(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108979
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】移植機
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20240805BHJP
A01C 11/00 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
A01C11/02 342Z
A01C11/00 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013679
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 生吾
(72)【発明者】
【氏名】芝田 哲男
(72)【発明者】
【氏名】渡里 圭介
【テーマコード(参考)】
2B060
2B063
【Fターム(参考)】
2B060AC03
2B060AD09
2B060BA04
2B060BA07
2B060BB06
2B060CA04
2B060CA09
2B060CA11
2B060CA19
2B063AA06
2B063AA07
2B063AB01
2B063AB03
2B063BB05
2B063BB50
(57)【要約】
【課題】走行しながら植付作業を行っている最中、フロート側に位置決めされた施肥部によって圃場を整地しながら進むフロートの下側に安定的に施肥を行うことが可能であり、且つ、圃場面の凹凸や排藁等の異物に応じてフロートが円滑に上下揺動作動する移植機を提供することを課題とする。
【解決手段】植付フレーム側に支持されて植付を行う植付部及び該植付部の前側且つ下側に配置されたフロートを有する植付作業機を走行機体の後側に昇降可能に連結し、該フロートを支持部材によって植付フレーム側に上下揺動可能に支持し、施肥タンクからの肥料をフロート側に移送する施肥パイプを配管し、施肥パイプの先端側にはフロートの下側に施肥する施肥部を設け、施肥パイプの先端部又は施肥部を支持部材側に連結して支持することにより施肥部を位置決めする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場に施肥しながら植付を行うことができる移植機であって、
走行機体と、
昇降リンクによって前記走行機体の後側に昇降可能に連結され且つ植付作業を行う植付作業機と、
圃場への施肥を行う施肥装置と、を備え、
前記植付作業機は、該植付作業機のフレーム部の一部を構成し且つ後方に突出した植付フレームと、該植付フレーム側に支持され且つ圃場への植付を行う植付部と、該植付部よりも前寄り且つ下寄り箇所に配置され且つ圃場面に接地させるフロートと、該フロートを植付フレーム側に上下揺動可能に支持する少なくとも1つの支持部材と、を有し、
前記施肥装置は、施肥タンクと、該施肥タンクからの肥料を前記フロート側に移送する施肥パイプと、を有し、
前記施肥パイプの先端側には該施肥パイプによって移送されてくる肥料を前記フロートの下側に排出する施肥部が形成され、
前記施肥パイプの先端部又は前記施肥部を前記支持部材側に連結する少なくとも1つの連結部材を設け、
前記施肥部は、前記連結部材によって、前記フロートの上下揺動支点の前方に位置決めされた
ことを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記植付作業機は、前記植付部の植付深さが変更されるように、前記フロートを前記植付フレームに昇降可能に支持する支持機構を有し、
前記支持機構は、その少なくとも一部が前記支持部材によって構成され、
前記支持機構による前記フロートの昇降に連動して前記施肥部を昇降させる連動機構を設け、
前記連動機構は、一又は複数の前記連結部材によって構成され、
前記施肥部の昇降を許容するように、前記施肥部の少なくとも一部又は前記施肥パイプの少なくとも一部を変形可能に構成した
