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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109107
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】毛髪化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20240805BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20240805BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20240805BHJP
   A61K 8/892 20060101ALI20240805BHJP
   A61K 8/898 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
A61K8/81
A61Q5/00
A61K8/891
A61K8/892
A61K8/898
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024012510
(22)【出願日】2024-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2023013570
(32)【優先日】2023-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000221797
【氏名又は名称】東邦化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】手谷 祥彦
(72)【発明者】
【氏名】野澤 卓司
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB051
4C083AC012
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC352
4C083AD022
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD162
4C083BB13
4C083CC31
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】油相成分を高含量で含有する水中油型乳化組成物または油中水型乳化組成物であり、良好な使用感を付与する効果に優れた毛髪化粧料を提供すること。
【解決手段】(A)疎水性モノマーを30~90質量%、親水性モノマーを10~70質量%、下記一般式(3)で表されるカチオンモノマーを0.1~50質量%、及び架橋性モノマーを0.01~1質量%の割合で共重合してなるポリマーと、(B)水と、(C)シリコーン類の1種又は2種以上と、(D)(C)以外の液状油分の1種又は2種以上とを含むことを特徴とする毛髪化粧料。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)
【化1】
(式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素数1~12のアルキル基を示す。)で表される疎水性モノマーを30~90質量%
及び一般式(2)
【化2】
(式中、Rは水素原子またはメチル基、nは12~200の数、Rは水素原子またはメチル基を示す。)
で表される親水性モノマーを10~70質量%
及び一般式(3)
【化3】
(式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素数1~4のアルキレン基、Rは炭素数1~4のアルキル基、Xはハロゲン原子又は有機アニオンを示す。)
で表されるカチオンモノマーを0.1~50質量%
及び一般式(4)
【化4】
(式中、RとRは水素原子またはメチル基、mは0~2の数を示す。)
で表される架橋性モノマーを0.01~1質量%の割合で共重合してなるポリマーと
(B)水と
(C)シリコーン類の1種又は2種以上と
(D)(C)以外の液状油分の1種又は2種以上と
を含むことを特徴とする毛髪化粧料。
【請求項2】
毛髪化粧料全量中に、前記(A)成分を0.01~10質量%、(B)成分を1~40質量%、(C)成分を1~50質量%、(D)成分を10~90質量%含有してなる請求項1記載の毛髪化粧料。
【請求項3】
油相成分である前記(C)成分及び(D)成分が、水相成分である前記(A)成分及び(B)成分及び油相成分の合計量に対して50~95質量%含まれている請求項1又は2に記載の毛髪化粧料。
【請求項4】
前記(C)成分が、ジメチコン、ジメチコノール、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、及びシリコーン油から選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は2に記載の毛髪化粧料。
【請求項5】
前記(D)成分が、20℃で液状である炭化水素油、エステル油、及び植物油から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1又は2に記載の毛髪化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪化粧料に関し、更に詳しくは、油相成分を高含量で含有する水中油型乳化組成物または油中水型乳化組成物であり、良好な使用感(しっとり感、柔軟性、ツヤ感、まとまり)を付与する効果に優れた毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紫外線、ブロー、ブラッシング、洗髪、カラーリングなどの影響で、毛髪表面のキューティクルの剥離や、毛髪内部脂質の流出による毛髪内部の空洞化等により、パサつき、ハリやコシ、ツヤの低下、指通りやまとまりの悪化などの症状が生じる。従来、これらの症状を改善することを目的として、洗い流さない毛髪化粧料が上市されている。
