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特開2024-109070超高線量付着率(HDR)でのペンシルビーム走査(PBS)による標的体積の放射線治療用の走査順序を規定する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109070
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】超高線量付着率(HDR)でのペンシルビーム走査(PBS)による標的体積の放射線治療用の走査順序を規定する方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
A61N5/10 H
A61N5/10 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024008446
(22)【出願日】2024-01-24
(31)【優先権主張番号】23154117.8
(32)【優先日】2023-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】318004198
【氏名又は名称】イオン ビーム アプリケーションズ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Ion Beam Applications S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ラバーベ ルディ
(72)【発明者】
【氏名】ホトイユ ルシアン
(72)【発明者】
【氏名】ピン アルノー
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AA01
4C082AC05
4C082AE01
4C082AG21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】超高線量付着率(HDR)でのペンシルビーム走査(PBS)による標的体積の放射線治療用の走査順序を規定する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、臨界体積(Vc)を規定する特定体積(vi)の重要な部分に超高線量付着率(HDR)で線量(Dj)を付着させることを保証する、複雑な形状の標的体積(Vt)の標的面積(At)を特徴付けるスポットの照射走査順序を規定する方法に関する。少なくとも標的面積(At)を覆うスポット(Sj)の配列を規定する。標的面積の形状の骨格を規定する疑似仲介体(M)を判定する。スポットを互いに接合し、疑似仲介体(M)の軌道に応じて照射経路(IP)を規定し、照射走査順序を規定する。
【選択図】図11a-11c
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子線、好ましくは陽子線を用いた放射線による治療用の走査順序を規定する方法において、周囲面内に囲まれる腫瘍細胞を含む標的体積(Vt)にエネルギー単層におけるペンシルビーム走査(PBS)によって線量(Dj)を付着させ、正常細胞を含む臨界体積(Vc)を規定する特定体積(vi)の重要な部分に超高線量付着率(HDR)で線量(Dj)を付着させることを保証し、HDRを、線量付着率
として規定し、Djは、照射の開始後の時刻tjにj番目のペンシルビームによって前記臨界体積(Vc)の特定体積(vi)に付着される線量であり、ΔTi=max({tj})-min({tj})は、最初の線量≧Dminを前記特定体積に付着させる場合の初期線量付着時刻(min({tj}))と最後の線量≧Dminを前記特定体積に付着させる場合の最終線量付着時刻(max({tj}))との間に及ぶ時間であり、Dminは、より低い線量限界であり、
・中心照射軸(X)に垂直な表面(P0=(Y、Z))に前記標的体積を投影することによって標的の周囲(Pt)で限られる標的面積(At)を規定するステップと、
・前記標的の周囲(Pt)内に規定される少なくとも全面積を覆うように、少なくとも前記標的の周囲(Pt)内に分布するスポット(Sj)の前記表面(P0)にスポット直径及びスポット位置パターンを規定するステップと、
・前記全スポット(Sj)を互いに接続する連続経路を規定し、全特定体積(vi)へのHDR付着を保証するように前記全特定体積(vi)で蓄積線量付着時間(ΔTi)を最小化するように構成されるスカーフ走査順序を確立するステップと、
を含み、
・陽子線電流の所与の値に対して、前記粒子線の2方向戻り経路に沿って前記粒子線によって接触される全特定体積(vi)にHDR付着率で前記線量(Dj)を付着させることを保証しながら、粒子線が2方向戻り経路で走査することができるHDR走査距離(L)を規定し、
・前記標的の周囲(Pt)の形状を特徴付ける疑似仲介体(M)を規定し、
・前記連続経路は、前記疑似仲介体の片側又は両側に分布する多数の隣接スポットを接続する一連の経路区分を含み、
〇各経路区分は、前記疑似仲介体の長さに沿って分布する異なる点で前記疑似仲介体(M)と1回交差する又は交わり、
〇前記経路区分を2つずつ互いに接続し、前記HDR走査距離(L)以下の長さの一連の戻り経路区分を形成する
ように、前記スカーフ走査順序を確立することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
・最後のスポットとして前記疑似仲介体(M)の同じ側から、及び前記同じ側で最短距離に、又は
・前記最後のスポットとして前記疑似仲介体(M)の反対側から、及び前記反対側で最長距離に
位置する第2の経路区分のスポットに第1の区分の終了スポットを接続することによって第1の経路区分に隣接する第2の経路区分に前記第1の経路区分で接続される最後のスポットとして規定される第1の経路区分の終了スポットを接続することによって、前記戻り経路区分を形成することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、
・前記全標的面積(At)にわたって分布する基準点(RP)のセットを規定し、
・第1の基準点(RP)を選択し、
・影響の半径(R)を規定し、
・前記第1の基準点(RP)を中心とした影響の半径(R)の影響の円内に囲まれる前記基準点(RP)として規定される影響点のセットを規定し、
・影響の前記円における全影響点の前記セットと同じ第2の慣性モーメントを有する影響の楕円を計算し、
・影響の前記楕円の長軸を識別し、
・前記第1の基準点(RP)から開始して、前記長軸に平行な方向及び任意の長さの流れベクトルを規定し、
・影響の前記同じ半径(R)の影響の円を有する全基準点(RP)に対して、前記ステップを繰り返し、
・前記流れベクトルを互いに接続し、流れ線を規定し、
・前記疑似仲介体(M)を形成するように前記標的の周囲(Pt)の1つの端部から別の端部に延在する1つの流れ線を選択する
ように、前記疑似仲介体(M)を規定することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、
前記基準点(RP)は、スポット(Sj)の中心であることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の方法において、
・2つの交点で前記標的の周囲と交差する第1の方向の第1の接続線分を規定し、線分の長さを、前記2つの交点を隔てる距離として規定し、
・前記接続線分の中心に位置する点として規定される前記第1の接続線分の第1の中点(MP)を規定し、
・前記第1の方向に平行な更なる接続線分を用いて、前記ステップを繰り返し、
・全中点(MP)を接続し、前記疑似仲介体(M)を規定する
ように、前記疑似仲介体(M)を規定することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、
前記第1の接続線分及び更なる接続線分は各々、少なくとも1つのスポット(Sj)、好ましくは少なくとも2つのスポット(Sj)の前記中心を通過することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の方法において、
・所与の寸法及び向きの基準長方形を規定し、
・前記全標的面積を覆うように、一連の基準長方形で前記標的面積(At)を覆い、
・第1の基準長方形に対して、前記第1の基準長方形で囲まれる前記スポット(Sj)を識別し、
・前記第1の基準長方形で囲まれる前記スポット(Sj)の幾何学的中央値(GM)を判定し、前記幾何学的中央値は、前記疑似仲介体(M)の第1のドットを形成し、
