(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108921
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】積層体、積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/28 20060101AFI20240805BHJP
B32B 3/18 20060101ALI20240805BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20240805BHJP
B32B 15/04 20060101ALI20240805BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20240805BHJP
B32B 27/06 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
H05K3/28 B
B32B3/18
B32B7/12
B32B15/04 A
B32B7/027
B32B27/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013571
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217836
【弁理士】
【氏名又は名称】合田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】森戸 秀
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】西田 知則
【テーマコード(参考)】
4F100
5E314
【Fターム(参考)】
4F100AB24B
4F100AK01D
4F100AR00A
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4F100JL11C
4F100JL11E
4F100YY00D
5E314AA25
5E314AA32
5E314AA33
5E314AA34
5E314BB01
5E314CC01
5E314EE01
5E314FF05
5E314GG01
(57)【要約】
【課題】配線を有する積層体において、ハードコート層の厚みを均一に近づけて、配線を適切に保護する。
【解決手段】積層体10は、基材11と、配線13と、接着層16と、ハードコート層17と、を積層方向D1にこの順で備える。積層方向D1において、ハードコート層17の厚みと接着層16の厚みとの和は、配線13の厚みより大きい。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、配線と、接着層と、ハードコート層と、を積層方向にこの順で備える積層体であって、
前記ハードコート層の厚みと前記接着層の厚みとの和は、前記配線の厚みより大きい、積層体。
【請求項2】
前記接着層の厚みは、前記配線の厚みより大きい、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記ハードコート層の厚みは、前記接着層の厚みより大きい、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記配線と前記ハードコート層との間の前記積層方向に沿った長さは、前記配線と前記ハードコート層との間の最小の長さの2倍より小さい、請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
前記配線に直交する断面において、前記配線の幅に対する前記配線の間隔の比は、0.3以上10以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
前記配線は、銀からなる、請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
前記基材の融点は、前記接着層の融点より大きい、請求項1に記載の積層体。
【請求項8】
前記ハードコート層は、電子線硬化型樹脂組成物の硬化物からなる、請求項1に記載の積層体。
【請求項9】
前記ハードコート層の鉛筆硬度は、HB以上である、請求項1に記載の積層体。
【請求項10】
前記ハードコート層のテーバー摩耗試験の前後でのヘイズ値の差は、5.5%以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項11】
前記接着層と前記配線との間に配置された第2接着層をさらに備える、請求項1に記載の積層体。
【請求項12】
前記配線と前記基材との間に配置された導電膜をさらに備える、請求項1に記載の積層体。
【請求項13】
基材と配線と積層して第1部材を作製する工程と、
第2基材とハードコート層と接着層とをこの順で積層して第2部材を作製する工程と、
前記基材の前記配線が設けられた面と前記第2基材の前記接着層が設けられた面とを対向させた状態で、前記第1部材と前記第2部材とを積層する工程と、
