(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010896
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】微振動ヘッド、および、微振動ヘッドを備えるマッサージ機器
(51)【国際特許分類】
A61H 23/02 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
A61H23/02 354
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112472
(22)【出願日】2022-07-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】520112483
【氏名又は名称】株式会社創通メディカル
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】薛 明鶴
(72)【発明者】
【氏名】大平 高正
(72)【発明者】
【氏名】郡司 聖
【テーマコード(参考)】
4C074
【Fターム(参考)】
4C074AA04
4C074AA05
4C074BB05
4C074CC12
4C074CC17
4C074DD02
4C074EE02
4C074EE04
4C074FF01
4C074FF05
4C074GG01
4C074HH08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】体外衝撃波の縦波成分を高めるとともに、患者の不快となる横波成分を減少させ、適切な周波数の振動が患部に伝播され得る、微振動ヘッドを備えるマッサージ機器を提供する。
【解決手段】マッサージ機器10は、微振動ヘッドユニット20と、微振動ヘッドユニット20内に移動可能に配されるピストンヘッドユニット40と、ピストンヘッドユニット40および微振動ヘッドユニット20のスリーブが連結されるマッサージ機器本体部とを含んで構成され、微振動ヘッドユニット20の六角袋ナット34の先端部が患部SKの表面に当接された状態で、作動状態とされるピストンヘッドユニット40の六角袋ナットが所定のストロークで微振動ヘッドユニット20の六角ボルト24の頭部の端面に繰り返し連続して衝突されることにより、衝撃波の縦波成分LWが微振動ヘッドユニット20の六角袋ナット34の先端部を介して患部に生じる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マッサージ機器本体部のヘッド接続部に着脱可能に接続されるスリーブと、該スリーブの末端部に固定されたリッド部に該スリーブの中心軸線方向に移動可能に配される振動伝達部材および刺激用振動子と、該刺激用振動子および振動伝達部材を前記リッド部に対し近接または離隔可能に支持する刺激用振動子支持部材と、前記マッサージ機器本体部のヘッド接続部の内側に配され往復動せしめられる接続端部に着脱可能に配される連結軸部を含むピストンヘッドユニットと、を備え、
前記刺激用振動子および振動伝達部材が前記ピストンヘッドユニットの連結軸部の当接端部に向けて移動せしめられる場合、前記マッサージ機器本体部の駆動制御部が作動状態とされ、前記ピストンヘッドユニットの連結軸部が往復動せしめられるとき、前記ピストンヘッドユニットの連結軸部の当接端部が前記振動伝達部材の基端部に連続的に当接されることにより、微振動が前記振動伝達部材を介して前記刺激用振動子に伝播することを特徴とする微振動ヘッド。
【請求項2】
前記刺激用振動子支持部材は、少なくとも前記振動伝達部材を前記リッド部に対し近接または離隔可能にマグネットの磁力により吸引保持することを特徴とする請求項1記載の微振動ヘッド。
【請求項3】
前記刺激用振動子および前記ピストンヘッドユニットの連結軸部の当接端部が、それぞれ、金属製六角袋ナットにより形成されることを特徴とする請求項1記載の微振動ヘッド。
【請求項4】
前記振動伝達部材の基端部が、六角ボルトの頭部により形成されることを特徴とする請求項1記載の微振動ヘッド。
【請求項5】
ヘッド接続部と、該ヘッド接続部の内側に配され往復動せしめられる接続端部と、該接続端部を駆動制御する駆動制御部とを有するマッサージ機器本体部と、