請求項1に記載の移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場に施肥しながら植付を行うことができる移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
走行機体と、昇降リンクによって走行機体の後側に昇降可能に連結され且つ植付作業を行う植付作業機と、圃場への施肥を行う施肥装置と、を備え、植付作業機は、該植付作業機のフレーム部の一部を構成し且つ後方に突出した植付フレームと、該植付フレーム側に支持され且つ圃場への植付を行う植付部と、該植付部よりも前寄り且つ下寄り箇所に配置され且つ圃場面に接地させるフロートと、該フロートを植付フレーム側に上下揺動可能に支持する支持部材と、を有し、施肥装置は、施肥タンクと、該施肥タンクからの肥料を前記フロートにおける上下揺動支点より前方の箇所まで移送する施肥パイプと、を有し、施肥パイプの移送下流側の端部である先端部には該施肥パイプによって移送されてくる肥料を前記フロートの下側に排出する施肥部が設けられ、施肥部をフロート側に係止する移植機が公知になっている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
上記文献の移植機によれば、走行時、フロート側に位置決めされた施肥部によって、圃場を整地しながら進むフロートの下側に安定的に施肥を行うことが可能である一方で、圃場面の凹凸や排藁等の異物に応じてフロートが上下揺動作動する際、施肥部又は施肥パイプを変形させる力が併せて必要になるため、施肥部又は施肥パイプがフロートのスムーズな上下揺動作動の妨げになる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、走行しながら植付作業を行っている最中、フロート側に位置決めされた施肥部によって圃場を整地しながら進むフロートの下側に安定的に施肥を行うことが可能であり、且つ、圃場面の凹凸や排藁等の異物に応じてフロートが円滑に上下揺動作動する移植機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、圃場に施肥しながら植付を行うことができる移植機であって、走行機体と、昇降リンクによって前記走行機体の後側に昇降可能に連結され且つ植付作業を行う植付作業機と、圃場への施肥を行う施肥装置と、を備え、前記植付作業機は、該植付作業機のフレーム部の一部を構成し且つ後方に突出した植付フレームと、該植付フレーム側に支持され且つ圃場への植付を行う植付部と、該植付部よりも前寄り且つ下寄り箇所に配置され且つ圃場面に接地させるフロートと、該フロートを植付フレーム側に上下揺動可能に支持する少なくとも1つの支持部材と、を有し、前記施肥装置は、施肥タンクと、該施肥タンクからの肥料を前記フロート側に移送する施肥パイプと、を有し、前記施肥パイプの移送下流側の端側である先端側には該施肥パイプによって移送されてくる肥料を前記フロートの下側に排出する施肥部が形成され、前記施肥パイプの先端部又は前記施肥部を前記支持部材側に連結する少なくとも1つの連結部材を設け、前記施肥部は、前記連結部材によって、前記フロートの上下揺動支点の前方に位置決めされたことを特徴とする。
【0007】
前記植付作業機は、前記植付部の植付深さが変更されるように、前記フロートを前記植付フレームに昇降可能に支持する支持機構を有し、前記支持機構は、その少なくとも一部が前記支持部材によって構成され、前記支持機構による前記フロートの昇降に連動して前記施肥部を昇降させる連動機構を設け、前記連動機構は、一又は複数の前記連結部材によって構成され、前記施肥部の昇降を許容するように、前記施肥部の少なくとも一部又は前記施肥パイプの少なくとも一部を変形可能に構成したものとしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
走行しながら植付作業を行っている最中、フロート側に位置決めされた施肥部によって、圃場を整地しながら進むフロートの下側に安定的に施肥を行うことが可能であるとともに、圃場面の凹凸や排藁等の異物に応じて、フロートを円滑に上下揺動作動させることが可能になる。
