(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109130
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】反射防止フィルム用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
G02B 1/111 20150101AFI20240806BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20240806BHJP
G02B 1/18 20150101ALI20240806BHJP
C08F 292/00 20060101ALI20240806BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20240806BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
G02B1/111
G02B1/14
G02B1/18
C08F292/00
C08F2/50
C08F2/44 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013715
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平出 稜
【テーマコード(参考)】
2K009
4J011
4J026
【Fターム(参考)】
2K009AA04
2K009AA15
2K009BB11
2K009CC03
2K009CC06
2K009CC09
2K009CC24
2K009EE05
4J011PA07
4J011PA13
4J011PA47
4J011PB07
4J011PB22
4J011PC02
4J011PC08
4J011QA23
4J011SA03
4J011SA14
4J011SA16
4J011SA20
4J011TA06
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA02
4J026AC00
4J026BA28
4J026BB01
4J026BB02
4J026DB06
4J026DB09
4J026DB36
4J026FA05
4J026FA09
4J026GA07
4J026GA08
4J026GA09
(57)【要約】
【課題】外部光源の反射が従来よりも小さく視認性が良好であり、耐擦傷性及び防汚性が共に良好である反射防止ハードコートフィルムに用いることができる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】エチレンオキサイド変性多官能(メタ)アクリレートと、中空ナノシリカと、アルミナ微粒子と、フッ素系シリコーン化合物と、光重合開始剤と、を含み、前記中空シリカが平均粒子径55~85nmと95~120nmの2種類を含むことを特徴とする反射防止フィルム用樹脂組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンオキサイド変性多官能(メタ)アクリレート(A)と、中空ナノシリカ(B)と、アルミナ微粒子(C)と、フッ素系シリコーン化合物(D)と、光重合開始剤(E)と、を含み、前記(B)が平均粒子径55~85nmの(b1)と95~120nmの(b2)を含み、前記(b1)と(b2)の配合比(b1)/(b2)=0.15~2.0であることを特徴とする反射防止フィルム用樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)がペンタエリスリトール由来の骨格を有する多官能(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項1記載の反射防止フィルム用樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)の配合量が固形分全量に対し20~40重量%であることを特徴とする請求項1記載の反射防止フィルム用樹脂組成物。
【請求項4】
光透過性を有する基材フィルムにハードコート層、低屈折率層がこの順番で積層されてなり、前記低屈折率層が請求項1~3いずれか記載の反射防止フィルム用樹脂組成物の硬化層であることを特徴とする反射防止ハードコートフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は反射防止用フィルムに用いる樹脂組成物、及びそれを用いた反射防止ハードコートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
