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特開2024-109066壁パネル、壁パネルの製造方法、及び建物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109066
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】壁パネル、壁パネルの製造方法、及び建物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20240805BHJP
   E04C 2/26 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
E04B1/94 R
E04B1/94 P
E04C2/26 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024007485
(22)【出願日】2024-01-22
(31)【優先権主張番号】P 2023013132
(32)【優先日】2023-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023108405
(32)【優先日】2023-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506223037
【氏名又は名称】野村不動産ホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500460690
【氏名又は名称】銘建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 義隆
(72)【発明者】
【氏名】滝 悟
(72)【発明者】
【氏名】深津 志向
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 理紗
(72)【発明者】
【氏名】刈内 一博
(72)【発明者】
【氏名】宮竹 靖
【テーマコード(参考)】
2E001
2E162
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001EA08
2E001FA03
2E001GA12
2E001GA42
2E001HA01
2E001HA03
2E001HA21
2E001HC01
2E001HF12
2E001KA05
2E162CA16
2E162CA21
2E162CC01
2E162EA11
(57)【要約】
【課題】木造の非耐力壁の耐火性を向上させることができる壁パネルを提供する。
【解決手段】建物の非耐力壁を構成するための壁パネルは、壁パネルの厚さ方向の一方側に配置され、木材を含む第1木質層と、壁パネルの厚さ方向の他方側に配置され、木材を含む第2木質層と、第1木質層と前記第2木質層との間に配置され、不燃材により形成されている不燃層と、を備え、第1木質層及び第2木質層のうちの少なくとも一方は、少なくとも内部に難燃剤が含浸された難燃部が形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の非耐力壁を構成するための壁パネルであって、
前記壁パネルの厚さ方向の一方側に配置され、木材を含む第1木質層と、
前記壁パネルの厚さ方向の他方側に配置され、木材を含む第2木質層と、
前記第1木質層と前記第2木質層との間に配置され、不燃材により形成されている不燃層と、を備え、
前記第1木質層及び前記第2木質層のうちの少なくとも一方は、少なくとも内部に難燃剤が含浸された難燃部が形成されている、
壁パネル。
【請求項2】
前記第1木質層は、前記建物の外側空間に面して配置されており、
前記第2木質層は、前記建物の内側空間に面して配置されており、
前記難燃部は、前記第2木質層の内部に形成されている、
請求項1に記載の壁パネル。
【請求項3】
前記第1木質層および前記第2木質層のそれぞれは、前記建物の内側空間に面して配置されており、
前記難燃部は、前記第1木質層および前記第2木質層のそれぞれの内部に形成されている、
請求項1に記載の壁パネル。
【請求項4】
前記第2木質層には、前記内側空間側の表面に開口を有する複数の凹部が形成されており、
前記難燃部は、少なくとも前記凹部の周囲に形成されている、
請求項2に記載の壁パネル。
【請求項5】
前記複数の凹部は、前記第2木質層の前記表面に、500~10000個/mの密度で形成されている、
請求項4に記載の壁パネル。
【請求項6】
前記第2木質層の厚みをt1、前記凹部の深さをd、とした場合に、
0.1<d/t1<0.7を満たす、
請求項4又は5に記載の壁パネル。
【請求項7】
前記凹部の前記開口は、前記第2木質層の繊維方向に沿って長手形状を有している、
請求項4又は5に記載の壁パネル。
【請求項8】
前記第1木質層には、前記外側空間側の表面に耐候性塗料が塗布されている、
請求項4又は5に記載の壁パネル。
【請求項9】
前記不燃層は、難燃性接着剤を介して、前記第2木質層の前記壁パネルの厚さ方向の一方側の表面とは反対側の裏面に接着されている、
請求項2から5の何れか一項に記載の壁パネル。
【請求項10】
前記壁パネルの厚みをT、前記不燃層の厚みをt2、とした場合に、
0.04<t2/T<0.30を満たす、
請求項2から5の何れか一項に記載の壁パネル。
【請求項11】
前記難燃剤は、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、リン・窒素系難燃剤、又はホウ酸系難燃剤である、
請求項2から5の何れか一項に記載の壁パネル。
【請求項12】
前記不燃層は、ケイカル板または石膏ボードを含む、
請求項2から5の何れか一項に記載の壁パネル。
【請求項13】
請求項5に記載の壁パネルの製造方法であって、
前記第2木質層の前記表面にインサイジング処理を施すインサイジング工程と、
前記インサイジング工程の後に、前記表面に前記難燃剤を塗布することにより、前記第2木質層の前記内部および前記表面に前記難燃部を形成する難燃部形成工程と、
前記難燃部形成工程の後に、前記第1木質層の裏面と前記第2木質層の裏面との間に前記不燃層を積層させる積層工程と、を備える、
壁パネルの製造方法。
【請求項14】
建物の非耐力壁を構成するための壁パネルであって、
前記壁パネルの厚さ方向の一方側に配置され、木材を含む第1木質層と、
前記壁パネルの厚さ方向の他方側に配置され、木材を含む第2木質層と、
前記第1木質層と前記第2木質層との間に配置され、不燃材により形成されている不燃層と、
前記第1木質層の表面および前記第2木質層の表面のうちの少なくとも一方に取り付けられ、不燃材により形成されている第2不燃層と、を備える、
壁パネル。
【請求項15】
請求項2に記載の壁パネルにより構成された外壁を備える、
建物。
【請求項16】
前記第1木質層と前記第2木質層との間に前記厚さ方向とは交差する方向に沿って前記不燃層と互いに並んで配置され、木材により形成されている中間挿入層をさらに備える、
請求項1に記載の壁パネル。
【請求項17】
前記第1木質層は、
一方のひき板と、
前記一方のひき板の側面に、前記側面の長手方向に沿って延びるように接着剤が塗布されることで形成される接着層と、
前記接着層を介して、前記一方のひき板に接着されている他方のひき板と、を含む、
請求項1に記載の壁パネル。
【請求項18】
前記第1木質層と前記不燃層との間に配置され、木材を含む第3木質層をさらに備える、
請求項2に記載の壁パネル。
【請求項19】
前記第1木質層の前記外側空間に面する表面、および前記第2木質層の前記内側空間に面する表面のそれぞれは、木裏である、
請求項2に記載の壁パネル。
【請求項20】
前記第1木質層は、前記建物の外側空間に面して配置されており、
前記第2不燃層は、前記第2木質層の前記表面に取り付けられる複数の第1板状部材と、前記第1板状部材よりも前記厚さ方向の前記第2木質層側とは反対側に位置する少なくとも1つの第2板状部材と、を含み、
前記少なくとも1つの第2板状部材は、前記少なくとも2つの第1板状部材のそれぞれと重なり合うように配置されている、
請求項14に記載の壁パネル。
【請求項21】
