(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109116
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】ポリマーブラシシートの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 2/00 20060101AFI20240805BHJP
C08F 20/00 20060101ALI20240805BHJP
C08F 292/00 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
C08F2/00 C
C08F20/00 510
C08F292/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024013682
(22)【出願日】2024-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2023013544
(32)【優先日】2023-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、独立行政法人環境再生保全機構、環境研究総合推進費事業「省エネ・低環境負荷を実現する次世代船底塗膜ならびに塗工プロセスの開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻井 敬亘
(72)【発明者】
【氏名】松川 公洋
【テーマコード(参考)】
4J011
4J026
【Fターム(参考)】
4J011AA05
4J011BA04
4J011CA02
4J011CA03
4J011CA08
4J011CB02
4J011CC04
4J011CC07
4J011CC09
4J011PA04
4J011PA53
4J011PC02
4J011PC08
4J026AA02
4J026AC00
4J026BA27
4J026DB06
4J026FA05
4J026FA09
4J026GA02
(57)【要約】
【課題】分子量の高い高分子鎖により構成されたポリマーブラシ層を有するポリマーブラシシートを製造するための方法を提供すること。
【解決手段】基材上に、ポリマーブラシ層が形成されてなるポリマーブラシシートを製造する方法であって、前記基材の少なくとも一方の面に、重合開始基を導入する工程と、目付量が100g/m2以下であるセルロースを主成分とする支持体を、前記基材の重合開始基を導入した面の少なくとも一部に接触させた状態で、モノマーを表面開始ラジカル重合により重合する工程とを備える、ポリマーブラシシートの製造方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の基材上に、ポリマーブラシ層が形成されてなるポリマーブラシシートを製造する方法であって、
前記基材の少なくとも一方の面に、重合開始基を導入する工程と、
目付量が100g/m2以下であるセルロースを主成分とする支持体を、前記基材の重合開始基を導入した面の少なくとも一部に接触させた状態で、モノマーを表面開始ラジカル重合により重合する工程とを備える、ポリマーブラシシートの製造方法。
【請求項2】
前記支持体の厚みが、1~1,000μmである請求項1に記載のポリマーブラシシートの製造方法。
【請求項3】
前記支持体が、セルロースを主成分とする繊維状の不織布からなる多孔質膜である請求項1または2に記載のポリマーブラシシートの製造方法。
【請求項4】
前記支持体の面積透過率が、50%以下である請求項1または2に記載のポリマーブラシシートの製造方法。
【請求項5】
前記基材の厚みが0.1~1,000μmである請求項1または2に記載のポリマーブラシシートの製造方法。
【請求項6】
前記支持体を、前記重合開始基を導入した基材と、該基材とは別の基材との間に挟んだ状態にて、前記モノマーを表面開始ラジカル重合により重合する請求項1または2に記載のポリマーブラシシートの製造方法。
【請求項7】
ポリマーブラシ層を有する部材の製造方法であって、
請求項1または2に記載の方法により得られたポリマーブラシシートを、部材の表面に貼り付けることにより、部材の表面にポリマーブラシ層を形成する、ポリマーブラシ層を有する部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の基材上に、ポリマーブラシ層が形成されてなるポリマーブラシシートの製造方法に係り、さらに詳しくは、分子量の高い高分子鎖により構成されたポリマーブラシ層を有するポリマーブラシシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種部材の改質方法として、その末端に部材表面に対し吸着または反応しうる基を有するポリマーを部材表面に作用させることで、物理的または化学的に結合したポリマー層を部材表面に形成する方法が知られている。また、部材表面に付与した重合性基を起点としてモノマーを重合させることで、部材表面からグラフトしたポリマー層を形成する方法も知られている。
【0003】
近年、1990年代に発展したリビングラジカル重合の技術を利用して基板上に高密度にグラフトされる、いわゆる「濃厚ポリマーブラシ」が研究されている。この濃厚ポリマーブラシでは、高分子鎖が1~4nm間隔の高密度で基板上にグラフトされる。このような濃厚ポリマーブラシにより基材表面を改質し、低摩擦性、タンパク質吸着抑制、サイズ排除特性、親水性、撥水性などの特徴を付与することができる(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術においては、低摩擦性等の各種特性を付与する部材表面に対し、直接、ポリマーブラシ層を形成するものであり、そのため、形状が複雑である等の形状的な理由や、狭小である等のスペース的な理由、化学的あるいは物理的な理由等により、ポリマーブラシ層の形成が難しい部材の表面に対し、ポリマーブラシ層を形成することができないという課題や、ポリマーブラシ層を形成することができたとしても、所望の分子量が得られないという課題があった。
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、各種部材や部品に対し貼り付け可能なポリマーブラシシートであって、分子量の高い高分子鎖により構成されたポリマーブラシ層を有するポリマーブラシシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、シート状の基材上に、ポリマーブラシ層が形成されてなるポリマーブラシシートを製造する際に、基材の少なくとも一方の面に、重合開始基を導入し、かつ、目付量が特定の範囲にあるセルロースを主成分とする支持体を、基材の重合開始基を導入した面の少なくとも一部に接触させた状態で、モノマーを表面開始ラジカル重合により重合することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の事項に関する。
[1]シート状の基材上に、ポリマーブラシ層が形成されてなるポリマーブラシシートを製造する方法であって、
前記基材の少なくとも一方の面に、重合開始基を導入する工程と、
目付量が100g/m2以下であるセルロースを主成分とする支持体を、前記基材の重合開始基を導入した面の少なくとも一部に接触させた状態で、モノマーを表面開始ラジカル重合により重合する工程とを備える、ポリマーブラシシートの製造方法。
