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特開2024-108939心身状態統制方法、生体状態収集方法、及び、生体状態収集システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108939
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】心身状態統制方法、生体状態収集方法、及び、生体状態収集システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/16 20060101AFI20240805BHJP
   A61B 5/18 20060101ALI20240805BHJP
   G16H 20/70 20180101ALI20240805BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
A61B5/16 100
A61B5/18
G16H20/70
G08G1/16 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013605
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】砂川 未佳
(72)【発明者】
【氏名】式井 愼一
(72)【発明者】
【氏名】八木 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】仲井 渉
【テーマコード(参考)】
4C038
5H181
5L099
【Fターム(参考)】
4C038PP03
4C038PQ04
4C038PR01
4C038PS00
4C038PS01
4C038PS03
4C038PS07
5H181AA01
5H181CC04
5H181CC11
5H181FF27
5H181FF33
5H181LL20
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】対象者の心身状態を特定の状態に統制することが可能な心身状態統制方法を提供する。
【解決手段】心身状態統制方法は、コンピュータによって実行される心身状態統制方法であって、対象者99に対して、2以上の情報を順次提示すること(S102)と、対象者99に対して、提示された前記2以上の情報のうち、少なくとも1つの情報に対して、当該情報の変換、及び、変換後の情報に基づく応答を要求すること(S103)と、を含む。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータによって実行される心身状態統制方法であって、
対象者に対して、2以上の情報を順次提示することと、
前記対象者に対して、提示された前記2以上の情報のうち、少なくとも1つの情報に対して、当該情報の変換、及び、変換後の情報に基づく応答を要求することと、を含む
心身状態統制方法。
【請求項2】
前記応答を要求することにおいて、前記対象者に対して、提示された前記2以上の情報のうち、最後に提示された情報よりも1つ以上前に提示された情報に対して、当該情報を変換し、変換後の情報に基づく応答を要求する
請求項1に記載の心身状態統制方法。
【請求項3】
前記応答は、前記変換後の情報を応答することである
請求項1又は2に記載の心身状態統制方法。
【請求項4】
前記応答は、前記変換後の情報と所定の情報とを比較した結果を応答することである
請求項1又は2に記載の心身状態統制方法。
【請求項5】
前記対象者による前記応答を受け付けることと、
受け付けた前記応答が、正答であるか否かを判定することと、をさらに含む
請求項1又は2に記載の心身状態統制方法。
【請求項6】
受け付けた前記応答が、正答であるか否かの判定結果に基づいて、前記対象者の心身状態が統制された状態であるかを判定することをさらに含む
請求項5に記載の心身状態統制方法。
【請求項7】
前記情報の変換とは、前記対象者に提示される前記2以上の情報のそれぞれを示す第1認識要素から、当該第1認識要素が互いに異なる第1グループと第2グループとのいずれに属するかを示す第2認識要素を導出することである
請求項1又は2に記載の心身状態統制方法。
【請求項8】
前記情報の変換とは、前記対象者に提示される前記2以上の情報のそれぞれを示す第1認識要素から、当該第1認識要素を言語化した第3認識要素を導出することである
請求項1又は2に記載の心身状態統制方法。
【請求項9】
前記対象者に提示される前記2以上の情報のそれぞれは、数字である
請求項1又は2に記載の心身状態統制方法。
【請求項10】
前記情報の変換とは、前記2以上の情報としての前記数字を偶数と奇数とのいずれに属するかを示す偶奇属性を導出することである
請求項9に記載の心身状態統制方法。
【請求項11】
前記対象者に提示される前記2以上の情報のそれぞれは、アルファベットである
請求項1又は2に記載の心身状態統制方法。
【請求項12】
前記情報の変換とは、前記2以上の情報としての前記アルファベットを母音と子音とのいずれに属するかを示す母子音属性を導出することである
請求項11に記載の心身状態統制方法。
【請求項13】
前記2以上の情報を順次提示することにおいて、前記2以上の情報は、一定の間隔で提示される
請求項1又は2に記載の心身状態統制方法。
【請求項14】
前記2以上の情報を順次提示することにおいて、前記2以上の情報うちの一の情報が前記対象者に提示されて、当該一の情報に対する前記対象者による前記応答があってから、前記2以上の情報うちの前記一の情報に続く他の情報が前記対象者に提示される
請求項1又は2に記載の心身状態統制方法。
【請求項15】
請求項1に記載の心身状態統制方法と、
