(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108955
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】土木構造体
(51)【国際特許分類】
E03F 1/00 20060101AFI20240805BHJP
E02D 17/18 20060101ALI20240805BHJP
E02B 7/00 20060101ALI20240805BHJP
E03B 3/03 20060101ALI20240805BHJP
E03B 3/02 20060101ALI20240805BHJP
E03B 11/14 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
E03F1/00 Z
E02D17/18 Z
E02B7/00 Z
E03B3/03 B
E03B3/02 Z
E03B11/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013640
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】306024805
【氏名又は名称】株式会社 林物産発明研究所
(72)【発明者】
【氏名】林 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 和志郎
(72)【発明者】
【氏名】林 宏三郎
(72)【発明者】
【氏名】林 加奈子
【テーマコード(参考)】
2D044
2D063
【Fターム(参考)】
2D044CA08
2D063AA01
(57)【要約】
【課題】 強固でかつ人力でも容易に構築可能な土木構造体を提供する。
【解決手段】 複数の剛性柱と、基部、前記基部から突起する脚部、前記脚部の先端の閉塞部、及び、前記基部に形成された開口から前記閉塞部まで前記剛性柱を挿入可能な中空部を有する脚付台が格子状に配列された空隙構造を有する土木構造体であって、前記空隙構造では、上下方向に配列された前記脚付台が、前記基部同士及び前記脚部同士が対向するように交互に上下逆向きに積層されて形成され、前記閉塞部同士を対向させて上下に隣接する2つの前記脚付台の前記中空部のそれぞれに別個の剛性柱が挿入され、当該別個の剛性柱の間の前記閉塞部により当該別個の剛性柱同士の接触が防止されている、土木構造体とした。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の剛性柱と、
基部、前記基部から突起する脚部、前記脚部の先端の閉塞部、及び、前記基部に形成された開口から前記閉塞部まで前記剛性柱を挿入可能な中空部を有する脚付台が格子状に配列された空隙構造を有する土木構造体であって、
前記空隙構造では、上下方向に配列された前記脚付台が、前記基部同士及び前記脚部同士が対向するように交互に上下逆向きに積層されて形成され、
前記閉塞部同士を対向させて上下に隣接する2つの前記脚付台の前記中空部のそれぞれに別個の剛性柱が挿入され、当該別個の剛性柱の間の前記閉塞部により当該別個の剛性柱同士の接触が防止されている、土木構造体。
【請求項2】
前記開口部同士を対向させて上下に隣接する2つの前記脚付台よりなる脚付台対の前記中空部に挿入された前記剛性柱は、前記脚付台対を構成する上下2つの前記脚付台の前記中空部に跨って挿入された単一の第1剛性柱である、請求項1の土木構造体。
【請求項3】
前記空隙構造の上及び/又は下に配置された剛性板を更に有し、
前記剛性板は、柱収容凹部を有し、
前記空隙構造の最上段及び/又は最下段の前記脚付台は、前記開口部を前記剛性板に向けて配置されており、
前記最上段及び/又は前記最下段の前記脚付台の前記中空部に一端を挿入された前記剛性柱の他端が前記柱収容凹部に挿入されている、請求項1又は2の土木構造体。
【請求項4】
前記空隙構造の上及び/又は下に配置された剛性板と、
前記開口部から前記中空部の中間位置まで挿入可能な外形寸法のスペーサを更に有し、
前記空隙構造の最上段及び/又は最下段の前記脚付台は、前記開口部を前記剛性板に向けて配置されており、
前記空隙構造の最上段及び/又は最下段の前記脚付台の前記中空部に前記スペーサが挿入され、
