(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108975
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】吸着材及び処理方法
(51)【国際特許分類】
B01J 20/28 20060101AFI20240805BHJP
B01J 20/10 20060101ALI20240805BHJP
B01J 20/14 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
B01J20/28 A
B01J20/10 A
B01J20/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013673
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】722004104
【氏名又は名称】株式会社ナノジャパン
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(72)【発明者】
【氏名】衣斐 豊祐
(72)【発明者】
【氏名】金子 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 悠吏
【テーマコード(参考)】
4G066
【Fターム(参考)】
4G066AA22B
4G066AA70B
4G066AC07A
4G066BA01
4G066BA20
4G066BA22
4G066BA23
4G066BA36
4G066CA43
4G066CA45
4G066DA01
4G066DA07
(57)【要約】
【課題】優れた吸着機能を備えた吸着材及び前記吸着材を用いた処理方法を提供する。
【解決手段】標的物質を吸着する機能を有する吸着材であって、側壁に細孔からなる多孔質構造が形成されている管状微粒子の一部及び/又は全部を主成分として含んでおり、前記細孔が略円柱状又は六角形以上の略多角柱状であり、前記細孔が貫通孔である吸着材を用いて標的物質を含む液体又は気体を処理する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的物質を吸着する機能を有する吸着材であって、側壁に細孔からなる多孔質構造が形成されている管状微粒子の一部及び/又は全部を主成分として含むことを特徴とする吸着材。
【請求項2】
前記細孔が略円柱状又は六角形以上の多角形からなる略多角柱状である請求項1記載の吸着材。
【請求項3】
前記細孔が略円柱状である請求項1記載の吸着材。
【請求項4】
前記細孔が貫通孔である請求項1記載の吸着材。
【請求項5】
前記管状微粒子の平均内径が、5~20μmの範囲内にある請求項1記載の吸着材。
【請求項6】
前記管状微粒子の管の開口形状が略円状である請求項1記載の吸着材。
【請求項7】
前記細孔の平均孔径が、0.5~2μmの範囲内にある請求項1記載の吸着材。
【請求項8】
前記細孔の深さと管の長さの比が、1:10~1:1000の範囲内である請求項1記載の吸着材。
【請求項9】
平均粒径が10μm~100μmである請求項1記載の吸着材。
【請求項10】
前記管状微粒子が酸化物を主成分として含む請求項1記載の吸着材。
【請求項11】
前記酸化物がSiO2を含む請求項10に記載の吸着材。
【請求項12】
前記管状微粒子が珪藻土からなる請求項1記載の吸着材。
【請求項13】
900℃以上の焼結体からなり、かつ吸水率が20%以上である請求項1記載の吸着材。
【請求項14】
前記珪藻土が淡水産珪藻からなる請求項12記載の吸着材。
【請求項15】
前記淡水産珪藻がアウラコセイラ属(Aulacoseira)の珪藻からなる請求項14記載の吸着材。
【請求項16】
吸着材を用いて標的物質を吸着処理する処理方法であって、前記吸着材が請求項1記載の吸着材であることを特徴とする処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着材及び前記吸着材を用いて標的物質を処理する処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸着材は、液体や気体に含まれる標的物質を吸着して液体や気体からそれら標的物質を除去することができるので、従来、これら適用について多くの改良がなされ、種々検討されている。
