(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108944
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】画像形成方法および画像形成システム
(51)【国際特許分類】
B41M 5/00 20060101AFI20240805BHJP
D06P 5/30 20060101ALI20240805BHJP
D06P 5/00 20060101ALI20240805BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
B41M5/00 114
B41M5/00 132
B41M5/00 100
B41M5/00 120
D06P5/30
D06P5/00 105
B41J2/01 123
B41J2/01 125
B41J2/01 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013616
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慎平
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4H157
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EA11
2C056EC14
2C056EC29
2C056EE17
2C056EE18
2C056FA10
2C056FB03
2C056FC02
2C056HA42
2C056HA46
2H186AB02
2H186AB05
2H186AB06
2H186AB12
2H186AB27
2H186AB56
2H186BA08
2H186DA17
2H186FA07
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
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2H186FB29
2H186FB48
2H186FB56
4H157AA01
4H157AA02
4H157BA15
4H157BA27
4H157CA15
4H157CA29
4H157CA32
4H157CB08
4H157CB13
4H157CB36
4H157CB45
4H157CB46
4H157CB56
4H157CC01
4H157DA01
4H157DA34
4H157GA06
4H157JA10
4H157JB01
4H157JB03
(57)【要約】
【課題】 インクジェット方式により布材に対して、白色顔料を用いた白インクにより画像を形成する際に、より粒径の小さい白色顔料を用いても、形成される白色画像における良好な白色度と割れの抑制とを両立可能とする画像形成方法を提供する。
【解決手段】 画像形成方法は、布材に水性の前処理液を塗布する前処理液塗布工程と、塗布された前処理液を加熱する加熱工程と、加熱工程後に、布材にインクをインクジェット方式により吐出して画像を形成する画像形成工程と、を含む。加熱工程後においては、布材には前処理液が残存しており、当該前処理液の残存量は30mg/cm2 未満である。インクは、平均粒子径が10nmを超え200nm以下の酸化チタン粒子を含有する白インクを少なくとも含む。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
布材に画像を形成する画像形成方法であって、
前記布材に水性の前処理液を塗布する前処理液塗布工程と、
塗布された前記前処理液を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程後に、前記布材にインクをインクジェット方式により吐出して画像を形成する画像形成工程と、を含み、
前記加熱工程後において、前記布材には前記前処理液が残存しており、当該前処理液の残存量は30mg/cm2 未満であり、
前記インクは、平均粒子径が10nmを超え200nm以下の酸化チタン粒子を含有する白インクを少なくとも含むことを特徴とする、
画像形成方法。
【請求項2】
前記加熱工程において、前記布材を圧縮する圧縮工程を含む、
請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記加熱工程後において、前記布材における前記前処理液の残存量の下限は、4mg/cm2 以上である、
請求項1または2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記加熱工程後において、前記布材における前記前処理液の残存量の上限は、22mg/cm2 以下である、
請求項1または2に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記加熱工程後において、前記布材における前記前処理液の残存量は、4mg/cm2 以上16mg/cm2 以下である、
請求項1または2に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記前処理液は、多価金属塩を含有する、
請求項1または2に記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記多価金属塩は、カルシウム塩またはマグネシウム塩であり、
前記加熱工程後において、前記布材に残存する前記前処理液に含まれるカルシウムイオン、マグネシウムイオンの量が0.05mg/cm2 ~1mg/cm2 の範囲内である、
請求項6に記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記前処理液塗布工程において、前記布材に塗布される前記前処理液の塗布量が、5mg/cm2 ~50mg/cm2 の範囲内であり、
前記加熱工程における加熱温度が100℃~180℃の範囲内であり、
前記圧縮工程における前記布材の圧縮圧力が5psi~50psiの範囲内である、
請求項7に記載の画像形成方法。
【請求項9】
前記酸化チタン粒子の平均粒子径が150nm以下である、
請求項1または2に記載の画像形成方法。
【請求項10】
前記酸化チタン粒子の平均粒子径が120nm以下である、
請求項1または2に記載の画像形成方法。
【請求項11】
前記酸化チタン粒子の平均粒子径が50nm以上120nm以下である、
請求項1または2に記載の画像形成方法。
【請求項12】
前記前処理液が増粘剤を含有する、
請求項1または2に記載の画像形成方法。
【請求項13】
前記加熱工程後において、前記布材に残存する前記前処理液の粘性が、1000mPa・s以上である、
請求項12に記載の画像形成方法。
【請求項14】
前記加熱工程後において、前記布材に残存する前記増粘剤の残存量が、0.6mg/cm2 以下である、
請求項12に記載の画像形成方法。
【請求項15】
布材に水性の前処理液を塗布する前処理液塗布部と、
塗布された前記前処理液を加熱する加熱部と、
前記加熱部による加熱後に、前記布材にインクをインクジェット方式により吐出して画像を形成する画像形成部と、
を備え、
前記インクは、平均粒子径が10nm以上200nm以下の酸化チタン粒子を含有する白インクを少なくとも含むものであり、
前記加熱部は、前記加熱後における前記布材における、前記前処理液の残存量が30mg/cm2 未満となるように、当該布材を加熱することを特徴とする、
画像形成システム。
【請求項16】
請求項1または2に記載の画像形成方法により画像が形成された、布材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式により布材に画像を形成する画像形成方法および画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、布材に対してインクジェット方式により画像を形成する方法が検討されている。代表的には、例えば、衣類(garment)に対してインクジェット方式により直接画像を形成する画像形成装置であるガーメントプリンタ、あるいは、DTG(Direct To Garment)等と呼ばれる画像形成方法が知られている。
【0003】
インクジェット方式による多くの画像形成方法は、基材として紙を想定しているが、基材が布材であっても、画像形成原理そのものには大きな違いは見られない。ただし、基材が布材である場合、画像形成時にインクジェット方式により吐出されたインクは、通常、布材の厚み方向に浸透する。そのため、一般的には、画像形成する前に、前処理液を布材に塗布すること、すなわち前処理工程を実施することが行われている。
【0004】
例えば、特許文献1には、前処理液として用いられる処理液組成物が開示されている。当該処理液組成物は、特にインクとして白色顔料を含有する白インクを用いる場合には、カチオン性化合物と水溶性樹脂と水とを含有する。また、当該処理液組成物に含まれる水溶性成分の分子量分布は所定の範囲内に設定されるとともに、特定分子量の水溶性樹脂の含有量を所定の範囲内に設定している。この特許文献1では、前処理液(処理液組成物)の布材への付着量(塗布量)として、0.02g/cm2 以上0.5g/cm2 以下の範囲が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
白色顔料はその素材の屈折率が大きいほど散乱強度が大きく、印刷物に優れた白色度を与えることが知られている。酸化チタンは数ある白色顔料の中でも非常に屈折率が大きく、さらに安全性も高いため、さまざまな分野で白色顔料として採用されている。しかしながら、酸化チタンには比重が大きく沈降しやすいという課題がある。そこで、沈降を抑制するために、粒径の小さい酸化チタンを白インクとして用いることが検討されている。
【0007】
例えば、特許文献1では、実施例において、平均粒子径250nmの酸化チタン粒子を用いて白インクを調製しているが、より小さい平均粒子径、例えば200nm以下の酸化チタン粒子を白色顔料として用いることも検討されている。
【0008】