・前記全基準長方形に対して前記最後の2つのステップを繰り返し、ドットの列を形成し、
・このように形成された前記ドットを接続し、前記疑似仲介体(M)を形成する
ように、前記疑似仲介体(M)を規定することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の方法において、
・長さ(Lb)の長辺及び前記長辺と平行に延在する主要中央値を有する幅(Wb<Lb)の短辺を有する長方形基準ボックス(RB)を規定し、Lb<L及びWbは、2つの隣接スポット(Sj)の前記中心を隔てる最短距離(ds)の2倍よりも小さく(即ち、Wb<2ds)、
・少なくとも1つの基準ボックスで前記全スポット(Sj)を囲むように、前記主要中央値が、前記疑似仲介体(M)と交わり、好ましくは90度の所与の角度を成した状態で、一連の基準ボックス(RB)で前記標的面積(At)を覆い、
・1つの基準ボックスで囲まれるスポット(Sj)を有する経路区分を規定し、各スポット(Sj)は、1つを超える基準ボックスで囲まれる場合でも、単一経路区分に属し、
・前記経路区分を2つずつ互いに接続し、前記連続経路を形成する
ように、前記スカーフ走査順序を確立することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の方法において、
・線量が重要でない効果を有すると考えられる絶対線量値として、又は
・前記特定体積(vi)に付着される前記全線量の百分率(好ましくは、Dminは、前記特定体積(vi)に付着される
の少なくとも5%、より好ましくは
の少なくとも10%である)として、
前記より低い線量限界(Dmin)を規定することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線、好ましくは陽子線を用いた放射線による治療用の走査順序を規定し、周囲面内に囲まれる腫瘍細胞を含む標的体積(Vt)にエネルギー単層におけるペンシルビーム走査(PBS)によって照射される線量(Dj)を付着させる方法に関する。標的体積(Vt)は、治療によって損傷されない必要がある臨界体積(Vc)に閉じ込められる正常細胞を含む。順序は、損傷されない必要がある正常細胞を含む臨界体積(Vc)の重要な部分に超高線量付着率(HDR)で線量(Dj)を付着させることを保証する必要がある。
【0002】
本方法は、一方で、所与の特定体積(vi)に直接方向付けられるビームレットによって、他方で更に、付着線量が所与の特定体積(vi)に影響を与える隣接特定体積に向けられるビームレットによって、所与の特定体積(vi)に付着される全線量(Dj)を、蓄積線量
が臨界体積にHDRで付着されたことを保証するのに十分短い蓄積線量付着時間ΔTi内に組み合わせて付着させることを保証する。方法は、複雑な形状を有する標的体積を治療するのに適している。特定体積(vi)の合計は、臨界体積(Vc)、即ち、線量が超高線量付着率で付着されるべきである体積を規定する。
【背景技術】
【0003】
粒子又は波(例えば、電子線、陽子線、重イオンビーム、x線、ガンマ線など)を用いた放射線治療は、腫瘍を有する患者を治療するための重要なツールになっている。ペンシルビーム走査(PBS)は、腫瘍細胞を含む標的体積に荷電粒子線を向けることからなる技法である。PBSは、腫瘍形状を映すために治療されるべき面積を形成することによって、周囲非癌性細胞への不必要な放射線照射を減らす。標的の形状に加えて、PBSは、標的内の照射細胞の位置に応じてビームレットの強度の局所調整を可能にする。ペンシルビーム走査は、様々なビームレットから構成される単一ビームで、又は様々なビームレットから各々構成される異なる向きの多数のビーム(強度変調陽子線治療(IMPT)とも呼ばれる)で、腫瘍を治療することができる。このような放射線によって、腫瘍細胞及び正常細胞の両方が損傷を受けるので、癌治療の大きな課題は、腫瘍細胞を効果的に破壊又は殺滅する一方、出来るだけ多くの正常細胞(特に、腫瘍細胞に隣接する正常細胞)を損傷しないことを保証することである。
【0004】
X線は、皮膚のレベルに近いX線エネルギーの大部分を付着させ、付着エネルギーは、深さと共に減少する。従って、腫瘍細胞の標的体積の上流に位置する正常組織は、標的体積の腫瘍細胞よりも高い線量を受ける。一方、荷電粒子線(特に、陽子)は、いわゆるブラッグピークを形成する、荷電粒子線のビーム経路の端部に近い荷電粒子線エネルギーの大部分を付着させる。深部で互い違いの各ブラッグピークを有する多数のビームレットを重畳することによって、個々のブラッグピーク(SOBP)の合計を、特定体積の全深部にわたって規定することができる。従って、陽子線によって交差した腫瘍細胞の体積の上流に位置する正常細胞は、特定体積内の腫瘍細胞よりも低い線量を受ける。その結果、陽子線治療は、深部腫瘍に高線量を付着させるのによく適している。
【0005】
歴史的に、放射線治療は、1Gy/s未満の通常線量付着率(CDR)での治療細胞への放射線量の送出を含んだ。稀な例外で、現在の放射線治療施設は、約0.03Gy/sの線量率で送出し、殆どの臨床試験計画書は、放射線場に位置する正常組織の許容限度を超える、従って、腫瘍細胞と一緒に正常組織を損傷することがある全標的線量に達するように蓄積された2~15GyのN個の標的部分線量の1日送出量を含む。最近、同じ線量が、通常線量付着率(CDR)又は超高線量付着率(HDR)で付着される場合、腫瘍細胞にでなく正常細胞に異なる効果を有することが観察されている。HDRは、通常適用される通常線量付着率(CDR)よりも大きい1つ又は複数のけた分であることができる。超高線量付着率(HDR)での線量の付着は、FLASH放射線治療(FLASH-RT)とも呼ばれる。HDRでの線量付着は、CDRでの同じ線量の通常付着と比較して正常組織を著しく損傷しないことができ、同時に、腫瘍細胞は、CDR付着よりもHDR付着に同じ又は更に多分良く反応することが、動物及び様々な臓器で実験的に証明されている。例えば、報告によれば、FLASH-RTは、抗腫瘍効果が不変でありながら、肺線維症、脳照射後の記憶障害、及び小腸の壊死の発生の著しい減少をマウスで引き出す。損傷しないこのような特定の正常組織は、FLASH-RTで既に治療されている皮膚リンパ腫を有する大型動物及び患者で確認されている。しかし、多くの治療センターは、ミリ秒又は秒のオーダーの時間で線量をHDRで送出することができる設備を処理せず、又は非常に限られた領域サイズでだけHDRで送出するように修正可能な設備を処理しない。このような効果は、1Gy/s以上のオーダーの線量付着率に対して観察された。
【0006】
図3(b)及び図3(c)に例示のように、中心照射軸(Z)に沿って伝搬する単一ビームレットは、中心照射軸(Z)に垂直なガウス分布曲線に近似的に従って線量を半径方向に付着させる。図3(b)で、ガウス分布曲線を、中心照射軸(Z)に垂直な方向(x)に沿って例示する。図3(c)は、ビームレットによって半径方向に付着された線量分布を陰影で例示する。図3(b)及び図3(c)で分かるように、PBSにおける2つの隣接陽子ビームレットのビーム軸は、スポット位置パターン(x、y)に従って分布し、一般的に、σの1.2倍と2.5倍との間、好ましくはσの1.3倍と1.5倍との間に含まれる距離だけ互いに隔てられる(但し、σは、中心照射軸(Z)に垂直な任意の表面(Pk)へのビームレットのガウス線量分布の分散である)。ビームレット(B1)は、第1のビームレット(B1)に隣接する第2のビームレット(B2)による線量付着のゾーン上に影響を与える平面(Pk)の面積に線量を付着させ、図3(b)に例示の波状分布曲線を生じることが分かる(2つの瘤だけを例示するけれども、この形状は、第1及び第2のビームレット(B1、B2)と異なるy位置で中心照射軸(Z)に沿って伝搬する追加の隣接ビームレットでより複雑になる)。このような重複は、平面(Pk)上の全面積への実質的に均一な線量付着を保証するのに重要である。しかし、これは、図3(a)に例示のFLASH効果への予想外の影響がある。波状分布曲線の振幅は、2つの隣接スポットの間の距離、及び所与の場所で線量を送出するスポットの数にとりわけ左右される(図2(b)~図2(e)を更に参照)。
【0007】