前記第2基材を前記ハードコート層から剥離する工程と、を備える、積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層体及び積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2に記載されているような、配線を有する積層体が知られている。配線に電圧を印加することで、積層体がヒータやタッチパネルセンサ等として機能する。高い導電性を発揮できるよう、配線は、銀からなることが多い。
【0003】
銀からなる配線は、空気や水蒸気等によって酸化や硫化しやすい。配線が酸化や硫化すると、意図せずに抵抗が増えて、配線が適切に機能しなくなることがある。空気や水蒸気等から配線を保護するために、積層体は、配線を覆うハードコート層を有する。ハードコート層により、空気や水蒸気等による配線の酸化や硫化を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-288102号公報
【特許文献2】特開2015-156260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図6に示すように、積層体の断面において、配線によりハードコート層が薄くなる部分が生じ得る。ハードコート層が薄くなっている部分では、空気や水蒸気等から配線を適切に保護することが困難になる。配線を適切に保護するために、十分な厚みのハードコート層を均一に設けることが求められている。本開示は、配線を有する積層体において、ハードコート層の厚みを均一に近づけて、配線を適切に保護することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施の形態は、以下の[1]乃至[13]に関する。
[1]
基材と、配線と、接着層と、ハードコート層と、を積層方向にこの順で備える積層体であって、
前記ハードコート層の厚みと前記接着層の厚みとの和は、前記配線の厚みより大きい、積層体。
[2]
前記接着層の厚みは、前記配線の厚みより大きい、[1]に記載の積層体。
[3]
前記ハードコート層の厚みは、前記接着層の厚みより大きい、[1]または[2]に記載の積層体。
[4]
前記配線と前記ハードコート層との間の前記積層方向に沿った長さは、前記配線と前記ハードコート層との間の最小の長さの2倍より小さい、[1]乃至[3]のいずれかに記載の積層体。
[5]
前記配線に直交する断面において、前記配線の幅に対する前記配線の間隔の比は、0.3以上10以下である、[1]乃至[4]のいずれかに記載の積層体。
[6]
前記配線は、銀からなる、[1]乃至[5]のいずれかに記載の積層体。
[7]
前記基材の融点は、前記接着層の融点より大きい、[1]乃至[6]のいずれかに記載の積層体。
[8]
前記ハードコート層は、電子線硬化型樹脂組成物の硬化物からなる、[1]乃至[7]のいずれかに記載の積層体。
[9]
前記ハードコート層の鉛筆硬度は、HB以上である、[1]乃至[8]のいずれかに記載の積層体。
[10]
前記ハードコート層のテーバー摩耗試験の前後でのヘイズ値の差は、5.5%以下である、[1]乃至[9]のいずれかに記載の積層体。
[11]
前記接着層と前記配線との間に配置された第2接着層をさらに備える、[1]乃至[10]のいずれかに記載の積層体。
[12]
前記配線と前記基材との間に配置された導電膜をさらに備える、[1]乃至[11]のいずれかに記載の積層体。
[13]
基材と配線とを積層して第1部材を作製する工程と、
第2基材とハードコート層と接着層とをこの順で積層して第2部材を作製する工程と、
前記基材の前記配線が設けられた面と前記第2基材の前記接着層が設けられた面とを対向させた状態で、前記第1部材と前記第2部材とを積層する工程と、
前記第2基材を前記ハードコート層から剥離する工程と、を備える、積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、配線を有する積層体において、ハードコート層の厚みを均一に近づけて、配線を適切に保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図2は、
図1のII-II線に沿った積層体の断面図である。
【
図3】
図3は、
図1のIII-III線に沿った積層体の断面図である。
【
図4】
図4は、
図3の積層体の断面図における配線の近傍を拡大して示す図である。
【
図6】
図6は、従来の積層体の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して本開示の一実施の形態について説明する。本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさのため、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張している場合がある。
【0010】
本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈される。
【0011】
方向の関係を図面間で明確にするため、いくつかの図面には、共通する符号を付した矢印により方向を示している。図面の紙面に垂直な方向に沿って紙面から手前に向かう方向は、例えば
