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▶ 株式会社吉野工業所の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108940
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】繰出容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 40/04 20060101AFI20240805BHJP
   A45D 40/20 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
A45D40/04 B
A45D40/20 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013606
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】吉村 和寿
(57)【要約】
【課題】カートリッジの部品点数を減らし、棒状内容物の繰り出しと繰り入れが安定的に行え、カートリッジを操作体に簡単に装着することができる繰出容器を提案する。
【解決手段】操作体1は、螺旋溝3cを設けた外周壁部と、縦溝4bを有し軸線O回りに回転可能な中間周壁部4aと、縦溝4bを挿通して螺旋溝3cに係合する突起5bを有する内周壁部5aと、内周壁部5aに設けられる操作体係合部5cを備え、カートリッジ6は、棒状内容物Cを支持して進退移動可能な中皿本体部8aと、内周壁部5aが前進すると内周壁部5aに接触して中皿本体部8aを前進させる接触部8eと、内周壁部5aが接触部8eに接触する前は操作体係合部5cと非係合であり、内周壁部5aが接触部8eに接触して中皿本体部8aが前進するとカートリッジ周壁部7aによって押圧されて操作体係合部5cに係合するカートリッジ第一係合部8fとを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作体と、棒状内容物を保持して該操作体に装着されるカートリッジとを備える繰出容器であって、
前記操作体は、
内周面に螺旋溝を設けた外周壁部と、
前記外周壁部の軸線に沿って延在する縦溝を有し、該外周壁部の径方向内側に位置して該外周壁部に対して相対的に該軸線回りに回転可能な中間周壁部と、
前記縦溝を挿通して前記螺旋溝に係合する突起を有し、前記中間周壁部の径方向内側に位置する内周壁部と、
前記内周壁部に設けられる操作体係合部と、を備え、
前記カートリッジは、
前記棒状内容物を取り囲むカートリッジ周壁部と、
前記棒状内容物を支持して前記カートリッジ周壁部の径方向内側に位置し、該カートリッジ周壁部に対して進退移動可能な中皿本体部と、
前記外周壁部に対して前記中間周壁部が回転して前記内周壁部が前進すると該内周壁部に接触して前記中皿本体部を前進させる接触部と、
弾性変形可能であって、前記内周壁部が前記接触部に接触する前は前記操作体係合部と非係合である一方、該内周壁部が前記接触部に接触して前記中皿本体部が前進すると前記カートリッジ周壁部によって径方向内側に押圧されて該操作体係合部に係合するカートリッジ第一係合部と、を備える繰出容器。
【請求項2】
前記内周壁部は、前記内周壁部が前記接触部に接触する前の状態において前記操作体係合部と非係合になる位置まで前記カートリッジ第一係合部の弾性変形を許容する切欠き部を有する、請求項1に記載の繰出容器。
【請求項3】
前記カートリッジ周壁部は、前進する前記内周壁部が挿入される後方開口と、前記カートリッジを前記操作体から脱離させた状態において、該後方開口からの前記中皿本体部の抜け出しを阻止するカートリッジ第二係合部を有する、請求項1に記載の繰出容器。
【請求項4】
前記操作体係合部は、前記内周壁部を後退させて前記中皿本体部を使用時後退限へ移動させた際に前記カートリッジ第二係合部に係合して該内周壁部の後退を停止させる、請求項3に記載の繰出容器。
【請求項5】
前記操作体係合部は、弾性変形可能であって、前記カートリッジ第二係合部に係合した状態から更に前記内周壁部を後退させると該カートリッジ第二係合部との係合が解除する、請求項4に記載の繰出容器。
【請求項6】
