(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109065
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】水系インク、インクジェット記録方法
(51)【国際特許分類】
C09D 11/326 20140101AFI20240805BHJP
C09D 11/107 20140101ALI20240805BHJP
C09K 23/52 20220101ALI20240805BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20240805BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
C09D11/326
C09D11/107
C09K23/52
B41M5/00 120
B41J2/01 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024007429
(22)【出願日】2024-01-22
(31)【優先権主張番号】P 2023013609
(32)【優先日】2023-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】萩原 悠太
(72)【発明者】
【氏名】宮沢 由昌
(72)【発明者】
【氏名】笠 勇之介
(72)【発明者】
【氏名】武田 径明
(72)【発明者】
【氏名】岩見 麻衣子
(72)【発明者】
【氏名】多湖 光佑
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 隼人
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4D077
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FC01
2H186AB12
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4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】良好な白色度、吐出安定性、分散安定性を有し、ルチル型酸化チタンが沈降しても簡易な攪拌により容易に再分散すると共に速やかにインク物性が回復する水系インク及びインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】ルチル型酸化チタンと少なくとも2種類の高分子分散剤を含有する水系インクであって、2種類の高分子分散剤の合計含有量が酸化チタンに対して0.8質量%以上20質量%以下であり、1種類目の高分子分散剤Acが、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、又は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸と、マレイン酸、及びスルホン酸基含有ビニルモノマーから選ばれる少なくとも2種との共重合体であり、2種類目の高分子分散剤StAcが、スチレン、αメチルスチレンから選ばれるモノマーから選ばれる少なくとも1種の構成単位を、高分子分散剤StAcの質量に対し35質量%以上85質量%以下含有する、水系インク。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルチル型酸化チタンと少なくとも2種類の高分子分散剤を含有する水系インクであって、2種類の高分子分散剤の合計含有量が該酸化チタンに対して0.8質量%以上20質量%以下であり、1種類目の該高分子分散剤Acが、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、又は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸と、マレイン酸、及びスルホン酸基含有ビニルモノマーから選ばれる少なくとも2種との共重合体であり、該高分子分散剤の重量平均分子量が2,500以上90,000以下であり、その中和度が150モル%以下の高分子であり、該高分子分散剤Acの含有量が該酸化チタンに対して0.3質量%以上20質量%未満であり、2種類目の該高分子分散剤StAcが、スチレン、αメチルスチレンから選ばれるモノマーから選ばれる少なくとも1種の構成単位を、高分子分散剤StAcの質量に対し35質量%以上85質量%以下含有し、アクリル酸、メタクリル酸から選ばれる少なくとも1種のアニオン性基含有モノマー由来の構成単位を、高分子分散剤StAcの質量に対し8質量%以上40質量%以下含有し、アニオン性基の少なくとも一部が中和されてなり、中和度が40モル%以上150モル%以下の高分子、又は、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートと、アクリル酸及び/又はメタクリル酸との共重合体であり、該高分子分散剤StAcの含有量が該酸化チタンに対して0.5質量%以上18質量%以下であり、該酸化チタンの含有量が、水系インク中、5質量%以上20質量%以下であることを特徴とする水系インク。
【請求項2】
前記高分子分散剤Ac、及び高分子分散剤StAcの10%水溶液の、最大泡圧法による寿命0.1secの動的表面張力が55~74mN/mであることを特徴とする請求項1に記載の水系インク。
【請求項3】
水系インクが、さらに沸点90℃以上250℃未満の1種以上の有機溶媒を含有することを特徴とする請求項1に記載の水系インク。
【請求項4】
請求項1に記載の水系インクをインクジェットヘッドから吐出して、記録媒体に付着させるインク付着工程、を備えたインクジェット記録方法。
【請求項5】
前記記録媒体が、ライナ紙であることを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項6】
前記インクジェットヘッドが循環機構を備えることを特徴とするインクジェット記録方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系インク及びインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタ記録装置による印刷は、ノズルよりインクを噴射し被記録材に付着せしめる方式であり、従来の印刷方法と異なり版を使用しない印刷方式であることから、少量多品種に対応できるオンデマンド印刷方式として広範囲にわたる利用分野が期待されている印刷方式である。近年では、従来の白地の紙等の記録媒体に対する印刷から、白地ではない段ボール、板紙、樹脂フィルム等の記録媒体に対する印刷への要望が増加している。従来、段ボールを中心とした包装容器の分野では、一般的にフレキソ印刷方式が用いられていた。特に近年では、段ボールを中心とした包装容器の分野において、付加価値向上の観点から、高品質なデザインを再現することが可能なインクジェット印刷方式に対する関心が高まっている。この場合、白色画像が十分に白く、被記録媒体を隠蔽することが望まれる。
【0003】
白地ではない記録媒体に対する印刷の場合、白色を表現する目的や視認性を高める目的から白色インクが使用される。白色インクに用いる顔料としては、隠蔽性の高い無機顔料である酸化チタンが多く使用されている。また、酸化チタンの分散性を向上させることを目的として、顔料分散剤が用いられている。
【0004】
特許文献1には、酸化チタン、ならびにアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、およびスルホン酸基含有ビニルモノマーから選ばれる少なくとも1種のアニオン性基含有モノマー単位を72質量%以上含有し、質量平均分子量が3,000以上50,000以下である重合体を含み、酸化チタンに対して前記重合体を1質量% 以上7質量%以下配合した顔料分散体が開示されている。
