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特開2024-108951柔らかさ測定装置、柔らかさ測定方法、ロボット把持部の把持力制御装置、ロボット制御装置、ロボット、及びロボット把持部の把持力制御用プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108951
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】柔らかさ測定装置、柔らかさ測定方法、ロボット把持部の把持力制御装置、ロボット制御装置、ロボット、及びロボット把持部の把持力制御用プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20240805BHJP
   B25J 15/08 20060101ALI20240805BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
G01L5/00 Z
B25J15/08 W
B25J13/08 Z
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013635
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】304036754
【氏名又は名称】国立大学法人山形大学
(74)【代理人】
【識別番号】100160543
【弁理士】
【氏名又は名称】河野上 正晴
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100196209
【弁理士】
【氏名又は名称】松崎 義邦
(74)【代理人】
【識別番号】100196829
【弁理士】
【氏名又は名称】中澤 言一
(72)【発明者】
【氏名】竹田 泰典
(72)【発明者】
【氏名】時任 静士
(72)【発明者】
【氏名】ワン イーフェイ
【テーマコード(参考)】
2F051
3C707
【Fターム(参考)】
2F051AA10
2F051AA17
2F051AB07
2F051AC09
2F051BA05
3C707AS34
3C707AS35
3C707ES03
3C707ET03
3C707KS10
3C707KS33
3C707KX08
3C707LV10
3C707MT01
3C707NS26
(57)【要約】
【課題】物体の柔らかさを測定可能な簡便な装置を提供する。
【解決手段】複数の圧力センサを含むセンサアレイを備えた凸部、凹部、またはそれらの組み合わせで構成される立体面を含む把持部であって、前記複数の圧力センサの少なくとも一部が、前記把持部の移動方向における前記立体面上の異なる位置に配置される把持部、前記把持部の押込量を測定可能に構成された押込量測定部、前記センサアレイにより検出される圧力関連特性を測定可能に構成された圧力測定部、及び前記把持部で物体を把持するときの前記押込量測定部及び前記圧力測定部により測定された前記押込量と前記圧力関連特性との関係に基づいて、前記物体の柔らかさを算出可能に構成された処理部を含む、柔らかさ測定装置。
【選択図】図6

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧力センサを含むセンサアレイを備えた凸部、凹部、またはそれらの組み合わせで構成される立体面を含む把持部であって、前記複数の圧力センサの少なくとも一部が、前記把持部の移動方向における前記立体面上の異なる位置に配置される把持部、
前記把持部の押込量を測定可能に構成された押込量測定部、
前記センサアレイにより検出される圧力関連特性を測定可能に構成された圧力測定部、及び
前記把持部で物体を把持するときの前記押込量測定部及び前記圧力測定部により測定された前記押込量と前記圧力関連特性との関係に基づいて、前記物体の柔らかさを算出可能に構成された処理部
を含む、柔らかさ測定装置。
【請求項2】
前記センサアレイは一次元センサアレイ、二次元センサアレイ、またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の柔らかさ測定装置。
【請求項3】
前記圧力関連特性が圧力変化である、請求項1に記載の柔らかさ測定装置。
【請求項4】
前記圧力関連特性が、前記複数の圧力センサのうち圧力を検出するセンサの数である、請求項1に記載の柔らかさ測定装置。
【請求項5】
前記圧力関連特性が圧力の大きさである、請求項1に記載の柔らかさ測定装置。
【請求項6】
前記複数の圧力センサは、圧力により抵抗変化する抵抗体である、請求項1に記載の柔らかさ測定装置。
【請求項7】
前記把持部が温度センサをさらに含む、請求項1に記載の柔らかさ測定装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の柔らかさ測定装置、及び前記把持部の把持力制御部を備え、
前記把持力制御部が、前記処理部で算出した柔らかさに基づいて前記把持部の把持力を制御する、
ロボット把持部の把持力制御装置。
【請求項9】
前記把持力が、前記把持部の位置、力、移動速度、またはそれらの組合せによって制御される、請求項8に記載のロボット把持部の把持力制御装置。
【請求項10】
前記処理部で算出した柔らかさに基づいて前記把持部の把持力を制御することが、前記物体が所定値以上の固さを有する場合は前記把持部の把持力を強めて前記物体の落下を防ぐこと、及び前記物体が所定値未満の固さを有する場合は前記把持部の把持力を弱めて前記物体の破壊を防ぐことを含む、請求項8に記載のロボット把持部の把持力制御装置。
【請求項11】
請求項8に記載のロボット把持部の把持力制御装置を含むロボット制御装置。
【請求項12】
請求項11に記載のロボット制御装置を含むロボット。
【請求項13】
複数の圧力センサを含むセンサアレイを備えた凸部、凹部、またはそれらの組み合わせで構成される立体面を含む把持部であって、前記複数の圧力センサの少なくとも一部が、前記把持部の移動方向における前記立体面上の異なる位置に配置される把持部を駆動させて物体を押し込むこと、
前記把持部の押込量を測定すること、
前記センサアレイにより検出される圧力関連特性を測定すること、及び
前記押込量と前記圧力関連特性との関係に基づいて、前記物体の柔らかさを算出すること
を含む、柔らかさ測定方法。
【請求項14】
複数の圧力センサを含むセンサアレイを備えた凸部、凹部、またはそれらの組み合わせで構成される立体面を含む把持部であって、前記複数の圧力センサの少なくとも一部が、前記把持部の移動方向における前記立体面上の異なる位置に配置される把持部の押込量を記憶する処理、
前記センサアレイにより検出される圧力関連特性を記憶する処理、
前記押込量と前記圧力関連特性との関係に基づいて、前記物体の柔らかさを算出する処理、及び
前記算出した柔らかさに基づいて前記把持部の把持力を制御する処理、
をコンピュータに実行させる、ロボット把持部の把持力制御用プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔らかさ測定装置、柔らかさ測定方法、ロボット把持部の把持力制御装置、ロボット制御装置、ロボット、及びロボット把持部の把持力制御用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生産効率向上や人手不足の解消のために、工場の自動化や協働ロボットの適用領域が広がっており、ロボットを高性能化及び高機能化するための制御装置及び制御方法を含むロボットシステムの開発が望まれている。
【0003】
従来、ロボットグリッパーの把持部に力覚センサや圧力センサを搭載し、事前に設定した一定以上の把持力で把持しない方法が提案されている(非特許文献1)。また、圧電センサによるスリップ振動の検出やセンサを用いたせん断力検出が提案されている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Gu, G., Zhang, N., Xu, H. et al. A soft neuroprosthetic hand providing simultaneous myoelectric control and tactile feedback. Nat Biomed Eng (2021).