前記カートリッジは、前記中皿本体部から突き出して前記棒状内容物に埋入する状態から該中皿本体部の内側に収まる状態までスライドする可動部を備える、請求項1に記載の繰出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繰出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
口紅やリップクリーム、或いはスティックタイプの糊のような棒状の内容物を収容する容器として、操作体を回転させることによって周壁部内に配置した中皿を前進させ、中皿で支持した棒状の内容物を周壁部の前方開口から繰り出すことができる繰出容器が既知である。
【0003】
このような繰出容器は、多くの場合は内容物を保持する部分と操作体とが分離不能に結合されていて、内容物を使い切った後はそのまま廃棄される。一方、省資源化や環境への負荷削減の観点から、内容物を保持するカートリッジを操作体から分離可能としたカートリッジタイプの繰出容器も提案されている(例えば特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-342331号公報
【特許文献2】特開2003-174930号公報
【特許文献3】特開2002-34651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで従来使用されているカートリッジタイプの繰出容器は、特許文献1~3に示されているように、中皿を進退移動させる繰出機構がカートリッジに設けられている。すなわち、カートリッジに用いられる部品点数が多いため、更なる省資源化を図るうえで改善の余地がある。一方、省資源化のために繰出機構を操作体に設けようとすると、カートリッジの中皿と操作体の繰出機構とを連結させる構造に工夫が必要である。すなわち、棒状内容物の繰り出しと繰り入れが安定的に行えるようにするには、中皿と繰出機構とが確実に連結されなければならない。一方、カートリッジを操作体に装着するにあたって中皿と繰出機構とを連結させる操作が複雑であると、使い勝手が損なわれることになる。
【0006】
このような点に鑑み、本発明は、従来に比してカートリッジに用いられる部品点数を減らすことができ、また棒状内容物の繰り出しと繰り入れが安定的に行えるうえ、カートリッジを操作体に簡単に装着することができる繰出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、操作体と、棒状内容物を保持して該操作体に装着されるカートリッジとを備える繰出容器であって、
前記操作体は、
内周面に螺旋溝を設けた外周壁部と、
前記外周壁部の軸線に沿って延在する縦溝を有し、該外周壁部の径方向内側に位置して該外周壁部に対して相対的に該軸線回りに回転可能な中間周壁部と、
前記縦溝を挿通して前記螺旋溝に係合する突起を有し、前記中間周壁部の径方向内側に位置する内周壁部と、
前記内周壁部に設けられる操作体係合部と、を備え、
前記カートリッジは、
前記棒状内容物を取り囲むカートリッジ周壁部と、
前記棒状内容物を支持して前記カートリッジ周壁部の径方向内側に位置し、該カートリッジ周壁部に対して進退移動可能な中皿本体部と、
前記外周壁部に対して前記中間周壁部が回転して前記内周壁部が前進すると該内周壁部に接触して前記中皿本体部を前進させる接触部と、
弾性変形可能であって、前記内周壁部が前記接触部に接触する前は前記操作体係合部と非係合である一方、該内周壁部が前記接触部に接触して前記中皿本体部が前進すると前記カートリッジ周壁部によって径方向内側に押圧されて該操作体係合部に係合するカートリッジ第一係合部と、を備える繰出容器である。
【0008】
前記内周壁部は、前記内周壁部が前記接触部に接触する前の状態において前記操作体係合部と非係合になる位置まで前記カートリッジ第一係合部の弾性変形を許容する切欠き部を有することが好ましい。
【0009】
前記カートリッジ周壁部は、前進する前記内周壁部が挿入される後方開口と、前記カートリッジを前記操作体から脱離させた状態において、該後方開口からの前記中皿本体部の抜け出しを阻止するカートリッジ第二係合部を有することが好ましい。
【0010】
前記操作体係合部は、前記内周壁部を後退させて前記中皿本体部を使用時後退限へ移動させた際に前記カートリッジ第二係合部に係合して該内周壁部の後退を停止させることが好ましい。
【0011】
前記操作体係合部は、弾性変形可能であって、前記カートリッジ第二係合部に係合した状態から更に前記内周壁部を後退させると該カートリッジ第二係合部との係合が解除することが好ましい。