【0009】
前記植付作業機は、前記植付部の植付深さが変更されるように、前記フロートを前記植付フレームに昇降可能に支持する支持機構を有し、前記支持機構は、その少なくとも一部が前記支持部材によって構成され、前記支持機構による前記フロートの昇降に連動して前記施肥部を昇降させる連動機構を設け、前記連動機構は、一又は複数の前記連結部材によって構成され、前記施肥部の昇降を許容するように、前記施肥部の少なくとも一部又は前記施肥パイプの少なくとも一部を変形可能に構成したものによれば、状況に応じて植付深さを変更する際、それ連動して施肥深さも変わるため、状況に応じて植付を可能とした場合でも、意図した施肥を安定的に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明を適用した乗用型の移植機の全体側面図である。
【
図2】本発明を適用した乗用型の移植機の全体平面図である。
【
図3】植付作業機の下側の要部構成を示す側面図である。
【
図4】植付作業機の下側の要部構成を示す平面図である。
【
図5】支持機構及び連動機構の構成を示す側面図である。
【
図7】フロート及び施肥部を植付部に対して上昇させた状態を示す側面図である。
【
図8】フロート及び施肥部を植付部に対して下降させた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1,
図2は本発明を適用した乗用型の移植機の全体側面図及び全体平面図である。この移植機は、左右一対の前輪(走行部)1,1及び左右一対の後輪(走行部)2,2を有する走行機体3と、該走行機体3の後方に配置され且つ圃場への植付作業を行う植付作業機4と、該植付作業機6を走行機体に昇降可能に連結させる昇降リンク6を介して昇降可能に連結され且つ圃場への施肥を行う施肥装置7とを備えている。
【0012】
上記走行機体3は、前後輪1,2によって支持されたシャーシ3a上における前部に配置され且つその内部にエンジン(動力源)を収容するボンネット8と、前記シャーシ3a上におけるボンネット8の真後ろ側に配置され且つオペレータが乗り込む操縦部9とを有している。
【0013】
平面視で、操縦部8におけるオペレータが着座するシート10とその前方に配置され且つ操向操作を行うステアリングハンドル11との間の範囲と、該シート9の左右両側方の範囲とには、後方が開放されたコの字状をなす床面12が形成されている。床面12の後方には、該床面12よりも一段高いリヤステップ13が形成されている。このリヤステップ13は、平面視で、床面12の左斜め後方と、右斜め方向とにそれぞれ設けられている。
【0014】
上記昇降リンク6は、走行機体3の後部から後方に突出した平行リンクであり、植付作業機6を、その姿勢を一定に維持させながら、走行機体3に対して上下に移動させる。
【0015】
上記植付作業機4は、左右方向の角パイプ状に形成された横フレーム14と、横フレーム14側から前方斜め上方に急傾斜する苗載せ台16と、横フレーム14から後方に突出形成された前後方向の植付ケース(植付フレーム)17と、該植付ケース17側に支持され且つ苗載せ台16の背面に載置されたマット苗から苗を掻き取って圃場に植え付ける植付部18と、該植付ケース17の真下側に配置された整理フロート(フロート)19と、を有している。
【0016】
横フレーム14は、平面視で走行機体3の左右の幅方向の中間を通過する前後方向の仮想的な軸を支点として左右に回動可能(ローリング可能)に昇降リンク6の後端側に支持され、植付作業機4のフレーム部の一部(具体的には、主要部分)を構成している。
【0017】
苗載せ台16は、横フレーム14の全長よりも若干短い程度の左右幅を有し、横フレーム14によって下支えされている。植付ケース17は左右方向に並べて複数(図示する例では、4つ)設けられ、植付作業機4のフレーム部の一部を構成している。各植付ケース17は、横フレーム14の前方斜め下方の位置に配置され、その前端側が該横フレーム14に取り付け固定されている。植付ケース17の後端部における左右一方又は両方の側部側には、植付部18が支持されている。