【非特許文献2】Zhang, J., Yao, H., Mo, J. et al. Finger-inspired rigid-soft hybrid tactile sensor with superior sensitivity at high frequency. Nat Commun 13, 5076 (2022).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、物体の柔らかさを測定可能な簡便な装置は無いのが現状である。したがって、物体の柔らかさを検出する簡便な装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)複数の圧力センサを含むセンサアレイを備えた凸部、凹部、またはそれらの組み合わせで構成される立体面を含む把持部であって、前記複数の圧力センサの少なくとも一部が、前記把持部の移動方向における前記立体面上の異なる位置に配置される把持部、
前記把持部の押込量を測定可能に構成された押込量測定部、
前記センサアレイにより検出される圧力関連特性を測定可能に構成された圧力測定部、及び
前記把持部で物体を把持するときの前記押込量測定部及び前記圧力測定部により測定された前記押込量と前記圧力関連特性との関係に基づいて、前記物体の柔らかさを算出可能に構成された処理部
を含む、柔らかさ測定装置。
(2)前記センサアレイは一次元センサアレイ、二次元センサアレイ、またはそれらの組み合わせである、上記(1)に記載の柔らかさ測定装置。
(3)前記圧力関連特性が圧力変化である、上記(1)または(2)に記載の柔らかさ測定装置。
(4)前記圧力関連特性が、前記複数の圧力センサのうち圧力を検出するセンサの数である、上記(1)~(3)のいずれかに記載の柔らかさ測定装置。
(5)前記圧力関連特性が圧力の大きさである、上記(1)~(4)のいずれかに記載の柔らかさ測定装置。
(6)前記複数の圧力センサは、圧力により抵抗変化する抵抗体である、上記(1)~(5)のいずれかに記載の柔らかさ測定装置。
(7)前記把持部が温度センサをさらに含む、上記(1)~(6)のいずれかに記載の柔らかさ測定装置。
(8)上記(1)~(7)のいずれかに記載の柔らかさ測定装置、及び前記把持部の把持力制御部を備え、
前記把持力制御部が、前記処理部で算出した柔らかさに基づいて前記把持部の把持力を制御する、
ロボット把持部の把持力制御装置。
(9)前記把持力が、前記把持部の位置、力、移動速度、またはそれらの組合せによって制御される、上記(8)に記載のロボット把持部の把持力制御装置。
(10)前記処理部で算出した柔らかさに基づいて前記把持部の把持力を制御することが、前記物体が所定値以上の固さを有する場合は、前記把持部の把持力を強めて前記物体の落下を防ぐこと、及び前記物体が所定値未満の固さを有する場合は、前記把持部の把持力を弱めて前記物体の破壊を防ぐことを含む、上記(8)または(9)に記載のロボット把持部の把持力制御装置。
(11)上記(8)~(10)のいずれかに記載のロボット把持部の把持力制御装置を含むロボット制御装置。
(12)上記(11)に記載のロボット制御装置を含むロボット。
(13)複数の圧力センサを含むセンサアレイを備えた凸部、凹部、またはそれらの組み合わせで構成される立体面を含む把持部であって、前記複数の圧力センサの少なくとも一部が、前記把持部の移動方向における前記立体面上の異なる位置に配置される把持部を駆動させて物体を押し込むこと、
前記把持部の押込量を測定すること、
前記センサアレイにより検出される圧力関連特性を測定すること、及び
前記押込量と前記圧力関連特性との関係に基づいて、前記物体の柔らかさを算出すること
を含む、柔らかさ測定方法。
(14)複数の圧力センサを含むセンサアレイを備えた凸部、凹部、またはそれらの組み合わせで構成される立体面を含む把持部であって、前記複数の圧力センサの少なくとも一部が、前記把持部の移動方向における前記立体面上の異なる位置に配置される把持部の押込量を記憶する処理、
前記センサアレイにより検出される圧力関連特性を記憶する処理、
前記押込量と前記圧力関連特性との関係に基づいて、前記物体の柔らかさを算出する処理、及び
前記算出した柔らかさに基づいて前記把持部の把持力を制御する処理、
をコンピュータに実行させる、ロボット把持部の把持力制御用プログラム。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、物体の柔らかさを測定可能な簡便な装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、略半円筒状の凸部で構成された立体面を有する把持部の模式図である。
図2図2は、ドーム状(略半球状)の凸部で構成された立体面を有する把持部の模式図である。
図3図3は、一次元センサアレイの一例の模式図である。
図4図4は、二次元センサアレイの一例の模式図である。
図5図5は、表面に一次元センサアレイが配置された断面が半円状の把持部で物体を把持する態様の断面模式図である。
図6図6は、図5の一次元センサアレイを備える断面が半円状の把持部で、(A)柔らかい物体を把持する態様と、(B)硬い物体を把持する場合の態様である。
図7図7は、半円柱面上に配置された一次元センサアレイの模式図である。
図8図8は、(A)作製した二次元センサアレイの外観写真と、(B)半円柱面上に配置された二次元センサアレイの模式図である。
図9図9は、図8に示す半円柱面上に配置された二次元センサアレイのそれぞれの圧力センサが物体から受ける圧力が、把持部の物体への押込量に応じてどのように変化するかを模式的に表した図である。
図10図10は、二次元センサアレイの圧力を検出した圧力センサの分布を表す模式図である。
図11図11は、把持部の押込量(移動距離)とセンサ信号(圧力)との関係の一例を表したグラフである。
図12図12は、断面が半円状の把持部の表面に5つの圧力センサを含む一次元センサアレイを配置して、柔らかい物体(S)、少し柔らかい物体(M)、及び硬い物体(H)に把持部を押し込んだときの圧力を検出する圧力センサの模式図である。
図13図13は、図12に示した態様に対応する把持部の押込量(移動距離)と圧力を検出した圧力センサ数との関係の一例を表したグラフである。