[2]前記支持体の厚みが、1~1,000μmである[1]に記載のポリマーブラシシートの製造方法。
[3]前記支持体が、セルロースを主成分とする繊維状の不織布からなる多孔質膜である[1]または[2]に記載のポリマーブラシシートの製造方法。
[4]前記支持体の面積透過率が、50%以下である[1]~[3]のいずれかに記載のポリマーブラシシートの製造方法。
[5]前記基材の厚みが0.1~1,000μmである[1]~[4]のいずれかに記載のポリマーブラシシートの製造方法。
[6]前記支持体を、前記重合開始基を導入した基材と、該基材とは別の基材との間に挟んだ状態にて、前記モノマーを表面開始ラジカル重合により重合する[1]~[5]のいずれかに記載のポリマーブラシシートの製造方法。
[7]ポリマーブラシ層を有する部材の製造方法であって、
[1]~[6]のいずれかに記載の方法により得られたポリマーブラシシートを、部材の表面に貼り付けることにより、部材の表面にポリマーブラシ層を形成する、ポリマーブラシ層を有する部品の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シート状の基材上に、分子量の高い高分子鎖により構成されたポリマーブラシ層を有するポリマーブラシシートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例14で得られたポリマーブラシシートのポリマーブラシ層を、倍率20倍で観察して得られた光学顕微鏡写真である。
【
図2】
図2(A)は、比較例2で得られたポリマーブラシシートのポリマーブラシ層を、倍率20倍で観察して得られた光学顕微鏡写真であり、
図2(B)は、比較例2で得られたポリマーブラシシートのポリマーブラシ層を、倍率100倍で観察して得られた光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のポリマーブラシシートの製造方法は、
シート状の基材上に、ポリマーブラシ層が形成されてなるポリマーブラシシートを製造する方法であって、
前記基材の少なくとも一方の面に、重合開始基を導入する工程と、
目付量が100g/m2以下であるセルロースを主成分とする支持体を、前記基材の重合開始基を導入した面の少なくとも一部に接触させた状態で、モノマーを表面開始ラジカル重合(あるいは、表面開始リビングラジカル重合、以下、同様。)により重合する工程とを備えるものである。
【0011】
本発明の製造方法により得られるポリマーブラシシートは、シート状の基材上に、ポリマーブラシ層が形成されてなるものであるため、各種部材や部品の表面に貼り付けることにより(具体的には、ポリマーブラシ層が表面に位置するように貼り付けることにより)、各種部材や部品の表面にポリマーブラシ層を形成させることができるものである。そのため、本発明のポリマーブラシシートによれば、形状が複雑である等の形状的な理由や、狭小である等のスペース的な理由、化学的あるいは物理的な理由等により、部材や部品表面に直接ポリマーブラシ層を形成できない場合でも、簡易かつ適切にポリマーブラシ層を導入することができるものである。加えて、本発明のポリマーブラシシートは、分子量の高い高分子鎖により構成されたポリマーブラシ層を有するものであるため、各種部材や部品の表面に、分子量の高い高分子鎖により構成されたポリマーブラシ層を形成できるものである。なお、ポリマーブラシシートを、各種部材や部品の表面に貼り付ける方法としては、たとえば、接着材料や粘着材料を用いた公知の接着方法を用いればよい。
【0012】
シート状の基材としては、特に限定されないが、シート形状とすることができる材料であればよく、たとえば、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、セラミックス、木材、ケイ素化合物、熱可塑性高分子、熱硬化性高分子、セルロース、ガラスなどが挙げられる。これらの中でも、熱可塑性高分子が好適であり、熱可塑性高分子としては、たとえば、低密度ポリエチレン(線状低密度ポリエチレンを含む)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体、ホモポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体,エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物等のオレフィン系熱可塑性樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンナフタレート-イソフタレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート等の熱可塑性エステル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系熱可塑性樹脂、ナイロン-6、ナイロン-66等のポリアミド系熱可塑性樹脂、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム等のジエン系ゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム等の非ジエン系ゴム、天然ゴム、熱可塑性エラストマー、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂などが挙げられる。
【0013】
シート状の基材の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.1~1,000μm、より好ましくは0.1~200μm、さらに好ましくは1~100μmである。
【0014】
シート状の基材には、表面処理を施してもよい。表面処理としては、シランカップリング処理、シリカコート処理、シリカアルミナ処理などの無機処理;プラズマ処理、紫外線照射処理、オゾン酸化処理、放射線処理、X線処理、電子線処理、レーザー処理などの洗浄・活性化処理;それらの組み合わせなどを挙げることができる。
【0015】
基材の少なくとも一方の面に、重合開始基を導入する工程において、基材の表面に導入する重合開始基としては、通常のラジカル重合やリビングラジカル重合で用いられる開始基を用いることができる。ラジカル重合あるいはリビングラジカル重合としては、ニトロキサイド化合物を開始化合物として熱解離させてラジカルを発生させるNMP法;ハロゲン基を有する化合物を開始化合物として、銅やルテニウムなどの金属錯体を触媒として酸化還元で行う原子移動ラジカル重合(ATRP法);ジチオエステル基などを有する化合物を使用する可逆的付加開裂型連鎖移動重合(RAFT法);有機テルルなどを開始化合物とするTERP法;ヨウ素基を有する化合物を開始化合物とし、触媒としてヨウ素をラジカルとして引き抜くことができる有機化合物を触媒として行う可逆的移動触媒重合(RTCP法);ハロゲン基を有する化合物を開始化合物として、触媒としてハロゲン化第4級アンモニウム塩等を使用して重合する可逆的触媒媒介重合(RCMP法);ハロゲン交換重合;などがある。これらの重合法で用いられる開始基をその表面に導入した基材を使用し、その開始基を起点としてラジカル重合あるいはリビングラジカル重合することで、基材の表面に高分子鎖が結合(グラフト)したポリマーブラシ層を形成することができる。
