(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108912
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/4063 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
G05B19/4063 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013561
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】近藤 純平
【テーマコード(参考)】
3C269
【Fターム(参考)】
3C269AB01
3C269AB31
3C269BB05
3C269CC02
3C269CC15
3C269EF02
3C269EF15
3C269EF39
3C269MN27
3C269QE19
3C269QE32
(57)【要約】
【課題】加工処理の効率性を向上させるための情報を示すことができる制御装置、制御方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】制御装置は、主軸に装着される複数の工具を交換可能な工作機械を制御する制御装置であって、前記主軸にいずれかの前記工具が装着される都度、前記主軸に前記工具が装着されてから工具交換が行われるまでの間に、少なくとも一つの時間短縮可能且つ実行可能な時短可能処理の存否を判定する判定部と、前記判定部にて前記時短可能処理が存在すると判定した場合、前記主軸に装着された前記工具に紐づけて前記時短可能処理に関する情報を取得する取得部と、前記取得部にて取得した情報又は前記取得部にて取得した情報に基づく情報を出力する出力部とを備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸に装着される複数の工具を交換可能な工作機械を制御する制御装置であって、
前記主軸にいずれかの前記工具が装着される場合、前記主軸に前記工具が装着されてから工具交換が行われるまでの間に、少なくとも一つの時間短縮可能且つ実行可能な時短可能処理の存否を判定する判定部と、
前記判定部にて前記時短可能処理が存在すると判定した場合、前記主軸に装着された前記工具に紐づけて前記時短可能処理に関する第一情報を取得する取得部と、
前記第一情報又は前記第一情報に基づく第二情報を出力する出力部と
を備える制御装置。
【請求項2】
前記出力部は、前記主軸に前記工具が装着されてから工具交換が行われるまでの間における切削時間及び被切削時間と、前記第一情報又は前記第二情報とを表示するための信号を出力する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記判定部にて複数の前記時短可能処理が存在すると判定した場合、前記取得部は、前記主軸に装着された前記工具に紐づけて前記複数の時短可能処理それぞれに関する情報を取得し、
前記出力部は、前記取得部にて取得した前記複数の時短可能処理それぞれの前記第一情報又は前記複数の時短可能処理それぞれの前記第一情報に基づく前記第二情報を統合して表示するための信号を出力する
請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記取得部は、前記主軸に装着された第一及び第二の前記工具それぞれに紐づけて前記時短可能処理に関する情報を取得し、
前記出力部は、前記第一の工具に紐づけた前記第一情報又は前記第一の工具に紐づけた前記第一情報に基づく第二情報と、前記第二の工具に紐づけた前記第一情報又は前記第二の工具に紐づけた前記第一情報に基づく前記第二情報とを統合して表示するための信号を出力する
請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項5】
前記出力部は、前記複数の時短可能処理それぞれに関する前記第一情報又は前記複数の時短可能処理それぞれに関する前記第一情報に基づく前記第二情報を表又はグラフによって表示するための信号を出力する
請求項3に記載の制御装置。
【請求項6】
前記時短可能処理は、最大速度で目標位置とは異なる位置まで処理対象の移動を行った後、前記最大速度よりも小さい速度で前記目標位置まで前記処理対象の移動を行う外回り処理、又は保持部のクランプが完了する前に前記処理対象の移動を開始するオーバーラップ処理を含む
請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項7】
前記外回り処理における前記第一情報は外回り実行回数及び外回り可能回数であり、前記第二情報は短縮予測時間であり、
前記オーバーラップ処理における前記第一情報はオーバーラップ対象動作数であり、前記第二情報は短縮予測時間である
請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
主軸に装着される複数の工具を交換可能な工作機械を制御する制御方法において、
前記主軸にいずれかの前記工具が装着される場合、前記主軸に前記工具が装着されてから工具交換が行われるまでの間に、少なくとも一つの時間短縮可能な時短可能処理の存否を判定し、
前記時短可能処理が存在すると判定した場合、前記主軸に装着された前記工具に紐づけて前記時短可能処理に関する第一情報を取得し、
前記第一情報又は前記第一情報に基づく第二情報を出力する
制御方法。
【請求項9】
主軸に装着される複数の工具を交換可能な工作機械を制御する制御装置にて実行可能なコンピュータプログラムであって、
前記制御装置に、
前記主軸にいずれかの前記工具が装着される場合、前記主軸に前記工具が装着されてから工具交換が行われるまでの間に、少なくとも一つの時間短縮可能な時短可能処理の存否を判定し、
前記時短可能処理が存在すると判定した場合、前記主軸に装着された前記工具に紐づけて前記時短可能処理に関する第一情報を取得し、
前記第一情報又は前記第一情報に基づく第二情報を出力する
処理を実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、工作機械を制御する制御装置、制御方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ワークを治具にクランプしてから加工が終わってワークをアンクランプするまでのサイクルタイムと、ワークの切削時間とを工具毎に記憶し、工具毎のサイクルタイム、切削時間、サイクルタイムに占める切削時間の割合等を表示部に表示させる工作機械の制御装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において表示部に表示される情報は、加工処理の効率性を向上させるための情報として不十分である。
【0005】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、加工処理の効率性を向上させるための情報を示すことができる制御装置、制御方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る制御装置は、主軸に装着される複数の工具を交換可能な工作機械を制御する制御装置であって、前記主軸にいずれかの前記工具が装着される場合、前記主軸に前記工具が装着されてから工具交換が行われるまでの間に、少なくとも一つの時間短縮可能且つ実行可能な時短可能処理の存否を判定する判定部と、前記判定部にて前記時短可能処理が存在すると判定した場合、前記主軸に装着された前記工具に紐づけて前記時短可能処理に関する第一情報を取得する取得部と、前記第一情報又は前記第一情報に基づく第二情報を出力する出力部とを備える。
【0007】
本開示においては、主軸に工具が装着されてから工具交換が行われるまでの間に、時間短縮可能な時短可能処理の存否を判定し、時短可能処理が存在すると判定した場合、前記工具に紐づけて時短可能処理に関する第一情報を取得する。第一情報又は第一情報に基づく第二情報は例えば表示部に出力される。