複数の前記第2板状部材のそれぞれは、共通の1つの前記第1板状部材と重なり合うように配置されている、
請求項20に記載の壁パネル。
【請求項22】
前記第1木質層および前記第2木質層のうちの少なくとも一方は、木毛セメント板または木片セメント板である、
請求項1から5の何れか一項に記載の壁パネル。
【請求項23】
前記第1木質層および前記第2木質層のうちの少なくとも一方は、木毛セメント板または木片セメント板である、
請求項14に記載の壁パネル。
【請求項24】
前記中間挿入層は、前記厚さ方向から視認した際に前記不燃層の周囲全体を囲っている、
請求項16に記載の壁パネル。
【請求項25】
請求項1に記載の壁パネルの製造方法であって、
前記第1木質層の表面に粗面処理を施す粗面形成工程と、
前記粗面形成工程の後に、前記粗面処理が施された前記第1木質層の前記表面に前記難燃剤を塗布することにより、前記第1木質層の前記内部および前記表面に前記難燃部を形成する難燃部形成工程と、を備える、
壁パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建物の非耐力壁を構成するための壁パネル、壁パネルの製造方法、及び建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、木質の壁は、耐火性を向上させるために様々な工夫がなされている。例えば、特許文献1には、長期荷重を支持するに足り木材からなる荷重支持層と、荷重支持層の外周に配置される燃え止まり層と、燃え止まり層の外周に配置され木材からなる燃えしろ層と、を備える木質構造材が開示されている。また、特許文献2には、荷重を受ける構造部と、構造部の周囲を被覆する被覆部と、構造部と被覆部との間に層状に介在する絶縁部と、を備える木質建築部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-036457号公報
【特許文献2】特開2007-046286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、壁は、建物の構造体の一部として耐力を負担しないと考えられる非耐力壁を含むことがある。しかしながら、特許文献1及び特許文献2のそれぞれに開示されている技術は、耐力を負担すると考えられるもの(構造部材)を対象としており、非耐力壁を対象とするものではない。また、非耐力壁は、建物として要求される構造性能や耐火性能などが耐力壁とは異なっている。このため、非耐力壁に耐力壁と同等の耐火性能を付加するのは経済的に不合理である。
【0005】
本開示は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、木質の非耐力壁の耐火性を向上させることができる壁パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係る壁パネルは、建物の非耐力壁を構成するための壁パネルであって、前記壁パネルの厚さ方向の一方側に配置され、木材を含む第1木質層と、前記壁パネルの厚さ方向の他方側に配置され、木材を含む第2木質層と、前記第1木質層と前記第2木質層との間に配置され、不燃材により形成されている不燃層と、を備え、前記第1木質層及び前記第2木質層のうちの少なくとも一方は、少なくとも内部に難燃剤が含浸された難燃部が形成されている。
【0007】
上記目的を達成するため、本開示に係る壁パネルは、建物の非耐力壁を構成するための壁パネルであって、前記壁パネルの厚さ方向の一方側に配置され、木材を含む第1木質層と、前記壁パネルの厚さ方向の他方側に配置され、木材を含む第2木質層と、前記第1木質層と前記第2木質層との間に配置され、不燃材により形成されている不燃層と、前記第1木質層の表面および第2木質層の表面のうちの少なくとも一方に取り付けられ、不燃材により形成されている第2不燃層と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の壁パネルによれば、木質の非耐力壁の耐火性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る壁パネルにより構成された第1の外壁を備える建物の構成を概略的に示す図である。
図2】一実施形態に係る壁パネルの構成を概略的に示す図である。
図3】一実施形態に係る内層の構成を概略的に示す図である。
図4】一実施形態に係る凹部の構成を説明するための拡大図である。
図5A】幾つかの実施形態に係る難燃部のレイアウトを示す図である。
図5B】幾つかの実施形態に係る難燃部のレイアウトを示す図である。
図5C】幾つかの実施形態に係る難燃部のレイアウトを示す図である。
図6】一実施形態の第1変形例に係る壁パネルの構成を概略的に示す図である。
図7】幾つかの実施形態に係る中間挿入層の構成を概略的に示す図である。
図8】一実施形態の第2変形例に係る壁パネルの構成を概略的に示す図である。
図9】一実施形態の第3変形例に係る壁パネルの構成を概略的に示す図である。
図10A】一実施形態に係る壁パネルの製造方法のフローチャートである。
図10B】別の一実施形態に係る壁パネルの製造方法のフローチャートである。
図10C】さらに別の一実施形態に係る壁パネルの製造方法のフローチャートである。
図11】別の一実施形態に係る壁パネルの構成を概略的に示す図である。
図12】別の一実施形態の変形例に係る壁パネルの構成を概略的に示す図である。
図13】第2不燃層の構成の一例を説明するための図である。
図14】さらに別の一実施形態に係る壁パネルの構成を概略的に示す図である。
図15A】幾つかの実施形態に係る壁パネルの構成を概略的に示す図である。
図15B】幾つかの実施形態に係る壁パネルの構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態による壁パネル、壁パネルの製造方法、及び建物について、図面に基づいて説明する。かかる実施の形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0011】
<建物>
図1は、一実施形態に係る壁パネル1により構成された第1の外壁100Aを備える建物200の構成を概略的に示す図である。図1に例示する形態では、建物200は、外壁100と、屋根102と、上下方向D1に沿って互いに間隔を空けて並べられた複数の床104と、を含んでいる。具体的には、建物200は、地面G上に建てられた8階建ての建物である。尚、建物200の建物構造は、特に限定されず、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、または鉄骨鉄筋コンクリート造等の任意の建物構造が適用される。
【0012】
建物200は、外壁100及び屋根102によって囲われることで内部に内側空間201が形成されている。外壁100は、建物200の内側空間201に面する内壁面106、及び建物200の外側空間203に面する外壁面108を含んでいる。
【0013】
図1に例示する形態では、建物200は、第1の外壁100A(100)と、第2の外壁100B(100)と、を含む。第1の外壁100Aは、建物200の壁のうち建物200の構造体の一部として耐力を負担しない(構造設計上有効とされない)と考えられる非耐力壁である。第1の外壁100Aは、後述する1つの壁パネル1によって構成されてもよいし、複数の壁パネル1を互いに接続させることで構成されてもよい。
【0014】
第2の外壁100Bは、建物200の壁のうち建物200の構造体の一部として耐力を負担すると考えられる耐力壁であり、地震などによる水平力、及び建物200の自重などによる鉛直力のそれぞれに対抗する。第2の外壁100Bは、梁112を介して屋根102や床104に接続されていてもよいし、梁112を介することなく屋根102や床104に接続されていてもよい。
【0015】
図1に例示する形態では、建物200は、内側空間201を仕切り、且つ非耐力壁である内壁110(間仕切壁)をさらに含んでいる。尚、建物200は、内側空間201を仕切り、且つ耐力壁である内壁(間仕切壁)を含んでもよい。
【0016】
<壁パネル>
(構成)