(a)前記2以上の情報のうちの最初の情報が提示されたときから所定時間後まで、(b)前記2以上の情報のうちの2つ目以降に当たる1つの情報が提示されたときの所定時間前から、前記2つ目以降に当たる1つの情報が提示されたときの所定時間後まで、(c)前記2以上の情報のうちのいずれか1つの情報に対する前記応答があったときの所定時間前から、前記応答があったときの所定時間後まで、としたとき、前記(a)、前記(b)及び前記(c)の少なくともいずれかにおける前記対象者の生体情報を計測することと、
計測結果と前記対象者の心身状態とを紐づけて記憶することと、を含む
生体状態収集方法。
【請求項16】
前記対象者による前記応答を受け付けることと、
受け付けた前記応答が、正答であるか否かを判定することと、をさらに含み、
受け付けた前記応答が、正答である場合のみ前記生体情報を記憶することを実行する
請求項15に記載の生体状態収集方法。
【請求項17】
前記対象者による前記応答を受け付けることと、
受け付けた前記応答が、正答であるか否かを判定することと、
受け付けた前記応答が、正答であるか否かの判定結果に基づいて、前記対象者の心身状態が統制された状態であるかを判定すること、をさらに含み、
前記対象者の心身状態が統制された状態であると判定された場合のみ前記生体情報を記憶することを実行する
請求項15に記載の生体状態収集方法。
【請求項18】
前記生体情報は、前記対象者の頭部挙動、体動、顔表情、視線、瞳孔径、心拍数、心電波形、脈波、皮膚抵抗値、呼吸数、脳波、及び、脳活動の少なくとも1つを含む
請求項15~17のいずれか1項に記載の生体状態収集方法。
【請求項19】
対象者に対して、2以上の情報を順次提示する提示装置と、
前記対象者に対する、提示された前記2以上の情報のうち、少なくとも1つの情報に対して、当該情報の変換、及び、変換後の情報に基づく応答の要求に応じた前記対象者による前記応答を受け付ける受付装置と、
(a)前記2以上の情報のうちの最初の情報が提示されたときから所定時間後まで、(b)前記2以上の情報のうちの2つ目以降に当たる1つの情報が提示されたときの所定時間前から、前記2つ目以降に当たる1つの情報が提示されたときの所定時間後まで、(c)前記2以上の情報のうちのいずれか1つの情報に対する前記応答があったときの所定時間前から、前記応答があったときの所定時間後まで、としたとき、前記(a)、前記(b)及び前記(c)のいずれかにおける前記対象者の生体情報を計測する計測装置と、
計測結果と前記対象者の心身状態とを紐づけて記憶する記憶装置と、を備える
生体状態収集システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人の心身状態を統制するための心身状態統制方法、ならびに、当該心身状態統制方法を用いた生体状態収集方法及び生体状態収集システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タスクを実施している人(以下対象者ともいう)に対して、注意力が発揮されている集中状態、又は、注意力が欠如した漫然状態(非集中状態)であるかを判定するための技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この場合、対象者の生体情報から集中度を推定によって算出することが想定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-001424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、対象者の生体情報から集中度を推定によって算出するためには、対象者の集中度と、対象者の生体情報とが紐づけられたデータセットが必要になるものの、このようなデータセットの作成において、対象者の集中度(又は漫然度)を特定の状態に維持する、すなわち、対象者の心身状態を特定の状態に統制することは難しい。
【0005】
このため、本開示は、対象者の心身状態を特定の状態に統制することが可能な心身状態統制方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る心身状態統制方法は、コンピュータによって実行される心身状態統制方法であって、対象者に対して、2以上の情報を順次提示することと、前記対象者に対して、提示された前記2以上の情報のうち、少なくとも1つの情報に対して、当該情報の変換、及び、変換後の情報に基づく応答を要求することと、を含む。
【0007】
また、本開示の一態様に係る生体状態収集方法は、上記に記載の心身状態統制方法と、(a)前記2以上の情報のうちの最初の情報が提示されたときから所定時間後まで、(b)前記2以上の情報のうちの2つ目以降に当たる1つの情報が提示されたときの所定時間前から、前記2つ目以降に当たる1つの情報が提示されたときの所定時間後まで、(c)前記2以上の情報のうちのいずれか1つの情報に対する前記応答があったときの所定時間前から、前記応答があったときの所定時間後まで、としたとき、前記(a)、前記(b)及び前記(c)の少なくともいずれかにおける前記対象者の生体情報を計測することと、計測結果と前記対象者の心身状態とを紐づけて記憶することと、を含む。
【0008】
また、本開示の一態様に係る生体状態収集システムは、対象者に対して、2以上の情報を順次提示する提示装置と、前記対象者に対する、提示された前記2以上の情報のうち、少なくとも1つの情報に対して、当該情報の変換、及び、変換後の情報に基づく応答の要求に応じた前記対象者による前記応答を受け付ける受付装置と、(a)前記2以上の情報のうちの最初の情報が提示されたときから所定時間後まで、(b)前記2以上の情報のうちの2つ目以降に当たる1つの情報が提示されたときの所定時間前から、前記2つ目以降に当たる1つの情報が提示されたときの所定時間後まで、(c)前記2以上の情報のうちのいずれか1つの情報に対する前記応答があったときの所定時間前から、前記応答があったときの所定時間後まで、としたとき、前記(a)、前記(b)及び前記(c)のいずれかにおける前記対象者の生体情報を計測する計測装置と、計測結果と前記対象者の心身状態とを紐づけて記憶する記憶装置と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、対象者の心身状態を特定の状態に統制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態に係る生体状態収集システムの使用事例を示す図である。
