(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010907
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】保持部材
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240118BHJP
C23C 16/46 20060101ALI20240118BHJP
C23C 14/50 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
H01L21/68 R
C23C16/46
C23C14/50 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112495
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】泉原 一貴
(72)【発明者】
【氏名】木村 亘
(72)【発明者】
【氏名】林田 佑介
(72)【発明者】
【氏名】岡島 利成
【テーマコード(参考)】
4K029
4K030
5F131
【Fターム(参考)】
4K029AA06
4K029AA24
4K029DA03
4K029DA08
4K029JA01
4K030CA04
4K030CA12
4K030GA02
4K030KA39
5F131AA02
5F131CA03
5F131DA33
5F131DA42
5F131EB11
5F131EB17
5F131EB18
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB81
5F131EB82
(57)【要約】
【課題】対象物を保持する面の均熱性を向上させることができる保持部材を提供する。
【解決手段】本開示の一態様は、静電チャック1であって、セラミックス部材10と、ベース部材20と、接合層30と、セラミックス部材10の下面12に設けられるRTD41と、を有し、RTD41は、充填剤42により覆われ、X軸方向やY軸方向から見たときに、充填剤42とベース部材20の上面21との間、または、充填剤42と接合層30との間には、空間δが設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を保持する保持部材であって、
第1の面と、前記第1の面とは反対側に設けられる第2の面と、を備える第1の板状部材と、
第3の面と、前記第3の面とは反対側に設けられる第4の面と、を備える第2の板状部材と、
前記第1の板状部材の前記第2の面と前記第2の板状部材の前記第3の面との間に配置され、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材とを接合する接合層と、
前記第1の板状部材の前記第2の面に設けられる温度検出部と、を有し、
前記温度検出部は、保護部により覆われ、
前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との配列方向と直交する方向から見たときに、
前記保護部と前記第2の板状部材の前記第3の面との間、または、前記保護部と前記接合層との間には、空間が設けられていること、
を特徴とする保持部材。
【請求項2】
請求項1の保持部材において、
前記第1の板状部材は内部に配線層を備え、
前記温度検出部と前記配線層とは、前記第1の板状部材の前記第2の面に設けられるリード線を介して電気的に接続しており、
前記第1の板状部材の前記第2の面と、前記温度検出部における前記第1の板状部材側の面とが、接着剤または両面テープにより接着されていること、
を特徴とする保持部材。
【請求項3】
請求項1の保持部材において、
前記第1の板状部材は内部に配線層を備え、
前記温度検出部と前記配線層とは、前記第1の板状部材の内部に設けられた導電部を介して電気的に接続し、
前記導電部は、前記温度検出部における前記第1の板状部材側の面と電気的に接続し、
前記第1の板状部材の前記第2の面と、前記温度検出部における前記第1の板状部材側の面とが、半田または導電性接着剤により接着されていること、
を特徴とする保持部材。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つの保持部材において、
前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との配列方向から見たときに、
前記接合層は、前記保護部に重なる領域に形成されていないこと、
を特徴とする保持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、対象物を保持する保持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
