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特開2024-109011温度に起因する出力損失を補償する最適化されたホルベックポンプ段を有する真空ポンプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109011
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】温度に起因する出力損失を補償する最適化されたホルベックポンプ段を有する真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 19/04 20060101AFI20240805BHJP
   F04D 29/18 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
F04D19/04 D
F04D29/18 101Z
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023134345
(22)【出願日】2023-08-22
(31)【優先権主張番号】23154256
(32)【優先日】2023-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】23175631
(32)【優先日】2023-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】520415627
【氏名又は名称】プファイファー・ヴァキューム・テクノロジー・アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン・バーダー
(72)【発明者】
【氏名】マクシミリアン・ビルケンフェルト
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ホフマン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・シュヴァイクヘーファー
【テーマコード(参考)】
3H130
3H131
【Fターム(参考)】
3H130AA12
3H130AA22
3H130AB13
3H130AB28
3H130AB52
3H130AB53
3H130AB63
3H130AB65
3H130AB68
3H130AB69
3H130AC01
3H130BA38B
3H130BA38C
3H130BA38Z
3H130BA66B
3H130BA66C
3H130BA66Z
3H130BA73B
3H130BA73C
3H130BA73Z
3H130CB06
3H130DA02X
3H130DB10Z
3H130EA02C
3H130EA02D
3H130EA06B
3H130EA06C
3H130EA06Z
3H130EA07B
3H130EA07C
3H130EA07Z
3H131AA02
3H131AA07
3H131BA08
3H131CA01
(57)【要約】
【課題】真空ポンプにおいて、ホルベックステータ又はホルベックステータスリーブの温度に依存する変形に基づいて、ホルベックポンプ段を有する真空ポンプのポンピング出力が低下する問題点の解決手段を提供する。
【解決手段】真空ポンプ111の冷間状態で、雌ねじ山18は、ホルベックステータスリーブ169の自由端部22では、ホルベックステータスリーブの固定端部24における公称内径よりも小さい公称内径dniを有し、雄ねじ山20も、真空ポンプの冷間状態で、ホルベックステータスリーブの自由端部では、ホルベックステータスリーブの固定端部における公称外径よりも小さい公称外径dnaを有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプ(111)、特にターボ分子真空ポンプ(111)であって、
ホルベックロータとホルベックステータとを有する少なくとも1つのホルベックポンプ段(10)を備え、
ホルベックロータは、ハブ(161)が設けられたロータシャフト(153)と、ハブ(161)に設けられた少なくとも1つのホルベックロータスリーブ(163、165)とを有し、ホルベックロータスリーブ(163、165)は、ロータシャフトを同心に取り囲み、
ホルベックステータは、ホルベックロータスリーブ(163、165)に対して同心に配置されたホルベックステータスリーブ(169)を有し、ホルベックステータスリーブ(169)は、真空ポンプ(111)の定位置のハウジング部分に取り付けられた固定端部(24)と、固定端部(24)に対して軸方向で反対側に位置する自由端部(24)と、雌ねじ山(18)が形成された内側表面(12)と、雄ねじ山(20)が形成された外側表面(14)とを有する、真空ポンプにおいて、
真空ポンプ(111)の冷間状態で、雌ねじ山(18)は、ホルベックステータスリーブ(169)の自由端部(22)では、ホルベックステータスリーブ(169)の固定端部(24)における公称内径よりも小さい公称内径(dni)を有し、雄ねじ山(20)も、真空ポンプ(111)の冷間状態で、ホルベックステータスリーブ(169)の自由端部(22)では、ホルベックステータスリーブ(169)の固定端部(24)における公称外径よりも小さい公称外径(dna)を有することを特徴とする、真空ポンプ(111)。
【請求項2】
ホルベックステータスリーブ(169)の雌ねじ山(18)の公称内径(dni)が、ホルベックステータスリーブ(169)の自由端部(22)へ向けて漸次又は段階的に減少することを特徴とする、請求項1に記載の真空ポンプ(111)。
【請求項3】
真空ポンプ(111)の運転時の熱間の安定した状態で、ホルベックロータスリーブ(165)と雌ねじ山(18)との間に、ホルベックステータスリーブ(169)の固定端部(24)と自由端部(22)との間で本質的に一定の大きさ、特に一定の大きさを有するホルベック間隙(175)が生じるように、ホルベックステータスリーブ(169)の雌ねじ山(18)の公称内径(dni)が、ホルベックステータスリーブ(169)の自由端部(22)へ向けて減少することを特徴とする、請求項1又は2に記載の真空ポンプ(111)。
【請求項4】
雌ねじ山(18)は、ホルベックステータスリーブ(169)の固定端部(24)と自由端部(22)との間で一定のねじ山深さを有し、ホルベックステータスリーブ(169)の内側表面(12)は、真空ポンプ(111)の冷間状態でホルベックステータスリーブ(169)の自由端部(22)へ向けて減少する雌ねじ山(18)の谷径(dki)を規定することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の真空ポンプ(111)。
【請求項5】
ホルベックステータスリーブ(169)の内側表面(12)は、真空ポンプ(111)の冷間状態でホルベックステータスリーブ(169)の固定端部(24)と自由端部(22)との間で一定である雌ねじ山(18)の谷径(dki)を規定し、雌ねじ山(18)は、ホルベックステータスリーブ(169)の自由端部(22)へ向けて増加するねじ山深さを有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の真空ポンプ(111)。
【請求項6】
ホルベックステータスリーブ(169)の雄ねじ山(18)の公称外径(dna)は、ホルベックステータスリーブ(169)の自由端部(22)へ向けて漸次又は段階的に減少することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の真空ポンプ(111)。
【請求項7】
真空ポンプ(111)の運転時の熱間の安定した状態で、ホルベックロータスリーブ(163)と雄ねじ山(20)との間に、ホルベックステータスリーブ(169)の固定端部(24)と自由端部(22)との間で本質的に一定の大きさ、特に一定の大きさを有する半径方向のホルベック間隙(173)が生じるように、ホルベックステータスリーブ(169)の雄ねじ山(20)の公称外径(dna)が、ホルベックステータスリーブ(169)の自由端部(22)へ向けて減少することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の真空ポンプ(111)。
【請求項8】
雄ねじ山(20)は、ホルベックステータスリーブ(169)の固定端部(24)と自由端部(22)との間で一定のねじ山深さを有し、ホルベックステータスリーブ(169)の外側表面(14)は、真空ポンプ(111)の冷間状態でホルベックステータスリーブ(169)の自由端部(22)へ向けて減少する、雄ねじ山(20)の谷径(dka)を規定することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の真空ポンプ(111)。
【請求項9】
