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特開2024-1091573次元プリンタ用フィラメント、該3次元プリンタ用フィラメントを用いて得られる成形品、及び該3次元プリンタ用フィラメントの製造方法
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  • 特開-3次元プリンタ用フィラメント、該3次元プリンタ用フィラメントを用いて得られる成形品、及び該3次元プリンタ用フィラメントの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109157
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】3次元プリンタ用フィラメント、該3次元プリンタ用フィラメントを用いて得られる成形品、及び該3次元プリンタ用フィラメントの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/118 20170101AFI20240806BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240806BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240806BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240806BHJP
   B33Y 40/10 20200101ALI20240806BHJP
【FI】
B29C64/118
B33Y10/00
B33Y80/00
B33Y70/00
B33Y40/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013771
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000120010
【氏名又は名称】宇部エクシモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】深沢 英範
(72)【発明者】
【氏名】田中 晴士
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA04
4F213AA11
4F213AA24
4F213AA25
4F213AA29
4F213AA34
4F213AC02
4F213AD03
4F213AD05
4F213AD16
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL24
4F213WL27
4F213WL32
(57)【要約】
【課題】3次元プリンタ機器への加工通過性及び溶融融着性の優れた3次元プリンタ用フィラメントを提供すること。
【解決手段】本技術では、連続した繊維と、熱可塑性樹脂と、を有する3次元プリンタ用フィラメントであって、前記繊維の本数が、30~480本であり、前記繊維の平均直径が、10~50μmであり、断面形状が略扁平である、3次元プリンタ用フィラメントを提供する。また、本技術では、本技術に係る3次元プリンタ用フィラメントを用いて得られる成形品を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続した繊維と、熱可塑性樹脂と、を有する3次元プリンタ用フィラメントであって、
前記繊維の本数が、30~480本であり、
前記繊維の平均直径が、10~50μmであり、
断面形状が略扁平である、3次元プリンタ用フィラメント。
【請求項2】
前記繊維が厚さ方向に1~5本配列した、請求項1に記載の3次元プリンタ用フィラメント。
【請求項3】
前記繊維が幅方向に30~200本配列した、請求項1に記載の3次元プリンタ用フィラメント。
【請求項4】
80℃における熱収縮率が3.0%以下である、請求項1に記載の3次元プリンタ用フィラメント。
【請求項5】
扁平率が50%以上である、請求項1に記載の3次元プリンタ用フィラメント。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の3次元プリンタ用フィラメントを用いて得られる成形品。
【請求項7】
連続した繊維からなる芯と、熱可塑性樹脂からなる鞘と、を有する鞘芯型熱融着性複合繊維を用いて3次元プリンタ用フィラメントを製造する方法であって、30~480本の前記鞘芯型熱融着性複合繊維の前記鞘を熱融着させる熱融着工程を含む、3次元プリンタ用フィラメントの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、3次元プリンタ用フィラメントに関する。より詳しくは、3次元プリンタ用フィラメント、該3次元プリンタ用フィラメントを用いて得られる成形品、及び該3次元プリンタ用フィラメントの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元プリンタの現在主流の造形方式として、熱溶解積層方式(FDM:Fused Deposition Modeling)がある。