保持部材に関する文献として、特許文献1には、半導体ウエハを保持するセラミックス部材の下面に温度検出部を配置した静電チャックが開示されている。そして、この静電チャックでは、セラミックス部材の下面の凹部内に温度検出部を収容して、凹部の内部に充填剤を充填したうえで、凹部の開口部を蓋で塞いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される静電チャックにおいて、凹部内に充填されている充填剤の充填状況によっては、接合層と接する蓋に対して充填剤が触れている部分と触れていない部分とが存在するおそれがある。そうすると、ベース部材からの熱引き(すなわち、接合層を介してセラミックス部材からベース部材に熱が引かれること)にムラが生じて、セラミックス部材における半導体ウエハを保持する面の均熱性が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は上記した課題を解決するためになされたものであり、対象物を保持する面の均熱性を向上させることができる保持部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本開示の一形態は、対象物を保持する保持部材であって、第1の面と、前記第1の面とは反対側に設けられる第2の面と、を備える第1の板状部材と、第3の面と、前記第3の面とは反対側に設けられる第4の面と、を備える第2の板状部材と、前記第1の板状部材の前記第2の面と前記第2の板状部材の前記第3の面との間に配置され、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材とを接合する接合層と、前記第1の板状部材の前記第2の面に設けられる温度検出部と、を有し、前記温度検出部は、保護部により覆われ、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との配列方向と直交する方向から見たときに、前記保護部と前記第2の板状部材の前記第3の面との間、または、前記保護部と前記接合層との間には、空間が設けられていること、を特徴とする。
【0007】
この態様によれば、保護部が第2の板状部材の第3の面や接合層に触れていないので、温度検出部が配置される領域における第2の板状部材からの熱引きのムラの発生を抑制することができる。そのため、対象物を保持する面である第1の板状部材の第1の面において、想定通りの温度分布を得ることができる。したがって、対象物を保持する面における温度分布を別途調整することにより、均熱性を向上させることができる。
【0008】
上記の態様においては、前記第1の板状部材は内部に配線層を備え、前記温度検出部と前記配線層とは、前記第1の板状部材の前記第2の面に設けられるリード線を介して電気的に接続しており、前記第1の板状部材の前記第2の面と、前記温度検出部における前記第1の板状部材側の面とが、接着剤または両面テープにより接着されていること、が好ましい。
【0009】
この態様によれば、第1の板状部材の第2の面と、温度検出部における第1の板状部材側の面とを、所望の厚みに調整した接着剤または両面テープで接着させることにより、第1の板状部材の第2の面と温度検出部における第1の板状部材側の面との間の距離を一定にすることができる。そのため、温度検出部が配置される領域における第1の板状部材の第2の面から温度検出部への伝熱が一定になる。したがって、第1の板状部材の第2の面の温度を温度検出部により正確に検出できる。そして、このようにして正確に検出した第1の板状部材の第2の面の温度の検出結果に基づいて、対象物を保持する面である第1の板状部材の第1の面の温度を正確に予想できるので、対象物を保持する面において、より精密に温度分布を別途調整して、均熱性を向上させることができる。
【0010】
上記の態様においては、前記第1の板状部材は内部に配線層を備え、前記温度検出部と前記配線層とは、前記第1の板状部材の内部に設けられた導電部を介して電気的に接続し、前記導電部は、前記温度検出部における前記第1の板状部材側の面と電気的に接続し、前記第1の板状部材の前記第2の面と、前記温度検出部における前記第1の板状部材側の面とが、半田または導電性接着剤により接着されていること、が好ましい。
【0011】
この態様によれば、第1の板状部材の第2の面と、温度検出部における第1の板状部材側の面とを、所望の厚みに調整した半田または導電性接着剤で接着させることにより、温度検出部と第1の板状部材の内部の配線層とを確実に導電部を介して電気的に接続できる。また、第1の板状部材の第2の面と温度検出部における第1の板状部材側の面との間の距離を一定にすることができる。そのため、温度検出部が配置される領域における第1の板状部材の第2の面から温度検出部への伝熱が一定になる。したがって、第1の板状部材の第2の面の温度を温度検出部により正確に検出できる。そして、このようにして正確に検出した第1の板状部材の第2の面の温度の検出結果に基づいて、対象物を保持する面である第1の板状部材の第1の面の温度を正確に予想できるので、対象物を保持する面において、より精密に温度分布を別途調整して、均熱性を向上させることができる。