図1に示すように、円の中に点を設けた記号により示される。
【0012】
図1は、本開示の積層体の一例を示す正面図である。積層体10は、配線13を有している。配線13を図示しない電源等に接続して電圧を加えることで、積層体10は、例えばヒータやタッチパネル等として機能する。積層体10は、板状の部材である。積層体10の厚みは、例えば0.1mm以上1mm以下、好ましくは0.2mm以上0.6mm以下である。積層体10は、例えば1辺の長さが10cm以上50cm以下、好ましくは20cm以上40cm以下の矩形である。積層体10は、後述する配線被覆部15が設けられた部分を除いて、全体として透明である。
【0013】
本明細書において、透明とは、可視光透過率が、40%以上、70%以上、80%以上または90%以上であることを意味する。可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV-3100PC」、JIS K0115準拠品)を用いて測定波長380nm以上780nm以下の範囲内で1nm毎に測定したときの、各波長における全光線透過率の平均値として特定される。可視光透過率の測定時における入射角は、特に透過方向が定められていない場合、0°とする。入射角は、入射面への法線方向に対して入射光の進行方向がなす角度であり、90°未満の値となる。
【0014】
図2は、
図1のII-II線に沿った積層体10の断面図である。
図3は、
図1のIII-III線に沿った積層体10の断面図である。
図2及び
図3に示されているように、積層体10は、基材11と、導電膜12と、配線13と、第2接着層14と、接着層16と、ハードコート層17と、を積層方向D1にこの順で有している。積層方向D1とは、積層体10の各構成要素が積層される方向であり、積層体10の厚み方向と一致する。
図1及び
図2に示されている例では、積層体10は、その周縁の近傍において、導電膜12、第2接着層14及び接着層16を有していない。積層体10の周縁の近傍において、基材11に配線13が接している。
図1及び
図2に示されている例では、積層体10は、その周縁の近傍において、配線13を覆う配線被覆部15をさらに有している。図示されている例に限らず、積層体10が発揮する機能に応じて、導電膜12及び第2接着層14は、省略されていてもよい。
【0015】
基材11は、積層体10の他の構成要素を支持する。基材11は、透明な板状部材である。基材11は、積層体10の各構成要素を支持し、且つ積層体10が厚くなりすぎないような適切な厚みを有している。基材11の厚みは、例えば30μm以上500μm以下、好ましくは50μm以上300μm以下である。基材11は、耐熱性が高いことが好ましい。基材11の融点は、例えば200℃以上600℃以下である。基材11の材料は、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド等である。
【0016】
本明細書において、厚みは、厚みを測定する部材の積層方向D1に沿った長さを不規則に10箇所測定し、その平均によって特定される。
【0017】
導電膜12は、配線13を介して電圧を加えられることができる。導電膜12は、電圧を加えられることで発熱したり、外部導体の接近によって電圧が変化したりする。導電膜12により、積層体10は、例えばヒータやタッチパネルセンサとして機能できる。導電膜12は、基材11と配線13との間に配置されている。導電膜12は、基材11上の一部の範囲に設けられている。
図1に示されている例では、導電膜12は、基材11の周縁の近傍を除く範囲に設けられている。導電膜12は、薄膜状である。導電膜12は、適切な導電性を発揮し、且つ積層体10が厚くなりすぎないような適切な厚みを有している。導電膜12の厚みは、例えば0.05μm以上2μm以下、好ましくは0.08μm以上1.5μm以下である。導電膜12は、透明である。導電膜12の材料は、例えば酸化インジウムスズ(ITO)、銀ナノワイヤ、ポリチオフェンである。導電膜12は、銅からなるメッシュを含む膜であってもよい。
【0018】
配線13は、導電膜12に図示しない電源からの電圧を加える。配線13は、導電膜12上を線状に延びている。
図1に示されている例では、配線13は1本であるが、複数の配線13が配列されていてもよい。配線13は、積層体10の周縁の近傍の一部において図示しない電源に接続するために、ハードコート層17から露出している。配線13は、高い導電性を有し、且つ積層体10が厚くなりすぎないような適切な厚みを有している。配線13の厚みは、例えば1μm以上30μm以下、好ましくは3μm以上15μm以下である。配線13は、例えば銀からなる。
【0019】
図3に示されているように、積層方向D1での断面であって配線13に直交する断面において、配線13の間隔S、言い換えると隣り合う配線13の間の長さは、配線13の幅Wより十分に大きくなっている。配線13の幅Wに対する配線の間隔Sの比は、0.3以上、好ましくは0.5以上である。配線13を適切に配置できるよう、配線13の幅Wに対する配線13の間隔Sの比は、10以下、好ましくは5以下である。