図14図14は、圧力センサ及び電極のスクリーン印刷に用いた印刷版の外観写真である。
図15図15は、作製したセンサアレイの外観写真である。
図16図16は、フレキシブル基板上に7つの圧力センサを直線状に配置した一次元センサアレイが表面に配置された半円筒状の把持部の拡大写真である。
図17図17は、図16に示したフレキシブル基板上の一次元センサアレイを把持部の表面に備えるロボットの把持動作前及び把持動作中の外観写真である。
図18図18は、図17に示したロボットによるPDMS樹脂の柔らかさ測定結果である。
図19図19は、図17に示したロボットによる脂肪族芳香族コポリエステル(エコフレックス(登録商標))樹脂の柔らかさ測定結果である。
図20図20は、センサアレイの圧力測定及び把持部の押込量の測定から柔らかさを出力するまでの情報処理のフローチャートである。
図21図21は、複数の圧力センサを含むセンサアレイを備えた複数の把持部を含む柔らかさ測定装置の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、複数の圧力センサを含むセンサアレイを備えた凸部、凹部、またはそれらの組み合わせで構成される立体面を含む把持部であって、前記複数の圧力センサの少なくとも一部が、前記把持部の移動方向における前記立体面上の異なる位置に配置される把持部、前記把持部の押込量を測定可能に構成された押込量測定部、前記センサアレイにより検出される圧力関連特性を測定可能に構成された圧力測定部、及び前記把持部で物体を把持するときの前記押込量測定部及び前記圧力測定部により測定された前記押込量と前記圧力関連特性との関係に基づいて、前記物体の柔らかさを算出可能に構成された処理部を含む、柔らかさ測定装置(以下、本装置ともいう)を対象とする。
【0010】
本装置によれば、物体を把持するときの把持部の押込量と圧力関連特性との関係に基づいて、物体の柔らかさを測定することができる。物体は、把持されて柔らかさを評価される物体(以下、単に物体ともいう)である。本装置は、簡便な構造で構成され得る。本装置によれば、従来、測定が難しかった柔らかい物体の柔らかさを定量的に測定することができる。また、本装置によれば、物体を傷つけることなく非破壊的に柔らかさを測定することができる。すなわち、本装置の把持部は圧力センサを備えて触覚機能、触感機能を有することができ、把持部の押込量と圧力センサで検出した圧力関連特性に基づいて、処理部が物体の柔らかさを算出することができる。物体は任意の形状を有することができる。圧力関連特性は、圧力の大きさ、圧力の変化割合、圧力の有無、圧力を検出する圧力センサの数、圧力を検出する圧力センサの位置等であることができる。また、本装置によれば、把持部が物体を把持する際に圧力を垂直に加えた場合と斜めに加えた場合で、圧力センサに加わる垂直の圧力成分が異なり、それに基づく圧力変化を測定することもできる。
【0011】
図20に、本装置における情報処理のフローチャートを示す。処理部は、記憶部、演算部、及び通信部(図示せず)を含むことができる。通信部は、センサアレイ、把持部、及び表示部と通信することができる。本装置は、柔らかさを表示する表示部を有してもよい。
【0012】
センサアレイの各圧力センサで測定された圧力関連特性及び把持部の押込量は、記憶部に送信されて記憶され得る。記憶部は、例えば、ROM、RAM等の半導体メモリ装置である。記憶部は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、またはデータを記憶可能な前記以外の各種記憶装置でもよい。記憶部には、演算部における処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム、及びデータ等が記憶され得る。記憶部に記憶されるコンピュータプログラムは、例えばCD-ROM、DVD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶部にインストールされてもよい。記憶部は、所定の処理に係るデータを一時的に記憶してもよい。
【0013】
表示部はディスプレイである。表示部は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等でもよい。表示部は、把持部の押込量と圧力関連特性との関係に基づいて算出した物体の柔らかさを表示することができる。
【0014】
各圧力センサから記憶部に送信される際に、データはアナログ/デジタル変換されてもよい。記憶部に送信されたデータは、オフセット及びゲイン調整がされてもよい。
【0015】
演算部においては、押込量に対する圧力関連特性の変化割合等の算出結果として出力αが算出され得る。演算部は、一個または複数個のプロセッサ及びその周辺回路を有する。演算部は、サーバの全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。演算部は、圧力関連特性及び把持部の押込量の記憶部への格納、記憶部に格納される圧力関連特性及び把持部の押込量に基づき、各種集計が実行されるように、通信部及び記憶部の動作を制御することができる。
【0016】
演算部は、記憶部に記憶されているプログラム(ドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム等)に基づいて各種処理を実行する。また、演算部は、複数のプログラム(アプリケーションプログラム等)を並列に実行できる。
【0017】
把持部で物体を把持するとき、把持部で物体を挟む。把持部で物体を挟む際に、センサアレイが物体に当接する。把持部は、把持部を駆動する駆動部を含むことができる。
【0018】
把持部は、凸部、凹部、またはそれらの組み合わせで構成された立体面上の前記把持部の移動方向の異なる位置に少なくとも一部が配置された複数の圧力センサを含むセンサアレイを備える。立体面とは、凸部、凹部、またはそれらの組み合わせで構成される面である。複数の圧力センサのうち少なくとも一部が前記把持部の移動方向における立体面上の異なる位置に配置される。これにより、物体に各圧力センサが接触するタイミングをずらすことができる。複数の圧力センサを把持部の移動方向における立体面上の異なる位置に配置することで、把持部の押し込みにより圧力変化が得られないような柔らかい物体の柔らかさも測定することができる。