ホルベックステータスリーブ(169)の外側表面(14)は、真空ポンプ(111)の冷間状態でホルベックステータスリーブ(169)の固定端部(24)と自由端部(22)との間で一定である雄ねじ山(20)の谷径(dka)を規定し、雄ねじ山(20)は、ホルベックステータスリーブ(169)の自由端部(22)へ向けて減少するねじ山深さを有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の真空ポンプ(111)。
【請求項10】
ホルベックステータスリーブ(169)は、ホルベックステータスリーブ(169)の固定端部(24)と自由端部(22)との間で一定である壁部厚さを有する、又は
ホルベックステータスリーブ(169)は、ホルベックステータスリーブ(169)の自由端部(22)へ向けて漸次又は段階的に減少する壁部厚さを有する
ことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の真空ポンプ(111)。
【請求項11】
ホルベックロータは、ロータシャフト(153)を同心に取り囲む内側及び外側のホルベックロータスリーブ(163)を有し、外側のホルベックロータスリーブ(163)は、ホルベックステータスリーブ(169)を同心に取り囲み、ホルベックステータスリーブは、内側のホルベックロータスリーブ(165)を同心に取り囲むことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の真空ポンプ(111)。
【請求項12】
ハブ(161)が、ロータシャフト(153)に取り付けられていて、ホルベックロータスリーブ(163、165)が、ハブ(161)に取り付けられていることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の真空ポンプ(111)。
【請求項13】
ハブ(161)が、ロータシャフト(153)と一体に形成されていて、他方、ホルベックロータスリーブ(163、165)は、ハブ(161)に取り付けられている、又は
ホルベックロータスリーブ(163、165)が、ハブ(161)と一体に形成されていて、ハブ(161)が、ロータシャフト(153)に取り付けられている
ことを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の真空ポンプ(111)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の、ここでは単にポンプとも称される真空ポンプ、特にターボ分子真空ポンプであって、ホルベックロータとホルベックステータとを有する少なくとも1つのホルベックポンプ段を備え、ホルベックロータは、ハブが設けられたロータシャフトと、ハブに設けられた少なくとも1つのホルベックロータスリーブとを有し、ホルベックロータスリーブは、ロータシャフトを同心に取り囲み、ホルベックステータは、ホルベックロータスリーブに対して同心に配置されたホルベックステータスリーブを有し、ホルベックステータスリーブは、真空ポンプの定位置のハウジング部分に取り付けられた固定端部と、固定端部に対して軸方向で反対側に位置する自由端部と、雌ねじ山が形成された内側表面と、雄ねじ山が形成された外側表面とを有する、真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
真空ポンプは、様々な技術分野で使用される。要求に応じて、真空ポンプは、1つ又は複数のポンプ段を有する。概して、ホルベックポンプ段は、分子真空ポンプの一種に含まれ、そして位置固定のホルベックステータに対して相対的にホルベックロータを回転させることによって分子流を発生させ、分子流は、真空ポンプの運転中に真空ポンプを加温する。原則として、真空ポンプは、1つ又は複数のホルベック段を有してよく、この場合、複数のホルベック段は、互いに直列でも並列でも運転できる。典型的には、ホルベック段は、ターボ分子真空ポンプに使用され、流れ方向で1つ又は複数のターボ分子ポンプ段に後置される。
【0003】
ホルベック段は、ホルベックロータとホルベックステータとを有し、この場合、ホルベックロータは、ロータシャフトを有し、ロータシャフトには、例えばディスク状のホルベックハブによって、1つ又は複数のホルベックロータスリーブが同心に取り付けられている。ホルベックステータは、一条又は多条のホルベックねじ山を有する。圧送されるべき気体分子は、ホルベックステータに対して相対的にホルベックロータを回転運動させることによって、ねじ条に沿ってそれぞれのホルベックポンプ段の吸気口から排気口へ圧送される。ねじ条は、ウェブの壁によって画定された螺旋状に周回するホルベック溝を有し、ホルベック溝において、ロータスリーブがステータスリーブに対して相対的に回転すると気体分子が圧送される。逆流損失を最小限に抑えるために、ウェブ先端又はねじ山先端とロータスリーブとの間の半径方向のホルベック間隙の幅は、できるだけ小さく維持されるべきである。
【0004】
さらに、いわゆる「折り畳まれた」ホルベックユニットが公知であり、このホルベックユニットでは、複数のホルベック段が互いに同心に内外に組み込まれているので、半径方向に直接に連続するホルベック段のポンピング方向は、互いに逆向きである。したがって、流れ方向で連続する2つのホルベック段、すなわち(半径方向で)外側のホルベック段と(半径方向で)内側のホルベック段とは、2つのロータスリーブの間に位置する、両側でそれぞれホルベックねじ山を具備する共通のホルベックステータを有してよい。
【0005】
この場合、ホルベックステータは、真空ポンプの定位置のハウジング部分に、例えばプレス嵌めによって取り付けられた固定端部と、ロータハブ付近の、固定端部に対して軸方向で反対側に位置する自由端部と、雌ねじ山が形成された内側表面と、雄ねじ山が形成された外側表面とを有する。ホルベックステータの断面積が小さいことに基づいて、導入された熱量を放出するためにホルベックステータ内に比較的高い温度差が必要とされる。これにより、自由端部で最高温度を有する温度プロファイルが生じる。
【0006】
ホルベックステータスリーブの加温の結果、ホルベックステータスリーブは、その自由端部へ向けて半径方向に次第に大きく拡開するので、ホルベックステータスリーブは、固定端部を起点として、ホルベックステータスリーブの自由端部へ向けてその目標幅又は公称幅から次第に大きく逸脱する。さらに、その結果、真空ポンプの排気速度ひいてはポンプ出力がポンプ運転中に望ましくない形で低下してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の基礎をなす課題は、ホルベックステータ又はホルベックステータスリーブの温度に依存する変形に基づいて、ホルベックポンプ段を有する真空ポンプのポンピング出力が低下する、前述の問題点の解決手段を提供することである。換言すると、本発明によって、比較的高い温度での運転条件下でも、そのために設定された真空ポンプの排気速度が達成されるように配慮されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1の特徴を有する真空ポンプによって、特に、室温での真空ポンプの冷間状態で、雌ねじ山が、ホルベックステータスリーブの自由端部では、ホルベックステータスリーブの固定端部における公称内径よりも小さい公称内径を有し、これに対応する形で、雄ねじ山も、室温での真空ポンプの冷間状態で、ホルベックステータスリーブの自由端部では、ホルベックステータスリーブの固定端部における公称外径よりも小さい公称外径を有するによって解決される。
【0009】
本発明の関連において、真空ポンプの冷間状態が言及されていると、これは、約20℃の範囲の室温で持続的にオフされた運転状態において真空ポンプが有する、真空ポンプの温度と解される。換言すると、要するに真空ポンプ及び特にホルベックステータスリーブは、冷間状態で、約20度の範囲の温度を有する。これに対して、本発明の関連において、真空ポンプの運転時の熱間の安定した状態又は熱的定常態が言及されると、この状態は、真空ポンプが持続的にその定格回転速度で運転されるときに達成される、真空ポンプの温度を表す。
【0010】
ホルベックステータスリーブは、本発明による構成では、その自由端部で、それぞれ雌ねじ山又は雄ねじ山のウェブ先端又はねじ山先端の間で測定された公称内径又は公称外径を有し、ひいてはホルベックステータスリーブは、その自由端部で、その固定端部における内周及び外周よりも小さい内周及び外周を有するという事実に基づいて、ホルベックステータスリーブは、これにより、運転中、自由端部で、温度に応じて、内側及び/又は外側のホルベック間隙が所望の形態を有するまで半径方向に拡開し得る。
【0011】
したがって、本発明によれば、ホルベックステータスリーブは、冷間状態では、所望のホルベック間隙を得るために、ホルベックステータスリーブの目標形態形から逸脱する構成を有する。したがって、運転中、ホルベックステータスリーブは、温度に応じて、真空ポンプの運転時の熱間状態で、所望のホルベック間隙が生じるように変形し得る。