近年においては、電池の電解液が飛び散って、発生するフッ酸の除去及びその抑制のために、吸着材としてCaでイオン交換されたA型のゼオライト等が用いられている(特許文献1)。しかしながら、このような吸着材では、標的物質を蓄積することができず、一時的な吸着だけで時間が経てば、また、放出されるといった問題があった。
【0003】
特許文献2には、β-オキシ水酸化鉄を主成分とし平均結晶子径が10nm以下である粒子を多孔質の支持体に担持してなる、BET比表面積が50m2/g以上の吸着材が記載されている。しかしながら、これら吸着材はβ-オキシ水酸化鉄の吸着機能を利用したものであり、それを多孔質体に担持させることでβ-オキシ水酸化鉄の表面積を大きくしなければ十分な吸着能を発揮できず、また、製造工程が煩雑であり、コストがかかるといった問題があった。また、吸着材担持体の支持体に多孔質高分子材料が用いられており、脱炭素社会を目指すうえで、環境に優しくないため活用しづらいといった問題もあった。
【0004】
特許文献3には、水質浄化材として火山灰土と陰イオン吸着能を有する高機能炭がカルシウムやアンモニアガスで処理された吸着材が用いられている。しかしながら、特許文献3記載の吸着材も特許文献2記載の吸着材と同様、酸と反応して塩を形成する物質を炭などの多孔質体に担持させているに過ぎず、表面積を大きくしなければ十分な吸着能を発揮することができなかった。また、これら吸着材は、火山灰土を併用しなければ、十分標的物質を吸着できないといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第7073643号公報
【特許文献2】特許第6835319号公報
【特許文献3】特開2021-079363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、優れた吸着機能を備えた吸着材及び前記吸着材を用いた処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、標的物質を吸着する機能を有する吸着材であって、側壁に細孔からなる多孔質構造が形成されている管状微粒子の一部及び/又は全部を主成分として含む吸着材が、優れた吸着機能を備えていること等を知見し、このような吸着材が、上記した従来の問題を一挙に解決できるものであることを見出した。
また、本発明者らは、上記知見を得た後、さらに検討を重ねて、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
[1] 標的物質を吸着する機能を有する吸着材であって、側壁に細孔からなる多孔質構造が形成されている管状微粒子の一部及び/又は全部を主成分として含むことを特徴とする吸着材。
[2] 前記細孔が略円柱状又は六角形以上の多角形からなる略多角柱状である前記[1]記載の吸着材。
[3] 前記細孔が略円柱状である前記[1]~[2]のいずれかに記載の吸着材。
[4] 前記細孔が貫通孔である前記[1]~[3]のいずれかに記載の吸着材。
[5] 前記管状微粒子の平均内径が、5~20μmの範囲内にある前記[1]~[4]のいずれかに記載の吸着材。
[6] 前記管状微粒子の管の開口形状が略円状である前記[1]~[5]のいずれかに記載の吸着材。
[7] 前記細孔の平均孔径が、0.5~2μmの範囲内にある前記[1]~[6]のいずれかに記載の吸着材。
[8] 前記細孔の深さと管の長さの比が、1:10~1:1000の範囲内である前記[1]~[7]のいずれかに記載の吸着材。
[9] 平均粒径が10μm~100μmである前記[1]~[8]のいずれかに記載の吸着材。
[10] 前記管状微粒子が酸化物を主成分として含む前記[1]~[9]のいずれかに記載の吸着材。
[11] 前記酸化物がSiO2を含む前記[10]に記載の吸着材。
[12] 前記管状微粒子が珪藻土からなる前記[1]~[11]のいずれかに記載の吸着材。
[13] 900℃以上の焼結体からなり、かつ吸水率が20%以上である前記[1]~[12]のいずれかに記載の吸着材。
[14] 前記珪藻土が淡水産珪藻からなる前記[12]又は[13]に記載の吸着材。
[15] 前記淡水産珪藻がアウラコセイラ属(Aulacoseira)の珪藻からなる前記[14]記載の吸着材。
[16] 吸着材を用いて標的物質を吸着処理する処理方法であって、前記吸着材が前記[1]~[16]のいずれかに記載の吸着材であることを特徴とする処理方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の吸着材及び前記吸着材を用いて標的物質を処理する処理方法は、優れた吸着機能を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に用いられる吸着材の好適な実施態様の一例を模式的に示す図である。