ここで、白色顔料である酸化チタン粒子の粒径をより小さくすると、形成される白色画像の品質が低下する傾向にあることが分かった。具体的には、後述するように、200nm以下の酸化チタン粒子を用いた白インクでは、酸化チタン粒子の沈降を抑制できる反面、形成される白色画像において良好な白色度が得られなくなるおそれがある。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、インクジェット方式により布材に対して、白色顔料を用いた白インクにより画像を形成する際に、より粒径の小さい白色顔料を用いても、形成される白色画像における良好な白色度を実現可能とする画像形成方法および画像形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題に基づいて本発明者らは鋭意検討した。特許文献1には、白インクが塗布される際において、前処理液(特許文献1では処理液組成物)の残存量については全く検討されていない。これに対して、白インクを塗布する際には、前処理液の塗布量よりも残存量を適切な値とすることを試みた。これにより、白インクで形成される白色画像の品質をより一層良好なものにできることを本願発明者らが独自に見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本開示に係る画像形成方法は、前記の課題を解決するために、布材に画像を形成する画像形成方法であって、前記布材に水性の前処理液を塗布する前処理液塗布工程と、塗布された前記前処理液を加熱する加熱工程と、前記加熱工程後に、前記布材にインクをインクジェット方式により吐出して画像を形成する画像形成工程と、を含み、前記加熱工程後において、前記布材には前記前処理液が残存しており、当該前処理液の残存量は30mg/cm2 未満であり、前記インクは、平均粒子径が10nmを超え200nm以下の酸化チタン粒子を含有する白インクを少なくとも含む構成である。
【0012】
前記構成によれば、一般的に、酸化チタン粒子は、その比重が高いため、白インク中で経時的に沈降することが知られているが、平均粒子径を小さくすることで沈降速度を遅くすることができる。これにより、インクヘッドの吐出不良を抑制することが可能となる。
【0013】
さらに、白インクにより画像形成する前の時点で、前処理液を十分に蒸発させずに30mg/cm2 未満となるように敢えて残存させる。この状態で、吸収性基材である布材上に白インクを吐出すると、白インクの顔料成分である酸化チタン粒子は、布材の厚み方向に浸透することが抑制または回避され、良好な白色度を実現できる。しかも、前処理液が塗布された後に形成される白色画像において、割れの発生を有効に抑制または回避することができる。
【0014】
前記構成の画像形成方法においては、前記加熱工程において、前記布材を圧縮する圧縮工程を含む構成であってもよい。
【0015】
また、前記構成の画像形成方法においては、前記加熱工程後において、前記布材における前記前処理液の残存量の下限は、4mg/cm2 以上である構成であってもよい。
【0016】
また、前記構成の画像形成方法においては、前記加熱工程後において、前記布材における前記前処理液の残存量の上限は、22mg/cm2 以下である構成であってもよい。
【0017】
また、前記構成の画像形成方法においては、加熱工程後において、前記布材における前記前処理液の残存量は、4mg/cm2 以上16mg/cm2 以下である構成であってもよい。
【0018】
また、前記構成の画像形成方法においては、前記前処理液は、多価金属塩を含有する構成であってもよい。
【0019】
また、前記構成の画像形成方法においては、前記多価金属塩は、カルシウム塩またはマグネシウム塩であり、前記加熱工程後において、前記布材に残存する前記前処理液に含まれるカルシウムイオン、マグネシウムイオンの量が0.05mg/cm2 ~1mg/cm2 の範囲内である構成であってもよい。
【0020】
また、前記構成の画像形成方法においては、前記前処理液塗布工程において、前記布材に塗布される前記前処理液の塗布量が、5mg/cm2 ~50mg/cm2 の範囲内であり、前記加熱工程における加熱温度が100℃~180℃の範囲内であり、前記圧縮工程における前記布材の圧縮圧力が5psi~50psiの範囲内である構成であってもよい。
【0021】
また、前記構成の画像形成方法においては、前記酸化チタン粒子の平均粒子径が150nm以下である構成であってもよい。
【0022】
また、前記構成の画像形成方法においては、前記酸化チタン粒子の平均粒子径が120nm以下である構成であってもよい。
【0023】
また、前記構成の画像形成方法においては、前記酸化チタン粒子の平均粒子径が50nm以上120nm以下である構成であってもよい。
【0024】
また、前記構成の画像形成方法においては、前記前処理液が増粘剤を含有する構成であってもよい。
【0025】
また、前記構成の画像形成方法においては、前記加熱工程後において、前記布材に残存する前記前処理液の粘性が、1000mPa・s以上である構成であってもよい。
【0026】
また、前記構成の画像形成方法においては、前記加熱工程後において、前記布材に残存する前記増粘剤の残存量が、0.6mg/cm2 以下である構成であってもよい。
【0027】
また、本開示に係る画像形成システムは、布材に水性の前処理液を塗布する前処理液塗布部と、塗布された前記前処理液を加熱する加熱部と、前記加熱部による加熱後に、前記布材にインクをインクジェット方式により吐出して画像を形成する画像形成部と、を備え、前記インクは、平均粒子径が10nmを超え200nm以下の酸化チタン粒子を含有する白インクを少なくとも含むものであり、前記加熱部は、前記加熱後における前記布材における、前記前処理液の残存量が30mg/cm2 未満となるように、当該布材を加熱する構成であればよい。
【0028】
また、本開示には、前記構成の画像形成方法により画像が形成された、布材も含まれる。
【発明の効果】
【0029】
本発明では、以上の構成により、インクジェット方式により布材に対して、白色顔料を用いた白インクにより画像を形成する際に、より粒径の小さい白色顔料を用いても、当該白色顔料の沈降を抑制しつつ、形成される白色画像における良好な白色度と割れの抑制とを両立可能とする画像形成方法および画像形成システムを提供することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本開示の代表的な実施の形態に係る画像形成方法に用いられる、インクジェット方式の画像形成装置の概略構成を示す模式的平面図である。
【
図2】
図1に示す画像形成装置のキャリッジに搭載された吐出ヘッドの概略構成を示す模式的平面図である。
【
図3】(A)~(C)は、
図1に示す画像形成装置による画像形成前に、前処理液を塗布する構成例を示す模式的平面図である。
【
図4】(A)~(C)は、
図3(A)~(C)に示す画像形成装置または画像形成システムの制御構成例を示すブロック図である。
【
図5】本開示において白インクにより形成された白色画像に生じ得る割れの有無とその評価例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の代表的な実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0032】
[インクジェット方式による画像形成例]
本開示に係る画像形成方法に用いられるインクジェット方式の画像形成装置の具体的な構成は特に限定されない。代表的な画像形成装置の一例として、
図1に示すインクジェット方式のガーメントプリンタを挙げて、インクジェット方式による画像形成について説明する。
【0033】
図1に示すように、本実施の形態に係るインクジェット方式のガーメントプリンタ10は、少なくともインクを基材である布材に対して吐出するものであって、貯留タンク11、キャリッジ12、吐出ヘッド13、一対の搬送ローラ14、一対のガイドレール15、およびサブタンク16を備えている。なお、ガーメントプリンタ10におけるプラテン(図略)上に画像形成(印刷)の対象である基材(被印刷媒体)として布材30が配置される。
【0034】
キャリッジ12には
図1では破線で示す吐出ヘッド13が搭載されている。キャリッジ12は、布材30の搬送方向Dfに直交する移動方向Dsに延在する一対のガイドレール15に支持され、当該ガイドレール15に沿って移動方向Dsに往復動する。これにより、吐出ヘッド13は移動方向Dsに往復動する。
【0035】
ガーメントプリンタ10が備える制御装置は、吐出ヘッド13にインク滴を吐出させながらキャリッジ12を所定速度により移動させる。また、キャリッジ12には、複数のサブタンク16が搭載されている。各サブタンク16はチューブ(インク流路)を介して対応する貯留タンク11にそれぞれ接続されている。なお、
図1では図示の便宜上、サブタンク16は模式的に単一構造体として図示している。
【0036】
一対の搬送ローラ14は移動方向Dsに沿って互いに平行に配置されている。搬送ローラ14は搬送モータの駆動により回転し、これによりプラテン上の布材30が搬送方向Dfに搬送される。
【0037】
貯留タンク11にはインクが貯留されている。貯留タンク11は、サブタンク16およびチューブを介して吐出ヘッド13に接続されている。また、貯留タンク11は、インクの種類ごとに設けられている。
図1では図示の便宜上、サブタンク16と同様に、貯留タンク11は模式的に単一構造体として図示しているが、本実施の形態では、貯留タンク11は、例えば5つ存在する。具体的には、白インク、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタの各色のインクをそれぞれ貯留する5つのタンクが存在している。
【0038】
本実施の形態では、例えば
図2に示すように、キャリッジ12には2つの吐出ヘッド13A,13Bが搭載されている。吐出ヘッド13Aおよび吐出ヘッド13Bは搬送方向Dfに沿って並んでいる。吐出ヘッド13Bは吐出ヘッド13Aの例えば前方に配置されている。画像形成処理における1走査目にはキャリッジ12は移動方向Dsの右方(または移動方向Dsの他方向Ds2)に移動する。