反射防止ハードコートフィルムは、蛍光灯などの外部光源の反射が少なく視認性が良好であるという特徴から、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどに代表される画像表示装置で広く使用されている。特に、タッチパネルなどのような画像表示面を指で触る場合は、油分や汚れなどの付着で視認性が低下するという問題があり、外部光源の反射率をより低くすると共に防汚性が求められており、またタッチペンで入力するデバイスの場合は、より高い耐摩耗性や耐擦傷性が要求されるようになってきている。
【0003】
反射防止ハードコートフィルムとしては、フィルム基材の表面にハードコート層を設け、その上層に低屈折率の反射防止層を配置する構成が良く知られている。過去に出願人は、拭き取り性に優れる防汚性の反射防止層として、バインダー樹脂と、一次平均粒子径5~100nmの中空シリカ微粒子と、一次平均粒子径1~100nmのアルミナ微粒子と、表面調整剤を含む反射防止ハードコートフィルムを出願している(特許文献1)。
【0004】
このフィルムは、外部光源の反射が少なく視認性に優れると共に、耐擦傷性及び防汚性が共に良好であり、特性面でバランスの取れた優れた反射防止フィルムであった。しかしながら、視認性の更なる向上を求める要求が強くなり、反射率をより低減することが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、外部光源の反射が従来よりも小さく視認性が良好であり、耐擦傷性及び防汚性が共に良好である反射防止ハードコートフィルムに用いることができる樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、エチレンオキサイド変性多官能(メタ)アクリレート(A)と、中空ナノシリカ(B)と、アルミナ微粒子(C)と、フッ素系シリコーン化合物(D)と、光重合開始剤(E)と、を含み、前記(B)が平均粒子径55~85nmの(b1)と95~120nmの(b2)を含み、前記(b1)と(b2)の配合比(b1)/(b2)=0.15~2.0であることを特徴とする反射防止フィルム用樹脂組成物を提供する。
【0008】
請求項2の発明は、前記(A)がペンタエリスリトール由来の骨格を有する多官能(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項1記載の反射防止フィルム用樹脂組成物を提供する。
【0009】
請求項3の発明は、前記(B)の配合量が固形分全量に対し20~40重量%であることを特徴とする請求項1記載の反射防止フィルム用樹脂組成物を提供する。
【0010】
請求項4の発明は、光透過性を有する基材フィルムにハードコート層、低屈折率層がこの順番で積層されてなり、前記低屈折率層が請求項1~3いずれか記載の反射防止フィルム用樹脂組成物の硬化層であることを特徴とする反射防止ハードコートフィルムを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹脂組成物は、外部光源の反射が小さく視認性が良好であると共に、防汚性に優れ、また汚れが付いた場合でも繰り返しの拭き取りに対し耐擦傷性にも優れているため、反射防止ハードコート(以下HCという)フィルムに積層される低屈折率層用の樹脂組成物として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の反射防止フィルム用樹脂組成物は、エチレンオキサイド変性多官能(メタ)アクリレート(A)と、中空ナノシリカ(B)と、アルミナ微粒子(C)と、フッ素系シリコーン化合物(D)と、光重合開始剤(E)を含む組成物である。なお、本明細書において(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートとの双方を包含する。
【0013】
本発明で使用するエチレンオキサイド変性多官能(メタ)アクリレート(A)は、前記(B)と(C)を分散させるバインダー樹脂である。エチレンオキサイド(以下EOという)鎖を含むことで、酸素阻害により重合活性を失ったパーオキシラジカルから活性を持つラジカルを再生成するため、薄膜の場合でも硬化性を向上させることができるという特徴を有する。変性の平均付加数は3~20が好ましく、3~10が更に好ましい。20以下とすることで適度な粘度に調整がしやすくなる。
【0014】
前記(A)としては、例えばEO変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、EO変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、EO変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、EO変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、EO変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらの中では、反応性が高い点からペンタエリスリトール由来の骨格を有する多官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0015】
