(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010904
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】壁構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
E04B1/94 D
E04B1/94 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112486
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂東 薫
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001EA06
2E001FA01
2E001FA02
2E001FA04
2E001FA09
2E001GA06
2E001GA12
2E001GA27
2E001GA28
2E001GA29
2E001HA03
2E001HA21
2E001HA32
2E001HF12
2E001KA01
(57)【要約】
【課題】高い耐火性を有し、かつ施工が容易な壁構造を提供する。
【解決手段】壁構造Sは、建物を構成する構造部材1と、構造部材1よりも屋外側に設けられた支持材2と、支持材2よりも屋外側に設けられた外装材4と、構造部材1よりも屋外側に設けられた耐火部材3と、を備える。耐火部材3は、支持材2における屋内側の面の少なくとも一部に固定されており、支持材2に固定された部分は、屋内外方向において構造部材1とは重ならない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物を構成する構造部材と、
前記構造部材よりも屋外側に設けられた支持材と、
前記支持材よりも屋外側に設けられた外装材と、
前記構造部材よりも屋外側に設けられた耐火部材と、を備え、
前記耐火部材は、前記支持材における屋内側の面の少なくとも一部に固定されており、屋内外方向において前記支持材に固定された部分は、前記構造部材とは重ならない、
壁構造。
【請求項2】
前記構造部材は、梁であり、
前記耐火部材は、前記支持材における屋内外方向に見て前記梁よりも下側の位置で固定されている、
請求項1に記載の壁構造。
【請求項3】
前記構造部材は、柱であり、
前記耐火部材は、前記支持材における屋内外方向に見て前記柱の外側の位置で固定されている、
請求項1に記載の壁構造。
【請求項4】
前記耐火部材とは異なる外側耐火部材を更に備え、
前記外側耐火部材は、前記支持材における屋外側の面の少なくとも一部に固定されている、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の壁構造。
【請求項5】
前記支持材の屋外側に前記耐火部材とは別の耐火部材が設けられていない、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の壁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁構造に関し、より詳細には、梁、柱などの構造要素に対する耐火性能に寄与し得る壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物における壁、柱、梁、床等といった構造には、耐火性能を有することが要求されている。耐火性能を実現するため、建築物内には種々の構造が取り入れられている。
【0003】
例えば、特許文献1では、梁の構造に関し、梁挿入部とそれと一体的に形成される被覆部とを備える特定の耐火部材を、梁挿入部を梁の両フランジ部とウエブ部とで形成される梁空間に嵌合することが開示されている。これにより、梁近傍の耐火性能を向上させることが提案されている(特許文献1の段落0013等)。
【0004】