前記マッサージ機器本体部の前記ヘッド接続部に着脱可能に接続されるスリーブと、該スリーブの末端部に固定されたリッド部に該スリーブの中心軸線方向に移動可能に配される振動伝達部材および刺激用振動子と、該刺激用振動子および振動伝達部材を前記リッド部に対し近接または離隔可能に支持する刺激用振動子支持部材と、前記マッサージ機器本体部の前記ヘッド接続部の内側に配され往復動せしめられる前記接続端部に着脱可能に配される連結軸部を含むピストンヘッドユニットと、を有する微振動ヘッドと、を備え、
前記刺激用振動子および振動伝達部材が前記ピストンヘッドユニットの連結軸部の当接端部に向けて移動せしめられる場合、前記マッサージ機器本体部の駆動制御部が作動状態とされ、前記ピストンヘッドユニットの連結軸部が往復動せしめられるとき、前記ピストンヘッドユニットの連結軸部の当接端部が前記振動伝達部材の基端部に連続的に当接されることにより、微振動が前記振動伝達部材を介して前記刺激用振動子に伝播することを特徴とする微振動ヘッドを備えるマッサージ機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微振動ヘッド、および、微振動ヘッドを備えるマッサージ機器に関する。
【背景技術】
【0002】
人体の筋肉障害として筋膜のトリガーポイント(例えば、特許文献3において定義されるような、筋肉の膜にこぶのようなものが生じて筋肉の血液循環を阻害して筋肉を収縮させることによって筋肉の弛緩を阻害する現象をいう)を治療する方法としては、例えば、特許文献1に示されるように、流体噴射装置を備えた刺激装置により、体外衝撃波を患部における筋膜のトリガーポイントに作用させ治療することが提案されている。このような刺激装置は、後述する流体噴射装置からの流体(気体または液体)をそれぞれ、筋膜のトリガーポイントに向けて噴射する複数の接触部材からなる接触アセンブリと、接触アセンブリを支持するベースとを含んで構成されている。ベースのベース本体に接続される流体噴射装置は、薬用の流体をベース本体内の伝送チャネルを通じて各接触部材の伝送チャネルおよび開閉制御される噴出チャネルに供給するものとされる。これにより、各接触部材の噴射チャネルによって、流体が加圧された後、斯かる加圧された流体が患部における筋膜のトリガーポイントを刺激することとなる。
【0003】
また、例えば、特許文献2に示されるように、流体に代えて、球形のマッサージヘッドによる人体の軟部組織への衝撃(振動)により関節付近の軟部組織をマッサージする筋膜ガンが、提案されている。筋膜ガンのマッサージヘッドは、駆動モータにおける2つの出力軸に、それぞれ、連結された偏心輪、接続軸、リンク、および、ピストンを介して所定のストロークにより往復動せしめられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2022-502123号公報
【特許文献2】実用新案登録第3232352号
【特許文献3】特表2009-514591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に示される筋膜ガンにより、例えば、首回り(頸椎回り)、各関節回りなどの患部における筋膜の癒着の治療を上述のような体外衝撃波を作用させて行う場合、マッサージヘッドが当接する患部の皮膚が体外衝撃波の比較的大きな横波成分に起因して揺れるので患者が不快と感じる場合がある。このような場合、体外衝撃波の横波成分を減らすように体外衝撃波の周波数をさらに高めることが考えられる。
【0006】
しかしながら、体外衝撃波の周波数をさらに高めた場合、体外衝撃波の縦波成分がさらに大きくなるので特に、首回り(頸椎回り)、各関節回りなどの患部においてマッサージヘッドの位置を適切な位置に当接するように正確に制御することが困難となり、しかも、衝撃音が大きくなる虞がある。
【0007】
以上の問題点を考慮し、本発明は、微振動ヘッド、および、微振動ヘッドを備えるマッサージ機器であって、体外衝撃波を患部に作用させて治療を行う場合、体外衝撃波の縦波成分を高めるとともに、しかも、患者の不快となる要因となるような体外衝撃波の横波成分を減少させ、適切な周波数の振動が患部に伝播され得る微振動ヘッド、および、微振動ヘッドを備えるマッサージ機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明に係る微振動ヘッドは、マッサージ機器本体部のヘッド接続部に着脱可能に接続されるスリーブと、スリーブの末端部に固定されたリッド部にスリーブの中心軸線方向に移動可能に配される振動伝達部材および刺激用振動子と、刺激用振動子および振動伝達部材をリッド部に対し近接または離隔可能に支持する刺激用振動子支持部材と、マッサージ機器本体部のヘッド接続部の内側に配され往復動せしめられる接続端部に着脱可能に配される連結軸部を含むピストンヘッドユニットと、を備え、刺激用振動子および振動伝達部材がピストンヘッドユニットの連結軸部の当接端部に向けて移動せしめられる場合、マッサージ機器本体部の駆動制御部が作動状態とされ、ピストンヘッドユニットの連結軸部が往復動せしめられるとき、ピストンヘッドユニットの連結軸部の当接端部が振動伝達部材の基端部に連続的に当接されることにより、微振動が振動伝達部材を介して刺激用振動子に伝播することを特徴とする。