図3(a)は、特定体積(vi)の時間に応じて付着された線量の例を示す。約4秒の時間(t)に、十分にFLASH-RT効果の範囲内で、特定体積(vi)を中心としたビームレット(Bj)によって超高線量率(HDR)で線量(Dj)を付着させたことが分かる。しかし、同じ特定体積(vi)は、超高線量付着率で更に各々付着され、1秒と8秒との間に含まれる時間に、隣接特定体積向けの隣接ビームレット(B1、B2、Bj+1、Bk)から「漏れた」線量(D1、D2、Dj+1、Dk)を受けた。特定体積(vi)に付着された全蓄積線量
は、約4.5Gyである(即ち、
)。各ビームレット(B1~Bk)の線量は、1Gy/sよりも大きい超高線量付着率で付着されたけれども、図3(a)の例における特定体積(vi)への線量付着の全照射時間(ΔTi)は、特定体積(vi)への全線量付着率
が、1Gy/s未満であり、従って、FLASH-RT効果を失うようになる。この例は、単に数える瞬間線量付着率でなく、代わりに蓄積線量率
であるので、全領域にHDRで線量を付着させているにもかかわらず、FLASH-RT効果を失う危険性を示す。個々の全線量を超高線量付着率(HDR)で付着させたので、臨床医は、FLASH-RT効果があり、従って、正常組織を損傷しなかったという誤った印象を持つかもしれない。しかし、全付着率DR(vi)<1Gy/sで、蓄積線量を、HDRの代わりにCDRで付着させ、従って、正常細胞に対してCDRで許可された線量を超えるように、全線量を蓄積時間(ΔTi)にわたって付着させた場合、この印象は、誤っているかもしれない。5つのビームレット(B1~Bk)で蓄積線量
を付着させる図3(a)の本例において、蓄積時間ΔTi=7秒にわたって分布するHDRでの各線量付着は、FLASH-RT効果を得るには長過ぎる。
【0008】
(特許文献1)は、長過ぎる時間間隔で隣接特定体積向けのビームレットから特定体積が線量を受ける場合、FLASH-RT効果を失うという問題を特定する。その問題を解決するために、(特許文献1)は、照射操作の終わりに、1Gy/sよりも大きい平均付着率で各特定体積の少なくとも50%に線量を付着させるように、ビームレット放出の時系列を最適化することによって、特定体積の配列へのビームレットの照射の走査順序を規定するように構成されたビームレット走査順序段階を含む治療計画システムを記載している。ビームレット走査順序段階の様々な実施形態を記載している。例えば、第1のビームレットによって最初に照射されるべき初期スポットを最初に規定することによって、スカーフ順序単位細胞を規定する。次の2番目からn番目のスポットを規定し、各スポットは、互いに連続的に隣接し、2番目からn番目のビームレットを連続的に受けるために、全スポットは、第1の方向に沿って整列される。n番目のスポットで、順序は、(n+2)番目から2n番目のスポット(但し、2n番目のスポットは、1番目のスポットに隣接する)を再度覆うために第1の方向に沿って更に延在する前に、第2の方向(好ましくは、第1の方向に垂直な方向)に沿って隣接する次の(n+1)番目のスポットを含む。2n番目のスポットで、順序は、(2n+1)番目のスポットなどを覆うために、1番目のスポットと反対側の第2の方向に沿って1つのステップを延ばし、従って、第2の方向に沿って延在し、1番目のスポットをn番目のスポットから隔てる距離の幅にわたって第1の方向に沿って広がる巻きスカーフを規定する。
【0009】
(特許文献1)で規定のスカーフ順序単位細胞は、1つ又は複数のビームレットによって特定体積に付着される全線量の百分率の合計を超高線量付着率(HDR)で付着させることを保証する照射順序を規定するために非常に効率的であり、百分率は、少なくとも95%である。問題は、比較的単純で略直線形状を有する腫瘍に適用し、複雑な形状(例えば、図1に例示のような形状)を有する照射順序を規定するのに適さないことである。
【0010】
従って、FLASH-RT効果が必要な百分率で得られることを保証する、腫瘍細胞を含む標的体積の照射順序を規定する方法の必要性が残る。本発明は、治療されるべき所与の特定体積にわたって漏れる全ビームレットの任意の重複線量付着分布を考慮して必要に応じて、荷電粒子のPBSによって治療される標的にHDRで効果的に照射することを保証するという問題を解決する。これらの利点及び他の利点について、続いてより詳細に説明する。本発明のこれらの利点及び他の利点について、下記の節でより詳細に説明する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第3932482号明細書
【特許文献2】欧州特許第3932481号明細書
【発明の概要】
【0012】
本発明は、荷電粒子線、好ましくは陽子線を用いた放射線による治療用の走査順序を規定する方法において、周囲面内に囲まれる腫瘍細胞を含む標的体積(Vt)にエネルギー単層におけるペンシルビーム走査(PBS)によって線量(Dj)を付着させ、正常細胞を含む臨界体積(Vc)を規定する特定体積(vi)の重要な部分に超高線量付着率(HDR)で線量(Dj)を付着させることを保証し、HDRを、線量付着率
として規定し、Djは、照射の開始後の時刻tjにj番目のペンシルビームによって臨界体積(Vc)の特定体積(vi)に付着される線量であり、ΔTi=max({tj})-min({tj})は、最初の線量≧Dminを特定体積に付着させる場合の初期線量付着時刻(min({tj}))と最後の線量≧Dminを特定体積に付着させる場合の最終線量付着時刻(max({tj}))との間に及ぶ時間であり、Dminは、より低い線量限界である方法に関する。方法は、
・中心照射軸(X)に垂直な表面(P0=(Y、Z))に臨界体積(Vc)を含む標的体積(Vt)を投影することによって標的の周囲(Pt)で限られる標的面積(At)を規定するステップと、
・標的の周囲(Pt)内に規定される少なくとも全面積を覆うように、少なくとも標的の周囲(Pt)内に分布するスポット(Sj)の表面(P0)にスポット直径及びスポット位置パターンを規定するステップと、
・全スポット(Sj)を互いに接続する連続経路を規定し、全特定体積(vi)へのHDR付着を保証するように全特定体積(vi)で蓄積線量付着時間(ΔTi)を最小化するように構成されるスカーフ走査順序を確立するステップと、
を含む。
【0013】
・陽子線電流の所与の値に対して、粒子線の2方向戻り経路に沿って粒子線によって接触される全特定体積(vi)にHDR付着率で線量(Dj)を付着させることを保証しながら、粒子線が2方向戻り経路で走査することができるHDR走査距離(L)を規定し、
・標的の周囲(Pt)の形状を特徴付ける疑似仲介体(M)を規定し、
・連続経路は、疑似仲介体の片側又は両側に分布する多数の隣接スポットを接続する一連の経路区分を含み、
〇各経路区分は、疑似仲介体の長さに沿って分布する異なる点で疑似仲介体(M)と1回交差する又は交わり、
〇経路区分を2つずつ互いに接続し、HDR走査距離(L)以下の長さの一連の戻り経路区分を形成する
ように、スカーフ走査順序を確立する。
【0014】
・最後のスポットとして疑似仲介体の同じ側から、及び同じ側で最短距離に、又は
・最後のスポットとして疑似仲介体(M)の反対側から、及び反対側で最長距離に
位置する第2の経路区分のスポットに第1の区分の終了スポットを接続することによって第1の経路区分に隣接する第2の経路区分に第1の経路区分で接続される最後のスポットとして規定される第1の経路区分の終了スポットを接続することによって、戻り経路区分を形成することができる。
【0015】
疑似仲介体(M)を規定する異なる方法がある。第1の実施形態において、
・全標的面積(At)にわたって分布する基準点(RP)のセットを規定し、基準点(RP)は、好ましくは、スポット(Sj)の中心であり、
・第1の基準点(RP)を選択し、
・影響の半径(R)を規定し、
・第1の基準点(RP)を中心とした影響の半径(R)の影響の円内に囲まれる基準点(RP)として規定される影響点のセットを規定し、
・影響の円における全影響点のセットと同じ第2の慣性モーメントを有する影響の楕円を計算し、
・影響の楕円の長軸を識別し、
・第1の基準点(RP)から開始して、長軸に平行な方向及び任意の長さの流れベクトルを規定し、
・影響の同じ半径(R)の影響の円を有する全基準点(RP)に対して、上述のステップを繰り返し、
・流れベクトルを互いに接続し、流れ線を規定し、
・疑似仲介体(M)を形成するように標的の周囲(Pt)の1つの端部から別の端部に延在する1つの流れ線を選択する
ように、疑似仲介体(M)を規定することができる。
【0016】
第2の実施形態において、
・2つの交点で標的の周囲と交差する第1の方向の第1の接続線分を規定し、線分の長さを、2つの交点を隔てる距離として規定し、
・接続線分の中心に位置する点として規定される第1の接続線分の第1の中点(MP)を規定し、
