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特開2024-108996ワイヤレス電力伝送システム、供給装置、および車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108996
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】ワイヤレス電力伝送システム、供給装置、および車両
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/80 20160101AFI20240805BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20240805BHJP
   H02J 50/90 20160101ALI20240805BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20240805BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20240805BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20240805BHJP
   B60L 53/126 20190101ALI20240805BHJP
   B60L 53/65 20190101ALI20240805BHJP
   B60L 53/66 20190101ALI20240805BHJP
   B60L 53/67 20190101ALI20240805BHJP
【FI】
H02J50/80
H02J50/10
H02J50/90
H04W84/10 110
B60M7/00 X
B60L5/00 B
B60L53/126
B60L53/65
B60L53/66
B60L53/67
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094317
(22)【出願日】2023-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2023013400
(32)【優先日】2023-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】前村 雅人
(72)【発明者】
【氏名】津下 聖悟
(72)【発明者】
【氏名】池村 亮祐
(72)【発明者】
【氏名】金▲崎▼ 正樹
(72)【発明者】
【氏名】角谷 勇人
(72)【発明者】
【氏名】山口 宜久
(72)【発明者】
【氏名】大林 和良
(72)【発明者】
【氏名】谷 恵亮
【テーマコード(参考)】
5H105
5H125
5K067
【Fターム(参考)】
5H105BA09
5H105BB05
5H105CC04
5H105DD10
5H105EE12
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC27
5H125CC03
5H125CC04
5H125CC06
5H125DD02
5H125EE47
5H125EE51
5H125EE55
5K067AA21
5K067DD11
(57)【要約】
【課題】地上側の供給装置と走行中の車両とがそれぞれサーバとの間で無線通信する場合に応答性を高くできるとともに通信量を低減させること。
【解決手段】道路に設置された一次コイルを有する供給装置と、一次コイルから非接触で伝送された電力を受け取る二次コイルを有する車両と、供給装置および車両と広域無線通信により通信可能に接続されるサーバと、を備えたワイヤレス電力伝送システムであって、供給装置は、狭域無線通信による車両からの信号を受信するよりも前に供給装置の識別情報をサーバに送信し、サーバは、供給装置の識別情報と車両の情報とに基づいて、互換性のある供給装置と車両との組み合わせからなる互換性リストを供給装置に送信し、供給装置は、狭域無線通信による車両からの信号を受信した場合に、互換性リストに基づいて車両とのペアリングを行う。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路に設置された一次コイルを有する供給装置と、
前記一次コイルから非接触で伝送された電力を受け取る二次コイルを有する車両と、
前記供給装置および前記車両と広域無線通信により通信可能に接続されるサーバと、
を備え、
前記供給装置と前記車両との間は狭域無線通信により通信可能であり、前記供給装置は前記道路を走行中の前記車両に非接触で電力を伝送するワイヤレス電力伝送システムであって、
前記供給装置は、狭域無線通信による前記車両からの信号を受信するよりも前に前記供給装置の識別情報を前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記供給装置の識別情報と前記車両の情報とに基づいて、互換性のある前記供給装置と前記車両との組み合わせからなる互換性リストを前記供給装置に送信し、
前記供給装置は、狭域無線通信による前記車両からの信号を受信した場合に、前記互換性リストに基づいて前記車両とのペアリングを行う
ことを特徴とするワイヤレス電力伝送システム。
【請求項2】
狭域無線通信により前記供給装置が前記車両から受信する信号は、前記車両の識別情報であり、
前記互換性リストは、前記車両の識別情報を含み、
前記供給装置は、狭域無線通信により前記車両から取得した前記車両の識別情報と、広域無線通信により事前に前記サーバから取得した前記互換性リストとに基づいて、互換性のある車両とペアリングする
ことを特徴とする請求項1に記載のワイヤレス電力伝送システム。
【請求項3】
前記サーバは、
受電可能な前記車両から送信された車両識別情報を受信した場合、当該車両識別情報に紐づけられた車両情報を含む識別情報リストに登録し、
前記供給装置の識別情報を受信した場合、前記識別情報リストから当該供給装置と互換性のある前記車両の情報を抽出して前記互換性リストを生成する
ことを特徴とする請求項2に記載のワイヤレス電力伝送システム。
【請求項4】
前記サーバは、
前記供給装置の位置情報と前記車両の位置情報とに基づいて前記供給装置の近傍領域内に位置する前記車両を特定し、
特定された前記車両の情報に絞られた前記互換性リストを前記近傍領域に該当する前記供給装置へと送信する
ことを特徴とする請求項1に記載のワイヤレス電力伝送システム。
【請求項5】
前記サーバは、
前記近傍領域に該当する前記供給装置と互換性を有する互換性トークンを前記特定された車両に送信し、
前記近傍領域に該当する前記供給装置に互換性トークンを送信し、
前記車両は、前記互換性トークンに関する情報を狭域無線通信により前記供給装置に送信し、
前記供給装置は、前記サーバから受信した互換性トークンと前記車両から受信した前記互換性トークンに関する情報との互換性を確認できた場合に当該車両に対する電力供給動作を行う
ことを特徴とする請求項4に記載のワイヤレス電力伝送システム。
【請求項6】
前記供給装置は、
地上への敷設時に前記供給装置の識別情報と位置情報とを含む供給装置情報を前記サーバに送信し、
地上への敷設後に前記位置情報に変更が生じた場合、前記位置情報の変更情報を前記サーバに送信し、
前記サーバは、
前記供給装置情報を用いて前記近傍領域内に位置する車両を特定し、
前記位置情報の変更情報を受信した場合、前記位置情報の変更情報に基づいて前記互換性リストを更新する
ことを特徴とする請求項5に記載のワイヤレス電力伝送システム。
【請求項7】
前記車両は、当該車両の近くを走行中の別の車両との間で車車間通信による車両情報の送信および受信が可能であり、
前記車車間通信が可能な複数の車両のなかから代表した車両が、前記複数の車両ごとの車両情報をまとめて前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記代表した車両から前記複数の車両の車両情報を受信した場合に、前記複数の車両に対応する前記互換性リストを前記代表した車両に送信し、
前記代表した車両は、前記サーバから前記複数の車両に対応する互換性リストを受信した場合に、前記車車間通信を行った複数の車両に対して前記互換性リストを送信する
ことを特徴とする請求項6に記載のワイヤレス電力伝送システム。
【請求項8】
前記サーバは、所定時間が経過するごとに前記互換性リストまたは前記互換性トークンを更新する
ことを特徴とする請求項7に記載のワイヤレス電力伝送システム。
【請求項9】
前記車両は、所定時間が経過するごとに前記車両の情報を前記サーバに送信する
ことを特徴とする請求項8に記載のワイヤレス電力伝送システム。
【請求項10】
前記車両は、所定移動距離だけ走行した場合または前記供給装置の近傍領域に進入した場合に前記車両の情報を前記サーバに送信する
ことを特徴とする請求項9に記載のワイヤレス電力伝送システム。
【請求項11】
前記車両は、
自車両が起動した際に前記車両の情報を前記サーバに送信し、
自車両の走行が終了した際に情報消去の要求信号を前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記情報消去の要求信号を受信した場合に当該要求信号を送信した車両に関する情報を前記互換性リストから消去する
ことを特徴とする請求項10に記載のワイヤレス電力伝送システム。
【請求項12】
前記サーバは、
前記車両から送信された前記車両の情報を管理する第1管理サーバと、
前記供給装置から送信された前記供給装置の情報を管理する第2管理サーバと、
前記車両と前記供給装置とによるワイヤレス電力伝送に関する情報を管理する第3管理サーバと、を含み、
前記第3管理サーバは、
前記第1管理サーバから前記車両の情報のうちのワイヤレス電力伝送に関係する情報を取得し、
前記第2管理サーバから前記供給装置の情報のうちのワイヤレス電力伝送に関する情報を取得し、
前記第1管理サーバおよび前記第2管理サーバから取得した前記情報に基づいて前記互換性リストを生成する
ことを特徴とする請求項4から11のうちのいずれか一項に記載のワイヤレス電力伝送システム。
【請求項13】
道路に設置された一次コイルを含む一次装置と、
車両との間で狭域無線通信を行う第1通信装置と、
サーバとの間で広域無線通信を行う第2通信装置と、
前記一次装置と前記第1通信装置と前記第2通信装置とを制御する制御装置と、
を備え、
前記道路を走行中の車両に前記一次コイルから非接触で電力を伝送する供給装置であって、
前記第2通信装置は、
狭域無線通信による前記車両からの信号を前記第1通信装置が受信するよりも前に当該供給装置の識別情報を前記サーバに送信し、
当該供給装置と互換性のある前記車両の情報がリスト化された互換性リストを前記サーバから受信し、
前記制御装置は、狭域無線通信による前記車両からの信号を前記第1通信装置が受信した場合に、前記互換性リストに基づいて前記車両とのペアリングを行う
ことを特徴とする供給装置。
【請求項14】
前記第2通信装置は、前記サーバから、当該供給装置の近傍領域内に位置する前記車両として特定された前記車両の情報に絞られた前記互換性リストを受信する
ことを特徴とする請求項13に記載の供給装置。
【請求項15】
前記第2通信装置は、前記サーバから互換性トークンを受信し、
前記第1通信装置は、前記車両から前記互換性トークンに関する情報を受信し、
前記制御装置は、前記サーバから受信した互換性トークンと前記車両から受信した前記互換性トークンに関する情報との互換性を確認できた場合に当該車両に対する電力供給動作を行う
ことを特徴とする請求項14に記載の供給装置。
【請求項16】
前記供給装置は、
地上への敷設時に前記供給装置の識別情報と位置情報とを含む供給装置情報を前記サーバに送信し、
地上への敷設後に前記位置情報に変更が生じた場合、前記位置情報の変更情報を前記サーバに送信する
ことを特徴とする請求項15に記載の供給装置。
【請求項17】
道路に設置された一次コイルから非接触で伝送された電力を受け取る二次コイルを含む二次装置と、
前記一次コイルを含む地上側の供給装置との間で狭域無線通信を行う第3通信装置と、
サーバとの間で広域無線通信を行う第4通信装置と、
前記二次装置と前記第3通信装置と前記第4通信装置とを制御する制御装置と、
を備え、前記道路を走行中に前記一次コイルから非接触で伝送された電力を受け取る車両であって、
前記第4通信装置は、走行中の当該車両が受電可能な状態である場合に当該車両の識別情報を前記サーバに送信し、
前記第3通信装置は、当該車両が前記道路を走行中に当該車両の識別情報を前記地上側の供給装置に送信し、
前記制御装置は、前記供給装置との狭域無線通信によって前記供給装置とのペアリングを行う
ことを特徴とする車両。
【請求項18】
前記第4通信装置は、前記供給装置の近傍領域内に位置する車両を対象とした互換性トークンを前記サーバから受信し、
前記第3通信装置は、前記互換性トークンに関する情報を狭域無線通信により前記供給装置に送信し、
前記互換性トークンは、前記近傍領域に該当する前記供給装置と互換性を有する
ことを特徴とする請求項17に記載の車両。
【請求項19】
前記第3通信装置は、自車両の近くを走行中の別の車両との間で車車間通信による車両情報の送信および受信を行い、
前記車車間通信が可能な複数の車両のなかから代表した車両が、前記複数の車両ごとの車両情報をまとめて前記サーバに送信し、
前記代表した車両は、前記サーバから前記複数の車両に対応する互換性リストを受信した場合に、前記車車間通信を行った複数の車両に対して前記互換性リストを送信する
ことを特徴とする請求項18に記載の車両。
【請求項20】
前記第4通信装置は、
自車両が起動した際に前記車両の情報を前記サーバに送信し、
自車両の走行が終了した際に情報消去の要求信号を前記サーバに送信する