また、特許文献2では、金属部材と、支持部材と、面材と、外装材とを備える壁構造において、金属部材と下地材及び面材によって形成された空間の外側に位置する金属部材と下地材の外面を被覆する第1被覆材と、前記空間に臨む面における金属部材の外面を覆うように配置された第2被覆材とを備えることが開示されている。第1被覆材は、吹付け又は塗布により形成され、第2被覆材は、予め特定の形状に形成されており、これらで、被覆することにより、耐火性能の向上が図られている(特許文献2の段落0008等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-66679号公報
【特許文献2】特開2021-55328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の梁の構造では、梁の形状に合わせた特定の形状を有する部材を必要とし、また梁と被覆材が同程度の高さに存在しており、直接金属材等に取り付ける必要がある。また、特許文献2の壁構造においては、耐火面材となる被覆材を吹き付けや塗布等が必要であること、更に予め特定の形状を有するように形成することなどしておくことが必要となる。
【0007】
つまり、特許文献1及び特許文献2のいずれの構造においても、耐火性を確保しうるものの、金属材等の構造体に、特定の形状となるように加工を施した部材を、金属材と同程度の位置に取り付けておく必要があるため、施工に手間が掛かるといった問題があった。
【0008】
本発明の目的は、耐火性を確保しやすく、かつ施工を容易に行える壁構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る壁構造は、建物を構成する構造部材と、前記構造部材よりも屋外側に設けられた支持材と、前記支持材よりも屋外側に設けられた外装材と、前記構造部材よりも屋外側に設けられた耐火部材と、を備える。前記耐火部材は、前記支持材における屋内側の面の少なくとも一部に固定されており、屋内外方向において、前記支持材に固定された部分は、前記構造部材とは重なっていない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高い耐火性を有し、かつ施工が容易な壁構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明に係る第1の実施形態の壁構造の一例を示す横断面図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る第1の実施形態の壁構造の他例を示す横断面図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る第2の実施形態の壁構造の一例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[概要]
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下で説明する実施形態は、いずれも包括的、又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。
【0013】
本実施形態に係る壁構造Sは、構造部材1と、支持材2と、耐火部材3と、外装材4と、を備える。本実施形態では、
図1、
図2及び
図3に示すように、建物において外装材4が配置される側を「屋外側」、外装材4から内側に離れる方向に向いた側を「屋内側」と規定する。また、屋内側と屋外側とを結ぶ方向を「屋内外方向」といい、
図1及び
図2では、左右を示す方向(左右方向)のうち左方向が「屋外側方向」、右方向が「屋内側方向」ともいう。ただし、上下、及び左右の方向は、相対的に決定されるものであり、
図1及び
図2に規定した方向に限定されるものではない。
【0014】
構造部材1は、建物を構成する部材である。構造部材1は、例えば建物の骨格を形成する部材である。構造部材1としては、金属製の梁、柱等が挙げられる。
【0015】
支持材2は、構造部材1よりも屋外側に設けられている。支持材2は、外装材4を直接又は間接的に固定するために用いられる。支持材2は、例えば適宜の材料を採用しうるが、例えば縦材(胴縁)、横材(横胴縁)等であってよく、支持材2の材質は、例えば鉄骨胴縁等の金属製、木造胴縁等の木製である。なお、支持材2が金属製である場合、上記の構造部材1とは区別される。
【0016】