【0012】
前記カートリッジは、前記中皿本体部から突き出して前記棒状内容物に埋入する状態から該中皿本体部の内側に収まる状態までスライドする可動部を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
上記のような構成になる本発明の繰出容器によれば、操作体が繰出機構を備えているため、カートリッジの部品点数を減らすことができる。また、カートリッジを操作体に装着するにあたり、操作体の内周壁部がカートリッジの接触部に接触する前は操作体係合部とカートリッジ第一係合部は非係合であるため、カートリッジを操作体に容易に装着することができる。また、内周壁部が接触部に接触して中皿本体部が前進すると、カートリッジ第一係合部はカートリッジ周壁部によって径方向内側に押圧されて操作体係合部に係合する。すなわち、棒状内容物の繰り出しと繰り入れを行う際、内周壁部は接触部に接触し、カートリッジ第一係合部は操作体係合部に係合しているため、棒状内容物を安定的に繰り出したり繰り入れたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る繰出容器の一実施形態を示す側面視での半断面図である。
図2A図1に示した操作体にカートリッジを装着する状態を示した図である。
図2B図2AにおけるA部の部分拡大図である。
図3図1に示した第一回転体の側面図である。
図4A図2Aの後、操作体にカートリッジを装着した状態を示した図である。
図4B図4AにおけるB部の部分拡大図である。
図5A図4Aの後、第二回転体を前進させて内周壁部が接触部に接触した状態を示した図である。
図5B図5AにおけるC部の部分拡大図である。
図6A図5Aの後、第二回転体を前進させて操作体係合部とカートリッジ第一係合部が係合した状態を示した図である。
図6B図6AにおけるD部の部分拡大図である。
図7A図6Aの後、第二回転体を前進させて中皿が使用時前進限まで移動した状態を示した図である。
図7B図7AにおけるE部の部分拡大図である。
図8】可動部材を後退させた状態を示した図である。
図9A図8の後、第二回転体を後退させて中皿が使用時後退限まで移動した状態(操作体係合部とカートリッジ第二係合部が係合した状態)を示した図である。
図9B図9AにおけるF部の部分拡大図である。
図10A図9Aの後、第二回転体を後退させて操作体係合部とカートリッジ第一係合部との係合が解除した状態を示した図である。
図10B図10AにおけるG部の部分拡大図である。
図11】操作体からカートリッジを取り外した状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明に係る繰出容器の一実施形態である繰出容器20について説明する。なお、本明細書等において上下方向とは、図示した軸線Oに沿う向きであって、図1に示した操作体1が位置する側が「下」であり、キャップ10が位置する側が「上」である。なお、下記の説明においては、図面の下側から上側に向かう向きでの動きを前進、上側から下側に向かう向きでの動きを後退と称する場合もある。また径方向とは、軸線Oに対して垂直な面内で軸線Oと直交する方向であり、周方向とは、この面内で軸線Oを中心として周回する方向である。
【0016】
まず、図1に示した繰出容器20の構成について説明する。本実施形態の繰出容器20は、操作体1、カートリッジ6、キャップ10を備えている。カートリッジ6には、棒状内容物Cが保持されている。棒状内容物Cは、例えば口紅やリップクリームなどの化粧品の他、薬剤、糊等である。
【0017】
操作体1は、操作体本体2、底体3、第一回転体4、第二回転体5を備えている。カートリッジ6は、カートリッジ本体7、中皿8、可動体9を備えている。そしてキャップ10は、外側キャップ11、内側キャップ12を備えている。繰出容器20を構成する各部材は種々の素材で形成可能であるが、本実施形態では合成樹脂で形成されている。また各部材の詳細な形状は後述するが、各部材の中心は何れも軸線Oと一致している。
【0018】
操作体本体2は、図1図2Aに示すように軸線Oを中心とする円筒状の下筒部2aを備えている。下筒部2aの内周面には、図2Bに示すように上下方向に延在する(軸線Oに沿って延在する)とともに周方向に間隔をあけて設けられる複数の縦リブ2bが設けられている。下筒部2aの上端部には、径方向内側に向けて延在した後に上方に向けて延在する上筒部2cが設けられている。