一実施形態に係る壁パネル1の構成について説明する。図2は、一実施形態に係る壁パネル1の構成を概略的に示す図である。壁パネル1は、上述したように建物200の非耐力壁(第1の外壁100A)を構成する。このような壁パネル1は、図2に示すように、第1木質層(外層2)と、第2木質層(内層4)と、不燃層6と、を含む。
【0017】
外層2は、壁パネル1の厚さ方向D2の一方側(外側空間203側)に配置されている。具体的には、外層2は、建物200の外側空間203に面して配置されている。この外層2は、木材Wを含む。具体的には、外層2は、板形状を有するように、ひき板のような板状の木材Wを木材Wの繊維方向が直交するように積層した木質材料、いわゆるCLT(CLT:Cross Laminated Timber)で形成されている。幾つかの実施形態では、外層2は、合板またはLVL(Laminated Veneer Lumber)を含む。幾つかの実施形態では、外層2は、板形状を有するように、長尺の複数の木材Wを小端立てにして、木材Wの短手方向に沿って互いに積層される木質材料、いわゆるNLT(NLT:Nail Laminated Timber)で形成されている。
【0018】
一実施形態では、図2に例示するように、外層2には、外側空間203側の表面8に耐候性塗料10が塗布されている。耐候性塗料10は、特に限定されないが、例えば、シリコン樹脂を含む塗料である。幾つかの実施形態では、耐候性塗料10は、例えば、木守り専科(登録商標)、ノンロット(登録商標)、キシラデコール(登録商標)、もくぬーる(登録商標)、ランバーメイト(登録商標)、オスモカラー(商品名、オスモ&エーデル株式会社製)、S-100(商品名、住友林業株式会社製)、サドンシリーズ(商品名、玄々化学工業株式会社製)、eLFシリーズ(商品名、玄々化学工業株式会社製)、ニューブリード(商品名、和信化学工業株式会社製)、クラックノン(商品名、フジモト化成製)、NEWヒビノンF(商品名、フジモト化成製)、ウッド・ストッパー(商品名、フジモト化成製)、ノットバーン(商品名、サワダケミカル社製)およびTY-29(株式会社オーシカ製)のうちの何れかである。耐候性塗料10は、外層2を形成する木材Wを視認可能であるように透明性を有している。本開示において、外層2の表面8は外側空間203に向いており、外層2の裏面20は不燃層6に向いている。不図示であるが、幾つかの実施形態では、外層2は、耐候性塗料10に代えて、または耐候性塗料10とともに、表面8に金属板(例えば、ガルバリウム鋼板(登録商標))が取り付けられている。尚、耐候性塗料10は、透明性を有するものに限定されず、カラー塗料であってもよい。耐候性塗料10は、不燃性を有する不燃塗料であってもよいし、不燃性を有する不燃塗料が添加されてもよい。
【0019】
内層4は、壁パネル1の厚さ方向D2の他方側(内側空間201側)に配置されている。具体的には、内層4は、建物200の内側空間201に面して配置されている。この内層4は、木材Wを含む。具体的には、外層2と同様に、内層4は、板形状を有するように、CLTで形成されている。一実施形態では、内層4の繊維方向D3は、上下方向D1に沿って延びている。つまり、内層4を形成する木材Wのうち内側空間201に面するように配置された木材Wの繊維方向が上下方向D1に沿って延びている。幾つかの実施形態では、内層4は、合板、LVL、またはNLTで形成されている。尚、外層2と内層4とは、互いに同じ樹種の木材Wにより形成されてもよいし、互いに異なる樹種の木材Wにより形成されてもよい。幾つかの実施形態では、外層2および内層4のうちの少なくとも一方は、オウシュウアカマツによって形成されている。本開示において、内層4の表面14は内側空間201に向いており、内層4の裏面16は不燃層6に向いている。一実施形態では、外層2の表面8および内層4の表面14のそれぞれは、木裏である。
【0020】
不燃層6は、厚さ方向D2において外層2と内層4との間に配置されている。この不燃層6は、不燃材Mにより形成されており、例えば、石膏を主成分として形成された石膏ボードである。一実施形態では、不燃層6は、難燃性接着剤12を介して、内層4の内側空間201側(厚さ方向D2の他方側)の表面14とは反対側の裏面16に接着されている。さらに、不燃層6は、難燃性接着剤12を介して、外層2の表面8とは反対側の裏面20に接着されている。難燃性接着剤12は、例えば、レゾルシノール樹脂系接着剤、又は水性高分子イソシアネート系接着剤である。一実施形態では、壁パネル1の厚みをT、不燃層6の厚みをt2とした場合に、0.04<t2/T<0.30を満たす。好ましくは、0.05<t2/T<0.20を満たす。幾つかの実施形態では、不燃層6は、レゾルシノール樹脂系接着剤や高分子イソシアネート系のような接着剤を介して、内層4の裏面16および外層2の裏面20のうちの少なくとも一方と接着されている。
【0021】
尚、不燃層6は、石膏ボードに限定されない。幾つかの実施形態では、不燃層6は、石灰とケイ石を主原料とするケイ酸カルシウム板(ケイカル板)である。幾つかの実施形態では、不燃層6は、後述する木毛セメント板または木片セメント板である。この場合、壁パネル1は、第1木質層(外層2)と、第2木質層(内層4)と、第1木質層と第2木質層との間に配置され、木材Wおよびセメント(不燃材M)により形成されている不燃層6と、を備える。そして、第1木質層及び第2木質層のうちの少なくとも一方は、少なくとも内部に難燃剤Xが含浸された難燃部30が形成されている。
【0022】
図2に示すように、本開示に係る内層4は、内部に難燃剤Xが含浸された難燃部30が形成されている。難燃剤Xは、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、リン・窒素系難燃剤、又はホウ酸系難燃剤である。一実施形態では、難燃部30は、内層4の内側空間201側に位置している。一実施形態では、内層4は、表面14にも難燃部30が形成されている。不図示であるが、幾つかの実施形態では、内層4の表面14には、難燃剤Xによって形成される難燃膜が設けられている。
【0023】
図3は、一実施形態に係る内層4の構成を概略的に示す図であって、建物200の内側空間201側から視ている。一実施形態では、図3に示すように、内層4には、内側空間201側の表面14に開口22を有する複数の凹部24が形成されている。複数の凹部24は、内層4の表面14に、500~10000個/mの密度で形成されている。好ましくは、複数の凹部24は、内層4の表面14に、1000~5000個/mの密度で形成されている。凹部24の開口22は、矩形状を有しており、内層4の繊維方向D3に沿って長手形状を有している。尚、本開示は、凹部24の開口22を矩形状に限定するものではない。幾つかの実施形態では、凹部24の開口22は、楕円形のようなオーバル形状を有している。幾つかの実施形態では、凹部24の開口22は、内層4の繊維方向D3と直交する方向(左右方向D4)に沿って長手形状を有している。
【0024】
一実施形態では、図3に示すように、複数の凹部24は、第1の凹部24A(24)と、上下方向D1において第1の凹部24Aと隣接する第2の凹部24B(24)と、を含む。図3の紙面において上下方向D1と直交する方向を左右方向D4とすると、第1の凹部24Aと第2の凹部24Bとは左右方向D4において互いにずれている(重なり合わない)。幾つかの実施形態では、第1の凹部24Aと第2の凹部24Bは、左右方向D4において少なくとも一部が互いに重なり合っている。
【0025】
一実施形態では、図3に示すように、複数の凹部24は、左右方向D4に沿って互いに間隔を空けて配置され、且つ、上下方向D1において互いに重なり合う複数の第1の凹部24Aを含む。同様に、複数の凹部24は、左右方向D4に沿って互いに間隔を空けて配置され、且つ、上下方向D1において互いに重なり合う複数の第2の凹部24Bを含む。複数の第1の凹部24Aと複数の第2の凹部24Bとは、上下方向D1において互いにずれている。このように、一実施形態では、複数の凹部24が、内層4の表面14の全体に亘って配置されている。
【0026】
図4は、一実施形態に係る凹部24の構成を説明するための拡大図であって、内層4の一部を内層4の上下方向D1に沿って切断した断面図である。一実施形態では、図4に示すように、難燃部30は、少なくとも凹部24の周囲に形成されている。難燃部30は、凹部24の表面にも形成されている。内層4の厚みをt1、凹部24の深さをdとした場合に、0.1<d/t1<0.7を満たす。
