(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109034
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】デスロラタジン含有製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4545 20060101AFI20240805BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20240805BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20240805BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240805BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240805BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240805BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240805BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
A61K31/4545
A61P11/02
A61P17/04
A61P37/08
A61P17/00
A61K9/20
A61K47/38
A61K47/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023202566
(22)【出願日】2023-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2023013353
(32)【優先日】2023-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000209049
【氏名又は名称】沢井製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】南岡 咲希
(72)【発明者】
【氏名】増井 辰馬
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA49
4C076BB22
4C076CC18
4C076EE32B
4C076EE38B
4C076EE45B
4C076FF06
4C076FF52
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC27
4C086GA07
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA57
4C086NA09
4C086ZA34
4C086ZA89
4C086ZB13
(57)【要約】
【課題】
苦味を抑制したデスロラタジン含有製剤を提供する。
【解決手段】
本発明の一実施形態によると、デスロラタジンと、クロスカルメロースナトリウム、カルメロース及びデンプングリコール酸ナトリウムからなる群から選択される1つ以上の崩壊剤と、を含み、デスロラタジンに対して、300重量%以上の崩壊剤を含む、デスロラタジン含有製剤が提供される。前記デスロラタジンに対して、2000重量%以下の前記崩壊剤を含んでもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デスロラタジンと、
クロスカルメロースナトリウム、カルメロース及びデンプングリコール酸ナトリウムからなる群から選択される1つ以上の崩壊剤と、を含み、
前記デスロラタジンに対して、300重量%以上の前記崩壊剤を含む、デスロラタジン含有製剤。
【請求項2】
前記デスロラタジンに対して、2000重量%以下の前記崩壊剤を含む、請求項1に記載のデスロラタジン含有製剤。
【請求項3】
前記デスロラタジン含有製剤が、口腔内崩壊錠である、請求項1又は2に記載のデスロラタジン含有製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デスロラタジン含有製剤に関する。本発明の一実施形態は、苦味を抑制したデスロラタジン含有製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
デスロラタジン(8-Chloro-11-(piperidin-4-ylidene)-6,11-dihydro-5H-benzo[5,6]cyclohepta[1,2-b]pyridine)は、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、皮膚疾患(湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症)に伴うそう痒の治療薬として知られている(例えば、非特許文献1)。
【0003】
