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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108880
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】煙突
(51)【国際特許分類】
   F23J 13/00 20060101AFI20240805BHJP
   F23L 17/02 20060101ALI20240805BHJP
   F23J 11/06 20060101ALI20240805BHJP
   F16L 9/02 20060101ALI20240805BHJP
   F16L 9/18 20060101ALI20240805BHJP
   E04H 12/28 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
F23J13/00 Z
F23L17/02 Z
F23J11/06
F16L9/02
F16L9/18
E04H12/28 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013502
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】503304360
【氏名又は名称】コーキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082083
【弁理士】
【氏名又は名称】玉田 修三
(72)【発明者】
【氏名】小林 公博
【テーマコード(参考)】
3H111
3K070
【Fターム(参考)】
3H111AA01
3H111BA02
3H111CA12
3H111CC13
3H111DA26
3H111DB27
3K070AC11
(57)【要約】
【課題】煙道の内部に別の煙道を形成する。
【解決手段】第1筒体10の内部空間に第2筒体15を配置する。第2筒体15の内部空間が、第1筒体10の第1煙道20から仕切られた第2煙道25を形成する。第1煙道20と第2煙道25とに、2種類の排気源から伸びる横引き管流路31,32を各別に接続する。第2筒体15としてステンレススパイラルダクトを用いる。ステンレススパイラルダクトには、厚さが1mm程度のステンレス薄肉鋼板を用いる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒体の内部空間によって煙道が形成されている煙突であって、
上記筒体を第1筒体とし、かつ、この第1筒体の内部空間によって形成されている煙道を第1煙道として、第1筒体の内部空間に、当該第1筒体とは別の第2筒体が配置され、この第2筒体の内部空間が、上記第1煙道から仕切られた第2煙道を形成していることを特徴とする煙突。
【請求項2】
上記第1煙道と上記第2煙道とに、2種類の排気源のそれぞれから伸びる横引き管流路が各別に接続されている請求項1に記載した煙突。
【請求項3】
2種類の上記排気源は排気圧力が相違していて、排気圧力の大きい排気源から伸びる横引き管流路が上記第1煙道に接続され、排気圧力の小さい排気源から伸びる横引き管流路が上記第2煙道に接続されている請求項2に記載した煙突。
【請求項4】
上記第2筒体の筒壁が薄肉鋼板でなる請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載した煙突。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒体の内部空間によって煙道が形成されている煙突に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスビルなどの大形施設にガスタービン発電機とディーゼル発電機の両方が非常用電源として設置されている場合、両方の発電機の排気流を逃がすために1つの煙突を共用することがある。この場合、ガスタービン発電機による排気圧力とディーゼル発電機による排気圧力とは同一ではなく、ガスタービン発電機による排気圧力がディーゼル発電機による排気圧力よりも高いため、ディーゼル発電機の排気流がガスタービン発電機の排気筒に吹き込むという不都合を生じる懸念がある。
【0003】
この不都合を生じることの解決策として、筒体の内部空間によって煙道が形成されている煙突において、煙道に間仕切りを設けることにより、ガスタービン発電機による排気流とディーゼル発電機による排気流とを、煙道内で仕切られた2つの煙道を利用して逃がすという対策が考えられた。この対策の具体例を図8を参照して次に説明する。
【0004】
図8は上記具体例を説明的に示した煙突100の概略横断平面図である。この事例の煙突100では、四角筒形の筒体10の内部空間によって煙道20が形成されている。そして、筒体10にケイ酸カルシウムでなる間仕切り11を設置することによって、煙道20をその全高部分又はほぼ全高部分に亘って2つの煙道21,22に区画している。そして、この煙突100では、たとえば、一方の煙道21を利用してガスタービン発電機による排気流を逃がし、他方の煙道22を利用してディーゼル発電機による排気流を逃がすことが行われる。
【0005】
これに対し、先行例には、煙道を鋼材でなるスパイラル状仕切板で2系列に仕切ることが記載されている(特許文献1参照)
【0006】