熱で溶かした樹脂をノズルから押し出し、1層1層積み重ねて造形していく方法である。近年、このFDM方式に用いることができるフィラメントの開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、連続強化繊維に、熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物を含浸させた25℃で固形状の3次元プリンタ用フィラメントが開示されている。一般的に、3次元プリンタ用のフィラメントは、熱可塑性樹脂が用いられることが多いが、特許文献1に記載のフィラメントは、熱硬化性樹脂を含むものである。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、複数の連続した強化繊維に熱可塑性樹脂を含浸させた3Dプリンタ用繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントであって、特定の方法によって評価される横断面の真円度パラメータsの平均値Sが60%~100%であり、かつ平均値Sを算出するために用いた複数の真円度パラメータsの元となる外接円の直径長さの変動係数を0%~10%とすることにより、3Dプリンタによる成形時の工程通過性や造形安定性に優れた3Dプリンタ用繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2021/039557号公報
【特許文献2】国際公開第2020/217929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
3次元プリンタ用フィラメントを用いて3次元プリンタにて造形を行う場合、フィラメントの3次元プリンタ機器への加工通過性の良さや、優れた溶融融着性が求められる。
【0007】
そこで、本技術では、3次元プリンタ機器への加工通過性及び溶融融着性の優れた3次元プリンタ用フィラメントを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らが鋭意実験検討を行った結果、フィラメントに用いる繊維の本数と直径や、フィラメントの形状を工夫することで、3次元プリンタ機器への加工通過性及び溶融融着性を向上させることに成功し、本技術を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本技術では、まず、連続した繊維と、熱可塑性樹脂と、を有する3次元プリンタ用フィラメントであって、
前記繊維の本数が、30~480本であり、
前記繊維の平均直径が、10~50μmであり、
断面形状が略扁平である、3次元プリンタ用フィラメントを提供する。
本技術に係る3次元プリンタ用フィラメントは、前記繊維を厚さ方向に1~5本配列させることができる。
本技術に係る3次元プリンタ用フィラメントは、前記繊維を幅方向に30~200本配列させることができる。
本技術に係る3次元プリンタ用フィラメントは、80℃における熱収縮率を3.0%以下とすることができる。
本技術に係る3次元プリンタ用フィラメントは、その扁平率を50%以上とすることができる。
【0010】
本技術では、次に、本技術に係る3次元プリンタ用フィラメントを用いて得られる成形品を提供する。
【0011】
本技術では、更に、連続した繊維からなる芯と、熱可塑性樹脂からなる鞘と、を有する鞘芯型熱融着性複合繊維を用いて3次元プリンタ用フィラメントを製造する方法であって、30~480本の前記鞘芯型熱融着性複合繊維の前記鞘を熱融着させる熱融着工程を含む、3次元プリンタ用フィラメントの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本技術によれば、3次元プリンタ機器への加工通過性及び溶融融着性の優れた3次元プリンタ用フィラメントを提供することができる。
なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載
されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】3次元プリンタ用フィラメント1の一例を模式的に示す模式的拡大斜視図である。
図2】3次元プリンタ用フィラメント1の一例の長軸方向における断面を模式的に示す模式的拡大断面図である。
図3】本技術に係る3次元プリンタ用フィラメント1の製造方法における熱融着工程の一例を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本技術を実施するための好適な形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0015】
1.3次元プリンタ用フィラメント1
図1は、3次元プリンタ用フィラメント1の一例を模式的に示す模式的拡大斜視図である。図2は、3次元プリンタ用フィラメント1の一例の長軸方向における断面を模式的に示す模式的拡大断面図である。本技術に係る3次元プリンタ用フィラメント1は、繊維11と、熱可塑性樹脂12を有する。以下、本技術に係る3次元プリンタ用フィラメント1の詳細について説明する。
【0016】
(1)断面形状