【0039】
これにより、画像形成処理時において吐出ヘッド13A,13Bは右方に移動する。この場合、吐出ヘッド13は移動方向Dsの右方に移動しつつ布材30にインク滴を吐出する。画像形成処理においては、布材30を搬送方向Dfに搬送する動作と、これに伴って吐出ヘッドを移動させつつインク滴を吐出させる動作とが、交互に繰り返される。
【0040】
吐出ヘッド13Aは、白インク(W)のインク滴を吐出する。吐出ヘッド13Aには、白インクのインク滴を吐出するノズル列NLが搬送方向Dfに沿って形成されている。また、
図2に示す例では、吐出ヘッド13Aには、白インクのインク滴を吐出する4列のノズル列NLが、移動方向Dsに一定間隔で形成されている。なお、白インクのインク滴を吐出するノズル列NLは特に限定されず、例えば2列であってもよいし1列であってもよい。
【0041】
一方、吐出ヘッド13Bは、カラーインクと総称されることがあるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、およびブラック(K)の各色のインク滴を吐出する。吐出ヘッド13Bには、これら各インク滴を吐出するノズル列NLが搬送方向Dfに沿って形成されている。各ノズル列NLは移動方向Dsに一定間隔でそれぞれ形成されている。
【0042】
図2に示す例では、吐出ヘッド13Bにおける各ノズル列NLの移動方向Dsにおける配置順序は、移動方向Dsの他方向Ds2に向けてイエローのインク滴を吐出するノズル列NL、マゼンタのインク滴を吐出するノズル列NL、シアンのインク滴を吐出するノズル列NL、およびブラックのインク滴を吐出するノズル列NLであるが、これに限定されない。
【0043】
本実施の形態では、これら5色のインク滴が布材30に吐出されることで当該布材30にカラー画像が印刷される。特に本開示では、布材30に対してカラー画像を印刷する際には、当該布材30の色や布材30の材質への影響を低減するために、下地インクとして白インク滴が先に吐出され、白色画像が先に形成される。カラーインクのインク滴は、布材30上に形成された白色画像上に吐出される。
【0044】
本開示に係る画像形成方法では、後述するように、基材である布材30に対して白色画像を形成する前に前処理液を塗布する。布材30の画像形成面(印刷面)に前処理液を塗布することにより、布材30に白インクまたはカラーインクが滲みこんだり、布材30の目地等にこれらインクが入り込んだりする等の現象を防止、回避または抑制して、布材30に良好な画像を形成することができる。
【0045】
本実施の形態では、布材30に前処理液を塗布する具体的な構成は特に限定されない。例えば、
図3(A)に示すように、ガーメントプリンタ10Aおよび前処理液塗布装置22からなる構成を挙げることができる。
【0046】
ガーメントプリンタ10Aは、
図1に例示するガーメントプリンタ10と同様の構成を有し、
図3(A)では、模式的に、キャリッジ12、吐出ヘッド13、およびガイドレール15のみを図示する。また、
図3(A)では、布材30の搬送方向Dfを黒ブロック矢印で示す。ガーメントプリンタ10Aから見て、搬送方向Dfの上流に、当該ガーメントプリンタ10Aとは独立した構成として、前処理液塗布装置22が位置する。
【0047】
図3(A)では、布材30を破線で図示しており、布材30は搬送方向Dfに沿って先に前処理液塗布装置22に搬送され、当該布材30の画像形成面に前処理液が塗布される。その後、布材30はさらに搬送方向Dfに沿って搬送されて、ガーメントプリンタ10Aに搬送され、前処理液が塗布された画像形成面上にさらに白インクが塗布されて白色画像が形成され、さらにその後、カラーインクが塗布されることにより所望の画像が布材30上に形成される。
【0048】
なお、
図3(A)は飽くまでも模式図である。前記の例では、前処理液塗布装置22とガーメントプリンタ10Aとは、同一の搬送経路上に位置し、布材30に対して前処理液の塗布と白インク等の塗布とが連続的に行われるが、本開示はこれに限定されない。例えば、前処理液塗布装置22とガーメントプリンタ10Aがそれぞれ独立した液体塗布装置として存在してもよい。例えば、前処理液塗布装置22による前処理液の塗布工程と、ガーメントプリンタ10Aによる白インクの塗布工程とは、前記の通り搬送経路を共通化して連続している構成であってもよいし、互いに独立した工程として実施されてもよい。
【0049】
前処理液塗布装置22の具体的な構成も特に限定されず、公知の塗布方法を好適に用いることができる。具体的な塗布方法としては、例えば、スプレーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、インクジェット法、浸漬加工法(布材30を前処理液に浸漬した後にマングルロールで絞る方法)等を挙げることができる。前処理液の塗布工程と白インクまたはカラーインクの塗布工程とを連続的に実施する観点では、インクジェット法を採用することもできる。
【0050】
また、前処理液塗布装置22による前処理液の塗布は、布材30の画像形成面全体に行われてもよい。あるいは、形成画像の大きさまたは形状、布材30の形状または種類等の諸条件によっては、布材30において画像を形成する領域(白インクまたはカラーインクが塗布される領域)のみに前処理液を塗布してもよい。前者の場合には、スプレーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、浸漬加工法等を好適に採用することができる。後者の場合には、インクジェット法を好適に採用することができる。
【0051】
図3(A)に示す構成例では、ガーメントプリンタ10Aと前処理液塗布装置22とがそれぞれ独立した構成となっているが、本開示はこれに限定されず、これらが一体化された構成であってもよい。
【0052】
例えば、
図3(B)に示すように、ガーメントプリンタ10Bは、
図1に示すガーメントプリンタ10(あるいは
図3(A)に示すガーメントプリンタ10A)と同様に、インクジェット方式の画像形成部(貯留タンク11、キャリッジ12、吐出ヘッド13、ガイドレール15等)を備えているが、さらに前処理液塗布部17を備えている。
【0053】
前処理液塗布部17は、キャリッジ12、吐出ヘッド13およびガイドレール15等(画像形成部)から見て、布材30(図中破線)の搬送方向Df(図中黒ブロック矢印)の上流に位置しており、ガーメントプリンタ10Bの筐体内に収容されている。したがって、ガーメントプリンタ10Bでは、インクジェット方式の画像形成部(インク塗布工程)と前処理液塗布部17(前処理液塗布工程)とが一体化されている。
【0054】
前処理液塗布部17の具体的な構成は特に限定されず、前述した前処理液塗布装置22と同様に、スプレーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、インクジェット法、浸漬加工法等の公知の塗布方法を実施できる構成であればよい。例えば、前処理液塗布装置22がインクジェット方式であれば、搬送方向Dfの上流に前処理液を塗布するためのインクジェット方式の前処理液塗布部17が位置し、搬送方向Dfの下流に、白インクおよびカラーインクを塗布するためのインクジェット方式の画像形成部が位置することになる。
【0055】
前処理液塗布工程がインクジェット法により行われるのであれば、
図3(C)に示すように、ガーメントプリンタ10Cは、キャリッジ12に、インク塗布用の吐出ヘッド13と、前処理液塗布用の吐出ヘッド18とを備える構成であってもよい。この場合、インク用の貯留タンク11、サブタンク16、これらをつなぐチューブ等に加えて、前処理液用の貯留タンク11、サブタンク16、チューブ等を備えていればよい。あるいは、例えば、吐出ヘッド18がない場合、
図2に示す吐出ヘッド13Aが有する複数の白インク用のノズル列NLの一部を前処理液吐出用のノズル列NLに置き換えてもよい。
【0056】
本開示に係る画像形成方法では、後述するように、前処理液が塗布された布材30を少なくとも加熱することにより、布材30の画像形成面に前処理液を定着させている(前処理液定着処理または加熱処理)。そのため、
図3(A)に示す前処理液塗布装置22、
図3(B)に示す前処理液塗布部17またはガーメントプリンタ10B、もしくは、
図3(C)に示すガーメントプリンタ10Cは、いずれも布材30に対して前処理液定着処理を行う構成、例えば加熱部または加熱装置を備えてもよい。なお、これら加熱部または加熱装置は、白色画像等のインク画像を加熱定着させる画像定着部または画像定着装置とは異なってもよいし、同じでもよい。
【0057】
例えば、
図3(A)に示すガーメントプリンタ10Aが、画像形成前に塗布された前処理液を定着させるために布材を加熱する構成であれば、
図4(A)に制御構成例に示すように、ガーメントプリンタ10Aおよび前処理液塗布装置22とともに、前処理液定着縮処理を行う独立した加熱装置23がネットワークにより一つの画像形成システムを構成してもよい。この画像形成システムでは、例えば、ガーメントプリンタ10Aがシステム全体を制御する制御部を有してもよいし、ガーメントプリンタ10A、前処理液塗布装置22、および加熱装置23を制御する独立した制御装置を含んでもよい。
【0058】
あるいは、
図3(B)に示すガーメントプリンタ10Bであれば、
図4(B)に示すように、インクジェット方式の画像形成部20Aと前処理液塗布部17とを備えるとともに、加熱部19を備える構成であってもよい。画像形成部20A、前処理液塗布部17、および加熱部19は、ガーメントプリンタ10Bが備える制御部21により制御されればよい。
【0059】
あるいは、
図3(C)に示すガーメントプリンタ10Cであれば、
図4(C)に示すように、前処理液の塗布も可能とする画像形成部20Bとともに、加熱部19とを備える構成であってもよい。前記の通り、ガーメントプリンタ10Cでは、キャリッジ12が、インク塗布用の吐出ヘッド13と前処理液塗布用の吐出ヘッド18とを備える構成となっている。ガーメントプリンタ10Cの制御部21は、画像形成部20Bにおけるインク塗布用の吐出ヘッド13と前処理液塗布用の吐出ヘッド18と加熱部19とを制御するように構成されていればよい。