【0019】
複数の圧力センサのうち少なくとも一部が把持部の移動方向における立体面上の異なる位置に配置される限り、複数の圧力センサのうち一部が立体面上の把持部の移動方向の同じ位置に配置されてもよい。また、複数の圧力センサのうち少なくとも一部が把持部の移動方向における立体面上の異なる位置に配置され、立体面上の配置位置及び向きを記録しておけば、複数の圧力センサは立体面上の所望の位置に配置され得る。
【0020】
凸部とは、把持部表面の突出部であり、例えば、略半円筒状、ドーム状(略半球状)、角錐状、円錐状、錐台状等の突出部であることができ、対称形または非対称形でもよい。凹部とは、把持部表面の陥没部であり、例えば、略半円筒状、ドーム状(略半球状)、角錐状、円錐状、錐台状等の陥没部であることができ、対称形または非対称形でもよい。
【0021】
図1に、略半円筒状の凸部で構成された立体面を有する把持部30の模式図を示す。図2に、基材31上に配置されたドーム状(略半球状)の凸部で構成された立体面を有する把持部30の模式図を示す。把持部30と基材31とは、別個の材料で構成されてもよく、同一の材料で構成されてもよく、一体で形成されてもよい。
【0022】
例えば、把持部が半円筒状の凸部を有し半円筒の凸面の直径方向にセンサアレイが配置される場合、半円筒の凸面の先端に配置される圧力センサが物体に最初に接触して圧力を検出し、把持部が物体を押し込むにつれて、先端の圧力センサの近傍に配置される圧力センサが物体に接触して圧力を検出することができる。
【0023】
例えば、把持部が半円筒状の凹部を有し半円筒の凹面の直径方向にセンサアレイが配置される場合、半円筒の凹面の把持部表面側に配置される圧力センサが物体に最初に接触して圧力を検出し、把持部が物体を押し込むにつれて、凹面の底側に配置された圧力センサが物体に接触して圧力を検出することができる。
【0024】
センサアレイは、複数の圧力センサを含む。センサアレイは、好ましくは、一次元センサアレイ、二次元センサアレイ、またはそれらの組み合わせである。
【0025】
図3に、一次元センサアレイの一例の模式図を示す。図3の一次元センサアレイ10は、直線状に並んだ複数の圧力センサ11で構成される。複数の圧力センサ11はそれぞれ、電極12で圧力測定部に接続され得る。複数の圧力センサ11及び電極12は、基板13上に形成され得るが、把持部に直接形成してもよい。一次元センサアレイは薄くて柔軟性を有するので、立体物の曲面上に容易に配置することができる。配置は、好ましくは貼り付けにより行われる。
【0026】
複数の圧力センサ11及び電極12を形成した基板13を含む一次元センサアレイ10を把持部の表面に配置、例えば貼り付けることができる。別法では、複数の圧力センサ11及び電極12は、基板を用いずに、把持部の表面に直接配置してもよい。例えば、把持部の表面に、インクジェット(3D printed electronics)で印刷して圧力センサを形成してもよい。すなわち、把持部は、フレキシブル基板上に作製した圧力センサを表面に備えてもよく、把持部上に直接作製された圧力センサを表面に備えてもよい。
【0027】
図4に、二次元センサアレイの一例の模式図を示す。図4の二次元センサアレイ20は、5列×4行に配置された複数の圧力センサ11で構成される。複数の圧力センサ11はそれぞれ、電極(図示せず)で圧力測定部に接続され得る。複数の圧力センサ11及び電極は、基板13上に形成され得るが、把持部に直接形成してもよい。二次元センサアレイの電極は、パッシブ、アクティブ、シリアル等の任意の方法で接続され得る。
【0028】
圧力センサを備える把持部と向かい合う他方の把持部は、圧力センサを有してもよく有しなくてもよいが、好ましくは他方の把持部も圧力センサまたは複数の圧力センサを含むセンサアレイを表面に有する。他方の把持部も圧力センサまたはセンサアレイを備えることにより、両側の把持部で物体を挟んだときに物体の両側の情報を得ることができ、精度をより向上することができる。
【0029】
図5に、表面に一次元センサアレイ10が配置された断面が半円状の把持部30で物体40を把持する態様の断面模式図を示す。向かい合う把持部は図示しない。把持部30の表面に配置される一次元センサアレイ10は複数の圧力センサ11を備える。複数の圧力センサ11は立体面である断面が半円状の把持部30上に配置され、複数の圧力センサ11の少なくとも一部は把持部30の矢印で示される移動方向における異なる位置に配置されているので、複数の圧力センサ11が物体40に接触するタイミングが異なる。
【0030】
図6に、図5の一次元センサアレイ10を備える断面が半円状の把持部30で、(A)柔らかい物体を把持する態様と、(B)硬い物体を把持する場合の態様を示す。向かい合う把持部は図示しない。
【0031】
図6(A)に例示する柔らかい物体40を把持部30で把持する場合、先端の圧力センサ11が物体に最初に接触する。先端の圧力センサ11が物体40に接触して圧力を検出した段階では、隣接する圧力センサは圧力を検出しないが、物体40が柔らかく把持部30が物体40を押し込んで物体40が凹むと、先端の圧力センサに隣接する圧力センサが物体40に接触し圧力を検出する。把持部30が物体40をさらに押し込んで物体40がさらに凹むと、両端の圧力センサが物体40に接触して圧力を検出する。このように、物体表面の変化に伴ってセンサアレイの各圧力センサが検出する圧力が変化する。これにより、センサアレイから発信される圧力関連特性、例えば圧力の大きさ、圧力の増加割合、圧力の有無等が変化する。
【0032】
図6(B)に例示する硬い物体40を把持部30で把持する場合、先端の圧力センサ11が物体に最初に接触すると、物体40は硬いので把持部30と圧力センサ11は物体40にめり込むことができず、先端の圧力センサのみが圧力を検出し、物体40が硬いと算出することができる。
【0033】
把持部による物体の把持は、好ましくは、一定の把持力で行われる。
【0034】
