(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109024
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】高所作業車
(51)【国際特許分類】
B66F 9/06 20060101AFI20240805BHJP
B66F 11/04 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
B66F9/06 Y
B66F11/04
B66F9/06 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023182900
(22)【出願日】2023-10-25
(62)【分割の表示】P 2023121868の分割
【原出願日】2023-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2023012452
(32)【優先日】2023-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】312004721
【氏名又は名称】株式会社タダノユーティリティ
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 泰久
(72)【発明者】
【氏名】神津 英寿
(72)【発明者】
【氏名】金 龍俊
(72)【発明者】
【氏名】新井 健司
(72)【発明者】
【氏名】湯本 誠一
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA08
3F333AB04
3F333AC08
3F333BA02
3F333BB01
3F333BB12
3F333BD02
3F333BE02
3F333DA05
3F333DA06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】バスケットの障害物に対する乗り越えと回り込みが可能となるうえに、高所で狭小な作業空間においてバスケットの高さ位置の微調整を可能にすることで作業対象へのアクセスが容易となる高所作業車を提供する。
【解決手段】ブーム先端構造を伸縮式からジブ機能付きに換装し、ブーム5aの先端側に平行に配置された一対のジブブーム27と一対のジブリンク28を介してバスケット2と接続され、一対のジブブーム27と一対のジブリンク28を連結するジブシリンダ30により一対のジブブーム27を起伏動作可能な先端ジブ結合機構21が組み付けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームの先端側に設けられたバスケットに作業者を収容して走行動作、昇降動作及び旋回動作可能な高所作業車であって、
車両に備えた各動作部に作動油を供給する油圧装置と、車両に作用する転倒側質量に対して安定側質量を提供するメインカウンタウェイトと、を有する車体フレームと、
前記車体フレームに搭載され、前記油圧装置より作動油を供給されて前記昇降用ブームを昇降させブーム先端側に支持された前記バスケットを所望の高さに移動させる昇降装置と、
前記車体フレームを旋回可能に支持すると共に、接地面を走行する走行装置と、を備え、
前記ブームの先端側に平行に配置された一対のジブブームと一対のジブリンクを介して前記バスケットと接続され、前記一対のジブブームと前記一対のジブリンクを連結するジブシリンダにより前記一対のジブブームを起伏動作可能な先端ジブ結合機構が組み付けられている高所作業車。
【請求項2】
前記ブームの先端部に設けられたブーム先端ブロックにレベリングブラケットが回動可能に連結され、これらを連結するレベリングシリンダにより前記バスケットの水平姿勢を維持する先端結合機構が設けられ、前記レベリングブラケットに前記一対のジブブーム及び前記一対のジブリンクの一端側が連結されて前記先端ジブ結合機構が組み付けられている請求項1記載の高所作業車。
【請求項3】
