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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108974
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】緑化材
(51)【国際特許分類】
   A01G 24/12 20180101AFI20240805BHJP
   C01B 33/12 20060101ALI20240805BHJP
   A01G 20/00 20180101ALI20240805BHJP
   A01G 24/44 20180101ALI20240805BHJP
【FI】
A01G24/12
C01B33/12 Z
A01G20/00
A01G24/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013672
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】722004104
【氏名又は名称】株式会社ナノジャパン
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(72)【発明者】
【氏名】衣斐 豊祐
(72)【発明者】
【氏名】金子 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 悠吏
【テーマコード(参考)】
2B022
4G072
【Fターム(参考)】
2B022AB04
2B022BA02
2B022BB01
2B022BB02
4G072AA25
4G072AA45
4G072BB05
4G072BB15
4G072BB20
4G072DD03
4G072GG02
4G072MM02
4G072MM26
4G072MM36
4G072MM37
4G072QQ02
4G072TT01
4G072TT08
4G072TT30
4G072UU30
(57)【要約】
【課題】優れた多孔質構造を有し、良好な保水性を有している緑化材を提供することを目的とする。
【解決手段】多孔質構造を含む緑化材であって、前記多孔質構造が管状微粒子の一部及び/又は全部によって構成され、前記管状微粒子が側面に前記多孔質構造の細孔を有し、前記細孔の形状が略円柱状又は六角形以上の多角形からなる略多角柱状であり、前記細孔が貫通孔である緑化材を用いて、例えばプランター等として屋上緑化等に適用する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質構造を含む緑化材であって、前記多孔質構造が管状微粒子の一部及び/又は全部によって構成されていることを特徴とする緑化材。
【請求項2】
前記管状微粒子が側面に前記多孔質構造の細孔を有している請求項1記載の緑化材。
【請求項3】
前記細孔の形状が略円柱状又は六角形以上の多角形からなる略多角柱状である請求項2記載の緑化材。
【請求項4】
前記細孔の形状が略円柱状である請求項2記載の緑化材。
【請求項5】
前記細孔が貫通孔である請求項2記載の緑化材。
【請求項6】
前記管状微粒子の平均内径が、5~20μmの範囲内にある請求項1記載の緑化材。
【請求項7】
前記管状微粒子の管の開口形状が略円状である請求項1記載の緑化材。
【請求項8】
前記細孔の平均孔径が、0.5~2μmの範囲内にある請求項2記載の緑化材。
【請求項9】
前記細孔の深さと管の長さの比が、1:10~1:1000の範囲内である請求項8に記載の緑化材。
【請求項10】
平均粒径が10μm~100μmである請求項1記載の緑化材。
【請求項11】
前記管状微粒子が酸化物を主成分として含む請求項1記載の緑化材。
【請求項12】
前記酸化物がSiOを含む請求項11に記載の緑化材。
【請求項13】
前記管状微粒子が珪藻土からなる請求項1記載の緑化材。
【請求項14】
900℃以上の焼結体からなり、かつ吸水率が20%以上である請求項1記載の緑化材。
【請求項15】
前記珪藻土が淡水産珪藻からなる請求項13記載の緑化材。
【請求項16】
前記淡水産珪藻がアウラコセイラ属(Aulacoseira)の珪藻からなる請求項15記載の緑化材。
【請求項17】