【0009】
また、刺激用振動子支持部材は、少なくとも振動伝達部材をリッド部に対し近接または離隔可能にマグネットの磁力により吸引保持するものであってもよい。
【0010】
刺激用振動子およびピストンヘッドユニットの連結軸部の当接端部が、それぞれ、金属製六角袋ナットにより形成されてもよい。振動伝達部材の基端部が、六角ボルトの頭部により形成されてもよい。
【0011】
本発明に係る微振動ヘッドを備えるマッサージ機器は、ヘッド接続部と、ヘッド接続部の内側に配され往復動せしめられる接続端部と、接続端部を駆動制御する駆動制御部とを有するマッサージ機器本体部と、マッサージ機器本体部のヘッド接続部に着脱可能に接続されるスリーブと、スリーブの末端部に固定されたリッド部にスリーブの中心軸線方向に移動可能に配される振動伝達部材および刺激用振動子と、刺激用振動子および振動伝達部材をリッド部に対し近接または離隔可能に支持する刺激用振動子支持部材と、マッサージ機器本体部のヘッド接続部の内側に配され往復動せしめられる接続端部に着脱可能に配される連結軸部を含むピストンヘッドユニットと、を有する微振動ヘッドと、を備え、刺激用振動子および振動伝達部材がピストンヘッドユニットの連結軸部の当接端部に向けて移動せしめられる場合、マッサージ機器本体部の駆動制御部が作動状態とされ、ピストンヘッドユニットの連結軸部が往復動せしめられるとき、ピストンヘッドユニットの連結軸部の当接端部が振動伝達部材の基端部に連続的に当接されることにより、微振動が振動伝達部材を介して前記刺激用振動子に伝播することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る微振動ヘッド、および、微振動ヘッドを備えるマッサージ機器によれば、刺激用振動子および振動伝達部材がピストンヘッドユニットの連結軸部の当接端部に向けて移動せしめられる場合、マッサージ機器本体部の駆動制御部が作動状態とされ、ピストンヘッドユニットの連結軸部が往復動せしめられるとき、ピストンヘッドユニットの連結軸部の当接端部が振動伝達部材の基端部に連続的に当接されることにより、微振動が振動伝達部材を介して刺激用振動子に伝播するので体外衝撃波を患部に作用させて治療を行う場合、体外衝撃波の縦波成分を高めるとともに、しかも、患者の不快となる要因となるような体外衝撃波の横波成分を減少させ、適切な周波数の振動が患部に伝播され得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る微振動ヘッドの第1実施例、および、微振動ヘッドを備えるマッサージ機器の一例の構成を分解して示す斜視図である。
【
図2】
図1に示されるマッサージ機器におけるマッサージ機器本体部の外観を、マッサージヘッドとともに示す斜視図である。
【
図3】(A)および(B)は、それぞれ、微振動ヘッドユニットの外観、および、微振動ヘッドユニットを構成する構成部品を分解して示す斜視図である。
【
図4】(A)および(B)は、それぞれ、ピストンヘッドユニットの外観、および、ピストンヘッドユニットを構成する構成部品を分解して示す斜視図である。
【
図5】(A)、(B)、(C)、および(D)は、それぞれ、微振動ヘッドユニットおよびピストンヘッドユニットの動作説明に供される図である。
【
図6】(A)は、肩凝りを病む患者の患部の肩甲挙筋を示すエコー画像であり、(B)は、上述の患部の患部を
図1に示されるマッサージ機器の一例を使用し治療後、治癒した患部の肩甲挙筋を示すエコー画像である。
【
図7】(A)は、本発明に係る微振動ヘッドの第2実施例の外観を示す側面図であり、(B)は、(A)に示される微振動ヘッドの第2実施例における微振動ヘッドユニットの構成を分解して示す斜視図である。
【
図8】(A)は、