【0008】
本開示の一実施形態に係る制御装置は、前記出力部は、前記主軸に前記工具が装着されてから工具交換が行われるまでの間における切削時間及び被切削時間と、前記第一情報又は前記第二情報とを表示するための信号を出力する。
【0009】
本開示においては、切削時間、被切削時間及び時短可能処理に関する第一情報又は第二情報を表示するための信号を出力し、切削時間、被切削時間及び時短可能処理に関する第一情報又は第二情報を例えば表示部に表示する。
【0010】
本開示の一実施形態に係る制御装置は、前記判定部にて複数の前記時短可能処理が存在すると判定した場合、前記取得部は、前記主軸に装着された前記工具に紐づけて前記複数の時短可能処理それぞれに関する情報を取得し、前記出力部は、前記取得部にて取得した前記複数の時短可能処理それぞれの前記第一情報又は前記複数の時短可能処理それぞれの前記第一情報に基づく情報を統合して表示するための信号を出力する。
【0011】
本開示においては、複数の時短可能処理それぞれの第一情報又は複数の時短可能処理それぞれの第一情報に基づく第二情報を統合して表示するための信号を出力し、複数の時短可能処理それぞれの第一情報又は前記第一情報に基づく第二情報を統合して、例えば表示部に表示する。
【0012】
本開示の一実施形態に係る制御装置は、前記取得部は、前記主軸に装着された第一及び第二の前記工具それぞれに紐づけて前記時短可能処理に関する情報を取得し、前記出力部は、前記第一の工具に紐づけた前記第一情報又は前記第一の工具に紐づけた前記第一情報に基づく第二情報と、前記第二の工具に紐づけた前記第一情報又は前記第二の工具に紐づけた前記第一情報に基づく前記第二情報とを統合して表示するための信号を出力する。
【0013】
本開示においては、第一の工具に紐づけた第一情報又はこの第一情報に基づく第二情報と、第二の工具に紐づけた第一情報又はこの第一情報に基づく第二情報とを統合して表示するための信号を出力し、第一の工具に紐づけた第一情報又はこの第一情報に基づく第二情報と、第二の工具に紐づけた第一情報又はこの第一情報に基づく第二情報を統合して、例えば表示部に表示する。
【0014】
本開示の一実施形態に係る制御装置は、前記出力部は、前記複数の時短可能処理それぞれに関する前記第一情報又は前記複数の時短可能処理それぞれに関する前記第一情報に基づく前記第二情報を表又はグラフによって表示するための信号を出力する。
【0015】
本開示においては、複数の時短可能処理それぞれに関する情報又はこの情報に基づく情報を表又はグラフによって表示するための信号を出力し、複数の時短可能処理それぞれに関する情報を表又はグラフによって、例えば表示部に表示する。
【0016】
本開示の一実施形態に係る制御装置は、前記時短可能処理は、最大速度で目標位置とは異なる位置まで処理対象の移動を行った後、前記最大速度よりも小さい速度で前記目標位置まで前記処理対象の移動を行う外回り処理、又は保持部のクランプが完了する前に前記処理対象の移動を開始するオーバーラップ処理を含む。
【0017】
本開示においては、外回り処理を行うことによって、処理対象の目標位置までの移動時間を短縮する。又はオーバーラップ処理を行うことによって、処理対象の目標位置までの移動時間を短縮する。
【0018】
本開示の一実施形態に係る制御装置は、前記外回り処理における前記第一情報は外回り実行回数及び外回り可能回数であり、前記第二情報は短縮予測時間であり、前記オーバーラップ処理における前記第一情報はオーバーラップ対象動作数であり、前記第二情報は短縮予測時間である。
【0019】
本開示においては、外回り処理における第一情報として外回り実行回数及び外回り可能回数を出力し、第二情報として短縮予測時間を出力する。オーバーラップ処理における第一情報としてオーバーラップ対象動作数を出力し、第二情報として短縮予測時間を出力する。
【0020】
本開示の一実施形態に係る制御方法は、主軸に装着される複数の工具を交換可能な工作機械を制御する制御方法において、前記主軸にいずれかの前記工具が装着される場合、前記主軸に前記工具が装着されてから工具交換が行われるまでの間に、少なくとも一つの時間短縮可能な時短可能処理の存否を判定し、前記時短可能処理が存在すると判定した場合、前記主軸に装着された前記工具に紐づけて前記時短可能処理に関する第一情報を取得し、前記第一情報又は前記第一情報に基づく第二情報を出力する。
【0021】
本開示においては、主軸に工具が装着されてから工具交換が行われるまでの間に、時間短縮可能な時短可能処理の存否を判定し、時短可能処理が存在すると判定した場合、前記工具に紐づけて時短可能処理に関する第一情報を取得する。第一情報又は第一情報に基づく第二情報は例えば表示部に出力される。
【0022】
本開示の一実施形態に係るコンピュータプログラムは、主軸に装着される複数の工具を交換可能な工作機械を制御する制御装置にて実行可能なコンピュータプログラムであって、前記制御装置に、前記主軸にいずれかの前記工具が装着される場合、前記主軸に前記工具が装着されてから工具交換が行われるまでの間に、少なくとも一つの時間短縮可能な時短可能処理の存否を判定し、前記時短可能処理が存在すると判定した場合、前記主軸に装着された前記工具に紐づけて前記時短可能処理に関する第一情報を取得し、前記第一情報又は前記第一情報に基づく第二情報を出力する処理を実行させる。
【0023】
本開示においては、主軸に工具が装着されてから工具交換が行われるまでの間に、時間短縮可能な時短可能処理の存否を判定し、時短可能処理が存在すると判定した場合、前記工具に紐づけて時短可能処理に関する第一情報を取得する。第一情報又は第一情報に基づく第二情報は例えば表示部に出力される。
【発明の効果】
【0024】
本開示の一実施形態に係る制御装置、制御方法及びコンピュータプログラムにあっては、主軸に工具が装着されてから工具交換が行われるまでの間に、時間短縮可能な時短可能処理の存否を判定し、時短可能処理が存在すると判定した場合、前記工具に紐づけて時短可能処理に関する第一情報を取得する。第一情報又は第一情報に基づく第二情報を例えば表示部に出力し、時間短縮可能な処理をユーザに認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施の形態1に係る工作機械の斜視図である。
【
図2】工具交換装置及び軌道を覆うカバー等を省略した工作機械の斜視図である。
【
図4】インポジション待ち時間を説明するグラフである。
【
図5】クランプ/アンクランプ待ち時間を説明するグラフである。
【
図7】RAM又は記憶部に記憶され、インポジション待ち時間、クランプ/アンクランプ待ち時間及びトリガ信号待ち時間を示すテーブルの概念図である。
【
図8】制御部による短縮可能時間測定処理を説明するフローチャートである。
【
図9】時短可能処理に関する情報を表示する表示部の一例を示す画面図である。
【
図10】実施の形態2に係るZ軸外回り処理を説明するグラフである。
【
図11】加工プログラムの一例を示すプログラムコードである。
【
図12】RAM又は記憶部に記憶され、No.、工具番号、Z軸外回り処理の実行回数、Z軸外回り処理の実行可能回数を示すテーブルの概念図である。
【
図13】主軸回転待ち時間を説明するグラフである。
【
図14】主軸停止待ち時間を説明するグラフである。
【
図15】主軸のZ軸位置、加工領域及びATC領域と、主軸の移動と、工具交換装置の回転との関係を説明する説明図である。
【
図16】工具交換装置の回転を説明する説明図である。
【
図17】RAM又は記憶部に記憶され、No.、工具番号、旋回ピッチ数、ATC領域内動作時間を示すテーブルの概念図である。
【
図18】付加軸クランプ早送りオーバーラップ処理を説明するグラフである。
【
図19】加工プログラムの一例を示すプログラムコードである。
【
図20】RAM又は記憶部に記憶され、No.、工具番号、第1オーバーラップ対象動作数、第2オーバーラップ対象動作数を示すテーブルの概念図である。
