(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108926
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 11/14 20060101AFI20240805BHJP
B41J 25/304 20060101ALI20240805BHJP
B41J 3/36 20060101ALI20240805BHJP
B41J 2/325 20060101ALI20240805BHJP
B41J 11/04 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
B41J11/14
B41J25/304 U
B41J3/36 T
B41J2/325 A
B41J11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013587
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】田上 裕也
(72)【発明者】
【氏名】河内 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】谷▲崎▼ 将司
【テーマコード(参考)】
2C055
2C058
2C064
2C065
【Fターム(参考)】
2C055CC00
2C055CC01
2C058AC06
2C058AE15
2C058AF06
2C058AF15
2C058AF31
2C058AF41
2C058DA10
2C058DA21
2C058DA43
2C058DC21
2C064CC06
2C064CC07
2C064CC14
2C064EE12
2C065AA01
2C065AD03
2C065DA29
(57)【要約】
【課題】印刷中のプラテンローラの姿勢を安定化することができる印刷装置を提供する。
【解決手段】プランジャ127は、バネによって後方に押圧荷重F0を付与される。プランジャ127の作用部127Aは、後方且つ左方を向き、押圧荷重F0のかかる方向に対して傾斜角度θで傾斜する傾斜面127Gを有する。傾斜面127Gはプラテンローラ123のプラテンシャフト123Aの軸よりも右側にずれた接触位置Pで、ローラスリーブ123Bに接触する。プランジャ127は押圧荷重F0のcosθ成分である押圧力F1のcosθ成分Fvでローラスリーブ123Bを後方に押圧し、印刷ヘッド102にプラテンローラ123を押し付ける。プランジャ127は押圧荷重押圧力F1のsinθ成分Fhでローラスリーブ123Bを右方に押圧することで、ローラスリーブ123Bが規制部125Eに当接する状態を維持し、プラテンローラ123の姿勢を安定化する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体に印刷を行うための印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドに対向する位置に配置され、回転軸心周りに回転可能であり、前記印刷ヘッドとの間に前記印刷媒体を挟んで搬送方向に搬送するためのプラテンローラと、
前記回転軸心よりも前記搬送方向にずれた位置で前記プラテンローラに接触し、前記プラテンローラを前記印刷ヘッドに向かう方向且つ前記搬送方向に沿う方向に押圧する押圧部材と、
前記プラテンローラを保持すると共に、前記押圧部材によって押圧された前記プラテンローラと接触し前記プラテンローラの前記搬送方向に沿う方向への移動を規制する規制部が設けられたプラテンホルダと、
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記プラテンローラは、
前記印刷媒体を介して前記印刷ヘッドに接触するヘッド接触部と、
前記回転軸心の軸方向において前記ヘッド接触部よりも外側且つ前記ヘッド接触部の両側に設けられ、前記押圧部材が接触する押圧接触部と
を有すること
を特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記押圧部材は前記押圧接触部に接触する接触面を有し、
前記接触面は、前記プラテンローラが前記印刷ヘッドに向かう方向および前記搬送方向に沿う方向に対して傾斜する平面形状であること
を特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記接触面は、前記押圧接触部に接触する位置における前記押圧接触部の周方向に対する接線の方向へ向けて、前記軸方向よりも長く延びること
を特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記押圧部材は前記押圧接触部に接触する接触面を有し、
前記接触面は、前記押圧接触部に接触する側が前記回転軸心の周方向において内向きに屈曲する曲面形状であること
を特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記接触面は、曲面形状に屈曲する方向へ向けて、前記軸方向よりも長く延びること
を特徴とする請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記押圧部材が前記押圧接触部に接触する位置は、前記プラテンローラの前記回転軸心の位置よりも前記搬送方向にずれた位置にあり、
前記押圧部材は、前記プラテンローラが前記印刷ヘッドに向かう方向および前記搬送方向とは反対側の方向へ向けて前記押圧接触部を押圧することを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記軸方向の一方側において前記押圧部材が前記押圧接触部に接触する位置は、前記プラテンローラの前記回転軸心の位置よりも前記搬送方向にずれた位置にあり、
前記軸方向の他方側において前記押圧部材が前記押圧接触部に接触する位置は、前記プラテンローラの前記回転軸心の位置よりも前記搬送方向とは反対側の方向にずれた位置にあり、
前記押圧部材は、
前記軸方向の一方側においては、前記プラテンローラが前記印刷ヘッドに向かう方向および前記搬送方向とは反対側の方向へ向けて前記押圧接触部を押圧し、
前記軸方向の他方側においては、前記プラテンローラが前記印刷ヘッドに向かう方向および前記搬送方向へ向けて前記押圧接触部を押圧すること
を特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記押圧部材が前記押圧接触部を押圧する方向は、前記押圧部材が前記押圧接触部を押圧する押圧力の前記搬送方向に沿う方向の成分の大きさが、前記印刷媒体の搬送に伴い前記プラテンローラが前記印刷媒体から受ける応力の大きさよりも大きな成分を維持可能な方向であること
