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  • 特開-魚釣用リール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109131
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】魚釣用リール
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/015 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
A01K89/015 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013716
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】南部 一弥
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108EG01
2B108EG06
(57)【要約】
【課題】釣糸が挿通する釣糸案内体に配設される一対のローラの摩擦抵抗が軽減され、構造が簡単で組み込み性が良く、低コストのレベルワインド装置を有する魚釣用リールを提供する。
【解決手段】本発明の魚釣用リールは、リール本体の左右側板間に回転自在に支持されたスプールに対し、釣糸を均等に巻回するレベルワインド装置10を有する。レベルワインド装置10は、それぞれ軸芯方向に延出する貫通孔22aが設けられた一対のローラ22と、一対の各ローラ22の貫通孔22aに挿通されて、各ローラ22を回転可能に支持する一対のローラ固定軸24と、一対のローラ固定軸24を支持し、左右側板間に支持されたウォームシャフト11に係合する基部28と、を備えた釣糸案内体20を有し、一対のローラ22間に釣糸を挿通させたことを特徴とする。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体の左右側板間に回転自在に支持されたスプールに対し、釣糸を均等に巻回するレベルワインド装置を有する魚釣用リールにおいて、
前記レベルワインド装置は、それぞれ軸芯方向に延出する貫通孔が設けられた一対のローラと、前記一対の各ローラの貫通孔に挿通されて、各ローラを回転可能に支持する一対のローラ固定軸と、前記一対のローラ固定軸を支持し、前記左右側板間に支持されたウォームシャフトに係合する基部と、を備えた釣糸案内体を有し、
前記一対のローラ間に釣糸を挿通させたことを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記一対のローラ固定軸は、連結部によって一体化されたフレーム構造を有することを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
前記連結部は、前記左右側板間に配設されるガイド軸と係合されていることを特徴とする請求項2に記載の魚釣用リール。
【請求項4】
前記基部に金属製のプレートを設置し、前記プレートに前記一対のローラ固定軸の各端部を保持したことを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプール前方の側板間に、スプールに釣糸を巻回案内するレベルワインド装置を備えた魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、両軸受型タイプの魚釣用リールには、左右側板間に回転可能に支持されたスプールに対して釣糸を均等に巻回するようにレベルワインド装置が配設されている。このレベルワインド装置は、一方の側板側に回転可能に配設されたハンドルの巻き取り操作に連動して、スプール前方で左右に往復動する釣糸案内体を備えており、前記釣糸案内体に釣糸が挿通されることで、スプールに対して釣糸を均等に巻回することが可能となっている。
【0003】
上記した釣糸案内体は、釣糸が接触しながら挿通する部分となるため、摩擦抵抗が大きいと、仕掛けをキャスティングした際の飛距離が低下する、釣糸が擦れる、仕掛けを自由落下させる際の落下速度が遅くなる等の問題が生じる。このような問題を解決するため、特許文献1には、左右側板間に回転可能に支持されたウォームシャフトに螺合する基部に釣糸を挿通させる一対のローラを配設した釣糸案内体を有するレベルワインド装置が開示されている。
【0004】
前記一対のローラは、それぞれの外周面が、釣糸挿通部内に露出するように回転可能に支持されており、各ローラの下端側は前記基部に保持され、上端側は受部に保持されている。そして、前記基部がウォームシャフトに螺合され、前記受部が左右側板間に支持された支柱に係合したカバー部材に保持されることで、前記釣糸案内体は、左右側板間で往復駆動される。一対のローラ間に挿通される釣糸は、その外周面によって摩擦抵抗を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭56-131771号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来のレベルワインド装置は、釣糸案内体を構成する一対のローラが、それぞれローラカバーによって覆われているため、各ローラの表面がローラカバーと接触し、十分な摩擦軽減効果が得られない。また、各ローラは、前記ローラカバーに保持されると共に、上端が硬質受部に保持されて前記カバー部材に対して一体的に組み込まれる構成のため、部品点数が多くなってガタ付きが生じ易い。更に、部品点数が多いため、組み込み性が悪く、コストも高くなってしまう。
