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  • 特開-万年筆用ペン芯 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108924
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】万年筆用ペン芯
(51)【国際特許分類】
   B43K 1/02 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
B43K1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013574
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 光樹
【テーマコード(参考)】
2C350
【Fターム(参考)】
2C350GA01
2C350HA01
2C350KC19
(57)【要約】
【課題】吸入パイプを用いて空気溝からインキを補給する際に、効率よくインキをインキタンクへと送り込むことができる万年筆用ペン芯を提供する。
【解決手段】本発明のペン芯7は、ペン体6が装着される上側面711にインキ溝73が形成されるとともに、その前端面74から後端面75に亘って空気溝76が形成されており、インキを万年筆1に補給する際に空気溝76に吸入パイプ(管状体)10の端部を挿着させる万年筆用ペン芯である。ペン芯7は、後端面75に形成された開口751からインキ溝73へと連通する流体流通路77と、流体流通路77を開閉自在に閉塞する閉塞手段と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペン体が装着される上側面にインキ溝が形成されるとともに、その前端面から後端面に亘って空気溝が形成されており、インキを万年筆に補給する際に前記空気溝に管状体の端部を挿着させる万年筆用ペン芯であって、
前記後端面に形成された開口から前記インキ溝へと連通する流体流通路と、
前記流体流通路を開閉自在に閉塞する閉塞手段とを備える、万年筆用ペン芯。
【請求項2】
前記管状体の端部が前記空気溝に挿着されることに応じて、前記閉塞手段が前記流体流通路を閉塞するように構成されている、請求項1に記載の万年筆用ペン芯。
【請求項3】
前記インキ溝が形成された外芯部と、
該外芯部の内部空間内に配置された内芯部とを有し、
前記流体流通路が、前記外芯部に形成された第1流通路と、前記内芯部に形成された第2流通路とから構成され、
前記管状体の端部が前記空気溝に挿着されると、前記閉塞手段が、前記第1流通路と前記第2流通路との連通状態を解消する、請求項1又は2に記載の万年筆用ペン芯。
【請求項4】
前記第1流通路と前記第2流通路との間に、前記空気溝に接続された嵌合空間を有し、
前記空気溝から挿入された前記管状体の端部が前記嵌合空間に嵌合することによって、前記第1流通路と前記第2流通路との連通状態が解消される、請求項3に記載の万年筆用ペン芯。
【請求項5】
前記内芯部が前記外芯部の内部空間内を移動可能に構成されており、
前記空気溝から挿入された前記管状体の端部を前記内芯部に当接させ、前記管状体が前記内芯部を移動させることによって、前記第1流通路と前記第2流通路との連通状態が解消される、請求項3に記載の万年筆用ペン芯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、万年筆用ペン芯に関する。
【背景技術】
【0002】
万年筆等の筆記具用インキを収容したインキ瓶は、一般に硬質のガラスで形成されている。例えば万年筆に筆記具用インキを補給するには、万年筆のペン先部をインキ瓶の口から瓶内に挿し込み、筆記具用インキを吸入して補給するが、インキ瓶内のインキが少なくなると、万年筆でうまく吸入することができず、利用できないインキが残ってしまうという問題や、万年筆のペン先を瓶の底面や内壁面に当ててしまい、ペン先を破損してしまうという問題がある。
【0003】
そのような問題を解決するために、インキ瓶の内部にアダプタを配置したものが知られている。例えば、特許文献1には、万年筆のペン先が差し込まれるペン先差し込み部を有し、瓶内に残り少なくなったインキをペン先差し込み部に導いて万年筆で吸引可能にするアダプタ(インキリザーバー)が開示されている。
【0004】
