(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108927
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】流路部材の接合構造及びカラム着脱ユニット
(51)【国際特許分類】
G01N 30/60 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
G01N30/60 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013588
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000141897
【氏名又は名称】アークレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南 隆男
(57)【要約】
【課題】複雑な構造で多数の部品を用いずに、簡単な構造によって、カラム着脱ユニットに代表される部材に、カラムに代表される部材が容易に着脱できるような流路部材の接合構造。
【解決手段】第一流路を有する第一部材に、第二流路を有する第二部材を装着させることで、第一流路と第二流路とを互いに位置合わせして液体の流動を可能とする流路部材の接合構造であって、第一流路は第一部材における第一端面に開口し、第一流路の端部には、第一端面に向かって内径が漸増する拡径部が形成され、第二流路は第二部材における第二端面に開口する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一流路を有する第一部材に、第二流路を有する第二部材を装着させることで、前記第一流路と前記第二流路とを互いに位置合わせして液体の流動を可能とする流路部材の接合構造であって、
前記第一流路は前記第一部材における第一端面に開口し、該第一流路の端部には、前記第一端面に向かって内径が漸増する拡径部が形成され、
前記第二流路は前記第二部材における第二端面に開口する、流路部材の接合構造。
【請求項2】
前記拡径部の内面はテーパ形状に形成され、
前記テーパ形状のテーパ角度が30°以上90°以下である、請求項1に記載の流路部材の接合構造。
【請求項3】
前記第一部材はさらに、前記第一端面と前記第二端面とを接近させることで前記第一流路と前記第二流路とを接合させる圧着機構を備える、請求項2に記載の流路部材の接合構造。
【請求項4】
前記第一部材は、液体クロマトグラフィー装置におけるカラム着脱ユニットであり、
前記第二部材は、前記カラム着脱ユニットに着脱可能に装着されるカラムである、請求項3に記載の流路部材の接合構造。
【請求項5】
前記カラムは、第二流路の両端に前記第二端面をそれぞれ備え、
前記カラム着脱ユニットは、前記第二流路の両端にある前記第二端面にそれぞれ対応する前記第一端面を備える、請求項4に記載の流路部材の接合構造。
【請求項6】
前記第二端面は、前記第二流路の開口から周囲に向かって傾斜する傾斜面として形成される、請求項5に記載の流路部材の接合構造。
【請求項7】
二つの端面と、前記二つの端面の中心にそれぞれ開口する通液孔と、二つの前記通液孔を結ぶカラム流路と、を有するカラムを装着するためのカラム着脱ユニットであって、
前記二つの端面にそれぞれ対向する一対の台座と、
前記一対の台座の載置部の各々に開口する連通孔と、
前記連通孔の各々に連通する通液流路と、
前記通液流路の末端に形成され、前記載置部に向かって内径が漸増する拡径部と、
前記一対の台座を前記二つの端面に接近させて、前記通液流路と前記カラム流路とを接合させる圧着機構と、
を備える、カラム着脱ユニット。
【請求項8】
前記拡径部の内面はテーパ形状に形成され、
前記テーパ形状のテーパ角度が30°以上90°以下である、請求項7に記載のカラム着脱ユニット。
【請求項9】
前記テーパ形状のテーパ角度が60°である、請求項8に記載のカラム着脱ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路部材の接合構造に関し、特にカラムを接続する際の流路部材の接合構造及びそのカラム着脱ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
高速液体クロマトグラフィー装置の配管構造において、クロマトグラフィーに用いられるカラムは、一般的にねじ式のジョイントにより装着される。この装着には通常、専用の工具が必要であるため、カラムの着脱作業が煩雑である。
【0003】