・第1の方向に平行な更なる接続線分を用いて、上述のステップを繰り返し、
・全中点(MP)を接続し、疑似仲介体(M)を規定する
ように、疑似仲介体(M)を規定することができる。
【0017】
第1の接続線分及び更なる接続線分は各々、少なくとも1つのスポット(Sj)、好ましくは少なくとも2つのスポット(Sj)の中心を通過することが好ましい。
【0018】
第3の実施形態において、
・所与の寸法及び向きの基準長方形を規定し、
・全標的面積を覆うように、一連の基準長方形で標的面積(At)を覆い、
・第1の基準長方形に対して、第1の基準長方形で囲まれるスポット(Sj)を識別し、
・第1の基準長方形で囲まれるスポット(Sj)の幾何学的中央値(GM)を判定し、幾何学的中央値は、疑似仲介体(M)の第1のドットを形成し、
・全基準長方形に対して最後の2つのステップを繰り返し、ドットの列を形成し、
・このように形成されたドットを接続し、疑似仲介体(M)を形成する
ように、疑似仲介体(M)を規定する。
【0019】
・長さ(Lb)の長辺及び長辺と平行に延在する主要中央値を有する幅(Wb<Lb)の短辺を有する長方形基準ボックス(RB)を規定し、Lb<L及びWbは、2つの隣接スポット(Sj)の中心を隔てる最短距離(ds)の2倍よりも小さく(即ち、Wb<2ds)、
・少なくとも1つの基準ボックスで全スポット(Sj)を囲むように、主要中央値が、疑似仲介体(M)と交わり、好ましくは90度の所与の角度を成した状態で、一連の基準ボックス(RB)で標的面積(At)を覆い、
・1つの基準ボックスで囲まれるスポット(Sj)を有する経路区分を規定し、各スポット(Sj)は、1つを超える基準ボックスで囲まれる場合でも、単一経路区分に属し、
・経路区分を2つずつ互いに接続し、連続経路を形成する
ように、スカーフ走査順序を確立することができる。
【0020】
・線量が重要でない効果を有すると考えられる絶対線量値として、又は
・特定体積(vi)に付着される全線量の百分率(好ましくは、Dminは、特定体積(vi)に付着される
の少なくとも5%、より好ましくは
の少なくとも10%である)として、
より低い線量限界(Dmin)を規定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、腫瘍細胞を含む標的体積(Vt)、及び標的の周囲(Pt)で限られる標的面積(At)を規定する、中心照射軸(X)に垂直な表面(P0=(Y、Z))への標的体積(Vt)の投影の例を示す。
図2a図2(a)は、線量が付着されるべき個々の特定体積の表面(P0)への投影の中心点に対応するスポット(Sj)の配列によって覆われた図1の標的面積(At)を例示する。二重線は、疑似仲介体(M)を示す。
図2b図2(b)は、異なる方向に沿った2つの隣接ビーム(B1~B5)を隔てる距離を示す。
図2c図2(c)は、図2(b)に規定のように、それぞれ距離L12、L14、及びL15だけ互いに隔てられた各特定体積を中心とした2つのビームレットによって連続的に照射された2つの隣接特定体積に付着された線量を示す。
図2d図2(d)は、図2(b)に規定のように、それぞれ距離L12、L14、及びL15だけ互いに隔てられた各特定体積を中心とした2つのビームレットによって連続的に照射された2つの隣接特定体積に付着された線量を示す。
図2e図2(e)は、図2(b)に規定のように、それぞれ距離L12、L14、及びL15だけ互いに隔てられた各特定体積を中心とした2つのビームレットによって連続的に照射された2つの隣接特定体積に付着された線量を示す。
図3a図3(a)は、FLASH-RT効果が得られないような時系列によって互いに隔てられた特定体積及び隣接特定体積に整列された連続ビームレットによって特定体積に付着された蓄積線量を示す。
図3b図3(b)は、X軸に沿ってガウス線量分布曲線が重複した、2つの陽子ビームレット(B1、B2)によって平面(x、z)上に付着された線量を示す。
図3c図3(c)は、中心照射軸(Z)に沿った2つのビームレット(B1、B2)の略円筒伝搬の三次元ビュー(x、y、z)、患者の皮膚の表面からある深さ(Zk)に位置する平面(Pk)に付着された線量を例示する灰色の陰影を示す。
図4.1】図4.1は、第1の照射順序又はビーム軌道による一連のスポットS1~S7を中心とした7つ特定体積の各々に付着された蓄積線量を示す。
図4.2】図4.2は、第1の照射順序又はビーム軌道による一連のスポットS1~S7を中心とした7つ特定体積の各々に付着された蓄積線量を示す。
図4.3】図4.3は、第1の照射順序又はビーム軌道による一連のスポットS1~S7を中心とした7つ特定体積の各々に付着された蓄積線量を示す。
図4.4】図4.4は、第1の照射順序又はビーム軌道による一連のスポットS1~S7を中心とした7つ特定体積の各々に付着された蓄積線量を示す。
図4.5】図4.5は、第1の照射順序又はビーム軌道による一連のスポットS1~S7を中心とした7つ特定体積の各々に付着された蓄積線量を示す。
図4.6】図4.6は、第1の照射順序又はビーム軌道による一連のスポットS1~S7を中心とした7つ特定体積の各々に付着された蓄積線量を示す。
図4.7】図4.7は、第1の照射順序又はビーム軌道による一連のスポットS1~S7を中心とした7つ特定体積の各々に付着された蓄積線量を示す。
図5.1】図5.1は、第1の照射順序と異なる第2の照射順序又は照射経路(IP)による、図4.1~図4.7と同じ7つ特定体積の各々に付着された蓄積線量を示す。
図5.2】図5.2は、第1の照射順序と異なる第2の照射順序又は照射経路(IP)による、図4.1~図4.7と同じ7つ特定体積の各々に付着された蓄積線量を示す。
図5.3】図5.3は、第1の照射順序と異なる第2の照射順序又は照射経路(IP)による、図4.1~図4.7と同じ7つ特定体積の各々に付着された蓄積線量を示す。
図5.4】図5.4は、第1の照射順序と異なる第2の照射順序又は照射経路(IP)による、図4.1~図4.7と同じ7つ特定体積の各々に付着された蓄積線量を示す。
図5.5】図5.5は、第1の照射順序と異なる第2の照射順序又は照射経路(IP)による、図4.1~図4.7と同じ7つ特定体積の各々に付着された蓄積線量を示す。
図5.6】図5.6は、第1の照射順序と異なる第2の照射順序又は照射経路(IP)による、図4.1~図4.7と同じ7つ特定体積の各々に付着された蓄積線量を示す。
図5.7】図5.7は、第1の照射順序と異なる第2の照射順序又は照射経路(IP)による、図4.1~図4.7と同じ7つ特定体積の各々に付着された蓄積線量を示す。
図6a図6(a)は、基準点に基づく最適楕円方法による疑似仲介体の構成の実施形態を示す。
図6b図6(b)は、基準点に基づく最適楕円方法による疑似仲介体の構成の実施形態を示す。
図7a図7(a)は、基準点がスポットである基準点に基づく最適楕円方法による疑似仲介体の構成の実施形態を示す。
図7b図7(b)は、基準点がスポットである基準点に基づく最適楕円方法による疑似仲介体の構成の実施形態を示す。
図8図8は、中点方法による疑似仲介体の構成の実施形態を示す。
図9図9は、幾何学的中央値方法による疑似仲介体の構成の実施形態を示す。
図10a図10(a)は、基準ボックスで標的面積を覆う実施形態を示し、図7(a)及び図7(b)に例示のような最適楕円方法によって規定された疑似仲介体(M)を有する。
図10b図10(b)は、基準ボックスで標的面積を覆う実施形態を示し、スポットの六角形パターン、及び図8に例示のような中点方法によって規定された疑似仲介体(M)を含む。
図10c図10(c)は、基準ボックスで標的面積を覆う実施形態を示し、図9に例示のような幾何学的中央値方法によって規定された疑似仲介体(M)を有する。
図11a図11(a)は、図10(a)の基準ボックスで囲まれた経路線分を2つずつ接合する方法の実施形態を示す。
図11b図11(b)は、図10(b)の基準ボックスで囲まれた経路線分を2つずつ接合する方法の実施形態を示す。
図11c図11(c)は、図10(c)の基準ボックスで囲まれた経路線分を2つずつ接合する方法の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、荷電粒子線、好ましくは陽子線を用いた放射線による治療用の走査順序を規定する方法に関する。このような放射線治療は、標的体積(Vt)内に囲まれる腫瘍細胞を殺滅する。しかし、標的体積(Vt)は、正常細胞で囲まれ、腫瘍細胞と同じレベルの線量付着にさらされる標的体積(Vt)内に正常細胞を含むことがある。正常細胞を損傷しないことによって腫瘍細胞を殺滅する場合、付随的な損傷を回避することは課題である。正常細胞にとって許容できる最大全線量を、所与の放射線照射時に合併症を引き起こす所与の組織の確率を規定する正常組織合併症確率(NTCP)に対して規定することができる。臓器の選択に対するNTCPの所与の値をもたらす放射線の限界線量の値は、文献で入手できる。