緑化材を含む製品であって、前記緑化材が請求項1記載の緑化材を含む製品
【請求項18】
プランターである請求項17記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑化材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人工が集中した都市に特有の問題が顕在化され、社会問題となってきている。その一つに、人口が集中している都市部の気温が、その周辺の非都市部に比べて異常な高温を示すヒートアイランドと呼ばれる現象があり、これによって引き起こされると考えられる地球の温暖化など様々な問題が指摘されている。例えば、都市型集中豪雨もその一つであり、急速に進んでいるヒートアイランド現象が一因していると考えられている。ところで、都市の地面は、その大部分が、水を吸収することができないアスファルトやコンクリートで舗装されており、雨水を下水管や雨水管で流すことを基本としていることから、都市型水害の発生が問題になっている。特に、先述した都市型集中豪雨が起こった場合には、下水管や雨水管では雨水を処理しきれず、近年の都市型水害が頻発する原因となることも少なくない。これらの課題は、特に、人口が密集している大都市において顕著である。
【0003】
ヒートアイランド現象の原因として、開発によって生じた緑地や水辺、裸地などの減少や、舗装によって生じた、降雨の地面への浸透量減少、土中の保水力低下、ひいては蒸発・蒸散量の減少が挙げられている。また、ヒートアイランドが進めば進むほど、冷房需要が増加し、それが排熱の増加を招いて、ヒートアイランドをさらに促進させるという悪循環も指摘されている。
【0004】
ヒートアイランド対策のために、建物の屋上を緑化することが行われている。しかしながら、屋上緑化は、植物を植える際に、種々のコストがかかることに加えて、緑化状態を快適に維持するためには、その後の管理が不可欠であり、永続的に、多大な努力を個々に強いるという問題がある。また、相当量の土壌を必要とし、これを屋上に配置することは建物への負担が大きく、その手間やコストもさることながら、建物の構造自体をその重量に耐え得る頑強なものにする必要がある。このため、屋上緑化は、全ての建物で採用できる簡便な方策とは言えず、ヒートアイランド現象の緩和に資する、より簡便な方策の開発が待たれている。近年においては、より簡便な方策として保水性パネルを用いた屋上床構造が検討されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1の保水性パネルは、気化熱による冷却性能があまりよくなく、また、建物の強度等にも負荷を与えるものであり、また、防水性層の上に空気層と基板層と保水材層とを積層しなければならず、設置が困難であり、特に保水材層と基板層との間に3~5mmの空間層と基板層表面に細かい凹凸を形成する必要があり、現実的に実用できるものではなく、まだまだ満足のいくものではなかった。なお、従来の珪藻土を保水性パネルとして用いることも考えられるが、従来の珪藻土を用いた保水性パネルは、強度が弱く、耐摩耗性もなく、焼成により、セラミックス化して強度を向上させると、保水性が喪失してしまうといった問題があった。また、屋上緑化は、利用者の憩いの場として需要があり、地球環境保全の視点から、人々の生活空間に多彩な緑化を促進することが望まれており、保水性のみならず、緑化を促進するような方策が待ち望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5492589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、優れた多孔質構造を有し、良好な保水性を有している緑化材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、多孔質構造を含む緑化材であって、前記多孔質構造が管状微粒子の一部及び/又は全部によって構成されている緑化材が、優れた保水性、優れた緑化促進、優れた強度及び良好な耐摩耗性等を備えていることを知見し、このような緑化材が、上記した従来の問題を一挙に解決できるものであることを見出した。