【
図2】実施例における吸着材の顕微鏡像(SEM像)を示す。
【
図3】比較例における吸着材の顕微鏡像(SEM像)を示す。
【
図4】本発明の処理方法の好適な実施態様の一例を模式的に示す図である。
【
図5】本発明の処理方法の好適な実施態様の一例を模式的に示す図である。
【
図6】本発明の吸着材を含む製品(タイル)の好適な実施態様の一例である。
【
図7】本発明の吸着材を含む製品(砂利)の好適な実施態様の一例及び試験結果である。
【
図8】本発明の吸着材を含む製品(タイル)の好適な実施態様の一例及び試験結果である。
【
図9】本発明の吸着材を含む製品(タイル)の好適な実施態様の一例を模式的に示す図である。
【
図10】本発明の緑化材を含む製品(砂利)の好適な実施態様の一例を模式的に示す図である。
【
図11】実施例における吸着材の顕微鏡像(SEM像)を示す。なお、顕微鏡像は
図2の緑化材の拡大顕微鏡像である。
【
図12】実施例における吸着材を含む製品(タイル)の顕微鏡像(SEM像)を示す。
【
図13】比較例における吸着材の顕微鏡像(SEM像)を示す。なお、顕微鏡像は
図3の緑化材の拡大顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の吸着材は、標的物質を吸着する機能を有する吸着材であって、側壁に細孔からなる多孔質構造が形成されている管状微粒子の一部及び/又は全部を主成分として含んでいれば特に限定されない。「管状微粒子の一部及び/又は全部」とは、前記管状微粒子の破片なども含まれるが、前記破片には、通常前記多孔質構造が含まれる。「主成分」とは、前記吸着材中の前記管状微粒子の体積比が、0.5以上の割合であればそれでよい。本発明においては、前記吸着材中のすべての成分に対する前記管状微粒子の体積比が0.7以上であることが好ましく、0.8以上であるのがより好ましい。
【0012】
前記吸着材は、前記管状微粒子を含んでいればそれでよく、他の多孔質体、バインダーなどの添加剤が含まれていてもよく、具体的に例えば、賦形剤、結着剤又は接着剤等の添加剤などが含まれていてもよい。また、前記細孔の形状が略円柱状又は六角形以上の多角形からなる略多角柱状であるのが好ましく、略円柱状であるのがより好ましい。本発明においては、前記細孔が、貫通孔からなるのが好ましい。また、本発明においては、前記管状微粒子の管の平均内径が、5~20μmの範囲内にあるのが好ましい。なお、前記平均内径は、任意に抽出した10個の管状微粒子の開口の平均値をいう。また、前記開口の形状が、略円状であるのが好ましい。前記細孔の平均孔径が、0.5~2μmの範囲内にあるのが好ましい。なお、前記平均孔径は、任意に抽出した10個の管状微粒子の細孔の孔径の平均値をいう。また、本発明においては、前記管状微粒子の平均粒径が10μm~100μmであるのが好ましい。なお、前記平均粒径は、任意に抽出した10個の粒子の粒径の平均値をいう。このような好ましい範囲によれば、吸着蓄積において、より優れた性能を発揮することができる。
【0013】
前記管状微粒子は、管状であり、前記管状微粒子の側壁に細孔からなる多孔質構造が形成されていれば特に限定されないが、前記細孔の深さと管の長さの比が、1:10~1:1000の範囲内であるのが好ましく、1:10~1:100の範囲内であるのがより好ましい。前記吸着材に用いられる管状微粒子の好適な態様を
図1に示す。また、
図1は前記管状微粒子の拡大模式図も併せて示している。
図1は、前記管状微粒子の集合体であり、
図1には、管状微粒子の拡大模式図において好適な細孔2からなる多孔質構造が示されている。本発明においては、前記管状微粒子の平均粒径が10μm~100μmであるのが好ましく、前記平均粒径は
図1に示される管状微粒子1の粒径d2から算出することができる。例えば、
図1に示される管状微粒子1を任意で10個抽出し、抽出した管状微粒子1の粒径d2の平均値を算出することにより前記平均粒径を求めることができる。また、本発明においては、前記管状微粒子の管の平均内径が、5~20μmの範囲内にあるのが好ましく、前記平均内径は
図1に示される管状微粒子1のd3から算出することができる。例えば、
図1に示される管状微粒子1を任意で10個抽出し、抽出した管状微粒子1のd3の平均値を算出することにより前記平均内径を求めることができる。本発明においては、前記細孔の平均孔径が、0.5~2μmの範囲内にあるのが好ましく、前記平均孔径は