図2図2は、実施の形態に係る生体状態収集システムの機能ブロック図である。
図3図3は、心身状態統制の適否の検証結果を示す図である。
図4図4は、心身状態統制の適否の検証結果を示す図である。
図5図5は、実施の形態に係る情報の提示タイミングを説明するための図である。
図6図6は、実施の形態に係る生体状態収集システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示に至った経緯)
車両の運転等、事故を防ぐために集中度が要求されたり、学習などのタスクを効率的に行うために集中度が要求されたりすることがある。このような背景から、対象者(この場合、車両の運転者又は学習を行う者)の集中度を数値化できれば、漫然な状態での車両の運転、あるいは、漫然な状態での非効率的な学習を抑制するための指標として用いることができる。従来、集中度を算出するために、生体情報(対象者の頭部挙動、体動、顔表情、視線、瞳孔径、心拍数、心電波形、脈波、皮膚抵抗値、呼吸数、脳波、及び、脳活動等)の計測結果等が用いられることがある。しかしながら、生体情報のそれぞれの数値に対して、対象者の集中状態がどのような傾向に向かうかについては、経験的には知られているものの、具体的に、対象者ごとに、生体情報の数値がどの数値を基準にして集中状態から漫然状態に変化するのかについては、それぞれの対象者に合わせて個別に調整をする必要がある。このような場合には、対象者について、集中状態と生体情報とを紐づけた複数のデータセットを使って、データベース化したり機械学習を行って推論モデルを構築したりすることで、対象者に特化した推定が可能となる。
【0012】
ただし、対象者の生体情報を計測することは難しくはないものの、対象者の集中度(又は漫然渡)を特定の状態に維持する、すなわち、対象者の心身状態を特定の状態に統制することは難しい。より具体的には、対象者の心身状態を統制する方法として、Nバック課題を対象者に実施させるということが一般的に行われている。Nバック課題の詳細については後述するが、Nバック課題では、Nとして1を設定した1バック課題、Nとして2を設定した2バック課題、・・・のように、Nに整数を設定し、それぞれに対応する課題が構成される。そして、Nバック課題は、設定された整数が大きいほど難易度が高くなるという性質がある。対象者の心身状態を統制するために、Nバック課題を実施させれば、対象者は、その難易度に応じてNバック課題に集中状態になり、一方でNバック課題以外には漫然状態になることで、心身状態が統制される。ここで、Nバック課題では、Nに整数を設定するという性質上、1バック課題、2バック課題、3バック課題、・・・のように固定的な難易度の設定しかできないという点で課題がある。すなわち、1バック課題と2バック課題との間の難易度、2バック課題と3バック課題との間の難易度のように、NとしてNを設定したNバック課題とNとしてN+1を設定した(N+1)バック課題との間の難易度の設定はできなかった。
【0013】
そこで、本開示では、NとしてNを設定したNバック課題とNとしてN+1を設定した(N+1)バック課題との間の難易度など、中間的な難易度の課題を対象者に実施させて、対象者の心身状態を特定の状態に統制することが可能な心身状態統制方法等を提供する。
【0014】
(本開示の概要)
本開示の概要は以下の通りである。
【0015】
本開示の第1態様に係る心身状態統制方法は、コンピュータによって実行される心身状態統制方法であって、対象者に対して、2以上の情報を順次提示することと、対象者に対して、提示された2以上の情報のうち、少なくとも1つの情報に対して、当該情報の変換、及び、変換後の情報に基づく応答を要求することと、を含む。
【0016】
これによれば、提示された情報をそのまま用いた応答を要求する場合に比べて、対象者が情報の変換を行う必要があるという点で、応答に至るまでに必要な手順が増えるため、提示された情報をそのまま用いた応答を要求する場合よりも、応答に至るためにより高い集中度を要する。そうすると、この生体状態収集方法を実施しながら、並行して、別のタスクを行っていれば、当該別のタスクに対する対象者の状態が漫然状態に近づく。この漫然状態は、提示された情報をそのまま用いた応答を要求する場合に比べて、より高い漫然状態(より低い集中状態)である。このようにして、あるタスクを行っているときに、別の要因によって対象者の状態がより高い漫然状態に近づいたような、特定の心身状態に統制することが可能となる。
【0017】
また、本開示の第2態様に係る心身状態統制方法は、第1態様に係る心身状態統制方法であって、応答を要求することにおいて、対象者に対して、提示された2以上の情報のうち、最後に提示された情報よりも1つ以上前に提示された情報に対して、当該情報を変換し、変換後の情報に基づく応答を要求する。
【0018】
これによれば、提示された2以上の情報のうち、最後に提示された情報よりも1つ以上前に提示された情報に遡って、その情報を変換した変換後の情報に基づく応答を行わせることができる。
【0019】
また、本開示の第3態様に係る心身状態統制方法は、第1又は第2態様に係る心身状態統制方法であって、応答は、変換後の情報を応答することである。
【0020】
これによれば、変換後の情報そのままの応答を行わせることができる。
【0021】
また、本開示の第4態様に係る心身状態統制方法は、第1~第3態様のいずれか1態様に係る心身状態統制方法であって、応答は、変換後の情報と所定の情報とを比較した結果を応答することである。