ことを特徴とする請求項19に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレス電力伝送システム、供給装置、および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、走行中の車両に非接触で電力を伝送するワイヤレス電力伝送システムにおいて、走行中の車両とサーバとが通信可能に接続され、サーバから走行中の車両へと走行支援情報を提供することが開示されている。走行支援情報は、走行レーンの供給装置から伝送される電力の充電効率を向上させるための情報であり、充電効率が所定値以上となる条件を満たす車両の走行位置および車速を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-228047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地上側の供給装置から走行中の車両へ非接触で電力を伝送するシステムでは、サーバと車両との間の通信(広域無線通信)とは別に、サーバと地上側の供給装置との間の通信(広域無線通信)が行われる。しかしながら、サーバを介した車両と供給装置との間の通信(広域無線通信)によって互換性チェックやペアリングを行う場合、高い応答性と通信量の低減とを両立させるためにはどのような処理手順で行うとよいのか、開発の余地がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、地上側の供給装置と走行中の車両とがそれぞれサーバとの間で無線通信する場合に応答性を高くできるとともに通信量を低減させることができるワイヤレス電力伝送システム、供給装置、および車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るワイヤレス電力伝送システムは、道路に設置された一次コイルを有する供給装置と、前記一次コイルから非接触で伝送された電力を受け取る二次コイルを有する車両と、前記供給装置および前記車両と広域無線通信により通信可能に接続されるサーバと、を備え、前記供給装置と前記車両との間は狭域無線通信により通信可能であり、前記供給装置は前記道路を走行中の前記車両に非接触で電力を伝送するワイヤレス電力伝送システムであって、前記供給装置は、狭域無線通信による前記車両からの信号を受信するよりも前に前記供給装置の識別情報を前記サーバに送信し、前記サーバは、前記供給装置の識別情報と前記車両の情報とに基づいて、互換性のある前記供給装置と前記車両との組み合わせからなる互換性リストを前記供給装置に送信し、前記供給装置は、狭域無線通信による前記車両からの信号を受信した場合に、前記互換性リストに基づいて前記車両とのペアリングを行うことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、供給装置と車両とがペアリングするタイミングでサーバとの広域無線通信が不要となるため、高い応答性を確保することができる。また、互換性のある車両情報に絞られた互換性リストがサーバから供給装置に送信されるため、サーバと供給装置との間の通信量を低減することができる。
【0008】
また、狭域無線通信により前記供給装置が前記車両から受信する信号は、前記車両の識別情報であり、前記互換性リストは、前記車両の識別情報を含み、前記供給装置は、狭域無線通信により前記車両から取得した前記車両の識別情報と、広域無線通信により事前に前記サーバから取得した前記互換性リストとに基づいて、互換性のある車両とペアリングしてもよい。
【0009】
この構成によれば、供給装置は狭域無線通信による車両からの車両識別情報を受信することにより、互換性チェックとペアリングとを行うことが可能である。
【0010】
また、前記サーバは、受電可能な前記車両から送信された車両識別情報を受信した場合、当該車両識別情報に紐づけられた車両情報を含む識別情報リストに登録し、前記供給装置の識別情報を受信した場合、前記識別情報リストから当該供給装置と互換性のある前記車両の情報を抽出して前記互換性リストを生成してもよい。
【0011】
この構成によれば、識別情報リストから情報が抽出された互換性リストを参照してペアリングするため、高い応答性を確保することができる。
【0012】
また、前記サーバは、前記供給装置の位置情報と前記車両の位置情報とに基づいて前記供給装置の近傍領域内に位置する前記車両を特定し、特定された前記車両の情報に絞られた前記互換性リストを前記近傍領域に該当する前記供給装置へと送信してもよい。
【0013】
この構成によれば、車両と供給装置との位置情報に基づいて情報を絞り込むことができるため、広域無線通信における通信量を低減させることができる。
【0014】
また、前記サーバは、前記近傍領域に該当する前記供給装置と互換性を有する互換性トークンを前記特定された車両に送信し、前記近傍領域に該当する前記供給装置に互換性トークンを送信し、前記車両は、前記互換性トークンに関する情報を狭域無線通信により前記供給装置に送信し、前記供給装置は、前記サーバから受信した互換性トークンと前記車両から受信した前記互換性トークンに関する情報との互換性を確認できた場合に当該車両に対する電力供給動作を行ってもよい。
【0015】
この構成によれば、供給装置が互換性トークンを用いて車両を認証できるため、セキュリティが向上する。
【0016】
また、前記供給装置は、地上への敷設時に前記供給装置の識別情報と位置情報とを含む供給装置情報を前記サーバに送信し、地上への敷設後に前記位置情報に変更が生じた場合、前記位置情報の変更情報を前記サーバに送信し、前記サーバは、前記供給装置情報を用いて前記近傍領域内に位置する車両を特定し、前記位置情報の変更情報を受信した場合、前記位置情報の変更情報に基づいて前記互換性リストを更新してもよい。
【0017】
この構成によれば、供給装置の位置情報に変更が生じた際に供給装置からサーバに情報を送信すればよいので、供給装置からサーバへ情報を送信する頻度を抑えることができる。
【0018】
また、前記車両は、当該車両の近くを走行中の別の車両との間で車車間通信による車両情報の送信および受信が可能であり、前記車車間通信が可能な複数の車両のなかから代表した車両が、前記複数の車両ごとの車両情報をまとめて前記サーバに送信し、前記サーバは、前記代表した車両から前記複数の車両の車両情報を受信した場合に、前記複数の車両に対応する前記互換性リストを前記代表した車両に送信し、前記代表した車両は、前記サーバから前記複数の車両に対応する互換性リストを受信した場合に、前記車車間通信を行った複数の車両に対して前記互換性リストを送信してもよい。
【0019】
この構成によれば、複数の車両のなかから代表した車両がサーバと通信し、代表した車両による通信のハブ化によってサーバと車両との通信頻度を減らすことができる。
【0020】
また、前記サーバは、所定時間が経過するごとに前記互換性リストまたは前記互換性トークンを更新してもよい。
【0021】
この構成によれば、サーバ側が更新トリガとなり、サーバにより情報を定期的に自動更新することができる。
【0022】
また、前記車両は、所定時間が経過するごとに前記車両の情報を前記サーバに送信してもよい。
【0023】
この構成によれば、車両側が更新トリガとなり、車両情報を定期的にサーバに対して送信することができる。
【0024】
また、前記車両は、所定移動距離だけ走行した場合または前記供給装置の近傍領域に進入した場合に前記車両の情報を前記サーバに送信してもよい。
【0025】
この構成によれば、車両側が更新トリガとなり、車両の移動状態に応じて車両情報をサーバに対して送信することができる。
【0026】
また、前記車両は、自車両が起動した際に前記車両の情報を前記サーバに送信し、自車両の走行が終了した際に情報消去の要求信号を前記サーバに送信し、前記サーバは、前記情報消去の要求信号を受信した場合に当該要求信号を送信した車両に関する情報を前記互換性リストから消去してもよい。
【0027】
この構成によれば、車両状態に応じて車両側から消去信号が送信されるため、不要な車両情報を互換性リストから消去することにより、供給装置へ送信される互換性リストの情報量を減らすことができる。
【0028】
また、前記サーバは、前記車両から送信された前記車両の情報を管理する第1管理サーバと、前記供給装置から送信された前記供給装置の情報を管理する第2管理サーバと、
前記車両と前記供給装置とによるワイヤレス電力伝送に関する情報を管理する第3管理サーバと、を含み、前記第3管理サーバは、前記第1管理サーバから前記車両の情報のうちのワイヤレス電力伝送に関係する情報を取得し、前記第2管理サーバから前記供給装置の情報のうちのワイヤレス電力伝送に関する情報を取得し、前記第1管理サーバおよび前記第2管理サーバから取得した前記情報に基づいて前記互換性リストを生成してもよい。
【0029】
この構成によれば、複数のサーバに機能を分散させてワイヤレス電力伝送に関する情報処理を実施することができる。
【0030】
本発明に係る供給装置は、道路に設置された一次コイルを含む一次装置と、車両との間で狭域無線通信を行う第1通信装置と、サーバとの間で広域無線通信を行う第2通信装置と、前記一次装置と前記第1通信装置と前記第2通信装置とを制御する制御装置と、を備え、前記道路を走行中の車両に前記一次コイルから非接触で電力を伝送する供給装置であって、前記第2通信装置は、狭域無線通信による前記車両からの信号を前記第1通信装置が受信するよりも前に当該供給装置の識別情報を前記サーバに送信し、当該供給装置と互換性のある前記車両の情報がリスト化された互換性リストを前記サーバから受信し、前記制御装置は、狭域無線通信による前記車両からの信号を前記第1通信装置が受信した場合に、前記互換性リストに基づいて前記車両とのペアリングを行うことを特徴とする。
【0031】
この構成によれば、供給装置が車両とペアリングするタイミングにおいてサーバとの広域無線通信が不要となるため、高い応答性を確保することができる。また、互換性のある車両情報に絞られた互換性リストがサーバから供給装置に送信されるため、サーバと供給装置との間の通信量を低減することができる。
【0032】
また、前記第2通信装置は、前記サーバから、当該供給装置の近傍領域内に位置する前記車両として特定された前記車両の情報に絞られた前記互換性リストを受信してもよい。
【0033】
この構成によれば、車両と供給装置との位置情報に基づいて情報を絞り込むことができるため、広域無線通信における通信量を低減させることができる。
【0034】
また、前記第2通信装置は、前記サーバから互換性トークンを受信し、前記第1通信装置は、前記車両から前記互換性トークンに関する情報を受信し、前記制御装置は、前記サーバから受信した互換性トークンと前記車両から受信した前記互換性トークンに関する情報との互換性を確認できた場合に当該車両に対する電力供給動作を行ってもよい。
【0035】
この構成によれば、供給装置が互換性トークンを用いて車両を認証できるため、セキュリティが向上する。
【0036】
また、前記供給装置は、地上への敷設時に前記供給装置の識別情報と位置情報とを含む供給装置情報を前記サーバに送信し、地上への敷設後に前記位置情報に変更が生じた場合、前記位置情報の変更情報を前記サーバに送信してもよい。
【0037】
この構成によれば、供給装置の位置情報に変更が生じた際に供給装置からサーバに情報を送信すればよいので、供給装置からサーバへ情報を送信する頻度を抑えることができる。
【0038】
本発明に係る車両は、道路に設置された一次コイルから非接触で伝送された電力を受け取る二次コイルを含む二次装置と、前記一次コイルを含む地上側の供給装置との間で狭域無線通信を行う第3通信装置と、サーバとの間で広域無線通信を行う第4通信装置と、前記二次装置と前記第3通信装置と前記第4通信装置とを制御する制御装置と、を備え、前記道路を走行中に前記一次コイルから非接触で伝送された電力を受け取る車両であって、前記第4通信装置は、走行中の当該車両が受電可能な状態である場合に当該車両の識別情報を前記サーバに送信し、前記第3通信装置は、当該車両が前記道路を走行中に当該車両の識別情報を前記地上側の供給装置に送信し、前記制御装置は、前記供給装置との狭域無線通信によって前記供給装置とのペアリングを行うことを特徴とする。
【0039】
この構成によれば、車両が供給装置とペアリングするタイミングにおいてサーバとの広域無線通信が不要となるため、高い応答性を確保することができる。
【0040】
また、前記第4通信装置は、前記供給装置の近傍領域内に位置する車両を対象とした互換性トークンを前記サーバから受信し、前記第3通信装置は、前記互換性トークンに関する情報を狭域無線通信により前記供給装置に送信し、前記互換性トークンは、前記近傍領域に該当する前記供給装置と互換性を有してもよい。
【0041】
この構成によれば、車両は互換性トークンに関する情報を供給装置に送信することにより、供給装置側で互換性トークンを用いた車両認証ができるため、セキュリティが向上する。
【0042】
また、前記第3通信装置は、自車両の近くを走行中の別の車両との間で車車間通信による車両情報の送信および受信を行い、前記車車間通信が可能な複数の車両のなかから代表した車両が、前記複数の車両ごとの車両情報をまとめて前記サーバに送信し、前記代表した車両は、前記サーバから前記複数の車両に対応する互換性リストを受信した場合に、前記車車間通信を行った複数の車両に対して前記互換性リストを送信してもよい。
【0043】
この構成によれば、複数の車両のなかから代表した車両がサーバと通信し、代表した車両による通信のハブ化によってサーバと車両との通信頻度を減らすことができる。
【0044】
また、前記第4通信装置は、自車両が起動した際に前記車両の情報を前記サーバに送信し、自車両の走行が終了した際に情報消去の要求信号を前記サーバに送信してもよい。
【0045】
この構成によれば、車両状態に応じて車両側から消去信号が送信されるため、不要な車両情報を互換性リストから消去することにより、供給装置へ送信される互換性リストの情報量を減らすことができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明では、供給装置と車両とペアリングするタイミングでサーバとの広域無線通信が不要となるため、高い応答性を確保することができる。また、互換性のある車両情報に絞られた互換性リストが送信されるため、サーバと供給装置との間の通信量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1図1は、実施形態におけるワイヤレス電力伝送システムを示す模式図である。
図2図2は、ワイヤレス電力伝送システムの全体構成を示す図である。
図3図3は、ワイヤレス電力伝送システムにおける広域無線通信を説明するための模式図である。
図4図4は、送電ECUの機能構成を説明するためのブロック図である。
図5図5は、車両ECUの機能構成を説明するためのブロック図である。
図6図6は、電力伝送プロセスを説明するための図である。
図7図7は、車両と供給装置との間で広域無線通信を用いた通信を実施する場合を示すシーケンス図である。
図8図8は、供給装置から車両への走行中給電が終了した後の動作を示すシーケンス図である。
図9図9は、ワイヤレス電力伝送システムにおける広域無線通信と狭域無線通信とを用いた情報の流れを説明するための模式図である。
図10図10は、供給装置とサーバとの間で広域無線通信を用いた通信を実施する場合かつ車両と供給装置との間で狭域無線通信を用いた通信を実施する場合を示すシーケンス図である。
図11図11は、位置情報を用いた情報処理を実施する場合を示すシーケンス図である。
図12図12は、互換性トークンを用いた情報処理を実施する場合を示すシーケンス図である。
図13図13は、供給装置の情報をサーバに送信するタイミングを説明するためのシーケンス図である。