耐火部材3は、構造部材1よりも屋外側に設けられている。そして、本実施形態の壁構造Sでは、耐火部材3は、支持材2における屋内側の面の少なくとも一部に固定されており、屋内外方向において、支持材2に固定された部分(以下、「耐火部材固定部」ともいう。)が構造部材1とは重なっていない。より具体的には、本実施形態において、構造部材1と支持材2との間には、十分な空間が空いており、この空間に耐火部材3を差し込んで施工することが可能である。さらに、本実施形態では、構造部材1と支持材2との間の空間に差し込まれた耐火部材3は、上下方向において、梁などの構造部材1の下端の位置よりも低い位置で固定することが可能である。このため、本実施形態の壁構造Sにおける耐火部材3は、支持材2における屋内側の面の少なくとも一部に固定されるにあたって、耐火部材固定部31が屋内外方向に見て金属材1とは重ならないようにされている。なお、耐火部材3の、支持材2への固定は、少なくとも耐火部材3の一部(すなわち、耐火部材固定部31)が支持材2の少なくとも一部に固定されており、かつその部分が屋内外方向において構造部材1とは重ならない位置にあればよく、例えば耐火部材3の耐火部材固定部31とは異なる部分が支持材2に更に固定され、かつその部分が屋内外方向において構造部材1と重なっていることを妨げるものではない。
【0017】
このように、本実施形態の壁構造Sは、構造部材1に対して、壁材(外装材4及び内装材6を含む)等の各部材を構造部材1へ施工するにあたって、各部材の施工をしやすく、かつ壁構造としての耐火性を確保することができる。
【0018】
[詳細]
次に、具体的な態様について図面を参照して、説明する。なお、以下で説明する態様において、上記[概要]で説明した構成と同じ構成には同じ符号を付して、重複する説明は、適宜省略する。
【0019】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る壁構造Sは、構造部材1が梁11である。すなわち、第1の実施形態に係る壁構造Sは、梁11と、支持材2と、耐火部材3と、外装材4と、を備える(
図1及び
図2参照)。
【0020】
梁11は、例えば屋内外方向と直交する面に平行な方向に延びて配置されている。梁11は、適宜の形状を採用しうるが、例えばH形鋼等である。梁11には、その形状に沿って梁11を覆う耐火被覆が施されていてもよい。すなわち、梁11は、耐火被覆材100を備えることが好ましい。この場合、壁構造Sの耐火性を更に向上させうる。耐火被覆材100は、例えば耐火性の材料を塗布、又は吹き付け等をすることにより形成することができる。耐火性の材料は、例えばロックウール等を挙げることができる。
【0021】
本実施形態では、梁11と、耐火部材3との間にはラス下地7が設けられている。このため、壁構造Sの強度の向上に寄与しうる。
【0022】
支持材2は、梁11よりも屋外側に設けられている。また、支持材2は、耐火部材3よりも屋外側に、かつ外装材4よりも屋内側に、設けられている。支持材2は、屋内外方向において梁11とは離間して設けられている。このため、支持材2と構造部材1である梁11との間には空間が確保される。これにより、壁構造Sを施工するにあたり、耐火部材3を支持材2と梁11との間に差し込んで、固定することができるため、高い施工性を実現できる。
【0023】
また、支持材2は、外装材4を直接又は間接的に支持している。支持材2が外装材4を直接的に支持する場合には、外装材4の適宜の位置で固定部材(不図示)により支持材2に固定することができる。支持材2が外装材4を間接的に支持する場合には、壁構造Sは、支持材2と外装材4との間に外装材4を固定させる留め具41等を備えていてもよい(
図1及び
図2参照)。この場合、複数の留め具41が支持材2の適宜の箇所に配置され、複数の留め具41に外装材4が固定される。
【0024】
支持材2の形状、材質等は特に制限されず、適宜の支持材であってよい。支持材2は、例えば断面視C字状の形状を有していてもよい。
【0025】
梁11と支持材2との屋内外方向の間隔は、例えば100mm以上である。この場合、耐火部材3の支持材2への固定を更に容易にでき、かつ壁構造Sの耐火性能も高く維持できる。
【0026】