【0022】
これによれば、変換後の情報と所定の情報とを比較した結果による応答を行わせることができる。
【0023】
また、本開示の第5態様に係る心身状態統制方法は、第1~第3態様のいずれか1態様に係る心身状態統制方法であって、対象者による応答を受け付けることと、受け付けた応答が、正答であるか否かを判定することと、をさらに含む。
【0024】
これによれば、応答を受け付けて、その応答が正答であるか否かを判定することができる。
【0025】
また、本開示の第6態様に係る心身状態統制方法は、第5態様に係る心身状態統制方法であって、受け付けた応答が、正答であるか否かの判定結果に基づいて、対象者の心身状態が統制された状態であるかを判定することをさらに含む。
【0026】
これによれば、応答が正答であるか否かによって、対象者の心身状態が統制された状態であるかを判定することができる。
【0027】
また、本開示の第7態様に係る心身状態統制方法は、第1~第6態様のいずれか1態様に係る心身状態統制方法であって、情報の変換とは、対象者に提示される2以上の情報のそれぞれを示す第1認識要素から、当該第1認識要素が互いに異なる第1グループと第2グループとのいずれに属するかを示す第2認識要素を導出することである。
【0028】
これによれば、2以上の情報のそれぞれを示す第1認識要素から、当該第1認識要素が互いに異なる第1グループと第2グループとのいずれに属するかを示す第2認識要素を導出する変換を行わせることができる。
【0029】
また、本開示の第8態様に係る心身状態統制方法は、第1~第6態様のいずれか1態様に係る心身状態統制方法であって、情報の変換とは、対象者に提示される2以上の情報のそれぞれを示す第1認識要素から、当該第1認識要素を言語化した第3認識要素を導出することである。
【0030】
これによれば、2以上の情報のそれぞれを示す第1認識要素から、当該第1認識要素を言語化した第3認識要素を導出する変換を行わせることができる。
【0031】
また、本開示の第9態様に係る心身状態統制方法は、第1~第8態様のいずれか1態様に係る心身状態統制方法であって、対象者に提示される2以上の情報のそれぞれは、数字である。
【0032】
これによれば、2以上の情報としての数字を提示することができる。
【0033】
また、本開示の第10態様に係る心身状態統制方法は、第9態様に係る心身状態統制方法であって、情報の変換とは、2以上の情報としての数字を偶数と奇数とのいずれに属するかを示す偶奇属性を導出することである。
【0034】
これによれば、2以上の情報としての数字を偶数と奇数とのいずれに属するかを示す偶奇属性を導出する変換を行わせることができる。
【0035】
また、本開示の第11態様に係る心身状態統制方法は、第1~第8態様のいずれか1態様に係る心身状態統制方法であって、対象者に提示される2以上の情報のそれぞれは、アルファベットである。
【0036】
これによれば、2以上の情報としてのアルファベットを提示することができる。
【0037】
また、本開示の第12態様に係る心身状態統制方法は、第11態様に係る心身状態統制方法であって、情報の変換とは、2以上の情報としてのアルファベットを母音と子音とのいずれに属するかを示す母子音属性を導出することである。
【0038】
これによれば、2以上の情報としてアルファベットを母音と子音とのいずれに属するかを示す母子音属性を導出する変換を行わせることができる。
【0039】
また、本開示の第13態様に係る心身状態統制方法は、第1~第12態様のいずれか1態様に係る心身状態統制方法であって、2以上の情報を順次提示することにおいて、2以上の情報は、一定の間隔で提示される。
【0040】
これによれば、一定の間隔で2以上の情報を提示できる。この結果、全ての情報の提示に要する時間を把握しやすいというメリットがある。
【0041】
また、本開示の第14態様に係る心身状態統制方法は、第1~第12態様のいずれか1態様に係る心身状態統制方法であって、2以上の情報を順次提示することにおいて、2以上の情報うちの一の情報が対象者に提示されて、当該一の情報に対する対象者による応答があってから、2以上の情報うちの一の情報に続く他の情報が対象者に提示される。
【0042】
これによれば、一の情報が対象者に提示されて、当該一の情報に対する対象者による応答があってから、2以上の情報うちの一の情報に続く他の情報を提示できる。この結果、全ての情報それぞれに対する応答を得ることができるというメリットがある。
【0043】
また、本開示の第15態様に係る生体情報収集方法は、第1~第14態様のいずれか1態様に係る心身状態統制方法と、(a)2以上の情報のうちの最初の情報が提示されたときから所定時間後まで、(b)2以上の情報のうちの2つ目以降に当たる1つの情報が提示されたときの所定時間前から、2つ目以降に当たる1つの情報が提示されたときの所定時間後まで、(c)2以上の情報のうちのいずれか1つの情報に対する応答があったときの所定時間前から、応答があったときの所定時間後まで、としたとき、(a)、(b)及び(c)の少なくともいずれかにおける対象者の生体情報を計測することと、計測結果と対象者の心身状態とを紐づけて記憶することと、を含む。
【0044】
これによれば、対象者の生体情報と、統制された心身状態とを紐づけて記憶することができる。
【0045】
また、本開示の第16態様に係る生体情報収集方法は、第15態様に係る生体情報収集方法であって、対象者による応答を受け付けることと、受け付けた応答が、正答であるか否かを判定することと、をさらに含み、受け付けた応答が、正答である場合のみ生体情報を記憶することを実行する。
【0046】
これによれば、応答が、正答である場合のみ生体情報を記憶することができる。
【0047】