図7に、半円柱面上に配置された一次元センサアレイの模式図を示す。図8に、(A)作製した二次元センサアレイの外観写真と、(B)半円柱面上に配置された二次元センサアレイの模式図を示す。図9は、図8に示す半円柱面上に配置された5×4の二次元センサアレイのそれぞれの圧力センサが物体から受ける圧力が、把持部の物体への押込量に応じてどのように変化するかを模式的に表した図である。最初は、中央の4つの圧力センサが圧力を検出し、次いで隣接する両側の4つの圧力センサが圧力を検出し、次いで両脇の4つの圧力センサが圧力を検出する。二次元センサアレイで物体から受ける圧力を測定することにより、物体の柔らかさをより精度よく測定することができる。圧力を検出する圧力センサが対称形になるようにセンサアレイ内で配置しなくてもよく、物体の形状、柔らかさ等の特性に応じて図10に例示するような分布で圧力を検出してもよい。
【0035】
図21に、複数の圧力センサを含むセンサアレイを備えた複数の把持部を含む柔らかさ測定装置の断面模式図を示す。本装置は、向かい合う片側または両側に1つの把持部を備えてもよく、片側または両側に2つ以上の把持部を備えてもよい。図21は、両側に複数の把持部を備え、複数の把持部がそれぞれセンサアレイを備える例である。本装置が片側に1つの把持部または両側にそれぞれ1つの把持部を備える場合、把持部が備える単一のセンサアレイから、圧力と押込量との関係に基づいて物体の柔らかさを算出することができる。本装置が片側または両側の少なくとも一方に2以上の把持部を備える場合、2つ以上の把持部がそれぞれ備える複数のセンサアレイから、圧力、押込量、並びに圧力を検出した圧力センサ数及び圧力センサ位置に基づいて物体の柔らかさを算出することができる。
【0036】
把持部の押込量とは、把持部の変形を考慮しない把持部を支持して押し込む剛体部の変位量でもよく、把持部の変形を考慮した把持部の先端部または圧力センサの先端部の変位量でもよい。
【0037】
把持部の押込量が、把持部の変形を考慮しない把持部を支持して押し込む剛体部の変位量の場合、且つ把持部が物体を押し込んだときに実質的に変形しない場合は、押込量に応じた物体の変形に基づく圧力をセンサアレイが検出して物体の柔らかさを測定することができる。
把持部の押込量が、把持部の変形を考慮しない把持部を支持して押し込む剛体部の変位量の場合、且つ把持部が物体を押し込んだときに実質的に変形する場合は、押込量に応じた把持部の変形に基づく圧力をセンサアレイが検出することができる。
把持部の押込量が、把持部の変形を考慮した把持部の先端部または圧力センサの先端部の変位量の場合、且つ把持部が物体を押し込んだときに実質的に変形しない場合は、押込量に応じた物体の変形に基づく圧力をセンサアレイが検出して物体の柔らかさを測定することができる。
把持部の押込量が、把持部の変形を考慮した把持部の先端部または圧力センサの先端部の変位量の場合、且つ把持部が物体を押し込んだときに実質的に変形する場合は、押込量に応じた把持部の変形に基づく圧力をセンサアレイが検出することができる。
【0038】
把持部の硬さは、把持される物体より硬くてもよく、同程度の硬さでもよく、柔らかくてもよい。把持部は、把持される物体より硬い材料、同程度の硬さの材料、及び柔らかい材料から選択される2以上の複合材料で構成されてもよい。2以上の複合材料で把持部が構成される場合、例えば、物体に接する側の層が把持される物体より柔らかい材料であり、物体に接する側とは反対側の層が把持される物体より硬い材料でもよい。把持部の材料は特に限定されないが、例えば、熱で溶かして固めることができる樹脂、光造形で固めることができる樹脂、金属、プラスチック、木材等で構成され得る。把持部は、例えばポリ乳酸で形成することができる。ポリ乳酸を材料に用いて3Dプリンタで把持部を形成することができる。
【0039】
把持部の硬さが、把持される物体より硬い場合、把持部に押し込まれることによる物体の変形(凹み)に伴って、センサアレイの信号(圧力と分布)が変化する。硬い把持部は、金属、プラスチック等の硬い材料で構成され得る。したがって、把持される物体に把持部を押し込む際の押込量及び圧力に基づいて物体の柔らかさを測定することができる。把持部の押込量は、例えばモーターで制御することができ、ステッピングモーターのステップ数での制御が可能であり、圧縮空気、モーター等の位置制御はリニアエンコーダで位置を計測してもよい。把持部が前記好ましい硬さを有することにより、把持する物体の柔らかさをより精度よく測定することができる。
【0040】
把持部の硬さが把持される物体より柔らかい場合、把持される物体に把持部を押し込む際の、押込量、圧力、及び把持部の変形度に基づいて物体の柔らかさを測定することができ、好ましくは、重い物体をより良好に把持することができる。例えば、半球状の把持部を物体に押し当てたときに把持部が押しつぶされて平坦になると、把持部の表面に配置されたセンサアレイに含まれる圧力センサの複数が圧力を検出することができるので、検出圧力、圧力の検出タイミング、圧力を検出した圧力センサの個数、及び/または圧力を検出した圧力センサの位置に基づいて、物体の柔らかさを測定することができる。
【0041】
把持部が、把持される物体より硬い材料、同程度の硬さの材料、及び柔らかい材料から選択される2以上の複合材料で構成される場合、例えば、物体に接する側の層が把持される物体より柔らかいポリウレタン製であり、物体に接する側(表面側)とは反対側(内部側)の層が把持される物体より硬い金属製でもよい。把持部がこのような2以上の層構造を有する場合、物体の柔らかさは、把持部の表面側の層が物体により押しつぶされている間のモードと、内部側の層に物体が表面側の層を介して当たってからのモードの2種類のモードに基づいて算出され得る。
【0042】
圧力関連特性は、好ましくは、圧力変化である。図11に、把持部の押込量(移動距離)と圧力センサからのセンサ信号(圧力)との関係の一例を表したグラフを示す。把持部を一定速度で移動させて物体に接触するとセンサ信号(圧力)は上昇し、把持部の押込量(移動距離)に応じてセンサ信号(圧力)は増大する。押込量に対する圧力増加の割合に基づいて、物体の柔らかさを測定することができる。
【0043】