前記(A)の官能基数は3官能以上が好ましく、4官能以上が更に好ましい。特に下記式(1)で示されるEO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレートが、反応性が高く硬化物の物性が良好で、入手性にも優れる点で好ましい。EO変性の重合数(n)としては3~10が好ましく、4~8が更に好ましく、4~5が特に好ましい。
【化1】
・・・・(1)
(式(1)のn=a+b+c+d≒5)
【0016】
前記(A)の配合量は、樹脂組成物の固形分全量に対し8~35重量%が好ましく、12~30重量%が更に好ましく、15~25重量%が特に好ましい。8重量%以上とすることで十分な皮膜硬化性が確保でき、35重量%以下とすることで屈折率を十分低下させ、反射率を低くすることができる。
【0017】
本発明で使用する中空シリカ微粒子(B)は、樹脂組成物硬化層の屈折率を低下させ最小反射率を小さくする目的で配合する。(B)は低屈折率層の塗膜強度を保持しつつ、その屈折率を下げる機能を有し、内部に屈折率1の空気を含む空洞を有するシリカ粒子である。中実シリカ粒子の屈折率が1.45程度に対し、(B)の屈折率は内部の空洞の占有率が高くなるにつれて低下し、1.15~1.40程度である。
【0018】
前記(B)は平均粒子径が55~85nmである(b1)と、95~120nmである(b2)の少なくとも2種類のナノシリカを含む。一般的に反射率を低下させるためには、低屈折率層の屈折率を下げるため、中空シリカの配合量を上げることが有効である。反面、中空シリカの配合比率を上げすぎると、硬化層が脆くなる傾向があり、耐擦傷性が低下する虞が有る。(b1)と(b2)の2種類の粒子径を含むことにより、硬化層内における中空シリカの充填率を向上させ屈折率を低くすることができ、耐擦傷性を低下させずに最小反射率を低下させることが可能となる。
【0019】
前記(b1)の平均粒子径は55~85nmであり、60~80nmが好ましい。55nm未満では最小反射率が大きくなる傾向があり、85nm超でも同じく最小反射率が大きくなる傾向が有る。なお平均粒子径は、JISZ8825-1に準拠したレーザー回折・散乱法により測定したメジアン径(d=50)とする。市販品としてはスルーリア4320(商品名:日揮触媒化成社製、固形分20.5%、一次平均粒子径60nm)及びスルーリア5320(商品名:日揮触媒化成社製、固形分20.5%、一次平均粒子径80nm)が挙げられる。
【0020】
前記(b1)の配合量は、樹脂組成物の固形分全量に対し2~25重量%が好ましく、3~20重量%が更に好ましく、4~18重量%が特に好ましい。2重量%以上とすることで耐擦傷性を向上させることが可能となり、25重量%以下とすることで最小反射率を十分に小さくすることが可能となる。
【0021】
前記(b2)の平均粒子径95~120nmであり、95~110nmが好ましい。95nm未満では最小反射率が大きくなる傾向が有り、120nm超では皮膜表面の凹凸が大きくなりヘイズが大きくなると共に、耐擦傷性も低下する傾向が有る。市販品としてはスルーリア22UB-01AI(商品名:日揮触媒化成社製、固形分20.5%、一次平均粒子径100nm)が挙げられる。
【0022】
前記(b2)の配合量は、樹脂組成物の固形分全量に対し8~35重量%が好ましく、10~30重量%が更に好ましく、18~28重量%が特に好ましい。8重量%以上とすることで最小反射率を十分小さくすることが可能であり、35重量%以下とすることで十分な耐擦傷性を確保することが可能となる。
【0023】
前記(b1)と(b2)の配合比(b1)/(b2)は0.15~2.0であり、0.18~1.5が好ましく、0.20~0.80が更に好ましく、0.25~0.50が特に好ましい。0.15未満では耐擦傷性が低下する傾向が有り、2.0超では最小反射率が大きくなる傾向が有る。また(b1)と(b2)を含む(B)全体の配合量は、樹脂組成物の固形分全量に対し15~45重量%が好ましく、20~40重量%が更に好ましく、25~35重量%が特に好ましい。15重量%以上とすることで最小反射率を十分に小さくすることができ、45重量%以下とすることで十分な耐擦傷性を確保することができる。
【0024】
本発明で使用するアルミナ微粒子(C)は、硬化層の硬度を上げて耐摩耗性を向上させる目的で配合する。(C)の一次平均粒子径は1~100nmが好ましく、5~50nmが更に好ましく、10~30nmが特に好ましい。1nm以上とすることで耐摩耗性の向上が期待でき、100nm以下とすることでヘイズを高くすることなく十分な全光線透過率を確保することができる。
【0025】