この煩雑な着脱作業を簡略化するために、下記特許文献1に記載の技術では、着脱作業専用の工具が提示されている。しかし、この工具は部品数が多いため、コストの増加に繋がっている。下記特許文献1には、カラムを容易に交換し得る液体クロマトグラフ装置として、液体クロマトグラフ装置のカラムが、コネクタとクロマト管に分割されており、該クロマト管の両端はフィルタとシール材を固着し、上記コネクタとクロマト管の結合部の耐圧力の向上を図るために、該クロマト管の軸と平行にコネクタを押圧する押圧機構部を設け、これとアームの梃子機構部とを組合せることにより大きな押圧力を加えるようにしたものが開示されている。この構成により、アームの梃子機構の作用によりコネクタとクロマト管の結合部の耐圧力を向上することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の実施態様は、複雑な構造で多数の部品を用いずに、簡単な構造によって、カラム着脱ユニットに代表される部材に、カラムに代表される部材が容易に着脱できるような流路部材の接合構造、及び、この接続構造におけるカラム着脱ユニットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、第一流路を有する第一部材に、第二流路を有する第二部材を装着させることで、第一流路と第二流路とを互いに位置合わせして液体の流動を可能とする流路部材の接合構造であって、第一流路は第一部材における第一端面に開口し、第一流路の端部には、第一端面に向かって内径が漸増する拡径部が形成され、第二流路は第二部材における第二端面に開口する。
【0007】
本開示の別の態様は、二つの端面と、二つの端面の中心にそれぞれ開口する通液孔と、二つの通液孔を結ぶカラム流路と、を有するカラムを装着するためのカラム着脱ユニットであって、二つの端面にそれぞれ対向する一対の台座と、一対の台座の載置部の各々に開口する連通孔と、連通孔の各々に連通する通液流路と、通液流路の末端に形成され、載置部に向かって内径が漸増する拡径部と、一対の台座を二つの端面に接近させて、通液流路とカラム流路とを接合させる圧着機構と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の実施態様によれば、複雑な構造で多数の部品を用いずに、簡単な構造によって、カラム着脱ユニットに代表される部材に、カラムに代表される部材が容易に着脱できるような流路部材の接合構造、及び、この接続構造におけるカラム着脱ユニットが提供される。また、本開示の流路部材の接合構造により、第一流路と第二流路とがシール材などの別部材を介さなくても密着して接合した状態を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】カラム着脱ユニットの外観構成を示す斜視図である。
【
図4】第二台座の内部構成を示す、
図3のIV-IV断面図である。
【
図6】カラム着脱ユニットにカラムを載置した状態を示す斜視図である。
【
図7】カラム着脱ユニットにカラムを装着した状態を示す斜視図である。
【
図8】カラム着脱ユニットにカラムを装着した状態を、
図7のX-X断面図で示す。
【
図9】カラム着脱ユニットとカラムとの接合部分を示す拡大断面図である。
【
図10】拡径部と傾斜面との接合状態を模式的に示す断面図である。
【
図11】液体クロマトグラフィー装置の概略構成を示す模式図である。
【
図12】拡径部のテーパ角度が測定結果に及ぼす影響を示すクロマトグラムである。
【
図13】カラムの締付力と圧力降下との関係に及ぼすカラムの傾斜面の角度の影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示における実施形態を、図面を参照しつつ説明する。各図において共通する符号は、特段の説明がない限り同一の部分を指し示す。また、各図に現された各部材や各部位はあくまで模式的に描かれたものであって、実際の製品のサイズ及び位置関係は必ずしも正確には現されていない。なお、以下の説明では、
図1に示されているように、上流ブロック31が位置する方を下方、下流ブロック32が位置する方を上方としている。すなわち、図中の上下方向を装置の上下方向とし、紙面の左右方向を装置の左右方向として説明しているが、これは実施形態を限定するものではない。
【0011】
図1は、本実施形態のカラム着脱ユニット10(第一部材に相当する)の外観構成を示す斜視図である。カラム着脱ユニット10は、略板状の支持体11と、後述の上流ブロック31を介して支持体11に固定的に装着される第一台座20Aと、後述のスプリング33と後述の下流ブロック32を介して支持体11に沿って上下移動できるように装着される第二台座20Bと、圧着機構30とを有する。
【0012】
後述するカラム50(