前記一対のジブブーム及び前記一対のジブリンクの他端側は連結リンクを介してバスケット支持ブラケットに連結され、前記バスケット支持ブラケットにはバスケット旋回アクチュエータを介して前記バスケットが旋回可能に支持されている請求項2記載の高所作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブームの先端側に設けられたバスケットに作業者を収容して走行動作、昇降動作及び旋回動作可能な高所作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業車に代表される作業用車両は、駆動源として備えたエンジン駆動ユニット或いは電動駆動ユニットにより油圧ポンプを駆動することにより、クローラを有する走行装置を走行させたり、車体フレームを旋回させたり、ブームを昇降させたりしている。高所作業が行われる環境は様々であり、高所作業車の走行装置は、ホイール式とクローラ式の2種類がある。舗装路のような整地された場所ではホイール式走行装置が用いられ、不整地ではクローラ式走行装置が好適に用いられる。
【0003】
昇降装置には、起伏可能な第一ブーム及び第一ブームに対して伸縮可能な第二ブームが同心状に配置され、これらを連結する伸縮用シリンダにより伸縮可能になっている。第一ブームには起伏用シリンダが連係しており、第一ブームが車両本体に設けられた回転軸を中心に起伏動作を行う。第二ブームの先端側に設けられたブーム側連結体とバスケットに設けられたバスケット側連結体が着脱可能に連結されて、バスケットが支持されている。バスケットとブーム側連結体との間には第1姿勢保持用シリンダが介在し、車両本体(ブームステー)と第一ブームとの間には第2姿勢保持用シリンダが介在している。これにより、ブームの起伏動作にかかわらずバスケットの水平姿勢を維持するようになっている(特許文献1:特開2003-54883号公報参照)。尚、伸縮可能なブームは2段以上あってもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1の高所作業車の構成では、伸縮可能なブーム先端部にバスケットが連結されているため、上下に障害物がある場合や狭小な作業空間では、第一ブームの起伏動作と第二ブームの伸縮動作だけでは障害物を越えて或いは障害物に回り込んでバスケットが作業対象にアクセスできない場合があった。
また、高所作業において、バスケット位置をわずかに作業対象へ近づけたい場合、第一ブームの起伏動作や第二ブームの伸縮動作を伴う場合には、ブーム全体の長さが長いため動作範囲が大きくなり、障害物があり狭小な作業空間ではバスケット位置の微調整が困難となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、ブーム先端構造を伸縮式からジブ機能付きに換装することでバスケットの障害物に対する乗り越えと回り込みが可能となるうえに、高所で狭小な作業空間においてバスケットの高さ位置の微調整を可能にすることで作業対象へのアクセスが容易となる高所作業車を提供することにある。
【0007】
上記目的を達成するため、発明の実施形態で説明する高所作業車は以下の構成を備える。ブームの先端側に設けられたバスケットに作業者を収容して走行動作、昇降動作及び旋回動作可能な高所作業車であって、車両に備えた各動作部に作動油を供給する油圧装置と、車両に作用する転倒側質量に対して安定側質量を提供するメインカウンタウェイトと、を有する車体フレームと、前記車体フレームに搭載され、前記油圧装置より作動油を供給されて前記昇降用ブームを昇降させブーム先端側に支持された前記バスケットを所望の高さに移動させる昇降装置と、前記車体フレームを旋回可能に支持すると共に、接地面を走行する走行装置と、を備え、前記ブームの先端側に平行に配置された一対のジブブームと一対のジブリンクを介して前記バスケットと接続され、前記一対のジブブームと前記一対のジブリンクを連結するジブシリンダにより前記一対のジブブームを起伏動作可能な先端ジブ結合機構が組み付けられていることを特徴とする。
これにより、作業空間となるバスケット周囲の環境に障害物がある場合やバスケット位置の微調整が必要な場合には、先端ジブ結合機構における長さが短いジブブームの起伏動作によりバスケットの障害物に対する乗り越えや回り込みが可能となるうえに、高所で狭小な作業空間においてバスケットの高さ位置の微調整が可能となり、作業対象へのアクセスが容易となる。