図1に示される管状微粒子1の細孔d1から算出することができる。例えば、
図1に示される管状微粒子1を任意で10個抽出し、抽出した管状微粒子1の細孔d2の平均値を算出することにより前記平均孔径を求めることができる。このような好ましい範囲によれば、吸着蓄積をより向上させることができる。
【0014】
前記管状微粒子の構成材料は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、本発明においては、酸化物を主成分として含むのが好ましい。前記酸化物は、SiO2を含むのが好ましく、Al2O3を含むのも好ましい。また、カリウムを含むのも好ましい。このような好ましい範囲によれば、前記管状微粒子を土壌に適用する場合に環境により優しく、また、土壌改良機能及び吸着機能においてより優れた性能を発揮することができる。本発明においては、前記管状微粒子が珪藻土からなるのが好ましい。また、前記管状微粒子が焼結体であるのが好ましい。また、600℃以上(好ましくは、900℃以上)の焼結体からなり、かつ吸水率が20%以上であるのがより好ましい。なお、前記焼成の手段及び順序等は本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知の手段等が好適に用いられるが、前記焼成の手段は酸化焼成であっても、還元焼成であってもよいが、酸化焼成であるのがより好ましい。また、前記珪藻土が淡水産珪藻からなるのが好ましく、前記淡水産珪藻がアウラコセイラ属(Aulacoseira)であるのがより好ましい。このような好ましい範囲によれば、吸着機能においてより優れた性能を発揮することができる。
【0015】
前記管状微粒子は、例えば、アウラコセイラ属(Aulacoseira)の珪藻の化石からなる珪藻土層において多孔質構造を含む原鉱のうち吸水率が80%以上の珪藻土層の区画から、該原鉱を常法に従い取り出し、ついで前記珪藻土に含まれる前記多孔質構造を壊さないように粉砕又は分散させることによって容易に得ることができる。前記粉砕手段は、例えば、ボールミルなどの公知の粉砕手段を用いると、例えば
図3に示すように、前記多孔質構造が壊れてしまうので、本発明においては、磨砕を抑制しながら粉砕を行うのが好ましく、振動と微粒子同士の衝突を抑制下における打砕のみによる粉砕手段であるのが好ましい。このような粉砕手段であれば、例えば
図2に示すように、多孔質構造が壊れることなく粉砕することができる。また、本発明においては、前記添加剤をさらに混合してもよいし、混合物をさらに焼成してもよく、これら混合物及び焼結体も本発明の吸着材に含まれる。なお、本発明においては、前記焼結体が、前記管状微粒子を600℃以上(好ましくは、900℃以上)で焼成して得られた焼結体であるのが好ましい。このように焼成することにより、機械的特性を良好なものとするのみならず、吸水機能を損なうことなく、例えば、吸水率を20%以上とすることができる。
【0016】
本発明においては、前記管状微粒子はそのままで又はさらに例えば樹脂、又は粘土等の成形用材料と共に成形され、成形品を前記吸着材として用いるのが好ましい。前記成形手段は押出成形等の公知の手段であってよい。なお、このような吸着材の製造方法も本発明に包含される。このような好ましい範囲によれば、吸着能力をより良好なものとすることができる。
【0017】
本発明における処理方法は、前記吸着材を前記標的物質に接触させれば特に限定されない。処理時間及び処理温度等も特に限定されず、前記標的物質を含む被処理物に応じて適宜処理条件を設定することができる。前記被処理物は、液状であってもよいし、気体状であってもよい。ゾル状等であってもよい。
【0018】
前記標的物質は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、悪臭組成物及び放射性物質などが好適な例として挙げられる。前記悪臭組成物は、公知の悪臭組成物であってよく、好ましくは、アセトアルデヒド、トリメチルアミン、アンモニア又は酢酸エチル等が挙げられる。また、前記放射性物質は公知の放射性物質であってよく、好ましくは、セシウムなどが挙げられる。
【0019】
また、前記吸着材は、再利用品であってもよい。前記吸着材を再利用することにより、より環境に配慮したものとすることができる。また、前記吸着材は、使用後、土壌改良剤等として再利用することが可能である。使用済み前記吸着材を土壌改良剤として再利用する場合には、前記土壌改良剤は、転作障害等を防止したり、土壌中の水分や酸素濃度を調節したりすることができる。