【0018】
植付部18は、植付作業機4の植付条数と同数設けられている。図示する例では、最も左側の植付ケース17の左右両側に各別に設けられた一対の植付部18,18と、左から二番目の植付ケース17の左右両側に各別に設けられた一対の植付部18,18と、左から三番目の植付ケース17の右側に設けられた植付部18と、左から三番目の植付ケース17の右側に設けられた植付部18と、最も右側の植付ケース17の左右両側に各別に設けられた一対の植付部18,18と、が設けられ、植付条数が7条の植付作業機4に対応させている。
【0019】
整地フロート19は、複数の植付ケース17毎に個別に設けてもよいし、或いは、全植付ケース17中から選んだ一又は複数の植付ケース毎に個別に設けてもよい。図示する例では、前者を採用している。整地フロート19は、支持機構21によって植付ケース17に昇降可能に支持されている。植付フロート19を接地させた場合、圃場面に対して植付部18の上下位置が定まり、該植付部18による苗の植付深さも定まる。このため、支持機構21により整地フロート19を植付ケース17に対して昇降させた場合、その昇降に応じて植付深さも変更される。
【0020】
上記施肥装置7は、左右のリヤステップ13上に載置された供給ユニット22と、該供給ユニット22の直上に配置され且つ粒状の肥料が貯留されるホッパ状の施肥タンク23と、複数の植付部18毎に設けられ且つ施肥タンク23から供給ユニット22を介して流動してくる肥料を移送する複数の施肥パイプ24と、各施肥パイプ24の移送下流側の端部(先端部)側に形成され且つ該施肥タイプ24を流動する肥料を整地フロート19の下側に排出することにより圃場への施肥を行う施肥部26と、を有している。
【0021】
供給ユニット22には、複数の施肥パイプ24毎に個別に供給部(図示しない)が設けられている。各供給部は、施肥タンク23から対応する施肥パイプ24への肥料の流動の有無を切り換えることにより、該施肥パイプ24の先端側の施肥部26からの肥料の排出の有無を切り換える。この供給部は、走行動力や別途設けたアクチュエータによって駆動される。
【0022】
施肥パイプ24は、供給ユニット22から対象となる一の植付部18の真正面側(具体的には、フロート19の前部側)まで配管されている。さらに詳しく説明すると、図示する施肥パイプ24は、供給ユニット22から、まず、植付作業機4に向かって後方(さらに具体的には、後方斜め下方)に配管され、続いて、苗載せ台16に沿って下方に配管(具体的には、鉛直方向下側に配管され、続いて後方斜め下方に配管)され、その先端部が上述したフロート19の前部側に臨んだ状態になる。
【0023】
施肥パイプ24は、その複数の箇所がバンド等の係止部材27によって植付作業機4側に係止されて位置決めされる。ただし、このようにして、走行機体3と植付作業機4との間に配管された施肥パイプ24は、植付作業機4の走行機体3に対する昇降を許容するため、その全体又はその一部が変更可能に構成されている。
【0024】
ところで、整地フロート19がリンク機構21によって昇降された場合でも、整地フロート19及び施肥部26の互いの位置関係が一定に維持されるように、整地フロート19の昇降に連動して施肥部26を昇降させる連動機構28が設けられている。これによって、整地フロート19の上昇に伴って施肥部26も上方に変位する一方で、整地フロート19の下降に伴って施肥部26も下方に変位する。
【0025】
また、このような施肥部26の昇降を許容するため、施肥パイプ24及び施肥部26の一方又は両方は、その少なくとも一部が弾力的に変形可能に構成されている。
【0026】
以上のように構成される本移植機によれば、左右に並べられた複数の整地フロート19が圃場面に接地する位置(作業高さ)まで植付作業機4を下降させ且つ植付部18を植付駆動させた状態で走行機体3を前進させる作業走行によって、圃場での植付作業機を行う。一方、整地フロート19が圃場面から所定の距離だけ離間する高さ(非作業高さ)まで植付作業機4を上昇させた状態で、走行機体3を路上走行させる。
【0027】