符号Hが付されたグラフは、把持される物体が金属、木材等の硬い材料で構成されたものである場合を示し、センサ信号(圧力)は急激に増大する。符号Mが付されたグラフは、把持される物体が少し柔らかい材料で構成されたものである場合を示し、センサ信号(圧力)は比較的緩やかに増大する。符号Sが付されたグラフは、把持される物体が柔らかい材料で構成されたものである場合を示し、センサ信号(圧力)は緩やかに増大する。このように、把持部の押込量(移動距離)に対する圧力変化の増加割合を測定することで、物体の柔らかさを測定することができる。把持部の移動距離は、把持部間の距離の逆数または把持部の移動時間(一定速度で把持部を移動させる場合)でもよい。
【0044】
圧力関連特性は、好ましくは、複数の圧力センサのうち圧力を検出するセンサの数である。図12に、断面が半円状の把持部の表面に5つの圧力センサを含む一次元センサアレイを配置して、柔らかい物体(S)、少し柔らかい物体(M)、及び硬い物体(H)に把持部を押し込んだときの圧力を検出する圧力センサの模式図を示す。
【0045】
図13に、図12に示した態様に対応する把持部の押込量(移動距離)と圧力を検出した圧力センサ数との関係の一例を表したグラフを示す。何個の圧力センサが圧力を受けたかによって、物体の凹み具合(沈みこみ量)が分かり、物体の柔らかさを判別することができる。例えば、1つの圧力センサだけが圧力を検出する場合は物体は硬い(H)と判別され、3個の圧力センサが圧力を検出する場合は物体は少し柔らかい(M)と判別され、5個の圧力センサが圧力を検出する場合は、物体は柔らかい(S)と判別される。複数の圧力センサのそれぞれは、誤検出抑制のために圧力検出の閾値を有してもよい。
【0046】
圧力関連特性は、好ましくは、圧力の大きさである。物体からの距離が異なるように把持部の表面に配置された複数の圧力センサは、把持部の押込量(移動距離)に応じて圧力を検出するタイミングが異なるだけでなく、検出する圧力の大きさが異なり得る。本装置は、好ましくは、複数の圧力センサが検出する異なる大きさの圧力に基づいて、物体の柔らかさをより精度よく測定することができる。
【0047】
物体の柔らかさの算出結果は、定性的表示、数値表示、パーセント表示等の所望の形式であることができる。
【0048】
定性的表示の場合、事前に所望の段階で物体の柔らかさの基準を設定しておくことができる。柔らかさの基準は2段階以上で設定することができる。柔らかさの基準は、例えば2~21段階、3~15段階、4~11段階、または5~7段階で設定することができる。例えば、2段階の場合は、押込量に対する圧力増加の割合(グラフの傾き)が0~1未満の場合は柔らかいと判断して出力し、前記割合が1以上の場合は硬いと判断して出力することができる。3段階の場合は、押込量に対する圧力増加の割合が0~1未満の場合は柔らかいと判断し、前記割合が1~10未満の場合はやや柔らかいと判断し、前記割合が10以上の場合は硬いと判断することができる。1~3等の数値で表す段階で出力してもよい。
【0049】
数値表示またはパーセント表示の場合、例えば、事前に数値範囲の最小の数値及び最大の数値に対応する押込量に対する圧力増加の割合(グラフの傾き)を設定しておくことができる。例えば0~100の数値範囲またはパーセント表示で柔らかさを表示する場合、最も柔らかい場合を0とし、最も硬い場合を100として、それぞれに対応する押込量に対する圧力増加の割合を設定しておくことができる。事前に設定した押込量に対する圧力増加の割合の上下限の値に基づいて、測定した押込量に対する圧力増加の割合の大きさを0~100の数値またはパーセントで表すことができる。
【0050】
圧力センサは、従来用いられている圧力センサであることができる。圧力センサは、抵抗体、誘電体(キャパシタ)、圧電体等で構成され得る。センサアレイに含まれる複数の圧力センサは、同じ圧力センサ(単一の圧力センサ)であることができる。
【0051】
センサアレイに含まれる各圧力センサの大きさは特に限定されないが、例えば0.5~10mm角、1~7mm角、または2~4mm角であることができる。各圧力センサの厚みは特に限定されないが、例えば10~1000μm、50~500μm、または80~250μmであることができる。
【0052】
圧力センサは、好ましくは、圧力によって抵抗が変化する抵抗体で構成される。抵抗体は、簡便構造の可変抵抗圧力センサを構成することができる。抵抗体の圧力センサは、単一材料で構成されるので構造が単純であり、損傷リスクが小さく、また、曲率半径が小さい曲面上にも形成しやすい。例えば、積層体の場合、剥離等の損傷リスクがあり、また、曲率半径が小さい曲面上に配置すると上面層と下面層とのずれが大きくなるので剥離しやすくなり、対向面積のずれが大きくなるので測定解像度への影響も大きくなる。また、抵抗体の圧力センサは、抵抗体と電極の二回印刷または三回印刷で作成できるので、コスト的にも有利である。抵抗体は、好ましくは、多孔質カーボン材料を含むペーストをスクリーン印刷及び乾燥することにより形成することができる。
【0053】
抵抗体で構成される圧力センサは、好ましくは、樹脂と加熱膨張後の熱膨張性マイクロカプセル(TEM:Thermal Expansion Material)と導電性粒子とを含む多孔質導電膜である第1の抵抗層と、前記樹脂と前記熱膨張性マイクロカプセルと前記第1の抵抗層以上の量の導電牲粒子とを含む多孔質導電膜である第2の抵抗層と、圧力により変化する抵抗値を測定するために形成された一対の電極とを備え、前記第1の抵抗層と前記第2の抵抗層とを対向させて貼り合わせた構造を有する。樹脂は、好ましくは熱可塑性樹脂であり、より好ましくはスチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)である。導電性粒子は、好ましくはカーボンブラック(CB)である。加熱膨張後の熱膨張性マイクロカプセルは、好ましくは50~200μmの直径を有する。熱膨張性マイクロカプセルは、スクリーン印刷等でパターンを形成した後にアニール処理により膨張させることができる。一対の電極は、第1の抵抗層側または第2の抵抗層側に配置され得、好ましくは第1の抵抗層側に配置される。
【0054】