【0016】
重合開始基を導入するための重合開始剤としては、特に限定されないが、基材に結合可能な基と、ラジカル発生基とを有する化合物が好ましく、たとえば、特開2010-218984号公報に開示されている重合開始剤、すなわち、TEMPO系、ATRP系、RAFT系、RTCP系の重合開始剤を用いることができる。これらのなかでも、ATRP系、RAFT系、RTCP系の重合開始剤がより好ましい。また、TEMPO系の重合開始剤の中では、特にDEPN系の重合開始剤が好ましい。なお、基材に結合可能な基としては、たとえば、-SiCl3、-Si(CH3)Cl2、-Si(CH3) 2Cl、-Si(OR)3(これらの式中、Rはメチル、エチル、プロピルまたはブチルを示す。)などが挙げられる。
【0017】
そして、本発明の製造方法においては、このようにして、重合開始基が表面に導入された基材を用いて、目付量が100g/m2以下であるセルロースを主成分とする支持体を、基材の重合開始基を導入した面の少なくとも一部に接触させた状態で、モノマーを表面開始ラジカル重合により重合するものである。
【0018】
モノマーとしては、ラジカル重合またはリビングラジカル重合することで、基材表面にグラフトする高分子鎖を形成できるものであればよく、付加重合性の二重結合を1つ有する単官能性のモノマー等の付加重合性の二重結合を少なくとも1つ有するモノマーが好ましい。付加重合性の二重結合を1つ有する単官能性のモノマーとしては、(メタ)アクリル酸系モノマー、スチレン系モノマー等が好ましい。
【0019】
(メタ)アクリル酸系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレート)、フェニル(メタ)アクリレート、トルイル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3-エチル-3-(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリレート-2-アミノエチル、2-(2-ブロモプロピオニルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(2-ブロモイソブチリルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、1-(メタ)アクリロキシ-2-フェニル-2-(2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ)エタン、1-(4-((4-(メタ)アクリロキシ)エトキシエチル)フェニルエトキシ)ピペリジン、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、メタクリル酸ポリエチレングリコール、3-(3,5,7,9,11,13,15-ヘプタエチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(3,5,7,9,11,13,15-ヘプタイソブチル-ペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(3,5,7,9,11,13,15-ヘプタイソオクチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(3,5,7,9,11,13,15-ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(3,5,7,9,11,13,15-ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イル)プロピル(メタ)アクリレート、3-[(3,5,7,9,11,13,15-ヘプタエチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イルオキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、3-[(3,5,7,9,11,13,15-ヘプタイソブチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イルオキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、3-[(3,5,7,9,11,13,15-ヘプタイソオクチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イルオキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、3-[(3,5,7,9,11,13,15-ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イルオキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、3-[(3,5,7,9,11,13,15-ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イルオキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、トリフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2-トリフルオロメチルエチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロエチル-2-ペルフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ジペルフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロメチル-2-ペルフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロデシルエチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロヘキサデシルエチル(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0020】
スチレン系モノマーとして、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、p-クロロスチレン、p-クロロメチルスチレン、m-クロロメチルスチレン、o-アミノスチレン、p-スチレンクロロスルホン酸、スチレンスルホン酸及びその塩、ビニルフェニルメチルジチオカルバメート、2-(2-ブロモプロピオニルオキシ)スチレン、2-(2-ブロモイソブチリルオキシ)スチレン、1-(2-((4-ビニルフェニル)メトキシ)-1-フェニルエトキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(4-ビニルフェニル)-3,5,7,9,11,13,15-ヘプタエチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン、1-(4-ビニルフェニル)-3,5,7,9,11,13,15-ヘプタイソブチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン、1-(4-ビニルフェニル)-3,5,7,