図14図14は、複数の車両を代表した車両がサーバとの間で広域無線通信を実施する場合を示す模式図である。
図15図15は、車両の情報をサーバに送信するタイミングを説明するための模式図である。
図16図16は、車両情報を消去する場合を示すシーケンス図である。
図17図17は、複数のサーバによって情報処理を実施する場合を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム、供給装置、および車両について具体的に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0049】
図1は、実施形態におけるワイヤレス電力伝送システムを示す模式図である。ワイヤレス電力伝送システム(Wireless Power Transfer System)1は、供給設備2と、車両3とを備える。供給設備2は、走行中の車両3に非接触で電力を供給する設備である。車両3は、外部電源から供給された電力を充電可能な電動車両であり、例えば電気自動車(BEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)などである。
【0050】
このワイヤレス電力伝送システム1は、供給設備2から車両3へ磁界共振結合(磁界共鳴)によるワイヤレス電力伝送を行う。ワイヤレス電力伝送システム1は、道路4上を走行中の車両3に対して供給設備2から非接触で電力を伝送する。つまり、ワイヤレス電力伝送システム1は磁界共鳴方式により電力を伝送するものであり、磁界共振結合(磁界共鳴)を用いて車両3への走行中給電を実現するものである。ワイヤレス電力伝送システム1は、ダイナミックワイヤレス電力伝送(D-WPT)システムや、磁界ダイナミックワイヤレス電力伝送(MF-D-WPT)システムと表現できる。
【0051】
供給設備2は、供給装置5と、供給装置5に電力を供給する交流電源6とを備える。供給装置5は、交流電源6から供給された電力を車両3に非接触で伝送する。交流電源6は例えば商用電源である。この供給装置5は、一次コイル11を有する送電装置10を備える。
【0052】
供給装置5は、一次コイル11を含むセグメント7と、セグメント7を管理する管理装置8とを備える。セグメント7は、道路4の車線内に埋め込まれている。管理装置8は、道路4の脇に設置されている。セグメント7は、管理装置8と電気的に接続されている。管理装置8は、交流電源6と電気的に接続されており、交流電源6の電力をセグメント7に供給する。セグメント7は、管理装置8を介して交流電源6と電気的に接続される。このセグメント7は、道路4の車線に沿って複数配置することが可能である。例えば供給装置5は、図1に示すように、道路4内で車線に沿って並んで設置された三つのセグメント7と、三つのセグメント7が接続された一つの管理装置8とを備える。セグメント7は、供給装置5から車両3へと非接触で電力を伝送する機能を有する。管理装置8は、セグメント7におけるワイヤレス電力伝送を制御する機能を有する。
【0053】
車両3は、二次コイル21を有する受電装置20を備える。受電装置20は、車両3の車体底部に設けられている。一次コイル11が設置された道路4上を車両3が走行する際、地上側の一次コイル11と車両側の二次コイル21とが上下方向に対向する。ワイヤレス電力伝送システム1は、車両3が道路4上を走行中に、送電装置10の一次コイル11から受電装置20の二次コイル21に非接触で電力を伝送する。
【0054】
この説明における走行中とは、車両3が走行のために道路4上に位置する状態を意味する。走行中には、車両3が道路4上で一時的に停止している状態も含まれる。例えば信号待ちなどによって車両3が道路4上で停止している状態も走行中に含まれる。一方で、車両3が道路4上に位置する状態であっても、例えば車両3が駐停車している場合には、走行中に含まれない。
【0055】
また、この説明では、一次コイル11(セグメント7)が埋め込まれた車線のことをD-WPTレーンと記載し、道路4の一部区間であって供給装置5によるワイヤレス電力伝送が可能な場所のことをD-WPT充電サイトと記載する場合がある。D-WPTレーンとD-WPT充電サイトとでは、道路4の所定区間に亘り複数の一次コイル11(複数のセグメント7)が車両3の進行方向に並んで設置されている。
【0056】
図2は、ワイヤレス電力伝送システムの全体構成を示す図である。供給設備2では、供給装置5と交流電源6とが電気的に接続されている。供給装置5では、セグメント7と管理装置8とが電気的に接続されている。
【0057】
供給装置5は、管理装置8に設けられた構成と、セグメント7に設けられた構成とを含む。供給装置5は、送電装置10と、送電ECU(Electronic Control Unit)110と、第1通信装置120と、第2通信装置130と、異物検知装置140とを備える。
【0058】
送電装置10は、交流電源6に接続された電気回路を含む。送電装置10は、PFC(Power Factor Collection)回路210と、インバータ(INV)220と、フィルタ回路230と、送電側共振回路240とを備える。
【0059】
PFC回路210は、交流電源6から入力される交流電力の力率を改善し、その交流電力を直流電力に変換してインバータ220に出力する。このPFC回路210はAC/DCコンバータを含んで構成される。PFC回路210は交流電源6と電気的に接続されている。
【0060】
インバータ220は、PFC回路210から入力された直流電力を交流電力に変換する。インバータ220の各スイッチング素子はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)などにより構成されており、送電ECU110からの制御信号に応じてスイッチング動作を行う。例えばインバータ220の駆動周波数は85kHzである。インバータ220は、変換した交流電力をフィルタ回路230に出力する。
【0061】
フィルタ回路230は、インバータ220から入力される交流電流に含まれるノイズを除去し、ノイズが除去された交流電力を送電側共振回路240に供給する。フィルタ回路230は、コイルとコンデンサとを組み合わせたLCフィルタである。例えばフィルタ回路230は二つのコイルと一つのコンデンサとがT形に配置されたT型フィルタにより構成される。PFC回路210とインバータ220とフィルタ回路230とは、送電装置10の電力変換部12を構成する。
【0062】
送電側共振回路240は、フィルタ回路230から供給された交流電力を非接触にて受電装置20に伝送する送電部である。フィルタ回路230から送電側共振回路240に交流電力が供給されると、一次コイル11に電流が流れ、送電のための磁界が発生する。
【0063】
送電側共振回路240は、一次コイル11と、共振コンデンサとを備える。一次コイル11は送電コイルである。この共振コンデンサは一次コイル11の一方端に直列に接続され、送電側共振回路の共振周波数を調整する。この共振周波数は10kHz~100GHzであり、好ましくは85kHzである。例えば送電装置10は、送電側共振回路240の共振周波数とインバータ220の駆動周波数とが一致するように構成されている。送電側共振回路240は、送電装置10の一次装置13を構成する。
【0064】
送電装置10は、電力変換部12と、一次装置13とを備える。電力変換部12は、PFC回路210とインバータ220とフィルタ回路230とを含む。一次装置13は、送電側共振回路240を含む。送電装置10は、電力変換部12が管理装置8に設けられ、一次装置13がセグメント7に設けられた構成を有する。
【0065】
供給装置5では、送電装置10の電力変換部12と、送電ECU110と、第1通信装置120とが管理装置8に設けられており、送電装置10の一次装置13と、第2通信装置130と、異物検知装置140とがセグメント7に設けられている。
【0066】
送電ECU110は、供給装置5を制御する電子制御装置である。送電ECU110は、プロセッサと、メモリとを備える。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などからなる。メモリは、主記憶装置であって、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などからなる。送電ECU110は、記憶部に格納されたプログラムをメモリ(主記憶装置)の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各構成部などを制御することにより、所定の目的に合致した機能を実現する。記憶部は、EPROM(Erasable Programmable ROM)、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)、およびリムーバブルメディアなどの記録媒体から構成される。リムーバブルメディアとしては、USB(Universal Serial Bus)メモリ、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)のようなディスク記録媒体が挙げられる。記憶部には、オペレーティングシステム(Operating System:OS)、各種プログラム、各種テーブル、各種データベースなどが格納可能である。各種センサからの信号が送電ECU110に入力される。異物検知装置140からの信号が送電ECU110に入力される。そして、送電ECU110は各種センサから入力された信号に基づいて各種制御を実行する。
【0067】
例えば送電ECU110は、送電用電力を調整する電力制御を実行する。電力制御において、送電ECU110は送電装置10を制御する。送電ECU110は、電力変換部12から一次装置13に供給される電力を制御するために、電力変換部12に制御信号を出力する。送電ECU110は、PFC回路210に含まれるスイッチング素子を制御して送電用電力を調整するとともに、インバータ220に含まれるスイッチング素子を制御して送電用電力を調整する。
【0068】
また、送電ECU110は、車両3との通信を制御する通信制御を実行する。通信制御において、送電ECU110は第1通信装置120と第2通信装置130とを制御する。
【0069】
第1通信装置120は、広域無線通信を行う地上側の通信装置である。第1通信装置120は、道路4を走行中の車両3のうち、WPTレーンに接近する前の車両3との間で無線通信を行う。WPTレーンに接近する前の状態とは、車両3が供給装置5との間で狭域無線通信を行えない位置にいることをいう。
【0070】
広域無線通信は、通信距離が10メートルから10キロメートルの通信である。広域無線通信は、狭域無線通信に比べて通信距離が長い通信である。広域無線通信としては、通信距離が長い種々の無線通信を用いることができる。例えば3GPP(登録商標)、IEEEによって策定された4G、LTE、5G、WiMAXなどの通信規格に準拠した通信が広域無線通信に用いられる。ワイヤレス電力伝送システム1では、広域無線通信を利用して、車両識別情報(車両ID)と紐づけられた車両情報が車両3から供給装置5に送信される。
【0071】
第2通信装置130は、狭域無線通信を行う地上側の通信装置である。第2通信装置130は、道路4を走行中の車両3のうち、WPTレーンに接近または進入した車両3との間で無線通信を行う。WPTレーンに接近した状態とは、車両3が供給装置5との間で狭域無線通信を行うことが可能な位置にいることをいう。
【0072】
狭域無線通信は、通信距離が10メートル未満の通信である。狭域無線通信は、広域無線通信に比べて通信距離が短い通信である。狭域無線通信としては、通信距離が短い種々の近距離無線通信を用いることができる。例えばIEEE、ISO、IECなどによって策定された任意の通信規格に準拠した通信が狭域無線通信に用いられる。一例として、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)などが狭域無線通信に用いられる。あるいは、狭域無線通信を行うための技術としては、RFID(Radio Frequency Identification)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)などが用いられてもよい。ワイヤレス電力伝送システム1では、狭域無線通信を利用して、車両識別情報などが車両3から供給装置5に送信される。
【0073】
異物検知装置140は、一次コイル11の上方に存在する金属異物や生体などを検知する。異物検知装置140は、例えば地上に設置されたセンサコイルや撮像装置などにより構成される。異物検知装置140はワイヤレス電力伝送システム1における異物検知機能(Foreign Object Detection:FOD)や生体保護機能(Living Object Protection:LOP)を発揮するためのものである。
【0074】
供給装置5では、送電装置10の構成がセグメント7と管理装置8とに分かれて配置されているとともに、三つのセグメント7が一つの管理装置8に接続されている。送電装置10は、一つのインバータが三つの送電側共振回路240に電力を供給するように構成されている。また、供給装置5では、各セグメント7からの信号が管理装置8に入力される。第1セグメントに設けられた第2通信装置130および異物検知装置140からの信号が送電ECU110に入力される。同様に、第2セグメントに設けられた第2通信装置130および異物検知装置140からの信号が送電ECU110に入力される。第3セグメントに設けられた第2通信装置130および異物検知装置140からの信号が送電ECU110に入力される。送電ECU110は各セグメント7から入力された信号に基づいて各セグメント7の状態を把握することができる。
【0075】
車両3は、受電装置20と、充電リレー310と、バッテリ320と、車両ECU330と、第3通信装置340と、第4通信装置350と、GPS(Global Positioning System)受信機360とを備える。
【0076】
受電装置20は、送電装置10から受け取った電力をバッテリ320に供給する。受電装置20は充電リレー310を介してとバッテリ320と電気的に接続される。受電装置20は、受電側共振回路410と、フィルタ回路420と、整流回路430とを備える。
【0077】
受電側共振回路410は、送電装置10から非接触で伝送された電力を受け取る受電部である。受電側共振回路410は、二次コイル21と、共振コンデンサとを備えた受電側共振回路により構成される。二次コイル21は、一次コイル11から非接触にて伝送された電力を受け取る受電コイルである。この共振コンデンサは二次コイル21の一方端に直列に接続され、受電側共振回路410の共振周波数を調整する。受電側共振回路410の共振周波数は送電側共振回路240の共振周波数と一致するように定められている。