また、本開示の第17態様に係る生体情報収集方法は、第15態様に係る生体情報収集方法であって、対象者による応答を受け付けることと、受け付けた応答が、正答であるか否かを判定することと、受け付けた応答が、正答であるか否かの判定結果に基づいて、対象者の心身状態が統制された状態であるかを判定すること、をさらに含み、対象者の心身状態が統制された状態であると判定された場合のみ生体情報を記憶することを実行する。
【0048】
これによれば、対象者の心身状態が統制された状態であると判定された場合のみ生体情報を記憶することができる。
【0049】
また、本開示の第18態様に係る生体情報収集方法は、第15~第17態様のいずれか1態様に係る生体情報収集方法であって、生体情報は、対象者の頭部挙動、体動、顔表情、視線、瞳孔径、心拍数、心電波形、脈波、皮膚抵抗値、呼吸数、脳波、及び、脳活動の少なくとも1つを含む。
【0050】
これによれば、対象者の頭部挙動、体動、顔表情、視線、瞳孔径、心拍数、心電波形、脈波、皮膚抵抗値、呼吸数、脳波、及び、脳活動の少なくとも1つと、統制された心身状態とを紐づけて記憶することができる。
【0051】
また、本開示の第19態様に係る生体情報収集システムは、対象者に対して、2以上の情報を順次提示する提示装置と、対象者に対する、提示された2以上の情報のうち、少なくとも1つの情報に対して、当該情報の変換、及び、変換後の情報に基づく応答の要求に応じた対象者による応答を受け付ける受付装置と、(a)2以上の情報のうちの最初の情報が提示されたときから所定時間後まで、(b)2以上の情報のうちの2つ目以降に当たる1つの情報が提示されたときの所定時間前から、2つ目以降に当たる1つの情報が提示されたときの所定時間後まで、(c)2以上の情報のうちのいずれか1つの情報に対する応答があったときの所定時間前から、応答があったときの所定時間後まで、としたとき、(a)、(b)及び(c)のいずれかにおける対象者の生体情報を計測する計測装置と、計測結果と対象者の心身状態とを紐づけて記憶する記憶装置と、を備える。
【0052】
これによれば、上記に記載の生体情報収集方法と同様の効果を奏することができる。
【0053】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の包括的又は具体的な例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、並びに、ステップ及びステップの順序等は、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0054】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、各図において縮尺などは必ずしも一致していない。各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0055】
(実施の形態)
[生体情報収集システム]
<構成>
まず、実施の形態に係る生体情報収集システムについて説明する。図1は、実施の形態に係る生体状態収集システムの使用事例を示す図である。図2は、実施の形態に係る生体状態収集システムの機能ブロック図である。
【0056】
図1に示すように、生体情報収集システム100(図2参照)は、メインタスクを行いながら、並行して提示装置103において提示された情報を対象者99(図2参照)が読み取り、要求に従って応答を行う(以下では、統制タスクともいう)ようにして用いられる。この例では、車両の運転時における漫然状態への移行を再現することを想定している。生体情報収集システム100は、上記のように想定されているタスクを実行している対象者99の生体情報を計測して記憶する(収集する)システムである。
【0057】
なお、この統制タスクをメインタスクとして行ってもよい。つまり、他のタスクを行うことなく、統制タスクのみを対象者99に行わせることで、統制タスクの難易度を変化させることによって対象者99を特定の心身状態に統制してもよい。
【0058】
図2に示すように、生体情報収集システム100は、提示装置103の他に、受付装置105、計測装置107、記憶装置109及びこれらの各装置の動作を制御するプロセッサ(不図示)を備える。図中では、生体情報収集システム100を構成するいくつかの構成要素間を処理情報のやり取りの意味での矢印で接続して示す場合があるが、各構成要素間にそれぞれプロセッサが介在しているとみなしてもよい。
【0059】
提示装置103は、対象者99に対して情報を提示する装置である。ここでの情報を提示するとは、図1に示すように情報(図中の「8」という数字)を画像として対象者99に視覚的に知覚させることで提示すること、及び、図示しないが、情報を音声として対象者99に聴覚的に知覚させることで提示することの少なくとも一方を含む。そのため、情報の提示では、対象者99に視覚的に知覚させること、及び、対象者99に聴覚的に知覚させることの一方は行われなくてもよい。提示装置103は、それぞれが1つの情報を示す予め生成された2以上の画像を順次提示することが可能なディスプレイである。ディスプレイは、有機ELや液晶等の表示パネルであってもよいし、8セグメントの数字やアルファベットのみを表示する表示パネルであってもよい。提示装置103には、統制タスクを実行するために対象者99に要求される応答を提示した情報からどのようなルールで導き出すかについて、説明するための応答要求画像(あるいは応答要求音声)を提示してもよい。逆に言えば、このような応答要求画像を提示せずとも、対象者99が応答を提示した情報からどのようなルールで導き出すかについて理解していれば、口頭説明などであっても、応答を要求することが達成されているといえる。
【0060】