複数の圧力センサは、互いに異なる種類及び大きさでもよいが、好ましくは種類及び大きさが同じである。種類及び大きさが単一の圧力センサを用いることにより、物体の柔らかさの測定を良好に行うことができ、且つ低コストで容易に本装置を作製することができる。
【0055】
把持部は、好ましくは、温度センサをさらに含む。把持部が温度センサをさらに備えることにより、物体の温度を測定することができる。圧力センサと温度センサを組み合わせることで物体の柔らかさの測定だけでなく、温度検出も可能となる。把持部が温度測定機能を有することにより、把持される物体の温度検出が可能となり、例えば、本装置を医療ロボットに適用することにより、人間の手首を掴むだけで、圧力(心拍)、温度(体温)等が測定可能である。また、本装置を飲食店サービスロボットに適用することにより、把持したお皿の温度測定が可能となり、測定した温度に基づいて「熱いので注意」などの表示及び音声出力等が可能となり、あるいはワイン、お茶、コーヒー等の飲食物の温度測定と飲食物の種類に基づいて飲食物に適した温度となるように温度調整または提供タイミングを調整して、お客に提供することができる。
【0056】
把持部において圧力センサと温度センサは積層させることができる。圧力センサの配列を形成することで、把持力の2次元分布を可視化し、積層された温度センサからのリアルタイム情報を含めて、好ましくはロボットアームを制御することができる。把持部が積層構造を有することにより、感圧部分の温度測定、小スペース化、及び人間の指の触覚機能のような高度な情報解析(マルチモーダル解析)が可能となる。
【0057】
基板は柔軟性を有するフレキシブル基板であればよく、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)等の基板であることができる。基板が柔軟性を有することにより、曲面上にセンサアレイを配置することができる。基板は、好ましくは伸縮性をさらに有する基板であり、好ましくはポリジメチルシロキサン(PDMS)、ウレタン系ポリマー等の基板である。基板の厚みは曲面上に配置可能な柔軟性を有する限り特に限定されないが、例えば15~100μm、20~85μm、または30~70μmであることができる。
【0058】
本装置をロボット把持部(グリッパー)の把持力制御装置に適用することができる。ロボット把持部の把持力制御装置は、好ましくは、上記柔らかさ測定装置(本装置)及び把持部の把持力制御部を備え、把持力制御部が、処理部で算出した柔らかさに基づいて把持部の把持力を制御することができる。上記把持力制御装置によれば、把持される物体が硬いか柔らかいかの事前の情報無しに、物体を壊すことなく把持することができる。把持部の押込量と複数の圧力センサで検出した圧力関連特性に基づいて把持力制御部にフィードバックして把持力を制御することにより、把持力をその場で制御することができ、例えば、豆腐、ショートケーキ、花等の柔らかい物体を、壊すことなく把持することが可能である。
【0059】
把持力は、好ましくは、把持部の位置、力、移動速度、またはそれらの組合せによって制御される。処理部から把持部には、把持部の位置、力、移動速度等の制御信号が10~200Hzまたは20~100Hzの周波数で常に送信され、把持部は処理部からの制御信号に基づいて動作し得る。処理部は、算出する物体の柔らかさに基づいて、適切な把持圧力(力)を設定して把持部に制御信号を送信することができる。
【0060】
処理部で算出した柔らかさに基づいて把持部の把持力を制御することは、好ましくは、物体が所定値以上の固さを有する場合は把持部の把持力を強めて物体の落下を防ぐこと、及び物体が所定値未満の固さを有する場合は把持部の把持力を弱めて物体の破壊を防ぐことを含む。把持力制御装置は、物体が柔らかいと把持力を弱め物体が硬いと把持力を強めることができ、物体の柔らかさに応じて把持力を制御することができる。
【0061】
把持力制御装置は、好ましくはせん断力センサをさらに備える。せん断力センサにより、物体が柔らかい場合でもより良好に持ち上げることができる。本装置のセンサアレイがせん断力センサとして機能してもよく、把持力制御装置が、別のせん断力センサをさらに備えてもよい。
【0062】
把持部に圧力センサを備えて触覚機能、触感機能を持たせ、圧力センサで検知された情報に基づき処理部が物体の柔らかさを判断し、柔らかい物であれば柔らかく握り、硬く重い物であれば強く握るように、把持部を制御(把持部にフィードバック)することができる。
【0063】
上記ロボット把持部の把持力制御装置をロボット制御装置に適用することができる。また、前記ロボット制御装置をロボットに適用することができる。ロボットは、飲食店用ロボット、医療用ロボット等であることができる。
【0064】
本開示はまた、複数の圧力センサを含むセンサアレイを備えた凸部、凹部、またはそれらの組み合わせで構成される立体面を含む把持部であって、前記複数の圧力センサの少なくとも一部が、前記把持部の移動方向における前記立体面上の異なる位置に配置される把持部を駆動させて物体を押し込むこと、前記把持部の押込量を測定すること、前記センサアレイにより検出される圧力関連特性を測定すること、及び前記押込量と前記圧力関連特性との関係に基づいて、前記物体の柔らかさを算出することを含む、柔らかさ測定方法を対象とする。
【0065】
本開示はまた、複数の圧力センサを含むセンサアレイを備えた凸部、凹部、またはそれらの組み合わせで構成される立体面を含む把持部であって、前記複数の圧力センサの少なくとも一部が、前記把持部の移動方向における前記立体面上の異なる位置に配置される把持部の押込量を記憶する処理、前記センサアレイにより検出される圧力関連特性を記憶する処理、前記押込量と前記圧力関連特性との関係に基づいて、前記物体の柔らかさを算出する処理、及び前記算出した柔らかさに基づいて前記把持部の把持力を制御する処理、をコンピュータに実行させる、ロボット把持部の把持力制御用プログラムを対象とする。
【0066】
複数の圧力センサを含むセンサアレイは、印刷法、フォトリソグラフィー、気相法等で作製することができるが、好ましくは印刷法で作製される。印刷法は大面積化とパターン形成が容易であり、量産性に優れ低コスト化が容易である点で好ましい。印刷法は、好ましくは、圧力センサのペースト及び電極ペーストを用いるスクリーン印刷である。