【0012】
上記の態様においては、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との配列方向から見たときに、前記接合層は、前記保護部に重なる領域に形成されていないこと、が好ましい。
【0013】
この態様によれば、保護部に対して第2の板状部材側に接合層が存在せず、保護部と第2の板状部材の第3の面とが空間を空けて対向している。そのため、より確実に、保護部が第2の板状部材の第3の面や接合層に触れないようにすることができる。したがって、より確実に、温度検出部が配置される領域における第2の板状部材からの熱引きのムラの発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示の保持部材によれば、対象物を保持する面の均熱性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態の静電チャックの概略斜視図である。
【
図2】第1実施例において、X軸方向やY軸方向から見たときのRTDとその周辺の断面図である。
【
図3】Z軸方向から見たときに、接合層が充填剤に重なる領域に形成されていないことを示すイメージ図である。
【
図4】第1実施例の変形例において、X軸方向やY軸方向から見たときのRTDとその周辺の断面図である。
【
図5】第2実施例において、X軸方向やY軸方向から見たときのRTDとその周辺の断面図である。
【
図6】従来、充填剤が接合層に触れていたことを示す図である。
【
図7】従来、セラミックス部材の下面とRTDの上面との間の距離がばらつくことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の保持部材の実施形態について説明する。本実施形態では、保持部材として静電チャック1を例示して説明する。
【0017】
<静電チャックの全体説明>
本実施形態の静電チャック1は、半導体ウエハWを静電引力により吸着して保持する装置であり、例えば、半導体製造装置の真空チャンバ内で半導体ウエハWを固定するために使用される。なお、半導体ウエハWは、本開示の「対象物」の一例である。
【0018】
図1に示すように、静電チャック1は、セラミックス部材10と、ベース部材20と、セラミックス部材10とベース部材20とを接合する接合層30とを有する。なお、セラミックス部材10は本開示の「第1の板状部材」の一例であり、ベース部材20は本開示の「第2の板状部材」の一例である。
【0019】
なお、以下の説明においては、説明の便宜上、
図1に示すようにXYZ軸を定義する。ここで、Z軸は、静電チャック1の中心軸方向(
図1において上下方向)の軸であり、X軸とY軸は、静電チャック1の径方向の軸である。すなわち、Z軸方向はセラミックス部材10とベース部材20との配列方向であり、X軸方向とY軸方向はセラミックス部材10とベース部材20との配列方向と直交する方向である。
【0020】
セラミックス部材10は、
図1に示すように、板状、詳しくは、円盤状の部材であり、セラミックス(セラミックス基板)により形成されている。
【0021】
セラミックスとしては、様々なセラミックスが用いられるが、強度や耐摩耗性、耐プラズマ性等の観点から、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ、Al2O3)または窒化アルミニウム(AlN)を主成分とするセラミックスが用いられることが好ましい。なお、ここでいう主成分とは、含有割合の最も多い成分(例えば、体積含有率が90vol%以上の成分)を意味する。
【0022】
図1に示すように、セラミックス部材10は、半導体ウエハWを保持する保持面11(上面)と、セラミックス部材10の厚み方向(すなわち、Z軸方向)について保持面11とは反対側に設けられる下面12とを備えている。なお、保持面11は本開示の「第1の面」の一例であり、下面12は本開示の「第2の面」の一例である。
【0023】
また、セラミックス部材10の直径は、例えば180~400mm程度である。セラミックス部材10の厚さは、例えば2~6mm程度である。なお、セラミックス部材10の熱伝導率は、10~50W/mK(より好ましくは、18~30W/mK)の範囲内が望ましい。
【0024】
また、セラミックス部材10は、その内部に不図示のチャック電極(吸着電極)を備えている。このチャック電極に図示しない電源から電圧が印加されることによって、チャック電極に静電引力が発生し、この静電引力によって半導体ウエハWが保持面11に吸着されて保持される。
【0025】
また、セラミックス部材10は、その内部にヒータ(不図示)を備えている。
【0026】
また、セラミックス部材10は、