本技術に係る3次元プリンタ用フィラメント1は、その断面形状が、略扁平であることを特徴とする。断面形状が略扁平であることにより、3次元プリンタ機器に供給する際の通過性が向上する。その結果、3次元プリンタ機器のノズル摩耗の低減にも寄与する。更に、ノズルの摩耗を防止することで、ベッドへの定着悪化も防止することができる。特に、FDM方式の3Dプリンタでは、ベッドへの定着悪化が起こりやすく、ベッドへの定着が悪化すると、プリント中にモデルが動いてしまい、造形に悪影響を及ぼす場合があるが、本技術では、ベッドへの定着悪化を防止できるため、造形品質の向上にも貢献することができる。
【0017】
また、ノズルの摩耗によって、ノズルからの押し出し位置や押し出す樹脂の量や形状等に誤差が生じてしまい、造形品質が低下する場合があるが、本技術では、ノズルの摩耗を防止することで、造形品質が低下することを防止することができる。
【0018】
以上、纏めると、本技術に係る3次元プリンタ用フィラメント1は、その断面形状が、略扁平であることにより、3次元プリンタ機器に供給する際の通過性が向上し、3次元プリンタ機器のノズル摩耗の低減にも寄与すことができる。その結果、ベッドの定着悪化の防止や、ノズルからの押し出し位置や押し出す樹脂の量や形状等を安定化し、造形品質を向上させることができる。
【0019】
本技術に係る3次元プリンタ用フィラメント1の扁平率は、本技術の作用・効果を損なわない限り特に限定されず、用いる3次元プリンタ機器の種類や規格等に合わせて、適宜設定することができる。本技術では、3次元プリンタ用フィラメント1の扁平率の下限は、例えば50%以上、好ましくは55%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは65%以上である。3次元プリンタ用フィラメント1の扁平率の下限をこの範囲に設定することで、3次元プリンタ機器に供給する際の通過性を更に向上させることができる。
【0020】
3次元プリンタ用フィラメント1の扁平率の上限は、例えば99%以下、好ましくは96%以下、より好ましくは94%以下である。3次元プリンタ用フィラメント1の扁平率の上限をこの範囲に設定することで、3次元プリンタ用フィラメント1が薄くなりすぎるのを防止し、取り扱い性や強度を向上させると共に、3次元プリンタ機器に供給する際の通過性も更に向上させることができる。
【0021】
なお、本技術において、3次元プリンタ用フィラメント1の扁平率は、3次元プリンタ用フィラメント1をミクロトームで切断して、断面切片を3つ作成し、得られた切片の断面を、デジタルマイクロスコープにて50倍で観察し、一番大きな径と一番小さな径を測長し、3断面切片の平均をそれぞれ長径と短径として、下記式(1)を用いて算出した値である。
扁平率(%)={(長径-短径)/長径}×100 ・・・(1)
【0022】
本技術に係る3次元プリンタ用フィラメント1の厚さTは、本技術の作用・効果を損なわない限り特に限定されず、用いる3次元プリンタ機器の種類や規格等に合わせて、適宜設定することができる。本技術では、3次元プリンタ用フィラメント1の厚さTの下限は、例えば0.01mm以上、好ましくは0.02mm以上、より好ましくは0.03mm以上である。3次元プリンタ用フィラメント1の厚さTの下限をこの範囲に設定することで、3次元プリンタ用フィラメント1の強度を更に向上させ、その結果、造形後の成形品のZ軸方向の強度を向上させることができる。
【0023】
3次元プリンタ用フィラメント1の厚さTの上限は、例えば3mm以下、好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下、更に好ましくは0.5mm以下、特に好ましくは0.3mm以下である。3次元プリンタ用フィラメント1の厚さTの上限をこの範囲に設定することで、3次元プリンタ用フィラメント1の柔軟性や弾性を向上させ、その結果、3次元プリンタ機器に供給する際の通過性を更に向上させることができる。
【0024】
なお、本技術に係る3次元プリンタ用フィラメント1の厚さTは、3次元プリンタ用フィラメント1の幅方向W中央部における厚さTと定義する。
【0025】
本技術に係る3次元プリンタ用フィラメント1の幅Wは、本技術の作用・効果を損なわない限り特に限定されず、用いる3次元プリンタ機器の種類や規格等に合わせて、適宜設定することができる。本技術では、3次元プリンタ用フィラメント1の幅Wの下限は、例えば0.1mm以上、好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.3mm以上である。3次元プリンタ用フィラメント1の幅Wの下限をこの範囲に設定することで、3次元プリンタ用フィラメント1の強度を更に向上させ、その結果、造形後の成形品のZ軸方向の強度を向上させることができる。
【0026】
3次元プリンタ用フィラメント1の幅Wの上限は、例えば20mm以下、好ましくは15mm以下、より好ましくは10mm以下、更に好ましくは5mm以下、特に好ましくは3mm以下である。3次元プリンタ用フィラメント1の幅Wの上限をこの範囲に設定することで、3次元プリンタ用フィラメント1の柔軟性や弾性を向上させ、その結果、3次元プリンタ機器に供給する際の通過性を更に向上させることができる。