【0078】
受電側共振回路410は共振周波数が送電側共振回路240の共振周波数と同じである。そのため、受電側共振回路410が送電側共振回路240と対向した状態で送電側共振回路240による磁界が発生すると、磁界の振動が受電側共振回路410に伝達する。一次コイル11と二次コイル21とが共振状態となる。電磁誘導によって二次コイル21に誘導電流が流れると、受電側共振回路410に誘導起電力が発生する。このようにして送電側共振回路240から非接触で伝送された電力を受電側共振回路410が受け取る。そして、受電側共振回路410は、送電側共振回路240から受け取った電力をフィルタ回路420に供給する。受電側共振回路410は、受電装置20の二次装置22を構成する。
【0079】
フィルタ回路420は、受電側共振回路410から入力される交流電流に含まれるノイズを除去し、ノイズが除去された交流電力を整流回路430に出力する。フィルタ回路420は、コイルとコンデンサとを組み合わせたLCフィルタである。例えばフィルタ回路420は二つのコイルと一つのコンデンサとがT形に配置されたT型フィルタにより構成される。
【0080】
整流回路430は、フィルタ回路420から入力された交流電力を直流電力に変換してバッテリ320に出力する。整流回路430は、例えば整流素子として4つのダイオードがフルブリッジ接続されたフルブリッジ回路により構成されている。整流回路430の各ダイオードにはスイッチング素子が並列接続されている。整流回路430の各スイッチング素子はIGBTにより構成されており、車両ECU330からの制御信号に応じてスイッチング動作を行う。整流回路430は、変換した直流電力をバッテリ320に供給する。フィルタ回路420と整流回路430とは、受電装置20の電力変換部23を構成する。
【0081】
受電装置20は、二次装置22と、電力変換部23とを備える。二次装置22は、受電側共振回路410を含む。電力変換部23は、フィルタ回路420と、整流回路430とを含む。
【0082】
充電リレー310は、整流回路430とバッテリ320との間に設けられている。充電リレー310は車両ECU330によって開閉状態が制御される。送電装置10によるバッテリ320の充電時に充電リレー310は閉状態に制御される。充電リレー310が閉状態である場合、整流回路430とバッテリ320との間が通電可能に接続される。充電リレー310が開状態である場合、整流回路430とバッテリ320との間が通電不能に遮断される。例えば充電リレー310が開状態にある場合、車両3は給電要求をしない。
【0083】
バッテリ320は、充電が可能な直流電源であり、例えばリチウムイオン電池やニッケル水素電池などにより構成される。バッテリ320は送電装置10から受電装置20に供給された電力を蓄える。また、バッテリ320は車両3の走行用モータに電力を供給することができる。バッテリ320はPCU(Power Control Unit)を介して走行用モータと電気的に接続されている。PCUはバッテリ320の直流電力を交流電力に変換して走行用モータに供給する電力変換装置である。PCUの各スイッチング素子はIGBTにより構成されており、車両ECU330らの制御信号に応じてスイッチング動作を行う。
【0084】
車両ECU330は、車両3を制御する電子制御装置である。車両ECU330は、ハードウェア構成としては送電ECU110と同様に構成されている。車両3に搭載された各種センサからの信号が車両ECU330に入力される。また、車両ECU330には、GPS受信機360が受信した測位信号が入力される。車両ECU330はGPS受信機360から車両3の現在位置情報を取得することができる。そして、車両ECU330は各種センサから入力された信号に基づいて各種制御を実行する。
【0085】
例えば車両ECU330は、一次コイル11から二次コイル21に非接触で電力を伝送し、二次コイル21が受け取った電力をバッテリ320に蓄える非接触充電制御を実行する。非接触充電制御において、車両ECU330は整流回路430と充電リレー310と第3通信装置340と第4通信装置350とを制御する。非接触充電制御には、充電用電力を制御する電力制御と、供給装置5との間の通信を制御する通信制御とが含まれる。電力制御において、車両ECU330は整流回路430に含まれるスイッチング素子を制御して、受電装置20からバッテリ320に供給される電力(充電用電力)を調整する。通信制御において、車両ECU330は第3通信装置340と第4通信装置350とを制御する。
【0086】
第3通信装置340は、広域無線通信を行う車両側の通信装置である。第3通信装置340は、道路4上を走行中の車両3がWPTレーンに接近する前の状態おいて、供給装置5の第1通信装置120との間で無線通信を行う。広域無線通信は、双方向無線通信である。第1通信装置120と第3通信装置340との間の通信は高速無線通信で行われる。
【0087】
第4通信装置350は、狭域無線通信を行う車両側の通信装置である。第4通信装置350は、車両3がWPTレーンに接近または進入した状態において、供給装置5の第2通信装置130との間で無線通信を行う。狭域無線通信は、単方向無線シグナリングである。単方向無線シグナリングはP2PS(Point to point signaling)である。P2PSは、ペアリング、位置合わせチェック、磁気結合チェック、電力伝送の実行、電力伝送の終了の各アクティビティにおいて、車両3から供給装置5に車両識別情報を通知するために使用される。また、P2PSは、横方向の位置合わせチェックの手段(Alignment check)として使用できる。横方向とは、車線の幅方向のことであり、車両3の幅方向のことである。
【0088】
GPS受信機360は、複数の測位衛星から得られる測位情報に基づいて車両3の現在位置を検出する。GPS受信機360によって検出された車両3の現在位置情報は車両ECU330に送信される。
【0089】
なお、供給装置5は、フィルタ回路230がセグメント7ではなく、管理装置8に含まれてもよい。すなわち、フィルタ回路230は道路4の脇に設置されてもよい。この場合、電力変換部12はPFC回路210とインバータ220とフィルタ回路230とを含み、一次装置13は送電側共振回路240を含む。
【0090】
また、フィルタ回路230は、一次コイル11個別に設けられてもよく、あるいは複数の一次コイル11に一括に設けられてもよい。
【0091】
また、フィルタ回路230は、T型フィルタに限定されず、例えばコイルとコンデンサとが直列に接続されたバンドパスフィルタであってよい。これは車両3のフィルタ回路420についても同様である。
【0092】
また、送電装置10では、インバータ220が複数の一次コイル11に接続する上で、通電対象となる一次コイル11を切り替える切替スイッチが、それぞれの一次装置13に設けられてよい。この切替スイッチは、道路4の脇の管理装置8に設けられてもよく、一次コイル11の付近に設けられてもよい。
【0093】
また、送電側共振回路240は、一次コイル11と共振コンデンサとが直列に接続された構成に限定されない。一次コイル11と共振コンデンサとが並列に接続されてもよく、あるいは並列と直列の組み合せたものであってもよい。要するに、送電側共振回路240は、送電側共振回路240の共振周波数がインバータ220の駆動周波数と一致するように構成されていればよく、その構成要素の接続関係は特に限定されない。これは車両3の受電側共振回路410についても同様である。
【0094】
また、インバータ220の駆動周波数は85kHzに限らず、85kHz付近の周波数であってよい。要するに、インバータ220の駆動周波数は85kHzを含む所定の周波数帯であってよい。
【0095】
また、送電装置10は、PFC回路210の出力側電力ライン(直流電力ライン)に対して複数のインバータ220が接続された構成であってもよい。
【0096】
また、異物検知装置140は、地上側に限らず、車両3側にも設けられてもよい。例えば車両3側の異物検知装置が一次コイル11の上方に存在する異物や生体などを検知した場合、車両3がその一次コイル11を通りすぎるまで給電要求を止めるように構成することができる。
【0097】
また、ワイヤレス電力伝送システム1では、狭域無線通信を利用して車両3から供給装置5に送信される情報には、車両識別情報の他に、給電要求や、給電電力要求値などが含まれる。給電要求は、一次コイル11からの電力伝送を要求することを示す情報である。給電電力要求値は、供給装置5から車両3へ伝送される電力量の要求値である。車両ECU330は、バッテリ320のSOCに基づいて給電電力要求値を算出することができる。
【0098】
また、ワイヤレス電力伝送システム1は、地上から車両3への給電方法に限らず、車両3から地上への給電方法を実現することも可能である。この場合、整流回路430は、インバータに置き換え、電力供給や受電時の整流を実現できる。
【0099】
図3は、ワイヤレス電力伝送システムにおける広域無線通信を説明するための模式図である。
【0100】
ワイヤレス電力伝送システム1では、車両3がサーバ30と通信可能であるとともに、供給装置5がサーバ30と通信可能である。サーバ30は、ネットワーク40に接続されており、ネットワーク40を介して複数の車両3および複数の供給装置5と通信可能である。ネットワーク40は、インターネットなどの公衆通信網であるWAN(Wide Area Network)や携帯電話の電話通信網などにより構成されている。
【0101】
車両3は、第3通信装置340を用いた広域無線通信によってネットワーク40に接続する。車両3はサーバ30に情報を送信し、サーバ30からの情報を受信する。
【0102】
供給装置5は、第1通信装置120を用いた広域無線通信によってネットワーク40に接続する。供給装置5はサーバ30に情報を送信し、サーバ30からの情報を受信する。
【0103】
サーバ30は、車両3と供給装置5との間のワイヤレス電力伝送に関する情報を処理する。サーバ30は、通信装置と、制御装置とを備える。この制御装置はハードウェア構成としては送電ECU110と同様に構成されている。サーバ30は、車両3から受信した情報と供給装置5から受信した情報とに基づいてワイヤレス電力伝送に関する各種リストを作成する。そして、サーバ30は各種リストに基づいて、ワイヤレス電力伝送に関する必要な情報を必要なタイミングで必要な車両3および供給装置5に提供する。ワイヤレス電力伝送システム1では、広域無線通信を利用して、サーバ30を介した車両3と供給装置5との間での通信が可能である。走行中の車両3は車両識別情報(車両ID)をサーバ30に送信し、サーバ30は車両識別情報と紐づけられた車両情報を供給装置5に送信する。
【0104】
図4は、送電ECUの機能構成を示すブロック図である。送電ECU110は、第1通信制御部510と、第2通信制御部520と、送電制御部530とを備える。
【0105】
第1通信制御部510は、第1通信装置120を制御する第1通信制御を実行する。第1通信制御は、供給装置5側の広域無線通信を制御するものであり、第1通信装置120を用いた供給装置5の通信を制御する。すなわち、第1通信制御は、供給装置5のうちの管理装置8の通信を制御する。第1通信制御は供給装置5とネットワーク40との間の通信を制御するとともに、ネットワーク40を介した供給装置5とサーバ30との間の通信を制御する。第1通信制御部510はSECC(Supply Equipment Communication Controller)である。
【0106】
第2通信制御部520は、第2通信装置130を制御する第2通信制御を実行する。第2通信制御は、供給装置5側の狭域無線通信を制御するものであり、第2通信装置130を用いた供給装置5の通信を制御する。すなわち、第2通信制御は、供給装置5のうちのセグメント7の通信を制御する。第2通信制御はネットワーク40を介さない通信として、供給装置5と車両3との間の通信を制御する。第2通信制御部520はPDCC(Primary Device Communication Controller)である。
【0107】
送電制御部530は、送電装置10を制御する送電制御を実行する。送電制御は、送電用電力を制御するものであり、送電装置10の電力変換部12を制御する。送電制御部530はPFC回路210とインバータ220とを制御する電力制御を実行する。
【0108】
図5は、車両ECUの機能構成を示すブロック図である。車両ECU330は、第3通信制御部610と、第4通信制御部620と、充電制御部630とを備える。
【0109】
第3通信制御部610は、第3通信装置340を制御する第3通信制御を実行する。第3通信制御は、車両3側の広域無線通信を制御するものであり、第3通信装置340を用いた車両3の通信を制御する。第3通信制御は車両3とネットワーク40との間の通信を制御するとともに、ネットワーク40を介した車両3とサーバ30との間の通信を制御する。第3通信制御部610はEVCC(EV Communication Controller)である。
【0110】
第4通信制御部620は、第4通信装置350を制御する第4通信制御を実行する。第4通信制御は、車両3側の狭域無線通信を制御するものであり、第4通信装置350を用いた車両3の通信を制御する。第4通信制御はネットワーク40を介さない通信として、車両3と供給装置5との間の通信を制御する。第4通信制御部620はSDCC(Secondary Device Communication Controller)である。
【0111】
充電制御部630は、受電装置20と充電リレー310とを制御する充電制御を実行する。充電制御は、二次装置22における受電電力を制御する電力制御と、二次装置22とバッテリ320との接続状態を制御するリレー制御とを含む。充電制御部630は整流回路430を制御する電力制御を実行する。充電制御部630は、充電リレー310の開閉状態を切り替えるリレー制御を実行する。
【0112】
このように構成されたワイヤレス電力伝送システム1では、車両3と供給装置5との間での無線通信が確立された状態において、供給装置5から車両3へのワイヤレス電力伝送が行われる。無線通信により車両3と供給装置5とのペアリングが行われた状態において、地上側の一次コイル11から車両側の二次コイル21へ非接触で電力が伝送される。そして、車両3では二次コイル21が受け取った電力をバッテリ320に供給する充電制御が行われる。
【0113】
次に、図6を参照して、電力伝送プロセス(D-WPTプロセス)について説明する。電力伝送プロセスは、複数のアクティビティの連鎖として構造化されており、状態と対応する遷移とから導かれるプロセスである。
【0114】
図6は、電力伝送プロセスを説明するための図である。図6には、電力伝送プロセスを説明するための基本的なアクティビティが示されている。図6に示す太い矢印は遷移線を表す。電力伝送プロセスにおけるワイヤレス電力伝送システム1の状態は、電力伝送プロセスを構成するアクティビティにより表される。