図5参照)を支持するための第一台座20Aは、上流ブロック31に設けられている。一方、カラム50を保持するための第二台座20Bは、下流ブロック32に設けられている。第一台座20Aと第二台座20Bとは、上下方向において対向している。後述する液体クロマトグラフィー装置100(
図11参照)においては、液体が下側から上側に流れるように設計されている。よって、カラム着脱ユニット10は、上流ブロック31とそれに保持されている第一台座20Aとが液体流路の上流側である下側に位置し、また、下流ブロック32とそれに保持されている第二台座20Bとを液体流路の下流側である上側に位置している。
【0013】
図1に示すように、圧着機構30により第一台座20Aと第二台座20Bとの上下方向における相対距離を変化させることが可能である。本実施形態において、圧着機構30は、上流ブロック31、下流ブロック32、スプリング33、リンク板34、ローラ35、カム36、カム軸37及びレバー38を有する。上流ブロック31は、支持体に固定的に設置され、下流ブロック32は支持体に沿って上下移動できるように設置されている。上流ブロック31と下流ブロック32とは、左右両端に設置されている一対のリンク板34で連接されている。リンク板34は略長尺板状に形成され、上下方向に延伸している。一対のリンク板34の上端がそれぞれ下流ブロック32の左右両端にネジで固定されて、一対のリンク板34は下流ブロック32の左右両端からぶら下がっている。一対のリンク板34は下流ブロック32とともに、支持体11に沿って上下移動可能である。一方、一対のリンク板34にはそれぞれ、下端側にリンク板34の上下方向に延長する細長い長孔34Aが形成されている。それぞれの長孔34Aには一対のローラ35が貫通している。一対のローラ35は、支持体11に対して相対的に固定されているが、回転自在である。一対のローラ35は、支持体11に固定されている上流ブロック31の左右両端よりもそれぞれ左右方向に突出した状態で長孔34Aを貫通している。リンク板34は、下流側で下流ブロック32に固定されている一方、上流側でローラ35が貫設している。これにより、リンク板34はローラ35に沿って上下移動が可能であり、下流ブロック32とともに上下移動が可能である。これにより、リンク板34を上下移動させることで、下流ブロック32を上下移動させることが可能である。
【0014】
リンク板34において長孔34Aからさらに下端側では、カム軸37が左右方向から一対のリンク板34を貫通している。カム軸37の両端には、各々のリンク板34の外側において板カムであるカム36が装着されている。すなわち、カム軸37は、一方のリンク板34の下端からもう一方のリンク板34の下端まで、回転可能に架け渡されている。カム36は、カム軸37の回転とともに一体となって回転する。一対のリンク板34の外側にそれぞれ設置されている一対のカム36の外周がそれぞれ一対のローラ35と対応している。さらに、カム軸37の一端(
図1中では右側)には、レバー38が装着されている。レバー38の操作に伴い、カム軸37は回転し、カム36は、カム軸37の回転に連動して回転する。ローラ35と当接するカム36が回転に伴い、カム36がローラ35と摺動することで、カム軸37はカム36のカムプロフィールに応じてローラ35から接近したり離れたりするように上下運動する。
【0015】
ここで、カム軸37はリンク板34の下端に設置されているので、カム軸37が上下運動することで、リンク板34を介して下流ブロック32を上下運動させることができる。そして、カム36のカムプロフィールの設計により、下流ブロック32が上下運動する行程を制御することができる。このように下流ブロック32を上下運動させることで、上流ブロック31と下流ブロック32との相対距離が変化する。また、ローラ35が回転自在であることによって、カム36の回転をスムーズにすることができる。また、ローラ35が長孔34Aに貫通して設けられることにより、リンク板34の上下運動の方向ずれを防止できる一方で、構造のコンパクト性も確保できる。
【0016】
一方、スプリング33は、常に引っ張られる状態で、下流ブロック32に連結され、下流ブロック32を上方へ付勢している。そして、下流ブロック32に対しては、リンク板34による保持力とスプリング33による引っ張り力が常に加えられている。
【0017】
なお、本実施形態において、第一台座20Aと上流ブロック31とはそれぞれ個別に形成されているが、一体に形成してもよい。第二台座20B及び下流ブロック32も同様である。第一台座20A及び上流ブロック31、並びに第二台座20B及び下流ブロック32がそれぞれ一体に形成されると、上流ブロック31が第一台座20Aに、下流ブロック32が第二台座20Bにそれぞれ合体した構造となる。これにより、圧着機構30におけるリンク板34は、第一台座20A及び第二台座20Bに直接的に連接すればよいので、単体で上流ブロック31及び下流ブロック32を設置する必要はなくなる。