【0027】
なお、本技術に係る3次元プリンタ用フィラメント1の幅Wは、3次元プリンタ用フィラメント1の厚さ方向T中央部における幅Wと定義する。
【0028】
(2)繊維11
本技術に係る3次元プリンタ用フィラメント1に用いることができる繊維11としては、本技術の作用・効果を損ねない限り、一般的なフィラメントに用いることが可能な繊維11を1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。例えば、有機繊維、無機繊維等の化学繊維;植物繊維、動物繊維等の天然繊維;金属繊維のいずれも用いることができるが、本技術では、化学繊維を用いることが好ましい。
【0029】
有機繊維としては、例えば、ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;芳香族ポリエステル樹脂(液晶ポリマー);ナイロン、アラミド等のポリアミド;ポリベンゾオキサゾール(PBO)等のアゾール系高分子;ポリフェニレンスルフィド等の有機材料からなる繊維が挙げられる。アラミド繊維としては、例えば、強度や弾性率に優れるパラ系アラミド繊維と、難燃性、長期耐熱性に優れるメタ系アラミド繊維が挙げられる。パラ系アラミド繊維としては、例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維、コポリパラフェニレン-3,4’-オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維などが挙げられ、メタ系アラミド繊維としては、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維などが挙げられる。
【0030】
無機繊維としては、例えば、ガラス、バサルト、シリコンカーバイト、シリコンナイトライド等の無機材料からなる繊維や、ポリアクリロニトリル(PAN)繊維を原料とするPAN系炭素繊維、石油タールや石油ピッチを原料とするピッチ系炭素繊維、ビスコースレーヨンや酢酸セルロースなどを原料とするセルロース系炭素繊維、炭化水素などを原料とする気相成長系炭素繊維、これらの黒鉛化繊維などの無機材料からなる繊維が挙げられる。
【0031】
金属繊維としては、例えば、鉄、金、銀、銅、アルミニウム、黄銅、ステンレスなどの金属材料からなる繊維が挙げられる。
【0032】
本技術に係る3次元プリンタ用フィラメント1において、繊維11の本数は、30~480本であることを特徴とする。3次元プリンタ用フィラメント1の繊維11の本数をこの範囲に設定することで、強度を保ちつつも、適度な柔軟性や弾性を備えるため、3次元プリンタ機器に供給する際の通過性が向上し、3次元プリンタ機器のノズル摩耗の低減にも寄与すことができる。その結果、ベッドの定着悪化の防止や、ノズルからの押し出し位置や押し出す樹脂の量や形状等を安定化し、造形品質を向上させることができる。
【0033】
本技術に係る3次元プリンタ用フィラメント1において、繊維11の本数は、30~480本の範囲内であれば、用いる3次元プリンタ機器の種類や規格等に合わせて、適宜設定することができる。繊維11の本数の下限は、30本以上、好ましくは40本以上、より好ましくは45本以上である。繊維11の本数の下限をこの範囲に設定することで、3次元プリンタ用フィラメント1の強度を更に向上させ、その結果、造形後の成形品のZ軸方向の強度を向上させることができる。
【0034】
繊維11の本数の上限は、480本以下、好ましくは450本以下、より好ましくは400本以下である。繊維11の本数の上限をこの範囲に設定することで、3次元プリンタ用フィラメント1の柔軟性や弾性を向上させ、その結果、3次元プリンタ機器に供給する際の通過性を更に向上させることができる。
【0035】
本技術に係る3次元プリンタ用フィラメント1における繊維11の配置形態は、本技術の作用・効果を損なわない限り、用いる3次元プリンタ機器の種類や規格等に合わせて、適宜設定することができる。本技術に係る3次元プリンタ用フィラメント1における繊維11の配置形態としては、例えば、厚さ方向Tに1~5本の範囲で配列させることが好ましく、1.2~4.5本配列させることがより好ましく、1.5~4本配列させることが更に好ましい。
【0036】
また、本技術に係る3次元プリンタ用フィラメント1における繊維11の配置形態としては、例えば、幅方向Wに30~200本配列させることが好ましく、35~190本配列させることがより好ましく、40~180本配列させることが更に好ましい。
【0037】
本技術で用いる繊維11の平均直径は、本技術の作用・効果を損なわない限り特に限定されず、用いる3次元プリンタ機器の種類や規格等に合わせて、適宜設定することができる。本技術では、繊維11の平均直径の下限は、例えば10μm以上、好ましくは12μm以上、より好ましくは15μm以上、更に好ましくは20μm以上である。用いる繊維11の平均直径の下限をこの範囲に設定することで、3次元プリンタ用フィラメント1の強度を更に向上させ、その結果、造形後の成形品のZ軸方向の強度を向上させることができる。
【0038】