【0012】
以下、ここで本発明の好適な形態について記述する。さらなる形態は、従属請求項、図面の記載及び図面自体から明らかにすることができる。
【0013】
一形態によれば、ハブがロータシャフトに取り付けられていて、ホルベックロータスリーブがハブに取り付けられている、ことが想定され得る。したがって、ハブ及びロータシャフトは、別個に取扱い可能な部品であり、これらの部品は、真空ポンプを組み立てる間に互いに着脱自在に又は着脱不能に結合される。同様に、この形態では、ハブ及びホルベックロータスリーブは、別個に取扱い可能な部品であり、これらの部品は、真空ポンプを組み立てる間に互いに着脱自在に又は着脱不能に結合され得る。
【0014】
前述の形態に対して代替的に、ハブが、ロータシャフトと一体に形成されていて、他方、ホルベックロータスリーブが、ハブに取り付けられている、又はホルベックロータスリーブが、ハブと一体に形成されていて、ハブが、ロータシャフトに取り付けられている、ことが想定され得る。
【0015】
ホルベックステータは、雌ねじ山と雄ねじ山とを具備するホルベックステータスリーブを有する両側のホルベックステータとして構成されているので、ホルベックロータは、結果として、内側のホルベックロータスリーブと外側のホルベックロータスリーブとを有し、その両方が、ロータシャフトを同心に取り囲み、この場合、外側のホルベックロータスリーブが、ホルベックステータスリーブを同心に取り囲み、ホルベックステータスリーブが、内側のホルベックロータスリーブを同心に取り囲む。したがって、内側のホルベックロータスリーブは、ホルベックステータスリーブの雌ねじ山と共に内側のホルベックポンプ段を形成し、他方、外側のホルベックステータスリーブは、ホルベックロータスリーブの雄ねじ山と共に外側のホルベックポンプ段を形成する。この場合、本発明の一観点によれば、冷間状態で、内側のホルベックポンプ段と外側のホルベックポンプ段との両方のホルベック間隙の構成は、それぞれのホルベック間隙の所望の構成から逸脱する、ことが想定され得る。しかし、ホルベックステータスリーブは、自由端部で、その固定端部における公称内径及び公称外径よりも小さい公称内径及び公称外径を有するという事実に基づいて、真空ポンプの運転中、その自由端部で、温度に応じて半径方向に拡開し得るので、内側のホルベックポンプ段と外側のホルベックポンプ段との両方が、熱的定常状態で、所望の構成に少なくとも近似するホルベック間隙を有する。
【0016】
確かに、ホルベックステータスリーブの雌ねじ山の内径は、その自由端部へ向けて段階的に減少し得るが、好適な一形態によれば、真空ポンプの冷間状態で、ホルベックステータスリーブの雌ねじ山の公称内径が、その自由端部へ向けて連続的に又は漸次減少する、ことが想定され得る。例えば、雌ねじ山の公称内径は、ホルベックステータスリーブの自由端部に接近するにつれ、線形に又は凹状のカーブを有する関数に従って減少し得る。
【0017】
適切な形で、真空ポンプの冷間状態で、ホルベックステータスリーブの雄ねじ山の公称外径は、その自由端部の方へ段階的に又は漸次減少し得、この場合、後者のケースでは、公称外径は、ホルベックステータスリーブの自由端部に接近するにつれ、直線的に又は凸状のカーブを有する関数に従って減少し得る。いずれの場合にも、公称内径又は公称外径は、ホルベックステータスリーブの自由端部へ向けて漸次又は単調に減少し、このことは、ホルベックステータスリーブが、その自由端部で、最小の公称内径と公称外径とを有することを意味する。このことは、ホルベックステータが、その自由端部で、動作に起因して最高温度を有し、ゆえにそこで最大の熱に起因する拡開が生じるという事実によるものである。したがって、ホルベックステータスリーブは、その自由端部で、最小の公称内径と最小の公称外径との両方を有し、これによりホルベックステータの温度に起因する変形をある程度補整できる。
【0018】
さらに別の一形態によれば、真空ポンプの冷間状態で、ホルベックステータスリーブの雄ねじ山の公称外径が、ホルベックステータスリーブの自由端部へ向けて次のように減少する、すなわち真空ポンプの運転時の熱間の安定した状態で、ホルベックロータスリーブと雄ねじ山、特に雄ねじ山のねじ山先端との間に、ホルベックステータスリーブの固定端部と自由端部との間で本質的に一定の幅を有する半径方向のホルベック間隙が生じるように減少する、ことが想定され得る。これに対して付加的又は代替的に、別の一形態によれば、真空ポンプの冷間状態で、ホルベックステータスリーブの雌ねじ山の公称内径が、ホルベックステータスリーブの自由端部へ向けて次のように減少する、すなわち真空ポンプの運転時の熱間の安定した状態で又は熱的定常状態で、ホルベックロータスリーブと雌ねじ山、特に雌ねじ山のねじ山先端との間に、ホルベックステータスリーブの固定端部と自由端部との間で本質的に一定の幅を有する半径方向のホルベック間隙が生じるように減少する、ことが想定され得る。
【0019】
熱的定常状態で一定の大きさのホルベック間隙を形成できるようにするために、真空ポンプの冷間状態で、ホルベックステータスリーブの雌ねじ山又は雄ねじ山の公称内径と公称外径との両方が、既に前述した形でホルベックステータスリーブの自由端部へ向けて漸次減少する、ことが有利であると判明している。ゆえに、要するにホルベックステータスリーブの温度は、運転中、その自由端部へ向けて同様に漸次増加し、この場合、ホルベックステータスリーブは、その自由端部で、最高温度を有する。したがって、ホルベックステータスリーブの自由端部へ向けて公称内部及び公称外径が減少することは、その自由端部へ向けたホルベックステータスリーブの温度プロファイルにある程度追従し、これにより、ホルベックステータスリーブの温度に起因する拡開は、的確に、内側のホルベックポンプ段と外側のホルベックポンプ段との両方のホルベック間隙が運転時の熱間の安定した状態で本質的に一定の大きさを有するように補整できる。
【0020】
さらに別の一形態によれば、ホルベックステータスリーブの雌ねじ山は、真空ポンプの冷間状態で、その固定端部と自由端部との間で一定のねじ山深さを有し、雌ねじ山の溝底を形成する、ホルベックステータスリーブの内側表面は、真空ポンプの冷間状態でホルベックステータスリーブの自由端部へ向けて減少する雌ねじ山の谷径を規定する、ことが想定され得る。これに対して付加的又は代替的に、別の一形態によれば、ホルベックステータスリーブの雄ねじ山は、真空ポンプの冷間状態で、その固定端部と自由端部との間で、一定のねじ山深さを有し、雌ねじ山の溝底を形成する、ホルベックステータスリーブの外側表面は、真空ポンプの冷間状態でホルベックステータスリーブの自由端部へ向けて減少する雄ねじ山の谷径を規定する、ことが想定され得る。
【0021】
雌ねじ山と雄ねじ山との両方のねじ山深さが一定で、雌ねじ山の谷径及び雄ねじ山の谷径がホルベックステータスリーブの自由端部へ向けて減少する場合、別の一形態によれば、ホルベックステータスリーブは、真空ポンプの冷間状態で、雌ねじ山の谷径及び雄ねじ山の谷径がホルベックステータスリーブの自由端部へ向けて同じ強さで又は同じの割合で減少する場合には、ホルベックステータスリーブは、ホルベックステータスリーブの固定端部と自由端部との間で一定の壁部厚さを有する、ことが想定され得る。
【0022】
しかし、前述の形態とは異なり、雌ねじ山の谷径及び雄ねじ山の谷径が、ホルベックステータスリーブの自由端部へ向けて同じ程度で減少することは必須ではなく、むしろ、別の一形態によれば、ホルベックステータスリーブは、ホルベックステータスリーブの自由端部へ向けて、例えば漸次又は段階的に減少する壁部厚さを有し、この場合、雄ねじ谷径は、ホルベックステータスリーブの自由端部へ向けて雌ねじ谷径よりも強く減少する、又は雄ねじ谷径は、ホルベックステータスリーブの自由端部へ向けて雌ねじ谷径よりも強く減少する。
【0023】
一定の深さの雌ねじ山及び/又は雄ねじ山を有する前述の形態に対して代替的に、別の一形態によれば、ホルベックステータスリーブの内側表面が、真空ポンプの冷間状態で、ホルベックステータスリーブの固定端部と自由端部との間で一定の、雌ねじ山の谷径を規定し、この場合、雌ねじ山は、ホルベックステータスリーブの自由端部へ向けて増加するねじ山深さを有し、このことは、雌ねじ山の内径が、ホルベックステータスリーブの自由端部へ向けて所望の形で減少することを意味する、ことが想定され得る。これに対して付加的又は代替的に、別の一形態によれば、ホルベックステータスリーブの外側表面が、真空ポンプの冷間状態で、ホルベックステータスリーブの固定端部と自由端部との間で一定の、雄ねじ山の谷径を規定し、この場合、雄ねじ山は、ホルベックステータスリーブの自由端部へ向けて減少するねじ山深さを有するので、雄ねじ山の谷径は、ホルベックステータスリーブの自由端部へ向けて所望の形で減少する、ことが想定され得る。
