IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 北京九▲強▼生物技▲術▼股▲フン▼有限公司の特許一覧

特開2024-109033検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための定量化方法及び装置
<>
  • 特開-検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための定量化方法及び装置 図1
  • 特開-検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための定量化方法及び装置 図2
  • 特開-検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための定量化方法及び装置 図3
  • 特開-検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための定量化方法及び装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109033
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための定量化方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/59 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
G01N21/59 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023197390
(22)【出願日】2023-11-21
(31)【優先権主張番号】202310107360.0
(32)【優先日】2023-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522259016
【氏名又は名称】北京九▲強▼生物技▲術▼股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シャンミン・ジュアン
(72)【発明者】
【氏名】ハンリン・パン
(72)【発明者】
【氏名】シ・リウ
(72)【発明者】
【氏名】アイミン・ガオ
(72)【発明者】
【氏名】リナ・ヘ
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ・リウ
(72)【発明者】
【氏名】シャオジョウ・リ
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059AA05
2G059BB04
2G059BB13
2G059CC17
2G059EE01
2G059FF04
2G059MM01
2G059MM12
(57)【要約】
【課題】本発明は、検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための定量化方法及び装置に関する。
【解決手段】この方法は、参考サンプルの実際の抗原濃度及び反応曲線の曲率又は長さを使用して第1検量線を構築するステップと、検出待ちサンプルの計算された反応曲線の曲率又は長さに基づいて、検出待ちサンプルにプロゾーン現象があるか否かを決定するステップと、検出待ちサンプルにプロゾーン現象があると決定した場合、構築された第1検量線から決定された検出待ちサンプルの抗原濃度が1つの値である場合、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度の基準値として決定し、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度が2つの値である場合、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度を検証し、検証に成功した検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度の基準値として決定するステップと、を含む。本発明は、プロゾーン現象のある検出待ちサンプルに対して定性的なプロンプトを与え、且つ基準値を与えることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための定量化方法であって、
プロゾーン現象のあるサンプルと、プロゾーン現象のないサンプルとを含む複数の参考サンプルのそれぞれの実際の抗原濃度及び計算された吸光度の経時的変化の反応曲線の曲率又は長さを使用し、反応曲線の曲率と実際の抗原濃度との関係を示す第1検量線、又は反応曲線の長さと実際の抗原濃度との関係を示す第1検量線を構築するステップと、
計算された検出待ちサンプルの反応曲線の曲率又は長さに基づいて、検出待ちサンプルにプロゾーン現象があるか否かを決定するステップと、
検出待ちサンプルにプロゾーン現象があると決定した場合、構築された第1検量線に従って検出待ちサンプルの反応曲線の曲率又は長さに対応する検出待ちサンプルの抗原濃度を決定し、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度が1つの値である場合、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度の基準値として決定し、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度が2つの値である場合、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度を検証し、検証に成功した検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度の基準値として決定するステップと、を含むことを特徴とする検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための定量化方法。
【請求項2】
複数の参考サンプルのそれぞれの吸光度及び実際の抗原濃度を使用して吸光度及び実際の抗原濃度との関係を示す第2検量線を構築するステップと、
検出待ちサンプルにプロゾーン現象がないと決定した場合、構築された第2検量線に従って検出待ちサンプルの吸光度に対応する検出待ちサンプルの抗原濃度を決定し、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度として決定するステップと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための定量化方法。
【請求項3】
決定された検出待ちサンプルの抗原濃度が2つの値である場合、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度を検証し、検証に成功した検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度の基準値として決定するステップは、