を特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記押圧部材は、
前記押圧接触部に接触する押圧部と、
前記押圧部を押圧し、前記押圧部を介して前記プラテンローラを付勢する付勢部と
を有すること
を特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記付勢部は、前記プラテンローラが前記印刷ヘッドに向かう方向に前記押圧部を付勢すること
を特徴とする請求項10に記載の印刷装置。
【請求項12】
前記付勢部は、前記押圧部が前記押圧接触部に接触する位置における前記押圧接触部の周方向に対する接線に対して鉛直な方向に前記押圧部を付勢すること
を特徴とする請求項10に記載の印刷装置。
【請求項13】
前記付勢部は棒材の中間部を巻回した巻回部を有するトーションばねであり、
前記押圧部は、前記トーションばねの端部のうち前記押圧部を付勢する側の端部である付勢端部が係合する溝部を有し、
前記溝部は、係合時における前記トーションばねの前記付勢端部に沿って延び、
前記溝部の底面は、前記トーションばねの前記巻回部側から前記付勢端部側に向けて、前記巻回部の巻回中心側を向く傾斜面であること
を特徴とする請求項10に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カセットを着脱可能に装着し、カセットに収容されたテープに印刷する印刷装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の印刷装置は、プラテンローラの駆動軸を支持する可動ケースを、印刷ヘッドへ向けて、駆動軸の軸方向に交差する押圧方向にばねで付勢する。印刷装置はプラテンローラの駆動によってプラテンローラと印刷ヘッドで挟んだテープを搬送しながら、印刷ヘッドの駆動によってテープへの印刷を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
テープの搬送に伴い、プラテンローラは、ばねによる押圧方向と交差する搬送方向へ向けて外力を受ける。このため、印刷中のプラテンローラの姿勢にばらつきが生じ、テープが搬送方向に対して斜行したり、印刷ヘッドによるテープへの印刷位置がずれたりする可能性があった。
【0005】
本発明は、印刷中のプラテンローラの姿勢を安定化することができる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、印刷媒体に印刷を行うための印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドに対向する位置に配置され、回転軸心周りに回転可能であり、前記印刷ヘッドとの間に前記印刷媒体を挟んで搬送方向に搬送するためのプラテンローラと、前記回転軸心よりも前記搬送方向にずれた位置で前記プラテンローラに接触し、前記プラテンローラを前記印刷ヘッドに向かう方向且つ前記搬送方向に沿う方向に押圧する押圧部材と、前記プラテンローラを保持すると共に、前記押圧部材によって押圧された前記プラテンローラと接触し前記プラテンローラの前記搬送方向に沿う方向への移動を規制する規制部が設けられたプラテンホルダと、を有することを特徴とする印刷装置が提供される。
【0007】
印刷媒体の搬送に伴い、プラテンローラは搬送方向に沿う方向への外力を受ける。搬送方向に沿う方向において、プラテンローラは押圧部材による押圧と規制部による規制によって、位置決めされる。故にプラテンローラは駆動時の姿勢が安定し、印刷媒体の斜行を抑制することができる。
【0008】
本態様において、前記プラテンローラは、前記印刷媒体を介して前記印刷ヘッドに接触するヘッド接触部と、前記回転軸心の軸方向において前記ヘッド接触部よりも外側且つ前記ヘッド接触部の両側に設けられ、前記押圧部材が接触する押圧接触部とを有してもよい。押圧部材は回転軸心の軸方向においてヘッド接触部の両側に設けられた押圧接触部を押圧する。プラテンローラは押圧部材からの押圧力を軸方向に離れた2箇所で受けるので、駆動時の姿勢が安定し、印刷媒体の斜行を抑制することができる。
【0009】
本態様において、前記押圧部材は前記押圧接触部に接触する接触面を有し、前記接触面は、前記プラテンローラが前記印刷ヘッドに向かう方向および前記搬送方向に沿う方向に対して傾斜する平面形状であってもよい。プラテンローラが外力を受け、接触位置がずれた場合に、接触面が平面形状であれば、押圧部材に対する接触面の傾斜角度は変わらない。押圧力の印刷ヘッドに向かう方向の成分および搬送方向の成分の大きさが変わらないので、プラテンローラは駆動時の姿勢が安定し、印刷媒体の斜行を抑制することができる。
【0010】
本態様において、前記接触面は、前記押圧接触部に接触する位置における前記押圧接触部の周方向に対する接線の方向へ向けて、前記軸方向よりも長く延びてもよい。接触面は、押圧接触部の周方向に対する接線の方向に対して軸方向よりも長く延びるので、プラテンローラが外力を受け、押圧接触部に接触する位置が元の位置から大きくずれても、押圧接触部との接触を維持することができる。故にプラテンローラは駆動時の姿勢が安定し、印刷媒体の斜行を抑制することができる。
【0011】
本態様において、前記押圧部材は前記押圧接触部に接触する接触面を有し、前記接触面は、前記押圧接触部に接触する側が前記回転軸心の周方向において内向きに屈曲する曲面形状であってもよい。プラテンローラが外力を受け、押圧接触部に接触する位置がずれた場合に、接触面が曲面形状であれば、接触面は、付勢部からの付勢力によって押圧接触部に接触する位置を正すことができる。故にプラテンローラは駆動時の姿勢が安定し、印刷媒体の斜行を抑制することができる。
【0012】
本態様において、前記接触面は、曲面形状に屈曲する方向へ向けて、前記軸方向よりも長く延びてもよい。接触面は、曲面形状に屈曲する方向に対して軸方向よりも長く延びるので、プラテンローラが外力を受け、押圧接触部に接触する位置が元の位置から大きくずれても、押圧接触部との接触を維持することができる。故にプラテンローラは駆動時の姿勢が安定し、印刷媒体の斜行を抑制することができる。
【0013】