【0020】
本発明の吸着材をタイルに適用した場合、例えば、
図9に示すように、芝生等の植物とともに屋上緑化と併用して用いてもよい。
図9の屋上緑化は、芝生14及び吸着材を含む製品(タイル)13からなっている。本発明の吸着材を含む製品(タイル)を屋上に敷設することにより、前記製品(タイル)13による雨水の保水・蒸発で、屋上スラブ温度を下げ、階下の空調の使用電力量を減らすことができる。また、屋上に設置された空調室外機の周辺温度を下げ、全階の空調の運転効率を向上させ、使用電力量を減らすこともできる。特に、屋上階の夏場の空調の使用電力量を大きく低減することができる。この結果、CO2の排出量の削減も可能となり、より優れたヒートアイランド対策となる。本発明の製品(タイル)13は、優れた保水蒸散性を有すると共に、良好な強度及び良好な耐摩耗性を持ち、また、自然降雨を利用する維持管理不要な材料であるため、屋上緑化代替の有力候補となる。現状の屋上緑化は維持に手間が掛かり、管理費も高いが、本発明の吸着材によれば、この問題を解決できる。また、本発明の製品(タイル)13は、従来品の磁器質タイルに比べて重量が小さく、吸水したときの吸水重量も小さく、建物への負荷を軽減することができるという効果を奏する。また、本発明の吸着材を含む製品(タイル)13は、従来品の磁器質タイルに比べて取り扱い性に優れており、簡便な方法で設置することができる。また、本発明の吸着材を含む製品(タイル)13は、保水蒸散性があるため、ビル屋上に可能な限り敷設すれば、ゲリラ豪雨による雨水を一時的に貯留し、局地的な大雨がいっきに下水道や河川に流出することを抑制することができる。
【0021】
本発明の吸着材を砂利に適用した場合、例えば、
図10に示すように、屋上に使用してもよい。
図10の屋上は微粒子含有組成物からなる砂利15を適用している。本発明の吸着材を含む製品(砂利)を屋上に敷設することにより、前記製品(砂利)による雨水の保水・蒸発で、屋上スラブ温度を下げ、階下の空調の使用電力量を減らすことができる。また、屋上に設置された空調室外機の周辺温度を下げ、全階の空調の運転効率を向上させ、使用電力量を減らすこともできる。特に、屋上階の夏場の空調の使用電力量を大きく低減することができる。この結果、CO2の排出量の削減も可能となり、より優れたヒートアイランド対策となる。本発明の製品(砂利)は、優れた保水蒸散性を有すると共に、良好な強度及び良好な耐摩耗性を持ち、また、自然降雨を利用する維持管理不要な材料であるため、屋上緑化代替の有力候補となる。現状の屋上緑化は維持に手間が掛かり、管理費も高いが、本発明の吸着材によれば、この問題を解決できる。また、本発明の吸着材を含む製品(砂利)は、従来品の砂利に比べて重量が小さく、吸水したときの吸水重量も小さく、建物への負荷を軽減することができるという効果を奏する。また、本発明の吸着材を含む製品(砂利)は、従来品の砂利に比べて取り扱い性に優れており、簡便な方法で設置することができる。また、本発明の吸着材を含む製品(砂利)は、保水蒸散性があるため、ビル屋上に可能な限り敷設すれば、ゲリラ豪雨による雨水を一時的に貯留し、局地的な大雨がいっきに下水道や河川に流出することを抑制することができる。
【0022】
本発明の吸着材をプランターに適用した場合、吸着材を含む製品(プランター)を屋上に敷設することにより、前記製品(プランター)による雨水の保水・蒸発で、屋上スラブ温度を下げ、階下の空調の使用電力量を減らすことができる。また、屋上に設置された空調室外機の周辺温度を下げ、全階の空調の運転効率を向上させ、使用電力量を減らすこともできる。特に、屋上階の夏場の空調の使用電力量を大きく低減することができる。この結果、CO2の排出量の削減も可能となり、より優れたヒートアイランド対策となる。本発明の製品(プランター)は、優れた保水蒸散性を有すると共に、良好な強度及び良好な耐摩耗性を持ち、また、自然降雨を利用する維持管理不要な材料であるため、屋上緑化代替の有力候補となる。現状の屋上緑化は維持に手間が掛かり、管理費も高いが、本発明の吸着材によれば、この問題を解決できる。また、本発明の製品(プランター)は、従来品の磁器質プランターに比べて重量が小さく、吸水したときの吸水重量も小さく、建物への負荷を軽減することができるという効果を奏する。また、本発明の吸着材を含む製品(プランター)は、従来品の磁器質プランターに比べて取り扱い性に優れており、簡便な方法で設置することができる。また、本発明の吸着材を含む製品(プランター)は、保水蒸散性があるため、ビル屋上に可能な限り敷設すれば、ゲリラ豪雨による雨水を一時的に貯留し、局地的な大雨がいっきに下水道や河川に流出することを抑制することができる。