【0018】
図2は、第一台座20Aの構成を示す斜視図であり、
図3は、第二台座20Bの構成を示す斜視図である。第一台座20A及び第二台座20Bはいずれも、平坦な面として形成されている載置部25(第一載置部25A及び第二載置部25B)と載置部25の周辺で立設されている周辺壁24(第一周辺壁24A及び第二周辺壁24B)とを有する。第一載置部25A及び第二載置部25Bの中心にはそれぞれ、連通孔としての第一連通孔21A及び第二連通孔21Bが開口している。本実施形態においては、最初にカラム50を第一台座20Aの第一載置部25Aに載置するので、第一台座20Aの第一周辺壁24Aにはカラム50の入り口としての開口部26が設けられている。なお、この開口部26は必ずしも設けられていなくてもよい。すなわち、第一周辺壁24Aはカラム50を出し入れ自由にしつつ、カラム50の外周面を保持することができる。載置部25は、第一端面に相当する。
【0019】
図4は、第二台座20Bの内部構成を例示して台座20の内部の流路に関する構造を示す断面図である。第二台座20Bには、下流側の第二通液流路22Bが貫通している。第二通液流路22Bの下端部の近傍(すなわち、第二通液流路22Bが第二台座20Bの第二載置部25Bに近づいている箇所)には、第二通液流路22Bの内径が漸増し、流路内面が第二台座20Bの第二載置部25Bに向かって徐々に広がるように拡径部23が形成されている。第二通液流路22Bの中心軸Cを通る断面図においては、拡径部23がテーパ形状に形成されている。この拡径部23の端縁が第二連通孔21Bとして第二載置部25Bに開口している。この拡径部23は、第二通液流路22B及び第二連通孔21Bと同じ中心軸Cを有する。なお、後述するように、第一台座20Aにも、上流側の第一通液流路22Aが貫通している。第一通液流路22Aの上端部の近傍(すなわち、第一通液流路22Aが第一台座20Aの第一載置部25Aに近づいている箇所)には、第一通液流路22Aの内径が漸増し、流路内面が第一台座20Aの第一載置部25Aに向かって徐々に広がれるように拡径部23が形成されている。第一通液流路22Aの中心軸を通る断面図においては、拡径部23がテーパ形状に形成されている。この拡径部23の端縁が第一連通孔21Aとして第一載置部25Aに開口している(
図8参照)。第一通液流路22Aの上端部及び第二通液流路22Bの下端部は、それぞれカラム着脱ユニット10の外部流路(図示せず)と繋がっている。第一通液流路22Aと第二通液流路22Bとは、カラム着脱ユニットにある第一流路となり、カラム50を外部流路に連通するための通液流路22である。
【0020】
図5は、カラム50(第二部材に相当する)の構成を示す断面図である。カラム50は、中空な内部空間である本体流路51Aを有する略円筒状のカラム本体51と、カラム本体51の両端に、それぞれ第一フィルタ53A、第二フィルタ53Bを介して装着される略円筒状の第一キャップ52A及び第二キャップ52Bとを有している。第一キャップ52A及び第二キャップ52Bは一端が後述する通液孔61の箇所以外で閉鎖して他端が開放した略円筒状の形をしている。第一キャップ52A及び第二キャップ52Bの端面はそれぞれ、中心から周囲に向かってカラム50の外周面まで傾斜する傾斜面60(第二端面に相当する)として形成されている。第一キャップ52Aの傾斜面60は第一傾斜面60Aであり、第二キャップ52Bの傾斜面60は、第二傾斜面60Bである。第一傾斜面60Aと第二傾斜面60Bは円筒状のカラム50の両端面として形成されている。第一キャップ52A及び第二キャップ52Bの外周面はカラム50の外周面に該当する。第一傾斜面60A及び第二傾斜面60Bはいずれも、緩やかな角度のテーパ形状に形成されている。
【0021】
そして、カラム50は、両端面と外周面を有する中空の略円筒状であるが、両端がカラム50の中心軸Cの延長線に沿ってわずかに尖がっているような形状を呈している。第一キャップ52A及び第二キャップ52Bは、それぞれの中心軸Cに沿って、第一カラム流路62A及び第二カラム流路62Bが貫通している。第一カラム流路62A及び第二カラム流路62Bは、本体流路51Aとともに、カラム流路62(第二流路に相当する)を構成している。第一カラム流路62A及び第二カラム流路62Bは、第一傾斜面60A及び第二傾斜面60Bの中心に、すなわち、カラム50の両端の最頂点に、第一通液孔61A及び第二通液孔61Bをそれぞれ開口している。第一通液孔61A及び第二通液孔61Bがそれぞれ開口しているところは、第一傾斜面60A及び第二傾斜面60Bの先端となっている。第一通液孔61Aは第二通液孔61Bとともに通液孔61と称される。本体流路51Aには、液体クロマトグラフィー装置100において被検物質の分離分析に用いられる充填材が充填されている。