【0023】
線量を超高付着率で付着させるFLASH-RTは、場合により、難しい問題を解決する解決策の一部であることができる。腫瘍細胞は、線量付着率にかかわらず、放射線によって等しく殺滅されるように見えるけれども、正常細胞は、NTCPの所与の値に対する超高付着率で、従来の付着率よりも高い線量を受けることがある(例えば、(特許文献2)の表1及び表2、及び図4(a)及び図4(b)を参照)。PBSによって治療される所与の特定体積は、所与の特定体積を中心としたビームレット(Bj)から、更に隣接する特定体積を中心としたビームレットから線量を受けるので、走査順序が、全スポットで超高線量付着率をもたらすには高過ぎる時間(ΔTi)にわたって隣接スポットを走査するステップを含む場合、全特定体積にHDRで所望の線量
を付着させることができないかもしれない。線量付着率は、
であり、Djは、照射の開始後の時刻tjにj番目のペンシルビームによって標的体積(Vt)の臨界体積(Vc)の特定体積(vi)に付着される線量であり、ΔTi=max({tj})-min({tj})は、最初の線量を特定体積に付着させる場合の初期線量付着時刻(min({tj}))と最後の線量を特定体積に付着させる場合の最終線量付着時刻(max({tj}))との間に及ぶ時間である場合、所望の線量
を特定体積に付着させ、所望の線量
を合計する。換言すれば、ΔTi=max({tj})-min({tj})は、特定体積(vi)へのDj≧Dminの重要な線量寄与でビームレットが特定体積(vi)に付着している蓄積線量付着時間であり、Dminは、より低い線量限界である。
【0024】
標的体積(Vt)は、殺滅されるべき腫瘍細胞を含む必要があるけれども、腫瘍細胞の放射線治療の影響を受ける任意の正常細胞を更に含む。これらの正常細胞は、腫瘍細胞の群を囲むことができる。正常細胞を、腫瘍細胞と混合することができ、又は、正常細胞は、例えば、正常細胞が腫瘍細胞に達する前にビームレットによって横断されるべき腫瘍細胞の上流に位置することができる。必ずしも連続している必要がない臨界体積(Vc)で正常細胞を囲み、正常細胞は、幾つかの部分体積に分布することができる。下記で、同じ方法を、必要に応じて各部分体積に適用することができるので、連続臨界体積又は単一部分体積の治療について説明する。本発明の方法は、腫瘍細胞を含む標的体積(Vt)を規定する周囲面内に囲まれる正常細胞を含む臨界体積(Vc)を規定する特定体積(vi)の重要な部分に超高線量付着率(HDR)でエネルギー単層におけるペンシルビーム走査(PBS)によって線量(Dj)を付着させることを保証することができる。臨界体積(Vc)を、標的体積(Vt)内に完全に囲む。上述のように、HDRを、線量付着率
として規定し、
・Djは、照射の開始後の時刻tjにj番目のペンシルビームによって臨界体積の特定体積(vi)に付着される線量であり、

は、所与の体積に1つ又は複数のビームレットによって付着される全線量の百分率の合計であり、百分率は、少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%であり、
・ΔTi=max({tj})-min({tj})は、特定体積(vi)へのDj≧Dminの重要な線量寄与でビームレットが特定体積(vi)に付着している蓄積線量付着時間であり、Dminは、より低い線量限界である。
【0025】
方法は、標的面積(At)、スポット直径及びスポット位置パターンを規定するステップ、及び一連のビームレット(Bj)による特定体積(vi)の照射のスカーフ走査順序を確立するステップを含む。
【0026】
標的面積(At)は、中心照射軸(X)に垂直な表面(P0=(Y、Z))に標的体積を投影することによって、標的の周囲(Pt)で限られる。スポット(Sj)の表面(P0)上のスポット直径及びスポット位置パターンを特徴とするスポット(Sj)の配列を規定する。配列のスポット(Sj)は、標的の周囲(Pt)内に規定される少なくとも全面積を覆うように、少なくとも標的の周囲(Pt)内に分布する。
【0027】
スカーフ走査順序は、全スポット(Sj)を互いに接続する連続経路を規定するように確立される。スカーフ走査順序は、全特定体積(vi)へのHDR付着を保証するように各特定体積(vi)で蓄積線量付着時間(ΔTi)を最小化するように構成される。(特許文献1)と違って、本発明の骨子は、スカーフが、後述のように、直線軌道ではなく曲線軌道に従うことができることにある。
【0028】
陽子線電流の所与の値に対して、粒子線の2方向戻り経路に沿って粒子ビームレットによって接触される全特定体積(vi)にHDR付着率で線量(Dj)を付着させることを保証しながら、粒子線が2方向戻り経路で走査することができるHDR走査距離(L)を規定する。2方向戻り経路でビームレットが続く経路は、2Lの長さを有することに留意せよ。
【0029】
標的の周囲(Pt)の形状を特徴付ける疑似仲介体(M)を規定する。疑似仲介体(M)を規定する異なる方法について、後述する。
【0030】
疑似仲介体を規定する時に、連続経路は、疑似仲介体(M)の片側又は両側に分布する多数の隣接スポット(Sj)を接続する一連の経路区分を含む。全スポット(Sj)を少なくとも1つの経路区分で囲むことを保証するのに十分な経路区分がある。各経路区分は、疑似仲介体の長さに沿って分布する異なる点で疑似仲介体(M)と1回交差する又は交わる。経路区分を2つずつ互いに接続し、HDR走査距離(L)以下の長さの一連の戻り経路区分を形成する。全戻り経路区分の組み合わせは、走査順序を規定する。
【0031】
標的面積(At)及びスポット(Sj)の配列
標的面積(At)は、中心照射軸(Z)に垂直な平面(P0)に標的体積を投影することによって簡単に得られる。ビームレット(Bj)は、少なくとも標的面積(At)を底面が囲む走査コーンの頂点を形成すると考えることができるノズルから出る。中心照射軸(Z)を、ノズルの軸方向軸によって規定する。ビームレットは、走査コーン内で走査し、従って、全標的面積(At)を覆うことができる。ビームレットが対応する全標的面積(At)にわたって走査することができるには腫瘍が大き過ぎる場合、全標的面積を覆うために患者を移動させることを含む2つ(以上)の段階で、照射期間を実行する必要がある。平面(P0)までのノズルの距離は、標的面積(At)の直径よりも実質的に大きいので、走査コーンの口径のために、ビームレットを、中心照射軸(Z)に略平行であるように(これは、厳密には当てはまらないけれども)近付けることができる。
【0032】
ビームレットの強度は、単位時間毎に放出される荷電粒子の数、従って、1つのスポット(Sj)における線量付着率を規定する。ビームレット強度は、使用される粒子加速器のタイプに付随する上限を有する。本発明において、HDRで各個々の特定体積(vi)に必要な線量(Dj)を付着させるのに十分な強度のビームレットを計量供給するように、粒子加速器を構成する必要がある(即ち、Dj/tj≧1Gy/s)。これは、照射期間の終わりに、実質的に全ての標的体積(Vt)にHDRで線量を付着させることを保証するのに必要で不十分な条件である(即ち、Σ{tj}Dj/Δtj≧1Gy/s、但し、Δtj=max({tj})-min({tj}))。
【0033】
図3(b)に概略的に例示のように、単層でPBSによって標的体積(Vt)を描くために、各スポット(Sj)を中心とした幾つかの重畳及び同軸ビームレットを放出し、各ビームレットによって生成される標的組織の形状、ビームレットの強度などに応じて、SOBPの所望の形状を規定する。表面(P0)上のスポット位置パターン(x、y)、及び1つ又は一連の同軸ビームレットによって形成されるスポット(S01、S02)の直径を規定する必要がある。当業者は、スポットの位置及び直径を最適に規定する方法を知っている。
【0034】
スポットの直径(d)