デスロラタジンは、苦味を有することが知られている。例えば、非特許文献2には、デスロラタジンとオイドラギット(登録商標)EPOを1:0.5の割合で混合し、アルコールと水を8:2で含む含水アルコール溶液で造粒した造粒物を含む口腔内崩壊錠が苦味を抑制したことが記載されている。
【0004】
また、味のマスキングのために、デスロラタジンを含む粒子の表面積を減少させながら、所望の粒径分布を得ることが特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】デザレックス(登録商標)錠5mg 医薬品インタビューフォーム 2021年6月改訂(第7版)
【非特許文献2】Etman et al. Formulation of Desloratadine Oral Disintegrating Tablets, Journal of Applied Pharmaceutical Science Vol. 4 (11), pp. 054-061
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一実施形態は、苦味を抑制したデスロラタジン含有製剤を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によると、デスロラタジンと、クロスカルメロースナトリウム、カルメロース及びデンプングリコール酸ナトリウムからなる群から選択される1つ以上の崩壊剤と、を含み、デスロラタジンに対して、300重量%以上の崩壊剤を含む、デスロラタジン含有製剤が提供される。
【0009】
デスロラタジンに対して、2000重量%以下の崩壊剤を含んでもよい。
【0010】
デスロラタジン含有製剤が、口腔内崩壊錠であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態によると、苦味を抑制したデスロラタジン含有製剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るデスロラタジン含有製剤について説明する。なお、本発明のデスロラタジン含有製剤は、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0013】
本発明に係るデスロラタジン含有製剤は、デスロラタジンと、デスロラタジンとともにクロスカルメロースナトリウム、カルメロース及びデンプングリコール酸ナトリウムからなる群から選択される1つ以上の崩壊剤を含む。
【0014】
本発明の一実施形態において、デスロラタジン含有製剤は、デスロラタジンに対して、上述した崩壊剤を300重量%以上含む。即ち、本実施形態に係るデスロラタジン含有製剤は、デスロラタジンの苦味を抑制するため、従来のデスロラタジン普通錠が含む崩壊剤の量よりも多い崩壊剤を含む。従来のデスロラタジン含有製剤においては、苦味抑制の目的はなく、錠剤への崩壊性の付与の観点のみから、デスロラタジンに対して200重量%程度の崩壊剤しか含まれない。
【0015】
本発明の一実施形態において、デスロラタジン含有製剤が、口腔内崩壊錠である場合には、デスロラタジンの苦味抑制効果に加えて、崩壊性の観点から、デスロラタジンに対して、上述した崩壊剤を400重量%以上含むことが好ましい。一実施形態において、デスロラタジン含有製剤は、デスロラタジンに対して、2000重量%以下の崩壊剤を含む。
【0016】
[デスロラタジン]
本発明の一実施形態に係るデスロラタジン含有製剤は、例えば、デスロラタジンを1錠あたり5mg含むことができるが、本実施形態に係るデスロラタジン含有製剤におけるデスロラタジンの含有量は、これに限定されず、治療効果を得られる範囲で任意に設定可能である。
【0017】
本発明の一実施形態に係るデスロラタジン含有製剤は、賦形剤を含む。賦形剤として、結晶セルロースを例示することができるが、これらに限定されるものでない。
【0018】
本発明の一実施形態に係るデスロラタジン含有製剤は、甘味剤を含んでもよい。甘味剤として、アスパルテームを例示することができるが、これらに限定されるものでない。
【0019】
本発明の一実施形態に係るデスロラタジン含有製剤は、流動化剤を含む。流動化剤としては、ステアリン酸マグネシウム、タルク、マクロゴール、ベヘン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム及びステアリン酸を例示することができるが、これらに限定されるものでない。
【0020】
[デスロラタジン含有製剤の製造方法]
本発明の一実施形態において、デスロラタジン含有製剤は乾式法又は湿式法により製造することができる。一実施形態において、口腔内崩壊錠の製造方法として用いられる公知の製造方法により、デスロラタジン含有製剤してもよい。乾式法として、例えば、直接打錠法を好適に用いることができる。具体的には、デスロラタジンとともに、上記の添加剤から選択した添加剤を均質に混合し、得られた混合物を打錠することによりデスロラタジン含有製剤を製造する。このとき、上記の添加剤以外の添加剤をさらに加えてもよい。デスロラタジン含有製剤は、通常用いられる打錠機で圧縮成形することにより製造することができる。成形に関しては、どのような形状をも採用することができ、例えば、タブレット型、楕円形、球形、又は棒状型の形状に成形することができる。