【
図21】タップ動作処理の時間と、タップ高速動作処理の推定時間とを説明するグラフである。
【
図22】RAM又は記憶部に記憶され、No.、工具番号、タップ時間、高速タップ時間を示すテーブルの概念図である。
【
図24】RAM又は記憶部に記憶され、No.、工具番号、スキップ信号待ち時間を示すテーブルの概念図である。
【
図25】時短可能処理に関する情報を表示する表示部の一例を示す画面図である。
【
図26】サイクルタイムにおける各項目の短縮予測時間を示す表である。
【
図27】サイクルタイムにおける各項目の短縮予測時間を示す円グラフである。
【
図28】サイクルタイムにおける各項目の短縮予測時間を示すパレート図である。
【
図29】サイクルタイムにおける各項目の短縮予測時間を工具番号毎に示す表である。
【
図30】工具番号1の工具における各項目の短縮予測時間を示す円グラフである。
【
図31】Z軸外回り処理における各工具番号に対応した短縮予測時間を示す円グラフである。
【
図32】各項目の短縮予測時間を工具番号毎に示す棒グラフである。
【
図33】各工具番号の短縮予測時間を項目毎に示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施の形態1)
以下本発明を実施の形態1に係る工作機械を示す図面に基づいて説明する。以下の説明では図中の上下前後左右を使用する。
図1は工作機械の斜視図であり、
図2は工具交換装置及び軌道を覆うカバー等を省略した工作機械の斜視図である。
【0027】
工作機械100は、制御装置4、基台20、Y軸方向移動装置22、X軸方向移動装置26、立柱28、Z軸方向移動装置30、主軸ヘッド32、工具交換装置10等を備える。X軸方向は左右方向に対応し、Y軸方向は前後方向に対応し、Z軸方向は上下方向に対応する。基台20は床面上に固定してある。基台20は、Y軸方向移動装置22、X軸方向移動装置26を介して立柱28を前後方向及び左右方向に移動可能に支持する。
【0028】
基台20の前部はワーク保持装置120を支持する。ワーク保持装置120はA軸モータ124及びC軸モータ79を備える(
図3参照)。A軸は左右に延びる。A軸モータ124の駆動によってワーク保持装置120はA軸回りに回転可能である。ワーク保持装置120はワークを保持する保持面を有する。
図1において保持面は上面である。C軸は保持面及びA軸に直交する。C軸モータ79の駆動によってワーク保持装置120はC軸回りに回転可能である。ワーク保持装置120は保持部に対応する。立柱28にZ軸方向移動装置30が設けてある。Z軸方向移動装置30は主軸ヘッド32を上下方向に移動する。工具交換装置10は、主軸ヘッド32に装着する工具を交換する。
【0029】
Y軸方向移動装置22は、互いに平行な二つの軌道22a、複数の移動体22b、Y軸方向移動台22c及びY軸モータ22d(
図3参照)を備える。軌道22aは基台20の上面にて前後方向に延びる。移動体22bは二つの軌道22a夫々に前後方向に移動可能に嵌合する。Y軸方向移動台22cは二つの軌道22aに跨がって移動体22b上に固定してある。Y軸モータ22dの駆動によって、Y軸方向移動台22cは前後方向に移動する。
【0030】
X軸方向移動装置26は、互いに平行な二つの軌道26a、複数の移動体26b、立柱台26c及びX軸モータ26d(
図3参照)を備える。軌道26aはY軸方向移動台22cの上面に左右方向に延びる。移動体26bは二つの軌道26a夫々に左右方向に移動可能に嵌合する。立柱台26cは二つの軌道26aに跨がって移動体26b上に固定してある。立柱28は立柱台26c上に固定してある。X軸モータ26dの駆動によって、立柱台26cは左右方向に移動する。立柱28は、Y軸方向移動装置22及びX軸方向移動装置26によって前後方向及び左右方向に移動する。
【0031】
Z軸方向移動装置30は、互いに平行な二つの軌道30a、複数の移動体30b、主軸ヘッド台30c及びZ軸モータ30d(
図3参照)を備える。軌道30aは、立柱28の前面に上下方向に延びる。複数の移動体30bは二つの軌道30a夫々に上下方向に移動可能に嵌合する。主軸ヘッド台30cは二つの軌道30aに跨がって移動体30bの前面に固定してある。Z軸モータ30dの駆動によって、主軸ヘッド台30cは上下方向に移動する。
【0032】
主軸ヘッド32は主軸ヘッド台30cに固定してある。主軸ヘッド32は、前側内部に上下方向に延びる主軸34を回転可能に保持する。主軸34は中空の筒形状をなす。X軸モータ26d、Y軸モータ22d及びZ軸モータ30dを駆動制御することで、主軸ヘッド32は前後、左右及び上下に移動する。
【0033】
工具交換装置10は、長円形の軌道(図示略)、該軌道を移動する複数の移動台(図示略)を備える。軌道は主軸ヘッド32及び立柱28を囲み、前側下方から後側上方へ延び、水平面から所定角度傾斜する。複数の移動台はリンクによってチェーン状に結合されている。
図1に示すように、ギア51及びマガジンモータ52が軌道の内側に配置してある。ギア51はマガジンモータ52に連結し、マガジンモータ52の駆動によって回転する。複数の移動台はギア51に噛合し、マガジンモータ52の駆動によって軌道上を回転する。各移動台は把持アーム53を支持する。
【0034】
空の把持アーム53を工具交換装置10の軌道の前端部に配置し、工具11を装着した主軸34が上昇することによって、把持アーム53は工具11を主軸34から取り外して把持する。工具11を把持する把持アーム53を工具交換装置10の軌道の前端部に配置し、工具11を把持していない主軸34が下降することによって、主軸34は工具11を装着する。
【0035】
図3は、工作機械100のブロック図である。制御装置4は、制御部4a、RAM4b、記憶部4c及びインタフェース4dを備える。制御部4aはプロセッサ、例えばCPU又はMPU等である。なおプロセッサに代えてロジック回路、例えばFPGA又はASIC等でもよい。RAM4bは主記憶装置の一例であり、他のメモリでもよい。記憶部4cは補助記憶装置であり、例えば不揮発性メモリ、ハードディスク等を有する。不揮発性メモリは、例えばEPROM、EEPROM等である。記憶部4cは工作機械1の制御プログラム(プログラム製品)を記憶する。制御プログラムはワークを加工する加工プログラムを含む。記憶部4cは後述の変数K及び処理周期C等を記憶する。尚制御プログラムを記憶した持ち運び可能な記憶媒体4eに制御プログラムを記憶し、記憶媒体4eから記憶部4cにインストールしてもよく、制御装置4を通信可能に構成し、サーバから記憶部4cに制御プログラムをダウンロードしてもよい。
【0036】
制御部4aは記憶部4cからRAM4bに制御プログラムを読み出し、制御プログラムに基づき、駆動信号をインタフェース4d、及び駆動回路26e、22e、30e、330d、52a、125a又は79aを介してX軸モータ26d、Y軸モータ22d、Z軸モータ30d、主軸モータ35、マガジンモータ52、A軸モータ125又はC軸モータ79に出力する。以下、駆動回路26e、22e、30e、330d、52a、125a又は79aを区別する必要がない場合、単に駆動回路と称し、X軸モータ26d、Y軸モータ22d、Z軸モータ30d、マガジンモータ52、A軸モータ125又はC軸モータ79を区別する必要がない場合、単にモータと称する。各モータはエンコーダを有し、エンコーダは駆動回路に検出値を送信する。駆動回路はエンコーダの検出値を受け、フィードバック制御を実施する。制御部4aは制御プログラムに基づいて後述する短縮可能時間測定処理を実行する。作業者は操作部21を操作し、操作部21はインタフェース4dを介して制御装置4に情報を入力する。操作部21はキーボード、タッチパネル又はスイッチ等を有する。制御部4aはインタフェース4dを介して情報を表示するための信号を表示部40に出力する。表示部40は表示画面を有する。
【0037】