図7(A)におけるVIIIA-VIIIA線に沿って示される断面図であり、(B)は、(A)に示される微振動ヘッドユニットの構成を分解して示す斜視図であり、(C)は、(B)に示される微振動ヘッドユニットの一部を構成する刺激用振動子、リッド部、マグネット支持部材、および、六角ボルトを拡大し分解して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明に係る微振動ヘッドの第1実施例を備えるマッサージ機器の一例の構成を概略的に示す。
【0015】
マッサージ機器10は、微振動ヘッドユニット20と、微振動ヘッドユニット20のスリーブ22内に移動可能に配されるピストンヘッドユニット40と、ピストンヘッドユニット40および微振動ヘッドユニット20のスリーブ22が連結されるマッサージ機器本体部12と、を含んで構成される。
【0016】
図2に示されるように、マッサージ機器本体部12は、ハンドル14のハウジング内部に、図示が省略されるが、例えば、モータ支持部に支持された駆動用モータと、駆動用モータの出力軸に連結される偏心軸と、偏心軸に連結されるリンク部材と、リンク部材の一端に結合され往復動せしめられるピストンロッドと、駆動用モータを駆動制御する制御基板、および、駆動用モータおよび制御基板に電力を供給する二次電池(リチウムイオン電池DC5V)と、上述の制御基板のオンオフ制御を行う操作部(不図示)とを主な要素として含んで構成されている。上述の偏心軸、リンク部材、および、ピストンロッドは、それぞれ、例えば、特許文献3に示されるような、筋膜ガンの駆動部を構成する偏心接続軸、ピストン、および、リンクと同様な構成を有している。ピストンロッドの先端に設けられる円筒状の接続端部18は、例えば、球形のマッサージヘッド8の基端部に形成される連結軸8S、あるいは、球形のマッサージヘッド8に代えて、後述するピストンヘッドユニット40の連結軸部44(
図4(B)参照)が接続端部18の内側に挿入され着脱可能に連結され得る。ピストンロッドは、例えば、所定のストローク、例えば、8mm±1mmで往復動せしめられる。マッサージ機器本体部12の重さは、操作性を考慮し、例えば、680g程度の比較的軽量に設定されている。
【0017】
微振動ヘッドの一例としての微振動ヘッドユニット20は、
図3(A)および(B)に示されるように、マッサージ機器本体部12の円筒状のヘッド接続部16の外周部に接続されるスリーブ22と、スリーブ22の末端部に、4本のビス36により固定され略円錐台形の突部を有するリッド部30と、後述するピストンヘッドユニット40からの衝撃による振動を伝達する振動伝達部材としての金属製の六角ボルト24と、六角ボルト24における6角形の頭部24Hの側面を吸引する2個のマグネット26を支持するマグネット支持部材28と、六角ボルト24の軸部の雄ねじ部がねじ込まれる2個のロックナット32と、六角ボルト24の軸部の先端がねじ込まれる金属製の六角袋ナット34と、後述するように、スリーブ22内に移動可能に配されるピストンヘッドユニット40(
図1、
図4(A)、および、(B)参照)と、を主な要素として含んで構成されている。
【0018】
樹脂製のスリーブ22の基端部22Eの内周部がマッサージ機器本体部12の円筒状のヘッド接続部16の外周部に着脱可能に嵌め込まれることにより、微振動ヘッドユニット20のスリーブ22は、ヘッド接続部16に着脱可能に連結される。スリーブ22の末端部には、六角ボルト24およびマグネット支持部材28全体が通過する貫通孔22aが、中央部に形成されている。スリーブ22の貫通孔22aの周縁の端面には、4本のビス36がそれぞれ、リッド部30の各貫通孔30bを介してねじ込まれる4個の雌ねじ孔22FSが円周方向に均等間隔で形成されている。
【0019】
リッド部30の突部は、マグネット支持部材28の円筒状部28Cが貫通する開口部30aを有している。リッド部30の突部の裾部に形成されるフランジ部30Fには、上述の4本のビス36がそれぞれ貫通する貫通孔30bが、スリーブ22における4個の雌ねじ孔22FSに対応して形成されている。これにより、4本のビス36がリッド部30の各貫通孔30bを介してスリーブ22における4個の雌ねじ孔22FSに捻じ込まれることにより、リッド部30のフランジ部30Fがスリーブ22の末端部の端面に固定される。
【0020】
