(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109062
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】テトラカルボン酸ジイミド化合物からなる室温液状発光材料、およびその用途
(51)【国際特許分類】
C09K 11/06 20060101AFI20240805BHJP
C07D 487/04 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
C09K11/06
C07D487/04 137
C07D487/04 CSP
C09K11/06 650
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024006577
(22)【出願日】2024-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2023012823
(32)【優先日】2023-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】磯田 恭佑
(72)【発明者】
【氏名】相原 秀典
【テーマコード(参考)】
4C050
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050AA08
4C050BB04
4C050CC04
4C050EE02
4C050FF01
4C050GG03
4C050HH01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明の目的は、π共役化合物を溶解することで様々な発光色を発現する室温液状発光材料、およびそれらを用いた発光インクを提供すること。
【解決手段】式(1)で表されるテトラカルボン酸ジイミド化合物とπ共役化合物とを含有する室温液状発光材料。
[式(1)中、X
1およびX
2は、窒素原子、またはC-R
3(R
3は水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、または炭素数3~6の複素芳香族基を表す。)を表し;mは、1、2、または3を表し;R
1は、特定の置換基で置換されていてもよい炭素数1~6のアルキレン基を表し;R
2は、、炭素数8~24のアルキル基、または炭素数8~16のフルオロアルキル基を表し、該アルキル基において、1つ以上の-CH
2-は、-O-、-S-、または-(OSiMe
2)-で置き換えられてもよいが、-O-が2つ以上または-S-が3つ以上連続することはなく;を表す。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるテトラカルボン酸ジイミド化合物とπ共役化合物とを含有する室温液状発光材料。
【化1】
[式(1)中、
X
1およびX
2は、各々独立に、窒素原子、またはC-R
3(R
3は水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、または炭素数3~6の複素芳香族基を表す。)を表し;
mは、1、2、または3を表し;
R
1は、各々独立に、スルファニル基、スルフィド基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、グアニジノ基、イミダゾール基、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、インドール基で置換されていてもよい炭素数1~6のアルキレン基を表し;
R
2は、各々独立に、炭素数8~24のアルキル基、または炭素数8~16のフルオロアルキル基を表し、該アルキル基において、1つ以上の-CH
2-は、-O-、-S-、または-(OSiMe
2)-で置き換えられてもよいが、-O-が2つ以上または-S-が3つ以上連続することはなく;
を表す。]
【請求項2】
式(1)において、X1およびX2が、窒素原子である、請求項1に記載の室温液状発光材料。
【請求項3】
式(1)において、X1およびX2が、C-R3である、請求項1に記載の室温液状発光材料。
【請求項4】
式(1)において、R3が、水素原子である、請求項1に記載の室温液状発光材料。
【請求項5】
式(1)において、R
1が、下記式(a-1)~(a-18)で示される同一の基である、請求項1に記載の室温液状発光材料。
【化2】
【請求項6】
式(1)において、R2が、炭素数8~24のアルキル基である請求項1に記載の室温液状発光材料。
【請求項7】
少なくとも1つの前記R2が、炭素数10~20の分岐状アルキル基である請求項1に記載の室温液状発光材料。
【請求項8】
少なくとも1つの前記R
2が、下記式(b-1)~(b-8)で示される基である、請求項1に記載の室温液状発光材料。
【化3】
【請求項9】
式(1)において、R2が、式(b-1)~(b-8)で示される同一の基である、請求項1に記載の室温液状発光材料。
【請求項10】
式(1)で示されるテトラカルボン酸ジイミド化合物が、(A-1)~(A-10)で表される化合物である、請求項1に記載の室温液状発光材料。
【化4】
【請求項11】
π共役化合物が、炭素数6~20の芳香族化合物または炭素数3~10の複素芳香族化合物である、請求項1に記載の室温液状発光材料。
【請求項12】
π共役化合物が、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、ピレン、ペリレン、コロネン、チオフェン、ピロール、フラン、チアゾール、およびテトラフェニルエテンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、請求項11に記載の室温液状発光材料。
【請求項13】
テトラカルボン酸ジイミド化合物の含有量が50~99.9重量%の範囲にある、請求項12に記載の室温液状発光材料。
【請求項14】
請求項11に記載の室温液状発光材料と溶媒からなる発光インク。
【請求項15】
溶媒が、炭素数2~6のアルコール、炭素数6~10のイソパラフィン系炭化水素,および炭素数6~14の脂環式炭化水素からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機溶媒であり、式(1)で示される室温液状発光材料の含有量が30~70%の範囲にある、請求項14に記載の発光インク。
【請求項16】
式(1)で表されるテトラカルボン酸ジイミド化合物。
【化5】
[式(1)中、
X
1およびX
2は、各々独立に、窒素原子、またはC-R
3(R
3は水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、または炭素数3~6の複素芳香族基を表す。)を表し;
mは、1、2、または3を表し;
R
1は、各々独立に、下記式(a-1)~(a-18)で示されるスルファニル基、スルフィド基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、グアニジノ基、イミダゾール基、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、インドール基で置換されていてもよい炭素数1~6のアルキレン基を表し;
R
2は、各々独立に、炭素数8~24のアルキル基、または、炭素数8~16のフルオロアルキル基を表し、該アルキル基において、1つ以上の-CH
2-は、-O-、-S-、または-(OSiMe
2)-で置き換えられてもよいが、-O-が2つ以上または-S-が3つ以上連続することはなく;
を表す。]
【請求項17】
式(1)において、X1およびX2が、C-R3である、請求項16に記載のテトラカルボン酸ジイミド化合物。
【請求項18】
式(1)において、R3が、水素原子である、請求項16に記載のテトラカルボン酸ジイミド化合物。
【請求項19】
式(1)において、R
1が、下記式(a-1)~(a-18)で示される同一の基である、請求項16に記載のテトラカルボン酸ジイミド化合物。
【化6】
【請求項20】
前記R2が、炭素数8~24のアルキル基である請求項16に記載のテトラカルボン酸ジイミド化合物。
【請求項21】
少なくとも1つの前記R2が、炭素数10~20の分岐状アルキル基である請求項16に記載のテトラカルボン酸ジイミド化合物。
【請求項22】
少なくとも1つの前記R
2が、下記式(b-1)~(b-8)で示される基である、請求項16に記載のテトラカルボン酸ジイミド化合物。
【化7】
【請求項23】
式(1)において、R2が、式(b-1)~(b-8)で示される同一の基である、請求項16に記載のテトラカルボン酸ジイミド化合物。
【請求項24】
式(1)で示されるテトラカルボン酸ジイミド化合物が、(A-1)~(A-10)で表される化合物である、請求項16に記載のテトラカルボン酸ジイミド化合物。