決定された検出待ちサンプルの抗原濃度のうちの低い方の値を検証し、検証に成功した場合、低い方の検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度の基準値として決定し、検証に失敗した場合、高い方の検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度の基準値として決定するステップを含むことを特徴とする請求項2に記載の検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための定量化方法。
【請求項4】
決定された検出待ちサンプルの抗原濃度のうちの低い方の値を検証するステップは、
検出待ちサンプルがプロゾーン現象のないサンプルとなるように、検出待ちサンプルを希釈し、検出待ちサンプルの抗原濃度のうちの低い方の値に基づいて、希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度を推定するステップと、
希釈後の検出待ちサンプルの吸光度に基づいて、第2検量線を使用し、希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度を決定するステップと、
推定された希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度と決定された希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度とを比較し、推定された希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度が決定された希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度と一致する場合、低い方の検出待ちサンプルの抗原濃度の検証に成功したことを示し、推定された希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度が決定された希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度と一致しない場合、低い方の検出待ちサンプルの抗原濃度の検証に失敗したことを示すステップとを含むことを特徴とする請求項3に記載の検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための定量化方法。
【請求項5】
吸光度の経時的変化の反応曲線の曲率又は長さを計算するステップは、
反応プロセスで光学検出システムを使用して透過光強度の経時的変化データを収集し、透過光強度の経時的変化データを吸光度の経時的変化の反応曲線に変換し、吸光度の経時的変化の反応曲線に従って、予め設定された時点に対応する吸光度を決定するステップと、
吸光度の経時的変化の反応曲線上に予め設定された開始時点及び予め設定された終了時点を選択し、予め設定された開始時点と予め設定された終了時点の間の吸光度の経時的変化の反応曲線の曲率又は長さを計算するステップとを含むことを特徴とする請求項2に記載の検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための定量化方法。
【請求項6】
検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための定量化装置であって、
プロゾーン現象のあるサンプルと、プロゾーン現象のないサンプルとを含む複数の参考サンプルのそれぞれの実際の抗原濃度及び計算された吸光度の経時的変化の反応曲線の曲率又は長さを使用し、反応曲線の曲率と実際の抗原濃度との関係を示す第1検量線、又は反応曲線の長さと実際の抗原濃度との関係を示す第1検量線を構築するように構成される曲線構築モジュールと、
計算された検出待ちサンプルの反応曲線の曲率又は長さに基づいて、検出待ちサンプルにプロゾーン現象があるか否かを決定するように構成される決定モジュールと、
検出待ちサンプルにプロゾーン現象があると決定した場合、構築された第1検量線に従って検出待ちサンプルの反応曲線の曲率又は長さに対応する検出待ちサンプルの抗原濃度を決定し、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度が1つの値である場合、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度の基準値として決定し、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度が2つの値である場合、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度を検証し、検証に成功した検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度の基準値として決定するように構成される第1定量化モジュールと、を含むことを特徴とする検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための定量化装置。
【請求項7】
前記曲線構築モジュールは、さらに複数の参考サンプルのそれぞれの吸光度及び実際の抗原濃度を使用して吸光度及び実際の抗原濃度の関係を示す第2検量線を構築するように構成され、
前記装置は、第2定量化モジュールをさらに含み、前記第2定量化モジュールは、検出待ちサンプルにプロゾーン現象がないと決定した場合、構築された第2検量線に従って検出待ちサンプルの吸光度に対応する検出待ちサンプルの抗原濃度を決定し、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度として決定するように構成されることを特徴とする請求項6に記載の検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための定量化装置。
【請求項8】
前記第1定量化モジュールは、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度のうちの低い方の値を検証し、検証に成功した場合、低い方の検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度の基準値として決定し、検証に失敗した場合、高い方の検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度の基準値として決定するように構成されることを特徴とする請求項7に記載の検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための定量化装置。
【請求項9】
前記第1定量化モジュールは、
決定された検出待ちサンプルの抗原濃度のうちの低い方の値を検証する場合、検出待ちサンプルがプロゾーン現象のないサンプルとなるように、検出待ちサンプルを希釈し、検出待ちサンプルの抗原濃度のうちの低い方の値に基づいて、希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度を推定し、
希釈後の検出待ちサンプルの吸光度に基づいて、第2検量線を使用し、希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度を決定し、