図2などに示すように、その下面12にて、測温抵抗体であるRTD41を備えている。RTD41は、下面12に形成される凹部13の内部に収容されており、充填剤42により覆われるようにして下面12に固定されている。この充填剤42の材料は、例えば、シリコーン系やエポキシ系、アクリル系などである。
【0027】
なお、RTD41は、複数設けられている。例えば、RTD41は、セラミックス部材10の下面12にて均等に分けられた複数のゾーンのそれぞれに1個ずつ設けられている。また、RTD41は本開示の「温度検出部」の一例であり、充填剤42は本開示の「保護部」の一例である。
【0028】
ベース部材20は、セラミックス部材10に対し保持面11側とは反対側に配置されている。このベース部材20は、例えば円柱状に形成されている。また、ベース部材20は、例えば金属(例えば、アルミニウムやアルミニウム合金等)により形成されているが、金属以外であってもよい。
【0029】
そして、ベース部材20は、
図1に示すように、上面21と、Z軸方向にて上面21とは反対側に設けられる下面22と、を備えている。そして、ベース部材20の上面21は、セラミックス部材10の下面12と、接合層30を介して、熱的に接続されている。また、ベース部材20は、冷却水が流れる冷却流路23を備えている。なお、上面21は本開示の「第3の面」の一例であり、下面22は本開示の「第4の面」の一例である。
【0030】
ベース部材20の直径は、例えば180~400mm程度である。また、ベース部材20の厚さ(Z軸方向の寸法)は、例えば20~50mm程度である。なお、ベース部材20(アルミニウムを想定)の熱伝導率は、160~250W/mK(好ましくは、230W/mK程度)の範囲内が望ましい。
【0031】
接合層30は、セラミックス部材10の下面12とベース部材20の上面21との間に配置され、セラミックス部材10とベース部材20とを熱伝達可能に接合する。このようにして、セラミックス部材10の下面12と、ベース部材20の上面21とが、熱的に接続されている。
【0032】
この接合層30は、熱伝導性を有するフィラーを含む樹脂(シリコーン系樹脂やアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等)の接着材により構成されている。なお、接合層30の厚さ(Z軸方向の寸法)は、例えば0.1~1.5mm程度である。また、接合層30の熱伝導率は、例えば1.0W/mKである。なお、接合層30(シリコーン系樹脂を想定)の熱伝導率は、0.1~2.0W/mK(好ましくは、0.5~1.5W/mK)の範囲内が望ましい。
【0033】
以上のような静電チャック1においては、ベース部材20に備わる冷却流路23に冷却水を流すことにより、ベース部材20が冷却され、これにより、接合層30を介してセラミックス部材10からベース部材20に熱が引かれて、すなわち、ベース部材20からの熱引きが行われて、セラミックス部材10が冷却される。そして、セラミックス部材10が冷却されることにより、保持面11に保持される半導体ウエハWを冷却したり、保持面11の温度分布を調整できる。
【0034】
そして、本実施形態では、セラミックス部材10の下面12の温度をRTD41により検出し、その検出結果に基づいて、セラミックス部材10の保持面11の温度を予想し、セラミックス部材10の保持面11において、温度分布を調整して、均熱性を維持している。
【0035】
<RTDとその周辺について>
RTD41は、充填剤42に覆われるようにしてセラミックス部材10の下面12に固定されている。従来、
図6に示すように充填剤42が接合層30に触れている場合に、充填剤42の部位によって接合層30に触れていたり触れていなかったりすることで、RTD41が配置される領域におけるベース部材20からの熱引きにムラが生じていた。そのため、セラミックス部材10の保持面11において想定通りの温度分布を得ることができず、保持面11の均熱性が低下するおそれがあった。
【0036】
また、RTD41を充填剤42によりセラミックス部材10の下面12に固定するときに、従来、
図7に示すようにセラミックス部材10の下面12とRTD41の上面47との間の距離は特に管理されていなかった。そのため、セラミックス部材10の下面12とRTD41の上面47との間の距離について、
図6と
図7に示すように複数のRTD41においてバラツキが生じたり、1つのRTD41においてその部位によってバラツキが生じたりしていた。
【0037】
そして、このようにセラミックス部材10の下面12とRTD41との間の距離が一定ではなかったので、ヒータなどを備えるセラミックス部材10の下面12からRTD41への伝熱にムラが生じていた。そのため、RTD41によりセラミックス部材10の下面12の正確な温度を測定できず、セラミックス部材10の下面12の温度の信頼性が低かった。したがって、セラミックス部材10の保持面11の正確な温度が予測できないので、セラミックス部材10の保持面11において想定通りの温度分布を得ることができず、保持面11の均熱性が低下していた。