【0005】
特許文献2には、酸化チタン、ポリカルボン酸塩やポリアクリル酸塩等を含む、顔料分散体が開示されている。
【0006】
特許文献3には、芳香族又は複素環ビニルモノマーユニット5~30質量%と、酸基を有するモノマーユニット10~30質量%と、(メタ)アクリル酸エステルモノマーユニット40~80質量%と、特定分子量のポリアルキレングリコール鎖又は該グリコールのモノアルキルエーテル鎖を有するモノマーユニット5~30質量%とから構成され、酸価が30~300mgKOH/g、数平均分子量が5,000~30,000の顔料分散剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-75302号公報
【特許文献2】特開2018-158994号公報
【特許文献3】特開2009-24165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、酸化チタンは有機顔料と比較して比重が高く、充分な白色度を発現させるため粒子径も比較的大きいため、低粘度であるインクジェット記録用インクに用いた場合、酸化チタンが沈降しやすい。その結果、インクを保管中に酸化チタンが沈降し、凝集してしまい、吐出に悪影響を与えるため、貯蔵安定性が悪いという課題がある。そのため、撹拌機を使ってインクを再分散したのちに記録装置にインストールする必要がある。しかし、撹拌機を使ってインクを再分散しても凝集が解しきれず、吐出に悪影響を与えてしまうという課題がある。また、貯蔵時以外にも、印刷の休止等により、記録装置内のインク流路中で流れが一旦停止すると、インク流路内で酸化チタンの沈降又は凝集が生じ、吐出に悪影響を与えるという課題もある。
特許文献1,2の顔料分散剤を使用することで、酸化チタンの分散安定性をある程度向上させることができるが、貯蔵安定性やインクの再分散性という観点で、実用上問題ないレベルまでには達していない。また、糸曳性があり吐出安定性が悪いという課題がある。
特許文献3に記載の顔料分散剤は、高粘度である塗料を主用途として設計されており、インクジェット記録用水系インクに用いると、酸化チタンの沈降が防ぎきれず分散安定性が不足するため貯蔵安定性が悪いという課題がある。又、凝集後の十分な再分散性が得られないという問題があった。
本発明は、良好な白色度、吐出安定性、分散安定性を有し、ルチル型酸化チタンが沈降しても簡易な攪拌により容易に再分散すると共に速やかにインク物性が回復する水系インク及びインクジェット記録方法を提供することを課題とする。
なお、「記録」とは、文字や画像を記録する印刷、印字を含む概念であり、「記録物」とは、文字や画像が記録された印刷物、印字物を含む概念である。
また、本発明における「再分散」とは、水系インク中で分散している酸化チタンが、静置等により水系インク中で沈降又は凝集した状態となった後、この状態から、再度水系インク中で分散した状態に戻すことをいう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討の結果、下記特定の構成を有する白インクにより、前記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の1)~4)に関する。
1)ルチル型酸化チタンと少なくとも2種類の高分子分散剤を含有する水系インクであって、2種類の高分子分散剤の合計含有量が該酸化チタンに対して0.8質量%以上20質量%以下であり、1種類目の該高分子分散剤Acが、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、又は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸と、マレイン酸、及びスルホン酸基含有ビニルモノマーから選ばれる少なくとも2種との共重合体であり、該高分子分散剤の重量平均分子量が2,500以上90,000以下であり、アニオン性基が中和されていてもよく、その中和度が150モル%以下の高分子であり、該高分子分散剤Acの含有量が該酸化チタンに対して0.3質量%以上20質量%以下であり、2種類目の該高分子分散剤StAcが、スチレン、αメチルスチレンから選ばれるモノマーから選ばれる少なくとも1種の構成単位を35質量%以上85質量%以下含有し、アクリル酸、メタクリル酸から選ばれる少なくとも1種のアニオン性基含有モノマー由来の構成単位を8質量%以上40質量%以下含有し、アニオン性基の少なくとも一部が中和されてなり、中和度が40モル%以上150モル%以下の高分子、又は、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートと、アクリル酸及び/又はメタクリル酸との共重合体であり、該高分子分散剤StAcの含有量が該酸化チタンに対して0.5質量%以上18質量%以下であり、該酸化チタンの含有量が、水系インク中、5質量%以上20質量%以下であることを特徴とする水系インク。
2)前記該高分子分散剤Ac、及び該高分子分散剤StAcの10%水溶液の、最大泡圧法による寿命0.1secの動的表面張力が55~74mN/mであることを特徴とする1)に記載の水系インク。
3)水系インクが、さらに沸点90℃以上250℃未満の1種以上の有機溶媒を含有することを特徴とする1)に記載の水系インク。
4)1)に記載の水系インクをインクジェットヘッドから吐出して、記録媒体に付着させるインク付着工程、を備え、前記記録媒体が、ライナ紙であり、前記インクジェットヘッドが循環機構を備えたことを特徴とするインクジェット記録方法
【発明の効果】
【0010】
本発明により、良好な白色度、吐出安定性、分散安定性を有し、ルチル型酸化チタンが沈降しても簡易な攪拌により容易に再分散すると共に速やかにインク物性が回復する水系インク及びインクジェット記録方法を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書においては、特に断りの無い限り、実施例等を含めて「部」及び「%」は、いずれも質量基準で記載する。
また、本明細書においては、前記の白インクを、特に断りの無い限り単に「インク」ということがある。
【0012】
本発明の水系インク、及びインクジェット記録方法によれば、ルチル型酸化チタンの沈降又は凝集後の再分散性に優れると共に、良好な吐出性を得ることができるという効果を奏する。その理由は定かではないが、以下のように考えられる。
【0013】
[無機顔料]
<ルチル型酸化チタン>
本発明の水系インクは、ルチル型酸化チタンを含有する。酸化チタンの結晶構造には、ルチル型(正方晶)、アナターゼ型(正方晶)、ブルッカイト型(斜方晶)があるが、結晶の安定性、隠蔽性、及び入手性の観点から、本発明ではルチル型酸化チタン(以下、単に「酸化チタン」ともいう)を用いる。
酸化チタンは気相法又は液相法で製造することができるが、結晶性の高いものを得られ易いことから、気相法で製造された酸化チタンがより好ましい。
酸化チタンは、未処理のものを用いることもできるが、水系インク中における良好な分散性を得る観点から、表面処理されたものが好ましい。酸化チタンの表面処理としては、アルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)等の無機物による表面処理や、チタンカップリング剤、シランカップリング剤、シリコーンオイル等の有機物による表面処理等が挙げられるが、無機物による表面処理が好ましい。
【0014】