【0003】
洗い流さない毛髪化粧料の剤形としては、水をほとんど配合しないオイルタイプ、油相成分に水相成分を配合した乳化タイプがある(例えば特許文献1~2)。オイルタイプは油相成分を多く配合できる点で優れるが、ベタつき感があり、さっぱり感に欠けるとともに、髪への伸びが悪く髪全体に広がりにくいため、まとまり性が十分でないものであった。乳化タイプとしては、使用時のべたつきや伸びを改善するために水中油型エマルションとすることが一般的である。しかし、エマルション内相の油剤を高配合とするには大量の界面活性剤を配合する必要があるため、界面活性剤に由来するべたつきが生じ、更に十分な量の高重合シリコーンを含有させることが困難であるため、まとまり性が悪いという問題がある。
【0004】
一方、特許文献3には、油相成分と水相成分との2層を含む2層タイプが提案されているが、これは使用前に振って乳化させ、分離する前に使用するという煩雑な使用法である。また、高重合シリコーン含有量がオイルタイプに比べ少なく、感触面においても十分満足のいくものでなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63-183517号公報
【特許文献2】特開2005-255644号公報
【特許文献3】特開2018-162222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、油相成分を高含量で含有する水中油型乳化組成物または油中水型乳化組成物であり、良好な使用感(しっとり感、柔軟性、ツヤ感、まとまり)を付与する効果に優れた毛髪化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記問題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、
(A)下記一般式(1)
【化1】
(式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素数1~12のアルキル基を示す。)で表される疎水性モノマーを30~90質量%
及び一般式(2)
【化2】
(式中、Rは水素原子またはメチル基、nは12~200の数、Rは水素原子またはメチル基を示す。)
で表される親水性モノマーを10~70質量%
及び一般式(3)
【化3】
(式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素数1~4のアルキレン基、Rは炭素数1~4のアルキル基、Xはハロゲン原子又は有機アニオンを示す。)
で表されるカチオンモノマーを0.1~50質量%
及び一般式(4)
【化4】
(式中、RとRは水素原子またはメチル基、mは0~2の数を示す。)
で表される架橋性モノマーを0.01~1質量%の割合で共重合してなるポリマーと
(B)水と
(C)シリコーン類の1種又は2種以上と
(D)液状油分の1種又は2種以上と
を含有してなる毛髪化粧料が、毛髪に良好な使用感とコンディショニング効果の付与に優れ、特にしっとり感、柔軟性、ツヤ感、まとまりの付与に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
また、本発明は、前記(A)成分を0.01~10質量%、(B)成分を1~40質量%、(C)成分を1~50質量%、(D)成分を10~90質量%含有してなる毛髪化粧料を提供する。
【0009】
また、油相成分である前記(C)成分及び(D)成分が、水相成分である前記(A)成分及び(B)成分及び油相成分の合計量に対して50~95質量%含まれている毛髪化粧料を提供する。
【0010】
また、前記(C)成分が、ジメチコン、ジメチコノール、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、及びシリコーン油から選ばれる1種又は2種以上である毛髪化粧料を提供する。
【0011】
また、前記(D)成分が、20℃で液状である炭化水素油、エステル油、及び植物油から選ばれる1種又は2種以上である毛髪化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の毛髪化粧料は、油相成分を高含量で含有する水中油型乳化組成物または油中水型乳化組成物であり、良好な使用感(しっとり感、柔軟性、ツヤ感、まとまり)を付与する効果に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の毛髪化粧料について記述する。
本発明に使用される(A)成分のポリマーを構成する前記一般式(1)で表される疎水性モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ノルマルブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレートエチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートなどである。特にメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、エチルヘキシルメタクリレートが好ましい。本発明では、これらの疎水性モノマーの中から選ばれる1種以上を任意に用いることができる。