本態様において、前記押圧部材が前記押圧接触部に接触する位置は、前記プラテンローラの前記回転軸心の位置よりも前記搬送方向にずれた位置にあり、前記押圧部材は、前記プラテンローラが前記印刷ヘッドに向かう方向および前記搬送方向とは反対側の方向へ向けて前記押圧接触部を押圧してもよい。印刷媒体の搬送に伴い、プラテンローラは搬送方向へ向けて応力を受ける。押圧部材は、押圧接触部を押圧する押圧力のうち、プラテンローラが印刷ヘッドに向かう方向の成分によって、印刷ヘッドへ向けてプラテンローラを押圧する。また、押圧部材は、押圧力のうち、搬送方向とは反対側の方向の成分によって、規制部へ向けてプラテンローラを押圧する。すなわちプラテンローラは、印刷媒体の搬送に伴う反力の方向である搬送方向とは反対側の方向へ向けて押圧部材に押圧されるので、駆動時の姿勢が安定し、印刷媒体の斜行を抑制することができる。
【0014】
本態様において、前記軸方向の一方側において前記押圧部材が前記押圧接触部に接触する位置は、前記プラテンローラの前記回転軸心の位置よりも前記搬送方向にずれた位置にあり、前記軸方向の他方側において前記押圧部材が前記押圧接触部に接触する位置は、前記プラテンローラの前記回転軸心の位置よりも前記搬送方向とは反対側の方向にずれた位置にあり、前記押圧部材は、前記軸方向の一方側においては、前記プラテンローラが前記印刷ヘッドに向かう方向および前記搬送方向とは反対側の方向へ向けて前記押圧接触部を押圧し、前記軸方向の他方側においては、前記プラテンローラが前記印刷ヘッドに向かう方向および前記搬送方向へ向けて前記押圧接触部を押圧してもよい。プラテンホルダがプラテンローラを保持する上で設けられるクリアランスによって、プラテンローラが対向する位置にある場合に、プラテンローラは、軸方向の一方側が搬送方向に、他方側が搬送方向とは反対側の方向に傾く場合がある。このような場合、押圧部材は、押圧接触部を押圧する押圧力のうち、プラテンローラが印刷ヘッドに向かう方向の成分によって、印刷ヘッドへ向けてプラテンローラを押圧する。また押圧部材は、軸方向の一方側においては、押圧力のうちの搬送方向とは反対側の方向の成分によって、規制部へ向けてプラテンローラを搬送方向とは反対側の方向に押圧し、軸方向の他方側においては、押圧力のうちの搬送方向の成分によって、規制部へ向けてプラテンローラを搬送方向に押圧する。故にプラテンローラは、駆動時の姿勢が安定し、印刷媒体の斜行を抑制することができる。
【0015】
本態様において、前記押圧部材が前記押圧接触部を押圧する方向は、前記押圧部材が前記押圧接触部を押圧する押圧力の前記搬送方向に沿う方向の成分の大きさが、前記印刷媒体の搬送に伴い前記プラテンローラが前記印刷媒体から受ける応力の大きさよりも大きな成分を維持可能な方向であってもよい。印刷時に、プラテンローラは、印刷媒体の搬送に伴う応力で搬送方向に押圧される。押圧部材が押圧接触部を押圧する押圧力のうち、搬送方向とは反対側の方向の成分は、応力よりも大きい。よって押圧部材は、押圧接触部が規制部に規制された状態を維持することができる。故にプラテンローラは、駆動時の姿勢が安定し、印刷媒体の斜行を抑制することができる。
【0016】
本態様において、前記押圧部材は、前記押圧接触部に接触する押圧部と、前記押圧部を押圧し、前記押圧部を介して前記プラテンローラを付勢する付勢部とを有してもよい。押圧部を介して付勢部が押圧接触部を押圧するので、押圧部が押圧接触部に接触する位置は、付勢部の付勢状態によらず安定する。故にプラテンローラは駆動時の姿勢が安定し、印刷媒体の斜行を抑制することができる。
【0017】
本態様において、前記付勢部は、前記プラテンローラが前記印刷ヘッドに向かう方向に前記押圧部を付勢してもよい。付勢部が押圧部を押圧する方向が、プラテンローラが印刷ヘッドに向かう方向であるので、押圧部が押圧接触部に接触する向きを調整するだけでプラテンローラに対する最適な押圧力を設定することができる。故にプラテンホルダの設計を容易に行うことができる。
【0018】
本態様において、前記付勢部は、前記押圧部が前記押圧接触部に接触する位置における前記押圧接触部の周方向に対する接線に対して鉛直な方向に前記押圧部を付勢してもよい。付勢部が押圧部を押圧する方向は、押圧部が押圧接触部に接触する位置の接線に対し鉛直な方向であり、押圧方向以外での分力は発生しない。このため、押圧荷重を低減することができ、プラテンホルダにかかる負荷を低減できる。故にプラテンホルダの設計を容易に行うことができる。
【0019】
本態様において、前記付勢部は棒材の中間部を巻回した巻回部を有するトーションばねであり、前記押圧部は、前記トーションばねの端部のうち前記押圧部を付勢する側の端部である付勢端部が係合する溝部を有し、前記溝部は、係合時における前記トーションばねの前記付勢端部に沿って延び、前記溝部の底面は、前記トーションばねの前記巻回部側から前記付勢端部側に向けて、前記巻回部の巻回中心側を向く傾斜面であってもよい。プラテンホルダの組立時に、作業者はトーションばねの付勢端部を溝部の底面に沿って滑らせることで、トーションばねを容易に押圧部に組み付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】テープカセット10を装着した印刷装置1の斜視図である。
【
図4】
図1のI-I線で矢視方向に見たテープカセット10を装着した印刷装置1の断面図である。
【
図7】
図5のII-II線で矢視方向に見たプラテンユニット120の断面図である。
【
図8】
図5のIII-III線で矢視方向に見たプラテンユニット120の断面図である。
【
図10】プランジャ127の後面側の斜視図である。
【
図11】プランジャ227の後面側の斜視図である。
【
図12】プランジャ327の後面側の斜視図である。
【
図13】押圧部材429を備えたプラテンホルダ425の右端部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態である印刷装置1について、図面を参照して説明する。以下説明では、印刷装置1の駆動シャフト106の中心軸と平行な方向を上下方向とし、上下方向と垂直な方向のうち排出部109における印刷用テープ11Aの排出方向と平行な方向を左右方向とし、上下方向と左右方向との双方に垂直な方向を前後方向とする。
【0022】
図1に示す印刷装置1は、テープカセット10に収容される印刷用テープ11A(
図4参照)に印刷を行う装置である。テープカセット10の交換により、印刷装置1は、印刷用テープ11Aの補給、および印刷用テープ11Aの種類(例えば、サイズ、色、材質等)の変更ができる。
図2に示すように、テープカセット10は直方体状であり、下方に向かってカセット装着部101へ挿入可能である。テープカセット10は、テープロール11、テープスプール12(
図4参照)、リボンロール14、リボンスプール15(