酸化チタンは光触媒活性による有機物分解性を有するため、酸化チタンを高分子分散剤で直接分散、被覆させるのではなく、光触媒活性を封じる観点、及び分散時の酸化チタンの濡れを改良する観点から、酸化チタン粒子の表面をアルミナ等の無機酸化物で表面処理をすることが好ましい。さらに酸化チタン粒子表面の酸・塩基状態を調整する観点、及び耐久性を改良する観点から、シリカを併用して表面処理することがより好ましい。以上の観点から、酸化チタンは、アルミナ処理、アルミナ・シリカ処理で表面処理されたものが好ましい。
酸化チタンの無機物による表面処理としては、アルミナ処理、アルミナ・シリカ処理以外に、亜鉛、マグネシウム、ジルコニウム等を含有する無機水和物を被覆して表面処理する方法も挙げられる。
表面処理した酸化チタンの粉末は、800~1000℃で焼成することにより、粒子間の焼結を進めることなく、二次粒子サイズの流動性、分散性を向上させることもできる。
酸化チタンの粉末形状は、粒状、針状など特に制限されないが、その平均一次粒子径は、白色度の観点から、100nm以上であり、好ましくは150nm以上、より好ましくは200nm以上であり、そして、再分散性の観点から、600nm以下であり、好ましくは500nm以下、より好ましくは400nm以下である。
なお、酸化チタンの平均一次粒子径は、実施例に記載の方法により測定される。
ルチル型二酸化チタンの市販品例としては、石原産業株式会社製の商品名:タイペークR、CR、PFシリーズ、堺化学工業株式会社製の商品名:Rシリーズ、テイカ株式会社製の商品名:JR、MTシリーズ、チタン工業株式会社製の商品名:KURONOS KRシリーズ、富士チタン工業株式会社製の商品名:TRシリーズ等が挙げられる。
なお、酸化チタンの含有量が、水系インク中、5質量%以上20質量%以下であり、白色度及び分散安定性、吐出性の観点でより好ましくは7質量%以上18質量%であり、最も好ましくは8質量%以上16質量%以下である。
【0015】
[高分子分散剤]
本発明の水系インクは、少なくとも2種類の高分子分散剤を含有することを特徴としている。2種類の高分子分散剤の合計含有量が該酸化チタンに対して0.8質量%以上20質量%以下であることを特徴としている。
【0016】
[1種類目の高分子分散剤(Ac)]
1種類目の該高分子分散剤(Ac)が、該高分子分散剤(Ac)が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、又は、アクリル酸若しくはメタクリル酸と、マレイン酸、及びスルホン酸基含有ビニルモノマーから選ばれる少なくとも2種との共重合体であり、該高分子分散剤(Ac)の重量平均分子量が2,500以上90,000以下であり、アニオン性基が中和されていてもよく、その中和度が150モル%以下の高分子である。
該高分子分散剤(Ac)は、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、又は、アクリル酸若しくはメタクリル酸と、マレイン酸、及びスルホン酸基含有ビニルモノマーから選ばれる少なくとも2種との共重合体である。
該高分子分散剤(Ac)の重量平均分子量が2,500以上90,000以下であるが、さらに好ましくは4,000以上60,000以下である。
該高分子分散剤(Ac)中に含まれるアニオン性基は中和されていてもよく、塩基としては、例えば、アンモニア水(水酸化アンモニウム);ジメチルアミノエタノール、トリエチルアミン等の有機アミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;ケイ酸ナトリウム、酢酸カリウム等の有機酸のアルカリ金属塩;リン酸二ナトリウム等が挙げられる。分散安定性の観点で、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムがより好ましい。中和度に関しては、分散安定性の観点で通常0モル%以上150モル%以下であり、好ましくは10モル%以上145モル%以下であり、より好ましくは15モル%以上140モル%以下である。
該高分子分散剤(Ac)の含有量は該酸化チタンに対して0.3質量%以上20質量%以下であり、吐出安定性の観点で、より好ましくは0.3質量%以上10質量%であり、さらに好ましくは0.3質量%以上5質量%であり、最も好ましくは0.3質量%以上1.0質量%未満である。スルホン酸基含有ビニルモノマーとしては、不飽和スルホン酸モノマーが好ましく、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。これらの酸は塩を形成してもよく、塩としては、ナトリウム塩及びカリウム塩等が挙げられる。
該高分子分散剤(Ac)は合成したものであっても市販品であってもよく、ポリメタクリル酸の市販品は例えばSigma-Aldrich Japan社製のポリメタクリル酸等が挙げられる。ポリアクリル酸の市販品は、例えば、和光純薬工業株式会社製のポリアクリル酸、アロンT-50(Mw6,000),アロンA-10SL(Mw5,000),アロンA-30SL(6,000)(いずれも東亞合成社製)、アクアリックDL、アクアリックYS(いずれも日本触媒社製)などが挙げられる。スルホン酸基含有ポリアクリル酸の市販品は、例えば、アロンA-6012(Mw10,000)(東亞合成社製)、アクアリックGL、アクアリックLS(いずれも日本触媒社製)等が挙げられる。
【0017】
[2種類目の高分子分散剤(StAc)]
2種類目の該高分子分散剤(StAc)が、スチレン、αメチルスチレンから選ばれるモノマーから選ばれる少なくとも1種の構成単位を35質量%以上85質量%以下含有し、アクリル酸、メタクリル酸から選ばれる少なくとも1種のアニオン性基含有モノマー由来の構成単位を8質量%以上40質量%以下含有し、アニオン性基の少なくとも一部が中和されてなり、中和度が40モル%以上150モル%以下である。アニオン性基を中和する塩基としては、例えば、アンモニア水(水酸化アンモニウム);ジメチルアミノエタノール、トリエチルアミン等の有機アミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;ケイ酸ナトリウム、酢酸カリウム等の有機酸のアルカリ金属塩;リン酸二ナトリウム等が挙げられる。分散安定性の観点で、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムがより好ましい。中和度に関しては、分散安定性の観点で、好ましくは30モル%以上145モル%以下であり、より好ましくは40モル%以上140モル%以下である。2種類目の該高分子分散剤(StAc)はスチレン、αメチルスチレンから選ばれるモノマーから選ばれる少なくとも1種の構成単位が35質量%以上85質量%以下含有するが、分散性の観点で38質量%以上78質量以下がより好ましく、38質量%以上75質量%以下が最も好ましい。
アニオン性基含有モノマー由来の構成単位は8質量%以上40質量%以下含有するが、分散性の観点でより好ましくは10質量%以上35質量%以下であり、最も好ましくは10質量%以上32質量%以下である。後述する、その他のエチレン性不飽和単量体と共重合していてもよい。
あるいは、2種類目の該高分子分散剤(StAc)はポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートと、アクリル酸及び/又はメタクリル酸との共重合体である。
ポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリレートとしては、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
該2種類目の高分子分散剤(StAc)の含有量は該酸化チタンに対して0.5質量%以上18質量%以下であるが、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以上5質量%以下であり、最も好ましくは0.5質量%以上2.0質量%以下である。