【0022】
図6は、カラム着脱ユニット10にカラム50を載置した状態を示す斜視図である。本実施形態において、カラム50は第一台座20Aにおける第一周辺壁24Aの開口部26から手前より第一台座20Aに載置される。なお、開口部26が設けられていない場合は、カラム50を上から第一台座20Aに載置することは可能である。カラム50が第一台座20Aに載置されると、第一傾斜面60A及び第二傾斜面60Bはそれぞれ、第一台座20Aの第一載置部25A及び第二台座20Bの第二載置部25Bと対向するように、カラム着脱ユニット10に載置される。この状態で、第一傾斜面60Aが第一載置部25Aと接触し、カラム50の外周面が第一周辺壁24Aと接触する一方、第二傾斜面60Bは第二台座20Bからは離れている。
図6に示すこの状態から、レバー38を上方へ起こすと、レバー38の回転と連動してカム軸37が回転し、それに連動してカム36も上方へ起きるように回転する。
【0023】
カム36は、ローラ35に当接しながらローラ35の円周に沿って摺動し、カム36のプロフィールに従い、カム軸37がそれによって下方へ押し下げられる。これにより、リンク板34の下端側がカム軸37に引っ張られ、リンク板34がカム軸37とともに下方へ移動する。そして、リンク板34の下方への移動に従い、下流ブロック32がスプリング33をさらに伸張させつつ下方へ移動し、
図7の斜視図に示すように、第二台座20Bが第二傾斜面60Bに接近し、接触し、圧着される。この状態で、第二部材であるカラム50が、第一部材であるカラム着脱ユニット10に接合される。カム36のプロフィールを適宜設計することで、第二台座20Bが第二傾斜面60Bに接触する速度や圧着する力の度合いを調整可能である。たとえば、第二台座20Bが第二傾斜面60Bに接触する時点から、カム36の回転により、第一台座20Aと第二台座20Bとを介してカラム50に加えられる圧着力を所定値まで徐々に増加させることができる。また、スプリング33により下流ブロック32を引っ張りながら、第二台座20Bを第二傾斜面60Bに向かって降下させることで、第二台座20Bが急激に第二傾斜面60Bに接触することを防止できる。
【0024】
上記したように、上流ブロック31、下流ブロック32、スプリング33、リンク板34、ローラ35、カム36、カム軸37及びレバー38は、一対の台座20の載置部(第一端面)25を二つの端面である傾斜面(第二端面)60に圧着させて、通液流路(第一流路)22とカラム流路(第二流路)62との中心軸Cを一致させ、通液流路22とカラム流路62とを接合させる圧着機構30として作用する。
【0025】
図8は、
図7に示す接合状態をX-X断面図で示すものである。この接合状態で、カラム着脱ユニット(第一部材)10の上流側の通液流路(第一流路)22である第一通液流路22Aの下流端である拡径部23の中心軸Cがカラム(第二部材)50の上流側のカラム流路(第二流路)62である第一カラム流路62Aの中心軸Cと一致している。同様に、カラム着脱ユニット(第一部材)10の下流側の通液流路(第一流路)22である第二通液流路22Bの上流端である拡径部23の中心軸Cがカラム(第二部材)50の下流側のカラム流路(第二流路)62である第二カラム流路62Bの中心軸Cと一致している。この状態で、第一通液流路22Aから流れてきた液体は、第一カラム流路62Aから本体流路51Aを通過し、第二カラム流路62Bから第二通液流路22Bへと流れていく。
【0026】
図9は、カラム着脱ユニット10とカラム50との接合部分を示す拡大断面図である。拡径部23の端縁である第二連通孔21B(連通孔21)の径は、第二通液孔61Bの径よりも大きい。そして、第二傾斜面60B(傾斜面60)の中心部、すなわち第二通液孔61Bの周辺が、拡径部23に入り込むことが可能である。また、後述のように、拡径部23の内面のテーパ角度α(第一テーパ角度)が傾斜面60のテーパ角度β(第二テーパ角度)より小さく形成されていて、かつ、カラム50の径が連通孔21の径より大きいので、第二傾斜面60Bは拡径部23の周縁との接触面が小さい。
【0027】
図10は、第一端面である台座20の載置部25と、第二端面である傾斜面60との接合の状態を示す模式図である。
図10においては、傾斜面60が、カラム50の中心軸Cに垂直な仮想面となす傾斜角度γは1°以上10°以下である。なお、載置部25が当該仮想面と図面上で重複しているので、本図では当該仮想面は省している。拡径部23の内面のテーパ角度αは、30°以上90°以下である。傾斜面60のテーパ角度βは160°以上178°以下である。すなわち、テーパ角度βはテーパ角度αより大きい。ここで、傾斜面60の傾斜角度γと傾斜面60のテーパ角度βとの間は、下記の式が成立する。