一方、インキ瓶の内部に先述のアダプタを配置した場合、インキを吸入する際には、万年筆のペン先部をアダプタの内部に挿し込み、そのペン先部をアダプタの底部に溜まったインキに浸ける必要がある。そのとき、当然ながらペン先部はインキで汚れてしまうし、また、アダプタ内壁に付着したインキで万年筆の首部や胴部の周面も汚れてしまうという問題があった。
【0005】
そのような問題を解決するために、例えば、特許文献2には、先述のアダプタをインキ瓶の内部に設ける代わりに、容器の口を閉塞する蓋体に管状の吸入パイプを保持させ、当該吸入パイプの下端部を容器内のインキに浸け、上端部を万年筆のペン芯の空気溝(空気穴)に挿着させることで、ペン先部を汚さずに、インキ瓶内のインキを万年筆のインキタンク内へ補給することができるインキ用容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-037085号公報
【特許文献2】特開2018-140527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、一般に万年筆は、筆記時にインキタンク内のインキがインキ溝から引き出されるのと交換に、インキタンクに空気を取り込むための空気溝(空気穴)を有する構造となっている。そのため、特許文献2に開示されているように、吸入パイプを万年筆の空気溝に挿着させてインキ瓶内のインキを万年筆のインキタンク内へ補給する場合、空気溝からインキタンクへとインキが取り込まれる一方で、万年筆のペン先部がインキ瓶内のインキに浸からないため、インキ溝からインキタンクへと空気が流入してしまい、効率よくインキをインキタンクへと補給することができないという問題があった。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、吸入パイプを用いて空気溝からインキを補給する際に、効率よくインキをインキタンクへと送り込むことができる万年筆用ペン芯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、ペン体が装着される上側面にインキ溝が形成されるとともに、その前端面から後端面に亘って空気溝が形成されており、インキを万年筆に補給する際に前記空気溝に管状体の端部を挿着させる万年筆用ペン芯であって、前記後端面に形成された開口から前記インキ溝へと連通する流体流通路と、前記流体流通路を開閉自在に閉塞する閉塞手段とを備える、万年筆用ペン芯を提供する(発明1)。
【0010】
かかる発明(発明1)によれば、インキ溝から万年筆のインキタンクへと連通する流体流通路を閉塞手段によって閉塞することで、インキ溝からインキタンクへと空気が流入する経路を遮断することができるので、吸入パイプを用いて空気溝からインキを補給する際に、インキ溝からインキタンクへと空気が流入することを防ぐことができ、効率よくインキをインキタンクへと送り込むことができる。
【0011】
上記発明(発明1)においては、前記管状体の端部が前記空気溝に挿着されることに応じて、前記閉塞手段が前記流体流通路を閉塞するように構成されていることが好ましい(発明2)。
【0012】
上記発明(発明1,2)においては、前記インキ溝が形成された外芯部と、該外芯部の内部空間内に配置された内芯部とを有し、前記流体流通路が、前記外芯部に形成された第1流通路と、前記内芯部に形成された第2流通路とから構成され、前記管状体の端部が前記空気溝に挿着されると、前記閉塞手段が、前記第1流通路と前記第2流通路との連通状態を解消するようにしてもよい(発明3)。なお、外芯部と内芯部とが別の部材である必要はなく、外芯部と内芯部とが一体に形成されているものであってもよい。
【0013】
上記発明(発明3)においては、前記第1流通路と前記第2流通路との間に、前記空気溝に接続された嵌合空間を有し、前記空気溝から挿入された前記管状体の端部が前記嵌合空間に嵌合することによって、前記第1流通路と前記第2流通路との連通状態が解消されるようにしてもよく(発明4)、また、前記内芯部が前記外芯部の内部空間内を移動可能に構成されており、前記空気溝から挿入された前記管状体の端部を前記内芯部に当接させ、前記管状体が前記内芯部を移動させることによって、前記第1流通路と前記第2流通路との連通状態が解消されるようにしてもよい(発明5)。
【発明の効果】
【0014】
本発明の万年筆用ペン芯は、吸入パイプを用いて空気溝からインキを補給する際に、効率よくインキをインキタンクへと送り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るペン芯を有する万年筆の全体構造を示す説明図である。