【0027】
(作用・効果)
一実施形態に係る壁パネル1の作用・効果について説明する。一実施形態によれば、壁パネル1は、外層2と内層4との間に配置される不燃層6を備え、且つ、内層4の内部及び表面14には難燃部30が形成されている。このため、木質の非耐力壁である第1の外壁100Aの耐火性を向上させることができる。
【0028】
一実施形態によれば、壁パネル1は建物200の非耐力壁を構成するので、建物200の耐力壁を構成する場合とは異なり、構造設計上の規制を受けることなく不燃層6を薄くすることができる。そして、内層4の内部には難燃部30が形成されているので、難燃部30の形成によって第1の外壁100Aの耐火性を向上させた分だけ不燃層6を薄くし、第1の外壁100Aを薄くしたり、軽量化したりすることができる。
【0029】
一実施形態によれば、難燃部30は、不燃層6よりも建物200の内側空間201側に位置している。このため、建物200の内側空間201内で火災が発生した際に、難燃部30及び不燃層6の順で火災の影響を受けるので、第1の外壁100Aの所定の耐火性能(例えば、火災が発生した際に30分以内に焼失しない)の達成が容易となる。また、外層2が建物200の外側空間203に面し、内層4が建物200の内側空間201に面している。つまり、両面に木材Wを視認可能な(木材Wを表しにする)第1の外壁100Aの耐火性を向上させることができる。
【0030】
一実施形態によれば、内層4の表面14に複数の凹部24を形成することで、内層4を形成する木材Wの組織が破壊されている。このため、内層4の表面14から内部への難燃剤Xの含浸を促進させ、難燃部30の形成が速やかに行われる。よって、壁パネル1の生産性を高めることができる。
【0031】
内層4の表面14に凹部24が形成されることで、内層4の表面14から内部への難燃剤Xの含浸を促進可能であるものの、凹部24が多すぎると壁パネル1の製造コストが却って高くなる虞がある。一実施形態によれば、複数の凹部24が500~10000個/mの密度を満たすので、壁パネル1の製造コストの上昇を抑制しつつ、壁パネル1の生産性を高めることができる。
【0032】
従来、木材Wの内部に難燃剤Xを含浸させる方法として、注薬缶内に投入された木材Wに難燃剤Xを加圧注入する方法がある。しかしながら、加圧注入する方法を適用する場合、例えば、木材に対して減圧・加圧を行うための注薬缶のような大型の設備が必要になってしまう。これに対して、本実施例では、複数の凹部24が形成されている(インサイジング処理が施されている)内層4の表面14に難燃剤Xを塗布することで、加圧注入することなく難燃部30を含む内層4を製造できるようにした。このため、一実施形態によれば、内層4の表面14には500~10000個/mの密度を満たす複数の凹部24が形成されている(インサイジング処理が施されている)ので、減圧・加圧のための大型の設備が不要となり、設備の小型化を図ることができる。
【0033】
また、難燃剤Xを木材Wの内部に加圧注入する場合には、加圧注入にかかる時間に加え、薬液注入後に木材Wの長時間の乾燥時間が必要となり、難燃部30を含む内層4の製造期間が長くなってしまう。これに対して、インサイジング処理を行う一実施形態によれば、複数の凹部24を形成し、そこに難燃剤Xを塗布することによって内層4が製造される。そして、複数の凹部24の存在により、乾燥時間も大幅に短縮できるため、内層4の製造期間を短くすることができる。
【0034】
一実施形態によれば、d/t1<0.7とすることで、内層4の強度や内層4の木材Wの表し(第1の外壁100Aの内壁面106の意匠)に対する凹部24による内層4への影響を抑制できる。また、0.1<d/t1とすることで、内層4の表面14から内部への難燃剤Xの含浸を促進させることができる。
【0035】
木材Wにより形成されている内層4は、内層4の繊維方向D3に沿って長手形状を有していることが多い。一実施形態によれば、凹部24の開口22が内層4の繊維方向D3に沿って長手形状を有しているので、内層4の繊維方向D3および凹部24の開口22の長手方向を互いに揃えることで、内層4への凹部24の形成を容易化することができる。例えば、内層4に凹部24を形成する際に、回転する一対の破砕刃の間に内層4を通過させる回数を抑制することができる。
【0036】
一実施形態によれば、難燃剤Xは、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、リン・窒素系難燃剤、又はホウ酸系難燃剤を含むので、火災が発生した際に、内層4を形成する木材Wの熱分解を遅らせることができる。難燃剤Xがリン・窒素系難燃剤である場合を例にして具体的に説明すると、火災が発生した際に、内層4の木材Wの熱分解前に、リン成分が炭化層を形成する。さらに、窒素成分が発泡し、可燃性ガスを希釈し、炭化層を膨張させる。このため、難燃部30よりも外側空間203側に位置する壁パネル1の部材(外層2や不燃層6)を保護可能な第1の外壁100A(非耐力壁)を提供することができる。
【0037】
一実施形態によれば、内層4の内部及び表面14に難燃部30が形成されているので、不燃層6(石膏ボード)を薄くすることができる。このため、0.04<t2/T<0.30を満たす壁パネル1を提供することができる。
【0038】
尚、一実施形態では、図2に例示して説明したように、難燃部30は、内層4の内側空間201側(内層4の内部及び表面14)に位置していたが、本開示は、この形態に限定されない。難燃部30は、内層4の少なくとも内部に形成されていればよい。図5A図5Cのそれぞれは、幾つかの実施形態に係る難燃部30のレイアウトを示す図である。図5Aに例示する形態では、難燃部30は、内層4の内部の全体に形成されている。図5Bに例示する形態では、難燃部30は、内層4の周縁に沿って延びている。そして、内層4は、難燃部30によって囲われ、難燃剤Xが非含浸である非難燃部40を含む。図5Cに例示する形態では、難燃部30は、内層4の表面14よりも建物200の内側空間201側とは反対側(不燃層6側)に位置している。
【0039】
一実施形態によれば、不燃層6は、難燃性接着剤12を介して、内層4の裏面16及び外層2の裏面20のそれぞれに接着されている。このため、不燃層6に外層2及び内層4の両方を接着させるとともに、第1の外壁100Aの耐火性を高めることができる。一実施形態によれば、不燃層6は石膏ボードを含むので、壁パネル1の製造コストを抑制しつつ、第1の外壁100Aの耐火性を高めることができる。一実施形態によれば、外層2の表面8には耐候性塗料10が塗布されているので、天候による外層2の損傷を抑制することができる。
【0040】
外層2は、外層2の表面8が木表である場合、不燃層6の上下方向D1の中央部分を押圧し、且つ不燃層6の上下方向D1の両端部分から離間するように反る。同様に、内層4も、内層4の表面14が木表である場合、不燃層6の上下方向D1の中央部分を押圧するように反る。このため、不燃層6は、外層2および内層4のそれぞれが反ることによって(不燃層6の上下方向D1の中央部分が押圧されたり、不燃層6の上下方向D1の両端部分が引っ張られたりすることによって)ひび割れなどの損傷が発生する虞がある。これに対して、一実施形態によれば、外層2の表面8および内層4の表面14のそれぞれが木裏であるので、外層2の表面8および内層4の表面14のそれぞれを木裏とする場合と比較して、不燃層6の損傷を抑制することができる。
【0041】
尚、一実施形態では、外層2(第1木質層)および内層4(第2木質層)のそれぞれは、CLTにより形成されていたが、木材Wおよびセメントにより形成される木質セメント板であってもよい。幾つかの実施形態では、外層2(第1木質層)は、木毛セメント板または木片セメント板である。幾つかの実施形態では、内層4(第2木質層)は、木毛セメント板または木片セメント板である。木毛セメント板は、木材Wを細長いリボン状に切り出した木毛とセメントとが混合されている板状の材料である。木片セメント板は、木材Wを薄片にした木片とセメントとが混合されている板状の材料である。このような構成によれば、外層2および内層4のうちの少なくとも一方にはセメントが含有されるので、木質の非耐力壁の耐火性を向上させることができる。