主軸に装着する工具を交換する場合、主軸から工具を取り外した後、マガジンモータ52は最高速度に至るまで加速し、最高速度を所定時間維持した後、減速し、工具マガジン7に収納した所定の工具を交換位置に割り出す。
【0038】
制御部4aは制御プログラムに基づき、主軸に工具が装着されてから工具交換が行われるまでの間に、時間短縮可能な時短可能処理が存在するか否か判定する。制御部4aは時短可能処理が存在すると判定した場合、時短可能処理における短縮可能な時間を測定する。例えば、時短可能処理はインポジション待ち処理であり、短縮可能な時間はインポジション待ち時間である。
【0039】
図4は、インポジション待ち時間を説明するグラフである。
図4のグラフは、例えば主軸ヘッド32、工具交換装置10又はワーク保持装置120が移動を開始してから目標位置に到達するまでの時間及び速度を示す。換言すれば、モータが移動を開始してから目標位置に到達するまでの時間及び速度を示す。グラフの横軸は時間を示し、縦軸は速度を示す。
【0040】
時点t0は、モータが制御部4aから与えられた一定速度で時点0から移動を開始した場合に、目標位置に到達する時点である。駆動回路は、制御部4aから与えられた一定速度を予め定めた時定数で補正し、補正後の速度でモータを駆動する。補正後の速度は
図3のグラフで示される速度である。
【0041】
時点t1は、時点t0から所定時間S0が経過した時点である。所定時間S0は、例えば時点t0から速度の大きさが予め定めた閾値以下となるまでの時間、時定数に基づき算出された時間又は予め定めた固定値等である。時点t1は、インポジション待ち時間の測定を開始する時点である。時点t2は、インポジション待ち時間の測定を終了する時点である。即ち、時点t2は、モータの所在位置と、目標位置との差分が所定範囲内の値になった時点である。制御部4aは時点t1と時点t2との間の時間S1、即ちインポジション待ち時間を測定する。
【0042】
例えば、時短可能処理はクランプ/アンクランプ待ち処理であり、短縮可能な時間はクランプ/アンクランプ待ち時間である。
図5は、クランプ/アンクランプ待ち時間を説明するグラフである。
図5のグラフは、X軸モータ26d及びA軸モータ125が移動を開始してから目標位置に到達するまでの時間及び速度を示す。グラフの横軸は時間を示し、縦軸は速度を示す。
【0043】
クランプ待ち時間は、例えばA軸モータ125がクランプになった時点、即ちA軸モータ125のブレーキがオンになった時点から、A軸モータ125以外の移動軸のモータが移動を開始するまでの時間である。A軸モータ125以外の移動軸のモータは例えばX軸モータ26d、Y軸モータ22d、Z軸モータ30d又はマガジンモータ52である。移動軸のモータは主軸モータ35及びC軸モータ79以外のモータである。
【0044】
アンクランプ待ち時間は、例えばA軸モータ125がアンクランプになった時点、即ちA軸モータ125のブレーキがオフになってから、いずれかの移動軸のモータが移動を開始するまでの時間である。いずれかの移動軸のモータは例えばA軸モータ125、X軸モータ26d、Y軸モータ22d、Z軸モータ30d又はマガジンモータ52である。
【0045】
時点0はA軸モータ125がアンクランプ動作を開始した時点、即ちA軸モータ125のブレーキのオフ動作を開始した時点を示し、またX軸モータ26dが移動を開始した時点を示す。時点t3は、アンクランプ動作が完了した時点、即ちA軸モータ125のブレーキのオフ動作が完了した時点を示す。また時点t3はA軸モータ125の駆動開始時点を示す。時間S2は時点0から時点t3までの間の時間を示し、アンクランプ動作に要する時間を示す。時点t4はA軸モータ125がクランプ動作を開始した時点、即ちA軸モータ125のブレーキのオン動作を開始した時点を示し、時点t5はA軸モータ125がクランプ動作を完了した時点、即ちA軸モータ125のブレーキのオン動作が完了した時点を示す。S3は時点t4から時点t5までの間の時間を示し、クランプ動作に要する時間を示す。
【0046】
時点t0にてA軸モータ125のアンクランプ動作が開始されているものの、X軸モータ26dの移動が開始されているので、時間S2はアンクランプ待ち時間ではない。時点t4にてA軸モータ125のクランプ動作が開始され、X軸モータ26dは移動していない。そのため時間S3はクランプ待ち時間である。制御部4aはクランプ待ち時間を測定する。なお時間S3の間、X軸モータ26d以外の移動軸のモータも移動していないとする。
なお時点t0にてX軸モータ26dの移動が開始されていない場合には、時間S2はアンクランプ待ち時間であり、制御部4aはアンクランプ待ち時間を測定する。
【0047】
図5ではA軸モータ125とX軸モータ26dの組み合わせを示したが、A軸モータ125と、X軸モータ26d以外の移動軸のモータとの組み合わせでもよいし、C軸モータ79と、移動軸のモータとの組み合わせでもよい。
【0048】
例えば、時短可能処理はトリガ待ち処理であり、短縮可能な時間はトリガ待ち時間である。
図6は、トリガ待ち時間を説明するグラフである。
図6のグラフは、「G00Z**」指令、即ちZ位置**までの移動指令に基づきZ軸モータ30dが移動を開始してから目標位置に到達するまでの時間及び速度と、「M10」指令、即ち待機指令の有効/無効時間とを示す。「G00Z**」指令は移動指令の一例である。移動指令は、前述の移動軸のモータを移動させる指令である。「M10」指令は待機指令の一例である。「G00Z**」指令のグラフ(上のグラフ)の横軸は時間を示し、縦軸は速度を示す。「M10」指令のグラフ(下のグラフ)の横軸は時間を示し、縦軸は有効/無効を示す。縦軸の正の値は有効であることを示し、0は無効であることを示す。
【0049】
トリガ待ち時間は、待機指令が有効になってから、トリガ信号の入力によって待機指令が無効になるまでの時間である。ただし、トリガ待ち処理中に移動指令によって移動軸が移動している場合、移動軸の移動開始時点から時点t0までの時間はトリガ待ち時間から除かれる。
【0050】
時点t0は、
図4と同様に、Z軸モータ30dが制御部4aから与えられた一定速度で時点0から移動を開始した場合に、目標位置に到達する時点である。時点t6は、待機指令を解除するトリガ信号が入力された時点である。制御部4aは時点t0から時点t6までの時間S4、即ちトリガ待ち時間を測定する。
【0051】
図7は、RAM4b又は記憶部4cに記憶され、インポジション待ち時間、クランプ/アンクランプ待ち時間及びトリガ信号待ち時間を示すテーブルの概念図である。
図7における「No.」は加工プログラムの実行によって主軸に装着された工具の順番を示す。各順番はそれぞれ、主軸に装着された一つの工具番号に対応する。なお異なる順番は同じ工具番号に対応することがある。例えばNo.1の工具と、No.5の工具とが同じ工具番号1の工具であることがある。この場合、最初に工具番号1の工具が主軸に装着され、5番目に工具番号1の工具が主軸に装着されたことになる。インポジション待ち時間は上述の時間S1、クランプ/アンクランプ待ち時間は上述の時間S3、トリガ信号待ち時間は上述の時間S4を示す。制御部4aは工具の順番に紐づけて時間S1,S3及びS4を測定し、RAM4b又は記憶部4cに記憶する。即ち制御部4aは主軸に装着された工具に紐づけて時短可能処理に関する情報を取得する。
【0052】
図8は、制御部4aによる短縮可能時間測定処理を説明するフローチャートである。加工プログラムの実行が開始された場合、制御部4aは主軸に装着された工具の工具番号を取得する(S1)。制御部4aは変数Kに0を代入する(S2)。制御部4aは加工プログラムが終了したか否か判定する(S3)。加工プログラムが終了していない場合(S3:NO)、制御部4aは、工具交換指令が加工プログラムから読み込まれ、工具交換指令の実行が完了したか否か判定する(S4)。工具交換指令が完了してない場合(S4:NO)、制御部4aは短縮可能時間の測定条件が成立したか否か判定する(S5)。短縮可能時間は例えば時間S1、S3又はS4である。
【0053】