繊維11の平均直径の上限は、例えば50μm以下、好ましくは40μm以下、より好ましくは35μm以下、更に好ましくは30μm以下である。用いる繊維11の平均直径の上限をこの範囲に設定することで、3次元プリンタ用フィラメント1の柔軟性や弾性を向上させ、その結果、3次元プリンタ機器に供給する際の通過性を更に向上させることができる。
【0039】
本技術に係る3次元プリンタ用フィラメント1中の繊維11の体積含有率は、本技術の作用・効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、3次元プリンタ用フィラメント1中の繊維11の体積含有率の下限は、例えば20体積%以上、好ましくは25体積%以上、より好ましくは30体積%以上である。3次元プリンタ用フィラメント1中の繊維11の体積含有率の下限をこの範囲に設定することで、3次元プリンタ用フィラメント1の強度を更に向上させ、その結果、造形後の成形品のZ軸方向の強度を向上させることができる。
【0040】
本技術では、3次元プリンタ用フィラメント1中の繊維11の体積含有率の上限は、例えば70体積%以下、好ましくは65体積%以下、より好ましくは60体積%以下である。3次元プリンタ用フィラメント1中の繊維11の体積含有率の上限をこの範囲に設定することで、3次元プリンタ用フィラメント1の柔軟性や弾性を向上させ、その結果、3次元プリンタ機器に供給する際の通過性を更に向上させることができる。
【0041】
なお、本技術において、体積含有率は、下記式(2)を用いて算出した値である。
Vf=[(W1/D1)/{W1/D1+(W0-W1)/D2}]×100 ・・・(2)
Vf:体積含有率(%)
W1:繊維11の質量(g)
D1:繊維11の密度(g/cm3)
W0:3次元プリンタ用フィラメント1の質量(g)
D2:熱可塑性樹脂12の密度(g/cm3)
W0-W1:熱可塑性樹脂12の質量(g)
【0042】
(3)熱可塑性樹脂12
本技術に係る3次元プリンタ用フィラメント1に用いることができる熱可塑性樹脂12としては、本技術の作用・効果を損ねない限り、一般的なフィラメントに用いることが可能な熱可塑性樹脂12を1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0043】
本技術で用いることができる熱可塑性樹脂12としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、液晶ポリエステル樹脂等のポリエステルや、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリイソブチレン樹脂等のポリオレフィンや、スチレン系樹脂の他、ポリオキシメチレン(POM)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリメチレンメタクリレート(PMMA)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、変性PPE樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリスルホン(PSU)樹脂、変性PSU樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリケトン(PK)樹脂、ポリエーテルケトン(PEK)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、フェノール系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂などのフッ素系樹脂、更にポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリイソプレン系樹脂、フッ素系樹脂等の熱可塑エラストマー等や、これらの共重合体、変性体、および2種類以上ブレンドした樹脂などであってもよい。
【0044】
この中でも、本技術では、融点が100~140℃の範囲の単一系熱可塑性樹脂、共重合熱可塑性樹脂、各種変性熱可塑性樹脂等が好ましく、紡糸安定性、物性等の点から、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、高密度、中密度、低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレンなどのエチレン系重合体、プロピレンと他のα-オレフィンとの共重合体、具体的にはプロピレン-ブテン-1ランダム共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン-1ランダム共重合体、あるいは軟質ポリプロピレンなどの非結晶性プロピレン系重合体、ポリ4-メチルペンテン-1などを挙げることができ、これらの1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。この中でも、本技術では、前記のエチレン系重合体、プロピレン-ブテン-1ランダム共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン-1ランダム共重合体、の単独あるいはこれらの混合体が好ましく、紡糸性やコスト、耐低温物性等を考慮するとエチレン系重合体がより好ましく、直鎖状低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンが更に好ましい。