【0028】
2γ+β=180°
【0029】
拡径部23及び傾斜面60のそれぞれのテーパ角度がこのような数値範囲を有することによって、傾斜面60の先端部だけ、すなわち、通液孔61の付近が連通孔21に浅く入り込んだ状態で密着することが可能となっている。これにより、第二流路であるカラム流路62から、第一流路である通液流路22へ流れる液体が、拡径部23の辺縁と傾斜面60との間に形成されるスペース23Aに滞留しにくくなっている。そして、この構成が液体クロマトグラフィー装置100(
図11参照)で応用されることで、検体がスペース23Aに必要以上に滞留せず、検体の流れがスムーズになり、検体を測定する際の異常ピークを抑えられる。また、拡径部23の最大径部分に当たる連通孔21の径が通液孔61の径より大きいため、カラム50を台座20に載置する位置が多少ずれたとしても、傾斜面60の先端部が拡径部23に入り込んで傾斜面60が拡径部23の端縁と確実に接合できるため、多少の位置ずれは吸収することができ、液体の流通に支障を来すことはない。
【0030】
上記のような構成は、カラム50のキャップ(第一キャップ52A及び第二キャップ52B)及び台座20の少なくとも一方が弾性変形を被ることで実現される。しかし、カラム50は消耗品であるため、カラム50のキャップの方が台座20より変形しやすい材質で形成されていることが望ましい。たとえば、カラム50のキャップがポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂製で、台座20がステンレス製であるように、カラム50のキャップの方が台座20よりも高度の低い材質であることが望ましい。
【0031】
図11は、液体クロマトグラフィー装置100の概略構成を示す模式図である。第一部材であるカラム着脱ユニット10に装着された第二部材であるカラム50には、上流側の給液路110から被検物質を含有する液体が流入する。流入した液体は、カラム50内の充填材との吸着及び分配などの相互作用により、各成分が選択的に遅延されて送液路120から流出する。流出した各成分は、各々の遅延に基づき到達する時間に差を生じさせつつ測定部130に流入して所定の測定に供されたのち、排液路140から排出される。
【0032】
図12は、拡径部23のテーパ角度が測定結果に及ぼす影響を示すクロマトグラムである。このクロマトグラムは、カラム50の第二端面を傾斜面ではなく平坦面とした状態で、拡径部23のテーパ角度を60°にした場合を実線で示し、120°にした場合を破線で示している。このクロマトグラムは、被検物質として血液中のヘモグロビンを測定したものである。拡径部23のテーパ角度が120°の場合、矢印で示すような異常なピークが観察された。一方、拡径部23のテーパ角度が60°の場合はこのような異常なピークは観察されなかった。これは、拡径部23のテーパ角度が120°の場合、
図10に示すスペース23Aに液体が滞留しやすくなるのに対し、拡径部23のテーパ角度が60°の場合はこのスペース23Aに滞留しにくくなり、カラム50から溶出した成分が速やかに測定部130へ送出されていくためであると推測される。よって、拡径部23のテーパ角度が30°~90°であることで、測定結果に悪影響を与える異常なピークの出現を抑制することが可能となる。なお、この
図12の測定結果は、カラム50の第二端面を傾斜面60とした場合でも同様の傾向になるものと推察される。
【0033】
図13は、カラム50の締付力と非密着による圧力降下との関係に及ぼすカラムの傾斜面の角度の影響を示すグラフである。この締付力とは、上述のように、二つの台座20を介して上下方向からカラム50に加えられる圧着力のことである。なお、ここでいう「非密着」とは、カラム50の端面と台座20の載置部25との接合が不十分であることを意味する。すなわち、この非密着により、カラム50内部の圧力低下を招き、液漏れや測定不能をもたらす恐れがある。このグラフは、傾斜面60のテーパ角度βをそれぞれ、180°(菱形)、178°(丸)、及び174°(三角)としたカラム50をカラム着脱ユニット10に装着した際のデータを示している。傾斜面60のテーパ角度βが180°(菱形)、178°(丸)、及び174°(三角)であることは、それぞれ傾斜角度γが0°、1°、3°である状況に対応している。具体的には、横軸に示す締付力(N)を加えつつ、12MPaの圧力を加えて1分後のカラム50内部の圧力低下を観察した結果を示している。
【0034】