【0042】
図6は、一実施形態の第1変形例に係る壁パネル1の構成を概略的に示す図である。図6に例示するように、壁パネル1は、外層2と内層4との間に上下方向D1に沿って不燃層6と互いに並んで配置され、木材W(例えば、スギ)により形成されている中間挿入層50をさらに含む。図6に例示する形態では、中間挿入層50は、不燃層6よりも上方に位置しており、上面が壁パネル1の外部に面している。つまり、中間挿入層50は、壁パネル1の上端部を構成している。中間挿入層50は、不燃層6の厚みt2と同程度の厚みを有している。中間挿入層50は、不燃層6と比較して上下方向D1の長さが短い。中間挿入層50は、外層2および内層4のそれぞれと接着している。中間挿入層50は、難燃性接着剤12を介して、外層2の裏面20および内層の裏面16のそれぞれに接着されている。
【0043】
尚、本開示は、中間挿入層50の構成を、図6に例示する形態に限定するものではない。中間挿入層50は、不燃層6よりも下方に位置していてもよいし、壁パネル1の上端と下端との間に位置していてもよい。幾つかの実施形態では、壁パネル1は、外層2と内層4との間に左右方向D4に沿って不燃層6と互いに並んで配置され、木材Wにより形成されている中間挿入層50をさらに含む。図7は、幾つかの実施形態に係る中間挿入層50の構成を概略的に示す図であって、中間挿入層50を厚さ方向D2から視認している。図7に例示するように、中間挿入層50は、不燃層6の周囲全体を囲っている。このような構成によれば、雨水などが不燃層に到達することを抑制し、不燃層6の濡れによる木質の非耐力壁の強度低下を抑制できる。
【0044】
図6に例示する形態では、外層2は、一方のひき板52と、接着層54と、他方のひき板56と、を含む。接着層54は、一方のひき板52の上面57に上面57の長手方向に沿って延びるように接着剤が塗布されることで形成される。より具体的には、接着層54は、接着剤が一方のひき板52の上面57に左右方向D4の全体に沿って線状(リード状に線接着するように)に塗布されることで形成される。接着層54は、一方のひき板52の上面57の全体に亘って形成されてもよいし、一方のひき板52の上面57の厚さ方向D2の一部に形成されてもよい。他方のひき板56は、接着層54を介して、一方のひき板52に接着されている。他方のひき板56の下面58が接着層54に接触している。
【0045】
図6に例示する形態によれば、中間挿入層50が設けられることで、中間挿入層50に外層2および内層4のそれぞれを接着させ、外層2と内層4とを一体化させることができる。さらに、中間挿入層50は、木材Wにより形成されているので、不燃材Mにより形成されている場合と比較して、外層2および内層4への接着性を高め、外層2と内層4とをより一体化させることができる。壁パネル1が一体化された状態であると、壁パネル1の寸法安定度を向上させたり、壁パネル1の強度を向上させたりすることができる。例えば、壁パネル1に厚さ方向D2の外力が作用した際に、不燃層6よりも先に中間挿入層50を変形させて、不燃層6の損傷を抑制することができる。また、図6に例示する形態によれば、接着層54が形成されることで、一方のひき板52と他方のひき板56との間の隙間から雨水のような液体が侵入することを防止できる。
【0046】
図8は、一実施形態の第2変形例に係る壁パネル1の構成を概略的に示す図である。図8に例示するように、壁パネル1は、外層2と不燃層6との間に配置される第3木質層60をさらに含む。第3木質層60は、木材Wを含む。具体的には、外層2および内層4のそれぞれと同様に、第3木質層60は、板形状を有するように、CLTで形成されている。一実施形態では、外層2、内層4、および第3木質層60は、厚さ方向D2の大きさが互いに同じであり、例えば20mmである。幾つかの実施形態では、第3木質層60は、ひき板、集成材又はNLTで形成されている。尚、第3木質層60を形成する樹種は、特に限定されず、例えば、スギやオウシュウアカマツである。不図示であるが、幾つかの実施形態では、壁パネル1は、内層4と不燃層6との間に配置される第4木質層をさらに含む。
【0047】
図8に例示する構成によれば、壁パネル1の外側空間203側を外層2と第3木質層60の2層とすることで、耐候性を向上させることができる。尚、外層2および第3木質層60のそれぞれは、NLTで形成されている場合には、外層2の繊維方向および第3木質層60の繊維方向が互いに直交するように配置されることで、壁パネル1の寸法安定性を高めることができる。
【0048】
図9は、一実施形態の第3変形例に係る壁パネルの構成を概略的に示す図である。図9に例示するように、壁パネル1は、外層2と内層4との間に厚さ方向D2の一方側から順に第3木質層60、第1の不燃層6A(6)および第2の不燃層6B(6)が配置されている。第3変形例では、第3木質層60は、木毛セメント板または木片セメント板であり、NLTのような木材Wで形成される場合と比較して非常に高い耐火性を有し、且つ石膏のような不燃材Mで形成される場合と比較して製造コストが安い。つまり、図9に例示する構成によれば、木質の非耐力壁の製造コストの抑制と耐火性の向上の両方を図ることができる。
【0049】
(製造方法)
図10Aは、一実施形態に係る壁パネル1の製造方法のフローチャートである。図10Aに示すように、一実施形態に係る壁パネル1の製造方法は、インサイジング工程S1と、難燃部形成工程S2と、積層工程S3と、を含む。
【0050】
インサイジング工程S1では、内層4の表面14にインサイジング処理を施す。具体的には、内層4の表面14に1000~5000個/mの密度を満たす複数の凹部24を形成する。複数の凹部24を形成する方法は特に限定されず、任意のインサイジング処理装置が適用される。例えば、インサイジング処理装置は、回転軸と、この回転軸の外周に設けられる破砕刃と、を有している。そして、回転する破砕刃に内層4の表面14を当接させることで、複数の凹部24が形成される。
【0051】
難燃部形成工程S2では、インサイジング工程S1の後に、内層4の表面14に難燃剤Xを塗布することにより、内層4の内部および表面に難燃部30を形成する。
【0052】
積層工程S3では、難燃部形成工程S2の後に、外層2の裏面20と内層4の裏面16との間に不燃層6を積層させる。幾つかの実施形態では、壁パネル1の製造方法は、積層工程S3の直前に、外層2の裏面20及び内層4の裏面16のそれぞれに難燃性接着剤12を塗布する接着剤塗布工程をさらに含む。
【0053】
上述したように、本発明者らによれば、インサイジング処理が施されている内層4の表面14に難燃剤Xを塗布することで、加圧注入することなく難燃部30を含む内層4を製造できることを見出した。図10Aに例示する方法によれば、インサイジング工程S1の後に難燃部形成工程S2が実施されるので、従来からの加圧注入する方法を適用する場合と比較して、注薬缶のような大型の設備が不要となり、設備が小型化され、壁パネル1の生産性を高めることができる。
【0054】
尚、本開示における壁パネル1の製造方法は、インサイジング工程S1を必須としない。幾つかの実施形態では、壁パネル1の製造方法は、内層4の表面14に難燃剤Xを塗布することにより、内層4の内部および表面14に難燃部30を形成する難燃部形成工程S2と、難燃部形成工程S2の後に、外層2の裏面20と内層4の裏面16との間に不燃層6を積層させる積層工程S3と、を含む。つまり、幾つかの実施形態では、内層4は、インサイジング処理を行わずに難燃剤Xが塗布されることによって製造される。
【0055】
図10Bは、別の一実施形態に係る壁パネル1の製造方法のフローチャートである。図10Bに示すように、別の一実施形態に係る壁パネル1の製造方法は、インサイジング工程S1、積層工程S3、および難燃部形成工程S2の順に実行される。
【0056】
図10Cは、さらに別の一実施形態に係る壁パネル1の製造方法のフローチャートである。図10Cに示すように、さらに別の一実施形態に係る壁パネル1の製造方法は、粗面形成工程S4と、難燃部形成工程S5と、を備える。
【0057】