図4参照)、巻取スプール16、出力ギア21、駆動伝達機構(図示略)を備える。
【0023】
テープロール11は、印刷が行われる帯状の印刷用テープ11Aをテープスプール12に巻回したものである。テープスプール12は、上下方向と平行な回転軸心周りに回転可能である。テープスプール12はプラテンローラ123(
図3参照)による印刷用テープ11Aの搬送に伴って回転し、印刷用テープ11Aを印刷ヘッド102(
図3参照)に供給する。印刷用テープ11Aの表面には、印刷ヘッド102およびインクリボン14A(
図4参照)によって印刷が行われる。テープカセット10は上下2段に分かれた収容部を有する。テープロール11は上段の収容部に収容される。
【0024】
リボンロール14は、印刷用テープ11Aの印刷に用いられる帯状のインクリボン14Aをリボンスプール15に巻回したものである。リボンスプール15は、上下方向と平行な回転軸心周りに回転可能である。リボンスプール15は、インクリボン14Aの巻取スプール16による巻き取りに伴って回転し、インクリボン14Aを印刷ヘッド102に供給する。インクリボン14Aは、ヘッド開口33Bにおいて、印刷用テープ11Aと重ね合わされ、印刷ヘッド102による印刷に供される。印刷に使用されたインクリボン14Aは、巻取スプール16に巻き取られる。リボンロール14および巻取スプール16は下段の収容部に収容される。
【0025】
テープカセット10の前面下段の右部には、ヘッド開口33Bが設けられる。ヘッド開口33Bは、テープカセット10が本体部100に装着された状態で、内部に印刷ヘッド102が配置される空間である。ヘッド開口33Bにおいて、印刷ヘッド102による印刷用テープ11Aの印刷が行われる。ヘッド開口33Bは、印刷ヘッド102が下方から挿入可能なように、テープカセット10の下方に開口している。
【0026】
印刷用テープ11Aは上段の収容部から下段の収容部の外周部分を介し、ヘッド開口33Bへ向けてテープカセット10内を上下方向において斜めに搬送される。印刷用テープ11Aは、ヘッド開口33Bに到達する前にインクリボン14Aと同じ高さ位置に搬送される。ヘッド開口33Bにおいて、印刷用テープ11Aおよびインクリボン14Aは左右方向に架け渡される(
図4参照)。印刷用テープ11Aは、ヘッド開口33Bにおいてテープカセット10の外部に露出すると共に、インクリボン14Aと重ね合わされる。印刷後の印刷用テープ11Aは、排出部109を介して印刷装置1の外部に排出される。
【0027】
駆動伝達機構は、テープカセット10が本体部100に装着された際に、駆動シャフト106から入力ギア(図示略)伝達される駆動力を、出力ギア21を介してプラテンローラ123に伝達する。駆動伝達機構は、入力ギアおよび出力ギア21を含む複数のギア群である。入力ギアの回転中心は、巻取スプール16の中空部と重なる位置に設けられる。そのため、テープカセット10がカセット装着部101に装着された状態では、駆動シャフト106が巻取スプール16と入力ギアとに同時に挿通される。その結果、入力ギアは、巻取スプール16と共に駆動シャフト106によって回転される。出力ギア21は、印刷用テープ11Aの搬送に供される駆動力を外部に出力するための外歯ギアである。出力ギア21は、ヘッド開口33Bと連通する空間に一部が露出している。出力ギア21は、テープカセット10がカセット装着部101に装着された状態で、ヘッド開口33Bと連通した空間において本体部100のプラテンギア124(
図3参照)に係合し、駆動力を伝達する。
【0028】
図3、
図4に示すように、印刷装置1の本体部100は円柱形状であり、上部にテープカセット10が装着される凹部状のカセット装着部101を備える。本体部100は、上部にカセット装着部101を覆う蓋部(図示略)を取り付けることができる。本体部100の上部右側面には、カセット装着部101に連通するスリット状の排出部109が形成される。
【0029】
本体部100は、印刷ヘッド102、駆動シャフト106、プラテンユニット120を備える。印刷ヘッド102は、カセット装着部101の内部に配置される。印刷ヘッド102は、個別に発熱が制御される複数の発熱素子が形成された基板である。発熱素子は本体部100の上下方向に列設される。ヒートシンク102Aは板状で印刷ヘッド102の後側に設けられ、発熱素子の発熱によって生じた熱を放出する。
【0030】
駆動シャフト106は、テープカセット10の巻取スプール16と駆動伝達機構の入力ギア(図示略)に挿入される。駆動シャフト106は、巻取スプール16と入力ギアとを回転させる駆動力をテープカセット10に入力する。駆動シャフト106は、カセット装着部101の内部に配置されている。駆動シャフト106は、本体部100内に設けた駆動源(図示略)によって回転される。
【0031】
図3~
図8に示すように、プラテンユニット120はカセット装着部101の前側に配置され、右端部側が前後方向に揺動可能になるように、左端部が軸支される(
図4参照)。プラテンユニット120の揺動によって、プラテンローラ123は、印刷ヘッド102に近づく近接位置(
図4において実線で示す位置)と、印刷ヘッド102から離れる離隔位置(
図4において点線で示す位置)とに揺動可能である。なお、以下説明におけるプラテンユニット120の各部位の方向は、便宜上、プラテンローラ123が近接位置にある場合の印刷装置1の各部位の方向を基準とする。プラテンユニット120は、プラテンローラ123、プラテンギア124、プラテンホルダ125、押圧部材129を備える。
【0032】
プラテンローラ123は、カセット装着部101の内部において、印刷ヘッド102と対向するように印刷ヘッド102の近傍に配置される。プラテンローラ123は、プラテンシャフト123A、ローラスリーブ123B、ローラ本体123Cを有する。プラテンシャフト123Aは上下方向に延びる軸部材であり、両端部においてプラテンホルダ125に回転可能に支持される。プラテンシャフト123Aの軸方向の中央部と上端部には、それぞれ連結ピン123Dが配置される。連結ピン123Dは棒部材であり、プラテンシャフト123Aを径方向に貫通する。プラテンシャフト123Aの上端部の連結ピン123Dは、プラテンギア124の回転中心に設けられる貫通孔の内面に形成される溝部に係合し、プラテンギア124からのトルクをプラテンシャフト123Aに伝達する。よってプラテンシャフト123Aは、プラテンギア124と共に軸回転する。
【0033】