前記スペーサが挿入された前記空隙構造の最上段及び/又は最下段の前記脚付台の前記中空部の他端が挿入された前記剛性柱の一端が前記柱収容凹部に挿入されている、請求項1又は2の土木構造体。
【請求項5】
前記剛性スペーサの高さ寸法が、前記脚の前記開口部から前記中空部の中間位置までの寸法よりも大きい、請求項5の土木構造体。
【請求項6】
前記脚部と前記剛性柱の間に固形充填剤が配置された、請求項1の土木構造体。
【請求項7】
前記固形充填剤は、透水性袋に入れたモルタルの硬化により形成され、
前記透水性袋が配置された前記中空空間に前記剛性柱を挿入すること、又は、前記透水性袋を先端に配置した前記剛性柱を前記中空空間に挿入することにより前記固形充填剤が前記脚部と前記剛性柱の間に充填される、請求項6の土木構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として土木工事等で使用される土木構造体(骨組構造体)に関し、特に、貯水槽として使用される土木構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
高空隙率のブロックを多数積み上げた土木構造体を窪地に設置し、土で埋戻すことで、雨水の貯留空間を形成した貯留施設が知られている(特許文献1~3)。土木構造体はダム構造や盛土等の形成にも利用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-212316号公報
【特許文献2】特開2010-048010号公報
【特許文献3】特開2018-231794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の土木構造体を構成するブロックはプラスチック製であるため、土圧への耐性に問題があり、クリープ変形する問題があった。出願人はこれまでコンクリート等の剛性材料を用いた土木構造体を検討してきたが、骨組構造の安定化方法や施工の安全性、容易性、費用等に問題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願には、
複数の剛性柱と、
基部、前記基部から突起する脚部、前記脚部の先端の閉塞部、及び、前記基部に形成された開口から前記閉塞部まで前記剛性柱を挿入可能な中空部を有する脚付台が格子状に配列された空隙構造を有する土木構造体であって、
前記空隙構造では、上下方向に配列された前記脚付台が、前記基部同士及び前記脚部同士が対向するように交互に上下逆向きに積層されて形成され、
前記閉塞部同士を対向させて上下に隣接する2つの前記脚付台の前記中空部のそれぞれに別個の剛性柱が挿入され、当該別個の剛性柱の間の前記閉塞部により当該別個の剛性柱同士の接触が防止されている、土木構造体が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の1実施形態の土木構造体1を用いた貯留槽3を示す。
【
図3】
図3は、例示的な脚付台20を示す。(a)は斜視図である。(b)は断面図である。
【
図4】
図4(a)は、1実施形態の土木構造体1Aを示す。
図4(b)は、土木構造体1Aの構成要素を示す。
【
図5】
図5(a)は、他の実施形態の土木構造体1Bを示す。
図5(b)は、土木構造体1Bの構成要素を示す。
【
図6】
図6(a)は、他の実施形態の土木構造体1Cを示す。
図6(b)は、土木構造体1Bの構成要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、本発明の1実施形態の土木構造体1を示す。土木構造体1を窪地2に設置して土で埋め戻すことで雨水等を貯留可能な貯留槽3を形成できる。土木構造体1を路面下や宅地下に設置して盛土として使用し、又は、ダム底に設置してダム構造を形成してもよい。土木構造体1の側部や上部に側壁1aや天井1bを設けてもよい。
【0008】
図2は、土木構造体1をより詳細に示す。図のように、土木構造体1は、立体格子状(例えば、立方格子状)に配列された複数の脚付台20からなる空隙構造(隙間の多い構造)を有する。格子の単位胞を構成する6面は必ずしも正方形でなくてもよい。長方形や平行四辺形も可能である。左右上下方向に配列された脚付台20のみ示すが、脚付台20は、