【0060】
加熱部19または加熱装置23の具体的な構成は特に限定されず、インクジェット方式の捺染分野で公知のヒートプレス装置を好適に用いることができる。加熱部19または加熱装置23による布材30の加熱が圧縮を伴う場合、ヒートプレス装置のように加熱および圧縮を実施できる構成(加熱圧縮部または加熱圧縮装置)であってもよいが、加熱装置および圧縮装置をそれぞれ別に備えていてもよい。
【0061】
なお、加熱部19または加熱装置23として、公知のヒートプレス装置を用いた場合には、例えば次のような利点がある。まず、布材30をプレスすることで、当該布材30の繊維間の空隙がつぶされて浸透しにくくなる。これにより、前処理液または白インクを、媒体である布材30上(画像形成面)に残存しやすくできる。
【0062】
また、布材30をプレスすることで、画像の割れやすさに影響する凹凸を低減することができる。なお、この凹凸は布材のシワまたは毛羽立ちによって発生する。布材30上の凹凸のうち、特に凸部にインクが塗布されると、重力によりインクが当該凸部に表面に沿って凹部に向かって「落下」していく可能性がある。これにより、凸部では凹部に比べてインクの濃度が小さくなる。そのため、布材30に凹凸が多ければ、インクの濃度にムラが生じる。さらに、布材30に塗布されたインクは、インク膜を形成するが、このインク膜を加熱すると収縮が生じる。ここで、インクの濃度にムラが生じていると、インク膜すなわち画像に割れが生じやすくなる。
【0063】
また、
図4(A)~(C)に示す構成例を適宜組み合わせた構成例も本開示には含まれる。例えば、
図4(A)に示す画像形成システムから、ガーメントプリンタ10Aおよび前処理液塗布装置22を除いたものに、
図4(B)に示すガーメントプリンタ10Bまたは
図4(C)に示すガーメントプリンタ10Cから、加熱部19を除いたものを加えた構成としてもよい。あるいは、
図4(A)に示す画像形成システムにおいて、前処理液塗布装置22と加熱部19とが一体化されてもよい。
【0064】
また、
図1もしくは
図3(A)~
図3(C)には具体的に示さないが、ガーメントプリンタ10、10A~10Cには、布材30に画像を形成する分野において公知の後処理を行う構成を備えてもよい。あるいは、
図3(A)に示すガーメントプリンタ10Aおよび前処理液塗布装置22の組合せと同様に、後処理を行う独立した構成(後処理装置)を併用してもよい。
【0065】
[前処理液]
本開示に係る画像形成方法では、前記の通り、布材30に白インクによる白色画像を形成(印刷)する前に、当該布材30の画像形成面(印刷面)に前処理液を塗布する。本開示で用いられる前処理液の具体的な構成は特に限定されず、白インク中の成分と相互作用することにより、白インクを増粘または凝集させる化合物を含有する液体であればよい。
【0066】
酸化チタン粒子は、微細な粉末(微粒子)であって一般的な溶媒には溶解しない。したがって、白インクは、溶媒中に酸化チタン粒子が分散した分散液または懸濁液の状態にある。このような白インクが布材30に侵入しにくい状態にするためには、代表的には、白インクの色材である酸化チタン粒子を凝集させる手法を挙げることができる。
【0067】
そこで、本実施の形態では、白インクを増粘または凝集させる化合物を便宜上「凝集剤」と称する。本実施の形態では、前処理液は、酸化チタン粒子を凝集させる作用を有する凝集剤を少なくとも含有する。なお、本開示における凝集剤は、酸化チタン粒子を凝集させる化合物に限定されず、白インクに含まれる他の成分を凝集(もしくは増粘または不溶化)させる化合物であってもよい。
【0068】
具体的な凝集剤としては特に限定されず、公知の酸、ポリマー、金属塩等を挙げることができる。特に本開示においては、凝集剤としては多価金属塩が好適に用いられる。
【0069】
多価金属塩を構成する代表的な金属元素としては、例えば、周期表第2族の金属元素(アルカリ土類金属)、周期表第3属の金属元素(遷移金属)、周期表第13族の金属元素(いわゆる土類金属)、ランタノイド元素等を挙げることができるが特に限定されない。
【0070】
このような金属元素と塩を形成する酸としては、飽和脂肪酸、ヒドロキシ酸、芳香族カルボン酸、ジカルボン酸等の有機酸;硫酸、硝酸、塩酸、亜硫酸、亜硝酸、チオ硫酸、リン酸、炭酸、チオシアン酸等の無機酸;等を挙げることができる。有機酸としては、ギ酸、酢酸、乳酸、クエン酸、安息香酸等のように相対的に低分子量のものが好適に用いられる。
【0071】
より具体的な多価金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸水素カルシウム、硝酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、チオシアン酸カルシウム、チオ硫酸カルシウム、安息香酸カルシウム、乳酸カルシウム等のカルシウム塩;塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、亜硫酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、安息香酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム等のマグネシウム塩;を挙げることができる。カルシウム塩またはマグネシウム塩は一般的に入手しやすく安価であるため、前処理液の凝集剤としては好適である。
【0072】
これら多価金属塩は1種類のみを用いてもよいし2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。また、これら多価金属塩は水和物であってもよい。後述する実施例では、多価金属塩として、硝酸カルシウム・4水和物(Ca(NO3)2・4H2 O)を用いている。
【0073】
また、凝集剤として用いられる酸としては、公知の有機酸を挙げることができる。具体的な有機酸としては、例えば、ギ酸;酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸等の飽和脂肪酸;乳酸、リンゴ酸、クエン酸等のヒドロキシ酸;安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、没食子酸等の芳香族カルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸等のジカルボン酸;グルクロン酸、ガラクツロン酸、イズロン酸等のウロン酸;アスコルビン酸;等を挙げることができるが特に限定されない。これら有機酸は、カチオンが金属イオンではない塩(例えばアンモニウム塩またはアミン塩等)であってもよい。これら有機酸は1種類のみを用いてもよいし2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0074】
あるいは、凝集剤として用いられるポリマーとしては、ポリアリルアミン、N-トリメチルアミノメチルポリスチレン、テトラエチレンペンタミン、ポリアミンスルホン、ポリビニルアミン、アミン-エピクロロヒドリン共重合体、これらポリマーの誘導体等のアミンポリマーが酸と反応して得られる塩、あるいはポリエチレンイミン等を挙げることができる。これらポリマーはカチオン性化合物として分類することもできる。本開示では、後述する実施例に示すように、凝集剤として多価金属塩が好ましく用いられるが、前述した有機酸あるいはポリマー(またはカチオン性化合物)も凝集剤として用いることができ、これら有機酸あるいはポリマーは多価金属塩と併用することもできる。
【0075】
本開示で用いられる前処理液は水性であるため、溶媒としては少なくとも水が用いられる。溶媒としての水は、相対的に純度が高いものであればよい。一般的には、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等を挙げることができる。これら純度の高い水は、いわゆる純水(25℃における電気比抵抗が0.1~1.5MΩ・cm程度)、あるいは、いわゆる超純水(25℃における電気比抵抗が10MΩ・cm以上)であってもよい。
【0076】
本開示で用いられる前処理液では、凝集剤の含有量は特に限定されないが、代表的な含有量としては、凝集剤および水を含む前処理液全量を100質量%としたときに、凝集剤の含有量の下限が0.01質量%以上であればよく、0.1質量%以上であってもよいし、0.5質量%以上であってもよい。また、凝集剤の含有量の上限は、40質量%以下であればよく、20質量%以下であってもよいし、5質量%以下であってもよい。
【0077】
凝集剤が多価金属塩である場合には、多価金属元素換算で含有量を限定してもよい。例えば、多価金属塩が前述した各種カルシウム塩である場合には、前処理液全量を100質量%としたときに、カルシウム換算で含有量の下限が0.01質量%以上であればよく、0.05質量%以上であってもよいし、0.3質量%以上であってもよい。また、カルシウム換算で含有量の上限は、10質量%以下であればよく、5質量%以下であってもよいし、3質量%以下であってもよい。
【0078】
凝集剤の含有量が前記の下限値を下回ると、前処理液における凝集剤の濃度が低くなりすぎて、後から塗布される白インク中の成分を良好に凝集できなくなるおそれがある。一方、凝集剤の含有量が前記の上限値を超えると、形成される白色画像に割れが生じやすくなるという影響を与える。
【0079】
本開示で用いられる前処理液は、水以外の有機溶媒を含有してもよい。前処理液に有機溶媒を配合することで、例えば、当該有機溶媒が揮発し難いものであれば、乾燥後の残存量を調節しやすくすることができる。具体的な有機溶媒は特に限定されないが、主溶媒が水であるため、水溶性有機溶媒であればよい。
【0080】