ローラスリーブ123Bは、プラテンシャフト123Aが挿通される筒部材である。プラテンシャフト123Aの中央部の連結ピン123Dは、ローラスリーブ123Bの筒孔内面に形成される溝部に係合し、プラテンシャフト123Aからのトルクをローラスリーブ123Bに伝達する。よってローラスリーブ123Bは、プラテンシャフト123Aと共に軸回転する。ローラスリーブ123Bの上下方向の長さはプラテンシャフト123Aより短く、両側からプラテンシャフト123Aの端部が露出する。
【0034】
ローラ本体123Cは、ローラスリーブ123Bの外周面に嵌め込まれる筒部材である。ローラ本体123Cは、プラテンシャフト123Aおよびローラスリーブ123Bと共に軸回転する。ローラ本体123Cの上下方向の長さはローラスリーブ123Bより短い。ローラスリーブ123Bは、両端がローラ本体123Cの両端からそれぞれ露出することで、ローラ本体123Cの両側に設けられる。
【0035】
プラテンローラ123の近接位置において、ローラ本体123Cは、ヘッド開口33Bに露出する印刷用テープ11Aとインクリボン14Aを、印刷ヘッド102との間に挟む。プラテンギア124はテープカセット10の出力ギア21に噛合する。駆動シャフト106の駆動力は、テープカセット10およびプラテンギア124を介してプラテンローラ123に入力される。プラテンローラ123の軸回転によって、ローラ本体123Cは、印刷ヘッド102との間に挟む印刷用テープ11Aを排出部109へ向けて搬送する。なお、印刷用テープ11Aが搬送される搬送方向は、プラテンローラ123と印刷ヘッド102との間を搬送される方向を基準とし、本実施形態においては右方である。
【0036】
プラテンホルダ125は左右方向に長く、後側が開口する箱状である。プラテンホルダ125は、左端部側の上壁と下壁に、上下方向に貫通する支持孔125Aをそれぞれ開口する。支持孔125Aは、本体部100のカセット装着部101の左前方に設けられて上下方向に延びる支持軸107(
図4参照)に支持される。プラテンホルダ125の上壁と下壁は右端部において後方に膨出する膨出部125Cを有する。膨出部125Cは上下方向に貫通する貫通孔(図示略)を有する。プラテンホルダ125は、膨出部125Cの貫通孔においてプラテンシャフト123Aの両端部をそれぞれ回転可能に支持することによって、右端部後部にプラテンローラ123を配置する。プラテンギア124は、上壁側の膨出部125Cから上方に突出するプラテンシャフト123Aの上端に固定される。
【0037】
プラテンホルダ125の上壁側の膨出部125Cは、右縁部および左縁部がそれぞれ下方に突出し、規制部125D,125Eを形成する。規制部125D,125Eはそれぞれ、プラテンローラ123のローラ本体123Cから上方に露出するローラスリーブ123Bの右側および左側に位置する。規制部125D,125Eの下端部はそれぞれ左側および右側に膨出し、上側のローラスリーブ123Bの外周面との間に僅かな間隙を形成する。膨出部125Cの貫通孔は、プラテンシャフト123Aの外径より若干大きな内径を有し、プラテンシャフト123Aの軸方向に対する径方向への移動を許容する。規制部125D,125Fはそれぞれ、上側のローラスリーブ123Bの左右方向への移動を規制し、後述する押圧部材129と共にプラテンローラ123を左右方向に位置決めする。同様に、プラテンホルダ125の下壁側の膨出部125Cの右縁部および左縁部もそれぞれ上方に突出し、規制部125F,125Gを形成する。規制部125F,125Gはそれぞれ、プラテンローラ123のローラ本体123Cから下方に露出するローラスリーブ123Bの右側および左側に位置する。規制部125F,125Gの下端部はそれぞれ左側および右側に膨出し、下側のローラスリーブ123Bの外周面との間に僅かな間隙を形成する。規制部125D,125Fはそれぞれ、下側のローラスリーブ123Bの左右方向への移動を規制し、押圧部材129と共にプラテンローラ123を左右方向に位置決めする。
【0038】
押圧部材129は、押圧部材129は、プラテンローラ123を印刷ヘッド102に向けて押圧する部材である。具体的に、押圧部材129は、プラテンローラ123のローラ本体123Cの両側に露出するローラスリーブ123Bのそれぞれを押圧する。押圧部材129はプランジャ127と2つのバネ128を含む。
【0039】
プラテンホルダ125の右端部内で、プラテンローラ123が配置される部分よりも前側の部分は、プランジャ収容部125Bである。プランジャ127は、プランジャ収容部125B内に配置される。プラテンローラ123が近接位置にあるとき、プランジャ127は、ローラスリーブ123Bを挟んで印刷ヘッド102とは反対側に位置する。プランジャ127は、ローラスリーブ123Bに接触する部材である。
【0040】
図9、
図10に示すように、プランジャ127は、作用部127A,127B、受圧部127C,127D、連結部127E,127Fを有する。作用部127A,127Bは、それぞれローラスリーブ123Bに接触する突部である。作用部127A,127Bは、それぞれ後方へ向けて突出し、左右方向へリブ状に延びる。作用部127A,127Bは、ローラスリーブ123Bの軸方向(つまり上下方向)において、互いに離れて配置される。作用部127Aは、作用部127Bよりも上方に位置する。作用部127A,127Bのそれぞれの突出先端部分は、前後方向および左右方向に対して傾斜する平面状の傾斜面127G,127Hを形成する。プラテンローラ123が近接位置にあるとき、傾斜面127G,127Hはそれぞれローラ本体123Cの軸方向両側において露出するローラスリーブ123Bの外周面に当接する。傾斜面127G,127Hは、ローラスリーブ123Bの外周面の周方向に対する接線Tの方向へ向けて、プラテンシャフト123Aの軸方向よりも長く延びる。本実施形態の傾斜面127G,127Hは後方且つ左方を向き、プラテンシャフト123Aを側方視した場合に搬送方向(右側)にずれた接触位置Pにおいてローラスリーブ123Bの外周面に当接する。
【0041】
受圧部127Cはプラテンホルダ125内で上側に配置されるバネ128(
図5参照)に接触する部位であり、受圧部127Dはプラテンホルダ125内で下側に配置されるバネ128(