【0019】
底体3は、円板状をなしていて下筒部2aに嵌合保持される底壁部3aを備えている。底壁部3aの外縁部には、下筒部2aの径方向内側に位置する円筒状の底体筒部3bが設けられている。底体筒部3bの内周面には、螺旋溝3cが設けられている。そして底体筒部3bの外周面には、図2Bに示すように上下方向に延在するとともに周方向に間隔をあけて設けられる複数の縦リブ3dが設けられている。底体3の縦リブ3dは操作体本体2の縦リブ2bと周方向に互いに係合するものであり、これにより操作体本体2に対して底体3は回り止めされている。本実施形態における下筒部2aと底体筒部3bは、本明細書等の「外周壁部」に相当する。なお、底体筒部3bの内周面に設けた螺旋溝3cは、底体筒部3bを廃止して下筒部2aの内周面に設けてもよい。
【0020】
第一回転体4は、底体筒部3bの径方向内側に位置する円筒状の中間周壁部4aを備えている。図3に示すように中間周壁部4aには、軸線Oに沿って延在して中間周壁部4aを径方向に貫通するように切り欠く縦溝4bが設けられている。図1図2Aに示した第一回転体4は、縦溝4bを設けた位置での縦断面図である。中間周壁部4aの上端部には、径方向外側に向けて延在した後に上方に向けて延在する上側中間周壁部4cが設けられている。上側中間周壁部4cは、図1図2Aに示すように上筒部2cの下面と底体筒部3bの上面との間に位置し、操作体本体2と底体3に対して軸線O周りに回転可能に支持されている。
【0021】
また上側中間周壁部4cは、図4Bに示すように、内周面から径方向内側に向けて突出し、上面が傾斜して下面は水平方向に延在する爪状の係合突起4dを備えている。そして上側中間周壁部4cの内周面において係合突起4dの上方には、上下方向に延在するとともに周方向に間隔をあけて設けられる複数の回り止め突起4eが設けられている。
【0022】
第二回転体5は、中間周壁部4aの径方向内側に位置する円筒状の内周壁部5aを備えている。内周壁部5aは、径方向外側に向けて突出する突起5bを備えている。突起5bは、図示したように縦溝4bを挿通して螺旋溝3cに係合する。第二回転体5は、操作体本体2と底体3に対して軸線O周りに回転可能である。すなわち、操作体本体2と底体3に対して第一回転体4と第二回転体5が相対的に回転すると、内周壁部5aは軸線Oに沿って進退移動する。
【0023】
また内周壁部5aは、図1図2Aに示すように、操作体係合部5cを備えている。本実施形態の操作体係合部5cは、内周壁部5aを上端部から切り込むようにして形成した外向き爪状になるものである。操作体係合部5cは、内周壁部5aに対して径方向内側に撓むように弾性変形可能である。操作体係合部5cは、後述するカートリッジ第一係合部8fとカートリッジ第二係合部7fに対し、周方向に重なる位置に設けられている。
【0024】
カートリッジ本体7は、軸線Oを中心とする円筒状のカートリッジ周壁部7aを備えている。ここで、カートリッジ周壁部7aにおける上方の開口を前方開口7bと称し、カートリッジ周壁部7aにおける下方の開口を後方開口7cと称する。カートリッジ周壁部7aの外周面には、図4Bに示すように、上下方向に延在するとともに周方向に間隔をあけて設けられる複数の回り止め突起7dが設けられている。カートリッジ本体7の回り止め突起7dは、第一回転体4の回り止め突起4eと周方向に互いに係合するものであり、これにより操作体1にカートリッジ6を装着した際、カートリッジ本体7は第一回転体4に対して回り止め保持される。そして図2Aに示すようにカートリッジ周壁部7aの下端部には、下方から上方に向けてカートリッジ周壁部7aを貫通する切欠き部7eが設けられている。
【0025】
またカートリッジ周壁部7aは、図2Aに示すように、その下端部に係合部(カートリッジ第二係合部7f)を備えている。なおカートリッジ第二係合部7fは、図2Aに示すように切欠き部7eとは周方向にずれた位置に設けられるが、説明の都合上、図4Bに示すように切欠き部7eを設けた位置において仮想線で示す場合がある。図4Bに示すように本実施形態のカートリッジ第二係合部7fは、外周面が径方向外側に突出して係合突起4dに係合する。すなわち操作体1にカートリッジ6を装着した際、カートリッジ本体7は第一回転体4に対して、上述したように回り止め保持されるとともに、カートリッジ第二係合部7fと係合突起4dとの係合によって抜け止め保持される。なお、カートリッジ第二係合部7fと係合突起4dとは浅く係合しているため、操作体1からカートリッジ6を取り外す際に過大な力を要することはない。また図2A図4Bに示すように本実施形態のカートリッジ第二係合部7fは、径方向内側に向けて比較的大きく突出し、後方開口7cを狭めている。図4Bに示すようにカートリッジ第二係合部7fにおける径方向内側に向けて突出する部位の上面には、径方向外側から内側に向かって下方に傾く傾斜面7gが設けられている。