しかしながら、図8を参照して説明した煙突にあっては、ケイ酸カルシウムでなる間仕切り11が高温高速の排気流による影響を受けて割れ落ちることがあり、そのような事態が起こると、煙道20を2つの煙道21,22に区画するという間仕切り11の作用が損なわれてしまう、という問題点がある。また、煙道を鋼材でなるスパイラル状仕切板で2系列に仕切るという特許文献1に記載されている対策では、スパイラル状仕切板自体の製作や組立に高度の技術を必要とし、しかも、スパイラル状仕切板の製作コストやスパイラル状仕切板を煙道に配置するための組立コストが高くつくばかりか、スパイラル状仕切板に用いられる鋼材重量が重いために組立時の取り扱いに困難が伴うという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭59-87540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、筒体の内部空間によって煙道が形成されている煙突において、煙道の内部に、製作コストや組立コストが安くつき、しかも、割れ落ちるおそれのない軽量な薄肉鋼材を使用して別の煙道を形成することのできる煙突を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る煙突は、筒体の内部空間によって煙道が形成されている煙突であって、上記筒体を第1筒体とし、かつ、この第1筒体の内部空間によって形成されている煙道を第1煙道として、第1筒体の内部空間に、当該第1筒体とは別の第2筒体が配置され、この第2筒体の内部空間が、上記第1煙道から仕切られた第2煙道を形成している、というものである。
【0010】
この煙突によると、排気圧力の異なる排気源による排気流を逃がすことに、第1煙道と第2煙道とを使い分けて利用することが可能である。また、第2煙道が第1筒体とは別の第2筒体の内部空間によって形成されていることにより、製作コストや組立コストが安くつく。また、第2筒体の内部空間が、第1煙道から仕切られた第2煙道を形成していることにより、排気圧力の高い排気源からの排気流が排気圧力の低い排気源の排気筒に吹き込むという不都合を生じることはない。
【0011】
本発明では、上記第1煙道と上記第2煙道とに、2種類の排気源のそれぞれから伸びる横引き管流路が各別に接続されている、という構成を採用することが可能である。この構成を採用しておくと、第1煙道には、2種類の排気源のうちの一方の排気源から伸びる横引き管流路を通じて排気流が導入され、第2煙道には、他方の排気源から伸びる横引き管流路を通じて排気流が導入される。
【0012】
本発明では、2種類の上記排気源は排気圧力が相違していて、排気圧力の大きい排気源から伸びる横引き管流路が上記第1煙道に接続され、排気圧力の小さい排気源から伸びる横引き管流路が上記第2煙道に接続されている、という構成を採用することも可能である。ここで、排気圧力の大きい排気源としてガスタービン発電機を掲げることができ、排気圧力の小さい排気源としてディーゼル発電機やボイラーを掲げることができる。
【0013】
本発明では、上記第2筒体の筒壁が薄肉鋼板でなることが望ましい。薄肉鋼板でなる第2筒体の筒壁は、製作や組立が比較的容易で製作コストや組立コストが安くつき、しかも、割れ落ちるおそれのない軽量な鋼材に相当する。特に、薄肉鋼板でなる第2筒体の筒壁には、厚さが1mm程度のステンレススパイラルダクトを好適に使用することが可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、製作や組立が比較的容易で製作コストや組立コストが安くつき、しかも、割れ落ちるおそれのない軽量な薄肉鋼材を使用して、第1煙道から仕切られた第2煙道を形成することが可能な煙突を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る煙突の部分縦断面図である。
図2】煙突の横断平面図である。
図3】第2筒体の構造説明図である。
図4図3のIV部の断面構造を例示した説明図である。
図5】第2筒体の支持構造を例示した部分横断平面図である。
図6】変形例による煙突の横断平面図である。
図7】他の変形例による煙突の横断平面図である。
図8】2つの煙道の形成するための具体例を説明的に示した煙突の概略横断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明の実施形態に係る煙突100の部分縦断面図、図2は同煙突100の横断平面図である。この煙突100は、筒体10の内部空間によって煙道20が形成されている。ここで、上記筒体10を第1筒体とし、かつ、この第1筒体10の内部空間によって形成されている煙道20を第1煙道として、以下の説明では、第1筒体に符号10を付し、第1煙道に符号20を付す。
【0017】
図1及び図2に示したように、この煙突100において、第1筒体10の内部空間に、当該第1筒体10とは別の第2筒体15が配置され、この第2筒体15の内部空間が、上記第1煙道20から仕切られた第2煙道25を形成している。第1筒体10は、図2のようにその横断面形状が、オーバル形、より具体的には長円形状になっている。また、第1筒体10の筒壁は、図1に一部拡大して示したように、内外の筒形鋼板12,13の相互間に断熱層14が装填されてなる。断熱層14には、ケイ酸カルシウムでなる断熱板やグラスウールなどの公知の断熱材が適宜採用される。図例の第2筒体15は横断面形状が円形である。図1及び図2の事例では、第1筒体10の内部空間での第2筒体15の設置位置として第1筒体10の横幅方向Wの一方側に偏った箇所が選択されているけれども、その設置位置は、第2筒体15の直径寸法などに応じて、第1筒体10の縦幅方向Dの一方側に偏った箇所であっても、第1筒体10の内部空間の中央部であってもよい。