【0115】
電力伝送プロセスを構成するアクティビティは、電力伝送を行う段階のアクティビティである電力伝送サービスセッション(D-WPTサービスセッションA70)と、電力伝送を行う前の段階のアクティビティと、電力伝送を行った後の段階のアクティビティとを含む。アクティビティは、供給装置5と車両3との間での通信の有無に応じて、その動作主体を分けて説明することができる。アクティビティは、通信なしの供給装置5側のみの状態を表すものと、通信なしの車両3側のみの状態を表すものと、通信ありの供給装置5と車両3との両方の状態を表すものとに分けられる。
【0116】
図6に示すように、アクティビティは、マスタ電源がオン状態(Master power On)A10と、準備(Preparation)A20と、車両3からの要求待ち(Waiting for D-WPT service request)A30と、マスタ電源がオン状態(Master power On)A40と、準備(Preparation)A50と、通信設定(Communication setup)およびD-WPTサービスの要求(Request D-WPT service)A60と、D-WPTサービスセッション(D-WPT service session)A70と、D-WPTサービスセッションの終了(Terminate D-WPT service session)A80と、を含む。
【0117】
準備A20は、供給装置5の準備状態である。準備A20において、供給装置5は車両3との通信なしに回路の起動と安全確認とを行う。供給装置5は、マスタ電源がオン状態A10になると準備A20の状態に遷移する。そして、準備A20において供給装置5が回路を起動して安全を確認できた場合、状態は車両3からの要求待ち(Waiting for D-WPT service request)A30に遷移する。一方、供給装置5に問題がある場合、供給装置5は広域無線通信により、ワイヤレス電力伝送システム1を利用できないことを示す情報(利用不可通知)を車両3に通知する。第1通信装置120は利用不可通知を車両3に送信する。
【0118】
準備A50は、車両3の準備状態である。準備A50において、車両3は供給装置5との通信なしに回路の起動と安全確認を行う。車両3は、マスタ電源がオン状態A40になると準備A50の状態に遷移する。そして、準備A50において車両3が回路を起動して安全を確認できた場合、状態は通信設定(Communication setup)およびD-WPTサービスの要求(Request D-WPT service)A60に遷移する。一方、車両3に問題がある場合、車両3は広域無線通信を開始せず、D-WPTプロセスにおける以降のシーケンスを行わない。
【0119】
通信設定およびD-WPTサービスの要求A60は、車両ECU330によって開始される。通信設定およびD-WPTサービスの要求A60において、車両ECU330は広域無線通信を開始する。まず、車両3が準備A50から通信設定およびD-WPTサービスの要求A60に遷移すると、第3通信装置340はD-WPTサービスの要求信号を送信する。第3通信装置340は、車両3が進入予定または進入したD-WPTレーンに対応する第1通信装置120と無線通信を行う。通信対象の第1通信装置120は車両3の現在位置とD-WPTレーンの位置との相対的な位置関係に基づいて選択される。供給装置5側では、車両3からの要求待ちA30の状態において、第1通信装置120がD-WPTサービスの要求信号を受信すると、状態は通信設定およびD-WPTサービスの要求A60に遷移する。広域無線通信とP2PS通信との各種情報は車両識別情報を用いてリンクされている。この通信設定およびD-WPTサービスの要求A60の処理シーケンスを図7に示す。
【0120】
図7は、車両と供給装置との間で広域無線通信を用いた通信を実施する場合を示すシーケンス図である。車両3は、車両情報をサーバ30に送信する(ステップS11)。ステップS11において、車両3の第3通信装置340は車両情報をサーバ30に送信する。車両情報は、車両識別情報と、受電装置20の各種パラメータと、車両3の現在位置情報と、要求電力とを含む。車両ECU330はバッテリ320のSOC(State Of Charge)に基づいて要求電力を算出する。ステップS11において、車両ECU330は所定時間ごとに第3通信装置340から車両情報を送信させる。所定時間は、車両3の現在位置からWPTレーンの始点までの距離に応じて設定される。車両3からWPTレーンの始点までの距離が短いほど、所定時間の間隔は短くなる。
【0121】
サーバ30は、車両3からの車両情報を受信すると、車両情報に含まれる車両3の現在位置情報に基づいて、供給装置5の近傍領域内に位置する車両3の車両識別情報を特定する(ステップS12)。ステップS12において、サーバ30は車両3の現在位置情報と供給装置5の位置情報とに基づいて供給装置5から所定の近傍領域内に位置する車両3を特定する。近傍領域は例えば500メートル以内の領域に設定される。
【0122】
サーバ30は、車両3の車両識別情報を特定すると、車両情報を供給装置5に送信する(ステップS13)。ステップS13において、サーバ30の送信装置は車両情報を供給装置5に送信する。
【0123】
供給装置5は、サーバ30からの車両情報を受信すると、識別情報リストへの車両識別情報の登録・消去を行う(ステップS14)。ステップS14において、送電ECU110は、車両情報に紐づいた車両識別情報が過不足なく識別情報リストに登録された状態になるように、識別情報リストへの車両識別情報の登録・消去を行う。
【0124】
供給装置5は、識別情報リストへの車両識別情報の登録・消去を行うと、識別情報リストに登録されている車両識別情報をサーバ30に送信する(ステップS15)。ステップS15において、供給装置5の第1通信装置120は車両識別情報をサーバ30へ送信する。
【0125】
そして、サーバ30は、供給装置5からの車両識別情報を受信すると、識別情報リストに登録されている車両識別情報に対応する車両3へリスト登録通知を送信する(ステップS16)。ステップS16において、サーバ30の通信装置はリスト登録通知を車両3に送信する。リスト登録通知は、車両識別情報が識別情報リストに登録されている旨を示す通知であり、供給装置5の識別情報と供給装置5の位置情報とを含む。
【0126】
このように車両3が広域無線通信を開始して供給装置5と車両3とがともに通信設定およびD-WPTサービスの要求A60の状態となると、広域無線通信による通信設定が成功したこととなる。この通信設定の成功により、状態はD-WPTサービスセッション(D-WPT service session)A70に遷移する。
【0127】
図6に戻る。D-WPTサービスセッションA70は、供給装置5と車両3との間で通信接続が確立された状態において、供給装置5の送電側共振回路240から車両3の受電側共振回路410へと非接触にて電力を伝送する。D-WPTサービスセッションA70は、通信設定の成功から始まり、通信の終了により終了する。D-WPTサービスセッションA70の状態において、通信が終了すると、状態はD-WPTサービスセッションの終了(Terminate D-WPT service session)A80に遷移する。
【0128】
D-WPTサービスセッションの終了A80では、車両3は供給装置5との広域無線通信を終了する。車両3と供給装置5とは、D-WPTサービスセッションA70の終了のトリガを受信できる。そして、車両ECU330は第3通信装置340が次の通知(D-WPTサービスの要求信号)を受信するまで、二次装置22と車両3に対してD-WPTが開始されないようにする。
【0129】
ここで、D-WPTサービスセッションA70の詳細なアクティビティについて説明する。
【0130】
D-WPTサービスセッションA70は、互換性チェック(Compatibility check)およびサービス認証(Service authentication)A110と、詳細な位置合わせ(Fine Positioning)A120と、ペアリング(Pairing)および位置合わせチェック(Alignment check)A130と、磁気結合チェック(Magnetic Coupling Check)A140と、電力伝送の実行(Perform Power Transfer)A150と、スタンバイ(Stand-by)A160と、電力伝送の終了(Power transfer terminated)A170と、を含む。
【0131】
互換性チェックおよびサービス認証A110について説明する。通信設定が成功した後、車両ECU330および送電ECU110は、一次装置13と二次装置22とが互換性を有することを確認する。互換性チェックは、供給装置5側で、通信により取得した車両識別情報に対応付けられた情報をもとに行われる。チェック項目としては、二次装置22の最低地上高、受電側共振回路410の形状タイプ、二次装置22の回路トポロジー、二次装置22の自己共振周波数、二次コイル21の数などが挙げられる。
【0132】
互換性チェックおよびサービス認証A110において、まず、車両3は受電装置20の互換性情報(Compatibility Information)を第3通信装置340から供給装置5に送信する。受電装置20の互換性情報は広域無線通信により送信される。供給装置5の第1通信装置120は車両3からの受電装置20の互換性情報を受信する。そして、供給装置5の第1通信装置120は送電装置10の互換性情報を車両3に送信する。送電装置10の互換性情報は広域無線通信により送信される。車両3の第3通信装置340は供給装置5からの送電装置10の互換性情報を受信する。これらの互換性情報はネットワーク40およびサーバ30を介した広域無線通信によって車両3と供給装置5との間で送受信されることが可能である。
【0133】
車両3が供給装置5に送信する互換性情報の要素には、車両識別情報、WPT電力クラス(WPT Power Classes)、ギャップクラス(Air Gap Class)、WPT駆動周波数(WPT Operating Frequencies)、WPT周波数調整、WPTタイプ(WPT Type)、WPT回路トポロジー(WPT Circuit Topology)、詳細な位置合わせ方法(Fine Positioning Method)、ペアリング方法(Pairing Method)、位置合わせ方法(Alignment Method)、電力調整機能の有無情報などが含まれる。
【0134】
供給装置5が車両3に送信する互換性情報の要素には、供給装置識別情報、WPT電力クラス、ギャップクラス、WPT駆動周波数、WPT周波数調整、WPTタイプ、WPT回路トポロジー、詳細な位置合わせ方法、ペアリング方法、位置合わせ方法、電力調整機能の有無情報などが含まれる。
【0135】
各要素名について詳細に説明する。なお、車両3から供給装置5に送信される互換性情報の各要素について説明し、供給装置5から車両3に送信される互換性情報のうち車両3から供給装置5に送信される互換性情報と重複するものはその説明を省略する。
【0136】
ギャップクラスは、二次装置22が受電することができるギャップクラスを示す情報である。WPT電力クラスは、二次装置22が受電することができるパワークラスを示す情報である。WPT駆動周波数は、二次装置22が受電する受電電力の周波数を示す情報である。WPT周波数調整は、駆動周波数の調整の可否を示す情報である。WPTタイプとは、受電側共振回路410の形状タイプを示す情報であり、二次コイル21のコイル形状を示すものである。WTPタイプを示すものとしては円形やソレノイドなどがある。WPT回路トポロジーは、二次コイル21と共振コンデンサとの接続構造を示す情報である。WTP回路トポロジーとしては直列と並列とがある。詳細な位置合わせ方法は、位置合わせを行う際にどのような方法で位置合わせを実施するかを示す情報である。ペアリング方法は、車両3が供給装置5を特定するペアリングを実施する方法である。位置合わせ方法は、送電開始前に、二次装置22および一次装置13の相対的な位置確認をする方法を示す。
【0137】
詳細な位置合わせA120について説明する。車両3は、ペアリングおよび位置合わせチェックA130に先立って、またはこれらのアクティビティと並行して、詳細な位置合わせA120を行う。車両ECU330は、車両3が供給装置5の設置された領域(WPTレーン)に接近または進入したと判断すると、詳細な位置合わせA120を始める。
【0138】
車両ECU330は車両3を誘導して、ワイヤレス電力伝送のための十分な磁気結合を確立する範囲内に一次装置13と二次装置22との位置合わせを行う。
【0139】
詳細な位置合わせA120は、基本的に車両3側で手動または自動で行われる。詳細な位置合わせA120は、ADAS(自動運転支援システム)と連携することが可能である。
【0140】
そして、詳細な位置合わせA120のアクティビティは、車両3がD-WPT充電サイトを離れるか、または状態が通信終了に変化するまで継続し、広域無線通信によって供給装置5から車両3に送信された位置合わせ情報に基づいて実行することができる。この通信終了はD-WPTサービスセッションの終了A80のことである。
【0141】
ペアリングおよび位置合わせチェック(Pairing/Alignment check)A130について説明する。ここでは、ペアリング(Pairing)と位置合わせチェック(Alignment check)とを分けて説明する。
【0142】
ペアリングについて説明する。狭域無線通信を行うP2PSインターフェースは、一次装置13と二次装置22とが一意にペアリングされていることを保証する。ペアリング状態のプロセスは以下の通りである。
【0143】
まず、車両ECU330は、車両3がD-WPTレーンに接近または進入したことを認識する。例えば、車両ECU330はD-WPTレーンを含めた地図情報を有しており、GPS受信機360で得られた自車両の位置情報と比較して、その直線距離などで接近または進入を認識する。車両3は、どのD-WPTレーンに接近したのか広域無線通信によってサーバ30へ送信する。要するに、第3通信装置340はいずれかのD-WPTレーンに車両3が接近したことを示す信号をクラウドに通知する。さらに、車両ECU330が車両3のD-WPTレーンへの接近または進入を認識した場合、第4通信装置350は、一次装置13と二次装置22とのペアリングのために、一定の間隔で変調信号の送信を開始する。
【0144】