【実施例0067】
(実施例1)
図14に、圧力センサ及び電極のスクリーン印刷に用いた印刷版の外観写真を示す。印刷版は、孔を有する金属のメッシュである。
【0068】
高抵抗導電性樹脂ぺースト用の材料として、スチレン-ブタジエン-スチレン樹脂(SBS樹脂):30mg、粒子径34nmのカーボンブラック(CB):1.5mg(SBSに対して5質量%の量)、熱膨張性マイクロカプセル(TEM;マツモ卜マイクロスフェアー(登録商標);HF-36D):1.5mg(SBSに対して5質量%の量)をそれぞれ準備した。溶解液としてテトラリン:170mgも準備した。
【0069】
低抵抗導電性樹脂ぺースト用の材料として、SBS:30mg、粒子径34nmのCB:3mg(SBSに対して10質量%の量)、TEM(マツモトマイクロスフェアー(登録商標);HF-36D)1.5mg(SBSに対して5質量%の量)をそれぞれ準備した。溶解液としてテトラリン:170mgも準備した。
【0070】
SBS:30mgをテトラリン:170mgで溶解した液体に、CB:1.5mgとTEM:1.5mgを投入し、THINKY(自転・公転攪拌器)にて5分間にわたり攪拌し、その後、デガスを2分間実施し、樹脂中にCBとTEMが分散して形成された高抵抗導電性樹脂ぺーストを生成した。
【0071】
SBS:30mgをテトラリン:170mgで溶解した液体に、CB:3mgとTEM:1.5mgを投入し、THINKYにて5分間にわたり攪拌し、その後、デガスを2分間実施し、樹脂中にCBとTEMが分散して形成された低抵抗導電性樹脂ぺース卜を生成した。
【0072】
図14の印刷板と電極ペースト(銀ペースト(XA-3609:藤倉化成))を用いてスクリーン印刷を行い、厚みが50μmのPEN基板上に電極パターンを形成した。
【0073】
次いで、図14の印刷板と上記で生成した高抵抗導電性樹脂ぺーストを使用して、形成した電極パターンを覆うように、PEN基板上に高抵抗層パターンをスクリーン印刷した。
【0074】
図14の印刷板と上記で生成した低抵抗導電性樹脂ぺーストを使用して、別の厚みが50μmのPEN基板上に高抵抗層パターンと略同一形状の低抵抗層パターンをスクリーン印刷した。
【0075】
次いで、2段階のアニール処理を行った。具体的には、70℃、30分間のプリア二―ル処理により、テ卜ラリンを揮発させた。その後、120℃、5分間のポストアニール処理により、高抵抗層パターンとして形成された高抵抗導電性樹脂ぺース卜のTEM、及び低抵抗層パターンとして形成された低抵抗導電性樹脂ぺースト中のTEMをそれぞれ膨張させた。
【0076】
2段階のアニール処理により、PEN基板上に電極及び多孔質導電膜である高抵抗層が形成された第1の感圧抵抗体が得られた。また、別のPEN基板上に多孔質導電膜である低抵抗層が形成された第2の感圧抵抗体が得られた。
【0077】
得られた第1の感圧抵抗体の高抵抗層と第2の感圧抵抗体の低抵杭層とを対向させて貼り合わせて、圧力センサを作製した。なお、SBSは粘着性が弱い樹脂のため、粘着シー卜(3M製:テガダーム)でカバーした。これにより、センサアレイを作製した。図15に作製したセンサアレイの外観写真を示す。センサアレイの写真の内、左側が一次元センサアレイであり、右側が二次元センサアレイである。黒い部分が圧力によって抵抗が変化する抵抗体111であり、各抵抗体からAg配線121が形成されている。
【0078】
図16は、フレキシブル基板上に縦2mm、横2mm、及び厚み150~200μmの7つの圧力センサを直線状に配置した一次元センサアレイが表面に配置された半径が5mmの半円筒状のポリ乳酸製の把持部(グリッパー)の拡大写真である。
【0079】
図17に、図16に示したフレキシブル基板上の一次元センサアレイを把持部(グリッパー)の表面に備えるロボットの把持動作前及び把持動作中の外観写真を示す。図17に例示する把持部のうち、センサアレイを表面に有する右側の把持部に向かい合う左側の把持部には、試験のためにポリジメチルシロキサン(PDMS)樹脂を配置した。
【0080】
図18に、図17に示したロボットによるPDMS樹脂の柔らかさ測定結果を示す。把持部の押込速度は20mm/秒で一定とし、押込荷重は20Nで一定とした。一次元センサアレイに含まれる7つの圧力センサが検出した結果を、SS_0~SS_7で示されるグラフで表した。SS_3が半円筒状の把持部の先端に配置され、その両隣にSS_2及びSS_4、さらに両隣にSS_1及びSS_5、さらに両隣にSS_0及びSS_6が配置されている。
【0081】
半円筒状の把持部の先端に配置された圧力センサSS_3だけが圧力を検出しグラフが急峻に立ち上がった。SS_3以外の圧力センサは、横軸(押し込まれ量に対応)に対して圧力を検出せず、PDMS樹脂は硬いと算出された。PDMS樹脂は比較的硬く、把持部による押し込まれ量が小さかった(めり込み量が小さかった)ためである。SS_3以外の圧力センサの測定結果で圧力が最初から0になっていないものは、校正のずれによるものである。
【0082】
(実施例2)
図19に、ポリジメチルシロキサン(PDMS)樹脂に代えて脂肪族芳香族コポリエステル(エコフレックス(登録商標))樹脂を把持したときの柔らかさ測定結果を示す。圧力センサSS_3の検出圧力が最初に立ち上がり、すぐに圧力センサSS_2及び圧力センサSS_4の検出圧力が立ち上がり、それらの傾きは緩やかであり、エコフレックス(登録商標)は柔らかいと算出された。エコフレックス(登録商標)は比較的柔らかく、把持部による押し込まれ量が比較的大きかった(めり込み量が大きかった)ためである。検出圧力がマイナス側に変化しているのは、ずり方向等の垂直方向以外の力が加わったためである。グラフが折れ線(階段状)で表されているが、これは圧力信号の受信の解像度によるものである。
【符号の説明】
【0083】
10 一次元センサアレイ
11 圧力センサ
12 電極
13 基板
20 二次元センサアレイ
30 把持部
31 基材
40 物体

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21