前記(C)の配合量は、樹脂組成物の固形分全量に対し2.0~15.0重量%が好ましく、3.0~10.0重量%が更に好ましく、4.0~8.0重量%が特に好ましい。2.0重量%以上とすることで十分な耐摩耗性を確保することができ、15.0重量%以下とすることで十分に反射率を低く保つことができる。市販品としてはALMIBK30WT%-M47(商品名:CIKナノテック社製、固形分30%、平均粒子径20nm)が挙げられる。
【0026】
本発明で使用するフッ素系シリコーン化合物(D)は、硬化層のスリップ性を向上させて耐摩耗性を向上させると共に、撥水撥由性を上げて防汚性を向上させる目的で配合する。低い表面自由エネルギーを有するため塗工~乾燥後に塗膜表面に偏析しやすく、耐摩耗性及び防汚性を長期にわたり安定化させることができる。硬化後の皮膜からブリード等により経時的に欠落することが無く、効果を長期的に持続できる点で、バインダー樹脂と重合して硬化塗膜を形成できる反応性官能基を有することが好ましい。
【0027】
前記(D)の配合量は、樹脂組成物の固形分全量に対し5~20重量%が好ましく、8~15重量%が更に好ましく、10~13重量%が特に好ましい。5重量%以上とすることで耐摩耗性と防汚性を向上させることが期待でき、20重量%以下とすることで十分な硬化性を確保することができる。市販品としてはX-71-1203M(商品名:信越化学工業社製、固形分20%、反応性官能基を有するフッ素系シリコーン化合物)が挙げられる。
【0028】
本発明で使用する光重合開始剤(E)は、紫外線や電子線などの照射でラジカルを生じ、そのラジカルが重合反応のきっかけとなるもので、ベンジルケタール系、アセトフェノン系、フォスフィンオキサイド系等汎用の光重合開始剤が使用できる。重合開始剤の光吸収波長を任意に選択することによって、紫外線領域から可視光領域にいたる広い波長範囲にわたって硬化性を付与することができる。具体的にはベンジルケタール系として2.2-ジメトキシ-1.2-ジフェニルエタン-1-オンが、α-ヒドロキシアセトフェノン系として1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン及び1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンが、α-アミノアセトフェノン系として2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オンが、アシルフォスフィンオキサイド系として2.4.6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド及びビス(2.4.6‐トリメチルベンゾイル)‐フェニルフォスフィンオキサイド等があり、単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0029】
これらの中では、黄変しにくいα-ヒドロキシアセトフェノン系を含むことが好ましく、特に酸素による重合阻害を受けにくい点でOmnirad127(2‐ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン)が好ましい。光重合開始剤の樹脂組成物におけるラジカル重合性分100重量部に対する配合は3~15重量部が好ましく、5~10重量部が更に好ましい。
【0030】
本発明の反射防止フィルム用樹脂組成物を、光透過性を有する基材フィルムに積層されたHC層上に更に積層することで、反射防止HCフィルムとすることができる。ここでHC層を形成するためのHC樹脂組成物としては、バインダーとして多官能ウレタン(メタ)アクリレート(以下多官能ウレアク)を含むことが好ましい。
【0031】
前記HC樹脂組成物に含むことが好ましい多官能ウレアクは、ウレタン結合に由来する水素結合の凝集力により優れた耐擦傷性を有する。例えばポリイソシアネートと水酸基を有する(メタ)アクリレートとの反応で得ることができる。使用するポリイソシアネートとしては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(以下HDI)、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、HDIイソシアヌレート体、IPDIイソシアヌレート体などがあり、これらを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。これらの中では耐候性が高く黄変しにくい脂肪族及び脂環族のジイソシアネートが好ましく、特にそれらの中では延伸性が高いHDIが好ましい。
【0032】