【0018】
〔その他のエチレン性不飽和単量体〕
その他のエチレン性不飽和単量体としては、例えば以下のような化合物が挙げられる。
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)、ターシャリブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、及びイソステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート類;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ターシャリブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレート等の環状アルキル(メタ)アクリレート類;
テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、及び3-メチル-3-オキセタニル(メタ)アクリレート等の複素環を有する(メタ)アクリレート類;
ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートの芳香族環を有する(メタ)アクリレート類;
2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノステアリルエーテル(メタ)アクリレート、及びオクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の、(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート類;
フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート 、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、及びノニルフェノキシポリ(エチレングリコール-プロピレングリコール)(メタ)アクリレート等の芳香族環を有する(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート類;
トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、及びテトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフルオロアルキル(メタ)アクリレート類;
(メタ)アクリロキシ変性ポリジメチルシロキサン(シリコーンマクロマー)類;
(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、及びアクリロイルモルホリン等のN置換型(メタ)アクリルアミド類;
(メタ)アクリロニトリル等のニトリル類等が挙げられる。
エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、及びイソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;
酢酸ビニル、及びプロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニル類;等を用いることもできる。
【0019】
(高分子分散剤の合成)
高分子分散剤は、前記モノマーを含むモノマー混合物を公知の重合法により共重合させることによって製造することができるが、分子量を制御する観点から、溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒に特に制限はないが、水、炭素数1以上3以下の脂肪族アルコール;炭素数3以上8以下のケトン類;酢酸エチル等のエステル類等、及びこれらの1種以上と水との混合溶媒が好ましく、後述する酸化チタン分散体を製造する際に溶媒を除去することなくそのまま用いることができる観点から、水がより好ましい。
重合開始剤としては、通常の溶液重合に用いられるものを使用することができるが、過硫酸塩が好ましく、過硫酸アンモニウム塩がより好ましい。重合開始剤の使用量は、モノマーの総量100質量部に対して、得られる分散剤の分子量分布の観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。
連鎖移動剤としては、メルカプタン類が好ましく、2-メルカプトエタノールがより好ましい。連鎖移動剤の使用量は、モノマーの総量100質量部に対して、得られる分散剤の分子量分布の観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは0.8質量部以上であり、そして、好ましくは8質量部以下、より好ましくは6質量部以下、更に好ましくは4質量部以下である。
【0020】
好ましい重合条件は、重合開始剤の種類等によって異なるが、重合温度は好ましくは50℃以上90℃以下、重合時間は好ましくは1時間以上20時間以下である。
重合開始剤として過硫酸塩を用いる場合の重合温度は、反応性の観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは75℃以上であり、そして、得られる分散剤の分子量分布の観点から、好ましくは85℃以下、より好ましくは83℃以下である。
重合雰囲気は、好ましくは窒素ガス雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気である。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成した高分子分散剤を単離することができる。また、得られた高分子分散剤は、再沈澱、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去することができる。
【0021】
得られた高分子分散剤は、アニオン性基含有モノマー由来の構成単位を有するため、アニオン性基を中和することによってイオン化され、水溶性とすることができる。
中和に用いる中和剤としては、アンモニア;エチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等が挙げられ、再分散性の観点から、好ましくはアルカリ金属の水酸化物であり、より好ましくは水酸化ナトリウムである。これらの中和剤は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0022】
[樹脂エマルション]
樹脂エマルションは、酸価が10mgKOH/g未満の樹脂エマルションであることが好ましい。インク組成物中に酸価が10mgKOH/g未満の樹脂エマルションが含有されることにより、インク粘度を好適な範囲内に抑えることができ、粒状性が極めて少ない印刷画像を実現することができる。酸価が10mgKOH/gを超える樹脂エマルションは水分が蒸発した時のインク粘度上昇の度合いが大きいため、メディアへのインク着弾後にインクの濡れ広がりを抑制して、均一なベタ印刷品質を得られない。樹脂エマルションは、ポリマー及びワックスから選択される1種類以上を含むことが好ましい。
樹脂エマルションの調製方法は特に制限されない。その一例としては、樹脂を機械的に水性媒体中で微細化し、分散する方法;乳化重合、分散重合、懸濁重合などにより樹脂エマルションを調製する方法;等が挙げられる。乳化重合は、乳化剤を用いることも、ソープフリーで行うこともできる。前記樹脂エマルションの調製方法としては、例えば、特開2000-336292号公報の製造例1に公開された方法が挙げられる。樹脂エマルションの樹脂含有量としては好ましくは20~50%である。