具体的な水溶性有機溶媒としては、例えば、エタノール、1-プロパノール(n-プロピルアルコール)、2-プロパノール(イソプロピルアルコール、IPA)、1-ブタノール(n-ブチルアルコール)、2-ブタノール(sec-ブチルアルコール)、2-メチル-1-プロパノール(イソブチルアルコール)、2-メチル-2-プロパノール(tert-ブチルアルコール)等の低級アルコール;グリセロール(グリセリン)、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の多価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール等のアルキレングリコールまたはポリエーテル;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;ジアセトンアルコール等のケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI);等を挙げることができる。これら水溶性有機溶媒は1種類のみを用いてもよいし2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。後述する実施例では、溶媒としてグリセロール(グリセリン)を用いている。
【0081】
本開示では、前処理液における有機溶媒の含有は必須ではなく、有機溶媒を含有する場合には、その含有量は特に限定されない。代表的な含有量としては、凝集剤および主溶媒である水を含む前処理液全量を100質量%としたときに、有機溶媒の含有量の下限が0質量%以上であればよく、4質量%以上であってもよいし、8質量%以上であってもよい。また、有機溶媒の含有量の上限は、40質量%以下であればよく、20質量%以下であってもよいし、10質量%以下であってもよい。
【0082】
なお、これら含有量の上限値または下限値は、前処理液における有機溶媒の全量を意味する。すなわち前処理液が有機溶媒を1種類のみ含有する場合には、当該1種類の有機溶媒の含有量の上限値または下限値である。前処理液が有機溶媒を2種類以上含有する場合には、2種類以上の有機溶媒の総量(全量)の上限値または下限値である。
【0083】
本開示で用いられる前処理液は、さらに増粘剤を含有してもよい。前処理液に増粘剤を配合することで、前処理液が塗布された布材30上に形成される白色画像の品質をより良好にすることができる。
【0084】
具体的な増粘剤としては、例えば、プルラン、デキストラン、デキストリン、シクロデキストリン、カラギーナン、ペクチン、グルコマンナン、アルギン酸、キサンタンガム、アラビヤゴム、ローカストビーンガム、トラガントガム、グアーガム、タマリンドガム、デンプン等の多糖類;酸化デンプン、カルボキシルデンプン、ジアルデヒドデンプン等の加工デンプン;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸塩;アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸エステル;メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロールまたはその誘導体;ゼラチン、カゼイン、にかわ等のタンパク質;ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルホルマール等の水溶性ポリマー;等を挙げることができる。これら増粘剤は1種類のみを用いてもよいし2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。後述する実施例では、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)またはポリビニルピロリドン(PVP)を用いている。
【0085】
本開示では、前処理液における増粘剤の含有は必須ではなく、増粘剤を含有する場合には、その含有量は特に限定されない。代表的な含有量としては、凝集剤および主溶媒である水を含む前処理液全量を100質量%としたときに、増粘剤の含有量の下限が0.01質量%以上であればよく、0.05質量%以上であってもよいし、0.1質量%以上であってもよい。また、増粘剤の含有量の上限は、5質量%以下であればよく、2質量%以下であってもよいし、1質量%以下であってもよい。
【0086】
増粘剤の含有量が前記の下限値を下回ると、諸条件にもよるが、増粘剤を配合することによる作用効果を十分に得られないおそれがある。一方、増粘剤の含有量が前記の上限値を超えると、布材の風合いなどの諸物性に影響を及ぼすおそれもある。
【0087】
本開示で用いられる前処理液の製造方法は特に限定されず、必須成分である凝集剤および水、並びに好適な成分である有機溶媒および増粘剤を所定比率で配合して公知の方法で攪拌混合すればよい。なお、前処理液は、凝集剤および水、並びに有機溶媒および増粘剤以外に、公知の他の添加剤を含有してもよい。
【0088】
[白インク]
本開示に係る画像形成方法では、前記の通り、布材30の画像形成面(印刷面)に前処理液を塗布して当該前処理液を布材30に定着させ、その後、白インクによる白色画像を形成(印刷)する。本開示で用いられる白インクの具体的な構成は特に限定されず、色材として酸化チタン(TiO2 )顔料を含有する水性インクであればよい。
【0089】
酸化チタン粒子の平均粒子径(平均一次粒径)は特に限定されないが、その下限は10nmを超えていればよく、20nm以上であってもよいし、50nm以上であってもよい。一方、酸化チタン粒子の平均粒子径の下限値は200nm以下であればよく、180nm以下であってもよいし、150nm以下であってもよいし、120nm以下であってもよい。
【0090】
酸化チタン粒子の平均粒子径が10nm以下であれば、沈降性の改善が期待できるが、粒子径が可視光の波長よりも非常に小さくなることからミー散乱は殆ど生じなくなる。そのため、分散液の状態で殆ど無色であり、形成される白色画像の白色度も大幅に低下すると考えられる。一方、酸化チタン粒子の平均粒子径が200nm以上であれば、沈降速度が速いため、より一層沈降しやすくなる。なお、本実施の形態における酸化チタン粒子の代表的な平均粒子径は50nm以上120nm以下の範囲を挙げることができる。
【0091】
酸化チタン粒子の平均粒子径の測定方法は特に限定されず、ナノレベルの微粒子の平均粒子径を測定する公知の方法を好適に用いることができるが、本開示では、後述する実施例に記載するように、動的散乱式粒度分布測定装置により散乱光強度を測定し、これを基準として光子相関法により平均粒子径を算出する方法を用いている。
【0092】
本開示で用いられる白インクは、必要に応じて酸化チタン粒子以外の色材、例えば他の白色顔料を含有してもよい。一般的に酸化チタン粒子は良好な屈折率を有するため、他の白色顔料に比較して良好な白色性を実現できる。ただし、布材30の画像形成面に、下地層として好適な白色画像を形成する観点では、酸化チタン粒子に対して他の白色顔料をある程度配合してもよい。他の白色顔料としては、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛、酸化亜鉛、硫酸バリウム、無水ケイ酸カルシウム、タルク、チョーク、アルミナホワイト、シリカ等を挙げることができる。
【0093】
本開示で用いられる白インクの溶媒は、前述した前処理液と同様に水であればよい。溶媒としての水は、前述した通り、相対的に純度が高いものであればよく、一般的には、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等を挙げることができる。これら純度の高い水は、前述した通り、いわゆる純水、あるいは、いわゆる超純水であってもよい。
【0094】
本開示で用いられる白インクでは、酸化チタン粒子(あるいは酸化チタン粒子を含む全ての白色顔料)の含有量は特に限定されないが、代表的な含有量としては、酸化チタン粒子および水を含む白インク全量を100質量%としたときに、酸化チタン粒子の含有量の下限が1.0質量%以上であればよく、3.0質量%以上であってもよいし、5.0質量%以上であってもよい。また、酸化チタン粒子の含有量の上限は、20.0質量%以下であればよく、16.0質量%以下であってもよいし、14.0質量%以下であってもよい。
【0095】
酸化チタン粒子の含有量が1.0質量%未満であれば、白インクが薄くなりすぎて、前処理液を塗布した上に白インクを塗布しても良好な白色画像を形成できない傾向にある。一方、酸化チタン粒子の含有量が20.0質量%を超えると、白インクが濃くなりすぎて、必要以上に高粘度化したり、吐出ヘッド13からの吐出安定性が低下したりするおそれがある。
【0096】
本開示で用いられる白インクは、酸化チタン粒子および水以外に他の成分を含有してもよい。具体的には、例えば、水溶性の有機溶媒を含有してもよいし、各種の添加剤を含有してもよい。当該添加剤としては、分散剤、界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防錆剤、pH調整剤等を挙げることができるが、特に限定されない。これら他の成分の含有量も特に限定されず、インクジェット用インクの分野で一般的な含有量を採用することができる。
【0097】
本開示で用いられる白インクの製造方法は特に限定されず、前述した前処理液と同様に、必須成分である酸化チタン粒子および水、並びに好適な成分である有機溶媒を所定比率で配合して公知の方法で攪拌混合すればよい。
【0098】
ただし、酸化チタン粒子は水に溶解しないため、白インクは、前記の通り、水中に酸化チタン粒子の微粒子が分散した分散液または懸濁液の状態にある。そのため、後述する実施例でも白インクの沈降性を評価しているように、白インクを静置すると酸化チタン粒子は沈降しやすい状態にある。そのため、白インクの製造方法においては、沈降した酸化チタン粒子を良好に再分散可能とするように、当該酸化チタン粒子を水中でより一層良好に分散させるような製造方法が好適に採用される。
【0099】