また、供給装置5は、広域無線通信によりサーバ30から取得した情報を用いて、車両3がD-WPTレーンに接近または進入したことを認識してもよい。サーバ30は、各D-WPTレーンで接近してきた車両3の車両識別情報を、そのレーンに該当する供給装置5に割り振る。供給装置5は、サーバ30によって数が絞れた車両識別情報を参照すればよくなるため、認証処理が短時間で可能になる。供給装置5は車両3がD-WPTレーンに接近していると認識した場合、第2通信装置130はスタンバイモードとなる。スタンバイモードでは、車両3の第4通信装置350からの変調信号を受信することを待つ。この変調信号には、車両識別情報が含まれる。
【0145】
第2通信装置130が車両3からの変調信号を受信すると、供給装置5は、狭域無線通信により受信した車両識別情報と、D-WPTレーンに向かってくる複数の車両3との広域無線通信の結果により得られた識別情報リスト中の車両識別情報とを比較する。この比較によって、供給装置5は車両3を識別する。
【0146】
車両ECU330は、車両3がD-WPTレーン外であることを認識すると、第4通信装置350からの変調信号の送信を停止する。車両ECU330は、地図情報と自車両の位置情報とに基づいてD-WPTレーンを通過したか否かを判定することができる。
【0147】
供給装置5は、車両3がD-WPTレーンを走行していないと判断した場合、または車両3がD-WPTレーンに接近していないと判断した場合に、第4通信装置350からの変調信号の待機を停止する。
【0148】
ペアリングは、車両3がD-WPT充電サイトから出るか、または状態が通信終了に変更するまで、一次装置13に対して実行される。ペアリング(Pairing)が完了すると、状態は位置合わせチェック(Alignment check)に遷移する。
【0149】
位置合わせチェックについて説明する。位置合わせチェックは、一次装置13と二次装置22との間の横方向の距離が許容範囲内にあることを確認することを目的とするものである。位置合わせチェックは、狭域無線通信(P2PS)を用いて行われる。
【0150】
位置合わせチェックは、車両3がD-WPT充電サイトを離れるか、状態が通信終了に変わるまで、P2PSに基づいて継続して実行される。位置合わせチェックの結果は、広域無線通信により第1通信装置120から第3通信装置340に送信することができる。
【0151】
磁気結合チェックA140について説明する。磁気結合チェックA140において、供給装置5は磁気結合状態を確認し、二次装置22が許容範囲内に存在することを確認する。磁気結合チェックA140が終了すると、状態は電力伝送の実行A150に遷移する。
【0152】
電力伝送の実行A150について説明する。この状態では、供給装置5は受電装置20への電力伝送を行う。送電装置10と受電装置20とは、MF-D-WPTの有用性と受電装置20およびバッテリ320の保護のために伝送電力(送電電力と受電電力)を制御する能力を備える必要がある。より大きな電力伝送は、受電装置20の静的ワイヤレス充電および導電性充電なしでその移動距離を長くするのに役立つ。しかしながら、バッテリ320の容量は車両3の車種によりさまざまであり、駆動用電力需要が急激に変動することがある。この急激な変動として急な回生ブレーキが挙げられる。D-WPTレーンを走行中に回生ブレーキが実施される場合には回生ブレーキが優先されるため、回生電力に加えて受電装置20からの受電電力がバッテリ320に供給されることになる。この場合、バッテリ320を過充電から守るために、受電装置20による伝送電力の調整が必要となる。
【0153】
電力制御の必要性にもかかわらず、この状態では、供給装置5と受電装置20との間で通信が新たに開始されることはない。なぜなら、通信は、その不安定性および待ち時間のために、電力制御における応答および精度を損なう可能性があるからである。したがって、供給装置5と受電装置20とは、この状態までの既知の情報に基づいて、電力伝送およびその制御を行う。
【0154】
供給装置5は、あらかじめ広域無線通信を用いて、第3通信装置340から送信されてくる電力要求に対して磁気結合チェックの伝送電力を増加させる。供給装置5は電流および電圧の変動をその範囲内に保つとともに、遷移中に伝送された電力の最大化を試みる。
【0155】
受電装置20は、基本的には何ら制御することなく、送電装置10からの送電電力を受け入れる。しかしながら、受電装置20は、充電状態や車両3の駆動用電力需要に応じて変動するバッテリ320の定格電力など、送電電力が制限を超えた場合や超えつつある場合に制御を開始する。また、車両ECU330における電力制御は、広域無線通信での誤動作への対応も求められる。この誤動作は、一次装置13における電力制御対象と第3通信装置340からの要求との矛盾、および電力伝送途中での受電装置20、バッテリ320の突然の故障につながる。受電装置20は、第1通信装置120によって通知された電力要求率の下で伝送された電力を制御する。
【0156】
電力要求は、車両3および一次装置13のWPT回路トポロジー、ジオメトリ、グランドクリアランス、EMC(電磁両立性)などの互換性チェック情報に基づいて決定される。これらの仕様によって磁界が異なり、EMCを満たす範囲で電力を伝送する必要がある。
【0157】
送電ECU110における電力制御と受電装置20とは、互いに干渉する可能性がある。特に供給装置5が広域無線通信により受電装置20における最新の電力制限よりも大きい電力要求を実現しようとする場合に干渉する可能性がある。この例として、車両3における比較的小さなバッテリ320での急激な回生制御が挙げられる。可能であれば、供給装置5が、電源制御目標と制限との不整合を検出でき、その不整合を解消するために電力伝送を調整できることが望ましい。
【0158】
例えば、異物検知装置140によって一次装置13上の異物が検知された場合、または二次装置22の位置合わせ不良によって磁気結合の結合係数が低くなった場合など、二次装置22が依然として一次装置13の上にある間に電力伝送が短期間中断されると、状態はスタンバイ(Stand-by)A160に遷移する。なお、車両3に異物検知装置が設けられている場合には、車両3側で異物を検知してもよい。
【0159】
二次装置22が一次装置13の上を通過すると、状態は電力伝送の終了A170に遷移する。この場合、2つの装置間の磁気結合が弱くなるため、伝送される電力は少なくなる。供給装置5は、伝送電力を監視することによって磁気結合が弱くなったことを検出することができるので、供給装置5が基本的に電力伝送の終了A170への状態遷移を決定し、その後、電力伝送を停止するために電圧を下げ始める。
【0160】
スタンバイA160について説明する。この状態では、何らかの理由で電力伝送が短時間中断され、車両3および供給装置5の両方においてD-WPTの準備が整うと、状態は電力伝送の実行A150に戻る。電力伝送を中断する可能性のある場合、状態はスタンバイA160になる。
【0161】
電力伝送の終了A170について説明する。この状態では、供給装置5は、伝送された電力をゼロに減少させ、総伝送電力、電力伝送効率、故障履歴などの電力伝送結果データを保持またはアップロードする。各データには車両識別情報がタグ付けされる。最後に、供給装置5は、D―WPTレーンを通過した車両3の車両識別情報を削除する。これにより、供給装置5は、その後に他の車両に対して行うペアリングおよび電力伝送に備えることができる。電力伝送の終了A170の処理シーケンスを図8に示す。
【0162】
図8は、供給装置から車両への走行中給電が終了した後の動作を示すシーケンス図である。車両3の受電装置20において供給装置5からの受電が終了する(ステップS21)と、車両3は受電終了情報をサーバ30へ送信する(ステップS22)。ステップS22では、車両3の第3通信装置340から受電終了情報が送信される。受電終了情報は、供給装置5からの受電に関する情報として、例えば車両3の車両識別情報と、供給装置5からの受電電力と、受電効率と、異常検知結果とを含む。
【0163】
供給装置5は、ステップS21の処理が実施される際、車両3への送電を終了する(ステップS23)。ステップS21の処理とステップS23の処理とは同時に実施されてもよく、同時でなくてもよい。ステップS23の処理が実施されると、供給装置5は送電終了情報をサーバ30へ送信する(ステップS24)。ステップS24では、供給装置5の第1通信装置120から送電終了情報が送信される。
【0164】
サーバ30は、車両3からの受電終了情報を受信し、かつ供給装置5からの送電終了情報を受信すると、供給装置5から車両3への給電を終了する給電終了処理を行う(ステップS25)。給電終了処理では、受電終了情報と送電終了情報とに基づいて、供給装置5から車両3への供給電力量の算出処理や、算出された供給電力量に基づく車両3のユーザへの課金処理が行われる。
【0165】
また、車両3は、給電終了処理とは無関係に、車両情報をサーバ30に送信する(ステップS26)。ステップS26では、車両3の第3通信装置340から車両情報が送信される。
【0166】
サーバ30は、給電終了処理を実施後に車両3からの車両情報を受信すると、車両情報に基づいて各供給装置5の近傍領域内に位置する車両3の車両識別情報を特定する(ステップS27)。
【0167】
そして、ある供給装置5においてある車両3への給電終了処理が既に行われていると、サーバ30は、ステップS27の処理で特定されたこの供給装置5の近傍領域内の車両3の車両識別情報から、既に給電終了処理が行われた車両3の車両識別情報を削除する(ステップS28)。
【0168】
その後、サーバ30は、各供給装置5の近傍領域内に位置すると特定された車両3の車両識別情報のうち、ステップS28の処理で削除されていない車両識別情報に紐づいた車両情報を各供給装置5に送信する(ステップS29)。
【0169】
ステップS29の処理で車両情報が各供給装置5へ送信された後、供給装置5がサーバ30からの車両情報を受信すると、供給装置5は識別情報リストへの車両識別情報の登録・消去を行う(ステップS30)。ステップS30の処理は、図7のステップS14の処理と同様である。その後、供給装置5は、識別情報リストに登録されている車両識別情報をサーバ30へ送信する(ステップS31)。ステップS31の処理は、図7のステップS15の処理と同様である。
【0170】
そして、サーバ30は、供給装置5からの車両識別情報を受信すると、識別情報リストに登録されている車両識別情報に対応する車両3へリスト登録通知を送信する(ステップS32)。ステップS32の処理は、図7のステップS16の処理と同様である。
【0171】
この結果、図8に示される処理が行われる場合、識別情報リストには各供給装置5の近傍領域内に位置しているとともに、その供給装置5からの給電が終了しておらず、かつ車両識別情報の消去要求がなされていない車両3について車両識別情報が登録されていることになる。そして、車両3は、車両3の車両識別情報がいずれかの供給装置5の識別情報リストに登録されている場合には、リスト登録通知を受信する。そのため、車両ECU330はリスト登録通知を受信することにより、自車両がいずれかの供給装置5に登録されていることを判別できる。そして、車両3が供給装置5の近傍領域外へ出た場合、供給装置5の識別情報リストからその車両3の車両識別情報は消去される。
【0172】
図6に戻る。また、電力伝送の終了A170において、受電装置20では、伝送電力をゼロにするために何もする必要がない。P2PSインターフェースは、車両3がD-WPTレーンにあるときにアクティブに保たれ、受電装置20の状態は、次の一次装置13からの電力伝送のために自動的にペアリングに遷移する。図6に示す遷移線のように、状態は電力伝送の終了A170からペアリングおよび位置合わせチェックA130に遷移する。図6に示すように、所定の遷移条件が成立することより、磁気結合チェックA140からペアリングおよび位置合わせチェックA130に遷移することや、電力伝送の実行A150からペアリングおよび位置合わせチェックA130に遷移することが可能である。ペアリングは、複数の一次コイル11に対して個別に行ってもよく、複数の一次コイル11を束ねて代表点で行ってもよい。
【0173】
そして、D-WPTサービスセッションA70は、車両ECU330からのD-WPT要求がない場合、または通信設定およびD-WPTサービスの要求A60から電力伝送の終了A170までの一連の状態が禁止されている場合、D-WPTサービスセッションの終了A80に遷移して、第1通信装置120と第3通信装置340との間の広域無線通信を停止する。例えば、バッテリ320における充電状態が高すぎるとき、または受電装置20が連続的な電力伝送のために熱すぎるとき、D-WPTは停止する。このような不要なD-WPTは、単にP2PSインターフェースを非アクティブ化することによって無効にすることができる。しかしながら、広域無線通信を停止することにより、送電ECU110は、確立した広域無線通信を終了することにより、D-WPTを必要とすることなく、車両3のために占有されたメモリを解放することができる。
【0174】
また、D-WPTサービスセッションA70は、図6に示す遷移線のような遷移に限定されない。D-WPTサービスセッションA70においてペアリングおよび位置合わせチェックA130以降のアクティビティが終了した際、電力伝送プロセスがD-WPTサービスセッションA70に留まる条件が成り立つ場合には、D-WPTサービスセッションの終了A80には遷移せず、互換性チェックおよびサービス認証A110に遷移する。例えば磁気結合チェックA140の状態において所定の遷移条件が成立した場合、状態は互換性チェックおよびサービス認証A110に遷移することができる。D-WPTサービスセッションA70における各アクティビティの遷移は、ワイヤレス電力伝送システム1の制御装置により制御される。ワイヤレス電力伝送システム1の制御装置は、送電ECU110と車両ECU330とを含む。送電ECU110は供給装置5の制御装置としての機能を含む。車両ECU330は受電装置20の制御装置としての機能を含む。
【0175】
図9は、ワイヤレス電力伝送システムにおける広域無線通信と狭域無線通信とを用いた情報の流れを説明するための模式図である。
【0176】
ワイヤレス電力伝送システム1は、広域無線通信においてクラウドとエッジとを含む。ワイヤレス電力伝送システム1では、クラウドがサーバ30を含み、エッジが車両3と供給装置5とを含む。そして、ワイヤレス電力伝送システム1は、互換性チェック(Compatibility check)およびサービス認証(Service authentication)A110に関して、サーバ30と供給装置5との二段階で互換性チェック(Compatibility check)を行うように構成されている。
【0177】
車両3は自車両が受電可能な場合、走行中に車両識別情報をサーバ30へ送信する。自車両が受電可能であるとは、受電装置20とバッテリ320とが正常な状態であって、バッテリ320のSOCに基づいて充電が可能であると判断したことを意味する。受電可能な車両3が車両識別情報をサーバ30に送信する。