【化8】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温で液状であるテトラカルボン酸ジイミド化合物と、π共役化合物を含有する室温液状発光材料、およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、室温で液状である液状発光材料が開示されている。例えば、ポルフィリン、アントラセン、オリゴ(p-)フェニレンビニレン、フルオレン、およびスチルベン骨格からなる室温液状発光材料(特許文献1および非特許文献2)や、キノキサリン骨格からなる室温液状発光材料(非特許文献3および4)などが開示されている。
【0003】
特許文献1および非特許文献2では、オリゴ(p-)フェニレンビニレン骨格を有する青色発光液状化合物が、トリス(8-キノリノラト)アルミニウムとルブレンを混合することで白色発光インクとして用いた例が開示されている。
【0004】
非特許文献3では、ベンゼン環またはピリジン環が置換したキノキサリン骨格からなる青色発光液状化合物が、濃塩酸より揮発した塩化水素に接触することで、発光色が緑色に変化するインクとして用いた例が開示されている。非特許文献4では、チオフェン環が置換したキノキサリン骨格からなる青色発光液状化合物が、様々な有機酸と混和することで、発光色が緑色や橙色に変化するインクとして用いた例が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1および非特許文献2で開示さているオリゴ(p-)フェニレンビニレン骨格を有する青色発光液状化合物は、トリス(8-キノリノラト)アルミニウムとルブレンを混合することで白色発光を発現するのみである。同一の原料から多色の発光体作製している例である、非特許文献3および4で報告されている発光液状化合物は、発光色を変化させるために塩化水素などの酸を用いることから、安全性の観点から使用時に問題がある。
他方で、液状発光材料の分野においては、他の材料との複合化により様々な発光色を発現することが求められており、そのためには発光色の制御性や材料の安全性の向上といったさらなる改良を必要としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2012/046849号
【非特許文献2】Nakanishiら、Angew.Chem.Int.Ed.51,3391(2012)
【非特許文献3】Isodaら、J.Mater.Chem.C.7,14075(2019)
【非特許文献4】Isodaら、Chem.Asian.J.13,2619(2018)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上より、本発明の目的は、π共役化合物を溶解することで様々な発光色を発現する室温液状発光材料、およびそれらを用いた発光インクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、テトラカルボン酸ジイミド化合物が、様々なπ共役化合物を高濃度で溶解するための、室温液状発光材料として有用であり、当該テトラカルボン酸ジイミド化合物の使用によって、様々な発光特性および発光色を示す室温液状発光材料、および発光インクの提供を実現し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明の第1の態様は、式(1)で表される室温で液状のテトラカルボン酸ジイミド化合物とπ共役化合物とを含有する、室温液状発光材料である。
【化1】
[式(1)中、
X
1およびX
2は、各々独立に、窒素原子、またはC-R
3(R
3は水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、または炭素数3~6の複素芳香族基を表す。)を表し;
mは、1、2、または3を表し;
R
1は、各々独立に、スルファニル基、スルフィド基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、グアニジノ基、イミダゾール基、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、インドール基で置換されていてもよい炭素数1~6のアルキレン基を表し;
R
2は、各々独立に、炭素数8~24のアルキル基、または炭素数8~16のフルオロアルキル基を表し、該アルキル基において、1つ以上の-CH
2-は、-O-、-S-、または-(OSiMe
2)-で置き換えられてもよいが、-O-が2つ以上または-S-が3つ以上連続することはなく;
を表す。]
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様に係る室温液状発光材料を含む、発光インクである。
【0011】
本発明の第3の態様は、式(1)で表されるテトラカルボン酸ジイミド化合物である。
【0012】
【化2】
[式(1)中、
X
1およびX
2は、各々独立に、窒素原子、またはC-R
3(R
3は水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、または炭素数3~6の複素芳香族基を表す。)を表し;
mは、1、2、または3を表し;
R
1は、各々独立に、下記式(a-1)~(a-18)で示される2価の連結基を表し;
R
2は、各々独立に、炭素数8~24のアルキル基、または炭素数8~16のフルオロアルキル基を表し、該アルキル基において、1つ以上の-CH
2-は、-O-、-S-、または-(OSiMe
2)-で置き換えられてもよいが、-O-が2つ以上または-S-が3つ以上連続することはなく;表す。]
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、様々な発光特性および発光色を示す室温液状発光材料、および発光インクが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(A-3)および(A-3-a)~(A-3-e)の自然光下およびブラックライト(365nm)下でのデジタルカメラによる室温での外観の観察結果を示す図である。
【
図2】(A-3)および(A-3-c)の室温でのX線回折測定の結果を示す図である。
【
図3】(A-3)および(A-3-c)の室温での偏光顕微鏡観察結果を示す図である。
【
図4】(A-3)の熱重量測定および示差熱量測定の結果を示す図である。
【
図5】(A-3)および(A-3-a)~(A-3-e)の室温での紫外可視吸光度測定の結果を示す図である。
【
図6】(A-3)および(A-3-a)~(A-3-e)の室温での蛍光光度測定を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
<テトラカルボン酸ジイミド化合物>
本実施形態のテトラカルボン酸ジイミド化合物(以下、テトラカルボン酸ジイミド化合物(1)がともいう。)は、下記式(1)で表される化合物である。
【化3】
式(1)中、X
1およびX
2は、各々独立に、窒素原子、またはC-R
3(R
3は水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、または炭素数3~6の複素芳香族基を表す。)を表し、mは、1、2、または3を表し、R
1は、各々独立に、スルファニル基、スルフィド基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、グアニジノ基、イミダゾール基、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、インドール基で置換されていてもよい炭素数1~6のアルキレン基を表し、R
2は、各々独立に、炭素数8~24のアルキル基、または炭素数8~16のフルオロアルキル基を表し、該アルキル基において、1つ以上の-CH
2-は、-O-、-S-、または-(OSiMe
2)-で置き換えられてもよいが、-O-が2つ以上または-S-が3つ以上連続することはなく、を表す。
【0017】
X1およびX2は、各々独立に、窒素原子、またはC-R3を表す。
【0018】
R3で表される炭素数1~6のアルキル基は、直鎖状、分岐状または環状であってもよく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、2-メチルプロピル基、2-メチルシクロプロピル基、3-メチルプロピル基、ペンチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、4-メチルブチル基、ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、2、3-ジメチルブチル基、3-エチルペンチル基、等が挙げられる。
【0019】
R3で表される炭素数6~12の芳香族炭化水素基は、芳香族炭化水素から水素原子を1つ除いてなる1価の基を示す。芳香族炭化水素基の炭素数は、好ましくは6~10である。芳香族炭化水素基は、単環の芳香族炭化水素基、2環以上の芳香環が連結した芳香族炭化水素基、または縮環の芳香族炭化水素基であってよい。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0020】