推定された希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度と、決定された希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度とを比較して、推定された希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度が決定された希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度と一致する場合、低い方の検出待ちサンプルの抗原濃度の検証に成功したことを示し、推定された希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度が決定された希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度と一致しない場合、低い方の検出待ちサンプルの抗原濃度の検証に失敗したことを示すように構成されることを特徴とする請求項8に記載の検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための定量化装置。
【請求項10】
前記装置は、吸光度の経時的変化の反応曲線の曲率又は長さを計算する計算モジュールを含み、前記計算モジュールは、
反応プロセスで光学検出システムを使用して透過光強度の経時的変化データを収集し、透過光強度の経時的変化データを吸光度の経時的変化の反応曲線に変換し、吸光度の経時的変化の反応曲線に従って、予め設定された時点に対応する吸光度を決定し、
吸光度の経時的変化の反応曲線上に予め設定された開始時点及び予め設定された終了時点を選択し、予め設定された開始時点と予め設定された終了時点の間の吸光度の経時的変化の反応曲線の曲率又は長さを計算するように構成されることを特徴とする請求項7に記載の検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための定量化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出技術分野に関し、特に検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための定量化方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫比濁分析法は、全自動生化学分析装置、全自動血液凝固測定装置及び特殊タンパク質測定装置で使用される日常的な検出方法であるが、この方法では、使用中に検出対象である抗原又は抗体が過剰になる現象が発生する可能性があり、これによって生じる状況は、プロゾーン現象と呼ばれ、このような標本は、プロゾーン現象のあるサンプルと呼ばれる。プロゾーン現象のあるサンプルを検出する場合、装置は、オペレーターがプロゾーン現象のあるサンプルを希釈してから検出し、正しい濃度値を得るために、幾つかの判定方法を使用してプロンプトを与える。
【0003】
現在の装置で使用されるプロゾーン標本の判定方法は、反応曲線の傾き(即ち、一次導関数)の変化に基づいており、横座標を表す時間軸で不安定区間と線形区間の2つの時間区間を選択し、プロゾーンサンプルの線形区間の傾きと不安定区間の傾きとの比が通常のサンプルの傾きの比よりも大きいことに基づき、プロゾーン現象のあるサンプルを区別し、さらにシステムプロンプトを与えることができ、オペレーターは、プロゾーン現象のあるサンプルを希釈し、正しいサンプル濃度情報を与える。全自動生化学分析装置で使用される方法は、細かい点で上記方法とは異なるが、いずれも反応曲線の前部セグメント及び後部セグメントの傾き変化を比較することに基づく方法である。しかしながら、現在の使用されているプロゾーン警報方法は、すべて定性的であり、即ち、サンプルにプロゾーン現象があるか否かを判定するためのものだけであるが、定量的に警報できる方法が提供されない。
【0004】
背景技術に関する上記の記述は、本発明の技術的解決策(使用される技術的手段、解決される技術的問題、及び生じる技術的効果などの方面)への深い理解を容易にするためのものだけであり、この情報が当業者に既に知られている先行技術を構成することを認めたり、何らかの形で示唆したりするものとして見なされるべきではない。
【発明の概要】
【0005】
従来技術の欠点に対して、本発明は、プロゾーン現象のある検出待ちサンプルに定性的なプロンプトを与えるうえ、反応曲線の長さ又は曲率に応じて抗原濃度の基準値をさらに与えることができる検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための定量化方法及び装置を提供する。
【0006】
本発明の実施形態によれば、検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための定量化方法が提供され、前記方法は、プロゾーン現象のあるサンプルと、プロゾーン現象のないサンプルとを含む複数の参考サンプルのそれぞれの実際の抗原濃度と計算された吸光度の経時的変化の反応曲線の曲率又は長さを使用し、反応曲線の曲率と実際の抗原濃度との関係を示す第一検量線、又は反応曲線の長さと実際の抗原濃度との関係を示す第1検量線を構築するステップと、計算された検出待ちサンプルの反応曲線の曲率又は長さに基づいて、検出待ちサンプルにプロゾーン現象があるか否かを決定するステップと、検出待ちサンプルにプロゾーン現象があると決定した場合、構築された第1検量線に従って検出待ちサンプルの反応曲線の曲率又は長さに対応する検出待ちサンプルの抗原濃度を決定し、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度が1つの値である場合、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度の基準値として決定し、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度が2つの値である場合、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度を検証し、検証に成功した検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度の基準値として決定するステップとを含む。
【0007】
好ましくは、複数の参考サンプルのそれぞれの吸光度及び実際の抗原濃度を使用し、吸光度と実際の抗原濃度との関係を示す第2検量線を構築し、検出待ちサンプルにプロゾーン現象がないと決定した場合、構築された第2検量線に従って検出待ちサンプルの吸光度に対応する検出待ちサンプルの抗原濃度を決定し、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度として決定する。
【0008】