9,11,13,15-ヘプタイソオクチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン、1-(4-ビニルフェニル)-3,5,7,9,11,13,15-ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン、1-(4-ビニルフェニル)-3,5,7,9,11,13,15-ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン、3-(3,5,7,9,11,13,15-ヘプタエチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イル)エチルスチレン、3-(3,5,7,9,11,13,15-ヘプタイソブチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イル)エチルスチレン、3-(3,5,7,9,11,13,15-ヘプタイソオクチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イル)エチルスチレン、3-(3,5,7,9,11,13,15-ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イル)エチルスチレン、3-(3,5,7,9,11,13,15-ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イル)エチルスチレン、3-((3,5,7,9,11,13,15-ヘプタエチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イルオキシ)ジメチルシリル)エチルスチレン、3-((3,5,7,9,11,13,15-ヘプタイソブチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イルオキシ)ジメチルシリル)エチルスチレン、3-((3,5,7,9,11,13,15-ヘプタイソオクチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イルオキシ)ジメチルシリル)エチルスチレン、3-((3,5,7,9,11,13,15-ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イルオキシ)ジメチルシリル)エチルスチレン、3-((3,5,7,9,11,13,15-ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イルオキシ)ジメチルシリル)エチルスチレン等が好ましい。
【0021】
付加重合性の二重結合を1つ有する単官能性のモノマーとして、フッ素含有ビニルモノマー(ペルフルオロエチレン、ペルフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等)、ケイ素含有ビニル系モノマー(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等)、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル、マレイミド系モノマー(マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等)、ニトリル基含有モノマー(アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、アミド基含有モノマー(アクリルアミド、メタクリルアミド等)、ビニルエステル系モノマー(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、オレフィン類(エチレン、プロピレン等)、共役ジエン系モノマー(ブタジエン、イソプレン等)、ハロゲン化ビニル(塩化ビニル等)、ハロゲン化ビニリデン(塩化ビニリデン等)、ハロゲン化アリル(塩化アリル等)、アリルアルコール、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、N-ビニルカルバゾール、メチルビニルケトン、ビニルイソシアナート等が好ましい。
側鎖に特定の基を有するモノマーも好適に用いることができる。たとえば、側鎖にカルボキシル基もしくはカルボキシル塩基に容易に転換できる基を有するモノマーは、高分子を作製した後に、高分子の側鎖をカルボキシル基またはカルボキシル塩基に転換することにより親水性付与することができる点で好ましい。
【0022】
本発明の製造方法においては、上記したモノマーを表面開始ラジカル重合により重合させる際には、目付量が100g/m2以下であるセルロースを主成分とする支持体を、基材の重合開始基を導入した面の少なくとも一部に接触させた状態で重合を行うものであり、これにより、形成されるポリマーブラシ層を、分子量の高い高分子グラフト鎖により構成されたものとすることができるものである。そして、本発明によれば、ポリマーブラシ層を、分子量の高い高分子グラフト鎖により構成されたものとすることにより、得られるポリマーブラシシート、およびこれを貼り付けてなる部材または部品を、低摩擦性等に優れたものとすることができるものである。
【0023】
支持体としては、目付量が100g/m2以下であるセルロースを主成分とするものであればよいが、分子量の高い高分子グラフト鎖をより適切に得るという観点より、目付量が、好ましくは1~100g/m2、より好ましくは1~70g/m2、さらに好ましくは1~50g/m2、ことさらに好ましくは2~10g/m2、特に好ましくは4~8.5g/m2である。
【0024】
支持体の厚みは、特に限定されないが、分子量の高い高分子グラフト鎖をより適切に得るという観点より、1~1,000μmであることが好ましく、1~100μmであることがより好ましく、10~50μmであることがさらに好ましく、12~30μmであることが特に好ましい。
【0025】
また、支持体は、セルロースを主成分とするものであればよく、たとえば、セルロースを主成分とする樹脂あるいは繊維からなる繊維組織により構成された布または不織布などが挙げられ、本発明においては、セルロースを主成分とする繊維状の不織布からなる多孔質膜であることが好ましく、特に、和紙を好適に用いることができる。なお、和紙とは、楮(コウゾ)、三椏(ミツマタ)および雁皮(ガンピ)等の靭皮長繊維を原料とし、これにネリを加えて手漉きして得られた和紙(狭義の和紙)のほか、靭皮長繊維、麻、ケナフ、レーヨン、パルプおよび合成繊維等の各種の長繊維を原料として機械的に漉いて得られる和紙(狭義の和紙に対して、和紙の風合いを持たせた和紙風又は和紙様の紙と呼ばれることもある)を包含する。また、和紙は、5mm以上である長繊維を1種または2種以上用いて得られるものである。和紙としては、具体的には、雲竜紙、楮紙、三椏紙、揉紙、友禅紙、板締紙、典具帖紙、強制紙、更紗紙、大礼紙および奉書紙などを用いることができる。また、天然セルロース系繊維を解繊したナノセルロース繊維、あるいは、ナノセルロース繊維を含む材料などで構成される多孔質材料を用いることができる。
【0026】
支持体中のセルロースの含有量は、特に限定されないが、ポリマーブラシ層表面を均一なものとしつつ、分子量の高い高分子グラフト鎖を得るという観点より、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。