R3で表される炭素数3~6の複素芳香族基は、単環の複素芳香族基、2環以上の芳香環が連結した複素芳香族基、または縮環の複素芳香族基であってよく、複素芳香族基が複数の芳香環を有する場合、当該芳香環の少なくとも1つがヘテロ原子(例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等)を含んでいればよい。複素芳香族基としては、ピロリル基、チエニル基、フリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、チアジアゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、1,3,5-トリアジニル基等が挙げられる。
R3は、原料が容易入手可能な点で好ましくは水素原子である。
【0021】
合成が容易である点で、X1およびX2は共に窒素原子、または、共にC-R3であることが好ましい。
【0022】
mは、1、2、または3を表し、合成が容易である点で好ましくは1である。
【0023】
R
1は、合成が容易である点で、各々独立に、下記式(a-1)~(a-18)で示される基であり、(a-1)、(a-2)、(a-3)、(a-4)、(a-5)、(a-16)で示される基が更に好ましく、(a-1)、(a-2)、(a-3)、(a-4)、(a-5)で示される基が殊更好ましい。
【化4】
【0024】
合成が容易となる観点から、2つのR
1は同一の基であることが好ましい。なお、式(a-n)(式中、nは2から18の整数を表す。)で示される2価の連結基は2種の光学異性体の双方を包含するものとする。すなわち、式(a-1)を除く式(a-2)~(a-18)中の2価のメチン炭素は不斉炭素であるため、各々、下記式(a-2D)~(a-18D)で示されるD体、および式(a-2L)~(a-18L)で示されるL体の2種の光学異性体が存在し得る。2価のメチン炭素は、左側が窒素原子と、右側が炭素原子と直接結合しているとする。
【化5】
【化6】
本明細書では、便宜上、式(a-n)のように表記するが、これらには上記D体およびL体の光学異性体が包含される。式(a-n)で示される2価の連結基は、式(a-nD)および(a-nL)で示される光学異性体の少なくとも1種を含むものであり、式(a-nD)および(a-nL)で示される光学異性体の双方を含んでいてもよい。
【0025】
R
2で表される炭素数8~24のアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、オクチル基、2-オクチル基、2-エチルヘキシル基、5-メチルへプチル基、ノニル基、デシル基、2-エチルオクチル基、3、7-ジメチルオクチル基、ウンデシル基、ドデシル基、2-エチルデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、2-ブチルドデシル基、2-(ヘキサ-2-イル)-5-メチルオクチル基、ペンタデシル基、3、7、11-トリメチルドデシル基、ヘキサデシル基、2ーヘキシルドデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ナノデシル基、イコシル基、2-ヘキシルテトラデシル基、2-オクチルドデシル基、ヘニコシル基、ドコシル基、2-オクチルテトラデシル基、トリコシル基、テトラコシル基、2-オクチルヘキシルデシル基、2-デシルテトラデシル基等を例示することができる。合成が容易である点で、R
2は、炭素数8~22のアルキル基が好ましく、炭素数8~22の分岐状アルキル基がより好ましく、下記式(b-1)~(b-8)で示される基であることがとりわけ好ましく、特に好ましくは(b-1)、(b-2)、(b-3)、(b-4)、または(b-5)である。
【化7】
【0026】
R
2で表される炭素数5~14のアルキル基において、1つ以上の-CH2-は、-O-、-S-、または-(OSiMe2)-で置き換えられてもよく、下記式(C-1)~(C-48)で示される基を例示することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【化8】
【0027】
R2で表される炭素数8~16のフルオロアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であっても環状であってもよく、パーフルオロオクチル基、パーフルオロノニル基、パーフルオロデシル基、パーフルオロウンデシル基、パーフルオロドデシル基、パーフルオロトリデシル基、パーフルオロテトラデシル基、パーフルオロペンタデシル基、パーフルオロヘキサデシル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル基、5,5,6,6,7,7,8,8,8-ノナフルオロオクチル基、6,6,7,7,8,8,8-ヘプタフルオロオクチル基、7,7,8,8,8-ペンタフルオロオクチル基、8,8,8-トリフルオロオクチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9-ペンタデカフルオロノニル基、5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9-ウンデカフルオロノニル基、7,7,8,8,9,9,9-ヘプタフルオロノニル基、8,8,9,9,9-ペンタフルオロノニル基、9,9,9-トリフルオロノニル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカフルオロデシル基、5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-トリデカフルオロデシル基、7,7,8,8,9,9,10,10,10-ノナフルオロデシル基、8,8,9,9,10,10,10-ヘプタフルオロデシル基、9,9,10,10,10-ペンタフルオロデシル基、10,10,10-トリフルオロデシル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11-ノナフルオロウンデシル基、5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11-ペンタデカフルオロウンデシル基、7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11-ウンデカフルオロウンデシル基、9,9,10,10,11,11,11-ヘプタフルオロウンデシル基、10,10,11,11,11-ペンタフルオロウンデシル基、11,11,11-トリフルオロウンデシル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,12-ヘンイコサフルオロドデシル基、5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,12-ヘプタデシルフルオロドデシル基、8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,12-ウンデシルフルオロドデシル基、9,9,10,10,11,11,12,12,12-ノナフルオロドデシル基、10,10,11,11,12,12,12-ヘプタフルオロドデシル基、11,11,12,12,12-ペンタフルオロドデシル基、12,12,12-トリフルオロドデシル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13-トリコサフルオロトリデシル基、9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13-ウンデシルフルオロトリデシル基、11,11,12,12,13,13,13-ヘプタフルオロトリデシル基、12,12,13,13,13-ペンタフルオロトリデシル基、13,13,13-トリフルオロトリデシル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,14,14,14-ペンタコサフルオロテトラデシル基、10,10,11,11,12,12,13,13,14,14,14-ウンデシルフルオロテトラデシル基、12,12,13,13,14,14,14-ヘプタフルオロテトラデシル基、13,13,14,14,14-ペンタフルオロテトラデシル基、14,14,14-トリフルオロテトラデシル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,14,14,15,15,15-ヘプタコサフルオロペンタデシル基、11,11,12,12,13,13,14,14,15,15,15-ウンデシルフルオロペンタデシル基、13,13,14,14,15,15,15-ヘプタフルオロペンタデシル基、14,14,15,15,15-ペンタフルオロペンタデシル基、15,15,15-トリフルオロペンタデシル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,16-ノナコサフルオロヘキサデシル基、12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,16-ウンデシルフルオロヘキサデシル基、14,14,15,15,16,16,16-ヘプタフルオロヘキサデシル基、15,15,16,16,16-ペンタフルオロヘキサデシル基、16,16,16-トリフルオロヘキサデシル基等が挙げられる。