好ましくは、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度が2つの値である場合、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度を検証し、検証に成功した検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度の基準値として決定するステップは、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度のうちの低い方の値を検証し、検証に成功した場合、低い方の検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度の基準値として決定し、検証に失敗した場合、高い方の検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度の基準値として決定するステップを含む。
【0009】
好ましくは、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度のうちの低い方の値を検証するステップは、検出待ちサンプルがプロゾーン現象のないサンプルとなるように、検出待ちサンプルを希釈し、検出待ちサンプルの抗原濃度のうちの低い方の値に基づいて、希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度を推定するステップと、希釈後の検出待ちサンプルの吸光度に基づいて、第2検量線を使用し、希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度を決定するステップと、推定された希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度と決定された希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度とを比較し、推定された希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度が決定された希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度と一致する場合、低い方の検出待ちサンプルの抗原濃度の検証に成功したことを示し、推定された希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度が決定された希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度と一致しない場合、低い方の検出待ちサンプルの抗原濃度の検証に失敗したことを示すステップとを含む。
【0010】
好ましくは、吸光度の経時的変化の反応曲線の曲率又は長さを計算するステップは、反応プロセスで光学検出システムを使用して透過光強度の経時的変化データを収集し、透過光強度の経時的変化データを吸光度の経時的変化の反応曲線に変換し、吸光度の経時的変化の反応曲線に従って、予め設定された時点に対応する吸光度を決定するステップと、吸光度の経時的変化の反応曲線上に予め設定された開始時点及び予め設定された終了時点を選択し、予め設定された開始時点と予め設定された終了時点の間の吸光度の経時的変化の反応曲線の曲率又は長さを計算するステップとを含む。
【0011】
本発明の別の実施形態によれば、検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための定量化装置が提供され、前記装置は、第1曲線構築モジュール、決定モジュール、第1定量化モジュール及び第2定量化モジュールを含む。第1曲線構築モジュールは、プロゾーン現象のあるサンプルと、プロゾーン現象のないサンプルとを含む複数の参考サンプルのそれぞれの実際の抗原濃度及び計算された吸光度の経時的変化の反応曲線の曲率又は長さを使用し、反応曲線の曲率と実際の抗原濃度との関係を示す第1検量線、又は反応曲線の長さと実際の抗原濃度との関係を示す第1検量線を構築するように構成される。決定モジュールは、計算された検出待ちサンプルの反応曲線の曲率又は長さに基づいて、検出待ちサンプルにプロゾーン現象があるか否かを決定するように構成される。第1定量化モジュールは、検出待ちサンプルにプロゾーン現象があると決定した場合、構築された第1検量線に従って検出待ちサンプルの反応曲線の曲率又は長さに対応する検出待ちサンプルの抗原濃度を決定し、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度が1つの値である場合、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度の基準値として決定し、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度が2つの値である場合、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度を検証し、検証に成功した検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度の基準値として決定するように構成される。
【0012】
好ましくは、前記曲線構築モジュールは、さらに複数の参考サンプルのそれぞれの吸光度及び実際の抗原濃度を使用し、吸光度及び実際の抗原濃度の関係を示す第2検量線を構築するように構成され、前記装置は、第2曲線構築モジュールをさらに含み、前記第2定量化モジュールは、検出待ちサンプルにプロゾーン現象がないと決定した場合、構築された第2検量線に従って検出待ちサンプルの吸光度に対応する検出待ちサンプルの抗原濃度を決定し、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度として決定するように構成される。
【0013】
好ましくは、前記第1定量化モジュールは、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度のうちの低い方の値を検証し、検証に成功した場合、低い方の検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度の基準値として決定し、検証に失敗した場合、高い方の検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度の基準値として決定するように構成される。
【0014】
好ましくは、前記第1定量化モジュールは、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度のうちの低い方の値を検証する場合、検出待ちサンプルがプロゾーン現象のないサンプルとなるように、検出待ちサンプルを希釈し、検出待ちサンプルの抗原濃度のうちの低い方の値に基づいて、希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度を推定し、希釈後の検出待ちサンプルの吸光度に基づいて、第2検量線を使用し、希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度を決定し、推定された希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度と決定された希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度とを比較し、推定された希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度が決定された希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度と一致する場合、低い方の検出待ちサンプルの抗原濃度の検証に成功したことを示し、推定された希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度が決定された希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度と一致しない場合、低い方の検出待ちサンプルの抗原濃度の検証に失敗したことを示すように構成される。