ポリマーとしては、例えば、ウレタン系、ポリエステル、アクリル系、酢酸ビニル系、塩化ビニル系、スチレン-アクリル系、アクリル-シリコン系、スチレン-ブタジエン系の各ポリマー又はそれを含有するエマルションが挙げられる。これらの中ではウレタン系、アクリル系、及びスチレン-ブタジエン系から選択されるポリマーが好ましく、アクリル系ポリマーがより好ましい。
市販品としては、例えば、ウレタン系ポリマーである三洋化成社製のユーコートUX-320(酸価:10)、大成ファインケミカル社製のWBR-016U(酸価:7)、WBR-2101(酸価:10)、ポリエステル系ポリマーである東洋紡社製のバイロナールMD-1480(酸価:3)、バイロナールMD-1985(酸価:2)、バイロナールMD-2000(酸価:2)、酢酸ビニル系ポリマーである日信化学工業社製のビニブラン715(酸価:8)、ビニブラン985(酸価:5)等が挙げられる。
【0023】
ワックスとしては、ワックスエマルションが好ましく、水系ワックスエマルションがより好ましい。ワックスとしては、天然ワックス及び合成ワックスを用いることができる。
天然ワックスとしては、石油系ワックスであるパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等;褐炭系ワックスであるモンタンワックス等;植物系ワックスであるカルナバワックス、キャンデリアワックス等;動植物系ワックスである蜜蝋、ラノリン等のワックスを、水性媒体中に分散させたエマルション等が挙げられる。
【0024】
合成ワックスとしてはポリアルキレンワックス(好ましくはポリC2-C4アルキレンワックス)、酸化ポリアルキレンワックス(好ましくは酸化ポリC2-C4アルキレンワックス)、及びパラフィンワックスが挙げられる。前記のうち、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス及びパラフィンワックスから選択される1種類以上のワックスが好ましく、酸化ポリエチレンワックスがより好ましい。
また、ワックスの平均粒径は、インクジェットヘッドの目詰まりを防止するために50nm~5μmが好ましく、100nm~1μmがより好ましい。
【0025】
ワックスエマルションの市販品としては、例えば、ビックケミー・ジャパン社製のAQUACER515(酸価:5)、東邦化学株式会社製のHYTEC E-6500(酸価:10~20)等が挙げられる。
【0026】
樹脂エマルションのインク組成物における含有量は、好ましくは0.2~10%であり、より好ましくは0.5~5%である。
【0027】
(インク調製剤)
インク調製剤としては、例えば、水溶性有機溶剤、シリコン系界面活性剤以外の界面活性剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、キレート剤、防錆剤、水溶性紫外線吸収剤、酸化防止剤等が挙げられる。
インク組成物の総質量に対して、浸透剤、及び粘度調整剤を除くインク調製剤の総含有量は通常0~30%、好ましくは0.1~20%、より好ましくは0.5~10%程度である。
[水溶性有機溶剤]
水溶性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール又は第三ブタノール等のC1-C6アルカノール;N,N-ジメチルホルムアミド又はN,N-ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド;2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン又はN-メチルピロリジン-2-オン等のラクタム;1,3-ジメチルイミダゾリジン-2-オン又は1,3-ジメチルヘキサヒドロピリミド-2-オン等の環式尿素類;アセトン、2-メチル-2-ヒドロキシペンタン-4-オン、エチレンカーボネート等のケトン、ケトアルコール又はカーボネート;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(好ましくは分子量400、800、1540又はそれ以上のもの)、ポリプロピレングリコール、チオジグリコール又はジチオジグリコール等のC2-C6アルキレン単位を有するモノ、オリゴ又はポリアルキレングリコール又はチオグリコール;グリセリン、ジグリセリン、ヘキサン-1,2,6-トリオール、トリメチロールプロパン等のC3-C9ポリオール(トリオール);エチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル(好ましくはC7-C10のトリエチレングリコールエーテル、及びC4-C13のモノ、ジ若しくはトリプロピレングリコールエーテルよりなる群から選択されるグリコールエーテル);1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール等の、C6-C9アルカンジオール(但し、上記式(1)、上記式(3)に含まれるものは除く。);γ-ブチロラクトン又はジメチルスルホキシド等;等が挙げられる。
【0028】
上記インクの総量中における、上記有機溶剤の総量は、0.1~40%であることが好ましく、0.2~35%であることがより好ましく、1~30%であることがさらに好ましく、2~20%であることが特に好ましい。
【0029】
上記インクの総量中における、上記有機溶剤の総量は、0.1~40%であることが好ましく、0.2~35%であることがより好ましく、1~30%であることがさらに好ましく、2~20%であることが特に好ましい。
【0030】
上記インクは、粘度調整剤を含んでいても良い。特に、産業用インクジェットプリンタは、搭載するプリンタヘッド(インクを吐出するヘッド)の仕様に基づき、通常は、吐出できるインクの粘度範囲が決まっている。このため、インクに粘度調整剤を加え、その粘度を適正な範囲に調整することができる。粘度調整剤としては、インクの粘度を調整できる物質であれば特に制限されず、公知の物質を使用することができる。その具体例としては、上記に上げた有機溶剤以外では、親水性樹脂等が挙げられる。
【0031】
(d)シリコン系界面活性剤以外の界面活性剤
界面活性剤としては、アニオン、カチオン、両性、及びフッ素系の、各界面活性剤が挙げられる。
【0032】
アニオン界面活性剤としてはアルキルスルホカルボン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、N-アシルアミノ酸又はその塩、N-アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキシルスルホ琥珀酸塩、及びジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。
【0033】
カチオン界面活性剤としては2-ビニルピリジン誘導体及びポリ4-ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。
【0034】
両性界面活性剤としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、及びイミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0035】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸系化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物等が挙げられる。
シリコン系界面活性剤以外の界面活性剤のインク組成物中の含有量は、0.1~2.0%であることが好ましい。
【0036】
(e)防腐剤