図2】第1実施形態に係るペン芯の内部構造を示す説明図である。
図3】同実施形態に係るペン芯に管状体を挿着した状態を示す説明図である。
図4】第2実施形態に係るペン芯の内部構造を示す説明図である。
図5】同実施形態に係るペン芯に管状体を挿着した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態にのみ限定されるものではなく、実施形態はあくまでも本発明の技術的特徴を説明するために記載された例示にすぎない。また、各図面に示す形状や寸法はあくまでも本発明の内容の理解を容易にするために示したものであり、実際の形状や寸法を正しく反映したものではない。
【0017】
本明細書においては、「前方」、「前側」とは、万年筆9の軸方向に沿う方向であって、万年筆9のペン体6がある側に向かう方向を意味する。「後方」、「後ろ側」とは、万年筆9の軸方向に沿う方向であって、上記前方や前側と反対の方向を意味する。また、「前端」とは、任意の部材または部位における前側の端部、「後端」とは、任意の部材または部位における後ろ側の端部をそれぞれ示す。さらに、「前端部」とは、任意の部材または部位において、その前端を含み上記前端から後端側に向かって上記部材等の中途まで延びる部位を指し、「後端部」とは、任意の部材または部位において、その後端を含みこの後端から前端側に向かって上記部材等の中途まで延びる部位を指す。なお、図1-5においては、図示左側が「前端側」であり、図示右側が「後端側」である。
【0018】
<第1実施形態>
図1は本発明の一実施形態に係るペン芯を有する万年筆9の全体構造を示す説明図である。万年筆1は、軸筒2を、首部材3と軸筒本体4と尾冠5とで構成し、首部材3に形成した前方開口部31に、ペン体6と、ペン体6を上側面に隣設させたペン芯7とを挿着してある。首部材3の後端部には、外筒部32と内筒部33とが突設されており、内筒部33の内方にはペン芯7の後端部が挿着され、外筒部32と内筒部33との隙間34には、インキ吸入機構9の前端部が挿着される。
【0019】
インキ吸入機構9は、略円筒形状のインキ収容筒91を備え、当該インキ収容筒91の内部にはインキタンク92が形成されている。インキ吸入機構9には公知の回転式コンバータやプッシュ式コンバータ、板バネ式コンバータ等を用いることができ、ここではその構造の詳細な説明を省略する。
【0020】
図2及び図3は本実施形態に係るペン芯7の断面図である。ペン芯7は、図2に示すように、ペン体6が装着される上側面711にインキ溝73が形成されるとともに、その前端面74から後端面75に亘って空気溝76が形成されており、インキを万年筆1のインキタンク92に補給する際に空気溝76に吸入パイプ(管状体)10の端部を挿着させる万年筆用のペン芯である。ペン芯7は、後端面75に形成された開口77cからインキ溝73へと連通する流体流通路77を備えている。
【0021】
ペン芯7は、インキ溝73が形成された外芯部71と、外芯部71の内部空間内に配置された内芯部72とを有し、流体流通路77は、外芯部71に形成された第1流通路77aと、内芯部72に形成された第2流通路77bとから構成されている。第1流通路77aと第2流通路77bとの間には、空気溝76に接続された嵌合空間が設けられており、後述するように、空気溝76から挿入された管状体(吸入パイプ10)の端部がその嵌合空間に嵌合することによって、第1流通路77aと第2流通路77bとの連通状態が解消されるようになっている。
【0022】
外芯部71は、ペン体6が装着される上側面711にインキ溝73が形成されており、その内部には、前端から後端に亘って、軸方向に沿った貫通孔712が穿設されている。貫通孔712は上述の空気溝76として機能するものであり、貫通孔712は、外芯部71の前側に位置する前側孔712aと、外芯部71の後ろ側に位置する後ろ側孔712bと、前側孔712a及び後ろ側孔712bの間に位置する縮径部712cとを有する。インキ溝73は、貫通孔712に向かって開口した第1流通路77aと連通している。
【0023】
内芯部72は、外芯部71の貫通孔712に挿着されており、貫通孔712の縮径部712cと略同径の前端部72aと、前端部72aよりも外径の大きい本体部72bと備える。前端部72aは、貫通孔712の縮径部712cから前側孔712aへと突出しており、内芯部72の前端部72aの上側面には、外芯部71に形成された第1流通路77aの開口と相対するように第2流通路77bの開口が設けられている。第2流通路77bは、内芯部72の前端部72aから本体部72bまで連設されており、最終的に後端面75に形成された開口77cからペン芯7の外部へと接続する。