【0015】
好ましくは、前記装置は、吸光度の経時的変化の反応曲線の曲率又は長さを計算する計算モジュールを含み、前記計算モジュールは、反応プロセスで光学検出システムを使用して透過光強度の経時的変化データを収集し、透過光強度の経時的変化データを吸光度の経時的変化の反応曲線に変換し、吸光度の経時的変化の反応曲線に従って、予め設定された時点に対応する吸光度を決定し、吸光度の経時的変化の反応曲線上に予め設定された開始時点及び予め設定された終了時点を選択し、予め設定された開始時点と予め設定された終了時点の間の吸光度の経時的変化の反応曲線の曲率又は長さを計算するように構成される。
【0016】
本発明は、上記の技術的解決策を採用しており、以下の有益な効果を有する:
【0017】
本発明は、プロゾーン現象のある検出待ちサンプルに定性的なプロンプトを与えたうえ、反応曲線の長さ又は曲率に応じて抗原濃度の基準値を与えることができる。
【0018】
以下に図面を組み合わせながら本発明の例示的な実施例をより詳しく説明する。明確にするために、異なる図面の同じ部材は、同じ記号で示される。説明すべきものとして、図面は、概略のみを目的としており、必ずしも縮尺で描かれているわけではない。これらの図面は以下のとおりである:
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態による検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための定量化方法を示す概略図である。
図2】反応曲線の曲率と測定された抗原濃度との関係を例示的に示す検量線である。
図3】反応曲線の長さと測定された抗原濃度との関係を例示的に示す検量線である。
図4】本発明の実施形態による検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための定量化装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、本発明の実施形態を詳細に説明するが、本実施形態は、本発明の技術的解決策を前提として実施され、詳細な実施形態及び具体的な動作プロセスが示されるが、本発明の保護範囲は、下記の実施形態に限定されるものではない。
【0021】
図1は本発明の実施形態による検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための定量化方法を示す概略図である。図1に示すように、本発明の実施形態による検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための定量化方法は、以下のステップを含むことができる:
【0022】
S100において、複数の参考サンプルのそれぞれの実際の抗原濃度及び計算された、吸光度の経時的変化の反応曲線の曲率又は長さを使用し、反応曲線の曲率と実際の抗原濃度との関係を示す第1検量線、又は反応曲線の長さと実際の抗原濃度との関係を示す第1検量線を構築し、前記複数の参考サンプルは、プロゾーン現象のあるサンプルと、プロゾーン現象のないサンプルとを含む。複数の参考サンプルのそれぞれの吸光度及び実際の抗原濃度を使用して吸光度及び実際の抗原濃度との関係を示す第2検量線を構築する。
【0023】
S200において、計算された検出待ちサンプルの反応曲線の曲率又は長さに基づいて、検出待ちサンプルにプロゾーン現象があるか否かを決定する。
【0024】
検出待ちサンプルにプロゾーン現象がないと決定した場合(S200の「No」)、構築された第2検量線に従って検出待ちサンプルの吸光度に対応する検出待ちサンプルの抗原濃度を決定し、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度として決定する(S300)。
【0025】
逆に、検出待ちサンプルにプロゾーン現象があると決定した場合(S200の「Yes」)、構築された第1検量線に従って検出待ちサンプルの反応曲線の曲率又は長さに対応する検出待ちサンプルの抗原濃度を決定する(S400)。
【0026】
次に、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度が1つの値又は2つの値であるかを判定する(S500)。決定された検出待ちサンプルの抗原濃度が1つの値である場合(S500の「Yes」)、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度の基準値として決定する(S600)。決定された検出待ちサンプルの抗原濃度が2つの値である場合(S500の「No」)、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度を検証し、具体的には、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度のうちの低い方の値を検証し、検証に成功した場合、低い方の検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度の基準値として決定し、検証に失敗した場合、高い方の検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度の基準値として決定する(S700)。検出待ちサンプルの抗原濃度の基準値は、検出待ちサンプルの実際の抗原濃度の基準を提供するために使用される。
【0027】
S100において、癌胎児性抗原(CEA:carcinoembryonic antigen)をサンプルの試薬の例として用いると、CEAの正常値範囲は、0~5ng/mlであり、線形範囲は、0~100ng/mlである。CEA純品を異なる割合で希釈した後、異なる濃度の15の標準品が得られる。そして、異なる濃度のこれら15の標準品を本発明の実施形態による複数の参考サンプルとして用いる。
【0028】
CEAを異なる割合で希釈した後のこれら15の標準品の実際の抗原濃度が既知である。また、光学検出システムを使用して測定することにより、15の標準品の透過光強度の経時的変化データを得て、そして15の標準品に対応する吸光度の経時的変化の15本の反応曲線を得て、各反応曲線の曲率及び長さを計算することができる。
【0029】
1つの例示的な実施形態では、光学検出システムは、検出待ちサンプルを照射するために使用され、光源、レンズ、フィルター及び光ファイバーで構成され、分析器具の片側に位置し、光源から発せられた光が分析器具に照射され、分析器具内に反応中の検出待ちサンプルが配置され、分析器具を通過した光が受信機に照射され、受信機内の信号収集回路が受光量を透過光強度に変換することにより、透過光強度の経時的データを収集し、それによって元の信号反応データを形成することができる。次に、検出待ちサンプルの元の信号反応データを吸光度の経時的データに変換することにより、検出待ちサンプルの経時的変化の反応曲線を決定する。