図5参照)に接触する部位である。受圧部127C,127Dは、ローラスリーブ123Bの軸方向(つまり上下方向)において互いに離れて配置される。受圧部127Cは、受圧部127Dよりも上方に位置する。プランジャ127の前面と右面には、溝状に延びる案内溝127I,127Jが形成される。案内溝127I,127Jは前面の右端部分と後面の前端部分とが接続し、それぞれ連続して延びる。案内溝127Iは、案内溝127Jよりも上方に位置する。受圧部127C,127Dは、前面側の案内溝127I,127Jの右端部における溝底の部分である。前面側の案内溝127I,127Jは、溝底の位置が、右側から左側へ向かうほど後方に位置する。すなわち前面側の案内溝127I,127Jは、溝底の面が前方且つ左方を向いて傾斜する。案内溝127I,127Jは、2つのバネ128をプランジャ127に組み付ける際に、2つのバネ128のそれぞれの付勢端部128Aが正しく受圧部127C,127Dに配置されるように、付勢端部128Aを案内する。
【0042】
連結部127E,127Fは、プランジャ127の上面および下面からそれぞれ上方および下方に突出する突部である。プランジャ収容部125Bにおけるプラテンホルダ125の上壁および下壁には、壁面を貫通して前後方向に延びる係合部(図示略)が形成されている。プランジャ127は、プランジャ収容部125B内に収容された場合に、連結部127E,127Fが係合部に係合することによって、プラテンホルダ125に対して前後方向に揺動可能に取り付けられる。
【0043】
図5、
図6、
図8に示すように、2つのバネ128は、棒材の中間部を巻回した巻回部128Bからそれぞれ延びる両側の端部間に付勢力を生ずるトーションばねである。巻回部128Bは、プラテンホルダ125内でプランジャ127の収容部分の左側に設けられるボス部に嵌められて、位置決めされる。一方の端部128Cは、ボス部の右方でプラテンホルダ125の上壁または下壁の内面に設けられる留め部(図示略)に掛け留められる。他方の端部は、プランジャ127に付勢力を付与する付勢端部128Aである。プランジャ収容部125B内にプランジャ127を収容した状態で、付勢端部128Aは受圧部127C,127Dに当接し、プランジャ127を後方に押圧する。
【0044】
プラテンホルダ125にプランジャ127を組み付ける場合、プランジャ127は、プラテンホルダ125の後方からプランジャ収容部125B内に挿入され、連結部127E,127Fが係合部に係合するまで押し込まれることで組み付けられる。プラテンホルダ125にプランジャ127を組み付ける前、バネ128は、一方の端部128Cと巻回部128Bがプラテンホルダ125内に固定される。バネ128は、付勢端部128Aが一方の端部128Cよりも後方に位置し、端部同士が開いた状態である。プランジャ127を組み付ける過程で、バネ128は、案内溝127I,127Jの溝底の左端部に付勢端部128Aの先端が当接する状態に配置される。プランジャ127がプランジャ収容部125B内に押し込まれると、付勢端部128Aは案内溝127I,127Jの溝底によって後方に押圧されて撓められる。付勢端部128Aの先端は、案内溝127I,127Jに沿って右方に案内され、受圧部127C,127Dに乗り上げる。付勢端部128Aの先端部分は右後方に屈曲されている。故に付勢端部128Aの先端は、受圧部127C,127Dに乗り上げた後、プランジャ127の右面側の案内溝127I,127Jに案内される。よって付勢端部128Aは案内溝127I,127Jから外れにくくなる。プランジャ127の連結部127E,127Fがプランジャ収容部125Bの係合部に係合するとき、付勢端部128Aは受圧部127C,127Dに当接し、プランジャ127を後方に押圧する付勢力を付与する状態となる。
【0045】
プランジャ127は、2つのバネ128で受圧部127C,127Dが押圧されると、連結部127E,127Fが係合部に案内されて、後方に移動する。
図7に示すように、プランジャ127は、プランジャ収容部125Bの後方に位置するプラテンローラ123の上側および下側のローラスリーブ123Bの外周面のそれぞれを、傾斜面127G,127Hで後方に押圧する。バネ128による押圧荷重F0は、プランジャ127を後方に移動する向きに付与される。プランジャ127がプラテンローラ123を押圧する押圧力F1は、ローラスリーブ123Bの外周面が傾斜面127G,127Hに接触する接触位置Pにおいて、ローラスリーブ123Bに接する接線Tの方向に対して鉛直な方向に付与される。押圧荷重F0がかかる方向に対して傾斜面127G,127Hが傾斜する傾斜角度をθとすると、押圧力F1の大きさは「F0×cosθ」で表される。
【0046】
印刷時、プラテンローラ123は、プランジャ127に押圧されて、印刷ヘッド102との間に、インクリボン14Aと重ねた印刷用テープ11Aを挟んで搬送する。プランジャ127は、傾斜面127G,127Hでローラスリーブ123Bに当接する。このため、プラテンローラ123が印刷ヘッド102との間に印刷用テープ11Aを挟む力は、押圧力F1のうち、プラテンローラ123から印刷ヘッド102へ向かう方向、すなわち後方を向く押圧力F1の成分Fvによって付与される。
【0047】
またプランジャ127は、押圧力F1のうち、搬送方向に沿う方向を向く押圧力F1の成分Fhによって、プラテンローラ123を搬送方向に沿う方向に押圧することができる。押圧力F1の成分Fhの大きさは、「F1×sinθ」で表される。すなわち、バネ128による押圧荷重F0に対する押圧力F1の成分Fhの大きさは、「F0×cosθ×sinθ」で表される。プラテンローラ123は、印刷用テープ11Aの搬送に伴い、搬送方向(右方向)へ向けて応力を受ける。本実施形態の傾斜面127G,127Hは、後方且つ左方を向く。故に押圧力F1の成分Fhは、搬送方向とは反対側の方向(左方向)を向く。すなわちプランジャ127は、押圧荷重F0に対する押圧力F1の成分Fhによって、プラテンローラ123が印刷用テープ11Aの搬送に伴い受ける応力に対する反力を、ローラスリーブ123Bに付与する。
【0048】
更に、プランジャ127の傾斜面127G,127Hは、押圧力F1の成分Fh(反力)の大きさが、印刷用テープ11Aの搬送に伴いプラテンローラ123が印刷用テープ11Aから受ける応力の大きさよりも大きくなるように、傾斜角度θが設定されている。上記したように、押圧力F1の成分Fhの大きさが、押圧荷重F0×cosθ×sinθで表されるので、傾斜角度θは、「押圧荷重F0×cosθ×sinθ」>「印刷用テープ11Aから受ける応力の大きさ」となるように設定される。これにより、プランジャ127は、プラテンローラ123を搬送方向とは反対側の方向に押圧し、ローラスリーブ123Bを後側の規制部125E,125Gに押し付けた状態を維持することができる。プラテンローラ123は、ローラスリーブ123Bが常時、規制部125E,125Gに当接した状態が維持され、規制部125E,125Gによって位置決めされることで、印刷時の姿勢が安定する。