【0024】
ここで、内芯部72の前端部72aの外径は、外芯部71の前側孔712aの外径よりも少し小さくなっているため、第1流通路77aの開口と第2流通路77bの開口との間には隙間77dが存在している。また、内芯部72の本体部72bの外径は外芯部71の後ろ側孔712bの内径と等しくなっており、内芯部72は外芯部71の貫通孔712内部に固定されている。一方、内芯部72の本体部72bの外周面に軸方向に溝721を切ることにより、内芯部72と外芯部71との間に空間が形成されており、この空間が空気溝76として機能することになる。
【0025】
ペン芯7は、流体流通路77を開閉自在に閉塞する閉塞手段を有しており、その閉塞手段は次のように実現されている。ペン芯7の貫通孔712(空気溝76)の前端から吸入パイプ(管状体)10の端部を挿し込み、ペン芯7に吸入パイプ10を挿着すると、図3に示すように、その吸入パイプ10の内腔11に内芯部72の前端部72aが嵌合し、吸入パイプ10の端部が前端部72aを覆う状態となる。すなわち、吸入パイプ10の端部が空気溝76に挿着されると、第1流通路77aの開口と第2流通路77bの開口との間の隙間77d(嵌合空間)に吸入パイプ10の端部が嵌合し、これにより第1流通路77aと第2流通路77bとの連通状態が解消される。そして、吸入パイプ10をペン芯7から引き抜けば、第1流通路77aの開口と第2流通路77bの開口との間の隙間77dには何も存在しない状態となるので、第1流通路77aと第2流通路77bとは再び連通することとなる。したがって、本実施形態のペン芯7における閉塞手段は、吸入パイプ10の端部が空気溝76に挿着されるときに吸入パイプ10の端部が嵌合する、第1流通路77aの開口と第2流通路77bの開口との間に形成された隙間77(嵌合空間)であるといえる。
【0026】
以上説明してきたペン芯7によれば、インキ溝73から万年筆1のインキタンク92へと連通する流体流通路77を閉塞手段によって閉塞することで、インキ溝73からインキタンク92へと空気が流入する経路を遮断することができるので、吸入パイプ10を用いて空気溝76からインキを補給する際に、インキ溝73からインキタンク92へと空気が流入することを防ぐことができ、効率よくインキをインキタンクへと送り込むことができる。
【0027】
<第2実施形態>
本実施形態に係るペン芯8は、基本的な構成は上述のペン芯7と同じであるが、流体流通路87を閉塞させる閉塞手段が異なるものである。図4及び図5は本実施形態に係るペン芯8の断面図である。ペン芯8は、図4に示すように、ペン体6が装着される上側面811にインキ溝83が形成されるとともに、その前端面84から後端面85に亘って空気溝86が形成されており、インキを万年筆1のインキタンク92に補給する際に空気溝86に吸入パイプ(管状体)10の端部を挿着させる万年筆用のペン芯である。ペン芯8は、後端面85に形成された開口87cからインキ溝83へと連通する流体流通路87を備えている。
【0028】
ペン芯8は、インキ溝83が形成された外芯部81と、外芯部81の内部空間内に配置された内芯部82とを有し、流体流通路87は、外芯部81に形成された第1流通路87aと、内芯部82に形成された第2流通路87bとから構成されている。内芯部82が外芯部81の内部空間内を移動可能に構成されており、後述するように、空気溝86から挿入された管状体(吸入パイプ10)の端部を内芯部82の前端面に当接させ、吸入パイプ10が内芯部82を移動させることによって、第1流通路87aと第2流通路87bとの連通状態が解消されるようになっている。
【0029】
外芯部81は、ペン体6が装着される上側面811にインキ溝83が形成されており、その内部には、前端から後端に亘って、軸方向に沿った貫通孔812が穿設されている。貫通孔812は上述の空気溝86として機能するものであり、貫通孔812は、外芯部81の前側に位置する前側孔812aと、外芯部81の後ろ側に位置する、前側孔812aよりも内径の大きい後ろ側孔812bとを有する。インキ溝83は、貫通孔812に向かって開口した第1流通路87aと連通している。
【0030】
内芯部82は、外芯部81の貫通孔812の後ろ側孔812bに挿着されており、貫通孔812の後ろ側孔812bの内径と略同じ外径を有する本体部82aと、本体部82aよりも縮径した後端部82bとを備える。後端部82bは、外芯部81の貫通孔812の後端に嵌め込まれた後端部材88の中央部に形成された挿通孔881と略同径となっており、内芯部82が外芯部81の貫通孔812内を移動した場合には、後端部82bが挿通孔881から外部へと突出できるようになっている。