前記多官能ウレアクにおいて使用する水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば2官能ではトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジグリセリンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートなどが、3官能以上ではジグリセリントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートがある。これらの中では3官能で、硬化性の高いペンタエリスリトールトリアクリレート(以下PETA)が好ましい。
【0033】
本発明の組成物には、性能を損なわない範囲で必要に応じて(A)以外のバインダー成分、紫外線吸収剤、酸化防止剤、密着促進剤、ブルーイング剤、消泡剤、増粘剤、沈澱防止剤、帯電防止剤、防曇剤、抗菌剤、有機微粒子等を添加してもよい。
【0034】
前記(A)以外のバインダー成分としては、EO変性ではないオリゴマーや低分子量バインダーを用いることができる。オリゴマーとしては例えばウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリル系(メタ)アクリレート、ジエン系(メタ)アクリレート等が挙げられる。また低分子量バインダーとしては脂肪族、脂環族、ポリエーテル骨格、水酸基及びアミノ基等の官能基を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0035】
本発明の反射防止フィルム用樹脂組成物を塗工する際には、塗工特性を向上させるため溶剤にて希釈してもよい。希釈溶剤としては、例えばエタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール(以下IPA)、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン(以下MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、PGM,ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテ等のエーテル系溶媒等があげられ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用できる。希釈する場合の固形分としては1~70%が例示されるが、特に指定は無く、塗工しやすい粘度となるように適宜設定可能である。
【0036】
HC樹脂組成物が塗布される基材フィルムとしては、ポリエステルフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルフォンフィルム、ナイロンフィルム、シクロオレフィンフィルム、アクリルフィルム、ポリイミドフィルム、ABSフィルム、ポリオレフィンフィルム、PVCフィルム、PVAフィルム等を挙げることができる。なかでも耐候性、加工性、寸法安定性などの点から二軸延伸処理されたポリエステルフィルムが好ましく用いられる。フィルムの厚みは概ね25μm~500μmであればよい。
【0037】
前記基材フィルムは、HC樹脂組成物との密着性を向上させる目的で、プライマー処理やサンドブラスト法、溶剤処理法などによる表面の凹凸化処理、あるいはコロナ放電処理、クロム酸処理、オゾン・紫外線照射処理などの表面の酸化処理などの表面処理を施すことができる。
【0038】
本発明の反射防止フィルム用樹脂組成物を塗布する方法は、特に制限はなく、公知のスプレーコート、ロールコート、ダイコート、エアナイフコート、ブレードコート、スピンコート、リバースコート、グラビアコート、ワイヤーバーなどの塗工法またはグラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷などの印刷法により形成できる。
【0039】
HC樹脂組成物の膜厚は乾燥時で1μm~10μmが例示できるが、これに限定されるものではない。HC樹脂層上に塗布する低屈折率樹脂組成物の膜厚は乾燥時で50~200nmであることが好ましく、80~150nmであることが更に好ましい。低屈折率層の厚さがこの範囲であれば、反射率を十分低くすることが可能となる。
【0040】
本発明の反射防止フィルム用樹脂組成物を硬化させる際に用いる紫外線照射の光源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、カーボンアーク灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、LEDランプ、無電極紫外線ランプなどがあり、また照射する雰囲気は空気中でもよいし、窒素、アルゴンなどの不活性ガス中でもよい。また紫外線照射時にバックロールの加温や、IRヒーターなどにより塗膜を加熱することで、より硬化性を上げることができる。照射条件としては照射強度500mW/cm2~3000mW/cm2、露光量50~400mJ/cm2が例示されるが、これに限定されるものではない。
【0041】