金属製の六角ボルト24のねじ軸部24Sは、マグネット支持部材28の円筒状部28C内の孔28aを通じて2個のロックナット32、および、刺激用振動子としての六角袋ナット(例えば、ねじの呼び径M12:二面幅19mm)34に捻じ込まれ嵌め合わされる。2個のマグネット26は、六角ボルト24の頭部24Hを相互間に介在させるように、六角ボルト24における頭部24Hの互いに向き合う側面に対向してマグネット支持部材28のフランジ部28Fの下端面に配置されている。なお、マグネット支持部材28は、リッド部30内に設けられるマグネット(不図示)によってそのマグネットおよび2個のマグネット26相互間の磁力により吸引され保持されている。これにより、六角ボルト24の頭部24Hが2個のマグネット26相互間に近接されるとき、頭部24Hが2個のマグネット26の磁力により吸引されマグネット支持部材28のフランジ部28Fの下端面に保持される。
【0021】
六角ボルト24における頭部24Hがフランジ部28Fの下端面に当接され2個のマグネット26の磁力により吸引保持される場合、マグネット支持部材28の円筒状部28Cの先端と円筒状部28Cの先端と向き合う一方のロックナット32との間には、所定の隙間が形成されている。斯かる所定の隙間は、例えば、六角ボルト24における頭部24Hがフランジ部28Fの下端面に当接され2個のマグネット26の磁力により吸引保持される状態で、六角ボルト24における頭部24Hに対し最大限近接した初期位置にあるピストンヘッドユニット40の六角袋ナット50の先端の位置から約4~5mm程度、離隔した隙間が生じるように設定されている。例えば、六角袋ナット34が患部の皮膚に対し当接されさらに約4~5mm程度押し込まれることにより、ピストンヘッドユニット40の六角袋ナット50の先端が六角ボルト24における頭部24Hに当接される。
【0022】
一方、微振動ヘッドユニット20の刺激用振動子としての六角袋ナット34が患部の皮膚に対し当接されない場合(六角袋ナット34がロックナット32を伴いリッド部30の開口部30aに押し込まれないとき)、ピストンヘッドユニット40が作動しても、ピストンヘッドユニット40の六角袋ナット50の先端が六角ボルト24における頭部24Hに当接されない。
【0023】
一方、微振動ヘッドユニット20の六角袋ナット34が患部の皮膚に対し当接されスリーブ22の基端部22Eに向けてマグネット26の磁力による吸引力に抗して六角ボルト24を伴って押圧される(ロックナット32がリッド部30の開口部30aに押し込まれるとき)場合、六角ボルト24の頭部24Hが、上述の一方のロックナット32がマグネット支持部材28の円筒状部28Cの先端に当接するまでマグネット支持部材28のフランジ部28Fの下端面から所定距離、離隔され引き離される。これにより、六角ボルト24の頭部24Hは、後述する初期位置にあるピストンヘッドユニット40の六角袋ナット50の先端に当接される。これにより、ピストンヘッドユニット40が作動される場合、六角袋ナット50の先端が六角ボルト24の頭部24Hに衝突することに起因した振動が六角ボルト24の頭部24H、および、微振動ヘッドユニット20の刺激用振動子としての六角袋ナット34を介して患部の皮膚に伝播される。
【0024】
ピストンヘッドユニット40は、
図4(A)および(B)に示されるように、上述のマッサージ機器本体部12の接続端部18の円筒状部に挿入され着脱可能に嵌め合わされる樹脂製の連結軸部44と、一端が連結軸部44の雌ねじ穴44aに捻じ込まれるとともに、他端がワッシャ48を介して金属製の六角袋ナット(例えば、ねじの呼び径M6:二面幅10mm)50に捻じ込まれるねじ軸部46と、例えば、連結軸部44の円柱部と頭部44Hとの間の段差部分に設けられるニトリルゴム製のOリング42と、互いに隣接して所定の間隔をもって連結軸部44の円柱部に形成されるOリング用溝44ga,44gbに取り付けられる2個のニトリルゴム製のOリング42と、を含んで構成されている。
【0025】
斯かる構成において、上述の微振動ヘッドユニット20およびピストンヘッドユニット40が装着されたマッサージ機器10によって患者の患部に体外衝撃波による治療を施すにあたり、先ず、ピストンヘッドユニット40が作動状態とされた後、
図5(A)に示されるように、微振動ヘッドユニット20の刺激用振動子としての六角袋ナット34の先端部が患部SKの表面に向き合うように配置された後、六角袋ナット34の先端部が患部SKの表面に所定量押し付けられることにより、
図5(B)に示されるように、六角ボルト24の頭部24Hが、ピストンヘッドユニット40に向けて矢印が示す方向に後退され、マグネット支持部材28のフランジ部28Fの下端面から2個のマグネット26の磁力に抗して引き離された結果として、