粗面形成工程S4では、内層4の表面14に粗面処理を施す。粗面処理は、例えば、内層4の表面14に対してワイヤー・ブラシで表面加工する事により毛羽立った粗面仕上げとすることである。そして、粗面形成工程S4の後に、難燃部形成工程S5では、粗面処理が施された内層4の表面14に難燃剤Xを塗布することにより、内層4の内部および表面14に難燃部30を形成する。図10Cに例示する形態では、難燃部形成工程S5の後に積層工程S6が実行される。積層工程S6では、外層2の裏面20と内層4の裏面16との間に不燃層6を積層させる。尚、粗面形成工程S4は、実行前に内層4の表面14が毛羽立った粗面となっている場合には、スキップされてもよい。
【0058】
以上、本発明の一実施形態にかかる壁パネル1、及び壁パネル1の製造方法について説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。
【0059】
図11は、別の一実施形態に係る壁パネル1Aの構成を概略的に示す図である。図11に例示する形態では、壁パネル1Aは、図2を参照して説明した壁パネル1の難燃部30に代わり、第2不燃層120を備えている。図11に例示する形態において、上述した一実施形態の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0060】
図11に例示する形態では、第2不燃層120は、内層4の表面14に取り付けられている。第2不燃層120は、内層4の表面14の全体を覆っている。第2不燃層120は、不燃材Mにより形成されており、例えば、石膏を主成分として形成された石膏ボードであってもよいし、不燃性シートであってもよい。第2不燃層120は、不燃層6と同じ不燃材Mによって形成されてもよいし、不燃層6とは異なる不燃材Mによって形成されてもよい。第1木質層(外層2)は、NLTで形成されてもよいし、木毛セメント板または木片セメント板であってもよい。第2木質層(内層4)は、NLTで形成されてもよいし、木毛セメント板または木片セメント板であってもよい。
【0061】
図11に例示する構成によれば、壁パネル1Aは、外層2と内層4との間に配置される不燃層6に加え、内層4の表面14に取り付けられる第2不燃層120を備える。このため、木造の非耐力壁である第1の外壁100Aの耐火性を向上させることができる。
【0062】
図12は、別の一実施形態の変形例に係る壁パネル1Aの構成を概略的に示す図である。図12に例示する形態では、第2不燃層120は、内層4の表面14に取り付けられる複数の第1板状部材122と、第1板状部材122よりも厚さ方向D2の内層4側とは反対側に位置する第2板状部材124と、を含んでいる。複数の第1板状部材122は、下方の第1板状部材122と、下方の第1板状部材122よりも上方に配置される上方の第1板状部材122と、を含んでいる。第2板状部材124は、上下方向D1において、下方の第1板状部材122および上方の第1板状部材122の両方と互いに重なり合うように配置されている。第2板状部材124の内側空間201側の表面は、ビニールクロスが貼り付けられてもよいし、塗料で塗装されてもよい。不図示であるが、幾つかの実施形態では、第2不燃層120は、外層2の表面14に取り付けられている。
【0063】
図12に例示する構成によれば、壁パネル1Aは、内層4の表面14に取り付けられる第2不燃層120を備える。このため、木質の非耐力壁の耐火性を向上させることができる。また、図12に例示する構成によれば、下方の第1板状部材122および上方の第1板状部材122のそれぞれは、第2板状部材124を介して互いに接続されている状態になるので、第2不燃層120を自立させることができる。特に、壁パネル1Aのうち第2不燃層120よりも不燃層6側の部分が火災で損傷したとしても、第2不燃層120を自立させることができる。
【0064】
図13は、第2不燃層120の構成の一例を説明するための図であって、第2不燃層120を内側空間201側から視ている。図13に例示する形態では、第2不燃層120は、6つの第1板状部材122と、2つの第2板状部材124と、を含んでいる。6つの第1板状部材122のそれぞれは、上下方向D1において2段となるように配置されている。6つの第1板状部材122の下段側には、左右方向D4に沿って並べられる第1板状部材122A、122B、122Cが含まれている。この3つの第1板状部材122A、122B、122Cのそれぞれは、上下方向D1において、互いに同じ位置となるように配置されている。6つの第1板状部材122の上段側には、左右方向D4に沿って並べられる第1板状部材122D、122E、122Fが含まれている。この3つの第1板状部材122D、122E、122Fのそれぞれは、上下方向D1において、互いに同じ位置となるように配置されている。
【0065】
第1板状部材122Aおよび第1板状部材122Dのそれぞれは、左右方向D4において、互いに同じ位置となるように配置されている。第1板状部材122Bおよび第1板状部材122Eのそれぞれは、左右方向D4において、互いに同じ位置となるように配置されている。第1板状部材122Cおよび第1板状部材122Fのそれぞれは、左右方向D4において、互いに同じ位置となるように配置されている。
【0066】
2つの第2板状部材124は、左右方向D4に沿って並べられる左方の第2板状部材124A(124)と、第2板状部材124Aよりも左右方向D4の右側に配置される右方の第2板状部材124B(124)と、を含む。尚、左右方向D4の右側とは、図13の紙面における右側を指す。左方の第2板状部材124Aおよび右方の第2板状部材124Bのそれぞれは、共通の1つの第1板状部材122と重なり合うように配置されている。図13に例示する形態では、共通の1つの第1板状部材122は、第1板状部材122Bおよび第1板状部材122Eの両方である。幾つかの実施形態では、複数の第1板状部材122および複数の第2板状部材124のそれぞれは、厚さ方向D2から視た場合に、千鳥状に配置されている。尚、図13に例示する形態では、少なくとも1つの第2板状部材124は複数の第1板状部材122の一部を覆っているが、少なくとも1つの第2板状部材124は複数の第1板状部材122の全体を覆っていてもよい。
【0067】
ところで、壁パネル1、1Aは、第1の外壁100A(非耐力壁)を構成していたが、本開示はこの形態に限定されない。さらに別の一実施形態では、壁パネル1Bは、建物200の非耐力壁である内壁110を構成する。図14は、さらに別の一実施形態に係る壁パネル1Bの構成を概略的に示す図である。図14に例示する形態において、上述した一実施形態の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0068】
図14に例示する形態では、厚さ方向D2の一方側に配置される第1木質層(一方側内層130)および厚さ方向D2の他方側に配置される第2木質層(他方側内層132)のそれぞれは、建物200の内側空間201に面して配置されている。一方側内層130および他方側内層132のそれぞれは、木材Wにより形成されている。そして、難燃部30は、一方側内層130および他方側内層132のそれぞれの内部に形成されている。尚、不図示であるが、壁パネル1Bは、難燃部30に代わり、一方側内層130の表面131および他方側内層132の表面133のそれぞれに取り付けられる第2不燃層120を備えてもよい。
【0069】
図14に例示する構成によれば、難燃部30は、不燃層6よりも建物200の内側空間201側に位置することになるので、建物200の内側空間201内で火災が発生した際に、難燃部30及び不燃層6の順で火災の影響を受けるので、内壁110の所定の耐火性能(例えば、火災が発生した際に30分以内に焼失しない)の達成が容易となる。また、両面に木材Wを視認可能な(木材を表しにする)内壁110の耐火性を向上させることができる。
【0070】
図15Aおよび図15Bのそれぞれは、幾つかの実施形態に係る壁パネル1Cの構成を概略的に示す図である。図15Aおよび図15Bのそれぞれに例示する形態において、上述した一実施形態の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0071】