植付作業機4を作業高さに下降させた状態で、走行機体3を前進走行させた場合、接地された整理フロート19によって圃場面が均平(整地)される。このようにして整地された圃場に対して、整地フロート19の下面よりも下方に突出した状態の施肥部26から肥料が排出することにより、圃場への施肥を実行する。このようにして施肥を行われた部分に対し、施肥部26の真後ろ側に配置された植付部18によって植付作業が行われる。
【0028】
また、圃場の状態によっては、整地フロート19を植付作業機4のフレーム部(具体的には、植付ケース17)に対して昇降させ、植付深さの調整を行う。上述した通り、植付深さの調整に連動して施肥部26も昇降するため、施肥高さは常に最適に維持される。
【0029】
次に、
図3及び
図4に基づいて植付作業機4の下部側の構成について詳述する。
【0030】
図3,
図4は植付作業機の下側の要部構成を示す側面図及び平面図である。植付部18は、その全長方向の中間部を支点として植付ケース17の側面側に回転可能に支持された回転ケース29と、該回転ケース29の全長方向の両側の各端部における植付ケース17から遠い側の側部側に配置された植付爪31,31と、を有している。
【0031】
この植付部18を植付駆動させた場合、回転ケース29は、左側面視で反時計周りに回転駆動され、この最中、植付爪31,31は、回転ケース29側に支持された端部である基端部から先端部に向かって前方斜め下方を向いた一定の姿勢で保持されるように、該回転ケース29に対する相対的な向きが変化し、上述した苗載せ台16上からの苗の掻き取る処理と、掻き取った苗の圃場への植え付ける処理とが交互に繰り返えす。
【0032】
整地フロート19は、その前部を前方に向かって上方傾斜する傾斜部32とし、該整地フロート19において平面視で施肥部26が配置される箇所である前寄り箇所には、施肥パイプ24の先端部又は施肥部26を上下に挿通させる挿通部19a,19aが形成されている。また、整地フロート19は、この挿入部19a,19aが形成された箇所から後方に延設された後方延設部33も一体的に(図示する例では一体で)有している。
【0033】
整地フロート19が支持された植付ケース17の左右片側の側部にのみ植付部18が設置されている場合、該整地フロート19には、単一の挿通部19aが形成される一方で、該植付ケース17の左右両方の側部側の夫々に植付部18が設置されている場合、整地フロート19の前寄り箇所の左右夫々に挿通部19aが形成される。この挿通部19aは、整地フロート19の表裏を貫通するように穿設された挿通孔によって構成してもよいが、図示する例では、整地フロート19に形成された切欠き状部を前記挿通部19aとしている。
【0034】
ちなみに、後方延設部33は、整地フロート19に2つの挿通部19a,19aを設ける場合には、その間から後方に突出形成される。一方、整地フロート19に1つの挿入部19aを設ける場合には、一対の後方延設部33を左右に並べて設け、その間に切欠き状の挿入部19aを配置形成する。
【0035】
また、整理フロート19の整地面となる下面からは溝形成部である溝切34が下方に向かって突出している。この溝切34は、一の整理フロート19において挿通部19a,19a毎に設けられる。例えば、2つの挿通部19a,19aが形成された整地フロート19には、2つの溝切34,34が設けられている。各溝切24は、その左右位置が対応する挿通部19aと一致又は略一致している。
【0036】
この溝切34は、整地フロート19の下面における傾斜部32の前後方向途中部から挿通部19aの前端側に至る範囲に一体的に設けられ、その厚み方向が左右に向けられ且つ前後に長いリブ状に成形されている。溝切34における整地フロート19からの突出量は後方に向かって次第に増加しており、その後端部は下方に向かって後方に傾斜している。溝切34の前寄り部分は、その左右幅が前方に向かって次第に減少する形状に成形している。
【0037】