【0027】
支持体は、セルロースを主成分とするものであれば特に限定されないが、天然繊維を含むものが好ましい。天然繊維としては、楮、三椏、雁皮等の靭皮繊維;針葉樹および広葉樹を原料とする木材パルプ;稲わら、麦わら、竹、バガス、麻等を原料とする非木材パルプ;等が挙げられる。天然繊維としては、ポリマーブラシ層表面を均一なものとしつつ、分子量の高い高分子グラフト鎖を得るという観点から、非木材パルプを含むことが好ましい。これらの天然繊維は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
支持体は、合成樹脂を含んでいてもよい。支持体中に含有される合成樹脂の形態としては、特に限定されず、支持体を構成する繊維と混抄された形態であってもよく、支持体を構成する繊維を被覆した形態であってもよい。合成樹脂としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル;ポリ酢酸ビニル;塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のビニル樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル樹脂;ポリスチレン;ポリアミド;ポリカーボネート;アイオノマー樹脂;ポリウレタン;ポリビニルアルコール;ビニロン等が挙げられる。これらの合成樹脂は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
支持体中の天然繊維の含有量は、特に限定されないが、ポリマーブラシ層表面を均一なものとしつつ、分子量の高い高分子グラフト鎖を得るという観点より、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。
【0030】
支持体中の合成樹脂の含有量は、特に限定されないが、ポリマーブラシ層表面を均一なものとしつつ、分子量の高い高分子グラフト鎖を得るという観点より、70質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。
【0031】
支持体の面積透過率は、特に限定されないが、ポリマーブラシ層表面を均一なものとしつつ、分子量の高い高分子グラフト鎖を得るという観点より、50%以下が好ましく、1~40%がより好ましく、1~25%がさらに好ましい。
支持体の面積透過率は、以下のようにして測定することができる。
光学顕微鏡を用いて、支持体の3.4mm×2.5mmの任意の領域を撮影し、撮影画像を取得する。取得した撮影画像に対して、画像解析ソフトを用いて、取得した撮影画像を256段階(明度:0~明度:255の256段階であり、数値が大きいほど、明度が高い。)のモノクロ画像に変換する。得られたモノクロ画像において、明度が240以上の領域を透過領域とみなし、モノクロ画像全体における、透過領域の割合として、支持体の面積透過率を求めることができる。
【0032】
また、モノマーを表面開始ラジカル重合により重合させる際には、従来公知の金属錯体を用いる原子移動ラジカル重合によってモノマーを重合することが好ましい。金属錯体としては、塩化銅、臭化銅、ジノニルビピリジン、トリジメチルアミノエチルアミン、ペンタメチルジエチレントリアミンなどのポリアミンとの錯体;ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム;などを挙げることができる。原子移動ラジカル重合は、バルク重合であってもよく、有機溶剤などを用いる溶液重合であってもよい。有機溶剤としては、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、グリコール系溶剤、エーテル系溶剤、アミド系溶剤、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、尿素系溶剤、イオン液体などを用いることができる。
【0033】
また、原子移動ラジカル重合においては、着色や環境への負荷を考慮するという観点から、重金属を用いない汎用の有機化合物の存在下で重合することが好ましい。具体的には、ハロゲン化第4級アンモニウム塩、ハロゲン化第4級ホスホニウム塩、およびハロゲン化アルカリ金属塩からなる群より選択される少なくとも一種の塩の共存下で、モノマーを重合することが好ましい。
【0034】
重合開始基中のハロゲンがラジカルとして脱離するとともに、ハロゲンの脱離とともに生成した炭素ラジカルにモノマーが挿入されて重合が進行する。その際、上記の特定の塩を共存させることで、ハロゲンラジカルの引き抜きまたはハロゲン交換が生じ、生成した炭素ラジカルからモノマーの重合を進行させることができる。
【0035】
ハロゲン化第4級アンモニウム塩としては、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラオクチルアンモニウム、塩化ノニルピリジニウム、塩化コリンなどを挙げることができる。ハロゲン化第4級ホスホニウム塩としては、塩化テトラフェニルホスホニウム、臭化メチルトリブチルホスホニウム、ヨウ化テトラブチルホスホニウムなどを挙げることができる。ハロゲン化アルカリ金属塩としては、臭化リチウム、ヨウ化カリウムなどを挙げることができる。
【0036】
塩としては、ヨウ化物塩を用いることが好ましい。ヨウ化物塩を用いることで、リビングラジカル重合が進行し、分子量分布がより狭いポリマーを得ることができる。また、ヨウ化第4級アンモニウム塩、ヨウ化第4級ホスホニウム塩、およびヨウ化アルカリ金属塩などの重合溶液に溶解しうる塩を用いることが好ましく、ヨウ化第4級アンモニウム塩を用いることがさらに好ましい。ヨウ化第4級アンモニウム塩としては、ヨウ化ベンジルテトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラオクチルアンモニウム、ヨウ化ドデシルトリメチルアンモニウム、ヨウ化オクタデシルトリメチルアンモニウム、ヨウ化トリオクダデシルメチルアンモニウムなどを挙げることができる。
【0037】
より濃厚で高分子量のポリマーを得る観点から、重合開始基に対する塩の量は当モル以上とすることが好ましく、10倍モル以上とすることがさらに好ましく、100倍モル以上としてもよい。
【0038】
この第4級塩やハロゲン化物塩を使用する方法において、その重合条件は特に限定されない。従来公知の条件で行われる。好ましくは、温度は60℃以上、溶媒として有機溶媒を使用することが好ましい。溶媒としては、従来公知の溶媒が使用でき、特に限定されない。溶剤としては、アルコール系、グリコール系、アミド系、尿素系、スルホキシド系、イオン液体などの極性が高い有機溶剤が好ましい。
【0039】
モノマーを表面開始ラジカル重合により重合させる際における、圧力条件は、常圧~1,000MPaとすることが好ましく、100~1,000MPaとすることがより好ましく、200~800MPaとすることがさらに好ましく、300~600MPaとすることが特に好ましい。重合に際しては、重合容器の全体に、水などの媒体を介して均一に圧力を付与しながら重合する。圧力を付与した状態でラジカル重合することで、停止反応を抑制し、より高分子量の高分子鎖を形成することができる。
【0040】