【0049】
印刷時、テープカセット10が本体部100に装着された状態で、印刷ヘッド102は、ヘッド開口33Bにおいて、印刷用テープ11Aおよびインクリボン14Aと前後方向に重なる位置に配置される。プラテンユニット120の回動によって、プラテンローラ123は近接位置に位置する。印刷用テープ11Aは、プラテンローラ123によってヘッド開口33Bに搬送されると共に、プラテンローラ123によってインクリボン14Aを介して発熱素子が発熱した印刷ヘッド102に押し付けられる。これにより、インクリボン14Aの表面に配置されたインクの一部が印刷用テープ11Aに転写され、印刷用テープ11Aに文字、記号等が印刷される。
【0050】
プラテンローラ123は、印刷後の印刷用テープ11Aをテープカセット10内から排出口33Cを介して外部に向けて搬送する。プラテンローラ123は、印刷用テープ11Aの搬送に伴う応力を搬送方向(右方)に受ける。押圧部材129のプランジャ127は、後方且つ左方を向く傾斜面127G,127Hでプラテンローラ123のローラスリーブ123Bを後方且つ左方に押圧する。搬送方向とは反対側の方向を向く押圧力F1の成分Fhによって、ローラスリーブ123Bは、左側の規制部125E,125Gに当接し、位置決めされる。よってプラテンローラ123の姿勢は安定する。
【0051】
上記の動作によって、印刷装置1が印刷用テープ11Aに印刷しながら搬送することで、印刷済みの印刷用テープ11Aは排出口33Cから排出される。印刷装置1が駆動シャフト106の駆動源と印刷ヘッド102の駆動を停止することで、印刷動作は終了する。
【0052】
以上説明したように、印刷用テープ11Aの搬送に伴い、プラテンローラ123は搬送方向に沿う方向への外力を受ける。搬送方向に沿う方向において、プラテンローラ123は押圧部材129による押圧と規制部125E,125Gによる規制によって、位置決めされる。故にプラテンローラ123は駆動時の姿勢が安定し、印刷用テープ11Aの斜行を抑制することができる。
【0053】
押圧部材129はプラテンシャフト123Aの軸方向において、ローラ本体123Cの両側に設けられたローラスリーブ123Bを押圧する。プラテンローラ123は押圧部材129からの押圧力を軸方向に離れた2箇所で受けるので、駆動時の姿勢が安定し、印刷用テープ11Aの斜行を抑制することができる。
【0054】
プラテンローラ123が外力を受け、傾斜面127G,127Hにおけるローラスリーブ123Bとの接触位置Pがずれた場合に、接触面が平面形状であれば、押圧部材129に対する接触面の傾斜角度θは変わらない。押圧力F1の印刷ヘッド102に向かう方向の成分Fvおよび搬送方向の成分Fhの大きさが変わらないので、プラテンローラ123は駆動時の姿勢が安定し、印刷用テープ11Aの斜行を抑制することができる。
【0055】
接触面は、ローラスリーブ123Bの周方向に対する接線Tの方向に対して軸方向よりも長く延びるので、プラテンローラ123が外力を受け、ローラスリーブ123Bに接触する接触位置Pが元の位置から大きくずれても、ローラスリーブ123Bとの接触を維持することができる。故にプラテンローラ123は駆動時の姿勢が安定し、印刷用テープ11Aの斜行を抑制することができる。
【0056】
印刷用テープ11Aの搬送に伴い、プラテンローラ123は搬送方向へ向けて応力を受ける。押圧部材129は、ローラスリーブ123Bを押圧する押圧力F1のうち、プラテンローラ123が印刷ヘッド102に向かう方向の成分Fvによって、印刷ヘッド102へ向けてプラテンローラ123を押圧する。また、押圧部材129は、押圧力F1のうち、搬送方向とは反対側の方向の成分Fhによって、規制部125E,125Gへ向けてプラテンローラ123を押圧する。すなわちプラテンローラ123は、印刷用テープ11Aの搬送に伴う反力の方向である搬送方向とは反対側の方向へ向けて押圧部材129に押圧されるので、駆動時の姿勢が安定し、印刷用テープ11Aの斜行を抑制することができる。
【0057】
印刷時に、プラテンローラ123は、印刷用テープ11Aの搬送に伴う応力で搬送方向に押圧される。押圧部材129がローラスリーブ123Bを押圧する押圧力F1のうち、搬送方向とは反対側の方向の成分Fhは、応力よりも大きい。よって押圧部材129は、ローラスリーブ123Bが規制部125E,125Gに規制された状態を維持することができる。故にプラテンローラ123は、駆動時の姿勢が安定し、印刷用テープ11Aの斜行を抑制することができる。
【0058】
プランジャ127を介してバネ128がローラスリーブ123Bを押圧するので、プランジャ127がローラスリーブ123Bに接触する接触位置Pは、バネ128の付勢状態によらず安定する。故にプラテンローラ123は駆動時の姿勢が安定し、印刷用テープ11Aの斜行を抑制することができる。
【0059】
バネ128がプランジャ127を押圧する方向が、プラテンローラ123が印刷ヘッド102に向かう方向であるので、傾斜面127G,127Hの傾斜角度θを調整し、プランジャ127がローラスリーブ123Bに接触する向きを調整するだけでプラテンローラ123に対する最適な押圧力F1を設定することができる。故にプラテンホルダ125の設計を容易に行うことができる。
【0060】
プラテンホルダ125の組立時に、作業者はバネ128の付勢端部128Aを案内溝127I,127Jの底面に沿って滑らせることで、バネ128を容易にプランジャ127に組み付けることができる。
【0061】
上記実施形態において、印刷用テープ11Aは本発明の「印刷媒体」に相当する。プラテンシャフト123Aは本発明の「回転軸心」に相当する。ローラ本体123Cは本発明の「ヘッド接触部」に相当する。ローラスリーブ123Bは本発明の「押圧接触部」に相当する。傾斜面127G,127Hは本発明の「接触面」に相当する。プランジャ127,227,327,427は本発明の「押圧部」に相当する。バネ128,428は本発明の「付勢部」に相当する。
【0062】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更が加えられてもよい。印刷装置1は、インクリボン14Aを用いて印刷するものに限定されない。例えば、印刷装置1は、帯状の感熱紙に印刷を行ってもよい。この場合、テープカセット10はインクリボン14Aを備えなくてもよい。押圧部材129のプランジャ127を押圧するバネ128は、2つに限らず、1つ、または3つ以上あってもよい。バネ128はトーションばねに限らず、圧縮コイルばね、板ばね等、他の種類のばねを用いてもよい。