【0178】
サーバ30は、広域無線通信によって受電可能な車両3の車両識別情報を受信し、車両識別情報とともに車両3に関する情報をリスト化する(Compatibility check)。車両3に関する情報は、受電装置20の互換性情報と、受電装置20の互換性タイプを示す情報とを含む。
【0179】
具体的には、サーバ30は車両識別情報を受信した場合、その車両3が受電可能な車両であると判断し、その車両識別情報を識別情報リスト700に登録する。識別情報リスト700は、車両識別情報と、互換性タイプと、受電装置20の互換性情報とを含む。サーバ30は車両識別情報を受信するたびに車両情報を識別情報リスト700に登録するので、識別情報リスト700は受電可能な車両3の情報からなるリストにリアルタイム更新されている。
【0180】
識別情報リスト700には、車両識別情報に紐づけられて受電装置20の互換性タイプと受電装置20の互換性情報とが登録されている。例えば、一つの車両3が複数の受電装置20を搭載している場合には、一つの車両識別情報に各受電装置20の互換性タイプおよび互換性情報が紐づけられた状態で識別情報リスト700を構成してもよい。
【0181】
互換性タイプは、互換性チェック(Compatibility check)に用いられる情報であり、「A」,「B」,「C」のようにグループ分けすることが可能である。互換性タイプは、ギャップクラス、WPTタイプなどの互換性情報の要素に基づいてタイプが分けられている。
【0182】
ギャップクラスとは、二次装置22が受電することができるギャップクラスを示す情報である。例えばギャップクラスはZ1,Z2,Z3などで示される。一例として、Z1は50mm≦h≦110mmであり、Z2は100mm≦h≦160mmであり、Z3は130mm≦h≦210mmである。hは二次コイル21と一次コイル11との上下方向の距離である。
【0183】
WPTタイプとは、受電側共振回路410の形状タイプ、すなわち二次コイル21のコイル形状を示す情報である。WTPタイプは円形やソレノイドなどで示される。
【0184】
例えば、WPTタイプが円形かつギャップクラスがZ1である場合、互換性タイプは「A」に分類される。同様に、WPTタイプが円形かつギャップクラスがZ2である場合、互換性タイプは「B」に分類され、WPTタイプが円形かつギャップクラスがZ3である場合、互換性タイプは「C」に分類される。加えて、互換性タイプは、WPTタイプがソレノイドである場合にギャップクラスがZ1,Z2,Z3のいずれかであることにより、「D」,「E」,「F」に分類される。
【0185】
また、識別情報リスト700に登録される互換性情報は、互換性情報の要素のうちのいずれかの情報を含めばよい。互換性情報の要素は、WPT電力クラス、ギャップクラス、WPT駆動周波数、WPT周波数調整、WPTタイプ、WPT回路トポロジー、詳細な位置合わせ方法、ペアリング方法、位置合わせ方法、電力調整機能の有無情報などを含む。
【0186】
供給装置5は、広域無線通信によって供給装置識別情報とともに供給装置5に関する情報をサーバ30に送信する。供給装置識別情報は、セグメント7の識別情報を含む。供給装置5に関する情報は、送電装置10の互換性情報を含む。送電装置10の互換性情報は、WPT電力クラス、ギャップクラス、WPTタイプなどの情報を含む。また、なお、セグメント7の識別情報をセグメントIDやセグメント識別情報と記載する場合がある。
【0187】
供給装置5が複数のセグメント7を含んで構成される場合、供給装置5は複数のセグメント7のうち、ワイヤレス電力伝送が可能なセグメント7の識別情報をサーバ30に送信する。
【0188】
また、供給装置5が備える複数のセグメント7は、必ずしも同一の構成でなくてもよい。例えば一つの供給装置5が三つのセグメント7を有し、第1セグメントはWPTタイプが円形かつギャップクラスがZ1、第2セグメントはWPTタイプが円形かつギャップクラスがZ1、第3セグメントはWPTタイプが円形かつギャップクラスがZ2である場合、第1セグメントの互換性タイプはA、第2セグメントの互換性タイプはA、第3セグメントの互換性タイプはBとなる。この場合、供給装置5がサーバ30に送信する供給装置識別情報には、第1セグメントの互換性タイプを示す情報と第1セグメントの識別情報とが紐づいた情報と、第2セグメントの互換性タイプを示す情報と第2セグメントの識別情報とが紐づいた情報と、第3セグメントの互換性タイプを示す情報と第3セグメントの識別情報とが紐づいた情報とが含まれる。
【0189】
供給装置5がセグメントIDを含む供給装置識別情報をサーバ30に送信するタイミングは、車両3の接近に関係なく行われる。つまり、狭域無線通信による車両3からの信号を受信するよりも前のタイミングで、供給装置5は供給装置識別情報をサーバ30に送信する。例えば一日に一回や、一日に複数回など、所定間隔を空けて定期的に供給装置5からサーバ30へと供給装置識別情報が送信される。供給装置5は、現在使用可能な一次装置13を含むセグメント7を対象にして、セグメントIDと互換性タイプを示す情報とを含む供給装置識別情報をサーバ30へ送信する。
【0190】
サーバ30は、供給装置5から受信した情報と、識別情報リスト700に登録されている車両3の情報とに基づいて、互換性のある供給装置5と車両3との組み合わせをリスト化して、この互換性リスト800を供給装置5に送信する。サーバ30は、互換性のある供給装置5と車両3との組み合わせをリスト化することにより、互換性チェック(Compatibility check)を行っていることになる。
【0191】
詳細には、サーバ30は、供給装置5から供給装置識別情報を受信すると、車両3についての識別情報リスト700を参照して、その供給装置5と互換性のある車両3を特定する。その際、サーバ30は、互換性タイプが一致することを抽出条件として、識別情報リスト700から互換性のある車両3に関する情報を抽出する。そして、サーバ30は、識別情報リスト700から抽出した情報を用いて、互換性のある車両3と供給装置5との組み合わせからなる互換性リスト800を作成する。
【0192】
サーバ30には受電可能な車両3の情報が集約されるため、識別情報リスト700を構成するデータ量が膨大になる。そのため、サーバ30が識別情報リスト700をそのまま供給装置5へ送信した場合には、サーバ30と供給装置5との間での通信量が膨大になってしまう。そこで、サーバ30は、供給装置5と互換性のある車両3の情報のみを抽出して、互換性リスト800を作成し、その互換性リスト800を供給装置5に送信する。これによりサーバ30と供給装置5との間の通信量を低減させることができる。
【0193】
そして、車両3が供給装置5に接近した際、狭域無線通信によって車両3から送信された車両識別情報を供給装置5が受信する。供給装置5は狭域無線通信により車両識別情報を受信すると、事前にサーバ30から取得している互換性リスト800を用いて車両3とのペアリングを行う。供給装置5は、狭域無線通信により受信した車両識別情報に基づいて互換性リスト800を参照し、当該車両識別情報に該当する車両情報を互換性リスト800から特定する。つまり、供給装置5は、車両識別情報と互換性リスト800とを用いてペアリングとともに互換性チェック(Compatibility check)を行っている。供給装置5が車両3とのペアリングを行うタイミングにおいて、無線通信としては、狭域無線通信による車両識別情報の送信および受信が行われるのみであり、広域無線通信が不要である。そのため、ペアリングのたびに広域無線通信によるサーバ30への問い合わせが不要となり、ペアリングについて高い応答性を確保することができる。供給装置5はペアリングした車両3に対して、セグメント7からワイヤレス電力伝送を行う。
【0194】
図10は、供給装置とサーバとの間で広域無線通信を用いた通信を実施する場合かつ車両と供給装置との間で狭域無線通信を用いた通信を実施する場合を示すシーケンス図である。
【0195】
供給装置5は、広域無線通信によってセグメント7の識別情報をサーバ30に送信する(ステップS101)。ステップS101では、セグメント7の識別情報を含む供給装置識別情報が供給装置5からサーバ30に送信される。
【0196】
サーバ30は、供給装置識別情報を受信すると、Compatibility checkを行う(ステップS102)。ステップS102では、サーバ30側での一段階目のCompatibility checkが行われる。このCompatibility checkでは、供給装置識別情報に含まれるセグメントIDと、識別情報リストに含まれる車両情報とに基づいて、互換性のある車両3と供給装置5との組み合わせがリスト化される。ステップS102においてサーバ30は、識別情報リスト700と供給装置識別情報とを用いて互換性リスト800を生成する。供給装置識別情報が複数のセグメントIDを含む場合、各セグメントIDの互換性タイプに基づいて、各セグメント7と互換性のある車両3が特定される。
【0197】
サーバ30は、供給装置5と互換性のある車両3の情報を供給装置5に送信する(ステップS103)。ステップS103では、ステップS102で生成された互換性リスト800が供給装置5に送信される。
【0198】
供給装置5は、サーバ30から互換性のある車両3の情報を受信すると、互換性リスト800を更新する(ステップS104)。ステップS104では、供給装置5側の互換性リスト800が更新される。供給装置5は、サーバ30から互換性リスト800を受信するたびに、車両識別情報の登録や消去など、互換性リスト800を最新の情報に更新する。ステップS101からステップS104までの処理は、供給装置5とサーバ30との間での広域無線通信を用いることにより行われる。
【0199】
そして、車両3は、狭域無線通信によって車両識別情報を供給装置5に送信する(ステップS105)。
【0200】
供給装置5は、狭域無線通信により車両3から車両識別情報を受信した場合、互換性リスト800を参照して、車両識別情報が一致する車両3とペアリングする(ステップS106)。ステップS106では、互換性リスト800の車両情報を参照し、ペアリングが行われるとともに、その車両情報に基づいた方法で供給装置5から車両3へ電力が伝送される。
【0201】
以上説明した通り、ワイヤレス電力伝送システム1によれば、サーバ30と供給装置5とにおいて二段階の互換性チェックを行うことができる。
【0202】
なお、ギャップクラスはZ1,Z2,Z3に限定されない。その数値も、50mm≦h≦110mm、100mm≦h≦160mm、130mm≦h≦210mmに限定されない。WPTタイプは円形とソレノイドに限定されない。
【0203】
また、互換性タイプは、WPTタイプとギャップクラスとの組み合わせに限定されない。ワイヤレス電力伝送システム1では互換性情報を用いて互換性タイプを設定することが可能である。さらに、互換性タイプを示す情報はA,B,Cなどの分類に限定されない。
【0204】
図11は、位置情報を用いた情報処理を実施する場合を示すシーケンス図である。
【0205】
車両3は、自車両の位置情報を含む車両情報をサーバ30に送信する(ステップS111)。ステップS111では、車両3の現在位置を示す位置情報が車両識別情報とともにサーバ30に送信される。
【0206】
供給装置5は、供給装置5の位置情報を含む供給装置情報をサーバ30に送信する(ステップS112)。ステップS112では、供給装置5の位置情報が供給装置識別情報とともにサーバ30に送信される。供給装置5は自身の位置情報を有する。
【0207】
サーバ30は、車両3からの車両情報と供給装置5からの供給装置情報とを受信すると、供給装置5の近傍領域内に位置する車両3を特定する(ステップS113)。ステップS113では、供給装置5の近傍領域内に位置する車両3の車両識別情報が特定される。供給装置5の近傍領域は、供給装置5から所定範囲を含むように設定された領域である。この近傍領域は供給装置5の位置情報に基づいて予め設定される。例えば、供給装置5の近傍領域は、供給装置5の位置を中心とした直径数km~数十kmの円に設定することが可能である。サーバ30は供給装置5の位置情報に基づいて供給装置5の位置を把握する。ステップS113において、サーバ30は、ある供給装置5に対して当該供給装置5で給電を行う可能性がある車両3を特定するために、車両3の位置情報と供給装置5の近傍領域とを用いてその近傍領域内に位置する車両3を特定する。
【0208】
サーバ30は、特定した車両3の情報に絞った互換性リストを供給装置5に送信する(ステップS114)。ステップS114では、供給装置5ごとに車両情報が絞られた互換性リストが供給装置5に送信される。サーバ30は、互換性リストのなかから、ステップS113で特定された車両3の情報を抽出した互換性リストを生成する。ステップS114において供給装置5に送信される互換性リストは、供給装置5の近傍領域内に位置する車両3に情報が絞られた互換性リストである。
【0209】
このように構成されたワイヤレス電力伝送システム1によれば、地域で区切って、数を絞ったかたちで供給装置5に情報を送信できる。これにより、供給装置5とサーバ30との間の通信量を低減でき、通信負荷を軽減することができる。仮に全ての供給装置5に全ての情報を送信する場合には通信量が膨大になり通信負荷が増大してしまう。これを防止するために、このワイヤレス電力伝送システム1では、車両3の位置情報と供給装置5の位置情報とを用いて、供給装置5の近傍領域内に位置する車両3を特定し、その車両3の情報に絞られた互換性リストをサーバ30から供給装置5に送信するように構成されている。
【0210】
なお、図11に示すステップS113では、車両3の目的地が設定されている場合、車両3の走行予定経路上に存在する供給装置5を対象にして、その供給装置5の近傍領域内に位置する車両3を特定してもよい。つまり、サーバ30は車両3の位置情報と車両3の進行方向と供給装置5の位置情報とに基づいて、供給装置5の近傍領域内に位置する車両3と特定してもよい。この場合、サーバ30は、車両3の走行予定経路で車両3の現在位置から数km先までに設置された供給装置5を対象にして互換性リストを送信する。これにより、車両3が通過した供給装置5は送信対象から除外されるため、不要な通信を抑制でき、通信量の低減を図ることができる。
【0211】
図12は、互換性トークンを用いた情報処理を実施する場合を示すシーケンス図である。なお、図12に示すステップS121~S123は、図11に示すステップS111~S113と同様の処理のため説明を省略する。
【0212】