モノマーを表面開始ラジカル重合により重合させる際には、セルロースを主成分とする支持体を、重合開始基を導入したシート状の基材の、重合開始基を導入した面の少なくとも一部に接触させた状態として、重合反応を行えばよく、たとえば、重合開始基を導入した基材を、セルロースを主成分とする支持体で被覆し、被覆体とした状態でモノマーを含有する溶液中で重合を行う方法を採用することができる。あるいは、セルロースを主成分とする支持体を、重合開始基を導入したシート状の基材と、このシート状の基材とは別の基材との間に挟んだ積層体とし、積層体とした状態でモノマーを含有する溶液中で重合を行う方法を採用することができる。なお、シート状の基材とは別の基材との間に挟んだ積層体とする際に用いる、別の基材としては、特に限定されず、任意の基材であってもよく、あるいは、別の基材としても、重合開始基を導入したシート状の基材を用いてもよく、この場合には、セルロースを主成分とする支持体を挟んで、一対のポリマーブラシシートを一度に製造することができる。
【0041】
あるいは、長尺のシート状の基材と、長尺の支持体とを、ロールから連続的に繰り出した後、連続的にモノマーを含有する溶液中に浸漬させた後、別のロールで巻き取った後、重合を行う方法を採用してもよい。
【0042】
以上のようにして、本発明の製造方法によれば、シート状の基材上に、ポリマーブラシ層が形成されてなるポリマーブラシシートを得ることができる。
【0043】
そして、このようにして得られるポリマーブラシシートは、分子量の高い高分子グラフト鎖により構成されたポリマーブラシ層を有するものであり、ポリマーブラシ層を構成する高分子鎖の数平均分子量(Mn)は、好ましくは10,000~20,000,000、より好ましくは100,000~10,000,000、さらに好ましくは1,000,000~5,000,000である。また、ポリマーブラシ層を構成する高分子鎖の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000~40,000,000、より好ましくは100,000~18,000,000、さらに好ましくは1,000,000~8,000,000である。さらに、ポリマーブラシ層を構成する高分子鎖の分子量分布(Mw/Mn)は、1に近いことが好ましく、好適には、2以下であり、より好ましくは1~1.8、さらに好ましくは1~1.6である。
【0044】
なお、ポリマーブラシ層を構成する高分子鎖の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)は、たとえば、フッ化水素酸処理により基材から高分子鎖を切り出し、切り出した高分子グラフト鎖を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフ法により測定を行い、ポリメタクリル酸メチル換算の検量線を用いて算出する方法が挙げられる。あるいは、重合時に生成するフリーポリマーが基材に導入された高分子グラフト鎖と等しい分子量を有すると仮定し、該フリーポリマーについてゲルパーミエーションクロマトグラフ法により測定を行い、ポリメタクリル酸メチル換算の検量線を用いて数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を算出し、これをそのまま用いる方法を採用してもよい。
【0045】
また、ポリマーブラシ層が形成された基材表面の面積に対する表面占有率(ポリマー断面積当たりの占有比率)、すなわち、高分子グラフト鎖のグラフト密度は、好ましくは0.05以上であり、より好ましくは0.10以上、さらに好ましくは0.15以上であり、特に好ましくは0.2~0.8である。なお、グラフト密度は、高分子グラフト鎖の数平均分子量(Mn)、導入された高分子グラフト鎖の量、基材の表面積より算出することができる。また、ポリマーブラシ層中の表面占有率は、ポリマーの伸びきり形態における繰り返し単位長さとポリマーのバルク密度より断面積を求め、グラフト密度を掛けて算出することができる。なお、表面占有率は、基材表面をグラフト点(1つ目のモノマー)が占める割合という意味になる(最密充填で1、これ以上にはグラフトできない)。
【0046】
ポリマーブラシ層の厚みは、特に限定されないが、分子量の高い高分子鎖により構成されたポリマーブラシ層とすることができることから、好ましくは10~10,000nm、より好ましくは100~5,000nm、さらに好ましくは500~3,000nm、特に好ましくは550~1800nmである。
【0047】
本発明の製造方法により得られるポリマーブラシシートは、シート状の基材上に、分子量の高い高分子グラフト鎖により構成されたポリマーブラシ層が形成されてなるものであるため、各種部材や部品の表面に貼り付けることにより、各種部材や部品の表面に、分子量の高い高分子グラフト鎖により構成されたポリマーブラシ層を形成させることができ、これにより低摩擦性などの優れた特性を適切に付与することができるものである。
【実施例0048】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
各種の測定については、以下の方法に従って行った。
【0049】
支持体の面積透過率
光学顕微鏡を用いて、支持体の3.4mm×2.5mmの任意の領域を撮影し、撮影画像を取得した。そして、取得した撮影画像に対して、画像解析ソフトを用いて、取得した撮影画像を256段階(明度:0~明度:255の256段階であり、数値が大きいほど、明度が高い。)のモノクロ画像に変換した。得られたモノクロ画像において、明度が240以上の領域を透過領域とみなし、モノクロ画像全体における、透過領域の割合として、支持体の面積透過率を求めた。
【0050】
数平均分子量(Mn)および分子量分布(PDI)
重合液の一部をサンプリングし、重合液中に含まれる遊離のポリマーについて、N,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMF)を展開溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフ(以下、GPC)にて、ポリメタクリル酸メチル換算での数平均分子量(以下、Mn)と分子量分布(以下、PDI)を測定し、得られた測定結果を、基材上に生成したポリマー膜のMnおよびPDIとした。
【0051】
ポリマー層膜厚
表面にポリマーブラシ層を形成した基材について、ポリマー膜の膜厚を分光膜厚計(商品名「F-20UV」、フィルメトリクス社製)にて測定した。
【0052】
ポリマーブラシ層の外観評価
光学顕微鏡を用いて、表面にポリマーブラシ層を形成した基材について、ポリマーブラシ層を形成した面を観察し、以下の基準で評価を行った。
4:支持体に由来する繊維の付着や傷はなく、繊維痕や、ムラ、斑点がほとんど見られなかった。
3:支持体に由来する繊維の付着や傷なく、繊維痕や、ムラ、斑点は部分的に見られるのみであった。
2:支持体に由来する繊維の付着や傷はないが、繊維痕、ムラ、斑点が全体的に見られた。
1:支持体に由来する繊維が付着していた、または傷があった。
【0053】
<実施例1>