さらに、整地フロート19の後方延設部33の下面側には、挿通部19a毎に板状の土寄せ具36が左右揺動可能に支持されている。各土寄せ具36は、対応する一の挿通部19aに挿通させた施肥部26の後方の位置で且つ該施肥部26の真後ろに配置された植付部18よりも前側の位置に配置されている。土寄せ具36の前部には自身の揺動支点36aが形成され、該土寄せ具3における揺動支点36aの後方には、該揺動支点36aを中心とする円弧状の長孔36bが穿設されている。この長孔36bには、整地フロート19にネジ形状されてボルト等の保持具37が挿通されている。
【0038】
土寄せ具36は、左右揺動によって、前後方向に沿う格納姿勢と、後方に向かって整理フロート19の左右幅の中心部から遠ざかる側に傾斜した展開姿勢とに切り換え可能に構成されている。土寄せ具36は、保持具37によって、夫々の姿勢で解除可能に位置決め保持される。
【0039】
土寄せ具36は、格納姿勢への切換時、整地フロート19から左右方向への突出量が最小になり土寄せ作用が最小化される一方で、展開姿勢への切換時、整地フロート19から左右方向への突出量が最大になり土寄せ作用が最大化される。ちなみに、展開姿勢に切り換えられた土寄せ具36の真正面側には、挿通部19aに挿通されて整地フロート19から下方に突出した部分が位置した状態になる。
【0040】
施肥部26は、上方が開放されたチャネル状に形成され且つ側面視で後方斜め下方に突出する金属製又は樹脂製のガイド部材38と、該ガイド部材38の上端部と施肥パイプ24の先端部とを連続的に接続する接続パイプ39とを有している。施肥パイプ24は、その先端部が上述した係止部材27によって係止されているが、接続パイプ39が蛇腹状に形成されてフレキシブル且つ弾力的に変更可能であるため、ガイド部材38の位置や姿勢は、接続パイプ39が曲げ形成する範囲で、変更させることが可能である。このような状態のガイド部材38を、連動機構28を介して、リンク機構21側に連結して支持することにより、施肥部26が植付作業機4のフレーム部側に支持されている。
【0041】
以上のような植付作業機4の下部側の構成によれば、土寄せ具36を展開姿勢に切り換え、植付作業機4を作業高さに下降させ、植付部18を植付駆動させ、施肥ポンプが駆動されて施肥部26から肥料が外部に排出される状態で、走行機体3を前進走行させた場合、圃場が、整理フロート19によって整地されると同時に、溝切34により、前後方向の施肥溝を順次凹設していく。
【0042】
この前後方向の施肥溝には、前進走行時、圃場面に対して前方に移動する施肥部26によって順次施肥が実行される。施肥溝において、施肥が完了した部分は、展開姿勢の土寄せ具6による土寄せによって順次埋められてく。このようにして施肥が完了された部分に対して、植付部18によって順次苗を受け付けられる。
【0043】
ちなみに、施肥深さは、上述の構成によれば、整地フロート19からの溝切34の下方突出量に応じたものになり、この施肥深さは、植付部18による苗の植付深さの合わせて最適に設定されている。
【0044】
次に、
図3乃至
図8に基づき、支持機構21及び連動機構28について詳述する。
【0045】
図5は支持機構及び連動機構の構成を示す側面図であり、
図6は
図5の要部側面図である。まず支持機構21について説明すると、該支持機構21は、平行リンク機構を構成する複数のリンク42と、該リンク機構41,42の後端側に整地フロート19を取り付け支持する支持ブラケット(支持部材)43とを有している。
【0046】
リンク41,42は上下一対で設けられている。上側のリンク41であるトップリンクは、その一端部が植付ケース17の側部に上下回動可能に連結され、その他端部が支持ブラケット43に上下回動可能に連結されている。下側のリンク42であるロアリンクは、その一端部が植付ケース17の直下に回動可能に支持された左右方向の支持軸44(
図4参照)と一体回転するように該支持軸44に取り付け固定され、その他端部が支持ブラケット43に上下回動可能に連結されている。
【0047】