【0024】
以下、本発明を、例示的に、図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】公知のターボ分子ポンプの斜視図を示す。
図2図1のターボ分子ポンプの下面図を示す。
図3図2に示された切断線AAに沿ったターボ分子ポンプを断面図で示す。
図4図2に示された切断線BBに沿ったターボ分子ポンプを断面図で示す。
図5図2に示された切断線CCに沿ったターボ分子ポンプを断面図で示す。
図6】約20℃の範囲の室温での冷間状態で、本発明に従って形成されたホルベックステータスリーブを有する、概略化されたホルベックポンプ段の断面図を示す。
図7】約20℃の範囲の室温での冷間状態で、別のホルベックステータスリーブの概略断面図を示し、ホルベックステータスリーブは、円筒状の内側表面と外側表面とを有する。
図8】約20℃の範囲の室温での冷間状態で、さらに別のホルベックステータスリーブの概略断面図を示し、ホルベックステータスリーブの内側表面及び外側表面は、段階的に先細りになっている。
図9】本発明に係る真空ポンプに使用できるホルベックロータの一形態の概略断面図を示す。
図10】本発明に係る真空ポンプに使用できるホルベックロータの別の一形態の概略断面図を示す。
図11】本発明に係る真空ポンプに使用できるホルベックロータのさらなる一形態の概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に示されたターボ分子ポンプ111は、吸気口フランジ113によって取り囲まれたポンプ吸気口115を有する。ポンプ吸気口115には、それ自体公知のように、図示されていないレシピエントを接続してよい。レシピエントから到来する気体は、ポンプ吸気口115を介してレシピエントから吸い込まれ、そしてポンプを通ってポンプ排気口117へと圧送できる。ポンプ排気口117には、例えばロータリベーンポンプ等の補助真空ポンプを接続してよい。
【0027】
吸気口フランジ113は、図1による真空ポンプの向きでは、真空ポンプ111のハウジング119の上端部を形成する。ハウジング119は、下部分121を有する。下部分121には、側方にエレクトロニクスハウジング123が配置されている。エレクトロニクスハウジング123内には、例えば真空ポンプ内に配置された電動モータ125(図3も参照)を作動させるための、真空ポンプ111の電気的及び/又は電子的な構成要素が収容されている。エレクトロニクスハウジング123には、アクセサリに対する複数の接続部127が設けられている。さらに、データインタフェース129(例えばRS485規格に準拠するもの)及び電流供給接続部131が、エレクトロニクスハウジング123に配置されている。
【0028】
取り付けられたこの種のエレクトロニクスハウジングを有さずに、外部の駆動エレクトロニクスに接続されるターボ分子ポンプも存在する。
【0029】
ターボ分子ポンプ111のハウジング119には、通気用吸気口133が、特に通気弁の形態で設けられている。通気用吸気口133を介して、真空ポンプ111を通気してよい。下部分121の領域には、その上さらに、シールガス接続部135(パージガス接続部とも称される)が配置されている。シールガス接続部135を介して、パージガスを、ポンプによって圧送される気体に対して電動モータ125(例えば図3参照)を防護するために、モータ室137内に送り込んでよい。モータ室137内で、真空ポンプ111に、電動モータ125が収容されている。下部分121には、その上さらに2つの冷却剤接続部139が配置されている。この場合、一方の冷却剤接続部は、冷却剤用の吸気口として、そして他方の冷却剤接続部は、排気口として設けられている。冷却剤は、冷却目的で真空ポンプ内に導入可能である。存在する別のターボ分子真空ポンプ(図示されていない)は、専ら空冷式に運転される。
【0030】
真空ポンプの下面141は、ベースとして使用できるので、真空ポンプ111は、下面141を基準に縦置きで運転してよい。しかも、真空ポンプ111は、吸気口フランジ113を介してレシピエントに固定し、したがって、いわば懸架した状態で運転してもよい。さらに、真空ポンプ111は、図1に示されたのとは別の向きで整向されているときでも運転できるように構成してもよい。下面141を下向きではなく、横向きに又は上向きに配置できる真空ポンプの形態も実現可能である。この場合、原則として、任意の角度が考えられる。
【0031】
特に図示されたポンプよりも大きな、存在する別のターボ分子真空ポンプ(図示されていない)は、縦置きでは運転できない。
【0032】
図2に示された下面141には、様々なねじ143がさらに配置されている。これらのねじ143によって、ここでは詳細には特定されない真空ポンプの構成部材が互いに固定されている。例えば、軸受カバー145が下面141に固定されている。
【0033】
下面141には、固定孔147がさらに配置されている。固定孔147を介して、ポンプ111を、例えば設置面に固定できる。このことは、特に図示されたポンプよりも大きな、存在する別のターボ分子真空ポンプ(図示されていない)では、不可能である。
【0034】
図2から図5には、冷却剤管路148が示されている。冷却剤管路148内で、冷却剤接続部139を介して導入及び導出される冷却剤が循環可能である。
【0035】
図3から図5の断面図に示されているように、真空ポンプは、複数のプロセスガスポンプ段を有する。プロセスガスポンプ段は、ポンプ吸気口115に作用するプロセスガスをポンプ排気口117へ圧送するためのものである。
【0036】
ハウジング119内には、ロータ149が配置されている。ロータ149は、回転軸線151を中心に回転可能なロータシャフト153を有する。
【0037】
ターボ分子ポンプ111は、ポンピング作用を及ぼすように互いに直列に接続された複数のターボ分子ポンプ段を有する。ターボ分子ポンプ段は、ロータシャフト153に固定された半径方向の複数の動翼155と、動翼155同士の間に配置され、そしてハウジング119内に固定された複数の静翼157とを有する。この場合、1枚の動翼155とこれに隣り合う1枚の静翼157とが、それぞれ1つのターボ分子ポンプ段を形成する。静翼157は、スペーサリング159によって、互いに所望の軸方向の間隔を置いて保持されている。
【0038】
真空ポンプは、半径方向で互いに内外に配置され、そしてポンピング作用を及ぼすように互いに直列に接続されたホルベックポンプ段をさらに有する。ホルベックポンプ段を有しない別のターボ分子真空ポンプ(図示されていない)が存在する。
【0039】
ホルベックポンプ段のロータは、ロータシャフト153に配置されたロータハブ161と、ロータハブ161に固定され、そしてこのロータハブ161によって支持される円筒側面状の2つのホルベックロータスリーブ163、165とを有する。ホルベックロータスリーブ163、165は、回転軸線151に対して同軸に配向されていて、そして半径方向で互いに内外に組み込まれている。円筒側面状の2つのホルベックステータスリーブ167、169がさらに設けられている。ホルベックステータスリーブ167、169は、同様に、回転軸線151に対して同軸に配向されていて、そして半径方向で見て互いに内外に組み込まれている。
【0040】
ホルベックポンプ段の、ポンピング作用を奏する表面は、側面によって、つまりホルベックロータスリーブ163、165及びホルベックステータスリーブ167、169の半径方向の内側面及び/又は外側面によって形成されている。外側のホルベックステータスリーブ167の半径方向の内側面は、半径方向のホルベック間隙171を形成しつつ、外側のホルベックロータスリーブ163の半径方向の外側面に対向していて、そしてこの外側面と共に、ターボ分子ポンプに後続する第1のホルベックポンプ段を形成する。外側のホルベックロータスリーブ163の半径方向の内側面は、半径方向のホルベック間隙173を形成しつつ、内側のホルベックステータスリーブ169の半径方向の外側面に対向していて、そしてこの外側面と共に、第2のホルベックポンプ段を形成する。内側のホルベックステータスリーブ169の半径方向の内側面は、半径方向のホルベック間隙175を形成しつつ、内側のホルベックロータスリーブ165の半径方向の外側面に対向していて、そしてこの外側面と共に、第3のホルベックポンプ段を形成する。
【0041】
ホルベックロータスリーブ163の下端部には、半径方向に延びるチャネルが設けられてよい。チャネルを介して、半径方向外側に位置するホルベック間隙171が、中央のホルベック間隙173に接続されている。内側のホルベックステータスリーブ169の上端部には、半径方向に延びるチャネルがさらに設けられてよい。チャネルを介して、中央のホルベック間隙173が、半径方向内側に位置するホルベック間隙175に接続されている。これにより、互いに内外に組み込まれた複数のホルベックポンプ段が、互いに直列で接続される。半径方向内側に位置するホルベックロータスリーブ165の下端部には、排気口117に通じる接続チャネル179がさらに設けられてよい。