基材としてのサファイア製ディスク(φ15mm×2mm)を用意し、メチルエチルケトン(以下、MEK)、テトラヒドロフラン(以下、THF)、2-プロパノール(以下、IPA)の順に、これらを用いて超音波洗浄を行った。次いで、UVオゾンクリーナー(日本レーザー&エレクトロニクスラボ社製)を使用して、基材に対してUVオゾン照射を行い、次いで、エタノール89部、28%アンモニア水溶液10部、および2-ブロモ-2-メチルプロピオニルオキシプロピルトリメトキシシラン(以下、BPM)1部を入れた容器に、基材を18時間浸漬させた。次いで、基材を容器から取り出し、容器から取り出した基材をエタノールで超音波洗浄したのち、ブロワー乾燥させることで、開始基付与基材-1を得た。
【0054】
上記とは別に、窒素雰囲気下、2-ブロモ-2-メチルプロピオン酸エチル(以下、EBiB)0.00029部(0.0015mmol)、臭化銅(II)(CuBr2)0.0241部(0.108mmol)、臭化銅(I)(CuBr)0.1394部(0.9718mmol)、4,4’-ジノニル-2,2’-ビピリジル(dNbpy)0.9710部(2.376mmol)、メタクリル酸メチル(MMA)30.04部(300.0mmol)、およびアニソール31.17部(288.2mmol)をバイアルに入れて撹拌し、重合溶液を調製した。
【0055】
次いで、上記にて調製した開始基付与基材-1を、和紙(商品名「UT原紙」、日本製紙パピリア製、天然繊維(木材パルプ、麻パルプ)からなる不織布、目付量:6.3g/m2、厚み:18μm、実施例2~9、および比較例1においても同じものを使用した。)により覆うことで、開始基付与基材-1と、和紙とが互いに接触した状態とされた被覆体とし、被覆体とした状態として、これをアルミラミネートフィルム製のアルミパウチに入れ、アルミパウチ中に、上記にて調製した重合溶液を十分な量にて注入し、中の気体を抜きながらヒートシールした。このアルミパウチを、圧媒体として水を入れた高圧装置(商品名「PV-400」、シンコーポレーション社製)内に入れ、60℃に加温するとともに、400MPaに加圧して4時間重合した。
【0056】
重合後、アルミパウチを開封して中の被覆体を取り出し、和紙を取り除き、THFでよく洗浄した後、乾燥させた。表面に均一で干渉色がある基材を得ることができた。得られた基材について、基材上に生成したポリマー膜の膜厚を分光膜厚計(商品名「F-20UV」、フィルメトリクス社製)にて測定したところ、1115nmであった。また、重合溶液の一部をサンプリングし、N,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMF)を展開溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフ(以下、GPC)にて、ポリメタクリル酸メチル換算での数平均分子量(以下、Mn)と分子量分布(以下、PDI)を測定した。測定の結果、Mnは225万、PDIは1.41であった。膜厚が1115nm、Mnが225万であることから、表面占有率は0.2と算出された。また、得られた基材のポリマーブラシ層の外観評価を行ったところ、評価結果は、「4」であった。また、支持体としての和紙(重合反応に供していない、未使用の和紙)について、面積透過率の測定を行った。その結果、面積透過率は、21.1%であった。なお、実施例2~9、および比較例1でも、実施例1と同じ和紙を用いたため、実施例2~9、および比較例1で使用した支持体の面積透過率の測定結果は、実施例1における支持体の面積透過率の測定結果と同じとした。
【0057】
<比較例1>
和紙を使用せず、積層体とせずに、開始基付与基材-1をそのまま、アルミパウチに入れた以外は、実施例1と同様に操作を行った。その結果、得られた基材は、その表面に傷が入っていて、膜厚にもムラがあった。このことから、得られた基材のポリマーブラシ層の外観評価結果は、「1」であると判断された。これは、アルミパウチに直接基材を入れることによって、アルミパウチ表面と基材表面が接触してしまい、傷や膜厚のムラができたものと考えられる。和紙と接触された、そのアルミパウチとの接触を防止し、且つ、重合溶液にも耐えうる耐薬品性を有し、また、その目の粗さにより、重合溶液を含侵することで基材表面が均一に重合して、傷がないきれいなポリマー膜を有する基材を得ることができたと考えられる。
【0058】
<実施例2>
基材として、シリコン板(60mm×55mm×1mm)を使用した以外は、実施例1と同様にして、開始基付与を行うことで、開始基付与基材-2を得た。
次いで、上記とは別に、窒素雰囲気下、EBiB0.0025部(0.013mmol)、塩化銅(II)(CuCl2)0.0079部(0.059mmol)、塩化銅(I)(CuCl)0.1100部(1.111mmol)、dNbpy1.0519部(2.584mmol)、MMA32.54部(325.0mmol)、およびアニソール33.71部(311.7mmol)をバイアルに入れて撹拌し、重合溶液を調製した。
【0059】
そして、実施例1と同様に、開始基付与基材-2を和紙により覆うことで、開始基付与基材-2と、和紙とが互いに接触した状態とされた被覆体とし、被覆体と、上記にて調製した重合溶液をアルミパウチに入れ、中の気体を抜きながらヒートシールした。このアルミパウチを、圧媒体として水を入れた高圧装置(商品名「まるごとエキスTFS-100」、東洋高圧社製)内に入れ、65℃に加温するとともに、100MPaに加圧して8時間重合した。
重合後、被覆体を取り出して、実施例1と同様にして、基材上に生成したポリマー膜について測定を行ったところ、膜厚は322nmであり、分子量はMnが40万、PDIが1.14であり、表面占有率は0.32であった。また、実施例1と同様にして、得られた基材のポリマーブラシ層の外観評価を行ったところ、評価結果は、「4」であった。
【0060】
<実施例3~5>
表1,2に示す条件で、実施例1,2に示す手順と同様にして、基材として、種々の基材を用いて、基材上にポリマー膜を形成し、同様に測定を行った。結果を、実施例1,2の結果と合わせて表1,2に示す。
【0061】
【0062】
【0063】
<実施例6>
基材としてのSUS板(60mm×20mm×0.1mm)を用意し、MEK-ヘキサン混合溶剤(MEK/ヘキサン=1/1(Vo1%))、THF、IPAの順に、これらを用いて超音波洗浄を行った。次いで、UVオゾンクリーナー(日本レーザー&エレクトロニクスラボ社製)を使用して、基材に対してUVオゾン照射を行い、次いで、エタノール79部、28%アンモニア水溶液1.5部、およびオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)0.6部を入れた容器に、基材を18時間浸漬させた。次いで、基材を容器から取り出し、容器から取り出した基材をエタノールで超音波洗浄したのち、ブロワー乾燥させた。次いで、エタノール89部、28%アンモニア水溶液10部、及びBPM1部を入れた容器に、基板を18時間浸漬させ、基材を容器から取り出し、容器から取り出した基材をエタノールで超音波洗浄したのち、ブロワー乾燥させることで、開始基付与基材-3を得た。
【0064】
次いで、開始基付与基材-3を用い、表3に示す条件で、実施例1に示す手順と同様にして表面グラフト重合を行い、基材上にポリマー膜を形成し、同様に測定を行ったところ、Mnは243万、PDIは1.27、膜厚は1402nm、表面占有率は0.23であった。また、実施例1と同様にして、得られた基材のポリマーブラシ層の外観評価を行ったところ、評価結果は、「4」であった。
【0065】
<実施例7,8>