防腐剤としては、例えば有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリールスルホン系、ヨードプロパギル系、ハロアルキルチオ系、ニトリル系、ピリジン系、8-オキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系、及び無機塩系等の化合物が挙げられる。防腐剤の市販品の具体例としては、アーチケミカル社製のプロクセルGXL(S)、及びXL-2(S)等が挙げられる。
【0037】
(f)防黴剤
防黴剤としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン-1-オキシド、p-ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、及び1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン並びにこれらの塩等が挙げられる。
【0038】
(g)pH調整剤
pH調整剤としては、調製されるインク組成物に悪影響を及ぼさずに、そのpHを5~11に調整できれば、任意の物質を使用することができる。その具体例としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及びN-メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化アンモニウム(アンモニア水);あるいは炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;ケイ酸ナトリウム及び酢酸カリウム等の有機酸のアルカリ金属塩;並びにリン酸二ナトリウム等の無機塩基等が挙げられる。
【0039】
(h)キレート剤
キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、及びウラシル二酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0040】
(i)防錆剤
防錆剤としては、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、及びジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト等が挙げられる。
【0041】
(j)水溶性紫外線吸収剤
水溶性紫外線吸収剤の例としては、スルホ化されたベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾ-ル系化合物、サリチル酸系化合物、桂皮酸系化合物、及びトリアジン系化合物が挙げられる。
【0042】
(k)酸化防止剤
酸化防止剤の例としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。上記有機系の褪色防止剤の例としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、及び複素環類等が挙げられる。
【0043】
[水]
インク組成物は上記の各成分、及び、必要に応じてインク調製剤を含有し、残部は水である。インクに使用する水は、イオン交換水及び蒸留水等の、例えば金属イオンのような不純物の含有量の少ないものが好ましい。
【0044】
インク組成物のpHは通常7~11、好ましくは8~10である。インク組成物の表面張力は通常10~50mN/m、好ましくは20~40mN/mである。インク組成物の粘度は通常2~30mPa・s、好ましくは3~20mPa・sである。
インク組成物のpH及び表面張力は、pH調整剤、界面活性剤、及び水溶性有機溶剤等を使用することにより調整できる。
【0045】
インク組成物は、各種の印刷において使用することができる。例えば、筆記具、各種の印刷、情報印刷、捺染等に好適であり、インクジェット印刷に用いることが特に好ましい。
【0046】
<インクセット>
インクセットは、上記インク組成物である第1のインク組成物と、上記インク組成物であって、第1のインク組成物とは異なる着色剤を含有する第2のインク組成物とを有する。第1のインク組成物に含有される着色剤及び第2のインク組成物に含有される着色剤は、異なる色であることが好ましく、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、グリーン、オレンジ、レッド、及びバイオレットを含む群から選択される異なる2色であることが好ましい。着色剤の色が目視で識別可能な程度に異なる場合に色間滲みが観察されやすいためである。
【0047】
上記インクセットによれば、色間にじみが極めて良好でかつ、さらに保存期間に係らず色間にじみが悪化せず、粒状性が極めて少ない印刷画像を実現することができる。さらに、上記インクセットは、インク非・難吸収性メディア上での濡れ広がりが良好で、粒状性が極めて少ない印刷画像を得ることができる。上記インクセットは、各種の印刷、特にインクジェット印刷の用途に極めて有用である。
【0048】
<インクジェット記録方法>
インクジェット記録方法は、上記のインク組成物の液滴を吐出して、印刷メディアに付着させて画像を形成する工程を含む。画像を形成する工程は、インクジェット方式を用いて行うことができる。
【0049】
インクジェット方式としては、公知の方式が使用できる。インクジェット方式の具体例としては、例えば、電荷制御方式、ドロップオンデマンド(圧力パルス)方式、音響インクジェット方式、及びサーマルインクジェット方式等が挙げられる。
また、インクジェット方式には、インク中の着色剤の含有量が少ないインクを小さい体積で多数射出して画質を改良する方式、実質的に同じ色相で、インク中の着色剤の濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式、及び、無色透明のインクを用いることにより、着色剤の定着性を向上させる方式等も含まれる。
【0050】
<印刷メディア>
印刷メディアは、上記インク組成物が付着できる物質を意味する。印刷メディアの一例としては、例えば、紙、フィルム等、繊維や布(セルロース、ナイロン、羊毛等)、皮革、カラーフィルター用基材等が挙げられる。
印刷メディアは、インク受容層を有するものと、有さないものとに大別することができる。上記インクセットは、いずれの印刷メディアにも適用することができるが、インク受容層を有さない印刷メディアに好適に用いることができる。
インク受容層を有する印刷メディアは、通常インクジェット専用紙、インクジェット専用フィルム、光沢紙等と呼ばれる。その代表的な市販品の例としては、キヤノン社製のプロフェッショナルフォトペーパー、スーパーフォトペーパー、光沢ゴールド及びマットフォトペーパー;セイコーエプソン株式会社製の写真用紙クリスピア(高光沢)、写真用紙(光沢)、及びフォトマット紙;日本ヒューレット・パッカード株式会社製のアドバンスフォト用紙(光沢);並びに富士フィルム株式会社製の画彩写真仕上げPro等が挙げられる。
インク受容層を有さない印刷メディアとしては、グラビア印刷、及びオフセット印刷等の用途に用いられるコート紙、及びアート紙等の各種の用紙;並びにラベル印刷用途に用いられるキャストコート紙等が挙げられる。インク受容層を有さない印刷メディアを用いるときは、着色剤の定着性等を向上させる目的で、印刷メディアに対して表面改質処理を施すことも好ましく行われる。表面改質処理としては、コロナ放電処理、プラズマ処理及びフレーム処理等の、公知の方法が挙げられる。
【0051】
本発明の水系インクの印刷メディアとしては、ライナ紙が好ましい。ライナ紙とは、段ボールの外側を形成する紙であり、古紙やクラフトパルプが主原料である。ライナ紙は、日本工業規格JIS P 3902:2011「段ボール用ライナ」に記載されたものであり、本実施形態の記録方法は、ライナそのものの他に、段ボールに加工された後のライナについても記録の対象とする。