【0028】
合成が容易である点で、2つのR2は同一であることが好ましい。
【0029】
本実施形態のテトラカルボン酸ジイミド化合物としては、例えば、下記式(A-1)~(A-510)で示される化合物を例示することができ、合成が容易である点で(A-1)~(A-52)で表される化合物が好ましく、(A-1)、(A-2)、(A-3)、(A-4)、または(A-5)で表される化合物がより好ましい。なお、本実施形態のテトラカルボン酸ジイミド化合物は、以下に例示した化合物の限りではない。
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【0030】
本発明のテトラカルボン酸ジイミド化合物は、少なくとも室温において液状である。本明細書において、室温とは、5oC以上40oC以下の温度範囲を示し、液状とは、粘性の程度にかかわらず、液体状態にあるもの全てを意図する。より詳細には、本発明によるテトラカルボン酸ジイミド化合物の分解温度は300oC以上であるため、室温から分解温度までの広い温度範囲にわたって液状を維持し得る。このような本発明によるテトラカルボン酸ジイミド化合物は、インクとしての加工温度範囲にわたって液状を維持できるので、加工における特性の変化が生じることはない。また、本発明によるテトラカルボン酸ジイミド化合物は、通常のインクが使用される温度範囲にわたって液状を維持できるので、高い信頼性を確保できる。
【0031】
〈テトラカルボン酸ジイミド化合物の製造方法〉
本実施形態のテトラカルボン酸ジイミド化合物(1)に包含されるテトラカルボン酸ジイミド化合物(1a)、(1b)、および(1c)(以下、本実施形態のテトラカルボン酸ジイミド化合物(1a)、(1b)、および(1c)と称することがある。)は、例えば、式(B-1)で表される化合物と式(C-1)で表されるアルコールとの反応(以下、工程1)により製造することができる。
【化18】
【0032】
式中、X1、X2およびR1は前記と同義である。R2aは、炭素数8~24のアルキル基、または炭素数8~16のフルオロアルキル基を表し、該アルキル基において、1つ以上の-CH2-は、-O-、-S-、または-(OSiMe2)-で置き換えられてもよいが、-O-が2つ以上または-S-が3つ以上連続することはない。
【0033】
工程1の反応条件は特に限定されず、例えば、実施例1~5に開示した反応条件や慣用されているエステル化反応の反応条件を適用することで、収率よく本実施形態のテトラカルボン酸ジイミド化合物を得ることができる。
工程1は溶媒中で実施することができる。該溶媒としては、基質であるカルボン酸、およびアルコール等の溶解性を考慮して種々選択できる。例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングルコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒が使用できる。これらは1種のみで用いてもよく、任意の比で混合して用いてもよい。溶媒の使用量に特に制限はない。これらのうち、反応性の点でジクロロメタン、ジオキサン、およびクロロホルムが好ましく、経済性および後処理の容易さの点で、ジクロロメタンがより好ましい。
工程1は、エステル化反応を促進する目的で、塩酸、硫酸、硝酸等の酸;1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド、N,N’-カルボニルジイミダゾール、1,1’-カルボニルジ(1,2,4-トリアゾール)、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウム=クロリドn水和物、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩、(7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩、クロロトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩、ブロモトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩、3-(ジエトキシホスホリルオキシ)-1,2,3-ベンゾトリアジン-4(3H)-オン、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩、O-(N-スクシンイミジル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩、O-(N-スクシンイミジル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩、O-(3,4-ジヒドロ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン-3-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩、S-(1-オキシド-2-ピリジル)-N,N,N’,N’-テトラメチルチウロニウムテトラフルオロホウ酸塩、O-[2-オキソ-1(2H)-ピリジル]-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩、{{[(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデン)アミノ]オキシ}-4-モルホリノメチレン}ジメチルアンモニウムヘキサフルオロリン酸塩、2-クロロ-1,3-ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロリン酸塩、1-(クロロ-1-ピロリジニルメチレン)ピロリジニウムヘキサフルオロリン酸塩、2-フルオロ-1,3-ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロリン酸塩、フルオロ-N,N,N’,N’-テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロリン酸塩、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール、N-ヒドロキシこはく酸イミド、N,N’-ジスクシンイミジル炭酸塩等の縮合剤;トリエチルアミン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、テトラメチルエチレンジアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の有機塩基;などを添加剤として加えることができる。縮合剤、および有機塩基は、それぞれ1種のみで用いてもよく、任意の比で混合して用いてもよい。反応収率が高い点で、縮合剤として、1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、およびN,N’-ジイソプロピルカルボジイミドと、有機塩基として、トリエチルアミン、ピリジン、および4-ジメチルアミノピリジンとを用いることが好ましく、生成物の純度が高い点で、縮合剤として、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、有機塩基として、4-ジメチルアミノピリジンとを用いることがより好ましい。
工程1は、-80oC~100oCから適宜選択された温度にて実施することができ、反応収率が高い点で-20oC~60oCから適宜選択された温度にて実施することが好ましい。
【0034】
式(B-1)で表される化合物は、例えば、文献(Mol.Cryst.Liq.Cryst.534,114(2011);Chem.Eur.J.20,15303(2014);Amino Acids.47,2293(2015);Amino Acids.36,511(2009);)に開示された方法に基づいて合成してよく、市販品を用いてもよい。
【0035】
アルコール(C-1)は、例えば、文献(特開2008-31149;Macromolecules,48,520(2015);Chem.Lett.8,1647(1987);J.Org.Chem.27,2821(1962);Angew.Chem.Int.Ed.57,8493(2018);J.Am.Chem.Soc.138,4210(2016);特開FR1573705;国際公開第2010/126030号;ACS Omega.2,2483(2017);J.Am.Chem.Soc.140,515(2018);ACS Macro.Lett.1,136(2012))に開示された方法に基づいて合成してよく、市販品を用いてもよい。
【0036】
【化19】
式中、X
1、X
2およびR
1は前記と同義である。R
2aは、炭素数8~24のアルキル基、または炭素数8~16のフルオロアルキル基を表し、該アルキル基において、1つ以上の-CH
2-は、-O-、-S-、または-(OSiMe
2)-で置き換えられてもよいが、-O-が2つ以上または-S-が3つ以上連続することはない。