【0007】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、釣糸が挿通する釣糸案内体に配設される一対のローラの摩擦抵抗が軽減され、構造が簡単で組み込み性が良く、低コストのレベルワインド装置を有する魚釣用リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明は、リール本体の左右側板間に回転自在に支持されたスプールに対し、釣糸を均等に巻回するレベルワインド装置を有する魚釣用リールにおいて、前記レベルワインド装置は、それぞれ軸芯方向に延出する貫通孔が設けられた一対のローラと、前記一対の各ローラの貫通孔に挿通されて、各ローラを回転可能に支持する一対のローラ固定軸と、前記一対のローラ固定軸を支持し、前記左右側板間に支持されたウォームシャフトに係合する基部と、を備えた釣糸案内体を有し、前記一対のローラ間に釣糸を挿通させたことを特徴とする。
【0009】
上記した構成の魚釣用リールによれば、釣糸を挿通させる釣糸案内体を構成する一対のローラの夫々は、貫通孔にローラ固定軸を挿通させているため、各ローラの表面を露出した状態に回転可能に支持することが可能となる。このため、ローラ間に挿通される釣糸に対して摩擦抵抗力を軽減することができる。また、各ローラは、一対のローラ固定軸に保持されるだけであるため、部品点数が少なくなって構造が簡略化され、組み込み性が向上し低コスト化が図れる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、釣糸が挿通する釣糸案内体に配設される一対のローラの摩擦抵抗が軽減され、構造が簡単で組み込み性が良く、低コストのレベルワインド装置を有する魚釣用リールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る魚釣用リールの一実施形態を示し、前方側から見た斜視図。
図2】レベルワインド装置の釣糸案内体の構成を示す分解図。
図3】釣糸案内体の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1から図3を参照しながら本発明に係る魚釣用リールについて説明する。
なお、以下の説明において、前後方向(前方、後方)、左右方向、上下方向(上方、下方)は、図1で示す方向で定義する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る魚釣用リールは、左右のフレーム2a,2bを、それぞれ左右のカバー3a,3bで覆った左右側板1A,1Bを備えたリール本体1を有している。前記リール本体1には、左右側板間に位置し、釣竿100に装着されるリール脚が一体形成されている。また、前記左右のフレーム2a,2b間には、スプール軸が軸受を介して回転可能に支持されており、スプール軸には、釣糸が巻回されるスプール3が一体的に固定されている。
【0014】
本実施形態では、前記スプール3を回転駆動するハンドル5を左側板1A側に設置しており、左フレーム2bと左カバー3bとの間の空間には、ハンドル5の回転駆動力をスプール軸に伝達する公知の動力伝達機構が配設されている。また、いずれかの側板には、スプール軸を動力伝達状態と動力遮断状態に切り換える公知のクラッチ機構が配設されており、このクラッチ機構は、スプール3の後方側の左右側板間に配設されたクラッチレバー8を押し下げ操作することで、クラッチON状態(動力伝達状態)からOFF状態(動力遮断状態)に切り換えるようになっている。なお、クラッチOFF状態からクラッチON状態への復帰は、公知の自動復帰機構によってハンドル5を回転操作することで行うことが可能となっている。
【0015】
前記左右の側板1A,1B間には、スプール3の前方側にレベルワインド装置10が配設されている。
前記レベルワインド装置10は、スプール3に巻回されている釣糸を挿通させる釣糸案内体20を備えており、この釣糸案内体20がリール本体1の左右側板間で往復駆動されることで、スプール3に釣糸を均等に巻回する。具体的に釣糸案内体20は、前記動力伝達機構を介して回転駆動されるウォームシャフト(螺軸)11に係合しており、ハンドル5の回転操作と共にウォームシャフト11が回転駆動されると、ウォームシャフト11に係合する釣糸案内体20が往復駆動されるよう構成されている。
【0016】
なお、前記ウォームシャフト11は、左右側板間に回動可能に保持される管状体(筒体)12内に収容された状態となっており、前記管状体12の外面には、軸方向に延出する長孔12aが形成されている。前記ウォームシャフト11の表面には、螺旋溝11aが形成されており、この螺旋溝は、前記長孔12aを介して露出した状態となっている。この螺旋溝11aに釣糸案内体20の係合ピン29が係合することで、ウォームシャフト11の回転に伴って釣糸案内体20は往復駆動される。
【0017】
以下、上記した釣糸案内体20の構成について説明する。
前記釣糸案内体20は、それぞれ軸芯方向(ローラの回転軸方向)に延出する貫通孔22aが設けられた一対のローラ22と、各ローラ22の貫通孔22aに挿通されて、各ローラを回転可能に支持する一対のローラ固定軸24と、前記一対のローラ固定軸24を支持し、前記左右側板間に支持されたウォームシャフト11に係合する基部28と、を備えている。
【0018】
本実施形態の基部28は、略円筒形状に形成されており、前記管状体12を左右方向に貫通させる貫通孔28aが形成されている。前記貫通孔28aと、貫通孔28aに挿通される管状体12は、断面非円形の係合関係によって係合しており、基部28は管状体12に対して回り止めされた状態となっている。また、基部28には、前記露出した状態にあるウォームシャフト11の螺旋溝11aに螺合する係合ピン29を保持する保持孔28bが形成されている。この保持孔28bの内周面には、雌螺子部28cが形成されており、ここに前記係合ピン29を保持した固定部材29Aの雄螺子部29aを螺合して固定することで、前記ウォームシャフト11の螺旋溝11aと係合ピン29が係合するようになっている。