【0018】
図3は第2筒体15の構造説明図、図4図3のIV部の断面構造を例示した説明図である。この第2筒体15は、厚さが1mm程度のステンレス製の帯状薄肉鋼板をスパイラル形状に巻き廻すと共に、軸方向で隣接する薄肉鋼板同士を図4に例示したハゼ継ぎ構造16で結合してなる。すなわち、第2筒体15はステンレススパイラルダクトでなる。このような第2筒体15は、厚さが1mm程度の薄肉鋼板によって形成されていることにより、軽量であり、製作や組立が容易で製作コストや組立コストが安くつくだけでなく、高温高速の排気流による影響を受けても割れ落ちるおそれがないという利点を有している。
【0019】
図5は第2筒体15の支持構造を例示した部分横断平面図である。同図の事例では、第2筒体15が、Uボルト17を利用して第1筒体10に設けたブラケット18によって支持されている。この支持構造によると、第2筒体15の熱による軸方向での延伸収縮が許容されやすいという利点がある。第2筒体15の支持構造が図5の事例に限定されないことは勿論であり、他の構造、たとえばビス止めによって第1筒体10に支持させておいてもよい。
【0020】
図1に仮想線で示したように、上記した第1煙道20と第2煙道25とに、2種類の排気源(図1では不図示)のそれぞれから伸びる横引き管流路31,32が各別に接続されている。これらの横引き管流路31,32は、2種類の排気源のそれぞれの排気筒の内部空間に連通している。このため、一方側の横引き管流路31によって一方の排気源からの排気流が第1煙道20に導入され、その排気流が第1煙道20を通って逃がされ、他方側の横引き管流路32によって他方の排気源からの排気流が第2煙道25に導入され、その排気流が第2煙道25を通って逃がされる。一方の排気源には、たとえば、排気圧力の大きい排気源としてガスタービン発電機が選択される。また、他方の排気源には、たとえば、排気圧力の小さい排気源としてディーゼル発電機やボイラーが選択される。
【0021】
この実施形態によると、第2筒体15の内部空間が第1煙道20から仕切られた第2筒体15の第2煙道25を形成していることにより、排気圧力の大きいガスタービン発電機の排気流が排気圧力の小さいディーゼル発電機やボイラーの排気筒に吹き込むという不都合を生じない。さらには、第2筒体15自体には断熱層が不要となる。また、第2筒体15は横断面形状が円形であることから剛性が高く、第1煙道20と第2煙道25に導入される排気源からの排気流に排気圧の差があるとしても、排気圧に対してその壁面の耐久性が高いことから、第2筒体15が変形し難く、また撓みによる騒音が出にくい。
【0022】
以上説明した実施形態では、第1筒体10がオーバル形状を有しているけれども、第1筒体10の横断面形状はこれに限定されない。この点を次に説明する。図6は変形例による煙突100の横断平面図、図7は他の変形例による煙突100の横断平面図である。
【0023】
図6の事例では、横断面形状が円形の第1筒体10の内部空間に、当該第1筒体10とは別の横断面形状が円形の第2筒体15が配置されていて、第2筒体15の内部空間が、第1煙道20から仕切られた第2煙道25を形成している。これに対し、図7の事例では、横断面形状が四角筒形の第1筒体10の内部空間に、当該第1筒体10とは別の横断面形状が円形の第2筒体15が配置されていて、第2筒体15の内部空間が、第1煙道20から仕切られた第2煙道25を形成している。図6図7の事例では、第1筒体10の内部空間の偏った位置に第2筒体15が設置されているけれども、この点は、第1筒体10の内部空間の中央部に第2筒体15を設置することも勿論可能である。
【0024】
以上説明した煙突100において、第2筒体15の高さは、第1筒体10の高さと同等であっても、第1筒体10の高さより低くてもよい。第2筒体15の高さを、第1筒体10の高さより低くするときには、第1煙道20や第2煙道25の排気圧力の差などを勘案して、第1煙道20から排気流が第2煙道25に吹き込むことがない程度に低くしておくことが望ましい。
【符号の説明】
【0025】
10 第1筒体
15 第2筒体
20 第1煙道
25 第2煙道
31,32 横引き管流路
100 煙突
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-05-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒体の内部空間によって煙道が形成されている煙突であって、
上記筒体を第1筒体とし、かつ、この第1筒体の内部空間によって形成されている煙道を第1煙道として、第1筒体の内部空間に、当該第1筒体とは別の第2筒体が配備され、この第2筒体の内部空間が、上記第1煙道から仕切られた第2煙道を形成し
上記第1煙道と上記第2煙道とに、2種類の排気源のそれぞれから伸びる横引き管流路が各別に接続され、かつ、2種類の上記排気源は排気圧力が相違していて、排気圧力の大きい排気源から伸びる横引き管流路が第1煙道に接続され、排気圧力の小さい排気源から伸びる横引き管流路が第2煙道に接続され、
上記第2筒体の筒壁は、スパイラル状に巻き廻されたステンレス製の帯状薄肉鋼板における軸方向で隣接する薄肉鋼板同士がハゼ継ぎ構造で結合されてなるステンレススパイラルダクトでなることを特徴とする煙突。