【0023】
前記吸着材は、悪臭組成物の吸着性能に優れており、すなわち、消臭性能に優れているため、消臭剤として用いることが可能である。前記消臭剤としては、溶媒に分散させた液状又はゾル状消臭剤、粉末状もしくは顆粒状消臭剤又は成型された消臭製品もしくはその部品などが好適な例として挙げられる。また、前記吸着材は、免疫賦活性に優れており、前記消臭剤のみならず、消臭性を有する免疫賦活剤としても用いることも可能である。本発明においては、養殖又は畜産用の飼料配合剤や食品添加物に用いるのが好ましく、また、歯磨き粉に用いるのも好ましい。これら本発明の好ましい態様は、前記吸着材を添加剤として常法に従い製造することにより、容易に適用することができる。
【実施例0024】
(実施例1)
アウラコセイラ属(Aulacoseira)の珪藻の化石からなる珪藻土層の区画から、珪藻土を取り出し、磨砕しないように打砕のみで粉砕し、ついで水を加えて混合し得られた混合物を成形したのち、600℃以上で焼成することにより、本発明の吸着材を得た。得られた吸着材の多孔質構造を、顕微鏡(SEM)を用いて観察した。結果を
図2に示す。また、拡大顕微鏡像を
図11に示す。
図2及び
図11の顕微鏡像から明らかなように得られた吸着材は、前記管状微粒子の側壁に細孔からなる多孔質構造が形成されていた。また、得られた吸着材の吸水率を測定したところ、45%以上の吸水率を有していた。なお、焼成前の珪藻土の吸水率は、80%以上であった。また、比較例として市販されている珪藻土資材を用いて多孔質構造を、顕微鏡(SEM)にて観察したところ、
図3及び
図7に示すように、多孔質構造が壊れており、吸水率も均一ではなく、全体的に本発明の吸着材に比べ非常に低く吸水性が悪かった。
【0025】
(参考例1)
参考例1として、実施例1に準じて得られた吸着材に粘土を混ぜ、ついで水を用いて、ろくろにて
図4に示される吸着材からなる容器を作製した。容器内の湿度と外気の湿度とを測定した。結果を表1に示す。なお、細孔の平均孔径が、0.5~2μmの範囲内にない、他の吸放湿材からなる容器を用いて、上記と同様に容器内の湿度と外気の湿度とを測定し、これを比較例1とした。
【0026】
【0027】
表1から明らかなように、比較例品では50%前後の湿度が外気の湿度変化によって60%近くまで上昇したが、参考例1品は、外気の影響を受けることなく、50%前後の湿度を維持しており、外気からの水分を良好に捕集蓄積しており、優れた断湿性を有することがわかった。
【0028】
(試験例1)
試験例1として、実施例1に準じて、
図5に示されるように、マカロニ状のろ過材を作製し、ネットに入れ、フィルターを作製した。セシウムを含有させた試験水を、作製したフィルターに対して流し込み、ろ過材におけるセシウムの捕集蓄積機能を評価した。なお、比較例2としてゼオライトフィルターを用いた。評価結果を表2に示す。
【0029】
【0030】
表2から明らかなように、比較例品ではセシウムの捕集蓄積機能は特に確認できなかったが、試験例1品では、セシウムが大量に捕集蓄積されており、試験例1品の吸着材が放射性物質の捕集蓄積性に優れていることがわかった。このような捕集蓄積機能は、ゼオライトフィルターやメソポーラスフィルター(細孔の平均孔径が、0.5~2μmの範囲内外のもの及び非円柱状貫通細孔のものを含む)では確認できず、本発明特有の効果である。
【0031】
(試験例2)
試験例2として、
図6に示すように、実施例1に準じて得られた吸着材を含む製品(タイル)11を設置し、製品(タイル)11の表面にセロハンテープを付着させて剥がしたところ、セロハンテープの粘着面に粉が付着していなかった。なお、比較例3として、直径20~50nmのポアを有する珪藻土を含むタイル(市販品)12の表面にセロハンテープを付着させて剥がしたところ、セロハンテープの粘着面に粉が付着していた。このような結果から、本発明の吸着材を含む製品(タイル)には優れた耐摩耗性があることがわかった。
【0032】
(参考例2)
参考例2として、実施例1に準じて吸着材を含む製品(砂利)9を作製した。作製した砂利に水を撒いたところ、表3及び