【0020】
第2接着層14は、接着層16と配線13とを適切に接着させる。第2接着層14は、接着層16と配線13との間に配置されている。第2接着層14は、接着層16と配線13と間の隙間を埋める。第2接着層14は、透明である。第2接着層14は、適切な接着性を発揮し、且つ積層体10が厚くなりすぎないような適切な厚みを有している。第2接着層14の厚みは、例えば1μm以上30μm以下、好ましくは2μm以上10μm以下である。
【0021】
図4には、
図3の積層体10の断面図を拡大した図が示されている。
図4に示されているように、第2接着層14は、粘着層14aと、第2プライマー層14bと、を含んでいる。粘着層14aは、第2接着層14が接着層16と配線13とを適切に接着させるための層である。粘着層14aは、いわゆるOCA(Optical Clear Adhesive)である。粘着層14aは、ヒートシール材料からなってもよい。粘着層14aの厚みは、例えば1μm以上20μm以下、好ましくは2μm以上10μm以下である。粘着層14aの材料は、例えば、アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ゴム弾ポリマーである。第2プライマー層14bは、粘着層14aと導電膜12及び配線13との密着性を向上させる。第2プライマー層14bの厚みは、例えば1μm以上20μm以下、好ましくは2μm以上10μm以下である。第2プライマー層14bは、例えばウレタン樹脂からなる。
【0022】
配線被覆部15は、積層体10の周縁の近傍において、ハードコート層17から露出した配線13を保護する。配線被覆部15は、積層体10の周縁の近傍において配線13を覆っている。配線被覆部15は、導電性を有する。配線被覆部15は、例えばカーボン材料からなる。配線被覆部15は、図示しない外部の電源に接続している。配線被覆部15を介して、配線13は外部の電源に接続する。
【0023】
接着層16は、第2接着層14とハードコート層17とを適切に接着させる。接着層16は、透明である。接着層16は、適切な接着性を発揮し、且つ積層体10が厚くなりすぎないような適切な厚みを有している。接着層16の厚みは、例えば1μm以上30μm以下、好ましくは5μm以上15μm以下である。
【0024】
図4に示されるように、接着層16は、ヒートシール層16aと、プライマー層16bと、を含んでいる。ヒートシール層16aは、接着層16が第2接着層14とハードコート層17とを適切に接着させるための層である。ヒートシール層16aは、常温では接着性を有さないが、加熱されることで接着性を呈して他の部材と接着することが可能になる。ヒートシール層16aは、例えば塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂を含んでもよい。ヒートシール層16aの厚みは、例えば1μm以上15μm以下、好ましくは2.5μm以上7.5μm以下である。プライマー層16bは、ヒートシール層16aとハードコート層17との密着性を向上させる。プライマー層16bの厚みは、例えば1μm以上15μm以下、好ましくは2.5μm以上7.5μm以下である。プライマー層16bは、例えばウレタン樹脂からなる。
【0025】
接着層16の融点は、例えば50℃以上200℃以下である。基材11の融点は、接着層16の融点より高くなっている。
【0026】
ハードコート層17は、積層体10の各構成要素、特に配線13を保護する。ハードコート層17は、積層体10の表面をなす。ハードコート層17は、透明である。ハードコート層17は、積層体10の各構成要素を保護し、且つ積層体10が厚くなりすぎないような適切な厚みを有している。特に、ハードコート層17は、空気や水蒸気等が配線13に接触しにくくする。ハードコート層17により、空気や水蒸気等による配線13の酸化や硫化を抑制できる。ハードコート層17の厚みは、例えば3μm以上40μm以下、好ましくは7μm以上30μm以下である。ハードコート層17の材料は、例えばポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、尿素樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、電子線硬化型樹脂等の組成物である。耐候性や耐傷性の観点から、ハードコート層17は、電子線硬化型樹脂組成物の硬化物からなることが好ましい。
【0027】
ハードコート層17は、高い耐傷性を有している。ハードコート層17の鉛筆硬度は、HB以上であることが好ましく、H以上であることがより好ましい。鉛筆硬度は、JIS K 600-5-4(1994)で規定される鉛筆硬度試験によって測定できる。ハードコート層17のテーバー摩耗試験の前後でのヘイズ値の差は、5.5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましい。テーバー摩耗試験は、JIS K7105にしたがって摩耗輪CS-10F、荷重500g、回転数500回転の条件にて行う。ヘイズ値は、ヘイズメータ(村上色彩技術研究所製、製品番号:HM-150、JIS K7361-1、K7136準拠品)によって測定される。