図5(C)に示されるように、ピストンヘッドユニット40の六角袋ナット50に当接される。その際、六角袋ナット34の先端部が患部SKの表面に当接された状態で、作動状態とされるピストンヘッドユニット40の六角袋ナット50が所定のストロークで六角ボルト24の頭部24Hの端面に繰り返し連続して衝突されることにより、主に、衝撃波の縦波成分LWが微振動ヘッドユニット20の刺激用振動子としての六角袋ナット34の先端部を介して患部SKに生じる。これは、ピストンヘッドユニット40の六角袋ナット50が六角ボルト24の頭部24Hに衝突した瞬間時、六角袋ナット34の先端部に大きな加速度が生じることにより、患部SKが移動せずに瞬間的に圧縮されるからである。
【0026】
次に、
図5(D)に示されるように、マッサージ機器本体部12のハンドル14が操作され、六角袋ナット34の先端部が患部SKの深部に向けて矢印の示す方向に所定量、さらに押し込まれる場合、衝撃波の横波成分TWが、減退しつつある縦波成分LWに加わった状態で微振動ヘッドユニット20の六角袋ナット34の先端部を介して患部SKに生じる。これは、ピストンヘッドユニット40の六角袋ナット50が六角ボルト24の頭部24Hに衝突した後、六角袋ナット34の先端部の加速度が徐々に減少するので上述の圧縮された患部は、移動し始めるからである。
【0027】
これにより、患部SKの比較的浅い領域で、作動状態とされるピストンヘッドユニット40の六角袋ナット50が所定のストロークで六角ボルト24の頭部24Hの端面に繰り返し連続して衝突されることにより、衝撃波の縦波成分LWが、微振動ヘッドユニット20の刺激用振動子としての六角袋ナット34の先端部を介して例えば、関節回りまたは首回りの軟部組織における患部SKに生じるので衝撃波の横波成分に起因する患者にとって不快と感じる事態が回避される。
【0028】
そして、六角袋ナット34の先端部が患部SKの表面から離隔されるとき、マグネット26の磁力により、六角袋ナット34および六角ボルト24の頭部24Hが初期位置に戻される。これにより、ピストンヘッドユニットが作動されていても、六角袋ナット50の先端部が六角ボルト24の頭部24Hに衝突しないこととなる。
【0029】
図6(A)に示される超音波診断装置により得られたエコー画像は、肩凝りを病む患者の患部の肩甲挙筋を示す。この肩凝りは、肩甲挙筋(矢印で示される範囲の部位)が、本来の正常な位置よりも肩の深部にある肋骨に向けて引き込まれていることに起因したものであると考えられている。そこで、上述の微振動ヘッドユニット20およびピストンヘッドユニット40が装着されたマッサージ機器10により、患者の患部の肩甲挙筋に対し約20秒間連続して治療を施した。その結果、
図6(B)に示される超音波診断装置により得られたエコー画像から明らかなように、肋骨に向けて引き込まれていた肩甲挙筋(矢印で示される範囲の部位)が、肩の深部にある肋骨から離隔する方向に引き離され、肩における本来の正常な位置に戻されている。なお、本願の発明者によって、上述の衝撃波の縦波成分LWが患部に有効に作用した結果として患者の肩凝りが治癒されたことが検証されている。
【0030】
なお、上述の例においては、振動伝達部材としての六角ボルト24と、刺激用振動子としての六角袋ナット34とが別体に形成されているが、斯かる例に限られることなく、例えば、六角ボルト24、ロックナット32、および、刺激用振動子としての六角袋ナット34が一体に形成されてもよい。
【0031】
図7(A)および(B)は、それぞれ、微振動ヘッドの第2実施例としての微振動ヘッドユニット60を示す。なお、
図7(A)および(B)において、
図1に示される構成要素と同一の構成要素について同一の符号を付して示し、その重複説明を省略する。
【0032】
微振動ヘッドユニット60は、上述のマッサージ機器10のマッサージ機器本体部12の円筒状のヘッド接続部16の外周部に接続されるスリーブ62と、スリーブ62の末端部に、4本のビスBS3により固定され略円錐台形の突部を有するリッド部64と、後述するピストンヘッドユニットからの衝撃による振動を、刺激用振動子としてのチップ部材72に直接的に伝達する振動伝達部材としての金属製の六角ボルト24と、ピストンヘッドユニットの金属製の連結軸部80の端部に近い複数個のマグネット68Bを協働して支持するマグネット支持部材66Bおよび支持プレート70と、複数個のマグネット68Bおよびマグネット支持部材66Bに対向し上述のチップ部材72に近い位置に配されるマグネット68A、および、マグネット68Aを支持するマグネット支持部材66A(