具体的には、例えば、酸化チタン粒子および水、必要に応じて他の成分を公知の方法で混合して十分に攪拌することにより、ミルベースを調製し、当該ミルベースを、ペイントシェイカー、ボールミル、ビーズミル、アトライター、サンドミル、横型メディアミル、コロイドミル、ロールミル、ホモジナイザー、超音波分散機、撹拌羽撹拌機、マグネチックスターラー等を用いることにより更に分散させる方法を挙げることができる。この製造過程においては、得られた分散液において酸化チタン粒子が良好に分散しているか否かを、例えばレーザ回折散乱法により確認してもよいし、十分に分散しきれていない二次粒子等の残存を考慮して、得られた分散液を濾過してもよい。
【0100】
[基材および画像形成]
本開示に係る画像形成方法で画像形成の対象となる基材は、前記の通り布材であり、当該布材の具体的な種類は特に限定されないが、代表的には、編物(ニット)および織物(布帛)を挙げることができる。編物の具体的な種類は特に限定されず、例えば、天竺編、ワッフル編、フライス編、鹿の子編、ハニカムメッシュ、ポリエステルメッシュ(ポリエステル素材を用いたメッシュ)等の代表的な編物を挙げることができる。織物の具体的な種類も特に限定されず、例えば、平織、綾織、朱子織等の代表的な織物を挙げることができる。
【0101】
布材に用いられる繊維の具体的な種類も特に限定されないが、本開示に係る画像形成方法では、後述するように、少なくとも白色画像を布材に定着させるために加熱するので、好適な繊維としては、綿、絹、麻、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル、これらの混合素材を挙げることができる。後述する実施例では、布材としては、市販Tシャツに用いられる綿製編物を用いている。
【0102】
インクジェット方式による布材への画像形成方法は、その工程に応じて、Wet on Dry法とWet on Wet法とに区分することができる。Wet on Dry法は、基材である布材に前処理液を塗布し、次いで布材を十分に乾燥し、次いで前処理液が塗布された領域上に白インクを塗布して白色画像を形成し、布材を加熱乾燥して白色画像を布材に定着させる。一方、Wet on Wet法では、基材である布材に前処理液を塗布し、次いで布材を十分に乾燥することなく(Wet on Dry法における布材の乾燥状態と比較して、同程度まで乾燥させない状態として)前処理液が塗布された領域上に白インクを塗布して白色画像を形成し、布材を加熱乾燥して白色画像および前処理液を布材に定着させる。
【0103】
Wet on Dry法およびWet on Wet法のいずれにも互いに異なる特徴があり、布材の種類、布材の形状、形成画像の種類、インクの種類等の諸条件に応じていずれかの方法を適宜選択することができる。本開示に係る画像形成方法では、Wet on Dry法が採用される。
【0104】
本開示に係る画像形成方法では、布材に画像を形成する際に、布材に水性の前処理液を塗布する前処理液塗布工程と、塗布された前処理液を加熱する加熱工程と、加熱工程後に、布材にインクをインクジェット方式により吐出して画像を形成する画像形成工程と、を含む。インクとしては、前記の通り、平均粒子径が10nmを超え200nm以下の酸化チタン粒子を含有する白インクが少なくとも用いられる。このような白インクでは、色材である酸化チタン粒子の比重が高いが粒子径が小さいため沈降しにくくなる。
【0105】
酸化チタン粒子の平均粒子径を小さくするとその沈降速度を遅くすることができる。ただし、前記の通り、酸化チタン粒子の平均粒子径を10nm以下とすると、形成される白色画像の白色度が低下する傾向にある。
【0106】
インクジェット方式に用いられる白インクでは、一般的には、平均粒子径が300nm程度の酸化チタン粒子が用いられることが多い。ストークスの定理からして、沈降速度は粒子サイズの二乗に比例するため、粒径が大きいほど沈降しやすくなる。なお、300nm程度の粒径の酸化チタン粒子は、沈降しやすい傾向にある。そこで、平均粒子径が10~200nmの範囲内にある酸化チタン粒子を用いることにより、白色度を維持しつつ酸化チタン粒子の沈降を抑制することが可能になる。
【0107】
ところが、白インクの塗布対象(画像形成対象または印刷対象)である基材が布材であると、酸化チタン粒子の平均粒子径が小さいほど布材の厚み方向に浸透しやすくなる傾向にある。特に、酸化チタン粒子の平均粒子径が10nm超200nm以下の範囲内にあれば、より浸透しやすくなる。酸化チタン粒子は、基材上で好適に凝集することにより、良好な白色度を有する白色画像を形成することができる。そのため、酸化チタン粒子が布材に浸透すると、良好な白色画像を形成することができなくなる。
【0108】
さらに、基材が布材であって、かつ、酸化チタン粒子の平均粒子径が300nmを下回ると、
図5に示すように、形成される白色画像に割れが生じやすくなることも明らかとなった。割れの発生が多くなれば、白色画像の画像品質を大幅に低下させることになり、これにより白色画像の上に形成されるカラー画像の画像品質も低下することになる。そのため、
図5において「評価C」で示すように、目視で多くの割れが確認されるような状態は回避されるべきであり、少なくとも、
図5において「評価B」で示すように、目視で割れが確認されるものの割れが過多ではない状態を実現すべき必要がある。
【0109】
白色画像に割れが生じやすくなる理由は、酸化チタン粒子の平均粒子径がより小さくなることによって、白インクにより布材上に形成された塗膜(白色画像)における酸化チタン粒子の流動性が高くなるためであると考えられる。塗膜における酸化チタン粒子の流動性が高くなると、白インクの溶媒である水等の蒸発成分が蒸発することに伴って、塗膜において凝集に伴う収縮が生じやすくなり、この収縮によって塗膜に変形または破壊が生じやすくなる。その結果、白色画像に割れが生じやすくなると考えられる。
【0110】
基材上に形成されたインクの画像、すなわちインクの塗膜に割れが発生するということは、前記の理由から、通常は、定着時の加熱乾燥に由来することが想定される。そのため、白色画像の割れを回避または抑制するためには、白インクが急激に乾燥しないように、加熱乾燥の条件を調節するか、もしくは、急激な乾燥が進まないように白インクの組成を変更することが考えられる。
【0111】
しかしながら、本発明者らの鋭意検討の結果、後述する実施例(特に比較例3)に示すように、前処理液の残存量が多すぎると割れが生じやすくなることが明らかとなった。そこで、本開示に係る画像形成方法では、加熱工程後において、布材には前処理液を残存させるとともに、その残存量を30mg/cm2 未満に制御している。これにより、平均粒子径が10~200nmの範囲内にある酸化チタン粒子を用いて布材に白色画像を形成しても、良好な白色度を実現しつつ割れの発生を有効に抑制することが可能になる。
【0112】
本開示に係る画像形成方法では、少なくとも前処理液を布材に塗布する前処理液塗布工程と、塗布された前処理液を加熱する加熱工程と、加熱工程の後に少なくとも白インクで布材に画像を形成する画像形成工程とを含む。前処理液塗布工程における前処理液の塗布方法は特に限定されず、前述した通り、公知の前処理液塗布装置または前処理液塗布部により布材に塗布すればよい。
【0113】
加熱工程における前処理液の加熱方法も特に限定されず、前記の通り、ヒートプレス等の公知の方法を好適に用いることができる。ここで、加熱工程における加熱温度は、前処理液を好適に乾燥させることができる(前処理液が含有する揮発性成分を適度に除去する)温度であればよく、具体的な温度は特に限定されない。代表的には、加熱温度の下限は、例えば100℃以上であればよく、110℃以上であってもよく、120℃以上であってもよい。また、加熱温度の上限は、例えば180℃以下であればよく、170℃以下であってもよく、160℃以下であってもよい。
【0114】
本開示に係る画像形成方法においては、布材に塗布された前処理液を加熱する加熱工程において、前記の通り、当該布材を圧縮する圧縮工程を含んでもよい。これにより、布材の画像形成面(印刷面)に塗布された前処理液を当該布材に良好に定着することができる。また、圧縮工程を実施することにより、布材のシワまたは毛羽立ち等を抑制することも可能である。なお、圧縮工程は、加熱工程の後に独立した工程として実施されてもよいし、加熱工程と同時に実施すなわち加熱圧縮工程として実施されてもよい。
【0115】
圧縮工程において、布材の圧縮圧力は特に限定されず、諸条件に応じて適宜設定することができるが、代表的には、圧縮圧力の下限は5psi以上であればよく、10psi以上であってもよく、15psi以上であってもよい。また、圧縮圧力の上限は50psi以下であればよく、40psi以下であってもよく、30psi以下であってもよい。後述する実施例では、圧縮圧力を20psiとしている。
【0116】
ここで、本開示においては、布材に前処理液が塗布されて少なくとも加熱工程(あるいは加熱工程および圧縮工程)が実施された後に前処理液の残存量を調節することが重要となる。加熱工程後においては前記の通り、布材に前処理液が残存していればよく、残存量の上限は30mg/cm2 未満であればよいが、前処理液の残存量の具体的な下限としては、例えば、4mg/cm2 以上を挙げることができる。諸条件にもよるが、前処理液が4mg/cm2 以上残存していれば、画像形成工程において塗布される白インクの顔料を良好に凝集させることができる。
【0117】
また、加熱工程の後において、布材における前処理液の残存量は、前記の通り30mg/cm2 未満であればよいが、22mg/cm2 以下であってもよいし、16mg/cm2 以下であってもよい。本実施の形態では、加熱工程後における前処理量の代表的な残存量としては、4mg/cm2 以上16mg/cm2 以下の範囲内を挙げることができる。
【0118】
本開示に係る画像形成方法では、前処理液の残存量は、当該前処理液が含有する成分の残存量で規定することもできる。例えば、前処理液が増粘剤を含有する場合には、加熱工程後に、布材に残存する増粘剤の残存量は0.6mg/cm2 以下であればよい。
【0119】