また、本発明者らは、上記知見を得た後、さらに検討を重ねて、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
[1] 多孔質構造を含む緑化材であって、前記多孔質構造が管状微粒子の一部及び/又は全部によって構成されていることを特徴とする緑化材。
[2] 前記管状微粒子が側面に前記多孔質構造の細孔を有している前記[1]記載の緑化材。
[3] 前記細孔の形状が略円柱状又は六角形以上の多角形からなる略多角柱状である前記[2]記載の緑化材。
[4] 前記細孔の形状が略円柱状である前記[2]又は[3]に記載の緑化材。
[5] 前記細孔が貫通孔である前記[2]~[4]のいずれかに記載の緑化材。
[6] 前記管状微粒子の平均内径が、5~20μmの範囲内にある前記[1]~[5]のいずれかに記載の緑化材。
[7] 前記管状微粒子の管の開口形状が略円状である前記[1]~[6]のいずれかに記載の緑化材。
[8] 前記細孔の平均孔径が、0.5~2μmの範囲内にある前記[2]~[5]のいずれかに記載の緑化材。
[9] 前記細孔の深さと管の長さの比が、1:10~1:1000の範囲内である前記[8]に記載の緑化材。
[10] 平均粒径が10μm~100μmである前記[1]~[9]のいずれかに記載の緑化材。
[11] 前記管状微粒子が酸化物を主成分として含む前記[1]~[10]のいずれかに記載の緑化材。
[12] 前記酸化物がSiOを含む前記[11]に記載の緑化材。
[13] 前記管状微粒子が珪藻土からなる前記[1]~[12]のいずれかに記載の緑化材。
[14] 900℃以上の焼結体からなり、かつ吸水率が20%以上である前記[1]~[13]のいずれかに記載の緑化材。
[15] 前記珪藻土が淡水産珪藻からなる前記[13]記載の緑化材。
[16] 前記淡水産珪藻がアウラコセイラ属(Aulacoseira)の珪藻からなる前記[15]記載の緑化材。
[17] 緑化材を含む製品であって、前記緑化材が前記[1]~[16]のいずれかに記載の緑化材を含む製品
[18] プランターである前記[17]記載の製品。
【発明の効果】
【0010】
本発明の緑化材は、優れた多孔質構造を有し、良好な保水性を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に用いられる緑化材の好適な実施態様の一例を模式的に示す図である。
図2】実施例における緑化材の顕微鏡像(SEM像)を示す。
図3】比較例における緑化材の顕微鏡像(SEM像)を示す。
図4】本発明の処理方法の好適な実施態様の一例を模式的に示す図である。
図5】本発明の処理方法の好適な実施態様の一例を模式的に示す図である。
図6】本発明の緑化材を含む製品(タイル)の好適な実施態様の一例である。
図7】本発明の緑化材を含む製品(砂利)の好適な実施態様の一例及び試験結果である。
図8】本発明の緑化材を含む製品(タイル)の好適な実施態様の一例及び試験結果である。
図9】本発明の緑化材を含む製品(タイル)の好適な実施態様の一例を模式的に示す図である。
図10】本発明の緑化材を含む製品(砂利)の好適な実施態様の一例を模式的に示す図である。
図11】実施例における緑化材の顕微鏡像(SEM像)を示す。なお、顕微鏡像は図2の緑化材の拡大顕微鏡像である。
図12】実施例における緑化材を含む製品(タイル)の顕微鏡像(SEM像)を示す。
図13】比較例における緑化材の顕微鏡像(SEM像)を示す。なお、顕微鏡像は図3の緑化材の拡大顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の緑化材は、多孔質構造を含む緑化材であって、前記多孔質構造が管状微粒子の一部及び/又は全部によって構成されていれば特に限定されない。緑化材は、通常植生に用いられる資材をいうが、本発明においては、多孔質構造を含む緑化材であって、前記多孔質構造が管状微粒子の一部及び/又は全部によって構成されていれば特に限定されない。「管状微粒子の一部及び/又は全部」とは、前記管状微粒子の一部でも含まれていればそれでよく、破片なども含まれる。前記破片には、通常前記多孔質構造が含まれる。「主成分」とは、前記緑化材中の前記管状微粒子の体積比が、0.5以上の割合であればそれでよい。本発明においては、前記緑化材中のすべての成分に対する前記管状微粒子の体積比が0.7以上であることが好ましく、0.8以上であるのがより好ましい。