図2の紙面の前後方向にも配列され得る。配列数は、上下方向、左右方向及び前後方向とも任意である。
図2は、左右に4つの脚付台20が隙間なく配列された例を示すが、隙間の有無は任意である。上下方向に配列された脚付台20の積層体を脚付台柱10と呼ぶ。
【0009】
図3は、例示的な脚付台20を示す。(a)は斜視図である。(b)は断面図である。脚付台20は、基部21、基部21の表面から突起する脚22、脚部先端の閉塞部23、及び、基部21の裏面に形成された開口24から閉塞部23に至る中空部25を有する。中空部25は、後述の剛性柱30A,30Bが挿入可能なサイズ/形状を有する。剛性柱30A,30Bは、閉塞部を通過することができない。中空部25は、錐台(例えば、円錐台)形状が好ましい。脚22の数が4本の脚付台20を示すが、脚22の数は、1~3本でも、5本以上でもよい。脚付台20は、プラスチック等で形成できる。以下、
図2のように脚部22が上になっている脚付台20を上向きと言い、その逆(脚部22が下向きになっている脚付台20)を下向きと言う。
【0010】
再度
図2を参照すると、各脚付台柱10の脚付台20は、閉塞部23(脚22側/上側)同士又は開口部24(基部21側/下側)同士が対向するように交互に上下方向を逆転させて積層されている。
図2では上下に8つの脚付台20が積層されているが、積層数は任意である。以下では、開口部24同士を対向させた隣接する一対の脚付台20を脚付台対20Pと言い、最上段の脚付台20を最上脚付台20T、最下段の脚付台20を最下脚付台20Bと言う。脚付台対20Pの2つの中空部25、最上脚付台20Tの中空部25及び最下脚付台20Bの中空部25には、それぞれ、別個の剛性柱(第1剛性柱30A/第2剛性柱30B)が挿入されている。
【0011】
脚付台柱10の上及び/又は下にそれぞれ剛性板(天板40及び土台50)を配置するとよい。
【0012】
図4(a)は、1実施形態の土木構造体1Aを示す。
図4(b)は、土木構造体1Aの構成要素を示す。図のように、土木構造体1Aの脚付台柱10は、脚付台対20Pと、下向きの最上脚付台20Tと、上向きの最下脚付台20Bを有する。脚付台柱10内の脚付台対20Pの数が1つの場合を示すが、脚付台対20Pの数は複数でもよい(
図2参照)。脚付台柱10の上下には、天板40及び土台50が配置されている。天板40及び土台50は柱収容凹部41,51を有する。天板40、土台50の面積は、基部21より小さいサイズ(好ましい1/4サイズ)とするとよい。
【0013】
各脚付台対20Pでは、上下の中空部25に跨って第1剛性柱30Aが挿入されている。最上脚付台20Tの中空部25と天板40の柱収容凹部41に跨って第2剛性柱30Bが挿入され、最下脚付台20Bの中空部25と土台50の柱収容凹部51に跨って第2剛性柱30Bが挿入されている。この結果、閉塞部23同士を対向させて上下に隣接する脚付台20には、別個の剛性柱(第1剛性柱30A/第2剛性柱30B)が挿入され、当該別個の剛性柱30A,30Bの間には閉塞部23が介在する。
【0014】
第1剛性柱30A、第2剛性柱30B、天板40、土台50はコンクリート等で形成するとよい。
【0015】
土木構造体1の好ましい構築手順を説明する。
<土台>
手順1.地面に土台50を配置する。例えば、マトリクス状に並べる。
<最下段>
手順2.手順1の土台50の柱収容凹部51に第2剛性柱30Bを挿入する。
手順3.上向きに脚付台20を並べる。
<中間段(脚付台対)>
手順4.下向きに脚付台20を並べる。
手順5.手順4の脚付台20の中空部25に第1剛性柱30Aを挿入する。
手順6.上向きに脚付台20を並べる。
(手順4~6を反復すれば複数の脚付台対20Pを積層できる。
<最上段>
手順7.下向きに脚付台20を並べる。
手順8.手順7の脚付台20の中空部25に第2剛性柱30Bを挿入する。
<天板>
手順8.天板40を配置する。このとき、柱収容凹部41に手順8の第2剛性柱30Bを挿入する。
【0016】