図8(B)参照)と、後述するように、スリーブ62内に移動可能に配されるピストンヘッドユニットと、を主な要素として含んで構成されている。
【0033】
図8(A)に示されるように、樹脂製のスリーブ62の基端部62Eの内周部がマッサージ機器本体部12の円筒状の金属製のヘッド接続部16の外周部に着脱可能に嵌め込まれることにより、微振動ヘッドユニット60のスリーブ62は、ヘッド接続部16に着脱可能に連結される。スリーブ62の基端部62Eの内周部には、円周方向に沿って等間隔でスリーブ62の中心軸線に沿った比較的浅い溝62eg(
図7(B)参照)が複数個、形成されている。これにより、スリーブ62の基端部62Eの内周部とヘッド接続部16の外周部との間の摩擦力が低減され、ヘッド接続部16の外周部が、スリーブ62の基端部62Eの内周部に容易に着脱可能に嵌め込まれることとなる。スリーブ62の末端部には、六角ボルト24およびマグネット支持部材66Aおよび66B全体が通過する貫通孔62aが、中央部に形成されている。スリーブ62の基端部62Eからスリーブ62の末端部に延びる部分において、略円錐台状に形成されるスリーブ62の内側には、スリーブ62の貫通孔62aに連通する空洞が形成されている。
【0034】
スリーブ62の貫通孔62aの周縁の端面62bには、リッド部64の4個の雌ねじ孔(不図示)にねじ込まれる4本のビスBS3がそれぞれ、貫通する貫通孔が円周方向に均等間隔で形成されている。これにより、4本のビスBS3によってリッド部64の下端面がスリーブ62の端面62bに固定される。
【0035】
図8(A)に示されるように、リッド部64の一端部は、中心軸線に沿って貫通する開口部64aを有している。開口部64aの内周縁には、マグネット68Aおよびマグネット支持部材66Aが固定されるとともに、チップ部材72の下端部が移動可能に配されている。
【0036】
図8(B)および(C)に示されるように、刺激用振動子としての金属製のチップ部材72は、略球面状の先端部の回りに連なる円錐面を有する被当接面部と、被当接面部の下端部にマグネット支持部材66Aの貫通孔66aに向けて突出する円筒部72bとを有している。マグネット支持部材66Aの貫通孔66aに挿入されたチップ部材72の円筒部72bの外周部には、2個のマグネット68Aを保持する磁性体で作られたマグネット支持部材66Aが配される。マグネット支持部材66Aは、リッド部64の開口部64aの内周縁に固定されている。チップ部材72の円筒部72bの内周部およびチップ部材72の被当接面部の内部に形成される雌ねじ部72FSには、六角ボルト24の雄ねじ部24Sが挿入され、ねじ込まれる。その際、六角ボルト24の雄ねじ部24Sは、2個のマグネット68Bを保持する磁性体で作られたマグネット支持部材66Bの貫通孔66b、および、支持プレート70の貫通孔70aを介して上述の雌ねじ部72FSにねじ込まれる。
【0037】
これにより、チップ部材72の円筒部72bがマグネット支持部材66Bの貫通孔66bの周縁部に係合されるとともに、六角ボルト24の雄ねじ部24Sが、マグネット支持部材66Bの貫通孔66b、および、支持プレート70の貫通孔70aを介して上述の雌ねじ部72FSにねじ込まれることによって、チップ部材72は、マグネット支持部材66Bおよび支持プレート70と一体化される。その際、チップ部材72の被当接面部の下端面とマグネット支持部材66Aの上端面との間の隙間Daの寸法は、後述するピストンヘッドユニットの連結軸部80の端面と六角ボルト24の頭部24Hとの間の隙間Dbの寸法に比して大に設定されている。
【0038】
例えば、チップ部材72の被当接面部が後述するピストンヘッドユニットの連結軸部80に向けて押圧され所定の値以上に移動されることにより、マグネット支持部材66Bおよび支持プレート70が2個のマグネット68Aおよび2個のマグネット68B相互間の吸引する磁力に抗してマグネット支持部材66Bおよび支持プレート70がマグネット支持部材66Aに対し引き離される場合、六角ボルト24の頭部24Hが連結軸部80の端面に当接せしめられることとなる。この場合、ピストンヘッドユニットが作動される場合、連結軸部80の端面が六角ボルト24の頭部24Hに衝突することに起因した振動が六角ボルト24の頭部24H、および、微振動ヘッドユニット60の刺激用振動子としてのチップ部材72を介して患部の皮膚に伝播される。一方、マグネット支持部材66Bおよび支持プレート70が2個のマグネット68Aおよび2個のマグネット68B相互間の吸引する磁力により、マグネット支持部材66Bおよび支持プレート70がマグネット支持部材66Aに保持されることにより、ピストンヘッドユニットの連結軸部80の端面と六角ボルト24の頭部24Hとの間の隙間Dbが形成される場合、上述のように、ピストンヘッドユニットが作動されても、連結軸部80の端面が六角ボルト24の頭部24Hに衝突しない。