耐火部材3は、梁11の屋外側に設けられている。耐火部材3は、支持材2における屋内側の面の少なくとも一部に固定されており、屋内外方向において、支持材2に固定された部分(耐火部材固定部31)が構造部材1とは重なっていない(
図1及び
図2参照)。そして、本実施形態では、耐火部材3は、屋内外方向に見て、支持材2における梁11の下側の位置で固定されている。このため、本実施形態によれば、壁材の施工時の施工を容易にでき、かつ耐火性を確保することができる。特に、本実施形態では、構造部材1が梁11であるため、梁11を施工する際における施工性を向上させることができる。
【0027】
耐火部材3は、上述のとおり、梁11の屋外側に設けられているが、具体的には、耐火部材3は、梁11よりも屋外側に設けられ、かつ支持材2よりも屋内側に設けられている。
【0028】
本実施形態において、耐火部材3は、その鉛直方向において、梁11の下端よりも低い位置で固定されている。このため、壁構造Sにおいて、耐火部材3を設置するにあたり、耐火部材3を支持材2と梁11との間に差し込んでから、釘、ビス、及びねじ等の固定具30等により支持材2に容易に固定しやすい。なお、
図1では、耐火部材3は、耐火部材固定部31において固定具30により固定されているが、これに限定されない。例えば、耐火部材3は、接着剤等により固定されていてもよい。ここで、「鉛直方向」とは、屋内外方向と直交し、かつ水平面を示す方向と直交する方向をいう。
図1及び
図2においては、上下方向が鉛直方向である。また、「水平方向」とは、屋内外方向と直交し、かつ鉛直方向に直交する方向をいう。
【0029】
耐火部材3は、差し込まれた場合の上端側、すなわち鉛直方向(上下方向)における耐火部材固定部31とは反対側の位置で支持材2に固定するにあたっては、例えばビス等の固定具を鉛直方向の下方で斜め方向(例えば上下方向から屋外側に傾いた方向)に向けて打ち込むことで固定されてもよい。なお、耐火部材3の、差し込まれた場合の上端側を固定しなくても、例えば耐火面材3を複数枚重ねて施工することにより、耐火面材3を不安定にならないようにしうる。
【0030】
本実施形態では、耐火部材3の鉛直方向長さは、梁11の鉛直方向長さよりも長く形成されている。これにより、耐火部材3を支持材2に固定するにあたり、作業性を向上させやすい。ただし、耐火部材3の鉛直方向長さは、梁11の鉛直方向長さと同程度か、又は短くてもよい。本実施形態では、梁1と支持材2との間が離間して配置されているため、耐火部材3の鉛直方向長さは、構造部材1の鉛直方向長さと同程度か、又は短くても、耐火部材3を梁11と支持材2との間に差し込んで固定することが可能である。
【0031】
壁構造Sにおいて壁材を施工するにあたって、耐火部材3を支持材2に固定するタイミングは適宜のタイミングであってよい。例えば、構造部材1(梁11)と支持材2とが配設された状態において、外装材4を施工する前に、耐火部材3を支持材2に差し込んで固定してもよいし、外装材4を施工した後で、耐火部材3を支持材2に差し込んで固定してもよい。また、例えば、構造部材1(梁11)と支持材2とが配設された状態において、後述する内装材6を施工する前に、耐火部材3を支持材2に差し込んで固定してもよい。
【0032】
耐火部材3は、適宜の耐火性を有する材料を採用することができる。例えば、耐火部材3は、保形性を有し、耐火性を有する部材であればよい。本発明において、保形性とは、適宜の形状に成形されたものであり、一定の形状を有している状態をいう。このため、耐火部材3は、板状(ボード状)の面材であってもよいし、柔軟性を有する部材等であってもよい。柔軟性を有する部材は、例えば構造部材1の表面に巻き付けて被覆可能な材料を含む。より具体的には、柔軟性を有する部材としては、例えばニチアス株式会社製の製品名マキベエ(登録商標)等を採用することができる。また、耐火部材3は、例えば石膏ボード、ケイ酸カルシウム板等であってよい。なお、
図1及び
図2では、耐火部材3は、1枚設けられているが、これに限られず、壁構造Sにおいて、複数の耐火部材3を、例えば重ねて設けられていてもよい。耐火部材3は、例えば複数枚の耐火性の板材を用いて施工してもよい。
【0033】