【0013】
前記緑化材は、前記管状微粒子を含んでいればそれでよく、他の多孔質体、バインダーなどの添加剤が含まれていてもよく、具体的に例えば、賦形剤、結着剤又は接着剤等の添加剤などが含まれていてもよい。また、前記管状微粒子が、側面に前記多孔質構造の細孔を有しているのが好ましい。前記細孔の形状が略円柱状又は六角形以上の多角形からなる略多角柱状であるのが好ましく、略円柱状であるのがより好ましい。本発明においては、前記細孔が、貫通孔からなるのが好ましい。また、本発明においては、前記管状微粒子の管の平均内径が、5~20μmの範囲内にあるのが好ましい。なお、前記平均内径は、任意に抽出した10個の緑化材の開口の平均値をいう。また、前記開口の形状が、略円状であるのが好ましい。前記細孔の平均孔径が、0.5~2μmの範囲内にあるのが好ましい。なお、前記平均孔径は、任意に抽出した10個の緑化材の細孔の孔径の平均値をいう。また、本発明においては、前記管状微粒子の平均粒径が10μm~100μmであるのが好ましい。なお、前記平均粒径は、任意に抽出した10個の粒子の粒径の平均値をいう。このような好ましい範囲によれば、断湿性、放射性物質や不純物の捕集蓄積機能、保水性及び緑化促進において、より優れた性能を発揮することができる。
【0014】
前記管状微粒子は、前記管状微粒子の側壁に細孔からなる多孔質構造が形成されていれば特に限定されないが、前記細孔の深さと管の長さの比が、1:10~1:1000の範囲内であるのが好ましく、1:10~1:100の範囲内であるのがより好ましい。前記緑化材の好適な態様を図1に示す。また、図1は前記緑化材における管状微粒子の拡大模式図も併せて示している。図1の緑化材は、前記管状微粒子の集合体であり、図1には、管状微粒子の拡大模式図において好適な細孔2からなる多孔質構造が示されている。本発明においては、前記管状微粒子の平均粒径が10μm~100μmであるのが好ましく、前記平均粒径は図1に示される管状微粒子1の粒径d2から算出することができる。例えば、図1に示される管状微粒子1を任意で10個抽出し、抽出した管状微粒子1の粒径d2の平均値を算出することにより前記平均粒径を求めることができる。また、本発明においては、前記管状微粒子の管の平均内径が、5~20μmの範囲内にあるのが好ましく、前記平均内径は図1に示される管状微粒子1のd3から算出することができる。例えば、図1に示される管状微粒子1を任意で10個抽出し、抽出した管状微粒子1のd3の平均値を算出することにより前記平均内径を求めることができる。本発明においては、前記細孔の平均孔径が、0.5~2μmの範囲内にあるのが好ましく、前記平均孔径は図1に示される管状微粒子1の細孔d1から算出することができる。例えば、図1に示される管状微粒子1を任意で10個抽出し、抽出した管状微粒子1の細孔d1の平均値を算出することにより前記平均孔径を求めることができる。このような好ましい範囲によれば、捕集蓄積機能をより向上させることができる。
【0015】
前記管状微粒子の構成材料は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、本発明においては、酸化物を主成分として含むのが好ましい。前記酸化物は、SiOを含むのが好ましく、Alを含むのも好ましい。また、カリウムを含むのも好ましく、このような好ましい範囲によれば、前記管状微粒子を土壌に適用する場合に環境により優しく、また、土壌改良機能及び吸着機能においてより優れた性能を発揮することができる。本発明においては、前記管状微粒子が珪藻土からなるのが好ましい。また、前記管状微粒子が焼結体であるのが好ましい。また、600℃以上(好ましくは、900℃以上)の焼結体からなり、かつ吸水率が20%以上であるのがより好ましい。なお、前記焼成の手段及び順序等は本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知の手段等が好適に用いられるが、前記焼成の手段は酸化焼成であっても、還元焼成であってもよいが、酸化焼成であるのがより好ましい。また、前記珪藻土が淡水産珪藻からなるのが好ましく、前記淡水産珪藻がアウラコセイラ属(Aulacoseira)であるのがより好ましい。このような好ましい範囲によれば、保水性、緑化促進、強度及び耐摩耗性においてもより優れた性能を発揮することができる。