図3(c)に示すように、中心照射軸(Z)と実質的に平行なビームレット軸に沿って伝搬し、スポット中心(cp、cr)で表面(P0)(但し、表面(P0)は、少なくともスポット中心で患者の皮膚に接触する)と実質的に垂直に交差するビームレット(B1、B2)によって、直径(d)のスポット(S01、S02)を表面(P0)に形成する。スポットの直径は、このビームレットによって表面(P0)に付着される線量分布に左右される。表面上の線量分布は、図3(b)に例示のように、ビームレット軸の表面(P0)との交差点(cp、cr)を中心とした、分散σの実質的に正規又はガウス分布に従う。任意の所与の深さ(Zk、但し、k=0-n)にビームレットによって付着される線量(Dj)は、ビームレット軸と対応する平面(Pk、但し、k=0-n)との間の交差点(cp、cr)で最大である。対応するスポット中心(cp、cr)を中心としたd=2×(2σ)(線量分布の95.4%を含む)、又は代わりにd=2×(3σ)(線量分布の99.7%を含む)として、スポット直径(d)を規定することができる。好ましくは、スポット直径を、d=2×(2σ)として規定する。
【0035】
図3(c)について説明する。ここで、スポット直径(d)は、アイソセンター面(Pk)で測定され、好ましくは、σ(σ=分散)の倍数、d=mσ(好ましくは、但し、m=2、3又は4)である。図3(b)に示すように、標的の深さにビームレット(Bj)によって付着される線量分布のσの値は、標的tで均一線量を生じるスポット間隔を計算すると考えられる必要がある。
【0036】
スポット位置パターン(x、y)
ペンシルビーム走査(PBS)による照射は、中心照射軸(Z)と実質的に平行な異なるビームレットによって形成されるスポット(S01、S02)の表面(P0)に規定されるべきスポット位置パターン(x、y)を必要とする。スポット位置パターン(x、y)は、必要な線量を実質的に全ての標的体積(Vt)に付着させることができるように、スポットが全標的面積(At)を覆うことを保証する必要がある。標的の深さにおけるスポット直径(d)を知ると、標的の周囲(Pt)内に囲まれた面積を均一に覆うために、表面(P0)上のスポット位置パターン(x、y)を、中心照射軸(Z)に平行な表面への投影によって自動的に判定する。長方形のスポット位置パターン(x、y)の例を、スポットの中心を×印で示す図2(a)に概略的に示す。図10(b)及び図11(b)は、六角形分布に従って配置された代替のスポットパターンを示す。図10(b)及び図11(b)を除いて、図2(a)と同じスポット位置パターンを、一貫して図6図11で再生する。
【0037】
σの1.2倍と2.5倍との間、好ましくはσの1.3倍と1.5倍との間に含まれる距離(但し、σは、標的の深さで中心照射軸(Z)に垂直な任意の平面(Pk)に陽子ビームレット(Bj)によって形成されるガウス線量分布の分散である)だけ互いに隔てたスポットの配列にビームレット(Bj)を集中することによって、実質的に全ての標的体積(Vt)への均一線量付着を生成することができる。このようなスポット位置パターンの場合、2つの隣接スポットのガウス分布の衝突は、図2(c)に示すように、実質的に一定の値になる。2つの隣接スポット軸を隔てる距離は、隣接スポットの全対に対して一定である必要がなく、周囲面の形状に適合するために互いに異なることができる。簡単にするために、同じ直径のスポットの規則的な配列だけを例示する。標的体積(Vt)の全体積をこのように覆う限り、任意のパターンに従って又は更にランダムに分布された異なる直径のスポットを規定することができることが明らかである。
【0038】
図3(b)に示すように、X軸に平行な線上のこのようなスポット位置パターンは、ビームレット軸のレベルで最大を有し、2つの隣接ビームレット軸の間の中間距離で最小を有する波状線量分布パターンを生じる。第2の線におけるビームレットを第1の線のビームレットに対して整列させるか互い違いに配置するかに応じて、軸(x)に平行で、図3(b)に示すビームレット(B1、B2)に対してずれたスポットの第2の列をPBSが走査する場合、線量分布パターンは、より複雑になる。これは、出来るだけ最良のスポット位置パターン(x、y)を規定することが当業者にとってどれ程重要であるかを示す。これは、当業者の権限内である。
【0039】
図2(b)は、ビームレットを連続的に集中するスポットの長方形配列を示す。隣接スポットの3つの距離、Y軸に沿って整列されたビームレットB1及びB4の間の距離L14、X軸に沿って整列されたビームレットB1及びB2の間の距離L12、及び長方形配列の対角線に沿って整列されたビームレットB1及びB5の間の距離L15(但し、L14<L12<L15)を規定する。図2(c)~図2(e)は、スポットを分離する距離(L12、L14、L15)に応じて、他のスポットから分離される2つの隣接スポットによって場所B1を中心とした特定体積(vi)に付着された得られる蓄積線量を例示する。例えば、図2(b)について説明する。特定体積(vi)を、スポットS1で位置B1の中心に置く。Y軸に沿って整列された隣接スポットが、距離L14だけ離れて最も近く、スポットS1を中心としたビームレットB1のガウス分布が、スポットS1を中心とした対応する特定体積(vi)の位置に最大線量を送出する一方、スポットS4を中心としたビームレットB4のガウス分布が、スポットS1に対応する特定体積(vi)に一層低いけれども重要な線量を送出することが、図2(c)で分かる。重要な線量は、Dj≧Dmin(但し、Dminは、より低い線量限界である)として規定される線量である。Dmin未満の線量は、スポットに付着される全線量を著しく増加しない。線量Dminは、所与の特定体積に付着されるべき全線量
の百分率、又は臨界体積(Vc)に付着されるべき線量の平均の百分率であることができる。例えば、Dminは、特定体積に付着されるべき全線量
、又は臨界体積(Vc)のスポットに付着されるべき線量の平均の1%と10%との間、好ましくは2%と5%との間に含まれることができる。代わりに、Dminは、例えば、NTCPを考慮して、照射される組織に値が依存する絶対値であることができる。
【0040】
同様に、図2(d)は、それぞれスポットS1、S2を中心としたビームレット(B1、B2)のガウス分布を示す。スポットS1、S2を、X軸に沿って整列させ、距離L12>L14だけ隔てる。ビームレットB2は、図2(c)に例示のビームレットB4よりも低い線量を、スポットS1を中心とした特定体積に付着させるけれども、その線量は、Dminよりもまだ実質的に高い。最後に、図2(e)は、その例で、スポットS5を中心としたビームレットB5によって付着される線量が、スポットS1を中心とした特定体積に重要でない線量(即ち、Dj>Dmin)を付着させることを示す。スポットS5を、長方形配列の対角線に沿って整列させ、距離L15(図2(b)参照)だけスポットS1から隔てる。第1のスポットを中心とした第1のビームレットが、隣接する第2のスポットを中心とした特定体積(vi)に重要でない線量Dj<Dminを付着させるように、第1及び第2のビームレット/スポットを隔てる臨界距離を判定することは、臨界距離を超える距離だけ所与の特定体積に対応するスポットから隔てられた任意のビームレットによる所与の特定体積に対する線量付着寄与を、蓄積線量付着時間ΔTiの判定に対して考慮しないので、蓄積線量付着時間ΔTi=max({tj})-min({tj})の計算に重要である。例えば、図2(a)~図2(e)に例示の場合、長方形配列の対角線の場合の線量寄与は関係がない(即ち、<Dmin)ので、X軸及びY軸だけに沿って整列され、長方形配列の対角線に沿って整列されない隣接スポットを中心としたビームレットを考慮して、特定体積(vi)への蓄積線量付着時間ΔTiを計算する。
【0041】
より低い線量限界(Dmin)を、線量が重要でない効果を有すると考えられる絶対線量値として規定することができる。代わりに、より低い線量限界(Dmin)を、特定体積(vi)に付着される全線量の百分率として規定することができる。例えば、Dminは、特定体積(vi)に付着される
の少なくとも5%、好ましくは
の少なくとも10%であることができる。
【0042】
疑似仲介体(M)
(特許文献1)に記載のスカーフ順序単位細胞が「直線スカーフ」だけを規定する場合、本発明は、腫瘍の形状と一致する「折り畳みスカーフ」を規定するように提案する。この目的を達成するために、本発明の方法は、標的の周囲(Pt)の形状を特徴付ける疑似仲介体(M)を規定するステップを含む。疑似仲介体(M)の例を、図2(a)に示す(二重線参照)。疑似仲介体(M)は、スポット(Sj)の順序による規定される照射経路(IP)が続く標的面積(At)の骨格を規定し、ビームレットは、連続的に狙いを定める。幾つかの方法を適用して、疑似仲介体(M)を規定することができる。例えば、疑似仲介体を、連続的に記載の最適楕円方法、中点方法、又は幾何学的中央値方法のうち何れか1つによって判定することができる。疑似仲介体(M)が標的面積(At)の形状の骨格を規定する限り、他の方法を使用して、疑似仲介体(M)を規定することができる。