外装材4は、支持材2よりも屋外側に設けられている。このため、構造部材1、耐火部材3、支持材2、及び外装材4は、屋内側から屋外側に見てこの順に並んでいる、といえる。
【0034】
外装材4は、適宜の壁材を採用しうるが、例えば窯業系サイディングである。外装材4は、例えば長尺の矩形状を有しうる。外装材4の寸法は、特に制限されないが、例えば厚さ12mm以上40mm以下、短辺300mm以上1000mm以下、長辺1000mm以上3500mm以下である。なお、本実施形態における「厚さ」は屋内外方向長さ、「短辺」は鉛直方向長さ、「長辺」は水平方向長さ、をいう。
【0035】
壁構造Sにおいて耐火部材3とは異なる耐火性の部材(以下、「外側耐火部材」ともいう。)が設けられていてもよいが、構造部材1が梁11である場合には、外側耐火部材は設けられていなくてもよい。本実施形態では、支持材2の屋外側に、耐火部材3とは異なる外側耐火部材が設けられていないことが好ましい。本実施形態では、外側耐火部材5を設けないとしても、耐火部材3が備えられていることで、壁構造Sの耐火性が確保できる。このため、外側耐火部材を設けなくても、耐火構造を実現できるため、外側耐火部材等の施工が不要となり、部材の削減や、工数の削減に寄与しうる。
【0036】
なお、本実施形態において、外側耐火部材を設ける場合には、外装材4よりも屋内側で、かつ支持材2よりも屋外側に設けられる。
【0037】
支持材2の屋外側に、例えば透湿性を有する防水シート等を設けてもよい。透湿性を有する防水シートとしては、適宜の市販のものを採用することができる。防水シートは、屋外側面に外装材4を固定するための留め具41が設けられる場合には、ビス等の固定具で支持材2に固定される前に配置され、固定される。
【0038】
壁構造Sには、
図1及び
図2に示すように、耐火部材3よりも屋内側に内装材6が設けることができる。内装材6は、建物の内装を構成する適宜の材料を用いることができる。
【0039】
本実施形態の壁構造Sは、上記で説明した以外の部材等を備えていてもよい。なお、以下に説明する構成は、必須の構成ではなく、適宜変更可能なものである。
【0040】
例えば、
図1及び
図2に示すように梁11と支持材2との間に、ラス下地7等が設けられている場合、ラス下地7の外面は、梁11の外面と同様に耐火被覆されていてもよい。この場合、壁構造Sの耐火性を更に向上させることができる。
【0041】
図2は、耐火部材固定部31が
図1よりもやや上方に設けられた場合の例を示す概略図である。具体的には、
図2に示されるように、ラス下地7等が設けられている場合において、耐火部材固定部31は、鉛直方向(上下方向)においてラス下地7と同程度の高さで設けられていてもよい。この場合であっても、耐火部材3が、支持材2における屋内側の面の少なくとも一部に固定されており、屋内外方向において、耐火部材固定部31が構造部材1である梁11とは重ならず、かつ耐火部材3が、屋内外方向に見て、支持材2における梁11の下側の位置で固定されている。そのため、この場合にも各部材の施工をしやすく、かつ壁構造としての耐火性を確保することができる。
【0042】
壁構造Sにおいて、梁11と支持材2との間には、受金物8が備えられていてもよい。この場合、受金物8は梁11及び支持材2の両方に固定される。
【0043】
壁構造Sにおいて、梁11上に、床板材9が設けられていてもよい。
【0044】
壁構造Sは、ランナー下地材61、ランナー62、及びスタッド63を備えていてもよい。ランナー下地材61、ランナー62、及びスタッド63は、内装材6を施工するために用いられるものである。ランナー62とスタッド63とを合わせてLGS(ライトゲージスタッド:Light Gauge Stud)とも称される。LGSは、軽量鉄骨を構成しうる。
【0045】
ランナー下地材61は、梁11の鉛直方向下方と接触するように配置される。ランナー下地材61は、ランナー62を取り付けるための部材である。
【0046】
ランナー62は、例えば金属製の横材である。ランナー62は、スタッド63を支持するためのレール状の溝を有する。
【0047】
スタッド63は、例えば金属製の縦材である。なお、ランナー62及びスタッド63は、上記で説明した構造部材1とは異なる。スタッド63は、