【0014】
前記一般式(2)で表される親水性モノマーとしてはn=12~200の範囲であるポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。特にn=20~120の範囲であるメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが好ましい。本発明では、これらの親水性モノマーの中から選ばれる1種以上を任意に用いることができる。
【0015】
前記一般式(3)で表されるカチオンモノマーは、2-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートの4級化物が挙げられ、Xはハロゲン原子又は有機アニオンであり、4級化物を形成し得るものであれば、どのようなものでも構わないが、例えば塩化メチル、塩化エチル、臭化メチル、ヨウ化メチル等のハロゲン化アルキル、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジ-n-プロピル等の一般的な4級化剤で4級化した4級アンモニウム塩が挙げられ、これらの中で、特にジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの4級化物が好適に用いられる。本発明では、これらのカチオン性基含有単量体の中から選ばれる1種以上を任意に用いることができる。
【0016】
前記一般式(4)で表される架橋性モノマーは、m=0~2の範囲である(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレートであり、これらの中から選ばれる1種以上を任意に用いることができる。
【0017】
ポリマーを構成する(1)疎水性モノマー、(2)親水性モノマー、(3)カチオンモノマー、(4)架橋性モノマーの割合は、(1)30~90質量%、(2)10~70質量%、(3)0.1~50質量%、(4)0.01~1質量%であり、(1)40~80質量%、(2)20~60質量%、(3)0.3~30質量%、(4)0.05~0.7質量%が好ましく、(1)40~70質量%、(2)25~50質量%、(3)0.5~20質量%、(4)0.1~0.5質量%がより好ましい。疎水性モノマーの構成割合は、90質量%を超えると疎水性ポリマーの凝集、沈殿が発生し、30質量%未満でも、疎水成分に対する乳化能が低下するため好ましくない。親水性モノマーの構成割合は、70質量%を超えると疎水性モノマーの割合が減ることで疎水成分に対する親和性の低下により乳化能が低下し、10質量%未満でも毛髪柔軟性付与効果が十分に得られなくなり、水に対する親和性の低下により乳化能が低下するため好ましくない。カチオンモノマーの構成割合は、50質量%を超えるとベタツキなど感触が悪くなることから好ましくなく、0.1質量%未満でも経時安定性の低下及び毛髪ツヤ感が十分に得られなくなり好ましくない。架橋性モノマーの構成割合は、1質量%を超えると架橋密度が高く、ポリマー同士の凝集、沈殿が生じ、0.01質量%未満でもポリマー粒子を形成できず乳化能が低下するため好ましくない。
【0018】
本発明における(A)成分は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよく、毛髪化粧料中の配合量は、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.1~7質量%、さらに好ましくは0.5~5質量%である。配合量が少なすぎると乳化が困難で均一な組成物が生成できず、毛髪ツヤや柔軟性付与効果が不十分であり、多すぎてもべたつくなど、効果が向上せず好ましくない。
【0019】
本発明のポリマーを製造する方法としては特に限定はないが、通常は水溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、沈殿重合法などの方法によることが好ましく、また重合装置としては特に制限はないが、高粘度となる場合など蓋を有するニーダーを使用することも出来る。水溶液重合法としては、水又は親水性有機溶媒或いはこれらの混合溶媒等に可溶なモノマー成分を添加し、窒素、炭酸ガス等の不活性ガスによる置換等により系内の溶存酸素を除去した後、重合開始剤を添加して反応させる方法が挙げられる。重合開始温度は通常20~90℃程度であり、常温あるいは40~80℃が好ましく、反応時間は1~20時間程度である。ここで用いられるモノマー混合溶液の濃度は5~50質量%であることが好ましい。
【0020】
上記親水性有機溶媒の代表例としては、メタノール、エタノール、2-プロパノール等の低級アルコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等の多価アルコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル、アセトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド等が挙げられ、これらの中で特に、エタノール、2-プロパノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等が好ましい。
【0021】