あるいは、本開示に係る画像形成方法では、凝集剤として多価金属塩を含有しており、代表的な多価金属塩として、前記の通りカルシウム塩またはマグネシウム塩が挙げられる。この場合には、加熱工程後において、前記布材に残存する前処理液に含まれるカルシウムイオン、マグネシウムイオンの量は、0.02mg/cm2 ~2mg/cm2 の範囲内を挙げることができ、0.05mg/cm2 ~1mg/cm2 の範囲内であってもよい。なお、後述する実施例では、残存する前処理液に含まれるカルシウムイオンの残存量は0.6mg/cm2 である(40mg/cm2 ×1.5%=0.6mg/cm2 )。
【0120】
また、本開示に係る画像形成方法では、加熱工程後に布材に残存する前処理液の粘度が所定の下限値以上となるように、当該前処理液の組成あるいは加熱温度等の諸条件を調節または設定することができる。加熱工程後に残存する前処理液の粘度としては、例えば、1000mPa・s以上を挙げることができるが、特に限定されない。これにより、布材に前処理液を良好に保持して画像形成工程に供することができる。
【0121】
前処理液の粘度の測定方法は特に限定されないが、本実施の形態では、回転型粘度計(Thermo scientific社製、製品名HAAKE MARS,測定コーン:Cone C35/1°Ti,D=35mm、プレート:Untere Platte TMP35)を用いて、回転子が100rpmのときに、所定の加熱条件に基づいて加熱した後の前処理液についての粘度を測定している。
【0122】
本開示に係る画像形成方法では、前述した通り、前処理液の残存量が重要となるため、前処理液の布材への塗布量については特に限定されない。代表的な前処理液の塗布量としては、例えば、5mg/cm2 ~50mg/cm2 の範囲内を挙げることができる。
【0123】
なお、本開示に係る画像形成方法における代表的な構成としては、前処理液塗布工程において、布材に塗布される前記前処理液の塗布量が、5mg/cm2 ~50mg/cm2 の範囲内であり、加熱工程における加熱温度が100℃~180℃の範囲内であり、圧縮工程における布材の圧縮圧力が5psi~50psiの範囲内である構成を挙げることができる。
【0124】
本開示に係る画像形成方法では、画像形成工程においては、少なくとも、白インクにより下地層としての白色画像を形成することが含まれればよく、さらには、白色画像の上にカラーインクでカラー画像を形成することが含まれてもよい。白色画像形成およびカラー画像形成のいずれも、インクジェット方式により実施されればよい。
【0125】
これら画像形成のうち、下地層である白色画像の形成においては、白インクの塗布量は特に限定されない。代表的には、前処理液の残存量に対して0.5倍から10倍の範囲内であればよく、1倍から5倍の範囲内であってもよい。白インクの塗布量が前記の上限値を超えると、諸条件にもよるが、相対的に前処理液の量が少なくなり、白インクに含まれる成分を凝集することができなくなり、にじみが発生するおそれがある。
【0126】
なお、本開示に係る画像形成方法では、前述した通り、前処理液塗布工程、加熱工程、および画像形成工程を含んでいればよいが、他の工程を含んでもよいことは言うまでもない。例えば、画像形成工程で先に白色画像を形成し、その後にカラー画像を形成した後には、これらインク画像を布材に定着させるために、定着工程を実施してもよい。この定着工程は、インク画像が形成された布材を加熱定着する方法を好適に用いることができるが、特に限定されない。この加熱定着では、例えば、前述した前処理液の加熱工程と同様に、ヒートプレス等の加熱圧縮を実施することができる。
【0127】
このように、本開示に係る画像形成方法は、吸収性基材である布材に、水性の前処理液を塗布する前処理液塗布工程と、塗布された前処理液を加熱する加熱工程と、加熱工程後に、布材にインクをインクジェット方式により吐出して画像を形成する画像形成工程と、を含み、加熱工程後において、布材には前処理液が残存しており、当該前処理液の残存量は30mg/cm2 未満であり、インクは、平均粒子径が10nmを超え200nm以下の酸化チタン粒子を含有する白インクを少なくとも含む構成であればよい。
【0128】
前記構成によれば、白インクにより画像形成する前の時点で、前処理液を十分に蒸発させずに30mg/cm2 未満となるように敢えて残存させる。この状態で、吸収性基材である布材上に白インクを吐出すると、白インクの顔料成分である酸化チタン粒子は、布材の厚み方向に浸透することが抑制または回避され、良好な白色度を実現できる。また、前処理液が塗布された後に形成される白色画像において、割れの発生を有効に抑制または回避することができる。
【0129】
しかも、酸化チタン粒子を布材上で凝集させることができるため、従来の白インクに用いられてきた300nm程度の酸化チタン粒子よりも、相対的に平均粒子径が小さい、200nm以下の酸化チタン粒子を用いることができる。一般的に、酸化チタン粒子は、その比重が高いため、白インク中で経時的に沈降することが知られているが、平均粒子径を小さくすることで沈降速度を遅くすることができる。これにより、インクヘッドの目詰まりも有効に抑制することが可能となる。
【0130】
また、本開示には前記の画像形成方法を実施可能な画像形成システムも含まれる。すなわち、本開示に係る画像形成システムは、布材に水性の前処理液を塗布する前処理液塗布部と、塗布された前処理液を加熱する加熱部と、加熱部による加熱後に、布材にインクをインクジェット方式により吐出して画像を形成する画像形成部と、を備え、インクは、平均粒子径が10nmを超え200nm以下の酸化チタン粒子を含有する白インクを少なくとも含むものであり、加熱部は、加熱後における布材における、前処理液の残存量が30mg/cm2 未満となるように、当該布材を加熱する構成であればよい。当該画像形成システムは、前処理液塗布部、加熱部、および画像形成部が一体化された画像形成装置であってもよい。さらに、本開示には、前記の画像形成方法により画像が形成された布材も含まれる。
【実施例0131】
本発明について、実施例および比較例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本開示の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。なお、以下の実施例または比較例における塗布条件、並びに、画像形成に伴う評価は次に示すようにして行った。
【0132】
(白インクの組成)
各実施例または各比較例における白インクは表1に示す組成となるように調製した。なお、表1に示す組成の単位は質量%である。
【0133】
【0134】
(白インク用顔料の平均粒子径)
白インクに用いた酸化チタン(TiO2 )顔料の平均粒子径は、当該顔料の濃度が0.1質量%となるように希釈して、動的散乱式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製、製品名LB-550)により散乱光強度を測定し、これを基準として光子相関法により平均粒子径を算出した。
【0135】
(白インクの顔料沈降性)
各実施例または各比較例で調製した白インクを、内径15mmのサンプルチューブに10mL分注し、25℃で1週間保存した後に、沈降傾向を目視評価した。目視で沈降が認められない場合を「AA」、沈降が僅かに認められる場合を「A」、沈降がはっきりとわかる場合を「B」、沈降が非常に多い場合を「C」とした。
【0136】
(前処理液または白インクの塗布量および残存量)
各実施例または各比較例において、前処理液または白インクの塗布量、もしくは、前処理液の残存量は、次のようにして評価した。前処理液を塗布する前、または白インクを塗布する前の布材(基材)の質量を測定して基準値M0とした。また、前処理液または白インクを塗布した後、もしくは、前処理液を塗布して定着処理した後(白インクを塗布する前)の布材の質量を測定して測定値M1とした。測定値M1から基準値M0を減算した減算値M2(M2=M1-M0)を、布材の面積Saで除算した(M2/Sa)。この除算値を、塗布量または残存量とした。
【0137】
(白色画像の白色度)
前処理液を塗布した後の布材に、白インクを20mg/cm2 となるように塗布し、100℃で20分間加熱することにより白インクを定着させて白色画像を形成した。当該白色画像を分光測色計(X-Rite社製、製品名eXact)により、測定視野10°、白色基準Abs(絶対白色)、光源D65の条件で明度L* を測定した。
【0138】
L* が85以上(L* ≧85)であれば「AA」、L* が75以上85未満(80≦L* <85)であれば「A」、L* が75以上80未満(75≦L* <80)であれば「B」、L* が75未満(L* <75)であれば「C」として、白色画像の白色度を評価した。
【0139】
(白色画像の割れ)
各実施例または各比較例で布材に形成した白色画像を目視および顕微鏡による官能検査で評価した。
図5に代表的な白色画像の状態を例示している。
図5に示すように、白色画像に目視および顕微鏡で割れが確認されない(割れなし)状態を「AA」、白色画像に目視で割れが確認されないが顕微鏡で割れが確認される(割れなし)状態を「A」、白色画像の一部に目視で割れが確認された(割れあり)状態を「B」、白色画像に目視でかなりの割れが確認された(割れ過多)状態を「C」として、白色画像の割れを評価した。
【0140】
(実施例1)
表2に示すように、多価金属塩、溶媒、および水を配合して混合することにより、実施例1に係る前処理液を調製した。また、表2に示すように、酸化チタン(TiO2 )として平均粒子径200nmのW1を用いて、表1に示す組成となるように、実施例1に係る白インクを調製した。当該白インクにおける酸化チタン粒子の沈降性を前述した手法による評価した。その結果を表2に示す。
【0141】
なお、前処理液では、多価金属塩として、硝酸カルシウム・4水和物(Ca(NO3)2・4H2 O)を用いるとともに、溶媒として、グリセロール(Gly)を用いた。また、表2における組成の単位は質量部であり、多価金属塩についてはCa換算量(質量部)を括弧書きで併記した。
【0142】