受付装置105は、対象者99からの応答を受け付ける装置である。受付装置105は、マイクロフォン、プッシュボタン、モーションセンサを構成するカメラと画像処理装置との組み合わせ、タッチパネル、マウス、及び、キーボードなどのユーザインタフェースデバイスを1つ以上組み合わせて構成される。受付装置105は、受け付けた対象者99による応答を、プロセッサへと送り、この応答に応じて、記憶装置109が制御される。より具体的には、記憶装置109に後述の計測結果を記憶するか否かの判定が行われる。
【0061】
計測装置107は、対象者99の生体情報を計測によってシステムへと入力する装置である。計測装置107は、例えば、距離センサ、心拍系(電位センサ等)、モーションセンサ、呼吸センサ、マイクロフォン、ビデオカメラなどを1以上組み合わせて、対象者99の頭部の挙動、体動、顔表情、視線、瞳孔径、心拍数、心電波形、脈波、皮膚抵抗値、呼吸数、脳波、及び、脳活動の少なくとも1つが計測可能に構成されている。なお、計測装置107は、上記以外のセンサを用いて、既存のいかなる技術によって対象者99の頭部の挙動、体動、顔表情、視線、瞳孔径、心拍数、心電波形、脈波、皮膚抵抗値、呼吸数、脳波、及び、脳活動の少なくとも1つを計測してもよい。計測装置107は、計測された数値を、そのまま、又は、必要であれば生体情報の指標値への変換処理などを行ったうえで、計測結果としてプロセッサに送り、受付装置105で得られた対象者の応答に応じて、記憶装置109が制御される。より具体的には、記憶装置109に記憶するか否かの判定が行われる。
【0062】
記憶装置109は、計測結果と対象者99の心身状態とを紐づけて記憶する情報記憶用の装置である。記憶装置109は、情報を記憶することができれば、その様式に特に限定はなく。電気的、光学的又は磁気的に情報を記憶する。記憶装置109に記憶された情報は、例えば、対象者99の生体情報の計測結果から当該対象者99の心身状態を推定するために用いられる。そのため、記憶装置109に記憶された情報は、生体情報の計測結果と心身状態とを対応付ける関数を構成していたり、生体情報の計測結果と心身状態とを対応付けるデータベースを構成していたり、生体情報の計測結果を入力すると心身状態を出力する推論モデルを構成していてもよい。計測結果と対象者99の心身状態とを紐づけて記憶するとは、単に互いの対応関係を明確にして計測結果と対象者99の心身状態とをそのまま記憶することに加えて、関数、データベース、又は、推論モデルを記憶して元の情報を記憶していないことも含む概念である。
【0063】
<統制タスク>
以下、このような生体情報収集システム100において実行される統制タスクについて説明する。従来、対象者99の集中状態等を測る目的で、Nバック課題と呼ばれるタスクが用いられることがあった。Nバック課題では、Nに整数が入り(設定され)、0バック課題、1バック課題、2バック課題、・・・のように、Nの数字に応じて徐々に高難度となるタスクが構築可能である。1バック課題では、複数の情報を順次提示したときに、対象者99は、最後に提示された情報よりも1つ前の情報について応答を行う。2バック課題では、複数の情報を順次提示したときに、対象者99は、最後に提示された情報よりも2つ前の情報について応答を行う。このように、Nバック課題では、複数の情報を順次提示したときに、対象者99が、最後に提示された情報よりもNの数字分だけ前の情報について応答を行う。Nバック課題では、1バック課題と2バック課題との間で、2バック課題と3バック課題との間で、難易度に大きな開きがあり、例えば、1バック課題では対象者99には簡単すぎて漫然状態に心身状態を統制できず、2バック課題では対象者99には難しすぎて完全に漫然状態に心身状態が統制されてしまう。あるいは、統制タスク自体をあきらめてしまい、メインタスクに集中しきってしまう(完全に集中状態に心身状態が統制されてしまう)ということがあった。つまり、Nバック課題よりも難易度が高く、(N+1)バック課題よりも難易度が低いような中間的な統制タスク、あるいは、Nバック課題及び(N+1)バック課題では実現できないような難易度(例えば、(N+1)バック課題よりも少しだけ難易度が低い又は高い等)の統制タスクが求められている。
【0064】
そこで本実施の形態における統制タスクとしては、Nバック課題と同様に、複数の情報を順次提示し、その情報のそれぞれに対して情報の変換、及び、変換後の情報に基づく応答を対象者99に要求する。この変換は、Nバック課題と(N+1)バック課題との難易度の差よりは難易度が小さいといえる。これにより、対象者99において変換という手順が増えるため、統制タスクは、単なるNバック課題よりも、難易度が高く、(N+1)バック課題よりも難易度を低く抑えることができる。又は、Nバック課題及び(N+1)バック課題では実現できないような難易度にすることができる。以下、具体的に説明する。
【0065】
本実施の形態における統制タスクでは、例えば、0~9までの1桁の数字の中からランダムに選択された数字を情報として対象者99に提示する。対象者99は、提示された情報に対して、数字をそのものの意味の値として認識し、当該値が偶数に属するか奇数に属するかを考え偶奇属性を導出する(変換する)。あるいは、対象者99は、提示された情報に対して、数字をそのものの意味の値として認識し、当該値が5以上の値に属するか5未満の値に属するかを考え大小属性を導出する(変換する)。
【0066】
他にも、A~Zまでの1文字のアルファベットの中からランダムに選択されたアルファベットを情報として対象者99に提示する。対象者99は、提示された情報に対して、アルファベットをそのものの意味の文字として認識し、当該文字が母音に属するか子音に属するかを考え母子音属性を導出する(変換する)。
【0067】
このように、本実施の形態における統制タスクでは、提示された情報をそのままに示す第1認識要素から、互いに異なる第1グループと第2グループとのいずれに当該第1認識要素が属しているかを示す第2認識要素を導出するという情報の変換を要求する。そうすることで、第1認識要素から第2認識要素を導出するという手順が増えて、対象者99を特定の心身状態に統制することができる。なお、ここでは2つのグループに属性分けする例を示しているが、属性分けのグループは3つ以上でもよい。