サーバ30は、ステップS123の処理により特定された車両3に互換性トークンを送信するとともに、その近傍領域に該当する供給装置5に互換性トークンを送信する(ステップS124)。互換性トークンは、車両3と供給装置5とが互換性を有する場合に生成されるトークンである。サーバ30は互換性トークンを生成することができる。ステップS124において、サーバ30は、供給装置5の近傍領域内に位置する車両3を送信対象にして、当該近傍領域に該当する供給装置5と互換性を有する互換性トークンを送信する。さらに、サーバ30は供給装置5にも互換性トークンを送信する。
【0213】
供給装置5は、サーバ30から互換性トークンを受信すると、互換性トークンを互換性の参照先として設定する(ステップS125)。ステップS125では、供給装置5が互換性チェックを行う際の参照先に、サーバ30から取得した互換性トークンが設定される。供給装置5は互換性トークンを用いて車両3の認証を行うことができる。
【0214】
車両3は、サーバ30から互換性トークンを受信すると、互換性トークンに関する情報を狭域無線通信により供給装置5へ送信する(ステップS126)。ステップS126では、供給装置5との間での通信において、互換性トークンに関する情報が車両3から供給装置5へ送信される。互換性トークンに関する情報とは、互換性トークンそのものであってもよく、あるいは互換性トークンにより生成された情報であってもよい。
【0215】
供給装置5は、車両3からの互換性トークンに関する情報を受信すると、サーバ30から取得した互換性トークンを参照し、車両3との互換性が確認できた場合に、その車両3への給電動作に移る(ステップS127)。ステップS127では、互換性トークンを用いた互換性チェックおよびペアリングが行われる。供給装置5は、広域無線通信によりサーバ30から取得した互換性トークンと、狭域無線通信により車両3から取得した互換性トークンに関する情報とに基づいて、互換性トークンの整合性を確認する。すなわち、その車両3の互換性を確認する。そして、互換性が確認できた場合に、供給装置5はその車両3に対する電力供給動作を行う。
【0216】
図12に示すように、サーバ30は車両3と供給装置5とから取得した情報に基づいて互換性トークンを生成し、その供給装置5の近傍領域内に位置する車両3とその近傍領域に該当する供給装置5とに互換性トークンを送信する。そして、供給装置5は互換性トークンの整合性によって車両3との互換性を確認する。
【0217】
このように構成されたワイヤレス電力伝送システム1によれば、近傍領域内という所定領域内において固有で更新される互換性トークンを用いてデバイス認証を行うので、セキュリティが向上する。
【0218】
なお、互換性トークンは、それ自体が認証機能を果たす情報であってもよく、あるいはワンタイムパスワードのような認証情報を生成するものであってもよい。また、互換性トークンは、車両3に個別に生成されてもよい。あるいは、ワイヤレス電力伝送の料金体系によっては複数の車両3で共通の互換性トークンを用いてもよい。また、互換性トークンは互換性リストとともに送信されてもよい。
【0219】
図13は、供給装置が供給装置情報を送信するタイミングを説明するためのシーケンス図である。なお、図13に示すステップS132~S134は、図11に示すステップS111,S113~S114と同様の処理のため説明を省略する。
【0220】
供給装置5は、自身の位置情報を含む供給装置情報をサーバ30に送信する(ステップS131)。供給装置情報は、識別情報、型式、敷設年月日、位置情報、正常通知、異常通知、供給電力量などを含む。ステップS131では、供給装置識別情報とともに供給装置5の位置情報がサーバ30に送信される。また、ステップS131による供給装置情報の送信タイミングは複数存在する。供給装置5は複数のタイミングで情報をサーバ30に送信することができる。ステップS131による供給装置情報の送信タイミングには、地上への敷設時が含まれる。そのため、ステップS131では供給装置5が地上に敷設されたタイミングで供給装置識別情報とともに位置情報がサーバ30に送信される。
【0221】
そして、供給装置5は、サーバ30から互換性リストを受信した後に、自身の位置情報に変更があるか否かを判定する(ステップS135)。
【0222】
供給装置5の位置情報に変更がある場合(ステップS135:Yes)、この制御ルーチンはステップS131にリターンする。この場合、ステップS131において供給装置5は位置情報の変更情報を含む供給装置情報をサーバ30に送信する。すなわち、ステップS131による供給装置情報の送信タイミングには、位置情報の変更時が含まれる。そのため、ステップS131では供給装置5の情報が変更されたタイミングで供給装置識別情報とともに新しい位置情報がサーバ30に送信される。そして、サーバ30は、供給装置5から位置情報の変更情報を受信した場合、その変更情報に基づいて供給装置5の位置情報を更新する。
【0223】
一方、供給装置5の位置情報に変更がない場合(ステップS135:No)、この制御ルーチンは終了する。
【0224】
図13に示すように、供給装置5は、敷設時にサーバ30に対して供給装置情報を送信し、位置情報に変更がある場合に変更情報をサーバ30に送信する。供給装置情報のうち、型式と敷設年月日とは固定であり、位置情報は変更の可能性があるものの変更頻度が低い。そのため、位置情報の変更時を送信トリガとすることにより、供給装置5からサーバ30への送信頻度が低くなり、通信負荷を軽減することができる。要するに、位置情報の変更がない限り、敷設時の一回だけ供給装置情報を供給装置5からサーバ30に送信すればよいことになる。
【0225】
図14は、複数の車両を代表した車両がサーバとの間で広域無線通信を実施する場合を示す模式図である。
【0226】
図14に示すように、車両3は、自車両の近くを走行中の別の車両3との間で通信(車車間通信)を行うことが可能である。車車間通信では、自車両の車両情報を別の車両3に送信するとともに、別の車両3の車両情報を受信することができる。そして、車車間通信が可能な複数の車両3のなかから代表した車両3が、複数の車両3ごとの車両情報をまとめて広域無線通信によりサーバ30に送信する。サーバ30は、代表した車両3から複数の車両3の車両情報を受信した場合、複数の車両3に対応する互換性リストを、その代表した車両3へと送信する。代表した車両3は、サーバ30から複数の車両3に対応する互換性リストを受信する。そして、代表した車両3は、サーバ30から取得した互換性リストを、車車間通信を行った別の車両3へと送信する。
【0227】
このように複数の車両3のなかから代表した車両3がサーバ30と通信し、代表した車両3による通信のハブ化によってサーバ30と車両3との通信頻度を減らすことができる。そのため、広域無線通信におけるサーバ30に対する通信相手が減るため、通信頻度を低減することができる。
【0228】
なお、複数の車両3と代表した車両3とは、例えば高速道路を同じ進行方向に走行中の車両3のように、車車間通信が所定時間にわたり継続することが可能な車両3を対象とすることができる。要するに、高速道路に限らず、隊列走行を実施する場合など、代表した車両3による通信のハブ化を適用することが可能である。
【0229】
また、複数の車両3を代表した車両3が広域無線通信によりサーバ30から取得する情報は、互換性リストに限定されず、互換性トークンであってもよい。この場合、代表した車両3は、サーバ30から取得した互換性トークンを、車両情報をまとめる際に車車間通信を行った別の車両3へと送信する。
【0230】
次に、サーバ30に登録されている情報を更新する際のトリガについて説明する。トリガには、サーバ30側がトリガとなる場合と、車両3側がトリガとなる場合と、図13に示すように供給装置5側がトリガになる場合とが含まれる。
【0231】
例えばサーバ30側がトリガとなる場合として、サーバ30は、所定時間が経過するごとに互換性リストまたは互換性トークンを更新する。この場合、サーバ30は、前回の更新タイミングから所定時間が経過するまでに車両3および供給装置5から受信した変更情報に基づいて、互換性リストまたは互換性トークンを更新する。なお、更新対象は、互換性リルと互換性トークンとの両方であってもよい。
【0232】
また、車両3側がトリガとなる場合として、車両3は、所定時間ごとに車両情報をサーバ30へと送信し、サーバ30に対して車両情報を更新する。
【0233】
さらに、車両3側がトリガとなる場合として、車両3が所定距離だけ移動したタイミングや、車両3が所定領域に進入したタイミングなどが挙げられる。車両3が所定領域に進入した例として、複数の供給装置5からなる供給装置群に対して設定された所定領域内を車両3が走行中の場合が挙げられる。
【0234】
図15に示すように、第1供給装置群910と第2供給装置群920とが、車両3の進行方向に並んで存在する場合がある。第1供給装置群910に対して設定された所定領域である第1領域911と、第2供給装置群920に対して設定された所定領域である第2領域921とは、一部が重複している。この場合、第1供給装置群910に対応する第1領域911内を走行中の車両3は、第2供給装置群920に対応する第2領域921との重複領域930に進入した際、車両情報をサーバ30に送信する。車両3は第1供給装置群910上を走行中に、第2供給装置群920の手前で車両情報をサーバ30へ送信している。
【0235】
なお、第1領域911は第1供給装置群910に含まれる供給装置5の近傍領域であってもよい。第2領域921は第2供給装置群920に含まる供給装置5の近傍領域であってもよい。また、車両位置は、GPSを用いて特定してもよく、走行距離や車速などを用いて予測してもよい。
【0236】
図16は、車両情報を消去する場合を示すシーケンス図である。なお、図16に示すステップS141,S144~S146は、図13に示すステップS131,S133~S135と同様の処理であるため説明を省略する。
【0237】
車両3は、自車両に乗員が乗り込んだことを検知する(ステップS142)と、車両情報をサーバ30に送信する(ステップS143)。
【0238】
そして、車両3は、自車両から乗員が下車したことを検知する(ステップS147)と、車両情報の消去をリクエストする信号(情報消去の要求信号)をサーバ30に送信する(ステップS148)。
【0239】
サーバ30は、車両3から情報消去の要求信号を受信すると、要求信号を送信した車両3に該当する車両情報を互換性リストから消去する(ステップS149)。
【0240】
このように不要な車両情報を互換性リストから消去することにより、供給装置5へ送信される互換性リストの情報量を減らすことができる。
【0241】
なお、ステップS142は、乗員が車両3の乗り込んだことを検知することに限定されず、車両3が起動したことを検知することであってもよい。この場合、ステップS143は、車両3の起動を検知したタイミングで車両情報をサーバ30に送信する。同様に、ステップS147は、車両3から乗員が下車したことを検知することに限定されず、車両3の走行が終了したことを検知することであってもよい。ステップS148は、車両3の走行終了を検知したタイミングで情報消去の要求信号をサーバ30に送信する。つまり、ステップS142は、車両3のイグニッションがオンになったことを検知してもよい。また、ステップS148は、車両3のイグニッションがオフになったことを検知してもよい。
【0242】
図17は、複数のサーバによって情報処理を実施する場合を説明するための模式図である。
【0243】
図17に示すように、ワイヤレス電力伝送システム1は、車両情報を管理する第1管理サーバ50と、供給装置情報を管理する第2管理サーバ60と、ワイヤレス電力伝送に関する情報を管理する第3管理サーバ70と、を備える。
【0244】
第1管理サーバ50は、車両情報管理サーバである。第1管理サーバ50は、ネットワーク40を介して車両3と通信可能に接続されている。第1管理サーバ50は車両3から送信された車両情報を受信するとともに車両3に各種情報を送信する。また、第1管理サーバ50と第3管理サーバ70とは通信可能に接続されている。
【0245】
第2管理サーバ60は、供給装置情報管理サーバである。第2管理サーバ60は、ネットワーク40を介して供給装置5と通信可能に接続されている。第2管理サーバ60は供給装置5から送信された供給装置情報を受信するとともに供給装置5に各種情報を送信する。また、第2管理サーバ60と第3管理サーバ70とは通信可能に接続されている。
【0246】
第3管理サーバ70は、WPT管理サーバである。第3管理サーバ70は第1管理サーバ50および第2管理サーバ60と情報の送受信が可能である。第3管理サーバ70は、車両情報のうちのワイヤレス電力伝送に関係する情報を第1管理サーバ50から取得し、供給装置情報のうちのワイヤレス電力伝送に関する情報を第2管理サーバ60から取得する。そして、第3管理サーバ70は、第1管理サーバ50および第2管理サーバ60から受信した情報に基づいて互換性リストを作成および管理する。
【0247】
また、第3管理サーバ70は、互換性リストを第2管理サーバ60に送信する。第2管理サーバ60は、第3管理サーバ70から取得した互換性リストを用いて、車両情報を絞り込む処理を実施することができる。つまり、第2管理サーバ60は、第3管理サーバ70から受信した互換性リストに基づいて、供給装置5ごとの互換性リストを生成することができる。第2管理サーバ60は、近傍領域に応じて車両情報を絞り込んだ互換性リストを供給装置5に送信する。供給装置5は、第2管理サーバ60から送信された互換性リストを受信する。
【0248】
なお、第3管理サーバ70は、互換性リストに限らず、互換性トークンと管理してもよい。この場合、第3管理サーバ70は、供給装置5の近傍領域内に存在する車両3の識別情報を特定し、その特定した車両3と当該近傍領域の供給装置5とで互換性を有する互換性トークンを生成する。また、第3管理サーバ70は、その互換性トークンを第1管理サーバ50と第2管理サーバ60とに送信する。第1管理サーバ50は、第3管理サーバ70から取得した互換性トークンを該当する車両3に送信する。第2管理サーバ60は、第3管理サーバ70から取得した互換性トークンを該当する供給装置5に送信する。そして、車両3は第1管理サーバ50から送信された互換性トークンと受信する。供給装置5は第2管理サーバ60から送信された互換性トークンを受信する。
【符号の説明】
【0249】
1 ワイヤレス電力伝送システム
2 供給設備
3 車両
4 道路
5 供給装置
6 交流電源
7 セグメント
8 管理装置
10 送電装置
11 一次コイル
13 一次装置
20 受電装置
21 二次コイル
22 二次装置
110 送電ECU
330 車両ECU
240 送電側共振回路
410 受電側共振回路
530 送電制御部
700 識別情報リスト
800 互換性リスト
図1
図2
図3
図4
図5
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図17