備える。
【0053】
上記構成によれば、複数の押圧部材14の一部によって閉止パネル10が壁部101に押圧され、残余の一部が閉止パネル10を押圧するに至っていない場合であっても、トルクリミッター58が設けられていることによって、既に押圧が完了している押圧部材14のそれ以上の進退動を規制することができる。これにより、閉止パネル10と壁部101とを均等な押圧力のもとで密着させることが可能となる。
【0054】
(7)第7の態様に係るブローアウトパネル閉止装置1は、(4)から(6)のいずれか一態様に係るブローアウトパネル閉止装置1であって、前記待機位置P1、及び前記閉止位置P2における前記閉止パネル10の上下方向を向く辺の一方に設けられたストッパー部16と、該閉止パネル10を前記ストッパー部16側に向かって押圧するロック部17と、前記シャフト54の回転を前記ロック部17に伝達可能な伝達部61と、をさらに備える。
【0055】
上記構成によれば、ロック部17からストッパー部16に向かう方向に力を加えることで、閉止パネル10を上下方向から拘束することができる。これにより、特に鉛直方向の振動が加わった場合であっても、閉止パネル10を当該振動から保護することができる。
【符号の説明】
【0056】
1…ブローアウトパネル閉止装置 10…閉止パネル 11…ローラ 12…ガイド部材 13…昇降機構 14…押圧部材 15…駆動部 16…ストッパー部 17…ロック部 18…パッキン 19…凹部 21…フレーム 22…ガイドレール 23…溝 31…ケーブル 32…滑車 33…ウインチ 41…当接部 42…支持部 51…駆動源 52…メインシャフト 53…接続シャフト 54…シャフト 55…主歯車 56…ウォームホイール 57…連動部 58…トルクリミッター 61…伝達部 62…トルクリミッター 63…ウォームホイール 64…ロック部本体 71…歯車部 72…レバー部 100…原子炉建屋 101…壁部 102…開口部 103…ブローアウトパネル 104…固定部材 O…ローラ軸 P1…待機位置 P2…閉止位置
図1
図2
図3
図4
図5