図15Aおよび図15Bのそれぞれに例示する形態では、壁パネル1Cは、外層2と不燃層6との間に配置される第3木質層60および内層4と不燃層6との間に配置される第4木質層70を含んでおり、5層構造となっている。第3木質層60および第4木質層70のそれぞれは、NLTで形成されてもよいし、木毛セメント板または木片セメント板で形成されてもよい。
【0072】
図15Aに例示する形態では、外層2は内部に難燃剤Xが含侵された第1の難燃部30A(30)が形成され、内層4は内部に難燃剤Xが含侵された第2の難燃部30B(30)が形成されている。第1の難燃部30Aは、外層2の内側空間201側に位置している。第2の難燃部30Bは、内層4の外側空間203側に位置している。
【0073】
図15Bに例示する形態では、内層4は内部に難燃剤Xが含侵された第1の難燃部30A(30)が形成され、第3木質層60は内部に難燃剤Xが含侵された第2の難燃部30B(30)が形成されている。第1の難燃部30Aは、内層4の外側空間203側に位置している。第2の難燃部30Bは、第3木質層60の内側空間201側に位置している。
【0074】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0075】
[1]本開示に係る壁パネル(1、1B)は、
建物(200)の非耐力壁を構成するための壁パネルであって、
前記壁パネルの厚さ方向(D2)の一方側に配置され、木材(W)を含む第1木質層(2、130)と、
前記壁パネルの厚さ方向の他方側に配置され、木材を含む第2木質層(4、132)と、
前記第1木質層と前記第2木質層との間に配置され、不燃材(M)により形成されている不燃層(6)と、を備え、
前記第1木質層及び前記第2木質層のうちの少なくとも一方は、少なくとも内部に難燃剤(X)が含浸された難燃部(30)が形成されている。
【0076】
上記[1]に記載の構成によれば、壁パネルは、第1木質層と第2木質層との間に配置される不燃層を備え、且つ、第1木質層及び第2木質層のうちの少なくとも一方の内部には難燃部が形成されている。このため、木質の非耐力壁の耐火性を向上させることができる。
【0077】
また、上記[1]に記載の構成によれば、壁パネルは建物の非耐力壁を構成するので、建物の耐力壁を構成する場合とは異なり、構造設計上の規制を受けることなく不燃層を、薄くすることができる。そして、第1木質層及び第2木質層のうちの少なくとも一方の内部には難燃部が形成されているので、難燃部の形成によって壁パネルの耐火性を向上させた分だけ不燃層を薄くし、壁パネルを薄くしたり、軽量化したりすることができる。
【0078】
[2]幾つかの実施形態では、上記[1]に記載の構成において、
前記第1木質層は、前記建物の外側空間(203)に面して配置されており、
前記第2木質層は、前記建物の内側空間(201)に面して配置されており、
前記難燃部は、前記第2木質層の内部に形成されている。
【0079】
上記[2]に記載の構成によれば、壁パネルは外壁に適用される。そして、難燃部は、不燃層よりも建物の内側空間側に位置することになるので、建物の内側空間内で火災が発生した際に、難燃部及び不燃層の順で火災の影響を受けるので、外壁の所定の耐火性能(例えば、火災が発生した際に30分以内に焼失しない)の達成が容易となる。また、上記[2]に記載の構成によれば、両面に木材を視認可能な(木材を表しにする)外壁の耐火性を向上させることができる。
【0080】
[3]幾つかの実施形態では、上記[1]に記載の構成において、
前記第1木質層および前記第2木質層のそれぞれは、前記建物の内側空間に面して配置されており、
前記難燃部は、前記第1木質層および前記第2木質層のそれぞれの内部に形成されている。
【0081】
上記[3]に記載の構成によれば、壁パネルは内壁に適用される。そして、難燃部は、不燃層よりも建物の内側空間側に位置することになるので、建物の内側空間内で火災が発生した際に、難燃部及び不燃層の順で火災の影響を受けるので、内壁の所定の耐火性能(例えば、火災が発生した際に30分以内に焼失しない)の達成が容易となる。また、上記[3]に記載の構成によれば、両面に木材を視認可能な(木材を表しにする)内壁の耐火性を向上させることができる。
【0082】
[4]幾つかの実施形態では上記[2]に記載の構成において、
前記第2木質層には、前記内側空間側の表面(14)に開口(22)を有する複数の凹部(24)が形成されており、
前記難燃部は、少なくとも前記凹部の周囲に形成されている。
【0083】
上記[4]に記載の構成によれば、第2木質層の表面に凹部が形成されることで、第2木質層を形成する木材の組織が破壊され、第2木質層の表面から内部への難燃剤の含浸を促進させることができる。このため、壁パネルの生産性を高めることができる。
【0084】
[5]幾つかの実施形態では上記[4]に記載の構成において、
前記複数の凹部は、前記第2木質層の前記表面に、500~10000個/mの密度で形成されている。
【0085】
第2木質層の表面に凹部が形成されることで、第2木質層の表面から内部への難燃剤の含浸を促進可能であるものの、凹部の数が多すぎると壁パネルの製造コストがかえって高くなる虞がある。上記[5]に記載の構成によれば、壁パネルの製造コストの上昇を抑制しつつ、生産性を高めることができる。
【0086】
[6]幾つかの実施形態では上記[4]又は[5]に記載の構成において、
前記第2木質層の厚みをt1、前記凹部の深さをd、とした場合に、
0.1<d/t1<0.7を満たす。
【0087】
上記[6]に記載の構成によれば、d/t1<0.7とすることで、第2木質層の強度の低下など凹部による第2木質層への影響を抑制することができる。さらに、0.1<d/t1とすることで、第2木質層の表面から内部への難燃剤の含浸を促進させることができる。
【0088】
[7]幾つかの実施形態では上記[4]から[6]の何れか1つに記載の構成において、
前記凹部の前記開口は、前記第2木質層の繊維方向(D3)に沿って長手形状を有している。
【0089】
第2木質層は繊維方向に沿って長手形状を有していることが多い。上記[7]に記載の構成によれば、第2木質層の長手方向および凹部の開口の長手方向を互いに揃えることで、第2木質層への凹部の形成を容易化することができる。
【0090】
[8]幾つかの実施形態では上記[4]から[7]の何れか1つに記載の構成において、
前記第1木質層には、前記外側空間側の表面(8)に耐候性塗料(10)が塗布されている。
【0091】
上記[8]に記載の構成によれば、天候による外層の損傷を抑制することができる。
【0092】
[9]幾つかの実施形態では上記[2]から[8]の何れか1つに記載の構成において、
前記不燃層は、難燃性接着剤(12)を介して、前記第2木質層の前記厚さ方向の一方側の表面とは反対側の裏面(16)に接着されている。
【0093】
上記[9]に記載の構成によれば、不燃層と第2木質層とを接着させるとともに、非耐力壁の耐火性を高めることができる。
【0094】
[10]幾つかの実施形態では、上記[2]から[9]の何れか1つに記載の構成において、
前記壁パネルの厚みをT、前記不燃層の厚みをt2、とした場合に、
0.04<t2/T<0.30を満たす。
【0095】
第2木質層の内部に難燃部が形成されることで不燃層を薄くすることができる。上記[10]に記載の構成によれば、0.04<t2/T<0.30を満たす壁パネルを提供することができる。
【0096】
[11]幾つかの実施形態では、上記[1]から[10]の何れか1つに記載の構成において、
前記難燃剤は、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、リン・窒素系難燃剤、又はホウ酸系難燃剤である。
【0097】
上記[11]に記載の構成によれば、火災が発生した際に、難燃部を含む第1木質層を形成する木材、又は難燃部を含む第2木質層を形成する木材の熱分解を遅らせることができる。
【0098】
[12]幾つかの実施形態では上記[1]から[11]の何れか1つに記載の構成において、
前記不燃層は、ケイカル板または石膏ボードを含む。
【0099】
上記[12]に記載の構成によれば、製造コストを抑制しつつ、非耐力壁の耐火性を高めることができる。
【0100】
[13]本開示に係る壁パネルの製造方法は、
上記[5]に記載の壁パネルの製造方法であって、