【実施例0021】
[比較例1]
デスロラタジン5g、結晶セルロース(旭化成株式会社、セオラス(登録商標)UF-702) 84g、リン酸水素カルシウム水和物(協和工業株式会社、GSカリカ) 100.6g、アスパルテーム(味の素株式会社) 6g、軽質無水ケイ酸(フロイント産業株式会社、アドソリダー(登録商標)101) 2g及びステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社、植物) 2.4gを均質に混合し、得られた混合物を打錠することにより、1錠あたり200mgの比較例1のデスロラタジン含有製剤を製造した。
【0022】
[比較例2]
リン酸水素カルシウム水和物を80.6gに変更し、カルメロースカルシウム(五徳薬品株式会社、E.C.G(登録商標)-505) 20gを添加したこと以外は、比較例1と同様の方法により、比較例2のデスロラタジン含有製剤を製造した。
【0023】
[比較例3]
カルメロースカルシウムをクロスポビドンクロスポビドン(BASFジャパン、Kollidon(登録商標)CL-F)に変更したこと以外は、比較例2と同様の方法により、比較例3のデスロラタジン含有製剤を製造した。
【0024】
[実施例1]
カルメロースカルシウムをクロスカルメロースナトリウム(FMC International、アクジゾル(登録商標))に変更したこと以外は、比較例2と同様の方法により、実施例1のデスロラタジン含有製剤を製造した。
【0025】
[実施例2]
カルメロースカルシウムをカルメロース(ニチリン化学工業株式会社、NS-300(登録商標))に変更したこと以外は、比較例2と同様の方法により、実施例2のデスロラタジン含有製剤を製造した。
【0026】
[実施例3]
カルメロースカルシウムをデンプングリコール酸ナトリウム(DEF Pharma、Primojel(登録商標))に変更したこと以外は、比較例2と同様の方法により、実施例3のデスロラタジン含有製剤を製造した。
【0027】
[実施例4]
リン酸水素カルシウム水和物を80.6gに変更し、カルメロースカルシウムをデンプングリコール酸ナトリウム(DEF Pharma、Primojel(登録商標))15gに変更したこと以外は、実施例3と同様の方法により、実施例4のデスロラタジン含有製剤を製造した。
【0028】
[実施例5]
リン酸水素カルシウム水和物を0.6gに変更し、カルメロースカルシウムをデンプングリコール酸ナトリウム(DEF Pharma、Primojel(登録商標))100gに変更したこと以外は、実施例3と同様の方法により、実施例5のデスロラタジン含有製剤を製造した。
【0029】
[比較例4]
リン酸水素カルシウム水和物を95.6gに変更し、カルメロースカルシウムをデンプングリコール酸ナトリウム(DEF Pharma、Primojel(登録商標))5gに変更したこと以外は、実施例3と同様の方法により、比較例4のデスロラタジン含有製剤を製造した。
【0030】
[比較例5]
リン酸水素カルシウム水和物を90.6gに変更し、カルメロースカルシウムをデンプングリコール酸ナトリウム(DEF Pharma、Primojel(登録商標))10gに変更したこと以外は、実施例3と同様の方法により、比較例5のデスロラタジン含有製剤を製造した。
【0031】
[口腔内崩壊時間]
比較例1~5及び実施例1~5のデスロラタジン含有製剤について、官能試験による口腔内崩壊時間を測定し、2錠の測定値の平均値を算出した。
【0032】
[硬度]
比較例1~5及び実施例1~5のデスロラタジン含有製剤について、錠剤硬度計(DC-50、岡田精工株式会社)を用いて錠剤の硬度を測定し、3錠の測定値の平均値を算出した。
【0033】
[苦味の評価]
比較例1~5及び実施例1~5のデスロラタジン含有製剤について、官能試験による苦味を3錠に対して評価した。なお、官能試験による苦味の評価には、以下のスコアを用いた。1.原薬と同等の苦味がある2.マスキング効果があるがやや苦い3.ほとんど苦味なし
【0034】
測定した口腔内崩壊時間、硬度及び苦味の評価の評価結果を表1に示す。
【表1】
【0035】
表1において、官能試験のスコアの平均値が2.0以上となったデスロラタジン含有製剤を、デスロラタジンの苦味抑制効果があると評価した。表1の結果より、クロスカルメロースナトリウム、カルメロース及びデンプングリコール酸ナトリウムは、デスロラタジンの苦味抑制効果を示すことが明らかとなった。特に、クロスカルメロースナトリウム及びカルメロースは、苦味抑制効果が大きいことが明らかとなった。一方、カルメロースカルシウム及びクロスポビドンでは、十分な苦味抑制効果が得られないことが明らかとなった。
【0036】
また、デスロラタジンに対して、300重量%以上のデンプングリコール酸ナトリウムを含有することにより、デスロラタジンの苦味抑制効果を示すことが明らかとなった。この結果より、デスロラタジンに対して、300重量%以上のクロスカルメロースナトリウム又はカルメロースを含有する場合にも、デスロラタジンの苦味抑制効果を示すことが明らかである。