【0008】
前記ブームの先端部に設けられたブーム先端ブロックにレベリングブラケットが回動可能に連結され、これらを連結するレベリングシリンダにより前記バスケットの水平姿勢を維持する先端結合機構が設けられ、前記レベリングブラケットに前記一対のジブブーム及び前記一対のジブリンクの一端側が連結されて前記先端ジブ結合機構が組み付けられていてもよい。
これにより、バスケットの高さ位置の微調整に加えて水平姿勢位置を維持することができ、高所で狭小な作業空間において作業対象へのアクセスが容易となる。
【0009】
前記一対のジブブーム及び前記一対のジブリンクの他端側は連結リンクを介してバスケット支持ブラケットに連結され、前記バスケット支持ブラケットにはバスケット旋回アクチュエータを介して前記バスケットが旋回可能に支持されているのが好ましい。
これにより、バスケットの高さ位置の微調整に加えてバスケットの向きを調整することができ、高所で狭小な作業空間で作業対象へのアクセスが容易となる。
【発明の効果】
【0010】
バスケットの障害物に対する乗り越えや回り込みが可能となるうえに、高所で狭小な作業空間においてバスケットの高さ位置の微調整を可能にすることで作業対象へのアクセスが容易となる高所作業車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】先端ジブ結合機構を備えたホイール式高所作業車の正面図、平面図、左側面図である。
【
図2】先端ジブ結合機構を備えたクローラ式高所作業車の正面図、平面図、左側面図である。
【
図3】昇降用ブームと前記バスケットとの間に換装される先端結合機構及び先端ジブ結合機構の説明図である。
【
図4】車体フレームにエンジン駆動ユニットと電動駆動ユニットを装備した場合の平面レイアウト構成図である。
【
図5】車体フレームから揺動アスクルシリンダへ供給される油圧回路の構成例を示す説明図である。
【
図7】障害物のある狭小な作業空間で高所作業を行う場合の先端ジブ結合機構の動作状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、高所作業車の概略構成について
図1(a)~(c)及び
図2(a)~(c)を参照して説明する。
図1(a)(b)に示すように、高所作業車1は、昇降用ブーム先端に設けられたバスケット2に作業者を収容して走行動作、昇降動作及び旋回動作可能な作業車である。車体フレーム3は、後述するように駆動源や駆動源により駆動される油圧ポンプ11aやコントロールバルブ11bを含む油圧装置11(
図16参照)を内蔵している。
図1(a)(c)に示すように、車体フレーム3は走行装置4上に旋回可能に搭載されている。走行装置4はホイール式走行装置4Aである。ホイール式走行装置4Aは、走行用シャーシ4aの長手方向前方に配置された前方アクスル4bの両端部及び長手方向後方に配置された後方アクスル4cの両端部に車輪4dが各々回転可能に支持されている。また、
図2(a)(c)に示す走行装置4はクローラ式走行装置4Bである。クローラ式走行装置4Bは走行用シャーシ4aの両側面にクローラ4tが架設された駆動輪(スプロケットホイール)4u及び従動輪4vを両端部に支持するトラックフレーム4wが連結アーム(図示せず)を介して連結されている。
【0013】
車体フレーム3上には、昇降装置5が搭載されている。昇降装置5は油圧装置11(
図4参照)より油圧を供給されて昇降用ブームを昇降させ、ブーム先端に支持されたバスケット2を所望の高さに移動させる。例えば
図1(a)及び
図2(a)に示すように、昇降装置5には、車体フレーム3に設けられたブームステー3bに設けられた回転軸3aを中心に起伏可能な第一ブーム5a及び第一ブーム5aに対して伸縮可能な第二ブーム5bが同心状に配置されている。ブームステー3bと第一ブーム5aには昇降用シリンダ5cが連係しており、昇降用シリンダ5cを作動させると、第一ブーム5aが回転軸3aを中心に起伏動作を行う。
【0014】
図1(a)(b)及び