【0019】
前記一対のローラ固定軸24は、ウォームシャフト11の延出方向に沿って一定間隔をおいて上下方向に延出するように形成されており、各ローラ固定軸24にローラ22の貫通孔22aを挿通させると、一対のローラ間には、釣糸が挿通可能な隙間Sが形成されるようになっている。
すなわち、各ローラ22は、ローラ固定軸24に回転可能に保持されるだけであり、その外周面は露出した状態になるため、外周面に接触する釣糸に対して摩擦抵抗が作用することが低減され、各ローラはスムーズに回転することが可能となる。なお、各ローラ22については、摩擦抵抗が小さい材料、例えば、アルミ、チタン等の金属材料や、樹脂素材に金属メッキを施すことで形成することが好ましい。
【0020】
また、それぞれローラ22を保持する一対のローラ固定軸24は、一体化した構造、例えば、図2に示すようなフレーム構造にすることが好ましい。本実施形態では、一対のローラ固定軸24の上端を一体的に連結部25で連結したフレーム構造(略U字形状となったフレーム体26)としており、取り扱い性及び組み付け性の向上、並びに、強度の向上を図っている。なお、フレーム体26については、例えば、硬質樹脂で一体形成したり、金属材料を折り曲げ加工等することで形成することが可能である。
【0021】
前記一対のローラ固定軸24は、前記基部28に対して支持される。この場合、基部28の表面に、金属製のプレート28Aを設置し、前記プレート28Aに一対のローラ固定軸24の各端部24aを支持することが好ましい。プレート28Aの表面には、各ローラ22の下端部が位置する円形の凹所28eが形成されており、各凹所28eの中心には、貫通孔28fが形成されている。また、基部28の表面には、プレート28Aの貫通孔28fと対応する位置に嵌合穴28gが形成されており、これにより、プレート28Aを基部28の表面に設置すると、前記フレーム体26のローラ固定軸24は、ローラ22を保持した状態で基部28に支持される。この場合、円形の凹所28eは、ローラ固定軸24に保持されるローラ22との間で非接触が維持されるように、一定の隙間Gが形成されている。
【0022】
前記フレーム体26は、その上方側で、前記左右側板1A,1B間に配設されるガイド軸30と係合されている。本実施形態のガイド軸30には、軸方向に沿って凹溝31が形成されており、この凹溝31にフレーム体26の連結部25を係合させることで、フレーム体26を安定して左右方向に往復動できるように構成している。なお、連結部25の上面は、凹溝31の底と僅かに離間させることが好ましく、これにより、フレーム体26はスムーズに左右方向に摺動することができる。
【0023】
以上のように構成されるレベルワインド装置10によれば、クラッチをOFFにして釣糸を放出する際、釣糸は、一対のローラ22間の隙間S内に挿通され、ローラ22の表面から大きな抵抗を受けることはない。すなわち、各ローラ22は、ローラ固定軸24に保持されて回転可能となっており、更には、上記した公知技術のように、ローラを固定するローラカバー等の接触による抵抗が発生することもないため、釣糸が一対のローラ22と接触しても円滑に回転することができる。これにより、キャスティング時に飛距離が低下したり、釣糸放出操作時の落下速度が低下することはない。
【0024】
また、クラッチをONに復帰してハンドル5を巻き取り操作すると、釣糸案内体20は、回転駆動されるウォームシャフト11の螺旋溝11aと係合する係合ピン29によって左右方向に往復駆動されるため、釣糸はスプール3に対して均等に巻回される。この状態においても釣糸に対して大きな抵抗が作用しないことから、軽快に巻き取り操作が行なえる。
【0025】
そして、上記した釣糸案内体20は、一対のローラ22、フレーム体26、基部28(プレート28A)の三部品で構成されるため、部品点数を少なくすることができるととも共、夫々の構成が簡単であることから、レベルワインド装置として、組み付け性、及び、部品の交換性の向上(メンテナンス性の向上)が図れるようになる。また、構造が簡略化されることで、コストの低減が図れると共に、公差の影響を少なくすることができ、ガタ付きも生じ難くすることができる。
【0026】
さらに、上記した構成では、部品点数が少なくなることで、レベルワインド装置として軽量化が図れるようになる。この場合、本実施形態では、基部28に金属製のプレート28Aを配設してフレーム体26を固定しているため、全体として固定強度を確保することができる。したがって、それ以外の構成部品については、樹脂などの軽量素材で形成することができ、より効率的に軽量化を図ることが可能となる。
【0027】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
【0028】
本発明は、レベルワインド装置10の釣糸案内体20のローラ22の装着構造に特徴があり、それ以外の構成、例えば、リール本体の大きさ、形状、ウォームシャフト11に係合する係合部材などについては、特に限定されることはない。また、釣糸案内体20は、一対のローラ22を保持するローラ固定軸24を備えていれば良く、図に示すような線状のフレーム構造(フレーム体26)に限定されることはなく、適宜変形することが可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 リール本体
1A,1B 左右側板
3 スプール
10 レベルワインド装置
11 ウォームシャフト
20 釣糸案内体
22 ローラ
24 ローラ固定軸
26 フレーム体
28 基部
30 ガイド軸
図1
図2
図3