図1及び
図2に示すように、複数設けることができる。各スタッド63は、その上下端がそれぞれ上下に配置されたランナー62に固定されている。スタッド63の形状は、例えば断面形状が左右方向のいずれか一方の側に開口したC字状をなしている。スタッド63には、屋内側面に、ビス等の固定具(不図示)によって内装材6が固定されている。スタッド63は、断面C字状を有する部材(「Cスタッド」と称される)のほか、断面矩形枠状を有する部材(「角スタッド」と称される)であってもよい。
【0048】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る壁構造Sは、構造部材1が柱12である。すなわち、第2の実施形態に係る壁構造Sは、柱12と、支持材2と、耐火部材3と、外装材4と、を備える(
図3参照)。なお、第2の実施形態において、上記[概要]で説明した構成、及び第1の実施形態の構成と重複する構成には同じ符号を付して、重複する説明は、適宜省略する。
【0049】
柱12は、例えば壁構造Sにおいて、所定の間隔を空けて左右方向に並んでいる。
【0050】
柱12は、適宜の構成を採用しうるが、例えば角形鋼管である。柱12の外面は、耐火性の材料で被覆されていることが好ましい。すなわち、壁構造Sにおいて、柱12は、耐火被覆材100を有することが好ましい。この場合、壁構造Sの耐火性を更に向上させうる。耐火被覆材100は、上記第1の実施形態で説明したものと同様の方法、材料とすることができる。この場合、壁構造Sの耐火性を更に向上させうる。耐火性の材料は、例えばロックウール等を挙げることができる。
【0051】
支持材2は、第1の実施形態で説明したものと同じであってよい。このため、支持材2と構造部材1である柱12との間には空間が形成されうる。これにより、壁構造Sを施工するにあたり、耐火部材3を支持材2と柱12との間に差し込んで、固定することができ、柱12においても、容易に施工することができる。
【0052】
耐火部材3は、柱12よりも屋外側に設けられている。耐火部材3は、支持材2における屋内側の面の少なくとも一部に固定されており、屋内外方向において、支持材2に固定された部分(耐火部材固定部31)が柱12とは重なっていない。
【0053】
耐火部材3は、適宜の耐火性を有する材料を採用することができる。すなわち、耐火部材3は、第1の実施形態で説明したものと同じであってよい。
【0054】
本実施形態では、耐火部材3は、屋内外方向において、支持材2における柱12の外側の位置で固定されている。このため、本実施形態によれば、壁材の施工時の施工を容易にでき、かつ耐火性を確保することができる。特に、本実施形態では、構造部材1が柱12であるため、柱12を施工する際における施工性を向上させることができる。
【0055】
耐火部材3は、上述のとおり、支持材2の少なくとも一部に固定されている。本実施形態では、耐火部材3は、柱12の水平方向長さよりも水平方向に延びて形成されている。すなわち、耐火部材3の水平方向長さは、柱12の水平方向長さよりも長い。また、耐火部材3は、柱12の水平方向長さよりも伸びた部分において支持材2に固定されている。これにより、耐火部材3を支持材2に固定するにあたり、作業性を向上させやすい。
【0056】
耐火部材3は、柱12と接触していない。耐火部材3と柱12との間には、ラス下地7が介在させることができる。ラス下地7は、ラスと力骨とを含む。この場合、壁構造Sの強度の向上に寄与しうる。なお、耐火部材3は、柱12と接触してもよい。この場合、ラス下地7が不要となり、安価且つ省施工となる。
【0057】
外装材4は、上記第1の実施形態と同様であってよい。壁構造Sが内装材6を更に含む場合、内装材6も上記第1の実施形態と同様であってよい。
【0058】
本実施形態では、壁構造Sは、外装材4よりも屋内側で、かつ支持材2よりも屋外側に耐火部材3とは異なる耐火性の面材(外側耐火部材5)を備えていてもよい。すなわち、壁構造Sは、外装材4と支持材2との間に、外側耐火部材5を備えることが好ましい。具体的には、外側耐火部材5を備える場合には、外側耐火部材5は、支持材2における屋外側の面の少なくとも一部に固定されていることが好ましい。この場合、壁構造Sにおける耐火性能を更に向上させることができる。なお、本実施形態の壁構造Sにおいて、支持材2の屋外側に、耐火部材3とは別の耐火部材が設けられていなくてもよい。