【0016】
前記緑化材は、例えば、アウラコセイラ属(Aulacoseira)の珪藻の化石からなる珪藻土層において多孔質構造を含む原鉱のうち吸水率が80%以上の珪藻土層の区画から、該原鉱を常法に従い取り出し、ついで前記珪藻土に含まれる前記多孔質構造を壊さないように粉砕又は分散させることによって容易に得ることができる。前記粉砕手段は、例えば、ボールミルなどの公知の粉砕手段を用いると、例えば図3に示すように、前記多孔質構造が壊れてしまうので、本発明においては、磨砕を抑制しながら粉砕を行うのが好ましく、振動と微粒子同士の衝突を抑制下における打砕のみによる粉砕手段であるのが好ましい。このような粉砕手段であれば、例えば図2に示すように、多孔質構造が壊れることなく粉砕することができる。また、本発明においては、前記添加剤をさらに混合してもよいし、混合物をさらに焼成してもよく、これら混合物及び焼結体も本発明の緑化材に含まれる。なお、本発明においては、前記焼結体が、前記管状微粒子を600℃以上(好ましくは、900℃以上)で焼成して得られた焼結体であるのが好ましい。このように焼成することにより、機械的特性を良好なものとするのみならず、吸水機能を損なうことなく、例えば、吸水率を20%以上とすることができる。
【0017】
前記緑化材はそのままで又はさらに例えばバインダー等の添加剤や水などの溶媒等と混合され、公知の手段を用いて、プランター等の製品とされ得る。また、前記混合手段は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知の手段であってよい。なお、このような処理方法も本発明に包含される。前記緑化材は、前記製品において、10重量%以上含まれるのが好ましく、このような好ましい範囲によれば、前記捕集蓄積機能をより良好なものとすることができる。
【0018】
前記製品は、緑化材を含む植生用の製品であるのが好ましく、前記製品としては、例えば、プランターなどが挙げられ、植生用の砂利やタイルなども含まれる。また、前記砂利は、植生用に肥料として用いる砂利であってもよいし、屋上緑化庭園において、庭石と共に用いられる砂利であってもよい。前記タイルは、植生用基材としてのタイルであってもよいし、また、屋上緑化庭園において用いられるタイルであってもよい。前記プランターとしては、例えば、植木鉢などが挙げられる。
【0019】
また、前記緑化材は、再利用品であってもよい。前記緑化材を再利用することにより、より環境に配慮したものとすることができる。また、前記緑化材は、使用後、土壌改良剤等として再利用することが可能である。使用済み前記緑化材を土壌改良剤として再利用する場合には、前記土壌改良剤は、転作障害等を防止したり、土壌中の水分や酸素濃度を調節したりすることができる。
【0020】
本発明の緑化材をタイルに適用した場合、例えば、図9に示すように、芝生等の植物とともに屋上緑化と併用して用いてもよい。図9の屋上緑化は、芝生14及び緑化材を含む製品(タイル)13からなっている。本発明の緑化材を含む製品(タイル)を屋上に敷設することにより、前記製品(タイル)13による雨水の保水・蒸発で、屋上スラブ温度を下げ、階下の空調の使用電力量を減らすことができる。また、屋上に設置された空調室外機の周辺温度を下げ、全階の空調の運転効率を向上させ、使用電力量を減らすこともできる。特に、屋上階の夏場の空調の使用電力量を大きく低減することができる。この結果、CO2の排出量の削減も可能となり、より優れたヒートアイランド対策となる。本発明の製品(タイル)13は、優れた保水性を有すると共に、良好な強度及び良好な耐摩耗性を持ち、また、自然降雨を利用する維持管理不要な材料であるため、屋上緑化代替の有力候補となる。現状の屋上緑化は維持に手間が掛かり、管理費も高いが、本発明の緑化材によれば、この問題を解決できる。また、本発明の製品(タイル)13は、従来品の磁器質タイルに比べて重量が小さく、吸水したときの吸水重量も小さく、建物への負荷を軽減することができるという効果を奏する。また、本発明の緑化材を含む製品(タイル)13は、従来品の磁器質タイルに比べて取り扱い性に優れており、簡便な方法で設置することができる。また、本発明の緑化材を含む製品(タイル)13は、保水性があるため、ビル屋上に可能な限り敷設すれば、ゲリラ豪雨による雨水を一時的に貯留し、局地的な大雨がいっきに下水道や河川に流出することを抑制することができる。