図2(a)(b)に示すように、第二ブーム5bの先端には、バスケット2が後述する先端結合機構20及び先端ジブ結合機構21を介して支持されている。バスケット2内の作業者は、昇降用シリンダ5cを作動させて第一ブーム5aが回転軸3aを中心とする起伏動作することによりバスケット2を昇降させることができる。また、伸縮用シリンダ5d(
図7参照)を作動させて第一ブーム5aに対して第二ブーム5bを伸縮させることによりバスケット2の更なる昇降が可能となっている。これにより、作業者がバスケット2を所望の高さに移動させることができる。尚、第一ブーム5aと第二ブーム5bが連結部を介して折りたたまれる屈折タイプの昇降装置5では、第一ブーム5aの起伏動作と第二ブーム5bの起伏動作を各々シリンダ駆動によって行ってもよい。また、本実施例では、第一ブーム5aに対して第二ブーム5bが伸縮する2段伸縮を採用しているが、3段以上の伸縮或いは屈折するブームを備えていてもよい。
【0015】
図1(b)及び
図2(b)に示すように、バスケット2は、作業者を支持する床面2aと床面2aを囲むガードフレーム2bを備える。バスケット2には、作業車の各動作部に指令を送出する操作部2c(操作ハンドル、操作スイッチ、操作レバー、操作パネルや表示装置など)が備えられている。昇降装置5は車体フレーム3に搭載されている。本実施例では昇降装置5は車体フレーム3の幅方向(進退方向と直交する方向)の中央部に配置されているが、中央部からいずれか一方側に偏った位置に配置されていてもよい。また、車体フレーム3の前端部(バスケット2と反対側端部)にはメインカウンタウェイト6が設けられている。メインカウンタウェイト6は、バスケット2や昇降装置5などの車両に作用する転倒側質量に対して安定側質量を提供している。
【0016】
次に、車体フレーム3の内部構造について
図4を参照して説明する。
図4左半図は、油圧装置11の駆動源としてエンジン駆動ユニット7を用いた車体フレーム3の構成例を示す。尚、
図4において、車体フレーム3に搭載されている昇降装置5の第一ブーム5a及び第二ブーム5bやバスケット2の表示は省略されている。
図14左半図に示すように、車体フレーム3には、エンジン駆動ユニット7を配置した第一取付部8(
図4破線で囲まれた部分)と、カウンターウェイト9を配置した第二取付部10(
図4破線で囲まれた部分)が昇降装置5(昇降用シリンダ5a)を挟んで両側に配置されている。エンジン駆動ユニット7には、エンジン7a、ラジエータ7b及び燃料タンク7cを含む。エンジン7aには、図示しない燃焼室に接続する吸気管7d及び排気管7eが各々設けられている。
【0017】
また、
図4左半図に示すように、車体フレーム3には、共用ユニットとして油圧装置11が設けられている。油圧装置11は、作動油を圧送りする油圧ポンプ11a、作動油を装置各部へ送出するコントロールバルブ11b、車体フレーム3を旋回動作させる旋回モータ11c、作動油を貯留する作動油タンク11dが含まれている。共用ユニットとしては油圧装置11の他に電装装置12が含まれる。電装装置12は、車両に備えた各動作部への電源供給、動作制御、各種スイッチなどの電装部品が配線用の端子台と共に設けられている。
【0018】
図4の右半図は、油圧装置11の駆動源として電動駆動ユニット13を用いた車体フレーム3の構成例を示す。車体フレーム3には、電動駆動ユニット13を配置した第一取付部8(
図4に示す破線で囲まれた部分)と、バッテリー14を配置した第二取付部10(
図4に示す破線で囲まれた部分)が昇降装置5(昇降用シリンダ5a)を挟んで両側に配置されている。電動駆動ユニット13には、電動モータ13a、モータコントローラ13bなどが含まれている。
【0019】
車体フレーム3の第一取付部8には、エンジン駆動ユニット7又は電動駆動ユニット13が搭載可能となっている。また、第二取付部10には、カウンターウェイト9又は重量バランスが均衡したバッテリー14を搭載可能となっている。尚、本実施例では第一取付部8と第二取付部10は、車体フレーム3上に昇降装置5(昇降用シリンダ5c)の両側に配置されているが、昇降装置5のいずれか一方側に第一取付部8と第二取付部10を配置してもよい。