【0037】
工程2は溶媒中で実施することができる。該溶媒としては前記工程1で例示した溶媒と同様のものを例示することができる。反応性の点でジクロロメタン、ジオキサン、およびクロロホルムが好ましく、経済性および後処理の容易さの点で、ジクロロメタンがより好ましい。また、エステル化反応を促進する目的で添加剤を使用してもよく、前記工程1で例示した、該酸、該縮合材、および該塩基と同様のものを例示することができる。生成物の純度の点で、縮合剤として、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、有機塩基として、4-ジメチルアミノピリジンがとりわけ好ましい。
【0038】
【化20】
式中、X
1、X
2およびR
1は前記と同義である。R
2bは、炭素数8~24のアルキル基、または炭素数8~16のフルオロアルキル基を表し、該アルキル基において、1つ以上の-CH
2-は、-O-、-S-、または-(OSiMe
2)-で置き換えられてもよいが、-O-が2つ以上または-S-が3つ以上連続することはない。
【0039】
工程3は溶媒中で実施することができる。該溶媒としては前記工程1で例示した溶媒と同様のものを例示することができる。反応性の点でジクロロメタン、ジオキサン、およびクロロホルムが好ましく、経済性および後処理の容易さの点で、ジクロロメタンがより好ましい。また、エステル化反応を促進する目的で添加剤を使用してもよく、前記工程1で例示した、該酸、該縮合材、および該塩基と同様のものを例示することができる。生成物の純度の点で、縮合剤として、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、有機塩基として、4-ジメチルアミノピリジンがとりわけ好ましい。
【0040】
<液状発光材料>
本実施形態の室温液状発光材料は、上記の式(1)で示されるテトラカルボン酸ジイミド化合物とπ共役化合物とを含んでなる。
【0041】
本実施形態の室温液状発光材料に含まれるπ共役化合物に特に制限はないが、例えば、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、ピレン、ペリレン、コロネン、チオフェン、ピロール、フラン、シロール、チアゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピラジン、トリアジン、キノキサリン、フェナジン、スチルベン、フェニレンビニレン、フェニレンエチニレン、フルオレン、トリフェニルアミン、フェナントレン、およびテトラフェニルエテン等を例示することができ、これらを単独で、あるいは複数を任意の比で混合して用いてもよい。テトラカルボン酸ジイミド化合物への溶解性が高い点で、炭素数6~20の芳香族化合物または炭素数3~10の複素芳香族化合物が好ましく、ナフタレン、アントラセン、およびピレンがより好ましい。
【0042】
本実施形態の室温液状発光材料に含まれるテトラカルボン酸ジイミド化合物(1)の含有量は、液状発光材料の全量基準で、発光特性がよい点で50~99.9重量%の範囲にあることが好ましく、70~99.6重量%の範囲にあることがより好ましい。
【0043】
本実施形態の室温液状発光材料は、本発明のテトラカルボン酸ジイミド化合物(1)とπ共役化合物とを混練して得られる。混練方法は、撹拌、振盪、ボールミル等の一般的な手法を用いることができる。
【0044】
<発光インク>
本実施形態の発光インクは、本発明の室温液状発光材料と溶媒とを含む。
【0045】
本実施形態の発光インクに含まれるテトラカルボン酸ジイミド化合物(1)の含有量は、発光インクの全量基準で、発光特性がよい点で30~70重量%の範囲にあることが好ましい。
【0046】
本実施形態の発光インクに含まれる溶媒は、アルコール、アセトン、ヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、トルエン、アセトニトリル等を挙げることができ、安全性の点で、炭素数2~6のアルコール、炭素数6~10のイソパラフィン系炭化水素、及び炭素数6~14の脂環式炭化水素、からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機溶媒であることが好ましい。
【0047】
前記炭素数2~6のアルコールは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。炭素数2~6のアルコールは、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ペンタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-1-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノール、3-メトキシ-n-ブタノール等を含んでもよい。
【0048】
前記イソパラフィン系炭化水素は、溶媒の主成分として用いてもよく、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。炭素数6~10のイソパラフィン系炭化水素は、石油原料の精製および/または合成により得られる。優れた低臭性を得る観点から、イソパラフィン系炭化水素はイソパラフィン系飽和炭化水素が好ましい。
【0049】
商業的に入手可能なイソパラフィン系炭化水素としては、例えば、IPソルベント1016、IPソルベント1620、IPソルベント2028およびIPソルベント2835(以上、出光興産社製、商品名)、アイソゾールシリーズ(新日本石油社製、商品名)、シェルゾールTG、シェルゾールTKおよびシェルゾールTM(以上、昭和シェル石油社製、商品名)、アイソパーEおよびアイソパーG(エクソンモービル社製、商品名)などが挙げられる。
【0050】
前記炭数6~14の脂環式炭化水素は、溶媒の主成分として用いてもよく、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。炭素数6~14の脂環式炭化水素は、メチルシクロヘキサン、およびエチルシクロヘキサンなどが挙げられる。
【0051】
<室温液状発光材料の製造方法>
本実施形態の室温液状発光材料は、例えば、本発明のテトラカルボン酸ジイミド化合物(1)とπ共役化合物とを混練(以下、工程4)して製造することができる。混練方法は、撹拌、振盪、ボールミル等の一般的な手法を用いることができる。
【0052】
工程4の混錬条件は特に限定されず、例えば、実施例6~10に開示した条件を適用することで、効率よく本実施形態の室温液状発光材料(A-3-a)、(A-3-b)、(A-3-c)、(A-3-d)、および(A-3-e)を得ることができる。
【0053】
工程4は、20oC~150oCから適宜選択された温度にて5分以上加熱することで実施することができ、調製が容易である点で20oC~60oCから適宜選択された温度にて5分以上加熱することで実施することが好ましい。
【0054】
<発光インクの製造方法>
本実施形態の発光インクは、例えば、本発明の室温液状発光材料を溶媒に溶解・分散(以下、工程5)して製造することができる。溶解・分散方法は、撹拌、振盪、ボールミル等の一般的な手法を用いることができる。
【0055】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、1H-NMRの測定には、Bruker ASCEND HD(400MHz;Bruker社製)を用いた。1H-NMRは、重クロロホルム(CDCl3)を測定溶媒とし、内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を用いて測定した。
【0056】
実施例1:テトラカルボン酸ジイミド化合物(A-1)
【化21】
アルゴン雰囲気下において、2,2’-(1,3,5,7-テトラオキソ-5,7-ジヒドロピロロ[3,4-f]イソインドール-2,6(1H,3H)-ジイル)ジアセテート(0.83g,2.5mmol)、2-ヘキシル-1-デカノール(1.33g,5.5mmol)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(1.05g,5.5mmol)および4-ジメチルアミノピリジン(0.92g,7.5mmol)をジクロロメタン50mLに懸濁した。この混合物を室温で24時間撹拌した後、反応溶液に水を添加し、クロロホルムを用いて抽出し、合わせた有機層に硫酸ナトリウムを加えて脱水した後、ろ過して得られた有機層を回収して低沸分を留去した。得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製し、さらに真空乾燥を行うことで目的のテトラカルボン酸ジイミド化合物(A-1)を無色の粘稠液体として得た(0.49g,25.1%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm):8.37(s,2H),4.50(s,4H),4.08(d,5.6Hz,4H),1.26(m,50H)0.95(m,12H).