【0021】
本発明の緑化材を砂利に適用した場合、例えば、図10に示すように、屋上に使用してもよい。図10の屋上は緑化材からなる砂利15を適用している。本発明の緑化材を含む製品(砂利)を屋上に敷設することにより、前記製品(砂利)による雨水の保水・蒸発で、屋上スラブ温度を下げ、階下の空調の使用電力量を減らすことができる。また、屋上に設置された空調室外機の周辺温度を下げ、全階の空調の運転効率を向上させ、使用電力量を減らすこともできる。特に、屋上階の夏場の空調の使用電力量を大きく低減することができる。この結果、CO2の排出量の削減も可能となり、より優れたヒートアイランド対策となる。本発明の製品(砂利)は、優れた保水性を有すると共に、良好な強度及び良好な耐摩耗性を持ち、また、自然降雨を利用する維持管理不要な材料であるため、屋上緑化代替の有力候補となる。現状の屋上緑化は維持に手間が掛かり、管理費も高いが、本発明の緑化材によれば、この問題を解決できる。また、本発明の緑化材を含む製品(砂利)は、従来品の砂利に比べて重量が小さく、吸水したときの吸水重量も小さく、建物への負荷を軽減することができるという効果を奏する。また、本発明の緑化材を含む製品(砂利)は、従来品の砂利に比べて取り扱い性に優れており、簡便な方法で設置することができる。また、本発明の緑化材を含む製品(砂利)は、保水性があるため、ビル屋上に可能な限り敷設すれば、ゲリラ豪雨による雨水を一時的に貯留し、局地的な大雨がいっきに下水道や河川に流出することを抑制することができる。
【0022】
本発明の緑化材をプランターに適用した場合、緑化材を含む製品(プランター)を屋上に敷設することにより、前記製品(プランター)による雨水の保水・蒸発で、屋上スラブ温度を下げ、階下の空調の使用電力量を減らすことができる。また、屋上に設置された空調室外機の周辺温度を下げ、全階の空調の運転効率を向上させ、使用電力量を減らすこともできる。特に、屋上階の夏場の空調の使用電力量を大きく低減することができる。この結果、CO2の排出量の削減も可能となり、より優れたヒートアイランド対策となる。本発明の製品(プランター)は、優れた保水性を有すると共に、良好な強度及び良好な耐摩耗性を持ち、また、自然降雨を利用する維持管理不要な材料であるため、屋上緑化代替の有力候補となる。現状の屋上緑化は維持に手間が掛かり、管理費も高いが、本発明の緑化材によれば、この問題を解決できる。また、本発明の製品(プランター)は、従来品の磁器質プランターに比べて重量が小さく、吸水したときの吸水重量も小さく、建物への負荷を軽減することができるという効果を奏する。また、本発明の緑化材を含む製品(プランター)は、従来品の磁器質プランターに比べて取り扱い性に優れており、簡便な方法で設置することができる。また、本発明の緑化材を含む製品(プランター)は、保水性があるため、ビル屋上に可能な限り敷設すれば、ゲリラ豪雨による雨水を一時的に貯留し、局地的な大雨がいっきに下水道や河川に流出することを抑制することができる。
【0023】
前記緑化材は、悪臭組成物の吸着性能にも優れており、すなわち、消臭性能にも優れているため、消臭剤としても用いることが可能である。前記消臭剤としては、溶媒に分散させた液状又はゾル状消臭剤、粉末状もしくは顆粒状消臭剤又は成型された消臭製品もしくはその部品などが好適な例として挙げられる。また、前記緑化材は、免疫賦活性にも優れており、保水性を有する免疫賦活剤としても用いることも可能である。本発明においては、養殖又は畜産用の飼料配合剤や食品添加物に用いるのが好ましく、また、歯磨き粉に用いるのも好ましい。これら本発明の好ましい態様は、前記緑化材を添加剤として常法に従い製造することにより、容易に適用することができる。
【実施例0024】
(実施例1)