【0031】
内芯部82には、その前端から後端に亘って、空気溝86として機能する連通路821が穿設されており、また、内芯部82の本体部82aの上側面には、外芯部81に形成された第1流通路87aの開口と相対するように第2流通路87bの開口が設けられている。第2流通路87bは、内芯部82の本体部82aから後端部82bまで連設されており、最終的に後端面85に形成された開口87cからペン芯8の外部へと接続する。
【0032】
内芯部82の後端部82bの外周にはコイルばね89が配置されており、コイルばね89の前端は、内芯部82の本体部82aと後端部82bの径に違いによって生じた段差82cに当接し、後端は後端部材88に当接している。このようにコイルばね89を配置することにより、内芯部82が外芯部81の貫通孔812内を後端側に移動すると、コイルばね89が縮み、かつ後端部82bが挿通孔881から外部へと突出する一方で、内芯部82を後端側に移動させようとする力が解除されれば、コイルばね89の付勢力によって、内芯部82は元の位置(すなわち、内芯部82の前端が、外芯部81の貫通孔812の後ろ側孔812bの前端面に当接する位置)まで移動することになる。
【0033】
ペン芯8は、流体流通路87を開閉自在に閉塞する閉塞手段を有しており、その閉塞手段は次のように実現されている。ペン芯8の貫通孔812(空気溝86)の前端から吸入パイプ(管状体)10の端部を挿し込み、ペン芯8に吸入パイプ10を挿着すると、図5に示すように、その吸入パイプ10の端部が内芯部82の前端面に当接し、さらに吸入パイプ10を後端側に押し込めば、内芯部82が後端側に移動する。内芯部82が後端側に移動すると、内芯部82の本体部82aの上側面にある第2流通路87bの開口も後端側に移動することになり、内芯部82の本体部82aの外周壁が、外芯部81に形成された第1流通路87aの開口を塞ぐこととなる。その結果、第1流通路87aと第2流通路87bとの連通状態が解消されるようになっている。したがって、本実施形態のペン芯8における閉塞手段は、吸入パイプ10の端部が空気溝76に挿着されるときに吸入パイプ10の端部が当接することで、外芯部81の内部空間内を移動可能に構成された内芯部82であるといえる。
【0034】
以上説明してきたペン芯8によれば、インキ溝83から万年筆1のインキタンク92へと連通する流体流通路87を閉塞手段によって閉塞することで、インキ溝83からインキタンク92へと空気が流入する経路を遮断することができるので、吸入パイプ10を用いて空気溝86からインキを補給する際に、インキ溝83からインキタンク92へと空気が流入することを防ぐことができ、効率よくインキをインキタンクへと送り込むことができる。
【0035】
以上、本発明に係る万年筆用ペン芯について図面に基づいて説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、種々の変更実施が可能である。本発明の閉塞手段は、ペン芯に形成された流体流通路を開閉自在に閉塞することができるものでありさえすればよく、様々なバリエーションが考えられる。例えば、ペン芯の空気溝に吸入パイプ(管状体)を挿着することによりペン芯内部に配置された弾性体を変形させて流体流通路を閉塞するようにしてもよいし、ペン芯の空気溝以外の挿入孔に吸入パイプ(管状体)とは別の部材を挿し込むことにより流体流通路を閉塞するようにしてもよい。また、万年筆の首部材の外側に操作部を設け、当該操作部を操作することにより、ペン芯内部に形成された構造物を動かしたり、ペン芯内部に配置された弾性体を変形させたりすることで流体流通路を閉塞するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 万年筆
2 軸筒
3 首部材
4 軸筒本体
5 尾冠
6 ペン体
7 ペン芯
71 外芯部
72 内芯部
73 インキ溝
74 前端面
75 後端面
76 空気溝
77 流体流通路
77a 第1流通路
77b 第2流通路
77c 開口
77d 隙間
8 ペン芯
81 外芯部
82 内芯部
83 インキ溝
84 前端面
85 後端面
86 空気溝
87 流体流通路
87a 第1流通路
87b 第2流通路
87c 開口
88 後端部材
89 コイルばね
9 インキ吸入機構
91 インキ収容筒
92 インキタンク
10 吸入パイプ
11 内腔
図1
図2
図3
図4
図5