【0043】
最適楕円方法
最適楕円方法を、図6(a)及び図6(b)、及び図7(a)及び図7(b)に例示する。まず、図6(a)に示すように、全標的面積(At)にわたって分布する基準点(RP)のセットを規定する。スポット(Sj)の配列は既に規定されているので、図7(a)に示すように、基準点(RP)は、スポット(Sj)の中心であることが好ましい。第1の基準点(RP)/スポット(Sj)を選択し、影響の半径(R)を規定する。影響点のセットを、第1の基準点(RP)/スポット(Sj)を中心とした影響の半径(R)の影響の円内に囲まれた基準点(RP)/スポット(Sj)として規定する。
【0044】
次に、影響の円における全影響点のセットと同じ第2の慣性モーメントを有する影響の楕円を計算する。影響の楕円の長軸を識別し、長軸に平行な方向及び任意の長さの流れベクトルを規定し、第1の基準点(RP)/スポット(Sj)から開始する。
【0045】
影響の同じ半径(R)の影響の円及び同じ任意の長さの流れベクトルを有する全基準点/スポットに対して、上述のステップを繰り返す。図6(b)及び図7(b)に示すように、流れベクトルを互いに接続し、流れ線を規定する。疑似仲介体(M)を形成するように標的の周囲(Pt)の1つの端部から別の端部に延在する1つの流れ線を選択することによって、疑似仲介体を規定することができる。
【0046】
図6(a)及び図6(b)を比較することによって分かるように、基準点/スポットが、中心に位置決めされるか、標的の周囲(Pt)の外部境界に隣接するかにかかわらず、標的の周囲の一端に位置決めされた任意の基準点/スポットを選択することができる。計算時間を節約するために、上述の動作を実行するプロセッサは、標的の周囲の一端に位置する基準点/スポットを第1の基準点(RP)/スポット(Sj)に選択することができる。一旦流れベクトルを初めて規定すると、流れベクトルに最も良く整列され、第1の基準点/スポットに最も近い第2の基準点(RP)/スポット(Sj)で処理を繰り返す。
【0047】
中点方法
疑似仲介体(M)を規定する代替の方法は、図8に例示の中点方法である。中点方法において、第1の方向を有し、2つの交点で標的の周囲と交差する第1の接続線分を規定する。線分の長さを、2つの交点を隔てる距離として規定する。第1の接続線分の中点を、第1の接続線分の中心に位置する点として規定する。第1の方向に平行な更なる接続線分を用いて、上述のステップを繰り返す。全中点を接続して疑似仲介体(M)を規定することによって、疑似仲介体を形成することができる。第1の接続線分及び更なる接続線分は各々、少なくとも1つのスポット(Sj)、好ましくは少なくとも2つのスポット(Sj)の中心を通過することが好ましい。
【0048】
幾何学的中央値方法
疑似仲介体(M)を規定する更なる代替の方法は、図9に例示の幾何学的中央値方法である。幾何学的中央値方法は、所与の寸法及び向きの基準長方形(RR)の規定から開始する。次に、全標的面積を覆うように、一連の基準長方形(RR)で標的面積(At)を覆う。基準長方形(RR)は、重複しても重複しなくてもよい。各基準長方形(RR)で囲まれたスポット(Sj)を識別し、各基準長方形(RR)で囲まれたスポット(Sj)の幾何学的中央値を判定する。各基準長方形(RR)に対してこのように判定された幾何学的中央値は、疑似仲介体(M)の対応するドットを形成する。2つの基準長方形(RR)が重複し、両方の基準長方形(RR)が同じスポット(Sj)を囲む場合、各基準長方形(RR)に関連する幾何学的中央値を判定するために、各基準長方形(RR)に対して1回、同じスポット(Sj)を、2回考慮する。このように形成されたドットを接続して疑似仲介体(M)を形成することによって、疑似仲介体(M)を規定する。
【0049】
基準長方形(RR)で囲まれたスポットのセットの幾何学的中央値は、スポットまでの距離の合計を最小化する点である。ユークリッド空間において、基準長方形(RR)で囲まれたm個のスポット(Sj)のセットの幾何学的中央値(GM)は、式
を満たす。
【0050】
照射順序の規定
ビームレットによって連続的に照射されるべきスポット(Sj)の順序を規定する照射経路(IP)を、疑似仲介体の片側又は両側に分布する多数の隣接スポットを接続する一連の経路区分に分割することができる。各経路区分は、疑似仲介体の長さに沿って分布する異なる点で疑似仲介体(M)と1回交差する又は交わる。経路区分を2つずつ互いに接続し、HDR走査距離の2倍(2L)以下の長さの一連の戻り経路区分を形成する。
【0051】
基準ボックス(RB)
走査距離(L)以下の長さ(Lb)の長辺、及び短辺に平行な方向に沿って2つの隣接スポットを隔てる最短距離(ds)以下の幅(Wb<Lb)の短辺を有する長方形基準ボックス(RB)を導入することによって、各経路区分を規定することができる。少なくとも1つの基準ボックス、好ましくは単一基準ボックスで全スポットを囲むように、及び各基準ボックス(RB)の主要中央値が、少なくとも1回、好ましくは1回だけ疑似仲介体(M)と交わるように、基準ボックス(RB)で標的面積(At)を覆うことができる。
【0052】
図10(a)~図10(c)に示すように、基準ボックス(RB)は様々な方法で標的面積を覆うことができる。例えば、図10(a)は、スポット(Sj)の長方形配列、及び図7(a)及び図7(b)に例示のような最適楕円方法によって得られる疑似仲介体(M)を有する標的面積(At)を示す。基準ボックス(RB)を全て、Y軸に平行な長辺に整列させる。1つのスポット(Sj)を2つの異なる基準ボックス(RB)で囲むことが分かる。経路線分を接合する時に、そのスポットを、2つの基準ボックス(RB)のうち1つだけで囲まれた他方のスポットに連結し、2つの基準ボックス(RB)のうち他方の基準ボックス(RB)で囲まれたスポットを連結した際に、そのスポットを無視する。
【0053】
図10(b)は、図10(a)と同じ標的面積(At)がスポットの六角形配列を含む代替の例を示す。この例において、疑似仲介体を、図8に例示のような中点方法によって規定した。基準ボックス(RB)を全て、スポットと整列させて、X軸に60度で整列させる。この実施形態において、全スポットを、1つだけの基準ボックスで囲む。
【0054】
図10(c)は、図10(a)と同じ標的面積(At)がスポット(Sj)の同じ長方形配列を含む更なる代替の例を示す。ここで、疑似仲介体を、図9に例示のような幾何学的中央値方法を用いて規定した。ここで、基準ボックス(RB)を、疑似仲介体(M)に垂直な基準ボックス(RB)の主要中央値に整列させる。図10(a)の実施形態のように、1つのスポットを、2つの基準ボックス(RB)で囲むことができる。
【0055】
最初に、図10(a)~図10(c)は、基準ボックス(RB)が、異なる基準に従って標的面積(At)を覆い、異なる覆いパターンであるけれども、最適照射順序を規定するのに全部適しているパターンを生じることができることを示す。次に、疑似仲介体(M)が標的面積(At)の形状の「骨格」の特徴を規定し、疑似仲介体に沿って基準ボックス(RB)の位置決めを導く限り、疑似仲介体(M)を規定するために使用される方法は、重要でない。
【0056】
スポットを接合して連続経路又は照射経路(IP)を規定する
ここで、各スポット(Sj)を1回及び1回だけ通る連続経路又は照射経路(IP)を規定することができ、1つ又は複数のビームレットによって標的体積に付着される全線量の百分率の合計を超高線量付着率(HDR)で付着させることを保証する。
【0057】
まず、1つの基準ボックス(RB)で囲まれたスポット(Sj)を同じ基準ボックス内の最も近い隣接スポットに接合することによって、経路区分を個々の基準ボックスで規定する。基準ボックス(RB)のサイズのために、各経路区分の最大長は、走査距離(L)に近く、走査距離(L)よりも短い。スポットを、1つを超える基準ボックスで囲む場合、そのスポットを、1つの基準ボックス(RB)だけに対して考慮し、そのスポットを囲む他の基準ボックス(RB)で経路区分を規定した場合に、そのスポットを無視する。次に、各基準ボックス(RB)の経路区分を、2つずつ互いに接続し、連続経路を形成する。これは一般的に、第1の基準ボックスに隣接する第2の基準ボックスで囲まれた第2の経路区分の終点に第1の基準ボックス(RB)で囲まれた第1の経路区分の終点におけるスポットを接合することによって実行される。これは、異なる方法で達成可能である。