また、重合開始剤としては、水中に均一に溶解する過酸化物、有機又は無機過酸若しくはその塩、アゾビス系化合物の単独或いは還元剤との組合せによるレドックス系のものが用いられ、それらの代表的な例としては、例えば、2、2'-アゾビス〔2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン〕二塩酸塩、2、2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2、2'-アゾビス〔2-(5-メチル-2-イミゾリン-2-イル)プロパン〕二塩酸塩、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、過硫酸塩とトリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアニリン等の第三級アミンとの組合せ等が挙げられる。これらの中でも、2、2'-アゾビス〔2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン〕二塩酸塩、2、2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2、2'-アゾビス〔2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン〕二塩酸塩、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム若しくは過硫酸アンモニウムの単独、又はこれらの過硫酸塩とトリエチルアミン、トリエタノールアミン若しくはジメチルアニリン等の第三級アミンとの組合せが特に好ましい。
【0022】
重合開始剤の使用量としては、モノマー成分を基準として0.01~5モル%、好ましくは0.01~3モル%、特に好ましくは0.01~1モル%の範囲である。因みに、重合開始剤の使用量が多すぎると、好ましい重合度とならず、期待する性能が発揮できない。一方、少なすぎると重合反応の反応率が上がらず、残留モノマーの量が増加するという難点がある。
【0023】
(B)成分の水としては、化粧料原料として使用できるものであれば特に限定されないが、通常、精製水が用いられる。
【0024】
(B)成分の毛髪化粧料中の配合量は、好ましくは1~40質量%、より好ましくは5~35質量%、さらに好ましくは10~30質量%である。配合量が少なすぎると乳化組成物が形成できず、好ましい使用感とならない。また、多すぎてもツヤ感及びまとまりが十分に得られなくなり好ましくない。
【0025】
本発明における(C)成分としては、ジメチコン、ジメチコノール、アミノ変性シリコーンとしては、例えば、アモジメチコン、アミノプロピルジメチコン、アミノエチルアミノプロピルジメチコンが挙げられ、ポリエーテル変性シリコーンとしてはPEG-3ジメチコン、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、PEG-10ジメチコン、PEG-11メチルエーテルジメチコン、PEG-32メチルエーテルジメチコン、PEG/PPG-20/22ブチルエーテルジメチコン、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキサンエチルジメチコン等が挙げられ、シリコーン油としては、シクロメチコン、ジメチルポリシロキサン、トリシロキサン、フェニルトリメチコン、メチルトリメチコン等が挙げられる。これらの中でもジメチコン、ジメチコノール、アモジメチコン、アミノプロピルジメチコン、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、PEG-10ジメチコン、PEG-11メチルエーテルジメチコン、PEG-32メチルエーテルジメチコン、シクロメチコン、メチルトリメチコンが好ましい。
【0026】
本発明における(C)成分は1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよく、毛髪化粧料中の配合量としては1~50質量%が好ましく、2~35質量%がより好ましく、特に5~30質量%が好ましい。配合量が少なすぎると、ツヤ感及びまとまりが十分に得られなくなり好ましくなく、多すぎても、ベタツキなどが発生し使用感不良となり好ましくない。
【0027】
本発明における(D)成分は、20℃で液状である油分であり、炭化水素油としては、直鎖状又は分岐状の炭化水素油が挙げられ、揮発性の炭化水素油であっても不揮発性の炭化水素油であってもよい。炭化水素油としては、例えば、合成スクワラン、植物性スクワラン等のスクワラン、スクワレン、イソドデカン、軽質流動イソパラフィン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、水添イソポリブテン等が挙げられる。エステル油としては、例えば、コハク酸ジエチルヘキシル、セバシン酸ジエチルヘキシル、セバシン酸ジブチルオクチル、アジピン酸ジイソセチル、リンゴ酸ジイソステアリル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、リノール酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、リノール酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸エチルヘキシル、ステアリン酸エチルヘキシル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸ミリスチル、エチルヘキサン酸セチル、オクタン酸セチル、パルミチン酸セチル、ジメチルオクタン酸ソセチル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソセチル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、パルミチン酸イソステアリル、ネオペンタン酸オクチルドデシル、オレイン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸オクチルドデシル等が挙げられる。植物油としては、アボガド油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、アマニ油、大豆油、茶実油、ヤシ油等が挙げられる。これらの中でも水添ポリイソブテン、イソドデカン、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピルが好ましい。