【0020】
具体的には、
図4において、第一取付部8にエンジン駆動ユニット7が装着されていると、第二取付部10にはカウンターウェイト9が装着されている。尚、バランスとりが可能であればカウンターウェイト9は省略してもよい。また、第一取付部8に電動駆動ユニット13が装着されていると、第二取付部10にはバッテリー14が装着されている。これにより、例えば、電源供給設備がない作業現場、外気温が40度を超える高温環境下(電気部品がオーバーヒートを起こし易くなり冷却時間が必要となり工期が長くなる)、外気温が0度以下となる低温環境下(バッテリーの消耗が激しくなり稼働時間が短くなる)においては、エンジン駆動ユニット7を備えた高所作業車1が好適に用いられる。また、排気ガスの排出ができない室内作業場や騒音が規制される街中の使用や夜間作業現場においては、電動駆動ユニット13を備えた高所作業車1が好適に用いられる。
【0021】
また、
図5に示すように、ホイール式走行装置4Aの左右両側の取付ベースには一対の揺動シリンダ4h1,4h2が保持されている。揺動シリンダ4h1,4h2の各シリンダロッド4iは前方揺動アクスル4b1,後方揺動アクスル4c1(図示省略)の両端部近傍に各々連結されている。尚、取付ベースが省略されている場合には、揺動シリンダ4h1,4h2は走行用シャーシの両側に設けられていてもよい。
図5に示すように、一対の揺動シリンダ4h1,4h2には、車体フレーム3内に設けられた油圧装置11より作動油が供給されてシリンダロッド4iが各々伸縮し、油圧回路に設けられたロックバルブ11eの開閉制御によって作動油の供給が停止される。
【0022】
これにより、
図5に示すようにホイール式走行装置4Aが凹凸路面を走行する場合でも、揺動シリンダ4h1,4h2の各シリンダロッド4iが凹凸面に応じて伸縮して前方揺動アクスル4b1,後方揺動アクスル4c1(図示せず)が揺動軸4g1,4g2(図示せず)を中心に各々揺動するので、4輪接地状態を維持することができ、安定した走行動作を維持することができる。また、昇降装置5の昇降動作時などの作業時には、ロックバルブ11eを閉じて揺動シリンダ4h1,4h2への作動油の供給を止めることにより、昇降動作などの作業により生じた負荷(モーメント)を接地した4輪で受け止めて安定した姿勢で作業を行うことができる。
【0023】
尚、本実施例では、
図1(a)に示す4輪箇所の車輪4dのハブに走行用モータ(図示せず)が連結されて4輪駆動となるように構成されている。4輪駆動でなくとも、走行用モータは前輪側の車輪4dのみに設けてもよいし、後輪側の車輪4dのみに設けてもよい。また、走行用モータは油圧装置11から作動油を供給される油圧モータであってもよいし、バッテリー14から電力供給されて駆動する電動モータであってもよい。
【0024】
また、
図2(a)に示すように、クローラ式走行装置4Bは、トラックフレーム4wの両端部に駆動輪4u及び従動輪4vが回転可能に支持されている。駆動輪4uと従動輪4vとの間にはクローラ4tが架設されている。トラックフレーム4wは、複数のフレームどうしがアジャストシリンダ(図示せず)によって連結されて伸縮可能に嵌合している。アジャストシリンダを作動することで駆動輪4u及び従動輪4vの間隔を調整可能となっている。また、トラックフレーム4wの長手方向に沿って複数のトラックローラ4zがクローラ4tの内周面に当接して従動回転しながら支持するようになっている。これにより、クローラ4tが経年劣化によりリンク伸びが発生してたるみが生じても、アジャストシリンダによってトラックフレーム4wに支持された駆動輪4u及び従動輪4vの間隔を調整することでクローラ4tのテンションを一定に保つことができ、駆動輪4uからクローラ4tが外れることがなくなる。
【0025】
尚、本実施例では駆動輪4uのハブに走行用モータ(図示せず)が同軸配置されている。走行用モータは、油圧装置11から作動油を供給される油圧モータであってもよいし、バッテリー14から電力供給されて駆動する電動モータであってもよい。
このように、ホイール式走行装置4Aの車輪4dやクローラ式走行装置4Bの駆動輪4uのハブに走行用モータが連結されていると、駆動源からの駆動伝達機構が簡略化されるため、高所作業車1の小型化や低コスト化に資する。