【0038】
そこで、本実施形態では、以下の実施例のようにして、セラミックス部材10の保持面11の均熱性を向上させるようにする。
【0039】
(第1実施例)
まず、第1実施例について説明する。本実施例では、
図2に示すように、セラミックス部材10は、その内部に配線層43を備えている。この配線層43は、例えば不図示の端子部などに接続する。そして、RTD41と配線層43とは、セラミックス部材10の下面12に設けられるリード線44および電極パッド45と、セラミックス部材10の内部に設けられるビア46とを介して、電気的に接続している。
【0040】
そして、本実施例では、
図2に示すように、充填剤42とリード線44とが設けられる範囲における接合層30がカットされている。そして、これにより、
図3に示すように、静電チャック1をZ軸方向から見たときに、接合層30は、充填剤42に重ならない領域には形成されているが、充填剤42に重なる領域には形成されていない。
【0041】
なお、
図2に示すように、接合層30のカットされた部分の端部30aは、セラミックス部材10の凹部13の側面13aと面一でなくてもよい。例えば、接合層30のカットされた部分の端部30aの位置は、セラミックス部材10の凹部13の側面13aの位置よりも、
図2の左側に移動した位置としてもよい。ただし、接合層30のカットされた部分の端部30aの位置がセラミックス部材10の凹部13の側面13aの位置よりも
図2の左側に移動させる距離は、接合層30をカットすることによってベース部材20からの熱引きの能力に影響を及ぼさないような大きさ(例えば、0.05mm~1.00mm)とする。
【0042】
このようにして、接合層30をカットすることにより、X軸方向やY軸方向から見たときに、充填剤42とベース部材20の上面21との間に空間δを設けている。これにより、充填剤42がベース部材20や接合層30に触れていないので、RTD41が配置される領域におけるベース部材20からの熱引きのムラの発生を抑制することができる。そのため、セラミックス部材10の保持面11において想定通りの温度分布を得ることができる。したがって、保持面11における温度分布を別途調整することにより、均熱性を向上させることができる。なお、空間δにおける充填剤42の下端とベース部材20の上面21との間の距離は、例えば、0.1mm以上、かつ5.0mm以下である。
【0043】
また、セラミックス部材10の下面12と、RTD41におけるセラミックス部材10側の上面47とが、接着部48により接着されている。この接着部48は、接着剤、または、両面テープ(充填剤42との組み合わせでもよい)により形成されており、その厚みが全体に亘って一定になるように調整されている。例えば、接着部48の厚みは、0.01mm~1.0mmである。また、接着剤の材料は、例えば、シリコーン系やエポキシ系、アクリル系などである。さらに、両面テープの材質は、例えば、シリコーン系やアクリル系などである。
【0044】
これにより、セラミックス部材10の下面12とRTD41の上面47との距離を、接着部48の全体に亘って一定にすることができる。そのため、RTD41が配置される領域におけるセラミックス部材10の下面12からRTD41への伝熱が一定になるので、RTD41の測定温度の信頼性が向上する。
【0045】
また、特に、接着部48を両面テープにより形成すれば、両面テープの厚みを調整することで容易にセラミックス部材10の下面12とRTD41の上面47との距離を接着部48の全体に亘って一定にすることができる。
【0046】
なお、変形例として、
図4に示すように、充填剤42とリード線44の範囲における接合層30をカットしないで、X軸方向やY軸方向から見たときに、充填剤42と接合層30との間に空間δを設けてもよい。また、その他の変形として、接合層30は、充填剤42が設けられる範囲のみカットされていてもよい。
【0047】
本実施例では、X軸方向やY軸方向から見たときに、充填剤42とベース部材20の上面21との間、または、充填剤42と接合層30との間には、空間δが設けられている。
【0048】
このようにして、充填剤42がベース部材20の上面21や接合層30に触れていないので、RTD41が配置される領域におけるベース部材20からの熱引きのムラの発生を抑制することができる。そのため、セラミックス部材10の保持面11において、想定通りの温度分布を得ることができる。したがって、保持面11における温度分布を別途調整することにより、均熱性を向上させることができる。
【0049】
また、セラミックス部材10の下面12と、RTD41の上面47とが、接着剤または両面テープ(すなわち、接着部48)により接着されている。
【0050】