【0042】
ホルベックステータスリーブ167、169の、前述のポンピング作用を奏する表面は、回転軸線151を中心に螺旋状に周回しつつ軸方向に延びる複数のホルベック溝をそれぞれ有する。その一方で、ホルベックロータスリーブ163、165の、これに対向する側面は、滑らかに形成されていて、そして真空ポンプ111の運転のための気体をホルベック溝内において前方へ送り出す。
【0043】
ロータシャフト153の回転可能な軸支のために、ポンプ排気口117の領域に転がり軸受181が設けられていて、ポンプ吸気口115の領域に永久磁石式の磁気軸受183が設けられている。
【0044】
転がり軸受181の領域には、ロータシャフト153に、円錐形のスプラッシュナット185が設けられている。スプラッシュナット185は、転がり軸受181へ向けて増大する外径を有する。スプラッシュナット185は、作動媒体貯蔵部の少なくとも1つの掻落とし部材と滑り接触している。存在する別のターボ分子真空ポンプ(図示されていない)では、スプラッシュナットの代わりに、スプラッシュねじが設けられてよい。これにより、様々な構成が実現可能であるので、上記関係において、「スプラッシュ尖端」との用語も用いられる。
【0045】
作動媒体貯蔵部は、上下にスタックされた吸収性の複数のディスク187を有する。これらのディスク187には、転がり軸受181用の作動媒体、例えば潤滑剤が含浸されている。
【0046】
真空ポンプ111の運転時、作動媒体は、毛管現象によって、作動媒体貯蔵部から掻落とし部材を介して、回転するスプラッシュナット185へと伝達され、そして、遠心力に基づいて、スプラッシュナット185に沿って、スプラッシュナット185の、増大していく外径へ向けてと、転がり軸受181に向かって送られる。そこでは、例えば潤滑機能が満たされる。転がり軸受181及び作動媒体貯蔵部は、真空ポンプ内で槽状のインサート189と軸受カバー145とによって囲繞されている。
【0047】
永久磁石式の磁気軸受183は、ロータ側の軸受半部191と、ステータ側の軸受半部193とを有する。これらは、それぞれ1つのリングスタックを有し、リングスタックは、軸方向に上下にスタックされた永久磁石の複数のリング195、197からなる。リング磁石195、197は、互いに半径方向の軸受間隙199を形成しつつ、対向していて、この場合、ロータ側のリング磁石195は、半径方向外側に、そしてステータ側のリング磁石197は、半径方向内側に配置されている。軸受間隙199内に存在する磁界は、リング磁石195、197の間に磁気的反発力を引き起こす。その反発力は、ロータシャフト153の半径方向の軸支を実現する。ロータ側のリング磁石195は、ロータシャフト153の支持部分201によって支持されている。支持部分201は、リング磁石195を半径方向外側で取り囲む。ステータ側のリング磁石197は、ステータ側の支持部分203によって支持されている。支持部分203は、リング磁石197を通って延びていて、そしてハウジング119の半径方向の支材205に懸架されている。回転軸線151に対して平行に、ロータ側のリング磁石195が、支持部分203に連結されたカバー要素207によって固定されている。ステータ側のリング磁石197は、回転軸線151に対して平行に1つの方向で、支持部分203に結合された固定リング209と支持部分203に結合された固定リング211とによって固定されている。固定リング211とリング磁石197との間に、皿ばね213がさらに設けられてよい。
【0048】
磁気軸受内に、非常用軸受又は安全軸受215が設けられている。非常軸受又は安全軸受215は、真空ポンプの通常運転時には、非接触で空転し、そしてロータ149がステータに対して相対的に半径方向に過剰に変位するとようやく係合し、これにより、ロータ側の構造とステータ側の構造との衝突が阻止されるように、ロータ149に対する半径方向のストッパが形成される。安全軸受215は、非潤滑式の転がり軸受として構成されていて、そしてロータ149及び/又はステータと共に半径方向の間隙を形成する。間隙によって、安全軸受215は、通常のポンプ運転時には係合しないようになる。半径方向の変位に際して安全軸受215が係合し、半径方向の変位は、十分に大きく寸法付けられているので、安全軸受215は、真空ポンプの通常運転時は係合せず、そして同時に十分に小さいので、ロータ側の構造とステータ側の構造との衝突があらゆる状況で阻止される。
【0049】
真空ポンプ111は、ロータ149を回転駆動する電動モータ125を有する。電動モータ125の電機子は、ロータ149によって形成されている。ロータ149のロータシャフト153は、モータステータ217を通って延びる。ロータシャフト153の、モータステータ217を通って延びる部分には、半径方向外側に又は埋入して、永久磁石アセンブリが配置されてよい。モータステータ217と、ロータ149の、モータステータ217を通って延びる部分との間には、中間室219が配置されている。中間219は、半径方向のモータ間隙を有する。モータ間隙を介して、モータステータ217と永久磁石アセンブリとは、駆動トルクを伝達するために、磁気的に影響を及ぼしてよい。
【0050】
モータステータ217は、ハウジング内で、電動モータ125に対して設けられたモータ室137内に固定されている。シールガス接続部135を介して、シールガス(パージガスとも称され、これは例えば空気や窒素であってよい)が、モータ室137に到達し得る。シールガスを介して、電動モータ125を、プロセスガス、例えばプロセスガスの腐食性の部分に対して保護できる。モータ室137は、ポンプ排気口117を介して真空引きしてもよい。つまりモータ室137内に、少なくとも近似的に、ポンプ排気口117に接続された補助真空ポンプによって実現される真空圧が作用する。
【0051】
ロータハブ161と、モータ室137を画成する壁部221との間には、それ自体公知のいわゆるラビリンスシール223がさらに設けられてよい。これにより、特に、半径方向外側に位置するホルベックポンプ段に対するモータ室217のより良好なシールが達成される。
【0052】
以下、ここで図6から図8を参照して、本発明に従って構成されたホルベックポンプ段10の様々な実施形態を記述する。本発明によるホルベックポンプ段は、ターボ分子真空ポンプ111の場合、前述のホルベックポンプ段に代えて組み付けできる。しかもその際、ターボ分子真空ポンプ111の他の構造及び以下総称として単一の「ホルベックポンプ段」とも称される、内外に組み込まれた3つのポンプ段を有するホルベックポンプ段の基本構造を維持してもよい。
【0053】
図6から看取できるように、そこに図示されたホルベックポンプ段10は、図1から図5を参照して記述した真空ポンプ111のホルベックポンプ段と本質的に同一の構造を有する。特にこのホルベックポンプ段10も同様に、ロータシャフト153に配置されたロータハブ161と、ロータハブ161に取り付けられるとともにロータハブ161によって支持された円筒側面状の2つのロータスリーブ163、165とを有し、ロータスリーブ163、165は、回転軸線151に対して同軸に配向されていて、半径方向に内外に組み込まれている。さらに、2つの円筒側面状のホルベックステータスリーブ167、169が設けられていて、ホルベックステータスリーブ167、169も同様に回転軸線151に対して同軸に配向されていて、半径方向に見て内外に組み込まれている。
【0054】
したがって、上述の説明に応じて、外側のホルベックステータスリーブ167は、外側のホルベックロータスリーブ163と相俟って第1の又は外側のホルベックポンプ段を形成する。外側のホルベックロータスリーブ163は、内側のホルベックステータスリーブ169と相俟って第2の又は中央のホルベックポンプ段を形成し、同様に内側のホルベックステータスリーブ169は、内側のホルベックロータスリーブ165と相俟って第3の又は内側のホルベックポンプ段を形成する。この点において、図示の構造は、図3から図5を参照して前述した構造に一致する。
【0055】
同様に、図6のホルベックステータスリーブ167、169は、回転軸線151の周りを軸方向に螺旋状に延在する複数のホルベック溝を有する。図示の内側のホルベックステータスリーブ169では、これらの溝は、ステータスリーブ169の内側表面12と外側表面14との両方に形成されたウェブ16によって形成される。ウェブ16は、回転軸線151の周りを螺旋状に延在し、ここでは極めて概略的にしか示されていない。したがって、ウェブ16の先端によって、それぞれのねじ山の公称内径又は公称外径が形成され、他方、内側表面12又は外側表面14は、それぞれのねじ山18、20の雌ねじ谷径dki又は雄ねじ谷径dkaに対応する。それぞれのホルベック間隙は、ウェブ16の先端とロータスリーブ163、165のポンプ作用を及ぼす表面との間の間隔に関係するので、ここでは、ウェブ先端又はねじ山先端を取り囲む包絡線が記入されていて、これには符号「26」が割り当てられている。