【0028】
本発明における(D)成分は1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよく、毛髪化粧料中の配合量としては10~90質量%が好ましく、20~75質量%がより好ましく、特に30~70質量%が好ましい。配合量が少なすぎると塗布時のノビが悪くなり好ましくなく、多すぎても油っぽさが出ることで感触が好ましくない。
【0029】
水相成分である(A)成分と(B)成分と油相成分である(C)成分と(D)成分の配合割合は、油相成分が水相成分及び油相成分の合計量に対して50~95質量%含まれていることが好ましく、60~95質量%がより好ましく、特に70~90質量%が好ましい。油相成分が多すぎると乳化が困難で均一な組成物が生成できず、少なすぎるとツヤ感及びまとまりが十分に得られなくなり好ましくない。
【0030】
本発明の毛髪化粧料には、上記必須成分の(A)~(D)成分に加えて、本発明の効果を損なわない範囲内において、毛髪化粧料に通常使用される他の成分を含有していてもよい。他の成分の具体例としては色素、パール剤、香料、保湿剤、防腐剤、酸化防止剤、酸化防止助剤、紫外線吸収剤、樹脂、高分子、界面活性剤、顔料、薬剤、油剤、ワックス、粉体、溶剤等を適宜配合することができる。具体的には、毛髪化粧料で通常使用されるものでよく、使用目的や要求機能などにより適宜選択され、例えば、カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、アルキル第4級アンモニウム塩等が挙げられ、アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキルカルボン酸塩、アルキルエーテルスルホン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩等が挙げられ、両性界面活性剤としては、イミダゾリン、カルボベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン、ヒドロキシスルホベタイン、アミドスルホベタイン等が挙げられ、ノニオン性界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、しょ糖脂肪酸エステル等のエステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンアルキルフェニルエーテル等のエーテル類などが挙げられる。これらは市販のものをそのまま用いることができ、配合量は、通常0~5質量%が好ましい。
【0031】
固形油分としては、例えば、パラフィン、セレシン、合成炭化水素ワックス、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、エチレンプロピレンコポリマー、キャンデリラロウ、ミツロウ、カルナバロウ等の固形油、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール等の炭素数14~22の高級アルコール等が挙げられる。これらの中で、炭素数14~22の高級アルコール、特にミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールが毛髪へのまとまり感向上のために好ましい。これらは市販のものをそのまま用いることができ、配合量は、通常0.5~10質量%が好ましい。
【0032】
その他の成分として、動植物の天然エキス及びその誘導体、クエン酸、乳酸等の有機酸、塩化ナトリウム等の無機塩、アミノ酸類(グルタミン酸またはその塩、アルギニンまたはその塩、グリシンなど)、可溶化剤(エタノール、イソプロパノール、ブタノール等)、ヒアルロン酸等の高分子類、酸化防止剤、紫外線吸収剤、殺菌剤、防腐剤、キレート剤、香料、色剤、高級脂肪酸、増粘剤、金属封鎖剤(エデト酸塩等)、pH調整剤、起泡増進剤等を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合できる。
【0033】
本発明の毛髪化粧料は、各配合成分を混合し、公知の方法、例えばホモミキサーを用いて転相乳化法により乳化することにより製造することができる。ただしこの製造方法に限定されるものでない。混合と乳化は別々に行ってもよく、あるいは同時に行ってもよい。
【0034】
本発明の毛髪化粧料は、ワックス状、クリーム状、ゲル状、乳液状等の種々の剤型に適用することができ、整髪効果に優れたヘアワックス、ヘアミルク、又はヘアクリーム等として、特にヘアミルクとして好適に用いられる。
【実施例0035】
次に、実施例を挙げて本発明を説明する。本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、含有量は質量%であり、含有成分の純分を示す。
【0036】
合成例(ポリマー1の製造)