上記土木構造体1,1Aでは、次の効果が達成できる。脚付台20をプラスチック製にすれば軽量のため、人力で容易に空隙構造を構築できる。第1剛性柱30A、第2剛性柱30B、天板40、土台50も小型であるため軽量であり、人力で容易に土木構造体1,1Aを構築できる。従来の土木構造体と異なり、空隙構造を第1剛性柱30A、第2剛性柱30Bで補強したため、上下方向のクリープ変形への耐性が高くなる。脚付台柱10の下端から上端まで貫く長い剛性柱を配置するのではなく、複数の短い剛性柱30A,30Bを積層したため、耐震強度が向上する。上下に隣接する剛性柱30A,30Bの間に閉塞部23が介在するため、当該隣接する剛性柱同士の接触/摩擦が防止され、剛性柱の摩耗、破損を防止できる。
【0017】
図5(a)は、他の実施形態の土木構造体1Bを示す。
図5(b)は、土木構造体1Bの構成要素を示す。土木構造体1Bは、柱収容凹部61を有するスペーサ60が最上脚付台20T及び最下脚付台20Bの中空部25に挿入されている点、及び、剛性板(天板40及び土台50)が柱収容凹部41,51を有さない点を除いて土木構造体1Aと同様の構成を有する。
【0018】
スペーサ60は、開口24から中空部25の中間位置まで挿入可能な外形寸法を有する。例えば、中空部25を円錐台形状とし、スペーサ60の外接円の径寸法を、開口24の径寸法と閉塞部23の径寸法の中間の値とすればよい。スペーサ60の高さ寸法は、開口24から上記中間位置までの距離と同一とするとよい。
【0019】
土木構造体1Bでは、スペーサ60により最上脚付台20T/最下脚付台20Bと第2剛性柱30Bの結合が向上する。さらに、スペーサ60と天板40又は土台50の接触面積が大きいため、耐荷重性を高くできる。よって、比較的耐荷重性の小さい土木構造体1の上面は、公園や遊歩道等としての利用が考えられるのに対し、土木構造体1Bの上面は、駐車場や道路等のより耐荷重性を必要とする用途での利用が考えられる。
【0020】
図6(a)は、他の実施形態の土木構造体1Cを示す。
図6(b)は、土木構造体1Cの構成要素を示す。土木構造体1Cは、スペーサ60Cの高さ寸法が土木構造体1Bのスペーサ60よりも大きい。土木構造体1Bでは、脚付台20の高さ(例えば、高さの倍数)でしか高さ調整ができないのに対し、土木構造体1Cでは、スペーサ60Cの高さ寸法によって土木構造体1Cの高さの微調整が可能である。
【0021】
土木構造体1B,1Cの構築手順は土木構造体1Aの構築手順から自明である。
【0022】
土木構造体1,1B,1Cでは、
図7(a)に示すように、脚部22と剛性柱30A,30Bの間に隙間がある場合などにガタツキや強度低下を生じる可能性がある。そのような場合、
図7(b)のように脚部22と剛性柱30A,30Bの間にモルタル72等から形成される固形充填剤(セメント等)を充填することで両者間の結合を強化することができる。
【0023】
上記固形充填剤の充填には、
図7(c)のようなモルタル袋70を使用するのがよい。モルタル袋70は、好ましくは、袋71と袋71に入れたモルタル72を有する。袋71は透水性袋がよい。含水させたモルタル72を袋71に入れてもよく、乾燥したモルタル72を袋71に入れておき、後から、袋71を通して外部からモルタル袋70に水を供給してもよい。袋71が透水性であれば、養生の際にモルタル72の水分を外部に透過させることができる。
【0024】
下向きの脚付台20の場合、
図8(a)のように脚22の中(例えば、中空部25の底/閉塞部23の近傍)にモルタル袋70を配置し、その後、
図8(b)のように剛性柱30A,30Bを挿入するとよい。上向きの脚付台20の場合、
図8(c)のように剛性柱30A,30Bの上部にモルタル袋70を配置し、その上から、
図8(d)のように脚22を被せるとよい。これにより、剛性柱30A,30Bと脚部22(中空部25の底)の間隙を固形充填できる。養生等でモルタル72を固化させれば固形充填剤を形成できる。
【0025】
上記実施形態に記載した土木構造体1,1A~1Cやその要素の寸法、形状、配置、個数、材料等は例示であり、他の態様も可能である。
【符号の説明】
【0026】
1,1A~1C 土木構造体
1a 側壁
1b 天井
2 窪地
3 貯留槽
10 脚付台柱
20 脚付台
20P 脚付台対
20T 最上脚付台
20B 最下脚付台
21 基部
22 脚
23 閉塞部
24 開口
25 中空部
30A 第1剛性柱
30B 第2剛性柱
40 天板
50 土台
60,60C スペーサ
41,51,61 柱収容凹部