【0068】
ところで、Nバック課題では、Nの数字分だけ前の情報をそのまま応答することもあるし、Nの数字分だけ前の情報を所定の情報(例えば、予め与えられた数字、又は、最後に提示された数字等)と比較した結果(一致するか否か)を応答することもある。本実施の形態における統制タスクにおいても、Nバック課題同様に、Nの数字分だけ前の情報を変換した変換後の情報をそのまま応答してもよく、Nの数字分だけ前の情報を変換した変換後の情報を、所定の情報(例えば、予め与えられた数字を同じように変換した情報、又は、最後に提示された数字を同じように変換した情報等)と比較した結果(一致するか否か)を応答してもよい。
【0069】
具体的に、偶奇属性に変換する偶奇属性化を例に説明する。ここでは、1バックの偶奇属性化の統制タスクを例示する。
【0070】
まず、提示される情報として、1、4、7、3、4、2、2の数字がこの順に対象者99に提示されるとする。そして、この例では、1つ前の情報の偶奇属性を、最後に提示された数字の偶奇属性と比較し、一致している場合にプッシュボタンを押下し、一致していない場合にプッシュボタンを押下しないという応答をすることとする。
【0071】
上記の数字を全て偶奇属性に置き換えると、奇数、偶数、奇数、奇数、偶数、偶数、偶数となる。そうすると、4つ目に提示された3において、1つ前の7と偶奇属性が一致するのでプッシュボタンを押下する。また、6つ目に提示された2において、1つ前の4と偶奇属性が一致するのでプッシュボタンを押下する。また、7つ目に提示された2において、1つ前の2と偶奇属性が一致するのでプッシュボタンを押下する。
【0072】
図3及び図4は、心身状態統制の適否の検証結果を示す図である。この図では、ドライビングシミュレータを用いた被験者(8人)に対して1バック課題(1back)、2バック課題(2back)、及び、偶奇属性化の変換を伴う1バックでの属性一致判定(偶奇属性判定)を行い、被験者の主観負荷及び運転パフォーマンスの低下(ドライビングシミュレータにてブレーキ反応すべきイベントが発生した時点から、ドライバがアクセルから足を離した時点までの経過時間)観点で評価した。図3に被験者の主観負荷の結果を示し、図4に運転パフォーマンスの低下の結果を示している。図3では負荷が大きいほど、図4では運転パフォーマンスの低下が大きいほど、それぞれ統制タスクの難易度が高いといえる。図3及び図4に示すように、偶奇属性判定の難易度は、1backと2backとの間に収まっているので、本実施の形態における統制タスクは1バック課題よりも難易度が高く、2バック課題よりも難易度が低いような中間的な統制タスクとなっているといえる。本実施の形態では、この例のような変換を伴う統制タスクを対象者99に要求する。
【0073】
ここで、図5は、実施の形態に係る情報の提示タイミングを説明するための図である。本実施の形態における統制タスクでは、複数の情報を順次提示することが必須である。このとき、複数の情報をどのようなタイミングで提示するかについては、いくつかの考え方を適用できる。具体的には、本実施の形態では、図5の(a)に示すように、提示される複数の情報のうち、一の情報を提示した後に、一の情報に対する対象者99による応答を受け付けてから、一の情報に続く他の情報の提示を行う。この結果、一の情報に対する対象者99による応答を記憶装置109への情報の記憶に用いることができるので有利である。この詳細については、生体情報収集システム100の動作とともに後述する。
【0074】
一方で、対象者99の心身状態の統制という観点では、対象者99による応答を受け付ける前に、(統制タスクに取り組んでいるのであれば)情報の変換を行う時点で対象者99の心身状態の統制が完了するといえるので、対象者99による応答を受け付ける必要はない。そのため、図5の(b)に示すように、複数の情報を一定の間隔で提示してもよい。つまり、提示される複数の情報のうち、一の情報とそれに続く他の情報とが、一定期間の間隔をあけて、対象者99による応答と無関係に提示される。このようにすることで、統制タスクの完了を早めることができ、ユーザビリティの観点で有利である。
【0075】
なお、情報の変換には、上記のように提示された情報の属性化という変換の他の変換が含まれてもよい。例えば、統制タスクにおいて対象者に提示された2以上の情報のそれぞれをそのままに示す第1認識要素から、当該第1認識要素を言語化した第3認識要素を導出するという情報の変換が要求されてもよい。ここでの言語化とは、1、4、7などの数字が提示されたときにその数字を発話したときの音である、「いち」、「よん」、「なな」に変換することである。あるいは、言語化とは、1、4、7などの数字が提示されたときにその数字を発話したときの音である、「One(ワン)」、「Four(フォー)」、「Seven(セブン)」に変換することであってもよい。また、言語化とは、1、4、7などの数字が提示されたときにその数字を筆記したときの特徴量(形状、画数、総筆記量等)に変換することであってもよい。このように、情報の変換とは、提示された情報をそのままに示す認識要素から、それ以外の別の認識要素に変換できれば、どのような変換であってもよい。
【0076】
情報の変換の態様によっては、上記の偶奇属性化、母子音属性化等のように、Nバック課題とN+1バック課題との間の難易度の統制タスクを実現することもできるし、あるいは、N+1バック課題よりも少しだけ低い又は高い難易度の統制タスクを実現することもできる。このように、本願開示によれば、変換を伴うことによって従来のNバック課題では実現できないような難易度の統制タスクを実現でき、対象者99をその難易度に応じた特定の心身状態に統制することが可能となる。
【0077】
<動作>