【0045】
なお、繊維11として熱可塑性樹脂材料からなる繊維11を用いる場合は、同一の種類の熱可塑性樹脂12を用いることも可能であるが、その融点は、繊維11の融点>熱可塑性樹脂12の融点となるように調整することが好ましい。例えば、3次元プリンタ機器による造形時に、繊維11の融点未満、熱可塑性樹脂12の融点以上の温度にて、本技術に係る3次元プリンタ用フィラメント1を加熱することで、3次元プリンタ用フィラメント1における繊維11は溶融させずに熱可塑性樹脂12のみを溶融させることができるため、造形された成形品のZ軸方向の強度を更に向上させることができる。
【0046】
本技術に係る3次元プリンタ用フィラメント1中の熱可塑性樹脂12の含有量は、本技術の作用・効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、3次元プリンタ用フィラメント1中の熱可塑性樹脂12の含有量の下限は、例えば1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上である。3次元プリンタ用フィラメント1中の熱可塑性樹脂12の含有量の下限をこの範囲に設定することで、3次元プリンタ用フィラメント1の柔軟性や弾性を向上させ、その結果、3次元プリンタ機器に供給する際の通過性を更に向上させることができると共に、3次元プリンタ機器による造形時の接着性をより向上させることができる。
【0047】
本技術では、3次元プリンタ用フィラメント1中の熱可塑性樹脂12の含有量の上限は、例えば50質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。3次元プリンタ用フィラメント1中の熱可塑性樹脂12の含有量の上限をこの範囲に設定することで、3次元プリンタ用フィラメント1の強度を更に向上させ、その結果、造形後の成形品のZ軸方向の強度を向上させることができる。
【0048】
(4)熱収縮率
本技術に係る3次元プリンタ用フィラメント1の熱収縮率は、本技術の作用・効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、3次元プリンタ用フィラメント1の80℃における熱収縮率は、例えば3.0%以下、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.0%以下である。3次元プリンタ用フィラメント1の熱収縮率をこの範囲に設定することで、造形品質の更なる向上が実現できる。
【0049】
なお、本技術における熱収縮率は、下記の測定方法により測定・算出された値である。
[熱収縮率の測定方法]
測定対象の3次元プリンタ用フィラメント1から2mサンプルを切出し、検査長として1mの間隔を正確にマーキングする。マーキング時の荷重は検査長を正確に規定し、繊維を伸長させない荷重として0.0393cN/dtexに相当する荷重で統一する。その後、試験片を80℃に温度調整した乾熱オーブンに無荷重状態で入れ、熱収縮率が飽和状態となる6時間の加熱(処理)を行う。しかる後、撚りが入らないようして、測定荷重0.0393cN/dtexの荷重を試験片にかけながら、マーキング部の長さを計測し、加熱処理前後での検査長の変化率を、熱収縮率(%)として算出する。
【0050】
(5)ボイド率
本技術に係る3次元プリンタ用フィラメント1のボイド率は、本技術の作用・効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、3次元プリンタ用フィラメント1のボイド率は、例えば10%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下である。3次元プリンタ用フィラメント1のボイド率をこの範囲に設定することで、成形後の強度低下を抑えることができる。
【0051】
なお、本技術において、ボイド率は、3次元プリンタ用フィラメント1を、超深度カラー3D形状測定顕微鏡にて拡大倍率300で撮影し、3次元プリンタ用フィラメント1の総断面積および空隙(ボイド)となっている部位の面積を求め、下記の式(3)により算出した値である。
ボイド率(%)={(ボイドが占める部位の総面積)/(3次元プリンタ用フィラメント1の総面積)}×100 ・・・(3)
【0052】
2.成形品
本技術に係る3次元プリンタ用フィラメント1を用いて、3次元プリンタ機器で成形された成形品は、優れた造形品質を有する。本技術に係る3次元プリンタ用フィラメント1は、あらゆる成形品へ造形することができる。本技術に係る3次元プリンタ用フィラメント1を用いて造形可能な成形品としては、例えば、電気分野、建築分野、輸送分野、日用品分野、玩具分野、包装分野等に用いる各種製品が挙げられる。
【0053】
3.3次元プリンタ用フィラメント1の製造方法