前記第2木質層の前記表面にインサイジング処理を施すインサイジング工程(S1)と、
前記インサイジング工程の後に、前記表面に前記難燃剤を塗布することにより、前記第2木質層の前記内部および前記表面に前記難燃部を形成する難燃部形成工程(S2)と、
前記難燃部形成工程の後に、前記第1木質層の裏面と前記第2木質層の裏面との間に前記不燃層を積層させる積層工程(S3)と、を備える。
【0101】
従来、缶内に投入された木材に難燃剤を加圧注入することで、木材の内部に難燃剤を含浸させている。しかしながら、本発明者らによれば、インサイジング処理を施された第2木質層の表面に難燃剤を塗布することで、加圧注入することなく難燃部を含む第2木質層を製造できることを見出した。上記[13]に記載の方法によれば、インサイジング工程の後に難燃部形成工程が実施されるので、従来からの加圧注入を適用する場合と比較して、注薬缶のような大型の設備が不要となり、設備の小型化を図ることができる。
【0102】
[14]本開示に係る壁パネルは、
建物の非耐力壁を構成するための壁パネル(1A)であって、
前記壁パネルの厚さ方向の一方側に配置され、木材を含む第1木質層と、
前記壁パネルの厚さ方向の他方側に配置され、木材を含む第2木質層と、
前記第1木質層と前記第2木質層との間に配置され、不燃材により形成されている不燃層と、
前記第1木質層の表面および第2木質層の表面のうちの少なくとも一方に取り付けられ、不燃材により形成されている第2不燃層(120)と、を備える。
【0103】
上記[14]に記載の構成によれば、壁パネルは、第1木質層と第2木質層との間に配置される不燃層に加え、第1木質層の表面および第2木質層の表面のうちの少なくとも一方に取り付けられる第2不燃層を備える。このため、木質の非耐力壁の耐火性を向上させることができる。
【0104】
[15]本開示に係る建物は、
上記[2]に記載の壁パネルにより構成された外壁(100A)を備える。
【0105】
上記[15]に記載の構成によれば、壁パネルによって構成されることで耐火性を向上させた外壁を備える建物を提供することができる。
【0106】
[16]幾つかの実施形態では上記[1]に記載の構成において、
前記第1木質層と前記第2木質層との間に前記厚さ方向とは交差する方向に沿って前記不燃層と互いに並んで配置され、木材により形成されている中間挿入層(50)と、を備える。
【0107】
上記[16]に記載の構成によれば、例えば、第1木質層、第2木質層、および中間挿入層を貫通するようにボルト締結することで、または、中間挿入層に第1木質層および第2木質層のそれぞれを接着させることで、第1木質層と第2木質層とを一体化させることができる。壁パネルが一体化された状態であると、壁パネルの寸法安定度を向上させたり、壁パネルの強度を向上させたりすることができる。
【0108】
[17]幾つかの実施形態では上記[1]に記載の構成において、
前記第1木質層は、
一方のひき板(52)と、
前記一方のひき板の側面(57)に、前記側面の長手方向に沿って延びるように接着剤が塗布されることで形成される接着層(54)と、
前記接着層を介して、前記一方のひき板に接着されている他方のひき板(56)と、を含む。
【0109】
上記[17]に記載の構成によれば、接着層が形成されることで、一方のひき板と他方のひき板との間の隙間から液体が侵入することを防止できる。
【0110】
[18]幾つかの実施形態では上記[2]に記載の構成において、
前記第1木質層と前記不燃層との間に配置され、木材を含む第3木質層(60)をさらに備える。
【0111】
上記[18]に記載の構成によれば、壁パネルの外側空間側を第1木質層と第3木質層の2層とすることで、耐候性を向上させることができる。また、第1木質層および第3木質層のそれぞれを長手方向が互いに直交するように配置することで、壁パネルの寸法安定性を高めることができる。
【0112】
[19]幾つかの実施形態では上記[2]に記載の構成において、
前記第1木質層の前記外側空間に面する表面、および前記第2木質層の前記内側空間に面する表面のそれぞれは、木裏である。
【0113】
上記[19]に記載の構成によれば、第1木質層の表面および第2木質層の表面のそれぞれを木表とする場合と比較して、不燃層の損傷を抑制することができる。
【0114】
[20]幾つかの実施形態では上記[14]に記載の構成において、
前記第1木質層は、前記建物の外側空間に面して配置されており、
前記第2不燃層は、前記第2木質層の前記表面に取り付けられる複数の第1板状部材(122)と、前記第1板状部材よりも前記厚さ方向の前記第2木質層側とは反対側に位置する少なくとも1つの第2板状部材(124)と、を含み、
前記少なくとも1つの第2板状部材は、前記少なくとも2つの第1板状部材のそれぞれと重なり合うように配置されている。
【0115】
上記[20]に記載の構成によれば、2つの第1板状部材は第2板状部材を介して互いに接続されている状態になるので、不燃層を自立させることができる。
【0116】
[21]幾つかの実施形態では上記[20]に記載の構成において、
複数の前記第2板状部材のそれぞれは、共通の1つの前記第1板状部材と重なり合うように配置されている。
【0117】
上記[21]に記載の構成によれば、不燃層をより強固に自立させることができる。
【0118】
[22]幾つかの実施形態では、上記[1]から[5]の何れか1つに記載の構成において、
前記第1木質層および前記第2木質層のうちの少なくとも一方は、木毛セメント板または木片セメント板である。
【0119】
上記[22]に記載の構成によれば、第1木質層および第2木質層のうちの少なくとも一方にはセメントが含有されるので、木質の非耐力壁の耐火性を向上させることができる。
【0120】
[23]幾つかの実施形態では、上記[14]に記載の構成において、
前記第1木質層および前記第2木質層の少なくとも一方は、木毛セメント板または木片セメント板である。
【0121】
上記[23]に記載の構成によれば、第1木質層および第2木質層のうちの少なくとも一方にはセメントが含有されるので、木質の非耐力壁の耐火性を向上させることができる。
【0122】
[24]幾つかの実施形態では、上記[16]に記載の構成において、
前記中間挿入層は、前記厚さ方向から視認した際に前記不燃層の周囲全体を囲っている。
【0123】
上記[24]に記載の構成によれば、不燃層の濡れを抑制し、木質の非耐力壁の強度低下を抑制できる。
【0124】
[25]本開示に係る壁パネルの製造方法は、
上記[1]に記載の壁パネルの製造方法であって、
前記第1木質層の表面に粗面処理を施す粗面形成工程と、
前記粗面形成工程の後に、前記粗面処理が施された前記第1木質層の前記表面に前記難燃剤を塗布することにより、前記第1木質層の前記内部および前記表面に前記難燃部を形成する難燃部形成工程と、を備える。
【0125】
上記[25]に記載の方法によれば、粗面処理が施された第1木質層の表面に前記難燃剤を塗布することにより、従来からの加圧注入を適用する場合と比較して、注薬缶のような大型の設備が不要となり、設備の小型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0126】
1 壁パネル(一実施形態)
1A 壁パネル(別の一実施形態)
1B 壁パネル(さらに別の一実施形態)
2 外層
4 内層
6 不燃層
8 外層の表面
10 耐候性塗料
12 難燃性接着剤
14 内層の表面
16 内層の裏面
20 外層の裏面
22 開口
24 凹部
24A 第1の凹部
24B 第2の凹部
30 難燃部
40 非難燃部
50 中間挿入層
52 一方のひき板
54 接着層
56 他方のひき板
100 外壁
100A 第1の外壁
100B 第2の外壁
102 屋根
104 床
106 内壁面
108 外壁面
110 内壁
112 梁
120 第2不燃層
122 第1板状部材
124 第2板状部材
200 建物
201 内側空間
203 外側空間
D1 上下方向
D2 厚さ方向
D3 内層の繊維方向
D4 左右方向
G 地面
M 不燃材
W 木材
S1 インサイジング工程
S2 難燃部形成工程
S3 積層工程
X 難燃剤

図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B