トップリンク41及びロアリンク42は、左右方向の連結ピン46,47によって、支持ブラケット43に個別に連結される。一方、支持ブラケット43には、2つの連結ピン46,47を各別に挿通させる2つの連結孔43a,43bが穿設されている。ロアリンク42側の連結ピン47を挿通させる下側の連結孔43bは、該連結ピン47を嵌合状態で挿通させる円形をなす一方で、トップリンク41側の連結ピン46を挿通させる上側の連結孔43aは、下側の連結孔43bを中心とした円弧状の長孔である。このようにしてリンク41,42の後端側に支持される支持ブラケット43には、整地フロート19が一体的に取り付け固定されている。
【0048】
該構成によれば、整地フロート19は、下側の連結ピン47を支点として、上側の連結ピン46が長孔43a内を移動する範囲で、植付作業機4のフレーム部に対して、上下揺動作動するように、植付ケース17側に支持される。そして、整地フロート19は、この上下揺動によって、前後方向に沿う(具体的には前後水平)基本姿勢と、前方に向かって上方に傾斜した作動姿勢との間で、姿勢切換可能に構成される(
図3参照)。
【0049】
また、整地フロート19は弾性部材48によって基本姿勢側に常時付勢され、無負荷時には、整地フロート19は基本姿勢で保持される。一方、植付作業機7を作業高さに下降させて走行機体3を前進走行させている際、整地フロート19に対して作業姿勢側への所定以上の力が作用した場合、該整理フロート19が弾性部材48の付勢力に抗して、作業姿勢に切り換えられる。
【0050】
弾性部材48について詳細を説明すると、この弾性部材48として、下側の連結ピン47の外周面側に装着されたトーションスプリングを設けている。このトーションスプリング48の一方のアーム部48aが上側の連結ピン46に当接し、他方のアーム部48bが整地フロート19の上面に設けられたアングル状の係止部材49に係止されることにより、上述した付勢力を発生させている。
【0051】
係止部材49における側面視でL字状をなす一方側の部分は整地フロート19の上面側に取り付けられ、その他方側の部分は整理フロート19の上面側から上方に突出しており、この突出した部分にアーム部48bが係止されている。係止部材49は、アーム部48bを係止する位置を上下で変更可能な構造を有し、この上下位置を調整によって整地フロート19の基本姿勢側への付勢力を変更することが可能である。
【0052】
このように構成される支持機構21は、複数の整理フロート19毎に個別に設けられているが、支持軸44は共通化され、複数の支持軸21のロアリンク42は、互いに同一又は略同一の姿勢で、該支持軸21に取り付け固定されている。このため、支持軸21を回動させた場合、左右の並べられた複数の整地フロート19の全てが互いに同一又は略同一の高さに昇降され、左右に並べられた複数の植付部18の全ての植付深さが互いに同一又は略同一の植付深さに設定変更される。
【0053】
この支持軸21の外周面側から苗載せ台16に沿って上方前側に傾斜する突出する調整レバー51が設けられている。この調整レバー51を、前後揺動させることによって、支持軸21がその軸回りに回動操作され、複数の植付部18の植付深さが同時に変更される。
【0054】
ちなみに、植付作業機4のフレーム部側に固定された状態で苗載せ台16の正面側から前方に一体的に延設された板状の係止部材52には、調整レバー51の中途部が挿通される前後方向の係止孔52aが穿設され、調整レバー51は、その前後揺動範囲が該調整レバー51の係止孔52a内の前後可動範囲に限定され、該係止孔a53から左右一方側(図示する例では、左側)に凹状に切欠き形成された係止部52bが前後に複数並べて形成され、調整レバー51の中途部から係止部52b側に突出形成された板状の被係止部51aを複数の係止部52bの何れかに係止させることによって、支持軸21が回動停止され、各植付部18が該支持軸21の回転位置に対応した植付深さに設定される(
図4参照)。
【0055】
続いて、連動機構28ついて説明すると、該連動機構28は、施肥部26を支持機構28(具体的には、支持ブラケット43側)に連結して支持する一又は複数(本例では、複数)の連結部材53,54,54,56を有している。一の連結部材53は、側面視で上方及び前方に突出するL字状のプレート部材である連結ブラケットであり、その他の連結部材54は、対応する施肥部26のガイド部材38の側面側から後方に延設され且つ該ガイド部材38に固定された固定具であり、その他の連結部材56は整地フロート19の直上に配置された左右方向の棒状に形成された連結フレームである。