【0030】
サンプルと試薬の混合時の物理的な振動により、初期時間区間内(例えば、0sから10s)の吸光度データが大幅に変化するため、一定期間後(例えば、11s及びそれ以降)のデータは、本当に生化学反応によって引き起こされたものであり、したがって、吸光度の経時的変化の反応曲線上に予め設定された開始時点及び予め設定された終了時点を選択し、選択された、予め設定された開始時点は、11sであってもよく、予め設定された終了時点は、27sであってもよい。吸光度の経時的変化の反応曲線上に予め設定された開始時点及び予め設定された終了時点を選択した後、予め設定された開始時点と予め設定された終了時点の間の吸光度の経時的変化の反応曲線の曲率又は長さを計算する。
【0031】
曲率を計算する場合、3点曲率計算法を使用することができ、具体的には、予め設定された開始時点と予め設定された終了時点の間のデータを予め設定された関数モデルに従ってフィッティングし、吸光度及び時間に関する円弧曲線を得て、フィッティングされた円弧曲線上に、第1予め設定された時点(例えば、12s目)、第2予め設定された時点(例えば、19s目)及び第3予め設定された時点(例えば、25s目)を選択し、フィッティングされた円弧曲線上の第1予め設定された時点、第2予め設定された時点及び第3予め設定された時点にそれぞれ対応する点の座標に基づいて、フィッティングされた円弧曲線の半径を計算し、当該半径の逆数をフィッティングされた円弧曲線の曲率として用いる。
【0032】
同様に、以下で、検出待ちサンプルの反応曲線の曲率又は長さは、上記方法に基づいて計算される。
【0033】
したがって、次の表1に示す15の標準品のそれぞれの反応曲線の曲率、長さ、測定された抗原濃度及び実際の抗原濃度を得ることができる。
【0034】
【表1】
【0035】
表1に示すように、CEAの線形範囲が0~100ng/mlであるため、15の標準品のうち、実際の抗原濃度が100ng/mlよりも低い標準品は、プロゾーン現象のないサンプルであり、実際の抗原濃度が100ng/mlよりも高い標準品は、プロゾーン現象のあるサンプルであり、即ち、標準品No.1~No.7は、プロゾーン現象のない参考サンプルであり、標準品No.8~No.15は、プロゾーン現象のある参考サンプルである。
【0036】
表1から分かるように、実際の抗原濃度と反応曲線の曲率に関する既知の座標点は、(3.15,0.0115)、(7.76,0.0525)、(16.38,0.1018)、(25.95,0.1460)、(35.54,0.1659)、(45.66,0.1999)、(83.3,0.2645)、(180,0.9000)、(360,2.3000)、(720,3.2300)、(900,3.4280)、(1800,3.3260)、(3600,3.1096)、(7200,2.8813)、(9000,2.7950)を含む。本発明の実施形態によれば、これらの限定された点の既知の座標点を使用し、反応曲線の曲率と実際の抗原濃度との関係を示す第1検量線を構築し、このようなプロセスは、スケーリングプロセスと呼ばれ、スケーリングプロセスでは、Logit-Log 3Pモデル、logit-log 4Pモデル、logit-log 5Pモデルなどの既知のスケーリング関数モデルを使用することができる。図2は、反応曲線の曲率と測定された抗原濃度との関係を例示的に示す第1検量線であり、X軸は、抗原濃度を表し、単位がng/mlであり、Y軸は、曲率を表し、単位がm^-1である。
【0037】
同様に、表1から分かるように、実際の抗原濃度と反応曲線の長さに関する既知の座標点は、(3.15,0.0080)、(7.76,0.0170)、(16.38,0.0334)、(25.95,0.0505)、(35.54,0.0675)、(45.66,0.0883)、(83.3,0.1526)、(180,0.2544)、(360,0.3162)、(720,0.3156)、(900,0.3095)、(1800,0.2755)、(3600,0.2512)、(7200,0.2279)、(9000,0.2182)を含む。これらの限られた点の既知の座標を使用し、反応曲線の長さと測定された抗原濃度との関係を示す第1検量線を構築する。図3は、反応曲線の長さと実際の抗原濃度との関係を例示的に示す第1検量線であり、X軸は、抗原濃度を表し、単位がng/mlであり、Y軸は、長さを表し、単位がmである。
【0038】
S200において、例として、図2に示すように、反応曲線の曲率と測定された抗原濃度との関係を示す第1検量線の単調区間(且つ単調段階的増加)は、[0,900]である。図3に示すように、反応曲線の長さと測定された抗原濃度との関係を示す第1検量線の単調区間は、[0,360]である。
【0039】
図2及び図3から分かるように、図2に示す第1検量線の単調区間[0,900]は、図3に示す第1検量線の単調曲線[0,360]よりも広い。したがって、試薬CEAの場合、反応曲線の曲率は、プロゾーン現象に対しより敏感である。以下では、反応曲線の曲率をプロゾーン定量化警報の指標として選択し、本発明の実施形態による検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための定量化方法について詳細に説明する。しかしながら、他の試薬では、反応曲線の長さがプロゾーン現象に対しより敏感となる可能性があり、このとき、反応曲線の長さをプロゾーン定量化警報の指標として選択することができる。
【0040】
プロゾーン現象のない参考サンプルNo.1~No.7に対して、吸光度の経時的変化の反応曲線に従って、予め設定された時点に対応する吸光度を決定し、参考サンプルNo.1~No.7のそれぞれの吸光度及び実際の抗原濃度を使用して吸光度及び実際の抗原濃度の関係を示す第2検量線を構築する。抗原がシステム内の特異的な抗体に結合した場合、粒子の増大によりシステムの濁度が増加し、その結果、吸光度が増加するため、ランベルトベール法則によりシステム内の分析対象成分である抗原の濃度を推定することができ、ランベルトベール法則が吸光度と実際の抗原濃度との正比例関係を示すため、第2検量線は、原点を通る直線である。
【0041】
S200において、計算された検出待ちサンプルの反応曲線の曲率に基づいて、検出待ちサンプルにプロゾーン現象があるか否かを決定する。具体的には、基準曲率を決定することができる:
【0042】
【化1】
ここで、K0は、基準曲率であり、
【0043】
【化2】
は、プロゾーン現象のない複数のサンプルの吸光度の経時的変化の反応曲線の、予め設定された開始時点と予め設定された終了時点との間の曲率の平均値であり、Cは、係数であり、複数回の実験により決定されてもよく、その値の範囲が0.8~1.2である。
【0044】
例として、プロゾーン現象のない参考サンプルNo.1~No.7を使用して基準曲率を計算することができる。計算された検出待ちサンプルの反応曲線の曲率と基準曲率を比較し、計算された検出待ちサンプルの反応曲線の曲率が基準曲率よりも大きい場合、検出待ちサンプルにプロゾーン現象があると決定し、計算された検出待ちサンプルの反応曲線の曲率が基準曲率以下である場合、検出待ちサンプルにプロゾーン現象がないと決定する。