【0052】
また、本実施形態の記録方法の記録の対象は、加工前の段ボールシートの表面のライナ紙であってもよいし、例えば、段ボール箱に加工及び/又は成形された後の表面のライナ紙であってもよい。
【0053】
ライナ紙は、非白色のライナ紙であってもよい。ライナ紙は、上記の通り、古紙等が原料となる場合が多く、白色でないことが多い。このような非白色のライナ紙は、その表面に形成される画像の白色度が劣りやすいが、本実施形態の記録方法によれば、発色性の良好な画像を形成できる。
【0054】
また、ライナ紙の表面は、塗工層が設けられたり、表面処理されることがある。表面処理の例としては、撥水処理、防汚処理、着色処理等が挙げられる。特にライナ紙の表面が撥水処理されていると、水系の液体が付着した場合にはじかれるので、水系インク組成物が付着した場合にもはじかれて画像にムラを生じやすい。本実施形態の水系インク組成物を用いた記録方法によれば、上述のような処理をされたライナ紙においても良好な画像を形成できる。なお、撥水処理は撥水剤の塗布などで得ることができ、撥水処理されたライナ紙を含む段ボール等の市販品も存在する。
【0055】
<インクメディアセット>
インクメディアセットは、本発明のインク組成物又はインクセットと、印刷メディアとを含むセットである。
【0056】
上記した全ての事項について、好ましいもの同士の組み合わせはより好ましく、より好ましいもの同士の組み合わせはさらに好ましい。好ましいものとより好ましいものとの組み合わせ、より好ましいものとさらに好ましいものとの組み合わせ等についても同様である。
また、特に断りのない限り上記した全ての成分等は、そのうちの1種類を単独で使用することができるし、2種類以上を併用することもできる。
【0057】
本発明の水系インクは、再分散性、保存安定性に優れ、また、本発明の水系インクで記録された画像は、発色性、彩度に優れ、更には耐熱擦過性、転写性、耐水性、耐光性、耐熱性、耐酸化ガス(例えば耐オゾンガス)性、耐擦過性等の各種堅牢性に優れる。また、画像形成の際の乾燥性、塗工ムラおよび滲みが少なくドット径も大きいため、画像形成性にも優れる。
【実施例0058】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例中の合成反応等の各操作は、特に断りの無い限り、いずれも攪拌下で行った。また、反応等の温度は、反応液等の内部温度を記載した。
また、実施例中で使用した「水」は、特に断りの無い限り、「イオン交換水」である。
【0059】
(調整例1)高分子分散剤水溶液Ac-1の調整
HL-415(ポリアクリル酸:株式会社日本触媒製:Mw10000、固形分45%)100重量部に、50%水酸化カリウム水溶液(富士フィルム和光純薬株式会社)を14.8g添加し、PHが6.0の高分子分散剤水溶液Ac-1を得た。(固形分39.2%)後に記載している方法で10%水溶液の動的表面張力を測定した結果を表1に示す。
【0060】
(調整例2)高分子分散剤水溶液Ac-2の調整
DL-453(ポリアクリル酸:株式会社日本触媒製:Mw50000、固形分35%)はPH調整はせず、高分子分散剤水溶液Ac-2として、そのまま使用した。後に記載している方法で10%水溶液の方法で動的表面張力を測定した結果を表1に示す。
【0061】
(調整例3)高分子分散剤水溶液Ac-3の作製
YS-100(ポリアクリル酸:株式会社日本触媒製:Mw5000、固形分45%)をPH調整はせず、高分子分散剤水溶液Ac-2として、そのまま使用した。後に記載している方法で10%水溶液の動的表面張力を測定した結果を表1に示す。
【0062】
【0063】
<高分子分散剤(StAc)の作製>
(製造例1)高分子分散剤StAc-1の製造
反応容器にメチルエチルケトン80部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら80℃に加熱して、同温度で下記モノマーおよび熱重合開始剤の混合物を2時間かけて滴下して反応を行った。
・スチレン: 42.0部
・α-メチルスチレン: 30.0部
・アクリル酸: 28.0部
・アゾビスイソブチロニトリル: 4.0部
滴下後、アゾビスイソブチロニトリル0.8部をメチルエチルケトン20部に溶解させたものを添加し、更に80℃で3時間反応を続けた。次いで、減圧下でメチルエチルケトンを完全に留去し、固形の高分子分散剤StAc-1を得た。後に記載している方法で10%水溶液の動的表面張力を測定した結果を表2に示す。
【0064】
(製造例2~5)高分子分散剤StAc-2~5(StAc-2~5)の製造
下記表2に記載のモノマー量、熱重合開始材量に変更した以外は製造例1と同様にして高分子分散剤StAc-2~5の固形物を得た。後に記載の方法で10%水溶液の動的表面張力を測定した結果を表2に示す。
【0065】
【表2】
・St :スチレン
・α-MeSt :α―メチルスチレン
・MMA :メタクリル酸メチル
・BA :アクリル酸ノルマルブチル
・CA :アクリル酸カルビトール
・AA :アクリル酸
・MAA :メタクリル酸
【0066】
(製造例6)高分子分散剤StAc-6(StAc-6)の製造
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に水70部を仕込み、200rpmで攪拌下、反応容器内を窒素置換しながら80℃まで加熱した。ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートとしてメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数6)79.3部、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートとしてメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数25)69.8部、メタクリル酸32.8部、メタクリル酸ナトリウム2.16部、水41.3部及び連鎖移動剤として3-メルカプトプロピオン酸(以下、MPAともいう)1.80部を混合したモノマー水溶液を4時間、過硫酸アンモニウム(以下、APSともいう)2.0部及び水11.2部を混合した水溶液を5時間かけて同時刻から滴下した。滴下終了後、1時間引き続いて80℃に温度を維持し、重合反応を完結させ、50%水酸化カリウム水溶液(富士フィルム和光純薬株式会社)を添加しPHが6.0になるように調整することにより、重量平均分子量15,200の共重合体(1)水溶液を得た。固形分を測定したところ55%であった。
【0067】
[水系分散液の調製 調整例1]水系分散液1の調整
製造例1で得られた高分子分散剤StAc-1、中和剤、水を下記の混合比で仕込み、80℃に加温して2時間攪拌し、高分子分散剤StAc-1水溶液(固形分20%)を作製した。
・高分子分散剤(StAc-1) 5.0部
・10%水酸化ナトリウム水溶液 3.9部
・水 16.1部
ついで、下記の各成分の混合物に0.3mm径ジルコニアビーズを加え、サンドミルにて水冷下、約3時間分散処理を行った。得られた液をガラス繊維ろ紙GC-50(ADVANTEC社製)で濾過し、水系分散液1を得た。
・酸化チタン(ケマーズ社製、Ti-Pure R960) 50.0部
・高分子分散剤水溶液Ac-1(固形分39.2%) 1.3部
・高分子分散剤水溶液StAc-1(固形分20%) 25.0部
・オルフィンSK-14 0.2部
・プロキセルGXL 0.2部
・水 23.3部
【0068】
[水系分散液の調製 調整例5~17]水系分散液5~17の調整