【0026】
高所作業車1の使用環境によっては、障害物の有無や高所で狭小な作業空間において作業対象に対するバスケット位置の微調整を行いたい場合がある。
図3は昇降装置5とバスケット2との間に設けられる先端結合機構20及び先端ジブ結合機構21の説明図である。
先端結合機構20について説明する。
図3において、第一ブーム5aから伸縮する第二ブーム5bとブーム先端ブロック22の一端側は、先端第一結合部23において着脱可能に組み付けられている。ブーム先端ブロック22の他端側は回動軸5eによりレベリングブラケット24と回動可能に連結している。ブーム先端ブロック22とレベリングブラケット24との間にはレベリングシリンダ25が連結されている。レベリングシリンダ25は、昇降装置5の動作に応じてレベリングブラケット24より先端側に配置されるバスケット2を含む先端部分の水平姿勢を維持するものである。また、ブーム先端ブロック22にはコンロトールバルブ22aが設けられている。コントロールバルブ22aは、レベリングシリンダ25などのアクチュエータにバルブを開閉して油圧を供給する。
【0027】
次に先端ジブ結合機構21について説明する。
図3において、レベリングブラケット24には、平行に配置された一対のジブブーム27と一対のジブリンク28の一端が回動可能に各々連結され、一対のジブブーム27と一対のジブリンク28の他端は連結リンク29に回動可能に各々連結されている。一対のジブブーム27と一対のジブリンク28はジブシリンダ30により連結されている。ジブシリンダ30を作動させることにより一対のジブブーム27を上下方向に起伏動作させることができる。また、レベリングシリンダ25は、昇降装置5の動作に応じてレベリングブラケット24より先端側に配置される一対のジブブーム27やバスケット2を含む先端部分の水平姿勢を維持する。連結リンク29とバスケット支持ブラケット26は先端第二結合部31において着脱可能に組み付けられている。バスケット支持ブラケット26は、バスケット2を左右に旋回させるバスケット旋回アクチュエータ26aを保持している。旋回アクチュエータ26aは、油圧モータのほかに油圧シリンダによる旋回のいずれも含まれる。これにより、バスケット2の高さ位置の微調整に加えてバスケット2の向きを微調整することができ、高所で狭小な作業空間で作業対象へのアクセスが容易となる。
【0028】
ここで、先端第一結合部23の構成例を
図6(a)(b)に、先端第二結合部31の構成例を
図6(c)(d)に示す。先端第一結合部23は、
図6(a)に示すように、第二ブーム5bの先端部とブーム先端ブロック22が、連結ピン23aにより連結固定されていてもよいし、或いは
図6(b)に示すように、第二ブーム5bの先端部とブーム先端ブロック22が、複数のボルト23bにより連結固定されていてもよい。
【0029】
また先端第二結合部31は、
図6(c)に示すように、レベリングブラケット24とバスケット支持ブラケット26が、複数のボルト31aにより連結固定されていてもよいし、或いは
図6(d)に示すように、レベリングブラケット24とバスケット支持ブラケット26が連結ピン31bにより連結固定されていてもよい。尚、先端第一結合部23及び先端第二結合部31の構成例として固定ピン及びボルトを例示したが、これら以外の連結構造(凹凸嵌合等)により着脱するようにしてもよい。
尚、上記実施例は、先端第一結合部23の構成を援用して部品を付加する形態で先端第二結合部31の構成を説明したが、両者は共通部品を用いてもよいし、異なる部品を用いてもよい。
【0030】
図7に高所作業車1を用いて障害物のある狭小な作業空間で高所作業を行う場合の先端ジブ結合機構21の動作状態について説明する。
図7において、斜線部分は障害物Tを示すもので、障害物Tに囲まれた白抜き部分は作業空間S(S1,S2,S3)を示すものとする。
【0031】