【0057】
実施例2:テトラカルボン酸ジイミド化合物(A-2)
【化22】
アルゴン雰囲気下において、(2S,2’S)-2,2’-(1,3,5,7-テトラオキソ-5,7-ジヒドロピロロ[3,4-f]イソインドール-2,6(1H,3H)-ジイル)ジプロピオン酸(1.04g,2.5mmol)、2-ヘキシル-1-デカノール(1.33g,5.5mmol)、1-(3ージメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(1.05g,5.5mmol)および4-ジメチルアミノピリジン(0.92g,7.5mmol)をジクロロメタン50mLに懸濁した。この混合物を室温で24時間撹拌した後、反応溶液に水を添加し、クロロホルムを用いて抽出し、合わせた有機層に硫酸ナトリウムを加えて脱水した後、ろ過して得られた有機層を回収して低沸分を留去した。得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製し、さらに真空乾燥を行うことで目的のテトラカルボン酸ジイミド化合物(A-2)を無色の粘稠液体として得た(0.48g,24.0%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm)8.30(s,2H),5.03(q,7.5Hz,2H),4.06(d,5.7Hz,4H),1.75(d,7.5Hz,6H),1.24(m,50H),0.87(m,12H).
【0058】
実施例3:テトラカルボン酸ジイミド化合物(A-3)
【化23】
アルゴン雰囲気下において、(2S,2’S)-2,2’-(1,3,5,7-テトラオキソ-5,7-ジヒドロピロロ[3,4-f]イソインドール-2,6(1H,3H)-ジイル)ビス(3-メチル酪酸)(1.04g,2.5mmol)、2-ヘキシル-1-デカノール(1.33g,5.5mmol)、1-(3ージメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(1.05g,5.5mmol)および4-ジメチルアミノピリジン(0.92g,7.5mmol)をジクロロメタン50mLに懸濁した。この混合物を室温で24時間撹拌した後、反応溶液に水を添加し、クロロホルムを用いて抽出し、合わせた有機層に硫酸ナトリウムを加えて脱水した後、ろ過して得られた有機層を回収して低沸分を留去した。得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製し、さらに真空乾燥を行うことで目的のテトラカルボン酸ジイミド化合物(A-3)を無色の粘稠液体として得た(1.12g,56.0%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm)8.31(s,2H),4.68(d,8.3Hz,2H),4.07(d,5.6Hz,4H),2.79(m,2H),1.20(m,66H),0.88(m,22H).
【0059】
実施例4:テトラカルボン酸ジイミド化合物(A-4)
【化24】
アルゴン雰囲気下において、(2S,2’S)-2,2’-(1,3,5,7-テトラオキソ-5,7-ジヒドロピロロ[3,4-f]イソインドール-2,6(1H,3H)-ジイル)ビス(4-メチル吉草酸)(1.11g,2.5mmol)、2-ヘキシル-1-デカノール(1.33g,5.5mmol)、1-(3ージメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(1.05g,5.5mmol)および4-ジメチルアミノピリジン(0.92g,7.5mmol)をジクロロメタン50mLに懸濁した。この混合物を室温で24時間撹拌した後、反応溶液に水を添加し、クロロホルムを用いて抽出し、合わせた有機層に硫酸ナトリウムを加えて脱水した後、ろ過して得られた有機層を回収して低沸分を留去した。得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製し、さらに真空乾燥を行うことで目的のテトラカルボン酸ジイミド化合物(A-4)を無色の粘稠液体として得た(1.66g,76.0%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm)8.30(s,2H),4.98(dd,4.3Hz,11.7Hz,2H),4.05(d,6.2Hz,4H),2.34(m,2H),2.00(m,2H),0.94(m,50H),0.89(m,26H).
【0060】
実施例5:テトラカルボン酸ジイミド化合物(A-5)
【化25】
アルゴン雰囲気下において、(2S,2’S)-2,2’-(1,3,5,7-テトラオキソ-5,7-ジヒドロピロロ[3,4-f]イソインドール-2,6(1H,3H)-ジイル)ビス(3-メチル吉草酸)(1.11g,2.5mmol)、2-ヘキシル-1-デカノール(1.33g,5.5mmol)、1-(3ージメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(1.05g,5.5mmol)および4-ジメチルアミノピリジン(0.916g,7.5mmol)をジクロロメタン50mLに懸濁した。この混合物を室温で24時間撹拌した後、反応溶液に水を添加し、クロロホルムを用いて抽出し、合わせた有機層に硫酸ナトリウムを加えて脱水した後、ろ過して得られた有機層を回収して低沸分を留去した。得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製し、さらに真空乾燥を行うことで目的のテトラカルボン酸ジイミド化合物(A-5)を無色の粘稠液体として得た(0.64g,29.0%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm)8.31(s,2H),4.75(m,2H),4.05(t,6.6Hz,4H),2.80(m,2H),1.22(m,52H),0.86(m,24H).
【0061】
実施例6:テトラカルボン酸ジイミド化合物(A-6)
【化26】
アルゴン雰囲気下において、2,2’-(1,3,5,7-テトラオキソ-5,7-ジヒドロピロロ[3,4-f]イソインドール-2,6(1H,3H)-ジイル)ジアセテート(0.83g,2.5mmol)、1-デカノール(0.87g,5.5mmol)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(1.05g,5.5mmol)および4-ジメチルアミノピリジン(0.92g,7.5mmol)をジクロロメタン50mLに懸濁した。この混合物を室温で24時間撹拌した後、反応溶液に水を添加し、クロロホルムを用いて抽出し、合わせた有機層に硫酸ナトリウムを加えて脱水した後、ろ過して得られた有機層を回収して低沸分を留去した。得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製し、さらに真空乾燥を行うことで目的のテトラカルボン酸ジイミド化合物(A-6)を無色の粘稠固体として得た(10.8g,70.5%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm):8.37(s,2H),4.50(s,4H),4.17(d,5.6Hz,4H),1.26(m,32H),0.88(t,6.0Hz,6H).