本技術に係る3次元プリンタ用フィラメント1は、その構造に特徴があり、その製造方法は特に限定されない。従って、一般的な繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントのように、強化繊維に熱可塑性樹脂を含浸させることによって得ることができる。また、以下に示す本技術に係る製造方法を用いて得ることもできる。
【0054】
本技術に係る製造方法は、少なくとも熱融着工程を行う方法である。図3は、本技術に係る3次元プリンタ用フィラメントの製造方法における熱融着工程の一例を説明するための概念図である。また、本技術に係る製造方法では、必要に応じて、複合繊維製造工程、巻取り工程、アニール工程等を行うことも可能である。以下、各工程について、詳細に説明する。なお、説明は、時系列に沿って工程順で行う。
【0055】
(1)複合繊維製造工程
複合繊維製造工程は、後述する熱融着工程で用いる鞘芯型熱融着性複合繊維を製造する工程である。本技術で用いる鞘芯型熱融着性複合繊維2は、連続した繊維11からなる芯と、熱可塑性樹脂12からなる鞘と、を有する。なお、この複合繊維製造工程は、本技術に係る製造方法では必須ではなく、予め製造された鞘芯型熱融着性複合繊維2や、市販の鞘芯型熱融着性複合繊維2を用いることも可能である。
【0056】
複合繊維製造工程では、例えば、芯となる繊維11を、鞘となる熱可塑性樹脂12で覆うことで、鞘芯型熱融着性複合繊維2を製造することができる。より具体的には、例えば、予め紡糸された繊維11を、熱可塑性樹脂12に含浸することで、鞘芯型熱融着性複合繊維2を製造することができる。また、例えば、繊維11を形成する材料と、熱可塑性樹脂12とを、溶融状態かつ鞘芯構造を形成した状態で紡糸した後、所定の温度で延伸することで、鞘芯型熱融着性複合繊維2を製造することもできる。例えば、芯を形成する材料として樹脂を用いる場合には、延伸工程では、芯を形成する樹脂のガラス転移度(Tg)以上の温度で延伸を行うことが好ましい。
【0057】
(2)熱融着工程
熱融着工程は、30~480本の鞘芯型熱融着性複合繊維2の鞘(熱可塑性樹脂12)を熱融着させる工程である。具体的には、図3のAに示すように、所定の本数の鞘芯型熱融着性複合繊維2を、鞘を形成する熱可塑性樹脂の融点以上に加熱することで、鞘芯型熱融着性複合繊維2の鞘を形成する熱可塑性樹脂が溶融し、融着して一体化することにより、3次元プリンタ用フィラメント1を製造することができる(図3のB参照)。
【0058】
芯を形成する繊維11の融点は、鞘を形成する熱可塑性樹脂12の融点よりも20℃以上高い方が好ましい。例えば、熱融着工程において、鞘を形成する熱可塑性樹脂12の融点以上、芯を形成する繊維11の融点未満で加熱することにより、芯を形成する繊維11の強度や伸度等の繊維機能を維持することができるため、製造された3次元プリンタ用フィラメント1の強度をより向上させることができる。この際、芯を形成する繊維11の融点が、鞘を形成する熱可塑性樹脂12の融点よりも20℃以上高ければ、加熱温度の調節が容易となる。
【0059】
(3)巻取り工程
巻取り工程は、熱融着工程を経て製造された3次元プリンタ用フィラメント1を巻き取る工程である。巻取り工程で用いることができる巻取り方法は特に限定されず、1錘巻取り法、2錘巻取り法等、一般的なフィラメントの巻取り方法を、1種又は2種以上、適宜組み合わせて用いることができる。
【0060】
(4)アニール工程
アニール工程は、製造された3次元プリンタ用フィラメント1に所定の熱を加えることによって、熱可塑性樹脂12の残留応力を取り除き、寸法精度を安定させたり、熱可塑性樹脂12の収縮、歪み等の変形や割れを防いだりするための工程である。繊維11を形成する材料が樹脂の場合は、このアニール工程において、繊維11部分の残留応力を取り除き、寸法精度を安定させたり、繊維11部分の収縮、歪み等の変形や割れを防いだりすることも可能である。
【0061】
アニール工程における各種条件は、特に限定されず、繊維11や熱可塑性樹脂12の種類に応じて、適宜設定することができる。例えば、80~150℃の温度で、3~48時間のアニール処理を行うことができる。
【0062】
なお、本技術は、以下の構成を採ることもできる。
(1)
連続した繊維と、熱可塑性樹脂と、を有する3次元プリンタ用フィラメントであって、
前記繊維の本数が、30~480本であり、
前記繊維の平均直径が、10~50μmであり、
断面形状が略扁平である、3次元プリンタ用フィラメント。
(2)
前記繊維が厚さ方向に1~5本配列した、(1)に記載の3次元プリンタ用フィラメント。
(3)
前記繊維が幅方向に30~200本配列した、(1)又は(2)に記載の3次元プリンタ用フィラメント。
(4)
80℃における熱収縮率が3.0%以下である、(1)から(3)のいずれかに記載の3次元プリンタ用フィラメント。
(5)
扁平率が50%以上である、(1)から(4)のいずれかに記載の3次元プリンタ用フィラメント。
(6)
(1)から(5)のいずれかに記載の3次元プリンタ用フィラメント用いて得られる成形品。
(7)
連続した繊維からなる芯と、熱可塑性樹脂からなる鞘と、を有する鞘芯型熱融着性複合繊維を用いて3次元プリンタ用フィラメントを製造する方法であって、30~480本の前記鞘芯型熱融着性複合繊維の前記鞘を熱融着させる熱融着工程を含む、3次元プリンタ用フィラメントの製造方法。