表3に示す条件で、実施例6に示す手順と同様にして、別種のモノマー(LMA:ラウリルメタクリレート、PEGMA:メタクリル酸ポリエチレングリコール)を用いて、基材上にポリマー膜を形成し、同様に測定および評価を行った。結果を、実施例6の結果と合わせて表3に示す。
【0066】
【0067】
<実施例9>
基材としてのシリコン板(12mm×35mm×1mm)を用意し、MEK、THF、IPAの順に、これらを用いて超音波洗浄を行った。次いで、UVオゾンクリーナー(日本レーザー&エレクトロニクスラボ社製)を使用して、基材に対してUVオゾン照射を行い、次いで、エタノール89部、28%アンモニア水溶液10部、および2-ブロモ-2-メチルプロピオニルオキシプロピルトリメトキシシラン(以下、BPM)1部を入れた容器に、基材を18時間浸漬させた。次いで、基材を容器から取り出し、容器から取り出した基材をエタノールで超音波洗浄したのち、ブロワー乾燥させることで、開始基付与基材-4を得た。本実施例では、2枚の開始基付与基材-4を作製した。
【0068】
上記とは別に、窒素雰囲気下、2-ブロモ-2-メチルプロピオン酸エチル(EBiB)0.0001部(0.0005mmol)、臭化銅(II)(CuBr2)0.0072部(0.0322mmol)、臭化銅(I)(CuBr)0.0648部(0.452mmol)、4,4’-ジノニル-2,2’-ビピリジル(dNbpy)0.414部(1.013mmol)、メタクリル酸メチル(MMA)20部(200mmol)、およびアニソール20.21部(187mmol)をバイアルに入れて撹拌し、重合溶液を調製した。
【0069】
次いで、上記にて調製した一対の開始基付与基材-4で、和紙で挟み、クリップを使用して固定することで、一対の開始基付与基材-4の間に、和紙が接触した状態で挟まれてなる積層体を得て、積層体とした状態として、これをテフロン容器(テフロンは登録商標
)に入れ、テフロン容器中に、上記にて調製した重合溶液を十分な量にて注入し、圧媒体として水を入れた高圧装置(商品名「PV-400」、シンコーポレーション社製)内に入れ、60℃に加温するとともに、400MPaに加圧して4時間重合した。
【0070】
重合後、積層体を取り出し、和紙を取り除き、THFでよく洗浄した後、乾燥させた。表面に均一で干渉色がある基材を得ることができた。得られた基材について、基材上に生成したポリマー膜について、実施例1と同様に測定を行ったところ、Mnは210万、PDIは1.13、膜厚は833nm、表面占有率は0.28であった。また、実施例1と同様にして、得られた基材のポリマーブラシ層の外観評価を行ったところ、評価結果は、「4」であった。
【0071】
<実施例10~18、比較例2,3>
実施例9に示す手順と同様にして、合計で12枚の開始基付与基材-4を作製した。
また、開始剤、触媒仕込み比が表4,5に示すとおりとなるように、実施例9に示す手順と同様にして、重合溶液を調製した。
【0072】
次いで、上記にて調製した開始基付与基材-4と、下記の支持体A~Kとを交互に重ね、クリップを使用して固定することで、11枚の支持体が、それぞれ、開始基付与基材-4の間に、接触した状態で挟まれてなる積層体を得た。上記にて作製した積層体を、アルミラミネートフィルム製のアルミパウチに入れ、アルミパウチ中に、上記にて調製した重合溶液を十分な量にて注入し、中の空気を抜きながらヒートシールした。このアルミパウチを、圧媒体として水を入れた高圧装置(商品名「PV-400」、シンコーポレーション社製)内に入れ、60℃に加温するとともに、400MPaに加圧して4時間重合した。
各実施例で使用した支持体は、以下の通りである。
実施例10(支持体A):商品名「ヒートロンGSP」、日本製紙パピリア製、天然繊維(木材パルプ、麻パルプ)を合成樹脂(ポリオレフィン繊維、複合ポリエステル繊維)で処理した不織布、目付量:18g/m2、厚み:75μm
実施例11(支持体B):商品名「ヒートロンGS-30」、日本製紙パピリア製、天然繊維(木材パルプ、麻パルプ)を合成樹脂(ポリオレフィン繊維)で処理した不織布、目付量:30g/m2、厚み:126μm
実施例12(支持体C):商品名「ヒートパックMW」、日本製紙パピリア製、天然繊維(木材パルプ、麻パルプ)を合成樹脂(ポリオレフィン繊維)で処理した不織布、目付量:50g/m2、厚み:200μm
実施例13(支持体D):商品名「マスキングテープ原紙(未加工品)」、日本製紙パピリア製、天然繊維(木材パルプ)を合成樹脂(ビニロン繊維、ポリビニルアルコール繊維)で処理した不織布、目付量:29g/m2、厚み:60μm
実施例14(支持体E):商品名「両面テープ原紙(薄さ重視)」、日本製紙パピリア製、天然繊維(木材パルプ、麻パルプ)からなる不織布、目付量:6.3g/m2、厚み:24μm
実施例15(支持体F):商品名「両面テープ原紙(打抜き適正重視)」、日本製紙パピリア製、天然繊維(麻パルプ)からなる不織布、目付量:23g/m2、厚み:88μm
実施例16(支持体G):商品名「両面テープ原紙(離解性重視)」、日本製紙パピリア製、天然繊維(木材パルプ)からなる不織布、目付量:14g/m2、厚み:38μm
実施例17(支持体H):商品名「No.3 タテヨコ強度比が100%に近く低密度な紙」、日本製紙パピリア製、天然繊維(麻パルプ、再生セルロース)からなる不織布、目付量:23g/m2、厚み:100μm
実施例18(支持体I):商品名「50NFB」、日本製紙パピリア製、天然繊維(木材パルプ)からなる不織布、目付量:50g/m2、厚み:55μm
比較例2(支持体J):商品名「No.6 極薄タイプのポリエステル紙」、日本製紙パピリア製、合成樹脂(ポリエステル繊維)からなる不織布、目付量:10g/m2、厚み:25μm
比較例3(支持体K):商品名「No.7 ヒートシール性を有す合繊紙」、日本製紙パピリア製、合成樹脂(ポリエステル繊維、複合ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維)からなる不織布、目付量:20g/m2、厚み:65μm
なお、各支持体(重合反応に供していない、未使用の支持体)について、面積透過率の測定を行ったところ、表4,5記載の結果が得られた。
【0073】
重合後、アルミパウチを開封して、積層体を取り出し、和紙を取り除き、THFでよく洗浄した後、乾燥させた。得られた基材について、基材上に生成したポリマー膜の膜厚、Mn、およびPDIを測定した。また、膜厚と、Mnとから、表面占有率を算出した。また、得られた基材上に形成されたポリマーブラシ層の外観評価を行った。
なお、実施例10で使用した支持体Aを挟んだ基材のうち、実施例10で使用した支持体Aに接している一対の面を、実施例10に係るポリマーブラシシートのポリマーブラシ層が形成された面とした。また、実施例11~18、および比較例2,3に係るポリマーブラシシートのポリマーブラシ層が形成された面についても、同様とし、各支持体A~Kを挟む一対の面に対する測定結果を平均したものを、それぞれ、実施例10~18、比較例2,3の結果として採用した。
結果を、表4,5に示す。また、実施例14で得られたポリマーブラシシートのポリマーブラシ層を、光学顕微鏡により、倍率20倍で観察して得た画像を
図1に示す。また、比較例2で得られたポリマーブラシシートのポリマーブラシ層を、光学顕微鏡により、倍率20倍で観察して得た画像を
図2(A)に、倍率100倍で観察して得た画像を
図2(B)に、それぞれ示す。
【0074】
【0075】