【0062】
実施例7:テトラカルボン酸ジイミド化合物(A-7)
【化27】
アルゴン雰囲気下において、(2S,2’S)-2,2’-(1,3,5,7-テトラオキソ-5,7-ジヒドロピロロ[3,4-f]イソインドール-2,6(1H,3H)-ジイル)ジプロピオン酸(1.04g,2.5mmol)、1-デカノール(0.87g,5.5mmol)、1-(3ージメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(1.05g,5.5mmol)および4-ジメチルアミノピリジン(0.92g,7.5mmol)をジクロロメタン50mLに懸濁した。この混合物を室温で24時間撹拌した後、反応溶液に水を添加し、クロロホルムを用いて抽出し、合わせた有機層に硫酸ナトリウムを加えて脱水した後、ろ過して得られた有機層を回収して低沸分を留去した。得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製し、さらに真空乾燥を行うことで目的のテトラカルボン酸ジイミド化合物(A-7)を無色の粘稠液体として得た(0.71g,44.0%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm)8,31(s,2H),5.03(q,7.8Hz,2H),4.15(t,6.6Hz,4H),1.75(d,7.8Hz,6H),1.26(m,32H),0.88(t,6.6Hz,6H).
【0063】
実施例8:テトラカルボン酸ジイミド化合物(A-8)
【化28】
アルゴン雰囲気下において、(2S,2’S)-2,2’-(1,3,5,7-テトラオキソ-5,7-ジヒドロピロロ[3,4-f]イソインドール-2,6(1H,3H)-ジイル)ビス(3-メチル酪酸)(1.04g,2.5mmol)、1-デカノール(0.87g,5.5mmol)、1-(3ージメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(1.05g,5.5mmol)および4-ジメチルアミノピリジン(0.92g,7.5mmol)をジクロロメタン50mLに懸濁した。この混合物を室温で24時間撹拌した後、反応溶液に水を添加し、クロロホルムを用いて抽出し、合わせた有機層に硫酸ナトリウムを加えて脱水した後、ろ過して得られた有機層を回収して低沸分を留去した。得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製し、さらに真空乾燥を行うことで目的のテトラカルボン酸ジイミド化合物(A-8)を無色の粘稠液体として得た(0.84g,46.2%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm)8.31(s,2H),4.62(d,8.3Hz,2H),4.13(d,5.6Hz,4H),2.79(m,2H),1.20(m,38H),0.88(m,12H).
【0064】
実施例9:テトラカルボン酸ジイミド化合物(A-9)
【化29】
アルゴン雰囲気下において、(2S,2’S)-2,2’-(1,3,5,7-テトラオキソ-5,7-ジヒドロピロロ[3,4-f]イソインドール-2,6(1H,3H)-ジイル)ビス(4-メチル吉草酸)(1.11g,2.5mmol)、1-デカノール(0.87g,5.5mmol)、1-(3ージメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(1.05g,5.5mmol)および4-ジメチルアミノピリジン(0.92g,7.5mmol)をジクロロメタン50mLに懸濁した。この混合物を室温で24時間撹拌した後、反応溶液に水を添加し、クロロホルムを用いて抽出し、合わせた有機層に硫酸ナトリウムを加えて脱水した後、ろ過して得られた有機層を回収して低沸分を留去した。得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製し、さらに真空乾燥を行うことで目的のテトラカルボン酸ジイミド化合物(A-9)を無色の粘稠液体として得た(1.02g,55.3%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm)8.31(s,2H),5.00(dd,4.3Hz,11.7Hz,2H),4.14(t,6.8Hz,4H),2.35(m,2H),2.01(m,2H),1.26(m,32H),0.91(m,18H).
【0065】
実施例10:テトラカルボン酸ジイミド化合物(A-10)
【化30】
アルゴン雰囲気下において、(2S,2’S)-2,2’-(1,3,5,7-テトラオキソ-5,7-ジヒドロピロロ[3,4-f]イソインドール-2,6(1H,3H)-ジイル)ビス(3-メチル吉草酸)(1.11g,2.5mmol)、1-デカノール(0.87g,5.5mmol)、1-(3ージメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(1.05g,5.5mmol)および4-ジメチルアミノピリジン(0.916g,7.5mmol)をジクロロメタン50mLに懸濁した。この混合物を室温で24時間撹拌した後、反応溶液に水を添加し、クロロホルムを用いて抽出し、合わせた有機層に硫酸ナトリウムを加えて脱水した後、ろ過して得られた有機層を回収して低沸分を留去した。得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製し、さらに真空乾燥を行うことで目的のテトラカルボン酸ジイミド化合物(A-10)を無色の粘稠液体として得た(1.02g,55.3%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm)8.32(s,2H),4.64(d,7.6Hz,2H),4.13(t,6.6Hz,4H),2.80(m,2H),1.22(m,36H),0.86(m,18H).
【0066】
実施例11:テトラカルボン酸ジイミド化合物(A-393)
【化31】
アルゴン雰囲気下において、(2S,2’S)-2,2’-(1,3,5,7-テトラオキソ-5,7-ジヒドロピロロ[3,4-f]イソインドール-2,6(1H,3H)-ジイル)ビス(3-メチル酪酸)(3.12g,7.5mmol)、2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール(2.71g,16.5mmol)、1-(3ージメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(3.15g,16.5mmol)および4-ジメチルアミノピリジン(2.85g,22.5mmol)をジクロロメタン100mLに懸濁した。この混合物を室温で24時間撹拌した後、反応溶液に水を添加し、クロロホルムを用いて抽出し、合わせた有機層に硫酸ナトリウムを加えて脱水した後、ろ過して得られた有機層を回収して低沸分を留去した。得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製し、さらに真空乾燥を行うことで目的のテトラカルボン酸ジイミド化合物(A-393)を無色の粘稠液体として得た(3.11g,58.5%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm)8.33(s,2H),4.68(dd,8.3Hz,2H),4.31(m,4H),3.60(m,20H),3.38(s,6H),2.80(m,2H),1.18(d,6.7Hz,6H),0.83(d,6.7Hz,6H).