【0056】
さらに図6から看取できるように、図示のホルベックポンプ段10では、ここで本発明によれば、約20℃での室温の真空ポンプの冷間状態で、雌ねじ山18が、ホルベックステータスリーブ169の自由端部22で、ホルベックステータスリーブ169の固定端部24における公称内径よりも小さな公称内径dniを有する、ことが想定され得る。同様に、雄ねじ山20も、冷間状態で、自由端部22で、ホルベックステータスリーブ169の固定端部24における公称外径よりも小さな公称外径dnaを有する。固定端部24では、ホルベックステータスリーブ169は、真空ポンプ111の定位置のハウジング部分に取り付けられている。
【0057】
図6に関して示された実施形態では、特に、雌ねじ山18及び雄ねじ山20が形成されたステータスリーブ169の内側表面12及び外側表面14が、円錐の構造を有するとともに特にホルベックステータスリーブ169の自由端部22へ向けて漸次先細りになっている、ことが想定されている。これに対して、雌ねじ山18又は雄ねじ山20のねじ山深さ又はウェブ16の半径方向寸法は、ステータスリーブ169の固定端部24と自由端部22との間で一定である。同様に、この実施形態では、ホルベックステータスリーブ169は、ホルベックステータスリーブ169の固定端部24と自由端部22との間で一定である壁部厚さを有する。
【0058】
しかし、これに対して代替的に、ホルベックステータスリーブ169は、ホルベックステータスリーブ169の自由端部22へ向けて減少する壁部厚さを有することが想定され得る。ただしこの場合、付加的に、雌ねじ山18のねじ山高さは、自由端部22へ向けて増加し、及び/又は雄ねじ山20のねじ山高さは、自由端部22へ向けて減少し、これにより、ホルベックステータスリーブ169の自由端部22では、雌ねじ山及び雄ねじ山が、ホルベックステータスリーブ169の固定端部24の公称内径又は公称外径よりも小さな公称内径又は公称外径dni、dnaを有することを保証できる、ことが想定され得る。
【0059】
したがって、ホルベックステータスリーブ169又はホルベックステータスリーブ169の包絡線26の内側及び外側で先細りの構成に基づいて、ホルベックステータスリーブ169は、図5に破線で示唆されているように、真空ポンプ111の運転中に温度に応じて半径方向に拡開し得る。したがって、真空ポンプ111の、運転時の熱間の安定した状態では、内側のホルベックロータスリーブ165と両側のホルベックステータスリーブ169との間に、固定端部24と自由端部22との間で本質的に一定の大きさ又は幅を有する、内側に位置するホルベック間隙175が形成され得る。同様に、ホルベックステータスリーブ169の、自由端部22へ向けて先細りの構成に基づいて、運転時の熱間状態では、ホルベックステータスリーブ169と外側のロータスリーブ163との間に、固定端部24と自由端部22との間で本質的に一定の大きさ又は幅を有する、外側に位置するホルベック間隙173が生じ得る。
【0060】
図6を参照して前述した実施形態とは異なり、図7の実施形態では、ホルベックステータスリーブ169は、その自由端部22へ向けて内側及び外側で円錐形に先細りになることが想定されているのではなく、むしろ図7の実施形態では、ホルベックステータスリーブ169及び特にホルベックスリーブ169の内側表面12及び外側表面14がほぼ円筒形の構成を有する、ことが想定されている。それにもかかわらず、ステータスリーブ169の自由端部22で、雌ねじ山18及び雄ねじ山22が、固定端部24における公称内径又は公称外径よりも小さな公称内径dni又は公称外径dnaを有することを確保できるようにするために、図7の実施形態では、雌ねじ山18が、ホルベックステータスリーブ169の自由端部22へ向けて増加するねじ山深さを有し、他方、雄ねじ山20は、ホルベックステータスリーブ169の自由端部22へ向けて減少するねじ山深さを有する、ことが想定されている。これにより、図6を参照して前述した実施形態と同様に、ホルベックステータスリーブ169の包絡線26が自由端部22へ向けて内側と外側との両方で先細りになることを確保できる。したがって、ステータスリーブ169は、真空ポンプ111の運転中に温度に応じて拡開し得るので、熱的定常状態で、ホルベックステータスリーブ169の固定端部24と自由端部22との間で本質的に一定の大きさを有する、内側に位置するホルベック間隙173及び外側に位置するホルベック間隙175が生じ得る。
【0061】
図8に示された実施形態では、ホルベックステータスリーブ169の壁部厚さは一定であるが、ただしホルベックステータスリーブ169は、段階的にステータスリーブ169の自由端部22へ向けて先細りになっている。包絡線26が、冷間状態で、自由端部22で、固定端部24における対応する直径よりも小さな公称内径dni又は公称外径dnaを有するように、この実施形態では、雌ねじ山18のねじ山深さが、自由端部22へ向けて、次の段への移行部で大幅に減少する前に個々の段にわたってそれぞれ増加する、ことが想定されている。これに対して、雄ねじ山のねじ山深さは、それぞれの段の領域で、次の段への移行部で大幅に増加する前に、自由端部22へ向けて減少するので、全体として、公称外径dnaは、自由端部22へ向けて所望の形で減少する。
【0062】
これについて詳細に説明しなくても、図6、7及び8による実施形態は、互いに組み合わせてもよく、この場合、付加的に、ホルベックステータスリーブ169の壁部厚さは、本発明による構想から逸脱することなく一定ではない、ことが想定され得、したがって、ステータスリーブ169の自由端部22で、雌ねじ山及び雄ねじ山の公称内径及び公称外径は、固定端部24における公称内径及び公称外径よりも小さく、そのために、雌ねじ山18及び雄ねじ山20のねじ山深さは、ステータスリーブ169の軸方向で変化してよく、これにより、包絡線26は、内側表面12及び外側表面14の構成にかかわらず、内側と外側との両方で自由端部22へ向けて円錐状に先細りになるように配慮される。
【0063】
図1から図5を参照して前述したターボ分子真空ポンプ111では、ハブ161及びロータシャフト153は、真空ポンプ111の組立て中にはじめて相互に着脱自在に又は着脱不能に互いに結合される別個に取扱い可能な部品である。同様に、この実施形態では、ハブ161及びホルベックロータスリーブ163、165は、真空ポンプの組立て中にはじめて相互に着脱自在に又は着脱不能に互いに結合される別個に取扱い可能な部品である。このような設計は、特に中型及び大型のターボ分子真空ポンプでの使用に適している。
【0064】
これに対して代替的に、図9に略示された実施形態によれば、ハブ161が、ロータシャフト153と一体に形成されていて、ホルベックロータスリーブ163、165もハブ161と一体に形成されている、ことが想定され得る。したがって、ホルベックロータは、単一の部品又は一体の部品である。
【0065】
これに対して代替的に、図10に略示された実施形態によれば、2つのホルベックロータスリーブ163、165だけがハブ161と一体に形成されていて、他方、ハブ161及びロータシャフト153は、真空ポンプの組立て中にはじめて相互に着脱自在に又は着脱不能に互いに結合される別個に取扱い可能な部品である。
【0066】
最後に、図11に略示された実施形態によれば、ロータシャフト153だけがハブ161と一体に形成されていて、他方、ハブ161及びホルベックロータスリーブ163、165は、真空ポンプの組立て中にはじめて相互に着脱自在に又は着脱不能に互いに結合される別個に取扱い可能な部品である。この実施形態は、特により小型のターボ分子真空ポンプに対して使用するのに適している。
【符号の説明】
【0067】
10 ホルベックポンプ段
12 内側表面
14 外側表面
16 ウェブ
18 雌ねじ山
20 雄ねじ山
22 自由端部
24 固定端部
26 包絡線
111 ターボ分子ポンプ
113 吸気口フランジ
115 ポンプ吸気口
117 ポンプ排気口
119 ハウジング
121 下部分
123 エレクトロニクスハウジング
125 電動モータ
127 アクセサリ接続部
129 データインタフェース
131 電流供給接続部
133 通気用吸気口
135 シールガス接続部
137 モータ室
139 冷却剤接続部
141 下面
143 ねじ
145 軸受カバー
147 固定孔
148 冷却剤管路
149 ロータ
151 回転軸線
153 ロータシャフト
155 動翼
157 静翼
159 スペーサリング
161 ロータハブ
163 ホルベックロータスリーブ
165 ホルベックロータスリーブ
167 ホルベックステータスリーブ
169 ホルベックステータスリーブ
