(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108964
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】浮上式避難タワー
(51)【国際特許分類】
E04H 9/14 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
E04H9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013656
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】306024805
【氏名又は名称】株式会社 林物産発明研究所
(72)【発明者】
【氏名】林 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 和志郎
(72)【発明者】
【氏名】林 宏三郎
(72)【発明者】
【氏名】林 加奈子
【テーマコード(参考)】
2E139
【Fターム(参考)】
2E139AA07
2E139AB21
(57)【要約】
【課題】 平時にレストランや公民館、公園等として利用可能とすることで実質費用負荷を軽減でき、気候条件によらず避難者の居住性を確保可能な避難タワーを提供する
【解決手段】
天井と外壁に囲われた居室空間及び前記天井に形成された収容空間を有する建物構造と、前記建物構造を支持する浮力体と、支柱に沿って前記建物構造を昇降させるスライド構造を有し、前記浮力体からの浮力によって前記建物構造が前記支柱に沿って上昇可能であることを特徴とする浮上式避難タワーとした。収容空間にベッドが収容されていることで避難生活を快適化できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井と外壁に囲われた居室空間及び前記天井に形成された収容空間を有する建物構造と、
前記建物構造を支持する浮力体と、
支柱に沿って前記建物構造を昇降させるスライド構造を有し、
前記浮力体からの浮力によって前記建物構造が前記支柱に沿って上昇可能であることを特徴とする浮上式避難タワー。
【請求項2】
前記収容空間にベッドが収容されていることを特徴とする請求項1の浮上式避難タワー。
【請求項3】
前記建物構造が複数階であることを特徴とする請求項1の浮上式避難タワー。
【請求項4】
前記建物構造の上部に公園を設けたことを特徴とする請求項1の浮上式避難タワー。
【請求項5】
前記建物構造の上部に貯水タンクを設けたことを特徴とする請求項1の浮上式避難タワー。
【請求項6】
前記建物構造の下部にピロティ構造を設けたことを特徴とする請求項1の浮上式避難タワー。
【請求項7】
前記建物構造の外部に防災シートの収容部を設けたことを特徴とする請求項1の浮上式避難タワー。
【請求項8】
前記建物構造の外部にソーラーパネルを設けたことを特徴とする請求項1~5のいずれかの浮上式避難タワー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増水の際に浮力により上昇可能な浮上式避難タワーに関する。
【背景技術】
【0002】
東日本大震災の津波被災地では、海岸での堤防設置や高台移転等の津波対策が進められている。しかし、堤防は景観毀損の問題があり、住み慣れた地域への愛着等から高台移転を望まない住民も多い。
【0003】
このため、堤防設置や高台移転以外の解決策として、避難タワーの設置も進められている(例えば、特許文献1)。しかし、従来の避難タワーは避難目的専用の建築物であることから費用負荷が大きい問題がある。また、従来の避難タワーは吹き曝し構造であり、冬季や夏季等の厳しい気候条件では避難者の居住性が保てない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、平時にレストランや集会所、公民館、公園等として利用可能とすることで実質費用負荷を軽減でき、気候条件によらず避難者の居住性を確保可能な避難タワーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願には、
天井と外壁に囲われた居室空間及び前記天井に形成された収容空間を有する建物構造と、
前記建物構造を支持する浮力体と、
支柱に沿って前記建物構造を昇降させるスライド構造を有し、
前記浮力体からの浮力によって前記建物構造が前記支柱に沿って上昇可能であることを特徴とする浮上式避難タワーが開示される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本発明の1実施形態の浮上式避難タワー1を示す。浮上式避難タワー1は、建物構造10と、建物構造10を支持する浮力体60と、支柱70に沿って建物構造10を昇降させるスライド構造を有する。
【0009】
建物構造10は、天井21と外壁22に囲われた居室空間20と、天井21に形成された収容空間30を有する。
【0010】
居室空間20は天井21と外壁22に囲われているため、平時にレストランや集会所、公民館等として利用でき、賃料収入が見込めることで実質費用負荷を軽減できる。さらに、天井21と外壁22により寒暖や風雨を遮断できるため、災害時に快適な避難空間を提供できる。居室空間20はトイレ(不図示)を有するとよい。
【0011】
収容空間30には、ベッド等の寝具が収容されている。よって、災害時に収容空間30のベッド等を居室空間20に設置する(
図2)ことで、避難時の快適性を更に向上させることができる。ベッドはロープ等で収容空間30に吊設し、ロープ操作で居室空間20に下降可能とするとよい。収容時にはロープでベッドを収容空間30に引き上げ可能とするとよい。収容空間30は、避難者毎の個室空間を提供するためのパーティション等、あるいはさらに食料や生活用品等を収容してもよい。
【0012】
建物構造10は、複数階とするとよい。図示の例は2階建てであり、2つの階層の居室空間20と収容空間30を有する。各階の居室空間20の外側はベランダ24等とするとよい。
【0013】
建物構造10の下側にピロティ構造40を設けてもよい。ピロティ構造40は、駐車場等として利用できる。建物構造10の屋上50は、公園等として利用してよい。屋上50には、フェンス51、貯水タンク52、樹木53等を配置すると良い。建物構造10の外周に防災シート(例えば、防火・防炎・火災時の防炎用)の収容部54を設けてもよい。収容部54の周囲等にソーラーパネル55を設置してもよい。各階間の移動のため、階段11を設けるとよい。
【0014】
スライド構造は、支柱70と、支柱70を案内する貫通ガイド孔71と、上下のストッパ72,73を有する。貫通ガイド孔71は、例えば、外壁22に形成するとよい。
【0015】
平時には、建物構造10の下端(又は、浮力体60)がストッパ72に当接し、建物構造10は地面から所定高さに保持される(
図1)。建物構造10の下の空間は、駐車場等として利用できる。
【0016】
津波や洪水等により増水すると、浮力体60の浮力により建物構造10は支柱70に沿って上昇し、増水から避難者を保護できる。支柱70及び貫通ガイド孔71に案内されるので上昇時の振動を抑止できる。災害時には居室空間20(レストランや公民館)の備品等をベランダ24に出し、収容空間30のベッド等を居室空間20に配置することで避難生活を快適性を向上させることができる。避難中は収容空間30(レストラン等)の設備や食料、貯水タンク52の水、ソーラーパネル55の電気等を利用できるため、避難生活を一層安全、快適にできる。火災が生じたとしても、収容部54の防災シートで避難者を守ることができる。建物構造10の上部に貯水タンク52を設置することで地震時に免震効果を得ることができる。建物構造10の上昇は、例えば、最下層階の床23等がストッパ73に当接したところで停止する(
図2)ため、建物構造10の流出を防止できる。
【0017】
水が引けば、建物構造10は自重により支柱70に沿って下降して
図1の状態に復帰するので、避難者は自宅に戻ることができる。
【0018】
上記実施形態に記載した浮上式避難タワーの構成要素やその寸法、形状、配置、材料等は、例示であり、他の態様も可能である。
【符号の説明】
【0019】
1・・・浮上式避難タワー
10・・・建物構造
11・・・階段
20・・・居室空間
21・・・天井
22・・・外壁
23・・・床
24・・・ベランダ
30・・・収容空間
40・・・ピロティ構造
50・・・屋上
51・・・フェンス
52・・・貯水タンク
53・・・樹木
54・・・収容部
55・・・ソーラーパネル
60・・・浮力体
70・・・支柱
71・・・貫通ガイド孔
72,73・・・ストッパ