【0026】
中皿8は、図1図2Aに示すように上方に向けて湾曲していて、中央部に貫通孔を備える中皿本体部8aを備えている。図示したように本実施形態の中皿本体部8aは、中央部に設けた貫通孔8bと、貫通孔8bの縁部から下方に向けて延在する下向き壁部8cと、中皿本体部8aの径方向外側部分に設けられた他の貫通孔8dを備えている。更に中皿本体部8aは、図4Bにおいて仮想線で示すように、下方に向けて突出する形状で形作られ、後述するように第二回転体5における内周壁部5aの上面に対して下面が接触する接触部8eを備えている。
【0027】
また中皿8は、図1図2Aに示すように、中皿本体部8aの外縁部につながる係合部(カートリッジ第一係合部8f)を備えている。本実施形態のカートリッジ第一係合部8fは、図4Bに示すように、その下端部は径方向内側に向けて突出して爪状に形作られている。またカートリッジ第一係合部8fは、図4Bに示すように径方向外側に向けて若干湾曲する状態が通常の形態であり、径方向外側から力を受けると、図6Bに示すように径方向内側に向けて弾性変形する。
【0028】
中皿8は、図1に示すようにカートリッジ周壁部7aの内側に配置される。カートリッジ周壁部7aの下部は、図2Aに示すように後方開口7cで貫通した状態にあるが、後方開口7cは径方向内側に向けて突出するカートリッジ第二係合部7fで狭められているため、カートリッジ周壁部7aの内側に配置された中皿8の脱落が防止される。
【0029】
可動体9は、中皿8に対して軸線Oに沿う向きにスライド可能である。本実施形態の可動体9は、有蓋筒状をなしていて、中皿本体部8aの中央部に設けた貫通孔8bに下方から挿入される中央突出部9aを備えている。中央突出部9aの周壁には、これを径方向に貫通する貫通開口9bが設けられている。中央突出部9aの下端部には、径方向外側に向かって延在するフランジ部9cが設けられている。なおフランジ部9cには、下向き壁部8cを挿通させる貫通孔が設けられている。そしてフランジ部9cの下面には、下向き壁部8cに沿って下方に向けて延在し、中皿8に対して可動体9がスライドする際に可動体9の傾きを抑制するガイド部9dが設けられ、フランジ部9cの上面には、貫通孔8dを挿通して上方に向けて延在する外側突出部9eが設けられている。なお、本実施形態の可動体9は、本明細書等の「可動部」に相当する。
【0030】
ここで棒状内容物Cについて説明する。棒状内容物Cは、例えばカートリッジ周壁部7a、中皿8、及び可動体9で取り囲まれた空間に固化前の内容物を充填し、これを固化させることによって得られる。このようにして設けた棒状内容物Cは、図1に示すように中央突出部9aと外側突出部9eが棒状内容物Cに埋入された状態にある。また図示は省略するが、充填した内容物は中央突出部9aにおける貫通開口9bの内側にも入り込む。すなわち中皿8と可動体9によって棒状内容物Cをより確実に保持することができる。
【0031】
このように本実施形態のカートリッジ6は、カートリッジ本体7、中皿8、可動体9、及び棒状内容物Cで構成されていて、従来のカートリッジのように繰出機構を備えていないため、従来に比して部品点数を削減することができる。
【0032】
外側キャップ11は、図1に示すように有蓋筒状をなしていて、カートリッジ本体7を覆って上筒部2cに装着される。
【0033】
内側キャップ12は、外側キャップ11の内側に挿入されて外側キャップ11に保持される。外側キャップ11を上筒部2cに装着した際、内側キャップ12はカートリッジ周壁部7aの上端部に接触して、棒状内容物Cと外気との接触を抑制させることができる。なお、内側キャップ12は必要に応じて設ければよい。
【0034】