時間S1の測定条件は、モータに移動指令が出力された場合において、時点t0から所定時間S0が経過したことを示す第1条件である。時間S3の測定条件は、A軸モータ125はクランプされ、移動軸のモータは移動していないことを示す第3条件である。時間S4の測定条件は、待機指令が有効になってから、トリガ信号の入力によって待機指令が無効になるまでの時間であること、及び、トリガ待ち処理中に移動指令によって移動軸が移動している場合、移動軸の移動開始時点から時点t0までの時間はトリガ待ち時間から除かれることを示す第4条件である。なお時間S2の測定条件は、A軸モータ125がアンクランプされ、移動軸のモータは移動していないことを示す第2条件である。
【0054】
測定条件が成立する場合(S5:YES)、制御部4aは変数Kの値を1加算する。(S6)、ステップS6の処理後又は測定条件が成立しない場合(S5:NO)、制御部4aはステップS3に処理を戻す。
【0055】
ステップS4において、工具交換指令が完了した場合(S4:YES)、制御部4aは変数Kの値と処理周期Cとを乗算し、乗算結果をRAM4b又は記憶部4cに記憶し(S8)、ステップS1に処理を戻す。処理周期CはステップS2~ステップS6までの処理を実行する時間である。
【0056】
ステップS3において、加工プログラムが終了した場合(S3:YES)、制御部4aは変数Kの値と処理周期Cとを乗算し、乗算結果をRAM4b又は記憶部4cに記憶し(S7)、処理を終了する。
【0057】
図9は、時短可能処理に関する情報を表示する表示部40の一例を示す画面図である。制御部4aは表示部40に時短可能処理に関する情報を表示するための信号を出力する。時短可能処理に関する情報は、例えば時間S1,S3及びS4を含む。制御部4aは、実行したプログラムの番号と、ワークを保持部にクランプしてからアンクランプするまでのサイクルタイムと、切削時間と、非切削時間と、サイクルタイムに占める切削時間の割合とを表示するための信号を出力する。
【0058】
図9に示すように、表示部40には、プログラムの番号、サイクルタイム、切削時間、非切削時間及びサイクルタイムに占める切削時間の割合が表示される。また時間S1,S3及びS4、即ちインポジション待ち時間、クランプ/アンクランプ待ち時間及びトリガ信号待ち時間が表形式で表示される。
図9において、表は、「NO.」、「工具番号」、「切削時間」、「非切削時間」及び「インポジション待ち時間」を表示する。「「NO.」は
図7の「NO.」と同じである。「工具番号」は主軸に装着された工具の工具番号を示す。
図8においては、「NO.」及び「工具番号」に紐づけて「切削時間」、「非切削時間」及び「インポジション待ち時間」が表示されている。
【0059】
表示部40は、表示項目を選択するためのプルダウン形式の選択部を表示する。ユーザは選択部を操作することによって、「インポジション待ち時間」、「クランプ/アンクランプ待ち時間」、又は「トリガ信号待ち時間」を選択することができる。表示部40は、選択されたいずれかの時間を表示する。
【0060】
実施の形態1に係る工作機械にあっては、主軸に工具が装着されてから工具交換が行われるまでの間に、時間短縮可能な時短可能処理の存否を判定し、時短可能処理が存在すると判定した場合、工具に紐づけて時短可能処理に関する情報、例えば「インポジション待ち時間」、「クランプ/アンクランプ待ち時間」、又は「トリガ信号待ち時間」を取得する。取得した情報を例えば表示部40に出力し、時間短縮可能な処理をユーザに認識させることができる。
【0061】
また切削時間、被切削時間及び時短可能処理に関する情報を表示するための信号を出力し、切削時間、被切削時間及び時短可能処理に関する情報を例えば表示部40に表示する。
【0062】
また複数の時短可能処理それぞれの情報を統合して表示するための信号を出力し、複数の時短可能処理それぞれの情報を統合して、例えば表示部に表示する。なお「統合して表示する」とは、例えば複数の情報のうち少なくとも二つ以上の情報を単一の画像に含めて表示することを示す。
【0063】
上述の工作機械のワーク保持装置120はA軸及びC軸回りに回転可能に構成され、主軸ヘッド32がX~Z軸方向に移動可能に構成されているが、工作機械はワーク保持装置120がX及びY方向に移動可能なテーブルと、該テーブル上に設置されるA軸及びC軸回りに回転可能な回転保持部とを備え、主軸ヘッド32がZ軸方向に移動可能に構成されてもよい。また工作機械は、主軸が左右又は前後方向に延びる横型の工作機械でもよい。
【0064】
(実施の形態2)
以下本発明を実施の形態2に係る工作機械を示す図面に基づいて説明する。実施の形態2に係る工作機械の構成のうち、実施の形態1と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0065】
例えば、時短可能処理は、Z軸方向への移動処理であって、Z軸外回り処理の実行が可能だが、Z軸外回り処理を実行しなかった移動処理である。
図10は、Z軸外回り処理を説明するグラフである。
図10のグラフは、横軸がX/Y軸方向の位置を示し、縦軸がZ軸方向の位置を示す。
図10のグラフは、移動処理前の位置からX軸方向の位置-86、Y軸方向の位置-18及びZ軸方向の位置20が示す位置、即ち目標位置までの主軸の移動経路を示す。移動処理前の位置から主軸はZ軸方向に最高速度で移動し、Z軸方向の目標位置である20を超える位置まで移動し、その後、最高速度よりも低い速度でZ軸方向の目標位置20に向けて移動しつつ、X軸方向の目標位置-86及びY軸方向の目標位置18まで移動する。即ち、最高速度でZ軸方向の目標位置20を僅かに超える位置まで移動させた後、低速でZ軸方向の目標位置20まで戻すことによって、最初から低速でZ軸方向の目標位置20まで移動させる場合よりも移動時間は短縮する。
【0066】
図11は、加工プログラムの一例を示すプログラムコードである。
図11において、G100T1は工具番号1の工具への交換を示す。以下の説明では、Z軸方向の位置A、X軸方向の位置B及びY軸方向の位置Cが示す位置を(ZA、XB、YC)と表記する。G00Z20X-77.Y-18.は、(Z20、X-77、Y-18)への主軸、即ち工具番号1の移動を示す。ここで、Z軸外回り処理は無効である。M300は、以降の行においてZ軸外回り処理が有効であることを示す。G00Z20X-86.Y-18.は、(Z20、X-86、Y-18)への主軸の、即ち工具番号1の工具の移動を示す。M301は、以降の行においてZ軸外回り処理が無効であることを示す。G100T2は、工具番号2の工具への交換を示す。G00Z20X-95.Y-18.は、(Z20、X-95、Y-18)への主軸の、即ち工具番号2の工具の移動を示す。
【0067】
(Z20、X-77、Y-18)への移動において、Z軸外回り処理の実行は可能であるが、Z軸外回り処理が無効なので、Z軸外回り処理は実行されない。(Z20、X-86、Y-18)への移動において、Z軸外回り処理の実行は可能であり、Z軸外回り処理が有効なので、Z軸外回り処理は実行される。(Z20、X-95、Y-18)への移動において、Z軸外回り処理の実行は可能であるが、Z軸外回り処理が無効なので、Z軸外回り処理は実行されない。
【0068】
図12は、RAM4b又は記憶部4cに記憶され、No.、工具番号、Z軸外回り処理の実行回数N1、Z軸外回り処理の実行可能回数N2を示すテーブルの概念図である。
図12のテーブルは、
図11に示す処理の実行内容を示す。
図12において、「No.」は加工プログラムの実行によって主軸に装着された工具の順番を示す。「工具番号」は主軸に装着された工具の工具番号を示す。「外回り実行回数」は、Z軸外回り処理を実行した回数を示す。「外回り可能回数」は、Z軸外回り処理を実行可能な回数を示す。「NO.」及び「工具番号」に紐づけて「外回り実行回数」及び「外回り可能回数」がRAM4b又は記憶部4cに記憶される。
【0069】