【0063】
プランジャ127がローラスリーブ123Bに接触する部分は傾斜面127G,127Hに限らず、例えば、プラテンシャフト123Aの軸方向に延びる円柱状の部材や半球状の部材であってもよい。また、傾斜面127G,127Hは共に後方且つ右方を向き、プラテンシャフト123Aを側方視した場合に搬送方向とは反対側(左側)にずれた位置においてローラスリーブ123Bの外周面に当接する構成としてもよい。
【0064】
もしくは、
図11に示すプランジャ227のように、作用部227A,227Bのそれぞれの突出先端部分に、ローラスリーブ123Bに接触する側の面が、ローラスリーブ123Bの周方向において内向きに屈曲する曲面形状の曲面部227G,227Hを形成してもよい。なお、曲面部227G,227Hの曲率半径は、ローラスリーブ123Bの外周面の半径よりも大きいとよい。この場合に、曲面部227G,227Hは、曲面形状に屈曲する方向へ向けて、プラテンシャフト123Aの軸方向よりも長く延びてもよい。プラテンローラ123が外力を受け、ローラスリーブ123Bに接触する接触位置Pがずれた場合に、接触面が曲面形状の曲面部227G,227Hであれば、接触面は、バネ128からの付勢力によってローラスリーブ123Bに接触する位置を正すことができる。故にプラテンローラ123は駆動時の姿勢が安定し、印刷用テープ11Aの斜行を抑制することができる。そして、曲面部227G,227Hは、曲面形状に屈曲する方向に対してプラテンシャフト123Aの軸方向よりも長く延びる。故に、プラテンローラ123が外力を受け、ローラスリーブ123Bに接触する接触位置Pが元の位置から大きくずれても、ローラスリーブ123Bとの接触を維持することができる。故にプラテンローラ123は駆動時の姿勢が安定し、印刷用テープ11Aの斜行を抑制することができる。
【0065】
図12に示すプランジャ327のように、作用部327A,327Bのそれぞれの突出先端部分に、搬送方向に沿う方向(左右方向)において互いに異なる方向を向く傾斜面327G,327Hを形成してもよい。例えば、上側の作用部327Aの傾斜面327Gは、後方且つ左方を向く平面状であり、下側の作用部327Bの傾斜面327Hは、後方且つ右方を向く平面状である。膨出部125Cの貫通孔は、プラテンシャフト123Aの外径より若干大きな内径を有する。このため、プラテンローラ123は、軸方向の一方側が搬送方向に、他方側が搬送方向とは反対側の方向に傾く場合がある。このような場合、プランジャ327は、ローラスリーブ123Bを押圧する押圧力F1のうち、プラテンローラ123が印刷ヘッド102に向かう方向の成分Fvによって、印刷ヘッド102へ向けてプラテンローラ123を押圧する。また、プランジャ327の上側の作用部327Aは、押圧力F1のうちの搬送方向とは反対側の方向の成分Fhによって、規制部125E,125Gへ向けてプラテンローラ123を搬送方向とは反対側の方向に押圧する。そして下側においては、プランジャ327は、押圧力F1のうちの搬送方向の成分によって、規制部125D,125Fへ向けてプラテンローラ123を搬送方向に押圧する。プラテンローラ123の下側のローラスリーブ123Bは右側の規制部125D,125Fに当接し、位置決めされる。故にプラテンローラ123は、駆動時の姿勢が安定し、印刷用テープ11Aの斜行を抑制することができる。なお、上側の作用部327Aの傾斜面327Gが、例えば後方且つ右方を向く平面状であり、下側の作用部327Bの傾斜面327Hが、例えば後方且つ左方を向く平面状であってもよい。
【0066】
図13に示す押圧部材429のように、バネ428で、プランジャ427がローラスリーブ123Bに接触する接触位置Pにおけるローラスリーブ123Bの周方向に対する接線に対して鉛直な方向に、プランジャ427を付勢してもよい。押圧部材429を収容する収容部425Bにおけるプラテンホルダ425の上壁および下壁に、プランジャ427がローラスリーブ123Bを押圧する押圧方向に延びる係合部(図示略)を形成する。プランジャ427は、連結部(図示略)が係合部に係合することで、プラテンホルダ425に対して押圧方向に揺動可能に取り付けられる。更に収容部425B内に、プランジャ427を押圧方向に押圧するバネ428を配置する。バネ428例えば圧縮ばねであり、プランジャ427を挟んでプラテンローラ123とは反対側に設ける。プランジャ427は、押圧方向に直交する平面427Gで、ローラスリーブ123Bの外周面を押圧方向に押圧する。このような構成とした場合に、バネ428によるプランジャ427の押圧方向は、プランジャ427がローラスリーブ123Bに接触する接触位置Pの接線Tに対し鉛直な方向となる。よって、バネ428がプランジャ427を押圧する押圧方向と、プランジャ427がローラスリーブ123Bを押圧する押圧方向とは、同じ方向である。故に、プランジャ427がローラスリーブ123Bを押圧する押圧力F1は、バネ428がプランジャ427を押圧する押圧荷重F0と同じ大きさである。プラテンローラ123が印刷ヘッド102に向かう方向に対する平面427Gの傾斜角度をθとすると、押圧力F1の大きさは「F0×sinθ」で表される。傾斜角度θは、プラテンホルダ425に押圧部材129を組み付ける向きにより決まる。バネ128の押圧荷重F0に応じた傾斜角度θが得られるように係合部が延びる方向を設定することで、プランジャ427がプラテンローラ123に対する最適な押圧力F1を得られるように調整することができる。このように、バネ428がプランジャ427を押圧する押圧方向が、プランジャ427がローラスリーブ123Bを押圧する押圧方向と同じ方向であるので、押圧方向以外での分力は発生しない。このため、押圧荷重F0を低減することができ、プラテンホルダ425にかかる負荷を低減できる。故にプラテンホルダ425の設計を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0067】
1 印刷装置
11 テープロール
102 印刷ヘッド
123 プラテンローラ
123A プラテンシャフト
123B ローラスリーブ
123C ローラ本体
125,425 プラテンホルダ
125D,125E,125F,125G 規制部
127,227,327,427 プランジャ
127G,127H,327G,327H 傾斜面
127I,127J 案内溝
c バネ
128A 付勢端部
128B 巻回部
129,429 押圧部材
227G,227H 曲面部
427G 平面
F0 押圧荷重
F1 押圧力
Fh 成分
Fv 成分
P 接触位置
T 接線
θ 傾斜角度