アウラコセイラ属(Aulacoseira)の珪藻の化石からなる珪藻土層の区画から、珪藻土を取り出し、磨砕しないように打砕のみで粉砕し、ついで水を加えて混合し得られた混合物を成形したのち、600℃以上で焼成することにより、本発明の緑化材を得た。得られた緑化材の多孔質構造を、顕微鏡(SEM)を用いて観察した。結果を図2に示す。また、拡大顕微鏡像を図11に示す。図2及び図11の顕微鏡像から明らかなように得られた緑化材は、前記管状微粒子の側壁に細孔からなる多孔質構造が形成されていた。また、得られた緑化材の吸水率を測定したところ、45%以上の吸水率を有していた。なお、焼成前の珪藻土の吸水率は、80%以上であった。また、比較例として市販されている珪藻土資材を用いて多孔質構造を、顕微鏡(SEM)にて観察したところ、図3及び図13に示すように、多孔質構造が壊れており、吸水率も均一ではなく、全体的に本発明の緑化材に比べ非常に低く吸水性が悪かった。
【0025】
(試験例1)
試験例1として、実施例1に準じて、粉砕物を得て、さらに、粉砕物に粘土を混ぜ、ついで水を用いて、ろくろにて成型し、図4に示される緑化材を含む容器を作製した。容器内の湿度と外気の湿度とを測定した。結果を表1に示す。なお、細孔の平均孔径が、0.5~2μmの範囲内にない、他の吸放湿材からなる容器を用いて、上記と同様に容器内の湿度と外気の湿度とを測定し、これを比較例1とした。
【0026】
【表1】
【0027】
表1から明らかなように、比較例品では50%前後の湿度が外気の湿度変化によって60%近くまで上昇したが、本発明品は、外気の影響を受けることなく、50%前後の湿度を維持しており、外気からの水分を良好に捕集蓄積しており、優れた断湿性を有することがわかった。
【0028】
(参考例1)
実施例1に準じて、図4に示されるように、マカロニ状のろ過材を作製し、ネットに入れ、フィルターを作製した。セシウムを含有させた試験水を、作製したフィルターに対して流し込み、ろ過材におけるセシウムの捕集蓄積機能を評価した。なお、比較例2としてゼオライトフィルターを用いた。評価結果を表2に示す。
【0029】
【表2】
【0030】
表2から明らかなように、比較例品ではセシウムの捕集蓄積機能は特に確認できなかったが、本発明品では、セシウムが大量に捕集蓄積されており、参考例1の緑化材が放射性物質の捕集蓄積性に優れていることがわかった。このような捕集蓄積機能は、ゼオライトフィルターや他のメソポーラスフィルター(細孔の平均孔径が、0.5~2μmの範囲内外のもの及び非円柱状貫通細孔のものを含む)では確認できず、本発明特有の効果である。
【0031】
(試験例2)
試験例2として、図6に示すように、実施例1に準じて得られた緑化材を含む製品(タイル)11を設置し、製品(タイル)11の表面にセロハンテープを付着させて剥がしたところ、セロハンテープの粘着面に粉が付着していなかった。なお、比較例3として、直径20~50nmのポアを有する珪藻土を含むタイル(市販品)12の表面にセロハンテープを付着させて剥がしたところ、セロハンテープの粘着面に粉が付着していた。このような結果から、本発明の緑化材を含む製品(タイル)には優れた耐摩耗性があることがわかった。
【0032】
(試験例3)
試験例3として、実施例1に準じて緑化材を含む製品(砂利)9を作製した。作製した砂利に水を撒いたところ、表3及び図7に示すように、時間が経っても砂利表面の温度が外気温よりも低くなった。なお、比較例3として、直径20~50nmのポアを有する珪藻土を含む砂利(市販品)10に水を撒くと、砂利表面の温度は時間が経つと温度が高くなり、試験例3の砂利表面温度に比べて32℃高くなった。このような結果から、本発明の緑化材を含む製品(砂利)には、優れた蒸散性能があることがわかった。
【0033】
【表3】
【0034】
(試験例4)
試験例4として、実施例1に準じて得られた緑化材を含む製品(タイル)11を作製した。また、製品(タイル)11の構造を、顕微鏡(SEM)を用いて観察した。結果を図12に示す。図12の顕微鏡像から明らかな通り、製品(タイル)11に成型加工しても、良好な多孔質構造を有しており、多孔質構造を有している管状の微粒子(多孔質構造を有している破片を含む)が全面に観察された。また、図8に示すように、緑化材を含む製品(タイル)11を設置し、作製したタイルに水を撒いたところ、時間が経ってもタイル表面の温度が外気温よりも低くなった。なお、比較例4として、直径20~50nmのポアを有する珪藻土を含むタイル(市販品)12に水を撒くと、タイルの表面の温度は時間が経つと温度が高くなり、試験例4の緑化材を含む製品(タイル)11の表面温度に比べて24.1℃高くなった。このような結果から、本発明の緑化材を含む製品(タイル)には、優れた保水蒸散性があることがわかった。