図7に示すように、時間が経っても砂利表面の温度が外気温よりも低くなった。なお、比較例4として、直径20~50nmのポアを有する珪藻土を含む砂利(市販品)10に水を撒くと、砂利表面の温度は時間が経つと温度が高くなり、試験例4の砂利表面温度に比べて32℃高くなった。このような結果から、参考例2の吸着材を含む製品(砂利)には、優れた蒸散性能があることがわかった。
【0033】
【0034】
(参考例3)
参考例3として、実施例1に準じて得られた吸着材を含む製品(タイル)11を作製した。また、製品(タイル)11の構造を、顕微鏡(SEM)を用いて観察した。結果を
図12に示す。
図12の顕微鏡像から明らかな通り、製品(タイル)11に成型加工しても、良好な多孔質構造を有しており、多孔質構造を有している管状の微粒子(多孔質構造を有している破片を含む)が全面に観察された。また、
図8に示すように、吸着材を含む製品(タイル)11を設置し、作製したタイルに水を撒いたところ、時間が経ってもタイル表面の温度が外気温よりも低くなった。なお、比較例5として、直径20~50nmのポアを有する珪藻土を含むタイル(市販品)12に水を撒くと、タイルの表面の温度は時間が経つと温度が高くなり、参考例3の吸着材を含む製品(タイル)11の表面温度に比べて24.1℃高くなった。このような結果から、参考例3の吸着材を含む製品(タイル)には、優れた保水蒸散性があることがわかった。
また、表4に示すように参考例3の吸着材を含む製品(タイル)11の吸水率は、29%であり、気化冷却持続時間は10時間であった。比較例5のタイル12では、吸水率が2.2%であり、気化冷却持続時間は1時間であった。このような結果から参考例3の吸着材を含む製品(タイル)には、優れた吸水性及び気化冷却持続性があることがわかった。
【0035】
【0036】
(試験例3)
試験例3として、表5に示すように、アセトアルデヒド、トリメチルアミン、アンモニア、酢酸エチル等の物質を水に添加して悪臭組成物を調製し、実施例1に準じて得られた吸着材を含む製品(塗料)を居住空間の内壁に塗布し、調製した悪臭組成物を、トレイに1cc入れて居住空間に15分間静置した後、前記居住空間内の臭いを評価した。「◎」は、初期濃度に対して60%以上のガス吸着性能を示し、時間が経過してもガスが脱着しなかったものを示し、「△」は、初期濃度に対して60%以上のガス吸着を示したが、時間が経過するとガスが脱着したものを示し、「×」は、初期濃度に対してガス吸着性能がなかったものを示している。結果を以下の表5に示す。なお、比較例6―1は、ゼオライトが含まれる塗料(市販品)を内壁に塗布した居住空間を示し、比較例6―2は、直径20~50nmのポアを有する珪藻土を含む塗料(市販品)を内壁に塗布した居住空間を示す。
【0037】
【0038】
(試験例4)
試験例4として、実施例1に準じて得られた吸着材を含む製品(タイル)と市販品の珪藻土タイルとを用いて、地面に載置したタイルに対して、所定の高さから直径5cmの鉄球を落下させた。その結果、市販品の珪藻土タイルでは、割れが生じた高さでも、実施例品は割れが生じなかった。また、市販品の珪藻土タイルに、割れが生じた高さから、さらに1m以上高いところから鉄球を落下させても実施例品は割れが生じなかった。このことにより、実施例品は従来の珪藻土タイルに対して良好な強度を有することがわかった。
【0039】
(参考例4)
参考例4として、実施例1に準じて得られた30cm×30cm×1.2cmの吸着材を含む製品(タイル)と30cm×30cm×1.1cmの市販品の磁器質タイルとを用いて、それぞれのタイルを水に浸ける前に重量を計測した(w1)。その後、それぞれのタイルを水中に30分間浸漬後、重量計測を行った(w2)。下記式(1)を用いて、吸水率を求めた。なお、下記式(1)において、w1は吸水前のタイルの重量を示し、w2は吸水後のタイルの重量を示す。また、下記式(2)を用いて、1シートあたりの吸水重量を求めた。なお、下記式(2)において、w2は上記と同様であり、w3はタイルの体積を示す。結果を表6に示す。表6に示すように、参考例4の吸着材を含む製品(タイル)の吸水率は29%であり、1シートあたりの吸水重量は2.737g/cm3であった。また、市販品の磁器質タイルの吸水率は2.4%であり、1シートあたりの吸水重量は4.225g/cm3であった。このことにより、参考例4品は従来の磁器質タイルに対して吸水性により優れていることがわかった。また、重量が非常に軽く、取り扱い性に優れているため、建物に負荷をかけず、建物の屋上のタイルとしても適している。
【0040】
【0041】
【0042】