【0045】
検出待ちサンプルにプロゾーン現象がないと決定した場合(S200の「No」)、検出待ちサンプルの反応曲線上に予め設定された時点に対応する吸光度を決定し、第2検量線に従って検出待ちサンプルの吸光度に対応する検出待ちサンプルの抗原濃度を決定する。このとき、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度として直接決定することができる。
【0046】
別の実施形態では、第2検量線を使用する代わりに、ランベルトベール法則に従って検出待ちサンプルの抗原濃度を計算することができる。プロゾーン現象のある参考サンプルの吸光度がA1であり、実際の抗原濃度がM1であることが分かる場合、検出待ちサンプルの吸光度値をAxとすると、吸光度と実際の抗原濃度との正比例により、検出待ちサンプルの抗原濃度は、Mx=M1×Ax÷A1となる。
【0047】
検出待ちサンプルにプロゾーン現象がないと決定した場合(S200の「No」)、計算された検出待ちサンプルの反応曲線の曲率に対応する検出待ちサンプルの抗原濃度は、図2の区間O-A内にあり、ここで、Oの座標は、(0,0)であり、点Aの横座標は、CEAの線形範囲の上限に対応し、したがって、点Aの座標は、(100,0)になる。
【0048】
逆に、検出待ちサンプルにプロゾーン現象があると決定した場合(S200の「Yes」)、図2に示す第1検量線に従って、検出待ちサンプルの反応曲線の曲率又は長さに対応する検出待ちサンプルの抗原濃度を決定する。このとき、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度は、2つの可能性がある。1つの可能性は、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度が1つの値だけであり、且つ区間A-B内にあることであり、もう1つの可能性は、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度が2つの値であり、且つ2つの値で決定された抗原濃度が区間B-C内にあることである。点Bの座標は、(492.5623,0)であり、点Cの座標は、(9000,0)である。決定された検出待ちサンプルの抗原濃度が1つの値である場合、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度の基準値として決定する。
【0049】
決定された検出待ちサンプルの抗原濃度が2つの値である場合、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度を検証し、検証に成功した検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度の基準値として決定する。
【0050】
検証では、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度のうちの低い方の値を検証し、検証に成功した場合、低い方の検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度の基準値として決定し、検証に失敗した場合、高い方の検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度の基準値として決定する。
【0051】
検出待ちサンプルの抗原濃度の低い方の値を優先的に検証するのは、検出待ちサンプルがプロゾーン現象のないサンプルとなるように、検証プロセスで検出待ちサンプルを希釈する必要があるからであり、低い方の検出待ちサンプルの抗原濃度に基づいて、プロゾーン現象のない状態までより低い希釈率で希釈することができる。
【0052】
具体的には、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度のうちの低い方の値を検証するステップは、検出待ちサンプルがプロゾーン現象のないサンプル(即ち、濃度は、区間O-Aに希釈される)となるように、検出待ちサンプルを希釈し、検出待ちサンプルの抗原濃度のうちの低い方の値に基づいて、希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度を推定するステップを含む。
【0053】
希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度を計算する。希釈後の検出待ちサンプルの吸光度に基づいて、第2検量線を使用して希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度を決定する。又は、希釈後の検出待ちサンプルの吸光度に基づいて、ランバートベール法則を使用して希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度を直接計算することができる。
【0054】
推定された希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度と決定/計算された希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度とを比較し、推定された希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度が決定された希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度と一致する場合、低い方の検出待ちサンプルの抗原濃度の検証に成功したことを示す。逆に、推定された希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度が決定/計算された検出待ちサンプルの抗原濃度と一致しない場合、低い方の検出待ちサンプルの抗原濃度の検証に失敗したことを示し、高い方の検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度の基準値として決定する。
【0055】
例えば、図2では、検出待ちサンプルの曲率が2.7950m^-1に等しい場合、対応する検出待ちサンプルの抗原濃度は、2つの値があり、それぞれ492.5623ng/mlと9000ng/mlである。抗原濃度が2つの値のうちの低い方の値、即ち492.5623ng/mlであると仮定し、検出待ちサンプルの液体を6倍希釈した場合、推定された希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度は、約82ng/mlとなり、濃度が100ng/ml未満に希釈された場合、希釈後の検出待ちサンプルには、プロゾーン現象がない。希釈後の検出待ちサンプルの吸光度に基づいて、第2検量線又はランバートビール法則を使用して希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度を取得し、取得された抗原濃度を82ng/mlと比較する。取得された抗原濃度も82ng/mlである場合、抗原濃度が492.5623ng/mlであるという仮定は正しく、抗原濃度492.5623ng/mlへの検証は成功した。取得された抗原濃度が82ng/mlではない場合、抗原濃度が492.5623ng/mlであるという仮定は正しくなく、抗原濃度492.5623ng/mlへの検証は失敗し、これにより、検出待ちサンプルの抗原濃度は、9000ng/mlであることがわかる。