温度計、窒素ガス導入管及び撹拌装置を備えた反応器に、メチルメタクリレート(以下MMA)35g、エチレンオキシド付加モル数が90のメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(以下PME4000)14g、2-トリメチルアンモニウムエチルメタクリレートクロリド(以下TMAEMC)0.9gおよびエチレングリコールジメタクリレート(以下EGDMA)0.1g、水-エタノール混合溶媒(水:エタノール=70:30質量比)450gを内容量1Lのガラス製フラスコに入れ、混合溶解し窒素置換した。窒素雰囲気下、撹拌しながらオイルバスにて50℃まで徐々に加熱した。この重合系組成物に2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン2塩酸塩)を0.2g添加し重合を開始した。その後45℃~55℃で10時間反応後冷却し、ポリマー1を得た。
【0037】
表1に上記ポリマー1と同様に製造したポリマー及び比較に用いた比較ポリマーの構成モノマー比を示した。
【0038】
【表1】
【0039】
次に、上記表1記載のポリマーを用いて以下の試験方法1(乳化試験)、試験方法2(官能評価試験)、試験方法3(毛髪への柔軟性付与)、試験方法4(毛髪へのツヤ付与)実施し、結果を表2、3に示した。
【0040】
本実施例中で用いた試験法は下記のとおりである。
【0041】
試験方法1(乳化試験)
<試験用毛髪化粧料の調整>
表2、3に示す組成で下記製法にて実施例1~12及び比較例1~7の毛髪化粧料を調整した。なお以下の実施例、比較例における含有量はすべて質量%であり、含有成分の純分を示す。
<製法>
水相成分((A)及び(B)成分)と油相成分((C)及び(D)成分)をそれぞれ室温にて均一になるまで撹拌した。水相成分をディスパーにて2000rpmで撹拌しながら油相成分を1分かけて徐添し、10分間撹拌することで各毛髪化粧料を得た。
<乳化試験>
乳化試験は、上記製法にて得た各毛髪化粧料の50℃下1か月後の外観から判断した。判断基準は下記のように設定した。
○:目視による分離又は沈殿が観察されない
×:目視による分離又は沈殿が観察される
【0042】
試験方法2(官能評価試験)
健康黒髪にブリーチ処理を施した損傷毛髪束(ダメージヘア(10g、長さ30cm))を10%ラウレス硫酸Na溶液で洗浄し、20℃、50%の湿度下で乾燥した。次に、上記製法にて得た各毛髪化粧料0.2gを手で均一に塗布し、毛髪へのなじみ、油っぽさのなさ、しっとり感、まとまりを下記の基準に従って評価した。
「毛髪へのなじみ」
◎:とてもなじみが良い
○:なじみが良い
△:あまりなじみが良くない
×:なじみが良くない
「油っぽさのなさ」
◎:全く油っぽくない
○:油っぽくない
△:やや油っぽい
×:油っぽい
「しっとり感」
◎:とてもしっとりしている
○:しっとりしている
△:ややしっとりしている
×:しっとりしていない
「まとまり」
◎:とてもまとまりがある
○:まとまりがある
△:ややまとまりがある
×:まとまりがない
【0043】
試験方法3(毛髪への柔軟性付与効果の測定)
毛髪の柔らかさを定量的に評価するため、毛髪の曲げ硬さを測定した。毛髪の曲げ硬さは、毛髪の硬さやハリ、こし感の指標として一般に用いられるパラメーターである。
曲げ硬さの測定は、健康黒髪にブリーチ処理を施した損傷毛髪束(ダメージヘア(1g、長さ10cm))を10%ラウレス硫酸Na溶液で洗浄し、20℃、50%の湿度下で乾燥した。次に、上記製法にて得た各毛髪化粧料0.02gを手で均一に塗布し、カトーテック社製純曲げ試験機(KES-SH)を用い、毛髪の曲げ硬さ(gf・cm/cm)を以下の条件で測定した。
測定回数:10回(毛髪1本測定)
また同時に測定したブランクからの減少率を以下で算出した。
減少率=(MS/MB)×100
MB:ブランクの曲げ硬さ(gf・cm/cm)値
MS:サンプルの曲げ硬さ(gf・cm/cm)値
毛髪への柔軟性付与効果の評価基準は次のように設定した。
◎・・・減少率50%未満
○・・・減少率50%以上70%未満
△・・・減少率70%以上90%未満
×・・・減少率90%以上
【0044】
試験方法4(毛髪へのツヤ付与効果の測定)
毛髪のツヤを定量的に評価するため、半値幅を算出した。半値幅は、撮影された各毛髪画像データからRGB値を取得し、RGB値を輝度値に変換し、輝度値から得られた輝度分布曲線より半値幅を算出した。半値幅が狭いほど、光の乱反射が少なく、毛髪にツヤがあることを示す。毛髪画像は、健康黒髪にブリーチ処理を施した損傷毛髪束(ダメージヘア(1g、長さ10cm))を10%ラウレス硫酸Na溶液で洗浄し、20℃、50%の湿度下で乾燥した。次に上記製法にて得た各毛髪化粧料0.02gを手で均一に塗布し、直径1cmガラス棒に均一に巻き付け、マイクロスコープ(キーエンス株式会社製、VHX)にて撮影した。撮影した画像を画像解析ソフト(三谷商事株式会社製、WinRoof2021)用いて輝度値を求め、得られた輝度分布曲線から半値幅を算出した。
また同時に測定したブランクからの減少率を以下で算出した。
減少率=(TS/TB)×100
TB:ブランクの半値幅
TS:サンプルの半値幅
毛髪へのツヤ付与効果の評価基準は次のように設定した。
◎・・・減少率90%未満
○・・・減少率90%以上95%未満
△・・・減少率95%以上100%未満
×・・・減少率100%以上
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
表2、3の結果より明らかなように、本発明の毛髪化粧料は、乳化能付与効果及び経時安定性において良好な性能を示した。また、良好な使用感、柔軟性及びツヤの付与に期待できる。
【0048】
上記記載のごとく、本発明は、油相成分を高含量で含有し、良好な使用感(しっとり感、柔軟性、ツヤ感、まとまり)を付与する効果に優れた毛髪化粧料を提供する事ができる。