これにより、セラミックス部材10の下面12と、RTD41の上面47とを、所望の厚みに調整した接着剤または両面テープで接着させることにより、セラミックス部材10の下面12とRTD41の上面47との間の距離を一定にすることができる。すなわち、セラミックス部材10の下面12とRTD41の上面47との間の距離について、複数のRTD41においてバラツキが生じ難くなり、また、1つのRTD41においてその部位によってバラツキが生じ難くなる。そのため、RTD41が配置される領域におけるセラミックス部材10の下面12からRTD41への伝熱が一定になる。したがって、セラミックス部材10の下面12の温度をRTD41により正確に検出できる。そして、このようにして正確に検出したセラミックス部材10の下面12の温度の検出結果に基づいて、セラミックス部材10の保持面11の温度を正確に予想できるので、保持面11において、より精密に温度分布を別途調整して、均熱性を向上させることができる。
【0051】
また、充填剤42とリード線44が設けられる範囲における接合層30をカットしており、
図3に示すように、Z軸方向から見たときに、接合層30は、充填剤42に重なる領域に形成されていない。
【0052】
このようにして、充填剤42に対してベース部材20側に接合層30が存在せず、充填剤42とベース部材20の上面21とが空間δを空けて対向している。そのため、より確実に、充填剤42がベース部材20の上面21や接合層30に触れないようにすることができる。したがって、より確実に、RTD41が配置される領域におけるベース部材20からの熱引きのムラの発生を抑制することができる。
【0053】
(第2実施例)
次に、第2実施例について説明するが、第1実施例と異なる点を説明する。
【0054】
本実施例では、
図5に示すように、リード線44が設けられておらず、RTD41と配線層43とは、ビア49を介して電気的に接続している。このビア49は、セラミックス部材10の内部に設けられ、RTD41の上面47と配線層43とに接続している。なお、ビア49は、本開示の「導電部」の一例である。
【0055】
そして、セラミックス部材10の下面12と、RTD41の上面47とが、導電性接着部51により接着されている。この導電性接着部51は、半田または導電性接着剤により形成されている。これにより、RTD41の上面47とビア49とは、半田または導電性接着剤を介して電気的に接続している。なお、例えば、導電性接着部51の厚みは、0.01mm~1.0mmである。また、導電性接着剤は、例えば、銀やニッケル、金などの導電性フィラーを含んだエポキシ系やシリコーン系、アクリル系樹脂接着剤である。
【0056】
本実施例によれば、セラミックス部材10の下面12と、RTD41の上面47とが、半田または導電性接着剤により接着されている。
【0057】
このようにして、セラミックス部材10の下面12と、RTD41の上面47とを、所望の厚みに調整した半田または導電性接着剤で接着させることにより、RTD41とセラミックス部材10の内部の配線層43とを確実にビア49を介して電気的に接続できる。
【0058】
また、セラミックス部材10の下面12と、RTD41の上面47とを、所望の厚みに調整した半田または導電性接着剤で接着させることにより、セラミックス部材10の下面12とRTD41の上面47との間の距離を一定にすることができる。すなわち、セラミックス部材10の下面12とRTD41の上面47との間の距離について、複数のRTD41においてバラツキが生じ難くなり、また、1つのRTD41においてその部位によってバラツキが生じ難くなる。そのため、RTD41が配置される領域におけるセラミックス部材10の下面12からRTD41への伝熱が一定になる。したがって、セラミックス部材10の下面12の温度をRTD41により正確に検出できる。そして、このようにして正確に検出したセラミックス部材10の下面12の温度の検出結果に基づいて、セラミックス部材10の保持面11の温度を正確に予想できるので、保持面11において、より精密に温度分布を別途調整して、均熱性を向上させることができる。
【0059】
また、リード線44を無くすことができるので部品点数を減らせる。さらに、リード線44を取り付ける部分が不要なので構成を簡単にでき、セラミックス部材10の保持面11にて温度特異点を減らすことができる。
【0060】
なお、単なる例示にすぎず、本開示を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。
【0061】
例えば、上記した実施の形態は、セラミックス部材10の下面12に設ける温度検出部として、RTD41以外に、サーミスタや熱電対にも適用できる。
【符号の説明】
【0062】
1 静電チャック
10 セラミックス部材
11 保持面
12 下面
20 ベース部材
30 接合層
41 RTD
42 充填剤
43 配線層
44 リード線
47 上面
48 接着部
49 ビア
51 導電性接着部
W 半導体ウエハ
δ 隙間