【0067】
実施例12:テトラカルボン酸ジイミド化合物(A-438)
【化32】
アルゴン雰囲気下において、(2S,2’S)-2,2’-(1,3,5,7-テトラオキソ-5,7-ジヒドロピロロ[3,4-f]イソインドール-2,6(1H,3H)-ジイル)ビス(3-メチル酪酸)(2.08g,5.0mmol)、1H,1H-ペンタデカフルオロ-1-オクタノール(6.00g,15.0mmol)、1-(3ージメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(5.80g,30.0mmol)および4-ジメチルアミノピリジン(5.08g,40.0mmol)をジクロロメタン100mLに懸濁した。この混合物を室温で24時間撹拌した後、反応溶液に水を添加し、クロロホルムを用いて抽出し、合わせた有機層に硫酸ナトリウムを加えて脱水した後、ろ過して得られた有機層を回収して低沸分を留去した。得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製し、さらに真空乾燥を行うことで目的のテトラカルボン酸ジイミド化合物(A-438)を無色の粘稠液体として得た(1.02g,17.3%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm)8.35(s,2H),4.78(dd,8.2Hz,2H),4.31(m,4H),2.80(m,2H),1.18(d,6.8Hz,6H),0.93(d,6.8Hz,6H).
【0068】
実施例6~10:室温液状発光材料(A-3-a)~(A-3-e)
表1に示す配合量(質量)で、テトラカルボン酸ジイミド化合物(A-3)にπ共役化合物を添加し、5分以上、各加熱温度で加熱して均一に溶解させることにより、室温液状発光材料(A-3-a)、(A-3-b)、(A-3-c)、(A-3-d)、および(A-3-e)として得た。
【表1】
表1:実施例6~10の配合量と加熱温度(
oC)
【0069】
<テトラカルボン酸ジイミド化合物および室温液状発光材料の評価>
【0070】
実施例3で合成したテトラカルボン酸ジイミド化合物(A-3)、および実施例6~10で調製した(A-3-a)、(A-3-b)、(A-3-c)、(A-3-d)、および(A-3-e)の20
oCにおける外観は、高解像度デジタルカラーカメラ(NikonD40、ニコン社製)を用いて撮影した。結果を
図1に示し、後述する。
【0071】
粉末X線回折XRD(SmartLab,リガク社製、加速電圧:40kV、電流:50mA、線源:CuKα線(λ=1.5405Å)、測定モード:連続スキャン、スキャン条件:50°/分、測定範囲:2θ=5°から40°、発散縦制限スリット:10mm、発散/入射スリット:1°、受光スリット:open、受光ソーラースリット:5°、検出器:半導体検出器(D/teXUltra)、フィルター:Niフィルター)を用いて、(A-3)および(A-3-c)の20
oCにおける構造解析を行った。結果を
図2に示し、後述する。
【0072】
偏光顕微鏡(OLYMPUSBX53M、オリンパス社製)を用いて、(A-3)および(A-3-c)の直接観察を行った。また、高解像度デジタルカラーカメラ(NikonDIGTALSIGHTDS-L3、ニコン社製)を装着することで、20
oCにおける(A-3)および(A-3-c)の外観を撮影した。結果を
図3に示し、後述する。
【0073】
熱重量測定装置(TG/DTA6200、日立ハイテクサイエンス社製)を用いて、テトラカルボン酸ジイミド化合物(A-3)の分解温度を測定した。測定条件は、アルゴン雰囲気下、加熱速度10
oC/分で20
oCから1000
oCまで加熱した際の(A-3)の重量変化を測定した。示差熱量測定装置(DSA6220、日立ハイテクサイエンス社製)を用いて、(A-3)の分解温度を測定した。測定条件は、加熱速度10
oC/分で、70
oCから-100
oC、次いで、-100
oCから70
oC、再度70
oCから20
oCを走査し、その際の(A-3)の熱量変化を測定した。結果を
図4に示し、後述する。
【0074】
紫外可視分光光度計(JASCOV-770、日本分光社製、UV/visバンド幅:2.0nm、UV/visレスポンス:0.24sec、走査モード:連続スキャン、走査速度:1000nm/min)を用いて、(A-3)、(A-3-a)、(A-3-b)、(A-3-c)、(A-3-d)、および(A-3-e)の吸収スペクトルを測定した。測定は、試料を石英基板上に塗布した膜を用いて透過法で行った。結果を
図5に示す。
【0075】
蛍光分光光度計(JASCOFP-8500、日本分光社製、励起バンド幅:5nm、蛍光バンド幅:5nm、レスポンス:10msec、感度:Manual、走査モード:連続スキャン、走査速度:100nm/min)を用いて、(A-3)、(A-3-a)、(A-3-b)、(A-3-c)、(A-3-d)、および(A-3-e)の発光スペクトルを測定した。測定用の試料を石英基板上に塗布した膜であった。励起波長(
図6に掲載)で励起した際の発光スペクトルを
図6に示し、後述する。
【0076】
図1の結果から、(A-3)が、室温にて無色透明の液体であることが確認された。
【0077】
図1の結果から、(A-3-a)が、室温にて黄色の液体、(A-3-b)が、室温にて橙色の液体、(A-3-c)が、室温にて橙色の液体、(A-3-d)、が、室温にて黄色の液体、および、(A-3-e)が、室温にて黄色の液体であることが確認された。
【0078】
図2のXRD測定結果より、(A-3)および(A-3-c)は、アルキルの熱運動由来のハローピークのみが観測された。すなわち、(A-3)および(A-3-c)は、室温において液体であることが確認された。
【0079】
図3の偏光顕微鏡観察結果より、(A-3)および(A-3-c)は、固体状態に由来する複屈折を発現しなかった。すなわち、(A-3)および(A-3-c)は、室温において液体であることが確認された。
【0080】
図4の熱重量測定結果より、(A-3)の5%重量減少温度は322
oCと、高温環境下でも熱的に安定であることが確認される。
【0081】
図4の示差熱量測定結果より、(A-3)は冷却時に-50
oCのガラス転移点を有することが確認された。
【0082】
図4の結果より、(A-3)は-50
oCから322
oCまで液状であるため、高温環境下でも使用可能であることが確認された。
【0083】
図6の結果より、(A-3)は、青色発光を示し、(A-3-a)は、黄色発光を示し、(A-3-c)、(A-3-d)、および(A-3-e)は橙色発光を発現することが確認された。すなわち、本発明の(A-3)、(A-3-a)、(A-3-b)、(A-3-c)、(A-3-d)、および(A-3-e)により、様々な発光色の発現を実現されることが確認された。