また、表4に示すように試験例4の緑化材を含む製品(タイル)11の吸水率は、29%であり、気化冷却持続時間は10時間であった。比較例4のタイル12では、吸水率が2.2%であり、気化冷却持続時間は1時間であった。このような結果から本発明の緑化材を含む製品(タイル)には、優れた吸水性及び気化冷却持続性があることがわかった。
【0035】
【表4】
【0036】
(参考例2)
参考例2として、表5に示すように、アセトアルデヒド、トリメチルアミン、アンモニア、酢酸エチル等の物質を水に添加して悪臭組成物を調製し、実施例1に準じて得られた緑化材を含む製品(塗料)を居住空間の内壁に塗布し、調製した悪臭組成物を、トレイに1cc入れて居住空間に15分間静置した後、前記居住空間内の臭いを評価した。「◎」は、初期濃度に対して60%以上のガス吸着性能を示し、時間が経過してもガスが脱着しなかったものを示し、「△」は、初期濃度に対して60%以上のガス吸着を示したが、時間が経過するとガスが脱着したものを示し、「×」は、初期濃度に対してガス吸着性能がなかったものを示している。結果を以下の表5に示す。なお、比較例5―1は、ゼオライトが含まれる塗料(市販品)を内壁に塗布した居住空間を示し、比較例5―2は、直径20~50nmのポアを有する珪藻土を含む塗料(市販品)を内壁に塗布した居住空間を示す。
【0037】
【表5】
【0038】
(試験例5)
試験例5として、実施例1に準じて得られた緑化材を含む製品(タイル)と市販品の珪藻土タイルとを用いて、地面に載置したタイルに対して、所定の高さから直径5cmの鉄球を落下させた。その結果、市販品の珪藻土タイルでは、割れが生じた高さでも、実施例品は割れが生じなかった。また、市販品の珪藻土タイルに、割れが生じた高さから、さらに1m以上高いところから鉄球を落下させても実施例品は割れが生じなかった。このことにより、実施例品は従来の珪藻土タイルに対して良好な強度を有することがわかった。
【0039】
(試験例6)
試験例6として、実施例1に準じて得られた30cm×30cm×1.2cmの緑化材を含む製品(タイル)と30cm×30cm×1.1cmの市販品の磁器質タイルとを用いて、それぞれのタイルを水に浸ける前に重量を計測した(w1)。その後、それぞれのタイルを水中に30分間浸漬後、重量計測を行った(w2)。下記式(1)を用いて、吸水率を求めた。なお、下記式(1)において、w1は吸水前のタイルの重量を示し、w2は吸水後のタイルの重量を示す。また、下記式(2)を用いて、1シートあたりの吸水重量を求めた。なお、下記式(2)において、w2は上記と同様であり、w3はタイルの体積を示す。結果を表6に示す。表6に示すように、試験例6の緑化材を含む製品(タイル)の吸水率は29%であり、1シートあたりの吸水重量は2.737g/cmであった。また、市販品の磁器質タイルの吸水率は2.4%であり、1シートあたりの吸水重量は4.225g/cmであった。このことにより、実施例品は従来の磁器質タイルに対して吸水性により優れていることがわかった。また、重量が非常に軽く、取り扱い性に優れているため、建物に負荷をかけず、建物の屋上のタイルとしても適している。
【0040】
【数1】
【0041】
【数2】
【0042】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の緑化材は、例えばプランター等として好適に用いられ、屋上緑化等に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0044】
1 管状微粒子
2 細孔
d1 孔径
d2 粒径
d3 内径
3 容器
3a 容器のフタ
3b 容器本体
4 水路管
5 被処理水(W)
6 ネット
7 マカロニ状のろ過材
9 製品(砂利)
10 直径20~50nmのポアを有する珪藻土を含む砂利(比較例)
11 製品(タイル)
12 直径20~50nmのポアを有する珪藻土を含むタイル(比較例)
13 製品(タイル)
14 芝生
15 砂利
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13