次に、図6を参照して、生体情報収集システム100の動作について説明する。図6は、実施の形態に係る生体状態収集システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【0078】
図6に示すように、まず、プロセッサは、計測装置107を動作させて、生体情報の計測を開始し、生体情報を常時計測中の状態にする(S101)。次に、提示装置103は、予め決められた統制タスクになるように、複数の情報を順次提示する(S102)。一方、提示装置103は、同時に応答要求画像を提示するなどして、対象者99への応答の要求を提示によって対象者99に理解させる。これにより、生体情報収集システム100は、対象者99に応答を要求する(S103)。
【0079】
受付装置105は、要求に対する対象者99による応答を受け付ける(S104)。このとき、受付装置105は、一の情報を提示してから他の情報の提示が行われるまでの間は、受け付けた応答を一の情報に対する応答として受け付ける。ここでプロセッサは、受け付けた応答が正答であるか否かを判定する(S105)。応答が正答である場合、対象者99が正しく統制タスクに取り組んでいると判断できる。一方、正答でない場合、対象者99は、例えばメインタスクに取り組んでおり、そのような場合に計測された生体情報は、統制された情報であるとはいい難い。
【0080】
そこで、本実施の形態では、プロセッサによる応答が正答であるか否かの判定結果に基づいて、対象者99が正しく統制された状態であるかを判定し(S106)、対象者99が正しく統制された状態であると判定された場合(S106でYes)にのみ、計測された生体情報を統制後の心身状態と紐づけて記憶装置109に記憶する(S107)。対象者99が正しく統制された状態であると判定されなかった場合(S106でNo)には、計測された生体情報を破棄し、記憶装置109には記憶しない。
【0081】
なお、統制後の心身状態と紐づけて記憶される対象者99の生体情報は、対象者99による応答を受け付けたタイミングに対応する期間分でもよいし、応答を受け付けたタイミングとは無関係な期間分でもよい。対象者99による応答を受け付けたタイミングに対応する期間は、具体的には、2以上の情報のうちのいずれか1つの情報に対する応答があったときの所定時間前から、当該応答があったときの所定時間後までの、応答のタイミングを基準とする両側所定時間分の幅を有する期間である。所定時間は、収集された生体情報を用いたデータベース又は推論モデルの構築に必要な機関であり、システム開発者等によって任意に設定されればよい。
【0082】
また、応答を受け付けたタイミングとは無関係な期間は、具体的には、統制タスクの実施のために、システムから対象者99に対する情報の提示を行ったときの情報の提示タイミングに対応する期間である。より詳しくは、2以上の情報のうちの最初の情報が提示されたときから所定時間後までの、提示のタイミングを基準とする片側所定時間分の幅を有する期間、及び、2以上の情報のうちの2つ目以降に当たる1つの情報が提示されたときの所定時間前から、当該2つ目以降に当たる1つの情報が提示されたときの所定時間後までの、提示のタイミングを基準とする両側所定時間分の幅を有する期間である。所定時間については、上記と同様である。 対象者99が正しく統制された状態であるかの判定は、複数回の(言い換えると複数の提示された情報のそれぞれに対する)応答が正答であるか否かの判定結果に基づいて判定されてもよいし、単にその都度の応答が正答であるか否かの判定結果に基づいて判定されてもよい。後者の場合は、正答であるか否かの判定結果と、対象者99が正しく統制された状態であるかの判定結果とは1対1で対応しているので、対象者99が正しく統制された状態であるかの判定(S106)を省略して、S105でフローを分岐させてもよい。すなわち、S105でプロセッサによる応答が正答であるか否かを判定し、応答が正答であると判定された場合にのみ、計測された生体情報を統制後の心身状態と紐づけて記憶装置109に記憶し(S107)、応答が正答でないと判定された場合には、計測された生体情報を破棄し、記憶装置109には記憶しない。
【0083】
(その他の実施の形態)
以上、本開示に係る心身状態統制方法等について、上記実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、上記の実施の形態に限定されるものではない。例えば、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【0084】
例えば、本開示は、心身状態統制方法及び生体情報収集方法として実現できるだけでなく、生体情報収集システムの各構成要素が行う処理をステップとして含むプログラム、及び、そのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体として実現することもできる。プログラムは、記録媒体に予め記録されていてもよく、あるいは、インターネットなどを含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。
【0085】
つまり、上述した包括的又は具体的な態様は、システム、装置、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータ読み取り可能な記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本開示は、タスクを実行する対象者の生体情報を用いて、当該対象者の心身状態を推定するためのシステム等に利用される。
【符号の説明】
【0087】
99 対象者
100 生体情報収集システム
103 提示装置
105 受付装置
107 計測装置
109 記憶装置
301 シミュレータ
302 操舵デバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6