【0056】
連結フレーム56は、一の整理フロート19側に設けられた左右一対の施肥部26,26の夫々に固定された固定具54,54同士を連結して固定している。連結ブラケット53は、その前端部が連結フレーム26の中途部に取り付け固定され、その上部の上下2箇所に、上述した連結ピン46,47によって、上下のリンク41,42を上下回動自在に連結している。
【0057】
連結ブラケット53における連結ピン46,47を挿通させる連結孔53a,53bは、該連結ピン46,47を嵌合状態で挿通させる丸孔であり、上述した支持ブラケット43のような上下揺動作動を許容する融通機能のような構造は有していないため、支持機構21による昇降作動中、連動機構28及び左右一対の施肥部26,26の姿勢は常に同一又は略同一に保持される。
【0058】
すなわち、整地フロート19が上下揺動作動した場合でも、施肥部26は後方に向かって下方傾斜した姿勢で保持される。一方、
図7及び
図8に示す通り、整地フロート19が支持機構21によって昇降された場合、それに連動して、施肥部26も同一の変位量分、上下に移動し、施肥深さと植付深さとの相対的な位置関係は一定又は略一体に保持される。
【0059】
以上のように構成される本移植機によれば、植付作業機4を作業高さに下降させて植付部18を植付駆動させた状態で圃場を走行する作業走行時、圃場面の凹凸や異物によって整理フロート19が上下揺動作動する際、施肥部26が整地フロート19側に係止されていないため、その作動の妨げになることがなく、整地フロート19が異物や凹凸をスムーズに乗り越えることができる。
【0060】
なお、施肥タンク23及び供給ユニット22を植付作業機4側に配置すれば、施肥パイプ24の少なくとも一部を変更可能に構成することは必須ではない。
【0061】
また、施肥パイプ24の先端側に該施肥パイプ24とは別体の施肥部26を設ける例について説明したが、この施肥部26を施肥パイプ24の先端側に一体で設けてもよい。
【0062】
また、調整レバー51を省略し、電動モータ等のアクチュエータによって支持軸21を回転させ、植付深さを変更するようにしてもよい。
【0063】
さらに、上述の形態では、整地フロート19を上下揺動可能に植付ケース17側に支持する支持部材として支持ブラケット53を1つ設けたが、これを複数設けてもよい。また、支持機構21を省略して、一又は複数の支持部材53によって整地フロート19を上下揺動可能に、直接的に植付ケース17に設けてもよい。
【0064】
また、整地フロート19の真上に配置された植付ケース17の片側の側部に植付部18のみが設けられ、それに対応して一の施肥部26のみが該整地フロート19側に設けられている場合、連結フレーム56は必須ではなく、連結ブラケット53に固定具54を直接連結してもよい。さらには、連結ブラケット53の前端部に直接的に施肥部26を係止してもよい。
【0065】
また、連動機構28は、施肥部26を支持機構21に連結して係止したが、施肥パイプ24の先端部を支持機構21に連結して支持してもよい。この場合には、施肥パイプ24自体の少なくとも一部(特に、先端寄り部分)をフレキシブルに変更可能な構造とする必要がある。
【0066】
また、肥料は、液状のものを用いてもよく、その場合、供給部を、施肥タンク23から対応する施肥パイプ24に肥料を圧送する供給ポンプによって構成してもよい。
【符号の説明】
【0067】
3 走行機体
4 植付作業機
6 昇降リンク
7 施肥装置
17 植付ケース(植付フレーム)
18 植付部
19 整地フロート(フロート)
21 支持機構
23 施肥タンク
24 施肥パイプ
26 施肥部
28 連動機構
43 支持ブラケット(支持部材)
53 連結ブラケット(連結部材)
54 固定具(連結部材)
56 連結フレーム(連結部材)