図11の処理を実行した場合、工具番号1の工具におけるZ軸外回り処理の実行可能回数は2回であり、工具番号1の工具におけるZ軸外回り処理の実行回数は1回である。また工具番号2の工具におけるZ軸外回り処理の実行可能回数は1回であり、工具番号2の工具におけるZ軸外回り処理の実行回数は0回である。そのため、「工具番号1」に対応する「外回り実行回数」の欄に1が格納され、「外回り可能回数」の欄に2が格納される。また「工具番号2」に対応する「外回り実行回数」の欄に0が格納され、「外回り可能回数」の欄に1が格納される。制御部4aはZ軸外回り処理の実行可能回数及びZ軸外回り処理の実行回数を測定する。測定条件は、Z軸方向への移動を行うことである。Z軸外回り処理の実行回数の増加によって、移動時間は短縮する。なおZ軸の移動軸以外の移動軸の外回り処理について、「外回り実行回数」及び「外回り可能回数」を測定し、記憶してもよい。
【0070】
例えば、時短可能処理は、主軸回転/停止待ち処理である。
図13は、主軸回転待ち時間を説明するグラフである。
図13のグラフは、「G00Z**」指令、即ちZ位置**までの移動指令に基づきZ軸モータ30dが移動を開始してから目標位置に到達するまでの時間及び速度と、主軸の回転速度が上昇し、目標回転速度に至るまでの時間及び速度とを示す。
【0071】
図13において、t7はZ軸モータ30dが移動を開始した後、停止した時点を示す。t8は主軸の回転速度が目標回転速度に至った時点を示す。目標回転速度は、指令速度でもよいし、指令速度の所定割合、例えば指令速度の80~95%でもよい。時点t7と時点t8との間の時間S5は、主軸の回転速度が上昇を開始してから目標回転速度に至るまで時間であって、移動軸が移動している時間を除いた主軸回転待ち時間である。主軸回転待ち時間は短縮可能な時間である。制御部4aは主軸回転待ち時間を測定する。測定条件は、主軸の回転速度が上昇を開始し、目標回転速度に至っておらず、移動軸が移動していないことである。
【0072】
図14は主軸停止待ち時間を説明するグラフである。
図14のグラフは、「G00Z**」指令、即ちZ位置**までの移動指令に基づきZ軸モータ30dが移動を開始してから目標位置に到達するまでの時間及び速度と、主軸の回転速度が下降し、目標回転速度に至るまでの時間及び速度とを示す。
【0073】
図14において、t9は主軸の回転速度の下降開始時点を示す。t10はZ軸モータ30dが移動を開始した後、停止した時点を示す。t11は主軸の回転速度が目標回転速度に至った時点を示す。目標回転速度は指令速度でもよいし、初期速度から所定割合下降した速度、例えば初期速度から80~95%下降した速度でもよい。時点t10と時点t11との間の時間S6は、主軸の回転速度が下降を開始してから目標回転速度に至るまで時間であって、移動軸が移動している時間を除いた主軸停止待ち時間である。主軸停止待ち時間は短縮可能な時間である。制御部4aは主軸停止待ち時間を測定する。測定条件は、主軸の回転速度が下降を開始し、目標回転速度に至っておらず、移動軸が移動していないことである。
【0074】
例えば、時短可能処理は、工具交換装置旋回/工具交換処理である。
図15は、主軸のZ軸位置、加工領域及びATC領域と、主軸の移動と、工具交換装置の回転との関係を説明する説明図である。
図15に示すように、Z軸方向におけるZ軸原点位置は、加工領域とATC領域との境界を示す位置である。なおATC領域は工具交換領域であり、この領域内にて工具交換動作が実行される。ATC原点は、主軸から工具が取り外される位置を示す。
【0075】
工具を交換する場合、矢印1に示すように、加工領域にある主軸はZ軸原点まで移動し、更に矢印2に示すように、ATC原点まで移動する。このとき、主軸から工具は取り外される。そして工具交換装置10は回転し、工具が交換位置に割り出される(
図15の3番参照)。矢印4に示すように、主軸はZ軸原点まで下降する。このとき、交換位置に割り出された工具は主軸に装着される。矢印5に示すように、主軸は加工領域まで下降する。
【0076】
図16は、工具交換装置10の回転を説明する説明図である。
図16には、軌道に沿って配置された1番~5番の把持アーム53が示されている。5番の把持アーム53には工具番号2の工具が把持されている。主軸には工具番号1の工具が把持されている。
図16に示すように、工具交換動作によって、主軸から取り外された工具番号1の工具は1番の把持アーム53に把持される。その後、工具交換装置10は回転し、工具番号2の工具が交換位置に割り出され、主軸に装着される。
【0077】
図17は、RAM4b又は記憶部4cに記憶され、No.、工具番号、旋回ピッチ数、ATC領域内動作時間を示すテーブルの概念図である。
図17において、「No.」は加工プログラムの実行によって主軸に装着された工具の順番を示す。「工具番号」は主軸に装着された工具の工具番号を示す。「旋回ピッチ数」は工具交換時に、主軸に装着される工具が交換位置に割り出されるまで移動したピッチ数を示す。なお1ピッチは、隣り合う二つの把持アーム53、53の間の距離に対応する。「ATC領域内動作時間」は、
図16に示す矢印2の移動、工具交換装置10の回転及び矢印4の移動に要する時間S7を示す。NO.」及び「工具番号」に紐づけて「旋回ピッチ数」及び「ATC領域内動作時間」がRAM4b又は記憶部4cに記憶される。
【0078】
図16の工具交換動作を実行した場合、工具番号2の工具が交換位置に割り出されるまで移動したピッチ数は4である。また制御部4aはATC領域内動作時間を測定し、例えば0.701秒が測定される。そのため、
図17に示すように、工具番号2に対応した旋回ピッチ数の欄に4が格納され、ATC領域内動作時間の欄に0.701秒が格納される。
【0079】
ATC領域内動作時間S7は、工具交換装置旋回/工具交換待ち時間である。工具交換装置旋回/工具交換待ち時間短縮可能な時間である。制御部4aはATC領域内動作時間S7を測定する。測定条件は、工具交換処理が開始され、ATC領域内にて主軸が移動していることである。旋回ピッチ数を減らすことによって、ATC領域内動作時間S7は短縮することができる。
【0080】
例えば、時短可能処理は、付加軸クランプ早送りオーバーラップ処理である。
図18は、付加軸クランプ早送りオーバーラップ処理を説明するグラフである。
図18のグラフは、A軸モータ125の移動と並行してZ軸モータ30dの移動が行われる場合においてZ軸モータ30d及びA軸モータ125が移動を開始してから目標位置に到達するまでの時間及び位置を示す。グラフの横軸は時間を示し、縦軸はA軸位置又はZ軸位置を示す。
【0081】
時点t12は、A軸モータ125においてインポジション待ち時間が経過した時点、換言すればインポジションチェックが終了した時点を示す。時点t13はA軸モータ125のクランプが完了した時点を示す。Z軸モータ30dは時点t12以降に移動可能である。即ち、Z軸モータ30dは時点t13まで待機する必要はない。時点t12から時点t13までの間の時間S8は短縮可能な時間である。なおA軸モータ125の移動と並行して移動するモータはZ軸モータ30dに限定されず、他の移動軸のモータでもよい。以下、A軸モータ125の移動と並行してZ軸モータ30dが移動する処理を第1オーバーラップ処理、A軸モータ125の移動と並行していずれかの移動軸のモータが移動する処理を第2オーバーラップ処理という。
【0082】
図19は、加工プログラムの一例を示すプログラムコードである。
図19において、G100T1は工具番号1の工具への交換を示す。G100T2は工具番号2の工具への交換を示す。G00A**はA軸モータ125の角度**の位置までの移動を示す。以下の説明では、ZX軸方向の位置B及びY軸方向の位置Cが示す位置を(XB、YC)と表記する。G00X-100.Y-100は(X-100、Y-100)への主軸、即ち工具番号1の移動を示す。G00Z150はZ軸位置150への主軸、即ち工具番号1の移動を示す。G81R2.Z-0.5F1600は、直径2mm、主軸回転速度1600rpm、Z軸位置-0.5の穴空け動作を示す。Z軸位置-0.5は穴の底位置に対応する。このとき使用される工具は工具番号2の工具である。なおG81による穴空け動作の後にA軸又はC軸回りの角度が記述されている場合、記述された角度へのA軸モータ125又はC軸モータ79の移動が行われる都度、G81による穴空け動作は実行される。