【0028】
図4に示されているように、ハードコート層17の厚みT17と接着層16の厚みT16との和は、配線13の厚みT13より大きい。これにより、配線13は、ハードコート層17及び接着層16に埋め込まれることができる。接着層16の厚みT13は、配線13の厚みT13より大きい。これにより、配線13が接着層16に埋め込まれることができる。ハードコート層17は、ほとんど変形することなく、接着層16に積層される。ハードコート層17の厚みT17は、接着層16の厚みT16より大きい。これにより、十分な厚みのハードコート層17を設けることができる。
【0029】
配線13とハードコート層17との間の積層方向D1に沿った長さX1は、配線13とハードコート層17との間の最小の長さX2の2倍より小さい。配線13とハードコート層17との間の長さの変化が小さい。
図4に示された例では、配線13とハードコート層17との間の積層方向D1に沿った長さは、配線13とハードコート層17との間における接着層16の厚み及び第2接着層14の厚みの和である。
【0030】
積層体10の製造方法の一例を説明する。積層体10の製造方法は、基材11及び配線13を有する第1部材50を作製する工程と、第2基材18、接着層16及びハードコート層17を有する第2部材60を作製する工程と、第1部材50及び第2部材60を積層する工程と、第2基材18を剥離する工程と、を含む。
【0031】
基材11と、導電膜12と、配線13と、第2プライマー層14bと、粘着層14aと、をこの順で積層する。導電膜12は、例えばスパッタリング等により基材11上に成膜される。基材11に導電膜12を介して配線13を配置する。導電膜12が省略される場合、基材11に直接配線13が配置されてもよい。配線13は、例えばスクリーン印刷によって形成される。導電膜12及び配線13を覆うように、第2プライマー層14bを設ける。導電膜12及び配線13と第2プライマー層14bとの間に空気等が入らないよう、第2プライマー層14bは導電膜12及び配線13に沿って設けられる。第2プライマー層14bは、例えば導電膜12及び配線13にコーティングすることで設けられる。第2プライマー層14bに重ねて、粘着層14aを設ける。粘着層14aは、第2プライマー層14bに塗布されることで設けられる。粘着層14a及び第2プライマー層14bが、第2接着層14となる。導電膜12及び配線13は、第2接着層14に覆われる。以上の工程で、第1部材50が作製される。
【0032】
第2基材18と、ハードコート層17と、プライマー層16bと、ヒートシール層16aと、をこの順で積層する。第2基材18は、第2部材60の各構成要素を支持する部材である。ハードコート層17は、例えば第2基材18にコーティングすることで設けられる。第2基材18とハードコート層17との間には、剥離層が設けられていてもよい。ハードコート層17に、プライマー層16bを設ける。プライマー層16bは、例えばハードコート層17にコーティングすることで設けられる。プライマー層16bにヒートシール層16aを設ける。ヒートシール層16aは、例えばプライマー層16bにコーティングすることで設けられる。ヒートシール層16aとプライマー層16bとが、接着層16となる。以上の工程で、第2部材60が作製される。
【0033】
図5に示すように、基材11の配線13が設けられた面と第2基材18の接着層16が設けられた面とを対向させた状態で、第1部材50と第2部材60とを積層させる。第1部材50と第2部材60とは、例えば2つのロールの間に挟まれることで加圧されながら積層される。この状態で、第1部材50及び第2部材60を加熱する。ヒートシール層16aが接着性を呈して、ハードコート層17と第2接着層14とを接着する。
【0034】
ハードコート層17から第2基材18を剥離する。第2基材18は、例えばロールに巻き取られる。第2基材18は、ハードコート層17と第2基材18との間に設けられた剥離層によって、剥離層ごとハードコート層17から剥離されてもよい。ハードコート層17が第2部材60から第1部材50に転写される。以上の工程で、積層体10が製造される。
【0035】
図6に示されている従来の積層体110では、ハードコート層117は、導電膜112及び配線113を覆うようにコーティングすることで設けられている。
図6に示すように、コーティングによって設けたハードコート層117は、配線113の側部の近くで薄くなっている部分X110が生じる。ハードコート層117が薄くなっている部分X110では、配線113を適切に保護できない。配線113が水蒸気や空気によって酸化や硫化し得る。酸化や硫化した配線113は、適切に機能しなくなる。
【0036】
ハードコート層117が薄くなっている部分X110は、ハードコート層117、導電膜112及び配線113の濡れ性に依存する。導電膜112及び配線113の濡れ性によってハードコート層117の材料を決定することは、発揮すべき性能によってハードコート層117の材料を決定することを阻害する。
【0037】