【0039】
ピストンヘッドユニットは、
図8(A)に示されるように、上述のマッサージ機器本体部12の接続端部18の円筒状部内に挿入され着脱可能に嵌め合わされる金属製の連結軸部80と、互いに隣接して所定の間隔をもって連結軸部44の円筒部の外周部に形成されるOリング用溝80G1,80G2にそれぞれ、取り付けられる2個のニトリルゴム製のOリング82と、を含んで構成されている。
【0040】
連結軸部80は、上述したように、一方の端部に形成され、選択的に六角ボルト24の頭部24Hに当接する頭部80Hと、マッサージ機器本体部12の接続端部18の円筒状部の端部に当接されることにより、連結軸部80の接続端部18の円筒状部の端部に対する相対位置を位置決めするフランジ部80Fとを外周部に有している。連結軸部80の他方の端部には、内側に中心軸線に沿って延びる空洞80aに連通する開口部が形成されている。接続端部18の円筒状部の内周部と連結軸部80の空洞80aとを連通させる連通路(空気逃げ孔)80bが、フランジ部80Fよりも下方部分、即ち、他方の端部に近い部分に中心軸線に対し直交するように形成されている。連結軸部80の連通路80bよりもさらに下方部分の外周部には、所定の間隔をもってOリング用溝80G1、および、80G2が形成されている。
【0041】
斯かる構成において、上述の微振動ヘッドユニット60およびピストンヘッドユニットが装着されたマッサージ機器10によって患者の患部に体外衝撃波による治療を施すにあたり、先ず、ピストンヘッドユニットが作動状態とされた後、微振動ヘッドユニット60の刺激用振動子としてのチップ部材72の先端部が患部SKの表面に向き合うように配置された後、チップ部材72の先端部が患部SKの表面に所定量押し付けられることにより、六角ボルト24の頭部24Hが、ピストンヘッドユニットに向けて
図8(A)における矢印が示す方向に後退され、マグネット68Aおよび68B相互間の吸引磁力に抗してマグネット支持部材66Bおよび支持プレート70がマグネット支持部材66Aから引き離された結果として、六角ボルト24の頭部24Hが、ピストンヘッドユニットの連結軸部80の頭部80Hに当接される。その際、チップ部材72の先端部が患部SKの表面に当接された状態で、作動状態とされるピストンヘッドユニットの連結軸部80の頭部80Hが所定のストロークで六角ボルト24の頭部24Hの端面に繰り返し連続して衝突されることにより、衝撃波の縦波成分LWが微振動ヘッドユニット60の刺激用振動子としてのチップ部材72の先端部を介して患部SKに生じる。次に、マッサージ機器本体部12のハンドル14が操作され、チップ部材72の先端部が患部SKの深部に向けて所定量、さらに押し込まれる場合、衝撃波の横波成分TWが微振動ヘッドユニット60のチップ部材72の先端部を介して患部SKに生じる。
【0042】
これにより、患部SKの比較的浅い領域で、作動状態とされるピストンヘッドユニットの連結軸部80の頭部80Hが所定のストロークで六角ボルト24の頭部24Hの端面に繰り返し連続して衝突されることにより、衝撃波の縦波成分LWが、微振動ヘッドユニット60の刺激用振動子としてのチップ部材72の先端部を介して例えば、関節回りまたは首回りの軟部組織における患部SKに生じるので衝撃波の横波成分に起因する患者にとって不快と感じる事態が回避される。そして、チップ部材72の先端部が患部SKの表面から離隔されるとき、マグネット68Aおよび68B相互間の吸引磁力により、チップ部材72および六角ボルト24の頭部24Hが初期位置に戻される。これにより、ピストンヘッドユニットが作動されていても、連結軸部80の端面が六角ボルト24の頭部24Hに衝突しないこととなる。
【符号の説明】
【0043】
8 マッサージヘッド
10 マッサージ機器
12 マッサージ機器本体部
16 ヘッド接続部
18 接続端部
20、60 微振動ヘッドユニット
22、62 スリーブ
24 六角ボルト
24H 頭部
26、68A、68B マグネット
28、66A,66B マグネット支持部材
34、50 六角袋ナット
40 ピストンヘッドユニット
44、80 連結軸部
72 チップ部材