【0083】
G00A100の直後にG00X-100.Y-100.が記述されているので、これらの動作は第2オーバーラップ処理の対象となりうる。G00A0.の直後にG00Z150.が記述されているので、これらの動作は第1及び第2オーバーラップ処理の対象となりうる。G00A0.の直後にG81R2.Z-0.5F1600が記述されているので、これらの動作は第1及び第2オーバーラップ処理の対象となりうる。G81R2.Z-0.5F1600の後に、A60.、A120.、A180.、A240.、A300.が順に記述されているので、これらの動作は第1及び第2オーバーラップ処理の対象となりうる。
【0084】
図20は、RAM4b又は記憶部4cに記憶され、No.、工具番号、第1オーバーラップ対象動作数L1、第2オーバーラップ対象動作数L2を示すテーブルの概念図である。
図20のテーブルは、
図19に示す処理の実行内容を示す。
図20において、「No.」は加工プログラムの実行によって主軸に装着された工具の順番を示す。「工具番号」は主軸に装着された工具の工具番号を示す。「第1オーバーラップ対象動作数」は、第1オーバーラップ処理の対象となる動作の数を示す。「第2オーバーラップ対象動作数」は、第2オーバーラップ処理の対象となる動作の数を示す。「NO.」及び「工具番号」に紐づけて「第1オーバーラップ対象動作数」及び「第2オーバーラップ対象動作数」がRAM4b又は記憶部4cに記憶される。
【0085】
図19の処理を実行した場合、工具番号1の工具における第1オーバーラップ処理の対象となる動作の数は1であり、第2オーバーラップ処理の対象となる動作の数は2である。また工具番号2の工具における第1オーバーラップ処理の対象となる動作の数は6であり、工具番号2の工具における第2オーバーラップ処理の対象となる動作の数は6である。そのため、「工具番号1」に対応する「第1オーバーラップ対象動作数」の欄に1が格納され、「第2オーバーラップ対象動作数」の欄に2が格納される。また「工具番号2」に対応する「第1オーバーラップ対象動作数」の欄に6が格納され、「第2オーバーラップ対象動作数」の欄に6が格納される。制御部4aは第1オーバーラップ対象動作数及び第2オーバーラップ対象動作数を測定する。測定条件は、A軸モータ125又はC軸モータ79の移動と並行して移動軸のモータが移動することである。
【0086】
例えば、時短可能処理はタップ動作処理である。
図21は、タップ動作処理の時間と、タップ高速動作処理の推定時間とを説明するグラフである。タップ動作処理はワークにタッピング穴を形成する処理である。タップ高速動作処理はタップ動作処理よりも高速にタッピング穴を形成する処理である。タップ動作処理の時間S9は実際に処理に要した時間である。タップ高速動作処理の推定時間S10は、タップ動作処理によって形成されたタッピング穴と同様な穴を形成する場合に、穴の形成に要すると推定される時間である。
【0087】
図21のグラフの横軸は時間を示し、縦軸はZ軸方向の移動速度を示す。
図21の実線は、タップ動作処理における主軸のZ軸方向の移動速度及び時間を示す。破線はタップ高速動作処理における主軸のZ軸方向の移動速度及び時間を示す。タップ動作処理をタップ高速動作処理に置き換えることによって、タッピング穴を形成する時間は短縮する。制御部4aはタップ動作処理の時間S9を測定し、タップ高速動作処理の時間S10を推定する。時間S10の推定は測定に含まれる。測定条件は、タップ動作処理を行うことである。
【0088】
図22は、RAM4b又は記憶部4cに記憶され、No.、工具番号、タップ時間(S9)、高速タップ時間(S10)を示すテーブルの概念図である。制御部4aは、例えば工具番号1の工具によるタップ時間S9として、2.1秒を測定し、高速タップ時間S10として、1.9秒を推定する。この場合、
図22に示すように、工具番号1に対応したタップ時間の欄に2.1秒が格納され、高速タップ時間の欄に1.9秒が格納される。
【0089】
例えば、時短可能処理はスキップ送り処理である。スキップ送り処理は主軸に検出プローブを装着した場合における所定位置とワークとの間の主軸の往復移動処理である。
図23はスキップ処理を説明するグラフである。
図23のグラフの横軸は時間を示し、縦軸は速度を示す。時点t14は主軸が所定位置から移動を開始した時点を示し、t15は検出プローブがワークに接触した時点を示す。検出プローブがワークに接触後、主軸は所定位置まで戻る。時点t14と時点t15の間の時間は短縮可能な時間である。検出プローブの移動速度を上げることによって、時点t14と時点t15の間の時間は短縮する。なお検出プローブは工具番号1の工具に対応する。
【0090】
図24は、RAM4b又は記憶部4cに記憶され、No.、工具番号、スキップ信号待ち時間を示すテーブルの概念図である。
図24のテーブルは、
図23に示す処理の実行内容を示す。
図24において、「No.」は加工プログラムの実行によって主軸に装着された工具の順番を示す。「工具番号」は主軸に装着された工具の工具番号を示す。「スキップ信号待ち時間」は時点t14と時点t15の間の時間を示す。「NO.」及び「工具番号」に紐づけて「スキップ信号待ち時間」がRAM4b又は記憶部4cに記憶される。
【0091】
図23の処理を実行した場合、検出プローブ、即ち工具番号1の工具のスキップ信号待ち時間は例えば1.1秒である。そのため、「工具番号1」に対応する「スキップ信号待ち時間」の欄に1.1秒が格納される。制御部4aはスキップ信号待ち時間を測定する。測定条件は、主軸に検出プローブが装着されることである。
【0092】
図25は、時短可能処理に関する情報を表示する表示部40の一例を示す画面図である。制御部4aは表示部40に時短可能処理に関する情報を表示するための信号を出力する。例えば
図25に示すように、表示部40はZ軸外回り処理に関する情報41、付加軸クランプ早送りオーバーラップ処理に関する情報42、工具交換装置旋回/工具交換処理に関する情報43を表示する。
【0093】
Z軸外回り処理に関する情報41は、Z軸外回り処理に関する現在のプログラムと、推奨プログラムと、推奨プログラムに変更した場合に予測される短縮予測時間0.5秒とを含む。Z軸外回り処理に関する情報41の隣には、プログラム変更ボタン41aが表示される。ユーザがプログラム変更ボタン41aを操作することによって、現在のプログラムは推奨プログラムに変更される。
【0094】
付加軸クランプ早送りオーバーラップ処理に関する情報42は、付加軸クランプ早送りオーバーラップ処理の無効、第1オーバーラップ処理(方式1)が有効であること又は第2オーバーラップ処理(方式2)が有効であることを示すパラメータを含む。無効のパラメータは0であり、第1オーバーラップ処理(方式1)が有効であることを示すパラメータは1であり、第2オーバーラップ処理(方式2)が有効であることを示すパラメータは2である。付加軸クランプ早送りオーバーラップ処理に関する情報42は、付加軸クランプ早送りオーバーラップ処理であることを示す項目と、現在のパラメータ0と、推奨されるパラメータ2と、推奨されるパラメータに変更した場合に予測される短縮予測時間3.1秒とを含む。短縮予測時間は、例えばA軸モータ125のクランプに要する時間と、第2オーバーラップ対象動作数L2とを乗算して求める。短縮予測時間は、取得部にて取得した情報に基づく情報に対応する。
【0095】
付加軸クランプ早送りオーバーラップ処理に関する情報42の隣には、パラメータ変更ボタン42aが表示される。ユーザがパラメータ変更ボタン42aを操作することによって、現在のパラメータは推奨パラメータに変更される。
【0096】