【0058】
図4.1~図4.7及び図11(a)に例示の一実施形態において、第1の経路区分の1つの終点を、第1の経路区分の最も近くに位置する第2の経路区分の終点に接合する。これは、第1及び第2の経路区分の隣接スポット(Sj)の間で、最長及び最短蓄積線量付着時間(ΔTi)の間の変化を最大化する。これを、下記を用いて図4.1~図4.7にグラフで例示する。
・最短蓄積線量付着時間(ΔTi)は、t5-t4だけの蓄積線量付着時間(ΔTi(D4))で図4.4に例示のスポット(S4)にある一方、
・最長蓄積線量付着時間(ΔTi)は、t7-t1の間、蓄積線量付着時間(ΔTi(D1)=ΔTi(D7))で図4.1及び図4.7に例示のスポット(S1)及び(S7)にある。
【0059】
図5.1~図5.7及び図11(c)に例示の代替の実施形態において、第1の経路区分の1つの終点を、第1の経路区分から最も遠くに位置する第2の経路区分の終点に接合する。これは、第1及び第2の経路区分の隣接スポット(Sj)の間で、最長及び最短蓄積線量付着時間(ΔTi)の間の変化を最小化する。これを、下記を用いて図5.1~図5.7にグラフで例示する。
・最短蓄積線量付着時間(ΔTi)は、t7-t6だけの蓄積線量付着時間(ΔTi(D7))で図5.7に例示のスポット(S7)にある一方、
・最長蓄積線量付着時間(ΔTi)は、t6-t1の間、蓄積線量付着時間(ΔTi(D2))で図5.2に例示のスポット(S2)にある。
【0060】
本発明による照射順序
図4.1~図4.7及び図5.1~図5.7は、上述のように、異なる方法で互いに接合された2つの隣接経路区分に属するスポット(S1~S7)の各部分配列で蓄積線量付着時間(ΔTi)を例示する。スポットの部分配列を、図4.1~図4.7及び図5.1~図5.7の各々の左側に例示し、蓄積線量付着時間(ΔTi)に関連するスポットを、円で囲む。中央部におけるグラフは、時間(tj)に付着された線量(Dj)を例示する。時間(tj)を、7つのスポット(S1~S7)を走査するために必要な7つの時間部分(t1~t7)に分割する。右側のグラフは、蓄積線量
を示す。
【0061】
隣接スポット(Sj)向けのビームレットからの所与の特定体積(vi)に対する線量付着寄与を、図2(b)~図2(e)に例示する。所与の特定体積(vi)に対応するスポット(Sj)に整列されたビームレットに加えて、最高の寄与は、距離L14だけ互いに隔てた、当該特定体積に対応するスポットに対してY軸に沿って整列された隣接スポット(Sj)向けのビームレットから来る。より低い寄与は、X軸に沿って整列され、距離L12だけ隔てた隣接スポット(Sj)向けのビームレットから来る。最後に、線量付着の重要でない寄与を、対角線に沿って整列され、距離L15だけ互いに隔てた隣接スポット向けのビームレットから計算する。
【0062】
図4.1~図4.7で、互いに最も近くに位置する終点を連結することによって、経路線分を接合する(=短接続経路)一方、図5.1~図5.7で、互いに最も遠くに位置する終点を連結することによって、経路線分を接合する(=長接続経路)。図4.1~図4.7を図5.1~図5.7と比較することによって、蓄積線量付着時間(ΔTi)は、スポットの実行照射順序によって異なることが分かる。しかし、各特定体積(vi)に付着される蓄積線量
は、2つの照射順序の間で変化しない。
【0063】
既に上述のように、異なるスポット(Sj)の間の蓄積線量付着時間(ΔTi)の変化は、図5.1~図5.7に例示の長接続経路の場合よりも図4.1~図4.7に例示の短接続経路の場合が大きい。説明を分かりやすくするために、ここで、接続経路に沿った2つの隣接スポットSj、S(j+1)に対するビームレットB(k-1)及びBkによる線量付着の終了を分離する期間(tk-t(k-1))は、隣接スポット(Sj、S(j+1))の全対に対して等しいと仮定する。期間(tk-t(k-1))は、図4.1~図4.7及び図5.1~図5.7で「部分時間単位」と呼ばれる。第1のスポットを中心としたビームレットで線量を付着させるために必要な時間は、接続経路に沿って距離があまり変化しない隣接スポットにビームレットを走査するために必要な時間よりも長いので、この仮定は、非常に合理的である。短接続経路及び長接続経路の両方における最短蓄積線量付着時間(ΔTi)は、1つの部分時間単位(図4.4のスポットS4で、ΔTi(D4)=t5-t4、及び同じスポットで、ΔTi(D7)=t7-t6であるけれども、図5.7でS7の番号が付けられている)である。短接続経路での最長蓄積線量付着時間(ΔTi)は、スポットS1での長さが7つの部分時間単位(図4.1のスポットS1で、ΔTi(D1)=t7-t1)である一方、長接続経路での最長蓄積線量付着時間(ΔTi)は、長さが5つだけの部分時間単位(図5.2のスポットS2で、ΔTi(D2)=t5-t1、図5.3のスポットS3で、ΔTi(D3)=t6-t2、図5.4のスポットS4で、ΔTi(D4)=t5-t1、図5.5のスポットS5で、ΔTi(D5)=t6-t2、及び図5.6のスポットS6で、ΔTi(D6)=t7-t3)である。送出時間が全スポットに対して同じでない場合、変更すべきところは変更して、同じ論理的根拠が当てはまる。
【0064】
表1は、図4.1~図4.7に例示の短接続経路に沿った順序、及び図5.1~図5.7に例示の長接続経路に沿った順序の各スポットで部分時間単位における蓄積線量付着時間(ΔTi)を列挙する。更に、平均及び標準偏差を示す。短接続経路は、1.86の部分時間単位の標準偏差を有する、上述のようなより大きい変化を有する4.86の部分時間単位のより長い平均蓄積線量付着時間(ΔTi)を生じる。一方、長接続経路は、1.13の部分時間単位の標準偏差を有する、より狭い分布を有する4.43の部分時間単位のより短い蓄積線量付着時間(ΔTi)を有する。より多くの正常細胞を含む特定体積(vi)は、HDR照射を求める必要がある一方、腫瘍細胞を含む特定体積は、より低い率及び更にCDRで照射されても差し支えないので、長接続経路が常に好ましいと言っているわけではない。短接続又は長接続の間の選択肢のどれか一方の選択は、標的体積(Vt)の形状、及びHDRで照射される必要があるスポット及び単に好ましくはHDRで照射されるスポットの位置に左右される。
【0065】
走査長(L)以下の長さ(Lb)の長辺を有する基準ボックス(RB)内に経路部分を囲むことによって、2つの隣接経路部分の接合は、軌道を規定し、蓄積線量を、軌道を形成するスポットに対応する各特定体積(vi)にHDRで付着させることができる。
【0066】
標的面積(At)の感知ゾーンは、例えば、図11(a)における楕円によって識別されるスポットの対のように、経路区分が直接接合されない隣接基準ボックス(RB)に属する2つ以上のスポットである。2つのスポットのうち1つのスポット向けのビームレットが隣接スポットにもかなりの線量を付着させるように、2つのスポットをY軸に沿って整列させる。しかし、これらの2つのスポットにHDRでの線量付着を保証するには長過ぎる長時間、それらの各照射を分離する。このような場合、腫瘍細胞の殺滅は線量付着率に依存しないので、大部分の腫瘍細胞及び非常に少ない正常細胞を含む標的体積(Vt)のゾーンにおけるスポットのこのような非接合隣接対の発生を制限するように注意する必要がある。超高線量付着率(HDR)での線量付着は、照射操作に対して正常細胞の保存にとって有益である。
【0067】
本発明は、標的体積(Vt)を規定する特定体積(vi)の重要な部分に超高線量付着率(HDR)で線量(Dj)を付着させることを保証する、複雑な形状の標的体積(Vt)の標的面積(At)を特徴付けるスポットの照射走査順序を規定する単純及び再現可能な方法を提案する。
【符号の説明】
【0068】
At 標的面積
GM 幾何学的中央値
HDR 高線量率
IP 照射経路
L HDR走査距離=粒子ビームの上下の戻り経路に沿って粒子ビームが接触するすべてのスポットに線量(Dj)がHDR付着率で付着されることを保証しながら、粒子ビームが上下の戻り経路で走査できる距離。
MP 中点
P0 投影面
Pt 標的の周囲
RB 基準ボックス
RP 基準点
RR 基準長方形
Sj スポット番号j
Vt 標的体積
ΔTi 特定体積(vi)への蓄積線量付着時間
図1
図2a-2e】
図3a-3c】
図4.1-4.7】
図5.1-5.7】
図6a-6b】
図7a-7b】
図8
図9
図10a-10c】
図11a-11c】
【外国語明細書】