以下、本発明について実施例、比較例を挙げて詳細に説明するが、具体例を示すものであって、特にこれらに限定するものではない。なお表記が無い場合は、室温25℃、相対湿度65%の条件下で測定を行った。また配合量は固形分換算の重量部を示す。
【0042】
HC樹脂組成物
バインダーとしてHDIとPETAを反応させた6官能のウレアクAを100部、光重合開始剤としてOmnirad2959(商品名:IGM Resins社製)を5部、固形分が40%になるよう酢酸エチルとPGMを用いて希釈し、均一に溶解・分散するまで撹拌してHC樹脂組成物を得た。
【0043】
実施例1~6
前記(A)としてMiramerM4004(商品名:Miwon社製、4官能のEO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、n≒5)を、(b1)としてスルーリア5320(商品名:日揮触媒化成社製、固形分20.5%、一次平均粒子径80nm)及びスルーリア4320(商品名:日揮触媒化成社製、固形分20.5%、一次平均粒子径60nm)を、(b2)としてスルーリア22UB-01AI(商品名:日揮触媒化成社製、固形分20.5%、一次平均粒子径100nm)を、(C)としてM47(商品名:CIKナノテック社製、固形分30%、平均粒子径20nm、MIBK希釈)を、(D)としてX-71-1203M(商品名:信越化学工業社製、固形分20%、反応性官能基含有フッ素系シリコーン化合物)を、光重合開始剤としてOmnirad127(商品名:IGM Resins社製)を、表1記載の配合で用い、固形分が3%になるようIPAとPGMを用いて希釈(IPA:PGM=1:1)し、均一に溶解・分散するまで撹拌して実施例1~6の反射防止フィルム用樹脂組成物を得た。
【0044】
比較例1~8
実施例で用いた材料の他、バインダーとしてDPHA(商品名:日本化薬社製、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)を、中空シリカとしてスルーリア2320(商品名:日揮触媒化成社製、固形分20.5%、一次平均粒子径50nm)を、(D)に代わる表面調整剤として
BYK UV3570(商品名:ビックケミー・ジャパン社製、固形分100%、反応性官能基含有ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン)を、表1記載の配合で用い、固形分が3%になるようIPAとPGMを用いて希釈(IPA:PGM=1:1)し、均一に溶解・分散するまで撹拌して比較例1~8の反射防止フィルム用樹脂組成物を得た。
【0045】
【0046】
【0047】
評価方法は以下の通りとした。
【0048】
HC層の調製
HC樹脂組成物を用い、PETフィルムU403(商品名:東レ社製、厚み100μm、易接着層有)に乾燥膜厚で3μmとなるように塗布し、80℃で1分乾燥した。その後、アイグラフィックス社製の紫外線露光装置ECS-151Uを用い、1200mW/cm2,150mJ/cm2の条件で硬化してHCフィルムを調製した。
【0049】
反射防止HCフィルムの調製
上記で作成したHC層上に、反射防止フィルム用樹脂組成物を乾燥膜厚で100nmとなるように塗布し、80℃で1分乾燥した。その後、アイグラフィックス社製の紫外線露光装置ECS-151Uを用い、1200mW/cm2,150mJ/cm2, 窒素雰囲気下の条件で硬化させ反射防止フィルムを調製した。
【0050】
最小反射率:上記反射防止HCフィルムを用い、塗工面とは反対面を紙やすりで擦り傷を付け、黒色顔料マーカーで塗りつぶし、更に黒色PETを貼り合せ反対面側の反射率を0%とする。その後HC面側を分光光度計にて300nm~780nmの範囲で1nm毎に反射率をプロットして最低の反射率を測定し、0.5%未満を◎、0.5~0.8%を〇、0.8%超を×とした。
【0051】
水接触角:JIS R 3257:1999の静滴法に準じ、協和界面科学社製のDMs-400により、常態のサンプルを用い、室温で水を滴下し30秒静置後の接触角を測定し、115°以上を◎、105°以上115°未満を○、105°未満を×とした。
【0052】
耐擦傷性:スチールウール#0000の上に50g/cm2の荷重を載せて10往復させ、目視による観察で傷が付かない場合を○、傷が付く場合を×とした。
【0053】
【0054】
【0055】
実施例は、最小反射率、水接触角、耐擦傷性の全ての面で問題はなく良好であった。
【0056】
一方、(b1)を含まない比較例1、(b1)/(b2)が下限に満たない比較例3、(C)を含まない比較例6。(A)違いの比較例8は全て耐擦傷性が劣っていた。また(b1)の粒子径が小さい比較例2、(b1)/(b2)が上限を超える比較例4、(b2)を含まない比較例5は最小反射率が高く、(D)を含まない比較例7は水接触角と耐擦傷性が劣り、いずれも本願発明に適さないものであった。