【0056】
図4は本発明の実施形態による検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための定量化装置の構成を示すブロック図である。図4に示すように、本発明の実施形態による検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための定量化装置は、曲線構築モジュール、確認モジュール、第1定量化モジュール及び第2定量化モジュールを含む。曲線構築モジュールは、プロゾーン現象のあるサンプルと、プロゾーン現象のないサンプルとを含む複数の参考サンプルのそれぞれの実際の抗原濃度及び計算された、吸光度の経時的変化の反応曲線の曲率又は長さを使用し、反応曲線の曲率と実際の抗原濃度との関係を示す第1検量線、又は反応曲線の長さと実際の抗原濃度との関係を示す第1検量線を構築するように構成されてもよい。曲線構築モジュールは、さらに複数の参考サンプルのそれぞれの吸光度及び実際の抗原濃度を使用して吸光度及び実際の抗原濃度の関係を示す第2検量線を構築するように構成されてもよい。
【0057】
決定モジュールは、計算された検出待ちサンプルの反応曲線の曲率又は長さに基づいて、検出待ちサンプルにプロゾーン現象があるか否かを決定するように構成される。第1定量化モジュールは、検出待ちサンプルにプロゾーン現象があると決定した場合、構築された第1検量線に従って検出待ちサンプルの反応曲線の曲率又は長さに対応する検出待ちサンプルの抗原濃度を決定し、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度が1つの値である場合、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度の基準値として決定し、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度が2つの値である場合、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度を検証し、検証に成功した検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度の基準値として決定するように構成される。第2定量化モジュールは、検出待ちサンプルにプロゾーン現象がないと決定した場合、構築された第2検量線に従って検出待ちサンプルの吸光度に対応する検出待ちサンプルの抗原濃度を決定し、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度として決定するように構成される。
【0058】
具体的には、第1定量化モジュールは、決定された検出待ちサンプルの抗原濃度のうちの低い方の値を検証し、検証に成功した場合、低い方の検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度の基準値として決定し、検証に失敗した場合、高い方の検出待ちサンプルの抗原濃度を検出待ちサンプルの抗原濃度の基準値として決定するように構成される。
【0059】
決定された検出待ちサンプルの抗原濃度のうちの低い方の値を検証する場合、第1定量化モジュールは、検出待ちサンプルがプロゾーン現象のないサンプルとなるように、検出待ちサンプルを希釈し、検出待ちサンプルの抗原濃度のうちの低い方の値に基づいて、希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度を推定する。第1定量化モジュールは、希釈後の検出待ちサンプルの吸光度に基づいて、第2検量線を使用して希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度を決定する。第1定量化モジュールは、推定された希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度と決定された希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度とを比較し、推定された希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度が決定された希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度と一致する場合、低い方の検出待ちサンプルの抗原濃度の検証に成功したことを示し、推定された希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度が決定された希釈後の検出待ちサンプルの抗原濃度と一致しない場合、低い方の検出待ちサンプルの抗原濃度の検証に失敗したことを示す。
【0060】
本発明の実施形態による検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための定量化装置は、計算モジュールとをさらに含む。計算モジュールは吸光度の経時的変化の反応曲線の曲率又は長さを計算して、反応プロセスで光学検出システムを使用して透過光強度の経時的変化データを収集し、透過光強度の経時的変化データを吸光度の経時的変化の反応曲線に変換し、吸光度の経時的変化の反応曲線に従って、予め設定された時点に対応する吸光度を決定し、吸光度の経時的変化の反応曲線上に予め設定された開始時点及び予め設定された終了時点を選択し、予め設定された開始時点と予め設定された終了時点の間の吸光度の経時的変化の反応曲線の曲率又は長さを計算するように構成される。
【0061】
本発明の実施形態によれば、プロゾーン現象のある検出待ちサンプルに定性的なプロンプトを与えた上、反応曲線の長さ又は曲率に応じて抗原濃度の基準値を与え、特にプロゾーン現象のある検出待ちサンプルに対して、抗原濃度の基準値は、それが過剰である実際の抗原濃度の基準を提供することができる。
【0062】
本発明の様々な実施形態は、すべての可能な組み合わせの網羅的な列挙であることを意図するものではなく、本発明の代表的な態様を説明することを意図しており、各実施形態で説明される内容は、独立して適用されてもよく、又は2つ以上の組み合わせで適用されてもよい。
【0063】
以上の例示的な実施形態で示した説明は、本発明の技術的解決策を説明するためのものだけであり、網羅的であることを意図したものではなく、また、本発明を説明された形態に限定することを意図したものではない。明らかに、当業者は、上記の教示に従って多くの修正及び変形を行うことができる。例示的な実施形態は、本発明の特定の原理及びその実際の応用を説明するために選択及び説明されており、それによって他の当業者が本発明の様々な例示的な実施形態及びそれらの様々な代替形態、修正形態を理解し、実際に利用することが容易になる。本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲及びその等価形態によって定義されることを意図している。
図1
図2
図3
図4