171 ホルベック間隙
173 ホルベック間隙
175 ホルベック間隙
179 接続チャネル
181 転がり軸受
183 永久磁石式の磁気軸受
185 スプラッシュナット
187 ディスク
189 インサート
191 ロータ側の軸受半部
193 ステータ側の軸受半部
195 リング磁石
197 リング磁石
199 軸受間隙
201 支持部分
203 支持部分
205 半径方向の支柱
207 カバー要素
209 支持リング
211 固定リング
213 皿ばね
215 非常用軸受又は安全軸受
217 モータステータ
219 中間室
221 壁部
223 ラビリンスシール
dni 公称内径
dna 公称外径
dki 雌ねじ谷径
dka 雄ねじ谷径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2023-10-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプ(111)、特にターボ分子真空ポンプ(111)であって、
ホルベックロータとホルベックステータとを有する少なくとも1つのホルベックポンプ段(10)を備え、
ホルベックロータは、ハブ(161)が設けられたロータシャフト(153)と、ハブ(161)に設けられた少なくとも1つのホルベックロータスリーブ(163、165)とを有し、ホルベックロータスリーブ(163、165)は、ロータシャフトを同心に取り囲み、
ホルベックステータは、ホルベックロータスリーブ(163、165)に対して同心に配置されたホルベックステータスリーブ(169)を有し、ホルベックステータスリーブ(169)は、真空ポンプ(111)の定位置のハウジング部分に取り付けられた固定端部(24)と、固定端部(24)に対して軸方向で反対側に位置する自由端部(22)と、雌ねじ山(18)が形成された内側表面(12)と、雄ねじ山(20)が形成された外側表面(14)とを有する、真空ポンプにおいて、
真空ポンプ(111)の冷間状態で、雌ねじ山(18)は、ホルベックステータスリーブ(169)の自由端部(22)では、ホルベックステータスリーブ(169)の固定端部(24)における公称内径よりも小さい公称内径(dni)を有し、雄ねじ山(20)も、真空ポンプ(111)の冷間状態で、ホルベックステータスリーブ(169)の自由端部(22)では、ホルベックステータスリーブ(169)の固定端部(24)における公称外径よりも小さい公称外径(dna)を有することを特徴とする、真空ポンプ(111)。
【請求項2】
ホルベックステータスリーブ(169)の雌ねじ山(18)の公称内径(dni)が、ホルベックステータスリーブ(169)の自由端部(22)へ向けて漸次又は段階的に減少することを特徴とする、請求項1に記載の真空ポンプ(111)。
【請求項3】
真空ポンプ(111)の運転時の熱間の安定した状態で、ホルベックロータスリーブ(165)と雌ねじ山(18)との間に、ホルベックステータスリーブ(169)の固定端部(24)と自由端部(22)との間で本質的に一定の大きさ、特に一定の大きさを有するホルベック間隙(175)が生じるように、ホルベックステータスリーブ(169)の雌ねじ山(18)の公称内径(dni)が、ホルベックステータスリーブ(169)の自由端部(22)へ向けて減少することを特徴とする、請求項1又は2に記載の真空ポンプ(111)。
【請求項4】
雌ねじ山(18)は、ホルベックステータスリーブ(169)の固定端部(24)と自由端部(22)との間で一定のねじ山深さを有し、ホルベックステータスリーブ(169)の内側表面(12)は、真空ポンプ(111)の冷間状態でホルベックステータスリーブ(169)の自由端部(22)へ向けて減少する雌ねじ山(18)の谷径(dki)を規定することを特徴とする、請求項1又は2に記載の真空ポンプ(111)。
【請求項5】
ホルベックステータスリーブ(169)の内側表面(12)は、真空ポンプ(111)の冷間状態でホルベックステータスリーブ(169)の固定端部(24)と自由端部(22)との間で一定である雌ねじ山(18)の谷径(dki)を規定し、雌ねじ山(18)は、ホルベックステータスリーブ(169)の自由端部(22)へ向けて増加するねじ山深さを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の真空ポンプ(111)。
【請求項6】
ホルベックステータスリーブ(169)の雄ねじ山(18)の公称外径(dna)は、ホルベックステータスリーブ(169)の自由端部(22)へ向けて漸次又は段階的に減少することを特徴とする、請求項1又は2に記載の真空ポンプ(111)。
【請求項7】
真空ポンプ(111)の運転時の熱間の安定した状態で、ホルベックロータスリーブ(163)と雄ねじ山(20)との間に、ホルベックステータスリーブ(169)の固定端部(24)と自由端部(22)との間で本質的に一定の大きさ、特に一定の大きさを有する半径方向のホルベック間隙(173)が生じるように、ホルベックステータスリーブ(169)の雄ねじ山(20)の公称外径(dna)が、ホルベックステータスリーブ(169)の自由端部(22)へ向けて減少することを特徴とする、請求項1又は2に記載の真空ポンプ(111)。
【請求項8】
雄ねじ山(20)は、ホルベックステータスリーブ(169)の固定端部(24)と自由端部(22)との間で一定のねじ山深さを有し、ホルベックステータスリーブ(169)の外側表面(14)は、真空ポンプ(111)の冷間状態でホルベックステータスリーブ(169)の自由端部(22)へ向けて減少する、雄ねじ山(20)の谷径(dka)を規定することを特徴とする、請求項1又は2に記載の真空ポンプ(111)。
【請求項9】
ホルベックステータスリーブ(169)の外側表面(14)は、真空ポンプ(111)の冷間状態でホルベックステータスリーブ(169)の固定端部(24)と自由端部(22)との間で一定である雄ねじ山(20)の谷径(dka)を規定し、雄ねじ山(20)は、ホルベックステータスリーブ(169)の自由端部(22)へ向けて減少するねじ山深さを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の真空ポンプ(111)。
【請求項10】
ホルベックステータスリーブ(169)は、ホルベックステータスリーブ(169)の固定端部(24)と自由端部(22)との間で一定である壁部厚さを有する、又は
ホルベックステータスリーブ(169)は、ホルベックステータスリーブ(169)の自由端部(22)へ向けて漸次又は段階的に減少する壁部厚さを有する
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の真空ポンプ(111)。
【請求項11】
ホルベックロータは、ロータシャフト(153)を同心に取り囲む内側及び外側のホルベックロータスリーブ(163、165)を有し、外側のホルベックロータスリーブ(163)は、ホルベックステータスリーブ(169)を同心に取り囲み、ホルベックステータスリーブ(169)は、内側のホルベックロータスリーブ(165)を同心に取り囲むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の真空ポンプ(111)。
【請求項12】
ハブ(161)が、ロータシャフト(153)に取り付けられていて、ホルベックロータスリーブ(163、165)が、ハブ(161)に取り付けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の真空ポンプ(111)。
【請求項13】
ハブ(161)が、ロータシャフト(153)と一体に形成されていて、他方、ホルベックロータスリーブ(163、165)は、ハブ(161)に取り付けられている、又は
ホルベックロータスリーブ(163、165)が、ハブ(161)と一体に形成されていて、ハブ(161)が、ロータシャフト(153)に取り付けられている
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の真空ポンプ(111)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0066
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0066】
最後に、図11に略示された実施形態によれば、ロータシャフト153だけがハブ161と一体に形成されていて、他方、ハブ161及びホルベックロータスリーブ163、165は、真空ポンプの組立て中にはじめて相互に着脱自在に又は着脱不能に互いに結合される別個に取扱い可能な部品である。この実施形態は、特により小型のターボ分子真空ポンプに対して使用するのに適している。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下を含む。
1.