工具交換装置旋回/工具交換処理に関する情報43は、工具交換装置10のポット番号、即ち把持アーム53の番号1,2、・・と、各把持アーム53に把持された現在の工具の工具番号1、2、・・・と、推奨される工具の工具番号5、8、・・・と、現在の工具を推奨される工具に交換した場合に予測される短縮予測時間と1.2秒を含む。ユーザは、表示された推奨工具番号を視認し、現在の工具を推奨された工具に手動で交換することができる。短縮予測時間は、推奨される工具の旋回ピッチ数と、現在の工具の旋回ピッチ数との差分に基づいて、求められる。
【0097】
図26は、サイクルタイムにおける各項目の短縮予測時間を示す表である。
図26に示すように、表示部40はインポジション待ち時間、クランプ/アンクランプ待ち時間、Z軸外回り処理、工具交換時間及び付加軸クランプ早送りオーバーラップ処理を示す項目と、各項目それぞれに対応する短縮予測時間とを表示してもよい。
【0098】
図27は、サイクルタイムにおける各項目の短縮予測時間を示す円グラフである。
図27に示すように、表示部40はインポジション待ち時間、クランプ/アンクランプ待ち時間、Z軸外回り処理、工具交換時間及び付加軸クランプ早送りオーバーラップ処理それぞれに対応する短縮予測時間を円グラフで示してもよい。
【0099】
図28は、サイクルタイムにおける各項目の短縮予測時間を示すパレート図である。
図28に示すように、表示部40はインポジション待ち時間、クランプ/アンクランプ待ち時間、Z軸外回り処理、工具交換時間及び付加軸クランプ早送りオーバーラップ処理それぞれの項目について、短縮予測時間をパレート図で示してもよい。パレート図の折れ線グラフの単位は、例えばパーセンテージである。
【0100】
図29は、サイクルタイムにおける各項目の短縮予測時間を工具番号毎に示す表である。
図29に示すように、表示部40はインポジション待ち時間、クランプ/アンクランプ待ち時間、Z軸外回り処理、工具交換時間及び付加軸クランプ早送りオーバーラップ処理を示す項目を表示し、各項目それぞれに対応する短縮予測時間を工具番号毎に区別して表示してもよい。
【0101】
図30は、工具番号1の工具における各項目の短縮予測時間を示す円グラフである。
図30に示すように、表示部40は工具番号1について、インポジション待ち時間、クランプ/アンクランプ待ち時間、Z軸外回り処理、工具交換時間及び付加軸クランプ早送りオーバーラップ処理それぞれに対応する短縮予測時間を円グラフで示してもよい。また工具番号1以外の工具番号について、同様に短縮予測時間を円グラフで示してもよい。
【0102】
図31は、Z軸外回り処理における各工具番号に対応した短縮予測時間を示す円グラフである。
図31に示すように、Z軸外回り処理について、工具番号1~3に対応した短縮予測時間を円グラフで示してもよい。また工具番号1~3以外の工具番号について、同様に短縮予測時間を円グラフで示してもよい。
【0103】
図32は、各項目の短縮予測時間を工具番号毎に示す棒グラフである。
図32に示すように、表示部40はインポジション待ち時間、クランプ/アンクランプ待ち時間、Z軸外回り処理、工具交換時間及び付加軸クランプ早送りオーバーラップ処理を項目として示し、各項目それぞれの短縮予測時間を1本の棒グラフによって表示してもよい。1本の棒グラフにおいて、工具番号毎の短縮予測時間が区別して表示される。
【0104】
図33は、各工具番号の短縮予測時間を項目毎に示す棒グラフである。
図33に示すように、表示部40は工具番号1~3を示し、各工具番号それぞれの短縮予測時間を1本の棒グラフによって表示してもよい。1本の棒グラフにおいて、項目毎の短縮予測時間が区別して表示される。項目は、インポジション待ち時間、クランプ/アンクランプ待ち時間、Z軸外回り処理、工具交換時間及び付加軸クランプ早送りオーバーラップ処理である。また表示部40は1~3以外の工具番号について、同様に棒グラフで表示してもよい。
【0105】
なお制御部4aはタップ時間S9又は高速タップ時間S10を表示部40に出力し、表示部40に表示させてもよい。また制御部4aはタップ動作処理における短縮予測時間として、タップ時間S9と高速タップ時間S10との差分を表示部40に出力し、表示部40に表示させてもよい。また制御部4aは主軸回転待ち時間S5又は主軸停止待ち時間S6を表示部40に出力し、表示部40に表示させてもよい。また制御部4aは旋回ピッチ数P又はATC領域内動作時間S7を表示部40に出力し、表示部40に表示させてもよい。また制御部4aは第1オーバーラップ対象動作数L1又は第2オーバーラップ対象動作数L2を表示部40に出力し、表示部40に表示させてもよい。また制御部4aはスキップ信号待ち時間を表示部40に表示してもよい。また制御部4aは、タップ時間S9、高速タップ時間S10、主軸回転待ち時間S5、主軸停止待ち時間S6、旋回ピッチ数P、ATC領域内動作時間S7、第1オーバーラップ対象動作数L1、第2オーバーラップ対象動作数L2又はスキップ信号待ち時間と共に、切削時間及び被切削時間を表示部40に出力し、表示部40に表示させてもよく、
図25~
図33の表又はグラフに切削時間及び被切削時間を追加して、表示部40に表示させてもよい。
【0106】
実施の形態2に係る工作機械にあっては、主軸に工具が装着されてから工具交換が行われるまでの間に、時間短縮可能且つ実行可能な時短可能処理の存否を判定し、時短可能処理が存在すると判定した場合、工具に紐づけて時短可能処理に関する情報、例えば「外回り実施回数N1」、「外回り可能回数N2」、「主軸回転待ち時間S5」、「主軸停止待ち時間S6」、「旋回ピッチ数P」、「ATC領域内動作時間S7」、「第1オーバーラップ対象動作数L1」、「第2オーバーラップ対象動作数L2」、「タップ時間S9」、「高速タップ時間S10」、「スキップ信号待ち時間」を取得する。取得した情報に基づく情報、例えば取得した情報に基づいて演算された短縮予測時間を、例えば表示部40に出力し、時間短縮可能な処理をユーザに認識させることができる。
【0107】
また複数の時短可能処理それぞれの情報を統合して表示するための信号を出力し、複数の時短可能処理それぞれの情報を統合して、例えば表示部40に
図26~
図28に示す表、円グラフ又はパレート図を表示する。
【0108】
また第一の工具に紐づけた時短可能処理に関する情報と、第二の工具に紐づけた時短可能処理に関する情報とを統合して表示するための信号を出力し、第一の工具に紐づけた時短可能処理に関する情報と、第二の工具に紐づけた時短可能処理に関する情報とを統合して、例えば表示部40に
図25の工具交換装置旋回/工具交換処理に関する情報43、
図29の表、
図30の円グラフ、
図32及び
図33の棒グラフを表示する。
【0109】
また例えばZ軸外回り処理において、最大速度で目標位置とは異なる位置まで処理対象の移動を行った後、前記最大速度よりも小さい速度で前記目標位置まで前記処理対象の移動を行うことによって、処理対象の目標位置までの移動時間を短縮することができる。また例えば付加軸クランプ早送りオーバーラップ処理において、A軸モータ125のクランプが完了する前に前記処理対象の移動を開始することによって、処理対象の目標位置までの移動時間を短縮することができる。
【0110】
なおコンピュータプログラムは、単一のコンピュータ上で、または1つのサイトに配置されるか、若しくは複数のサイトにわたって分散され、通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行されるように展開することができる。
【0111】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。各実施形態に記載した事項は相互に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載してもよい。
【符号の説明】
【0112】
4 制御装置
4a 制御部
4b RAM
4c 記憶部
22d Y軸モータ
26d X軸モータ
30d Z軸モータ
40 表示部
79 C軸モータ
100 工作機械
125 A軸モータ