次に、繰出容器20の使用方法について説明する。図2Aに示すように操作体1にカートリッジ6を装着するにあたっては、図示した向きでカートリッジ6を操作体1に近づけて、図4Aに示すようにカートリッジ周壁部7aを上筒部2cの内側に挿入する。これにより、図4Bに示すようにカートリッジ本体7の回り止め突起7dと第一回転体4の回り止め突起4eが周方向に互いに係合し、またカートリッジ第二係合部7fと係合突起4dとが係合するため、カートリッジ本体7は、第一回転体4に対して回り止めされ且つ抜け止めされる。上述したように、カートリッジ第二係合部7fと係合突起4dは浅く係合する。またカートリッジ第一係合部8fは、図4Bに示すようにカートリッジ周壁部7aに設けた切欠き部7eが設けられた位置にあって、径方向外側に向けて若干湾曲した状態となっていて、操作体係合部5cとカートリッジ第一係合部8fは非係合の状態にある。このため、操作体1にカートリッジ6を装着する際に過大な力を要することはない。また、操作体1にカートリッジ6を装着するにあたり、カートリッジ第一係合部8fに対して下方から接触するものはない(図4A図4Bに示すように操作体係合部5cは、カートリッジ第一係合部8fの下方に位置している)。従って、操作体1にカートリッジ6を装着する際、中皿8が下方から突き上げられて棒状内容物Cが前方開口7bから押し出されることがない。
【0035】
次いで、カートリッジ本体7に対して操作体本体2を相対的に回転させる。ここでカートリッジ本体7は、上述したように第一回転体4に対して回り止めされている。そして、螺旋溝3cを設けた底体3は、操作体本体2に回り止めされている。また第二回転体5が備える突起5bは、第一回転体4が備える縦溝4bを挿通して底体3が備える螺旋溝3cに係合している。従って、カートリッジ本体7に対して操作体本体2を相対的に回転させると、第二回転体5が備える内周壁部5aは、図4Aに示した状態から図5Aに示した状態へ前進する。ここで中皿8が備えるカートリッジ第一係合部8fは、図5Bに示すように径方向外側に向けて若干湾曲した状態であるため、内周壁部5aに設けた操作体係合部5cは、カートリッジ第一係合部8fに係合せずに前進する。なお、図5Bに示すように前進した内周壁部5aは、中皿8に設けた接触部8eに接触する。
【0036】
そして、カートリッジ本体7に対して操作体本体2を更に相対的に回転させると、図6Aに示すように内周壁部5aは、図5Aに示した状態から更に前進する。上述したように、図5Aに示した状態で内周壁部5aは接触部8eに接触しているため、図6Aに示すように内周壁部5aが前進すると、内周壁部5aとともに中皿8も前進する。従って中皿8に設けたカートリッジ第一係合部8fは、図6Bに示すようにカートリッジ周壁部7aの内側に入り込んで径方向内側に押圧される。これにより、径方向内側に撓んだカートリッジ第一係合部8fが、操作体係合部5cに係合する。
【0037】
このように図6A図6Bに示す状態では、内周壁部5aは接触部8eに接触しているため、カートリッジ本体7に対して操作体本体2を相対的に回転させて内周壁部5aが前進すると、中皿8も前進するため、カートリッジ周壁部7aの前方開口7bから棒状内容物Cを繰り出して、棒状内容物Cを塗布することができる。また図6Bに示す状態では、カートリッジ第一係合部8fが操作体係合部5cに係合していて、操作体本体2を逆方向に回転させると、後退する内周壁部5aとともに中皿8も後退するため、棒状内容物Cを繰り入れてカートリッジ周壁部7aの内側に収納することができる。なお、図7Aに示すように、棒状内容物Cを使用する際に棒状内容物Cが最も繰り出される位置(使用時前進限)まで内周壁部5aを前進させても、図7Bに示すようにカートリッジ第一係合部8fは、操作体係合部5cに係合しているため、図7Aに示す状態からでも棒状内容物Cを繰り入れることができる。一方、操作体本体2を逆方向に回転させていくと、図9Bに示すように内周壁部5aに設けられた操作体係合部5cは、カートリッジ第二係合部7fに係合する。この状態が棒状内容物Cを使用する際に棒状内容物Cが最も繰り入れられる位置(使用時後退限)である。ここで、操作体係合部5cがカートリッジ第二係合部7fに係合すると、操作体本体2を回転させる際に指に伝わる感触が変わるため、使用者は、この位置が通常の使用において棒状内容物Cが最も繰り入れられる位置であると把握することができる。なお、図9Bに示す状態において、カートリッジ第一係合部8fはカートリッジ周壁部7aにおける切欠き部7eが設けられた位置にあって、径方向外側に向けて若干湾曲した状態にあるが、再び内周壁部5aが前進すると、図5A図5Bに示すように内周壁部5aが接触部8eに接触し、内周壁部5aとともに中皿8が前進するため、図6Bに示すようにカートリッジ第一係合部8fと操作体係合部5cを係合させることができる。