真空ポンプ(111)、特にターボ分子真空ポンプ(111)であって、
ホルベックロータとホルベックステータとを有する少なくとも1つのホルベックポンプ段(10)を備え、
ホルベックロータは、ハブ(161)が設けられたロータシャフト(153)と、ハブ(161)に設けられた少なくとも1つのホルベックロータスリーブ(163、165)とを有し、ホルベックロータスリーブ(163、165)は、ロータシャフトを同心に取り囲み、
ホルベックステータは、ホルベックロータスリーブ(163、165)に対して同心に配置されたホルベックステータスリーブ(169)を有し、ホルベックステータスリーブ(169)は、真空ポンプ(111)の定位置のハウジング部分に取り付けられた固定端部(24)と、固定端部(24)に対して軸方向で反対側に位置する自由端部(24)と、雌ねじ山(18)が形成された内側表面(12)と、雄ねじ山(20)が形成された外側表面(14)とを有する、真空ポンプにおいて、
真空ポンプ(111)の冷間状態で、雌ねじ山(18)は、ホルベックステータスリーブ(169)の自由端部(22)では、ホルベックステータスリーブ(169)の固定端部(24)における公称内径よりも小さい公称内径(dni)を有し、雄ねじ山(20)も、真空ポンプ(111)の冷間状態で、ホルベックステータスリーブ(169)の自由端部(22)では、ホルベックステータスリーブ(169)の固定端部(24)における公称外径よりも小さい公称外径(dna)を有することを特徴とする、真空ポンプ(111)。
2.
ホルベックステータスリーブ(169)の雌ねじ山(18)の公称内径(dni)が、ホルベックステータスリーブ(169)の自由端部(22)へ向けて漸次又は段階的に減少することを特徴とする、上記1の真空ポンプ(111)。
3.
真空ポンプ(111)の運転時の熱間の安定した状態で、ホルベックロータスリーブ(165)と雌ねじ山(18)との間に、ホルベックステータスリーブ(169)の固定端部(24)と自由端部(22)との間で本質的に一定の大きさ、特に一定の大きさを有するホルベック間隙(175)が生じるように、ホルベックステータスリーブ(169)の雌ねじ山(18)の公称内径(dni)が、ホルベックステータスリーブ(169)の自由端部(22)へ向けて減少することを特徴とする、上記1又は2の真空ポンプ(111)。
4.
雌ねじ山(18)は、ホルベックステータスリーブ(169)の固定端部(24)と自由端部(22)との間で一定のねじ山深さを有し、ホルベックステータスリーブ(169)の内側表面(12)は、真空ポンプ(111)の冷間状態でホルベックステータスリーブ(169)の自由端部(22)へ向けて減少する雌ねじ山(18)の谷径(dki)を規定することを特徴とする、上記1から3のいずれか一つの真空ポンプ(111)。
5.
ホルベックステータスリーブ(169)の内側表面(12)は、真空ポンプ(111)の冷間状態でホルベックステータスリーブ(169)の固定端部(24)と自由端部(22)との間で一定である雌ねじ山(18)の谷径(dki)を規定し、雌ねじ山(18)は、ホルベックステータスリーブ(169)の自由端部(22)へ向けて増加するねじ山深さを有することを特徴とする、上記1から3のいずれか一つの真空ポンプ(111)。
6.
ホルベックステータスリーブ(169)の雄ねじ山(18)の公称外径(dna)は、ホルベックステータスリーブ(169)の自由端部(22)へ向けて漸次又は段階的に減少することを特徴とする、上記1から5のいずれか一つの真空ポンプ(111)。
7.
真空ポンプ(111)の運転時の熱間の安定した状態で、ホルベックロータスリーブ(163)と雄ねじ山(20)との間に、ホルベックステータスリーブ(169)の固定端部(24)と自由端部(22)との間で本質的に一定の大きさ、特に一定の大きさを有する半径方向のホルベック間隙(173)が生じるように、ホルベックステータスリーブ(169)の雄ねじ山(20)の公称外径(dna)が、ホルベックステータスリーブ(169)の自由端部(22)へ向けて減少することを特徴とする、上記1から6のいずれか一つの真空ポンプ(111)。
8.
雄ねじ山(20)は、ホルベックステータスリーブ(169)の固定端部(24)と自由端部(22)との間で一定のねじ山深さを有し、ホルベックステータスリーブ(169)の外側表面(14)は、真空ポンプ(111)の冷間状態でホルベックステータスリーブ(169)の自由端部(22)へ向けて減少する、雄ねじ山(20)の谷径(dka)を規定することを特徴とする、上記1から7のいずれか一つの真空ポンプ(111)。
9.
ホルベックステータスリーブ(169)の外側表面(14)は、真空ポンプ(111)の冷間状態でホルベックステータスリーブ(169)の固定端部(24)と自由端部(22)との間で一定である雄ねじ山(20)の谷径(dka)を規定し、雄ねじ山(20)は、ホルベックステータスリーブ(169)の自由端部(22)へ向けて減少するねじ山深さを有することを特徴とする、上記1から7のいずれか一つの真空ポンプ(111)。
10.
ホルベックステータスリーブ(169)は、ホルベックステータスリーブ(169)の固定端部(24)と自由端部(22)との間で一定である壁部厚さを有する、又は
ホルベックステータスリーブ(169)は、ホルベックステータスリーブ(169)の自由端部(22)へ向けて漸次又は段階的に減少する壁部厚さを有する
ことを特徴とする、上記1から9のいずれか一つの真空ポンプ(111)。
11.
ホルベックロータは、ロータシャフト(153)を同心に取り囲む内側及び外側のホルベックロータスリーブ(163)を有し、外側のホルベックロータスリーブ(163)は、ホルベックステータスリーブ(169)を同心に取り囲み、ホルベックステータスリーブは、内側のホルベックロータスリーブ(165)を同心に取り囲むことを特徴とする、上記1から10のいずれか一つの真空ポンプ(111)。
12.
ハブ(161)が、ロータシャフト(153)に取り付けられていて、ホルベックロータスリーブ(163、165)が、ハブ(161)に取り付けられていることを特徴とする、上記1から11のいずれか一つの真空ポンプ(111)。
13.
ハブ(161)が、ロータシャフト(153)と一体に形成されていて、他方、ホルベックロータスリーブ(163、165)は、ハブ(161)に取り付けられている、又は
ホルベックロータスリーブ(163、165)が、ハブ(161)と一体に形成されていて、ハブ(161)が、ロータシャフト(153)に取り付けられている
ことを特徴とする、上記1から11のいずれか一つの真空ポンプ(111)。
【外国語明細書】