先ず、狭小な作業空間S1より障害物Tの裏側の作業空間S2に回り込む場合の動作例について説明する。昇降装置5の昇降用シリンダ5cによって第一ブーム5a及び第二ブーム5bを水平姿勢としたまま、作業空間S1よりバスケット2を進入させる。このとき、第一ブーム5aに対して第二ブーム5bを伸長させてバスケット2を作業空間Sの奥側に進入させる。このとき、ジブブーム27及びジブリンク28より先端側の水平姿勢は、レベリングブロック22に対するレベリングブラケット24の開き角度をレベリングシリンダ25によって調節されている。
【0032】
次いでジブシリンダ30を作動させて一対のジブブーム27をレベリングブラケット24に対して起立動作させることで、バスケット2を障害物Tの裏側の作業空間S2へ回り込ませることができる。このとき、平行配置された一対のジブブーム27及び一対のジブリンク28は比較的長さが短いため、狭い作業空間S内で起立させることができる。尚、必要に応じてバスケット支持ブラケット26に設けられたバスケット旋回アクチュエータ26aを介してバスケット2を旋回させてもよい。
【0033】
次に、狭小な作業空間S1より障害物Tを乗り越えて作業空間S3に移動する場合の動作例について説明する。昇降装置5の昇降用シリンダ5cによって第一ブーム5a及び第二ブーム5bを水平姿勢としたまま、作業空間S1よりバスケット2を進入させる。このとき、第一ブーム5aに対して第二ブーム5bを伸長させてバスケット2を作業空間Sの奥側に進入させる。
次いで、ジブシリンダ30を作動させて一対のジブブーム27をレベリングブラケット24に対して倒伏動作させることで、バスケット2を障害物Tを乗り越えた裏側の作業空間S3へ移動させることができる。このとき、平行配置された一対のジブブーム27及び一対のジブリンク28は比較的長さが短いため、狭い作業空間S内で倒伏させることができる。尚、必要に応じてバスケット支持ブラケット26に設けられたバスケット旋回アクチュエータ26aを介してバスケット2を旋回させてもよい。
【0034】
以上説明したように、作業空間Sとなるバスケット2周囲の環境に障害物Tがある場合やバスケット位置の微調整が必要な場合には、先端ジブ結合機構21における長さが短いジブブーム28の起伏動作によりバスケット2の障害物Tに対する乗り越えと回り込みが可能となるうえに、高所で狭小な作業空間Sでバスケット2の高さ位置の微調整が可能となり、作業対象へのアクセスが容易となる。
【0035】
また、レベリングシリンダ25を作動させることでレベリングブラケット24より先端側のバスケット2を含む部位の水平姿勢を維持することができる。これにより、バスケット2の高さ位置の微調整に加えて水平姿勢位置を維持することができ、高所で狭小な作業空間Sにおいて対象物へのアクセスが容易となる。
【符号の説明】
【0036】
1 高所作業車 2 バスケット 2a 床面 2b ガードフレーム 2c 操作部 3 車体フレーム 3a 回転軸 4 走行装置 4A ホイール式走行装置 4B クローラ式走行装置 4a 走行用シャーシ 4b 前方アクスル 4b1 前方揺動アクスル 4c 後方アスクル 4d 車輪 4g1,4g2 揺動軸 4h1,4h2 揺動シリンダ 4i,4k シリンダロッド 4t クローラ 4u 駆動輪 4v 従動輪 4w トラックフレーム 4zトラックローラ 5 昇降装置 5a 第一ブーム 5b 第二ブーム 5c 昇降用シリンダ 5d 伸縮用シリンダ 5e 回動軸 6 メインカウンタウェイト 7 エンジン駆動ユニット 7a エンジン 7b ラジエータ 7c 燃料タンク 8 第一取付部 9 カウンターウェイト 10 第二取付部 11 油圧装置 11a 油圧ポンプ 11b コントロールバルブ 11c 旋回モータ 11d 作動油タンク 11e ロックバルブ 12 電装装置 13 電動駆動ユニット 13a 電動モータ 13b モータコントローラ 14 バッテリー 20 先端結合機構 21 先端ジブ結合機構 22 ブーム先端ブロック 22a コントロールバルブ 23 先端第一結合部 23a,31b 連結ピン 23b,31a ボルト 24 レベリングブラケット 25 レベリングシリンダ 26 バスケット支持ブラケット 26a バスケット旋回アクチュエータ 27 ジブブーム 28 ジブリンク 29 連結リンク 30 ジブシリンダ 31 先端第二結合部