【実施例0063】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、
これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0064】
(1)3次元プリンタ用フィラメントの製造
本実施例では、下記のいずれかの方法を用いて3次元プリンタ用フィラメントを製造した。
【0065】
[製造方法1]
下記の表1に記載の繊維本数の繊維束を連続的に送り出し、熱可塑性樹脂が充填された含浸ダイ内で、繊維束に熱可塑性樹脂を含浸させた。熱可塑性樹脂を含浸した繊維を、引き取りロールで連続的に引き抜き、冷却固化して3次元プリンタ用フィラメントを製造した。
【0066】
[製造方法2]
下記の表1に記載の繊維材料及び熱可塑性樹脂で形成された鞘芯型熱融着性複合繊維を、下記の表1に記載の繊維本数分、熱融着し、引き取りロールで連続的に引き抜き、冷却固化して3次元プリンタ用フィラメントを製造した。
【0067】
(2)測定
下記の方法を用いて、扁平率、熱収縮率、ボイド率を測定・算出した。
【0068】
[扁平率]
製造した3次元プリンタ用フィラメントをミクロトームで切断して、断面切片を3つ作成した。得られた各切片の断面を、デジタルマイクロスコープにて50倍で観察し、一番大きな径と一番小さな径を測長した。3断面切片の平均をそれぞれ長径と短径とし、前記式(1)を用いて、扁平率を算出した。
【0069】
[熱収縮率]
製造した3次元プリンタ用フィラメントから2mサンプルを切出し、検査長として1mの間隔を正確にマーキングした。マーキング時の荷重は検査長を正確に規定し、繊維を伸長させない荷重として0.0393cN/dtexに相当する荷重で統一した。その後、試験片を80℃に温度調整した乾熱オーブンに無荷重状態で入れ、熱収縮率が飽和状態となる6時間の加熱(処理)を行った。しかる後、撚りが入らないようして、測定荷重0.0393cN/dtexの荷重を試験片にかけながら、マーキング部の長さを計測し、加熱処理前後での検査長の変化率を、熱収縮率(%)として算出した。
【0070】
[ボイド率]
製造した3次元プリンタ用フィラメントを、超深度カラー3D形状測定顕微鏡にて拡大倍率300で撮影し、3次元プリンタ用フィラメントの総断面積および空隙(ボイド)となっている部位の面積を求め、前記の式(2)により、ボイド率を算出した。
【0071】
(3)評価
製造した3次元プリンタ用フィラメントを用いて、3次元プリンタにて評価用試料として円筒形状の成形体の造形を行う場合の加工通過性と、造形された成形品の造形品質、及びZ軸方向の強度について、下記の基準で評価を行った。その際の造形条件は、プリント速度を60mm/秒、テーブル温度を45℃、ノズル温度を180℃とした。
【0072】
[加工通過性]
製造した3次元プリンタ用フィラメント2mを用いて、FDM方式3次元プリンタにて20回造形を行った際の詰まりの発生回数を計測することで、加工通過性を評価した。なお、3次元プリンタのノズルは市販のものを追加工し、先端吐出口の直径が各実施例および比較例により得られた繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントの厚み+0.1mm及び幅+0.1mmとなるようにした。
【0073】
[造形品質]
製造した3次元プリンタ用フィラメント2mを用いて、FDM方式3次元プリンタにて造形を行った成形品について、フィラメント同士の溶融融着性を目視で観察し、下記の基準に基づいて評価を行った。
◎:フィラメント間の隙間が全くない
○:フィラメント間の隙間がほとんどない
△:フィラメント間の隙間は少し確認できるが、許容範囲内
×:フィラメント間の隙間がはっきり確認できる
【0074】
[Z軸方向の強度]
製造した3次元プリンタ用フィラメントを用いて、3Dプリンタを用いて、ノズル温度180℃、テーブル温度50℃の条件で、ISO527に記載のダンベル片(寸法1B)を造形した。前記ダンベル片を用いて、掴み具間距離80mm、試験速度1mm/sで引張強度を測定し、下記の基準に基づいて評価を行った。
◎:400MPa超
○:300MPa~400MPa
△:200MPa~300MPa
×:200MPa未満
【0075】
(4)結果
結果を下記の表1に示す。
【表1】
【0076】
(5)考察
繊維の本数が30~480本、繊維の平均直径が10~50μm、断面形状が略扁平である、実施例1~7の3次元プリンタ用フィラメントは、全ての評価が良好であった。一方、繊維の本数が30本未満の比較例1は、Z軸方向の強度が弱い結果であった。繊維の本数が480本を超える比較例2は、加工通過性が不良であり、造形品質も劣っていた。繊維の平均直径が10μm未満の比較例3は、Z軸方向の強度が弱い結果であった。繊維の平均直径が50μmを超える比較例4は、加工通過性が不良であり、造形品質も劣っていた。断面形状が円形の比較例5は、加工通過性が不良であった。
【符号の説明】
【0077】
1:3次元プリンタ用フィラメント
11:繊維
12:熱可塑性樹脂
2:鞘芯型熱融着性複合繊維
図1
図2
図3