その結果、傾斜面60がテーパ角度180°(傾斜角度0°)、すなわち平坦面として形成されている場合、170N以上の高い締付力を加えても圧力低下を避けることはできなかった。一方、傾斜面60のテーパ角度βが178°(傾斜角度1°)の場合も、174°(傾斜角度3°)の場合も、いずれも120N程度の低い締付力でも圧力の低下は認められなかった。特に、傾斜面60のテーパ角度βが178°の場合には、100N未満の低い締付力でも圧力は低下せず、密着が十分であることを示している。これは、傾斜面60にテーパ角度が付けられていることで、傾斜面60の先端部が部分的に連通孔21に入り込んで締付力で密着されることで、圧力の低下が妨げられているものと推察される。なお、
図13の測定結果は、カラム着脱ユニット10側に拡径部23が形成されていない状態で測定した結果である。これに対して、拡径部23が形成され、傾斜面60にテーパ角度が形成される場合にも、同様の傾向になることと推察される。
【0035】
前述したように、傾斜面60の構成に基づいて、台座20が傾斜面60に接触する時点では線接触にほぼ等しいくらい小さい接触面であっても、カム36の回転によってカラム50に加わる圧着力が徐々に増加することで、第一キャップ52A及び第二キャップ52Bがある程度変形する。この変形により、小さい接触面からより密着が進んで、連通孔21の周辺ではリンク状の面接触になる。載置部25において、傾斜面60と台座20の載置部25との接触部分は、拡径部23の端縁の周辺に限られ、拡径部23の内面には及ばず、かつ載置部25の全面にわたらなくても十分な密着が可能である。また、カラム50の傾斜面60と台座20の載置部25との接合は、シール材などの別部材を介さなくても密着して接合した状態を容易に実現することができる。
【0036】
カラム50の端面、又は第一キャップ52A及び第二キャップ52Bの端面(第一傾斜面60A、第二傾斜面60B)において、台座20の載置部25と密着できる部分は、通液孔61の辺縁から離れた、連通孔21と接触する環状線からカラム50の外周面へ延伸する環状面に限られる。これにより、カラム50の端面の全面にわたらなくても十分な密着が可能である。そして、接触する面積が、カラム50の端面の全面より小さいため、台座20とカラム50の端面とが全面で面接触する場合に比べ、圧着されたときの接触部分の単位面積当たりの圧力が高くなる。これにより、カラムに圧着する力を小さくしても密着性が確保でき、容易に液密の状態を確保することができる。この状態は、第一連通孔21Aの拡径部23と第一傾斜面60Aとの間でも同様である。なお、拡径部23の端縁は面取り処理されていてもよい。
【0037】
以上、本実施形態の流路部材の接合構造は、第一流路(通液流路22)を有する第一部材(カラム着脱ユニット10)に、第二流路(カラム流路62)を有する第二部材(カラム50)を装着させて、第一流路と第二流路とを一致させて液体の流動を可能とするものである。具体的には、第一部材とするカラム着脱ユニット10と、第二部材とするカラム50とを含む流路部材の接合構造は、カラム50をカラム着脱ユニット10に装着する際に、カラム50のカラム流路62とカラム着脱ユニット10の通液流路22とを互いに位置合わせして装着し、液体をカラム50とカラム着脱ユニット10との間に流動可能とするように構成されている。第一流路は第一部材における第一端面(台座20の載置部25)に開口し、第二流路は第二部材における第二端面(傾斜面60)に開口する。また、第一流路の端部には、第一端面に向かって内径が漸増する拡径部23が形成される。さらに、第二端面は、第二流路の開口から周囲に向かって傾斜する傾斜面60として形成される。
【0038】
また、上記の部材の接続構造においては、拡径部の内面はテーパ形状に形成されているとともに、このテーパ形状のテーパ角度(換言すると、断面における内面の角度)が30°以上90°以下であることが望ましい。さらに、傾斜面はテーパ形状に形成されている。このテーパ形状のテーパ角度は160°以上178°以下であることが望ましい。傾斜面60のテーパ角度β(第二テーパ角度)が拡径部23の内面のテーパ角度α(第一テーパ角度)と異なることが望ましい。さらには、傾斜面60のテーパ角度βが拡径部23の内面のテーパ角度αより大きいことが望ましい。傾斜面60のテーパ角度βが拡径部23の内面のテーパ角度αより大きいことで、前記したように、カム36の回転によりカラム50に加わる圧着力が徐々に増力し、傾斜面60の先端部分が拡径部23に多少入り込んで、傾斜面60と拡径部23の内面とは全面で面接触することなく、小さい面接触が確保できるので、小さい圧着力でも単位面積当たりの圧力が高くなり、これにより密着性を確保することができる。
【0039】
さらに、上記の流路部材の接合構造においては、第一部材はさらに、第一端面と前記第二端面とを圧着させて前記第一流路と前記第二流路とを一致させる圧着機構30を備えることが望ましい。
【0040】