表3に記載の2種類目の高分子分散剤の種類、量、中和剤の量、水の量に変更し、表4~6に記載の高分子分散剤の種類及び量、水の種類及び量に変更した以外は調整例1と同様にして、水系分散液5~17を得た。
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
[水系インクの調製]
(実施例1)水系インク1
下記の成分を十分に撹拌して混合した液を孔径5μmのミックスセルロースエステルのフィルターでろ過した後、真空ポンプを用いて脱気処理することにより、水系インク1を得た。
・水系分散液1 14.0部
・グリセリン 10.0部
・トリエチレングリコール 5.0部
・サーフィノール465 0.1部
・水 70.9部
(実施例2~17)水系インク2~17
下記表7~11に記載の成分を十分に撹拌して混合し、水系インクを得た。得られた水系インクを孔径5μmのミックスセルロースエステルのフィルターでろ過した後、真空ポンプを用いて脱気処理することにより、試験用の水系インク2~17を得た。
下記表7~11中の数値は「部」を意味する。
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
[酸価の測定方法]
JIS K0070に準拠して測定した。
【0080】
[分子量の測定方法]
高分子分散剤の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、TSKgelカラム(東ソー社製)を用い、RI検出器を装備したGPC(東ソー社製、HLC-8120GPC)で、展開溶媒にTHFを用いて測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)である。
【0081】
[ガラス転移温度(Tg)の測定方法]
JIS K7121(プラスチックの転移温度測定方法)に準じ、一例として、樹脂粒子を含む液体を60℃で乾固させて得た樹脂粒子2mgをアルミ容器に入れて封管し、測定用の試料を用意した。用意した試料につき、示差走査熱量計(商品名「Q1000」、TA instruments製)を使用し、以下に示す温度プログラムにしたがって熱分析して昇温曲線を作成することで測定できる。作成した昇温曲線(横軸:温度、縦軸:熱量)における、低温側の曲線中の2点を通って高温側まで延長した直線と、曲線中の階段状の変化部分の勾配が最大になる点で引いた接線との交点における温度を「ガラス転移温度」とする。
[温度プログラム]:
(1)200℃まで10℃/分で昇温
(2)200℃から-50℃まで5℃/分で降温
(3)-50℃から200℃まで10℃/分で昇温
【0082】
[粒子径の測定方法]
マイクロトラック・ベル株式会社製の動的光散乱式粒度分布測定装置Nanotrac WAVE IIを用いて、酸化チタンの屈折率2.62 、比重4.00とし、屈折率1.333 の水を分散媒として、測定した。このときのメディアン径(D50、数平均粒子径)の値を分散体の粒子の平均粒子径とした。
【0083】
[粘度の測定方法]
E型粘度計「TV-25」(東機産業株式会社製、標準コーンロータ1°34′×R24使用、回転数50rpm)を用いて、32℃にて粘度を測定した。
【0084】
[動的表面張力の測定方法]
英弘精機株式会社製のバブルプレッシャー型の動的表面張力計SITA t60を用いて、室温条件で測定し、バブルライフタイムが約10Hzの値を高分子分散剤の動的表面張力とした。
【0085】
[分散安定性の評価方法]
60℃で7日間保存した各水系インク中の酸化チタンのメディアン径(D50、数平均粒子径)をNanotrac WAVE II(マイクロトラックベル株式会社製)を用いて測定し、以下の基準で評価した。◎、〇、又は△は評価が良好であり、×は評価が不良である。
[評価基準]
◎:D50が300nm未満
〇:D50が300nm以上400nm未満
△:D50が400nm以上500nm未満
×:D50が500nm以上
【0086】
[吐出性の評価]
各水系インクを京セラ株式会社製のインクジェットヘッドKJ4B-YH(600dpi×600dpi)を搭載したプリンターを用いて液滴サイズ12pl、速度25m/minの条件にて、HEIKOカットペーパー色上質黒(株式会社シモジマ製)にインクジェット記録を行い、初期の印刷画像を得た。インクジェット記録は100%Dutyのベタ画像となるように行った。
初期の印刷画像を印刷した直後から3分間インクジェットヘッドのノズル部をキャッピングしない状態で放置し、再度インクジェット記録を行い、3分後の印刷画像を得た。初期の印刷画像と比較し3分後の印刷画像が印刷された面積を測定し、以下の基準で評価した。◎、〇、又は△は評価が良好であり、×は評価が不良である。
[評価基準]
◎:初期印刷画像と比較した3分後印刷画像の面積が80%以上
〇:初期印刷画像と比較した3分後印刷画像の面積が80%未満70%以上
△:初期印刷画像と比較した3分後印刷画像の面積が70%未満60%以上
×:初期印刷画像と比較した3分後印刷画像の面積が60%未満
【0087】
[白色度の評価]
ライナ紙(Kライナ、大王製紙社製、坪量170g/m2、茶系ライナ)に、水系インク50μLをバーコータ#8を用いて塗工した後、120℃の恒温槽で15分間乾燥させ、そのL*値を測色することにより行った。測色機としてはX-Rite社製のeXactを用いて、CIE/L*a*b*表色系における、L*値を測色した。このときの測色条件は、観測光源がD65、観測視野が2°、濃度がStatus Tであった。作製した試験片に対して5回測色を行い、その平均値を測定結果とした。L*値は大きい程、高い白色度を示すため好ましい。
[評価基準]
◎:L*が80以上
〇:L*が75以上80未満
△:L*が70以上75未満
×:L*が70未満
【0088】
[沈降性の評価]
インク調製時に測定した480nm付近の最大吸収波長(λmax)における吸光度Abs0と、60℃で7日間保存したインクの沈降部分を分取して測定した480nm付近の最大吸収波長(λmax)における吸光度Abs1とを用いて、下記式に従って沈降率を算出した。吸光度は、インクを4000倍に水を用いて希釈した希釈液を測定した。
沈降率(%)={(Abs0-Abs1)/Abs0}×100
そして、算出された沈降率を以下の基準で評価した。◎、〇又は△は評価が良好であり、×は評価が不良である。
[評価基準]
◎:沈降率が200%未満
〇:沈降率が200%以上250%未満
△:沈降率が250%以上300%未満
×:沈降率が300%以上
【0089】
[沈降再分散性の評価]
インク調製時に測定した480nm付近の最大吸収波長(λmax)における吸光度Abs0と、60℃で7日間保存したインクをIKA社製の回転式シェーカーIKA ROLLER 10 digitalを用いて80rpmの条件で30分の攪拌を行い、その上澄み部分を分取して測定した480nm付近の最大吸収波長(λmax)における吸光度Abs1とを用いて、下記式に従って沈降率を算出した。吸光度は、インクを4000倍に水を用いて希釈した希釈液を測定した。
沈降再分散性(%)=Abs1/Abs0×100
そして、算出された沈降再分散性を以下の基準で評価した。◎、〇又は△は評価が良好であり、×は評価が不良である。
[評価基準]
◎:沈降再分散性が95%以上
〇:沈降再分散性が95%未満90%以上
△:沈降再分散性が90%未満85%以上
×:沈降再分散性が85%未満
【0090】
前記表6~10に示した結果より、実施例の水系インクは、分散安定性、吐出性、沈降再分散性、沈降性が良好である。
本発明の水系インクは、良好な白色度、吐出安定性、分散安定性を有し、ルチル型酸化チタンが沈降しても簡易な攪拌により容易に再分散すると共に速やかにインク物性が回復する水系インクであるため有用である。