本実施の形態の積層体10では、ハードコート層17の厚みT17と接着層16の厚みT16との和は、配線13の厚みT13より大きい。配線13は、ハードコート層17及び接着層16に埋め込まれることができる。配線13に接する接着層16が変形することで、ハードコート層17は大きく変形しない。ハードコート層17の厚みが均一に近づく。ハードコート層17によって空気や水蒸気から配線13を適切に保護できる。
【0038】
接着層16の厚みT16は、配線13の厚みT13より大きい。配線13は、接着層16に埋め込まれることができる。配線13に接する接着層16が変形することで、ハードコート層17がほとんど変形しない。ハードコート層17の厚みがより均一に近づく。ハードコート層17によって空気や水蒸気から配線13をより適切に保護できる。
【0039】
ハードコート層17の厚みT17は、接着層16の厚みより大きい。ハードコート層17が十分な厚みを有している。十分に厚いハードコート層17は、厚みが均一になりやすい。ハードコート層17によって空気や水蒸気から配線13をより適切に保護できる。
【0040】
配線13とハードコート層17との間の積層方向D1に沿った長さX1は、配線13とハードコート層17との間の最小の長さX2の2倍より小さい。配線13とハードコート層17との間の長さの変化が小さい。配線13とハードコート層17との間の長さが小さすぎる部分が生じていない。配線13の濡れ性によらず、接着層16を介してハードコート層17を配線13に適切に接着できる。ハードコート層17によって空気や水蒸気から配線13をより適切に保護できる。
【0041】
配線13に直交する断面において、配線13の幅Wに対する配線13の間隔Sの比は、0.3以上10以下である。配線13の間隔Sが配線13の幅Wに対して大きすぎないため、配線13を適切に配置できる。配線13の間隔が配線13の幅Wに対して十分に大きいため、配線13の間に接着層16が入り込むことができる。配線13の間に空気や水蒸気が入り込みにくい。空気や水蒸気から配線13をより適切に保護できる。
【0042】
配線13は、銀からなる。銀からなる配線13は、酸化や硫化によって、機能が劣化しやすい。本実施の形態の積層体10による空気や水蒸気から配線13を保護する効果が、より有効に奏される。
【0043】
基材11の融点は、接着層16の融点より大きい。積層体10の製造工程において、第1部材50及び第2部材60を加熱して接着層16のヒートシール層16aがハードコート層17と第2接着層14とを接着する際に、基材11は変形しにくい。積層体10を所望の形状に製造しやすくなる。
【0044】
ハードコート層17は、電子線硬化樹脂からなる。ハードコート層17を耐候性や耐傷性に優れたものにできる。ハードコート層17によって、空気や水蒸気から配線13をより適切に保護できる。
【0045】
ハードコート層17の鉛筆硬度は、HB以上である。ハードコート層17が十分な耐傷性を有している。ハードコート層17によって、空気や水蒸気から配線13をより適切に保護できる。
【0046】
ハードコート層17のテーバー摩耗試験の前後でのヘイズ値の差は、5.5%以下である。ハードコート層17が十分な耐傷性を有している。ハードコート層17によって、空気や水蒸気から配線13をより適切に保護できる。
【0047】
積層体10の製造方法は、配線13を有する第1部材50とハードコート層17を有する第2部材60とを積層する工程を含む。ハードコート層17は、配線13に対してコーティングされることではなく転写されることによって設けられている。第1部材50と第2部材60とを積層する際に接着層16が配線13を覆うように変形するので、ハードコート層17はほとんど変形することなく、接着層16を介して配線13を保護できる。ハードコート層17の厚みが均一に近い状態で設けられやすい。ハードコート層17によって空気や水蒸気から配線13を適切に保護できる。
【0048】
本実施の形態の積層体10は、基材11と、配線13と、接着層16と、ハードコート層17と、を積層方向D1にこの順で備え、ハードコート層17の厚みT17と接着層16の厚みT16との和は、配線13の厚みT13より大きい。積層体10によれば、配線13は、ハードコート層17及び接着層16に埋め込まれることができる。配線13に接する接着層16が変形することで、ハードコート層17は大きく変形しない。ハードコート層17の厚みが均一に近づく。ハードコート層17によって空気や水蒸気から配線13を適切に保護できる。
【0049】
具体例を参照しながら一実施の形態を説明してきたが、上述の具体例が一実施の形態を限定しない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施でき、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、追加等を行うことができる。
【符号の説明】
【0050】
10 積層体
11 基材
12 導電膜
13 配線
14 第2接着層
14a 粘着層
14b 第2プライマー層
16 接着層
16a ヒートシール層
16b プライマー層
17 ハードコート層
18 第2基材
50 第1部材
60 第2部材
D1 積層方向