上記の流路部材の接合構造は、第一部材が液体クロマトグラフィー装置100におけるカラム着脱ユニット10であり、第二部材がカラム着脱ユニット10に着脱可能に装着されるカラム50である場合に特に適している。この場合、カラム50は、第二流路の両端に第二端面をそれぞれ備え、カラム着脱ユニット10は、第二流路の両端に対応する側にそれぞれ第一端面を備えている。
【0041】
すなわち、上記のカラム着脱ユニット10は、二つの端面(傾斜面60)と、二つの端面の中心にそれぞれ開口する通液孔61と、二つの通液孔61を結ぶカラム流路62と、を有するカラム50が装着されるものであって、カラム50の二つの端面にそれぞれ対向する一対の台座20と、一対の台座20の載置部25の各々に開口する連通孔21と、連通孔21の各々に連通する通液流路22と、通液流路22の末端に形成されるとともに台座20の載置部25に向かって内径が漸増する拡径部23と、一対の台座20の載置部25を二つの端面(傾斜面60)に圧着させて、通液流路22とカラム流路62とを一致させる圧着機構30と、を備える。拡径部23の内面はテーパ形状に形成されているとともに、このテーパ形状のテーパ角度が30°以上90°以下であることが望ましい。
【0042】
また、上記のカラム50は、互いに対向する一対の台座20と、一対の台座20の載置部25の各々に開口する連通孔21と、連通孔21の各々に連通する通液流路22と、を有するカラム着脱ユニット10に装着されるものである。カラム50は、カラム着脱ユニット10の一対の台座20の載置部25にそれぞれ対向する二つの端面と、この二つの端面の中心にそれぞれ開口する通液孔61と、二つの通液孔61を結ぶカラム流路62と、を備える。カラム50の当該二つの端面は、通液孔61から周囲に向かってカラムの外周面まで傾斜する傾斜面60として形成されている。傾斜面60はテーパ形状に形成されている。このテーパ形状のテーパ角度は、160°以上178°以下であることが望ましく、174°~178°であることがより望ましい。この構成により、通液孔61がカラムの端面の最頂点となり、二つの通液孔61の距離がカラム50の最長の長さとなる。
【0043】
また、
図7及び
図8に示すように、下流ブロック32は支持体に対して上下移動できるように設置されている。また、下流ブロック32に囲まれた第二台座20Bの内部空間には板バネ39が挿入されている。
【0044】
そして、リンク板34の下方への移動に従い、第二台座20Bが第二傾斜面60Bに接近し、接触した状態から、さらに第二台座20Bをカラム50に接合させると、板バネ39が収縮し始める。板バネ39の収縮に伴い、板バネ39から第二台座20Bへ、カラム50に向った押圧力が生じる。板バネ39のこの押圧力により、カラム50が、さらにカラム着脱ユニット10に密着する。これにより、カム36のプロフィールを調整することだけではなく、板バネ39の押圧力を調整することによっても、第二台座20Bと第二傾斜面60Bとが接合する力の度合いを調整可能である。すなわち、カム36と板バネ39とを組み合せることにより、第二台座20Bからカラム50の傾斜面に掛かる圧着力の調整が容易になっている。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、液体クロマトグラフィー装置などの検体測定装置、特に液体クロマトグラフィー装置におけるカラム着脱ユニットとカラムとの接合構造に利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
10 カラム着脱ユニット(第一部材)
11 支持体
20 台座 20A 第一台座 20B 第二台座
21 連通孔 21A 第一連通孔 21B 第二連通孔
22 通液流路(第一流路) 22A 第一通液流路 22B 第二通液流路
23 拡径部 23A スペース
24 周辺壁 24A 第一周辺壁 24B 第二周辺壁
25 載置部(第一端面) 25A 第一載置部 25B 第二載置部
26 開口部
30 圧着機構 31 上流ブロック 32 下流ブロック
33 スプリング 34 リンク板 34A 長孔
35 ローラ 36 カム 37 カム軸
38 レバー 39 板バネ
50 カラム(第二部材)
51 カラム本体 51A 本体流路
52A 第一キャップ 52B 第二キャップ
53A 第一フィルタ 53B 第二フィルタ
60 傾斜面(第二端面) 60A 第一傾斜面 60B 第二傾斜面
61 通液孔 61A 第一通液孔 61B 第二通液孔
62 カラム流路(第二流路)62A 第一カラム流路 62B 第二カラム流路
100 液体クロマトグラフィー装置
110 給液路 120 送液路 130 測定部
140 排液路
C 中心軸
α 拡径部の内面のテーパ角度
β 傾斜面のテーパ角度
γ 傾斜面の傾斜角度