【0059】
外側耐火部材5は、適宜の耐火性を有する材料を採用することができるが、外側耐火部材5は、例えば石膏ボード、ケイ酸カルシウム板等であってよい。また、外側耐火部材5または支持材2の屋外側には、例えば透湿性を有する防水シート等を設けてもよい。透湿性を有する防水シートとしては、適宜の市販のものを採用することができる。防水シートは、屋外側面に外装材4を固定するための留め具41が設けられる場合には、ビス等の固定具で支持材2に固定される前に配置され、固定される。
【0060】
壁構造Sには、
図3に示すように、耐火部材3よりも屋内側に内装材6が設けられてもよい。内装材6は、内装を構成する適宜の材料を用いることができる。
【0061】
本実施形態の壁構造Sは、上記で説明した以外の部材等を備えていてもよい。なお、以下に説明する構成は、必須の構成ではなく、適宜変更可能なものである。
【0062】
ラス下地7が柱12と耐火部材3との間に設けられている場合、ラス下地7の外面は、柱12の外面と同様に耐火被覆されていてもよい。この場合、壁構造Sの耐火性を更に向上させることができる。
【0063】
壁構造Sは、例えばランナー下地材61、ランナー62、及びスタッド63を備えていてもよい。ランナー下地材61、ランナー62、及びスタッド63の具体的な構成については、上記で説明した第1の実施形態と同様である。
【0064】
(変形例)
壁構造Sは、上記の第1の実施形態に係る構成と第2の実施形態に係る構成とを組み合わせて形成されていてもよい。例えば、構造部材1が梁11であるものと、構造部材1が柱12であるものとの両方を備えてもよい。具体的には、複数の構造部材1を備え、一部の構造部材1が梁11であり、他部の構造部材1が柱12であってもよい。
【0065】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係る壁構造Sは、建物を構成する構造部材1と、構造部材1よりも屋外側に設けられた支持材2と、支持材2よりも屋外側に設けられた外装材4と、構造部材1の屋外側に設けられた耐火部材3と、を備える。耐火部材3は、支持材2における屋内側の面の少なくとも一部に固定されており、屋内外方向において、支持材2に固定された部分は、構造部材1とは重ならない。
【0066】
第1の態様によれば、壁構造Sの施工を容易にでき、かつ壁構造Sの耐火性を確保することができる。
【0067】
第2の態様に係る壁構造Sは、第1の態様において、構造部材1は、梁11である。耐火部材3は、支持材2における屋内外方向に見て梁11よりも下側の位置で固定されている。
【0068】
第2の態様によれば、壁構造Sにおける耐火性を更に高めることができ、かつ特に梁11を施工する際の施工性に優れる。
【0069】
第3の態様に係る壁構造Sは、第1の態様において、構造部材1は、柱12である。耐火部材3は、支持材2における屋内外方向に見て柱12の外側の位置で固定されている。
【0070】
第3の態様によれば、壁構造Sにおける耐火性をより高めることができ、かつ特に柱12を施工する際の施工性に優れる。
【0071】
第4の態様に係る壁構造Sは、第1から第3のいずれか1つの態様において、耐火部材3とは異なる外側耐火部材5を更に備える。外側耐火部材5は、支持材2におけるにおける屋外側の面の少なくとも一部に固定されている。
【0072】
第4の態様によれば、壁構造Sにおける耐火性を更に高めることができ、かつ特に柱12を施工する際の施工性に優れる。
【0073】
第5の態様に係る壁構造Sは、第1から第3のいずれか1つの態様において、支持材2の屋外側に耐火部材3とは別の耐火部材が設けられていない。
【0074】
第5の態様によれば、壁構造Sの耐火性の実現、及び施工性の向上ができ、かつ工数の削減、部材の削減等のコストを削減することに寄与できる。
【符号の説明】
【0075】
S 壁構造
1 構造部材
2 支持材
3 耐火部材
31 耐火部材固定部
4 外装材
5 外側耐火部材