【0038】
ところで本実施形態の繰出容器20は、可動体9を備えていて、可動体9は、中皿8に対してスライド可能である。すなわち、図7Aに示す状態まで棒状内容物Cを使用しても、可動体9は中皿8の内側へスライドするため、外側突出部9eの周囲の棒状内容物Cも、図8に示すように中皿8に残さずに使い切ることができる。
【0039】
棒状内容物Cを使い切って新たなカートリッジ6を使用するにあたっては、操作体本体2を逆方向に回転させ、図9A図9Bに示すように内周壁部5aを後退させる。図9Bに示した状態において、操作体係合部5cはカートリッジ第二係合部7fに係合するが、上述したように操作体係合部5cは径方向内側に弾性変形可能であり、またカートリッジ第二係合部7fには傾斜面7gが設けられているため、操作体本体2を逆方向にやや強い力で回転させると、図10A図10Bに示すように内周壁部5aは更に後退し、操作体係合部5cとカートリッジ第二係合部7fとの係合が解除される。この状態では、操作体係合部5cとカートリッジ第一係合部8fは非係合であり、またカートリッジ第二係合部7fと係合突起4dは浅く係合しているだけなので、図11に示すように使用後のカートリッジ6を操作体1から容易に取り外すことができる。また図2Aを参照しながら説明したように、新たなカートリッジ6を操作体1に容易に装着することができる。なお、図11に示すようにカートリッジ6を操作体1から取り外した状態において、第二回転体5が上昇することがあると、新たなカートリッジ6を装着する際に操作体係合部5cが干渉することになるが、本実施形態の操作体1において、第一回転体4と第二回転体5は、操作体本体2の内側に位置しているため、不用意に第一回転体4や第二回転体5に触れることがない。従って本実施形態の操作体1によれば、カートリッジ6を取り外した状態でも、第一回転体4や第二回転体5を意図せずに回転させて第二回転体5が上昇してしまうことがない。
【0040】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば上述した実施形態の構成は、適宜追加、削除が可能であり、また一の実施形態の構成を他の実施形態に設けることも可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0041】
例えば本実施形態では、内周壁部5aに切欠き部7eを設け、カートリッジ第一係合部8fは、この切欠き部7eに位置するところで径方向外側に向けて若干湾曲するものであったが、切欠き部7eを用いずに、カートリッジ第一係合部8fを内周壁部5aから突き出させ、この位置でカートリッジ第一係合部8fが径方向外側に向けて若干湾曲するようにしてもよい。また、カートリッジ第一係合部8fが径方向外側に向けて若干湾曲する形状であるのは一例に過ぎず、本発明の趣旨の範囲において種々の形状が採用可能である。また可動体9を設けずに、中皿8のみで棒状内容物Cを支持するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1:操作体
2:操作体本体
2a:下筒部(外周壁部)
2b:縦リブ
2c:上筒部
3:底体
3a:底壁部
3b:底体筒部(外周壁部)
3c:螺旋溝
3d:縦リブ
4:第一回転体
4a:中間周壁部
4b:縦溝
4c:上側中間周壁部
4d:係合突起
4e:回り止め突起
5:第二回転体
5a:内周壁部
5b:突起
5c:操作体係合部
6:カートリッジ
7:カートリッジ本体
7a:カートリッジ周壁部
7b:前方開口
7c:後方開口
7d:回り止め突起
7e:切欠き部
7f:カートリッジ第二係合部
7g:傾斜面
8:中皿
8a:中皿本体部
8b:貫通孔
8c:下向き壁部
8d:貫通孔
8e:接触部
8f:カートリッジ第一係合部
9:可動体
9a:中央突出部
9b:貫通開口
9c:フランジ部
9d:ガイド部
9e:外側突出部
10:キャップ
11:外側キャップ
12:内側キャップ
20:繰出容器
C:棒状内容物
O:軸線
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11