布材として、市販の無地の布製Tシャツ(製品名GILDAN UltraCotton)をカットしたものを用いた。この布材をガラス上に置き、表2に示す塗布量となるように前処理液を塗布して、20psiの圧力で圧縮しながら加熱することにより、布材に前処理液を定着させて、実施例1に係る評価サンプルを作製した。当該評価サンプルにおける前処理液の残存量は表2に示すように10.00mg/cm2 となるように定着処理を調節した。
【0143】
その後、実施例1に係る評価サンプルに対して、インクジェットプリンターによる塗布を模擬するかたちで、スプレーにより白インクを表2に示す塗布量となるように塗布して、150℃で3分間の加熱により定着させた。当該評価サンプルの白色画像について、前述した手法により、白色度および割れについて評価した。その結果を表2に示す。
【0144】
(実施例2~4)
表2に示すように、次の点を除いて実施例1と同様にして、実施例2~4に係る前処理液および白インクを調製した。白インクについては、前述した手法により沈降性を評価した。実施例2では、酸化チタン粒子として、平均粒子径が150nmのW2を用いた。実施例3では、平均粒子径が120nmのW3を用いた。実施例4では、平均粒子径が50nmのW4を用いた。その結果を表2に示す。
【0145】
また、これら実施例2~4に係る前処理液および白インクを用いて、表2に示すように、実施例1と同様にして、実施例2~4に係る評価サンプルを作製した。これら評価サンプルにおける白色画像の白色度および割れを、前述した手法により評価した。その結果を表2に示す。
【0146】
(実施例5)
表2に示すように、次の点を除いて実施例1と同様にして、実施例5に係る前処理液および白インクを調製した。白インクについては、前述した手法により沈降性を評価した。実施例5では、前処理液の溶媒の含有量を5.0質量部とし、白インクの酸化チタン粒子として、平均粒子径が120nmのW3を用いた。
【0147】
また、実施例5に係る前処理液および白インクを用いて、表2に示すように、次の点を除いて実施例1と同様にして、実施例5に係る評価サンプルを作製した。実施例5では、前処理液の残存量が1mg/cm2 になるように定着処理を調節した。この評価サンプルにおける白色画像の白色度および割れを、前述した手法により評価した。その結果を表2に示す。
【0148】
(実施例6~9)
表2に示すように、次の点を除いて実施例5と同様にして、実施例6~9に係る前処理液および白インクを調製した。白インクについては、前述した手法により沈降性を評価した。実施例6~9では、前処理液の溶媒の含有量を実施例1と同じく20.0質量部にした。
【0149】
また、これら実施例6~9に係る前処理液および白インクを用いて、表2に示すように、次の点を除いて実施例5と同様にして、実施例6~9に係る評価サンプルを作製した。実施例6では前処理液の残存量が4mg/cm2 になるように、実施例7では前処理液の残存量が16mg/cm2 になるように、実施例8では前処理液の残存量が22mg/cm2 になるように、実施例9では前処理液の残存量が28mg/cm2 になるように、それぞれの実施例で定着処理を調節した。これら評価サンプルにおける白色画像の白色度および割れを、前述した手法により評価した。その結果を表2に示す。
【0150】
(実施例10)
表2に示すように、次の点を除いて実施例1と同様にして、実施例10に係る前処理液および白インクを調製した。白インクについては、前述した手法により沈降性を評価した。実施例10では、前処理液に増粘剤1としてCMC(カルボキシメチルセルロース)を0.5質量部添加し、白インクの酸化チタン粒子として、平均粒子径が120nmのW3を用いた。
【0151】
また、実施例10に係る前処理液および白インクを用いて、表2に示すように、次の点を除いて実施例1と同様にして、実施例10に係る評価サンプルを作製した。実施例10では、前処理液の残存量が4mg/cm2 になるように定着処理を調節した。この評価サンプルにおける白色画像の白色度および割れを、前述した手法により評価した。その結果を表2に示す。
【0152】
(実施例11、12)
表2に示すように、実施例10と同様にして、実施例11または実施例12に係る前処理液および白インクを調製した。白インクについては、前述した手法により沈降性を評価した。
【0153】
また、これら実施例11または実施例12に係る前処理液および白インクを用いて、表2に示すように、次の点を除いて実施例10と同様にして、実施例11または実施例12に係る評価サンプルを作製した。実施例11では、前処理液の残存量が10mg/cm2 になるように定着処理を調節した。実施例12では、前処理液の残存量が14mg/cm2 となるように定着処理を調節した。これら評価サンプルにおける白色画像の白色度および割れを、前述した手法により評価した。その結果を表2に示す。
【0154】
(実施例13、14)
表2に示すように、実施例11と同様にして、実施例13または実施例14に係る前処理液および白インクを調製した。白インクについては、前述した手法により沈降性を評価した。実施例13では、前処理液に増粘剤1であるCMCを1.0質量部添加した。実施例14では、前処理液に増粘剤2としてポリビニルピロリドン(PVP)を1.0質量部添加した。
【0155】
また、これら実施例13または実施例14に係る前処理液および白インクを用いて、表2に示すように、実施例11と同様にして、実施例13または実施例14に係る評価サンプルを作製した。これら評価サンプルにおける白色画像の白色度および割れを、前述した手法により評価した。その結果を表2に示す。
【0156】
(実施例15)
表2に示すように、実施例7と同様にして、実施例15に係る前処理液および白インクを調製した。白インクについては、前述した手法により沈降性を評価した。
【0157】
また、実施例15に係る前処理液および白インクを用いて、表2に示すように、圧縮を実施しない以外は、実施例7と同様にして、実施例15に係る評価サンプルを作製した。この評価サンプルにおける白色画像の白色度および割れを、前述した手法により評価した。その結果を表2に示す。
【0158】
(比較例1)
表2に示すように、次の点を除いて実施例1と同様にして、比較例1に係る前処理液および白インクを調製した。白インクについては、前述した手法により沈降性を評価した。比較例1では、白インクの酸化チタン粒子として、平均粒子径が250nmのW5を用いた。
【0159】
また、比較例1に係る前処理液および白インクを用いて、表2に示すように、実施例1と同様にして、比較例1に係る評価サンプルを作製した。この評価サンプルにおける白色画像の白色度および割れを、前述した手法により評価した。その結果を表2に示す。
【0160】
(比較例2)
表2に示すように、次の点を除いて実施例1と同様にして、比較例2に係る前処理液および白インクを調製した。白インクについては、前述した手法により沈降性を評価した。比較例2では、白インクの酸化チタン粒子として、平均粒子径が10nmのW6を用いた。
【0161】
また、比較例2に係る前処理液および白インクを用いて、表2に示すように、実施例1と同様にして、比較例2に係る評価サンプルを作製した。この評価サンプルにおける白色画像の白色度および割れを、前述した手法により評価した。その結果を表2に示す。
【0162】
(比較例3)
表2に示すように、次の点を除いて実施例1と同様にして、比較例3に係る前処理液および白インクを調製した。白インクについては、前述した手法により沈降性を評価した。比較例3では、白インクの酸化チタン粒子として、平均粒子径が120nmのW3を用いた。
【0163】
また、比較例3に係る前処理液および白インクを用いて、表2に示すように、次の点を除いて実施例1と同様にして、比較例3に係る評価サンプルを作製した。比較例3では、前処理液の残存量が30mg/cm2 になるように定着処理を調節した。この評価サンプルにおける白色画像の白色度および割れを、前述した手法により評価した。その結果を表2に示す。
【0164】
【0165】
(実施例および比較例の対比)
実施例1~15に示すように、本開示に係る画像形成方法であれば、平均粒子径が10nmを超え200nm以下の範囲内にある酸化チタン粒子を用いて白インクを調製しても、良好な顔料沈降性(酸化チタン粒子が沈降しにくい性質)を実現できるとともに、形成される白色画像において良好な白色度を実現でき、さらには白色画像における割れの発生も有効に抑制することができる。
【0166】
特に表2に示すように、酸化チタン粒子の平均粒子径が前述した範囲内にあれば(実施例1~4)、顔料沈降性はB以上を実現でき、白色画像の白色度もA以上を実現でき、白色画像の割れはAAを実現することができる。
【0167】
また、前処理液の残存量を前記の上限未満とすれば(実施例5~9)、白色画像の白色度も割れもB以上を実現することができる。なお、前処理液の残存量が少ないと相対的に白色度が低くなる傾向にあり、前処理液の残存量が多いと相対的に割れが生じやすくなる傾向が確認される。
【0168】
また、前処理液に増粘剤を含有させると(実施例10~13)、前処理液の残存量を変化させても、白色画像における白色度および割れのいずれも良好な結果が得られることがわかる。また、増粘剤としてCMCの代わりにPVPを用いても(実施例14)、白色画像における白色度および割れのいずれも良好な結果が得られることがわかる。また、前処理液を塗布した後に圧縮しないとしても(実施例15)、白色画像における白色度および割れのいずれも十分な結果が得られることがわかる。
【0169】
一方、酸化チタン粒子の平均粒子径が大きすぎると(比較例1)、酸化チタン粒子が沈降しやすくなり、酸化チタン粒子の平均粒子径が小さすぎると(比較例2)、白色画像の白色度が低下することがわかる。さらに前処理液の残存量を30mg/cm2 とすると(比較例3)、白色画像に多くの割れが生じるため、前処理液の残存量は30mg/cm2 未満とすべきことがわかる。
【0170】
なお、本発明は前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。