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特開2024-109167熱界面構造、熱界面構造体、熱界面構造体の製造方法及び熱界面構造の形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109167
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】熱界面構造、熱界面構造体、熱界面構造体の製造方法及び熱界面構造の形成方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20240806BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H05K7/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013801
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】516319500
【氏名又は名称】株式会社ロータス・サーマル・ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110003823
【氏名又は名称】弁理士法人柳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井手 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】植松 千尋
(72)【発明者】
【氏名】村上 政明
(72)【発明者】
【氏名】沼田 富行
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322FA04
5E322FA09
5F136BC01
5F136BC07
5F136EA02
5F136EA35
5F136FA01
5F136FA12
5F136FA23
5F136FA53
5F136FA82
(57)【要約】
【課題】発熱体やヒートシンクなどの二部材の対向面に微細な凹凸があっても、該対向面に密着し、高い熱伝達効率が得られるとともに、取り扱い容易で組付け精度も維持でき、組み付け後も安定した品質が維持できる熱界面構造を提供せんとする。
【解決手段】 二部材91、92の各々に対面する表裏の板面を有し、厚み方向に延びて表裏両板面に開口する複数の貫通孔20を有する良熱伝導性の多孔ベース板2と、少なくとも前記熱伝導が行われる使用温度環境下で流動性を維持し、多孔ベース板2の貫通孔20内に充填されるとともに前記二部材の対向面に密接する熱伝導材3とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二部材の間に設けられ、熱伝導を促進する熱界面構造であって、
前記二部材の各々に対面する表裏の板面を有し、厚み方向に延びて表裏両板面に開口する複数の貫通孔を有する良熱伝導性の多孔ベース板と、
少なくとも前記熱伝導が行われる使用温度環境下で流動性を有するものであり、前記多孔ベース板の前記貫通孔内に充填されるとともに前記二部材の対向面に密接する熱伝導材とを備えていることを特徴とする熱界面構造。
【請求項2】
前記熱伝導材が、前記使用温度環境下において良熱伝導性の液状体、半固体、粒子集合体、又はこれらの組み合わせの状態である、請求項1記載の熱界面構造。
【請求項3】
前記熱伝導材が、常温(室温)において良熱伝導性の固体の状態である、請求項1又は2記載の熱界面構造。
【請求項4】
二部材の間に設けられ、熱伝導を促進する熱界面構造であって、
前記二部材の各々に対面する表裏の板面を有し、厚み方向に延びて表裏両板面に開口する複数の貫通孔を有する良熱伝導性の多孔ベース板と、
150℃以下の融点を有する易融合金からなり、前記多孔ベース板の前記貫通孔内に充填されるとともに前記二部材の対向面に密接する熱伝導材とを備え、
該熱伝導材の融点未満の温度環境下で使用される熱界面構造。
【請求項5】
前記熱伝導材が、前記多孔ベース板の前記開口の周囲の板面と前記部材との間にも介在している、請求項1又は4記載の熱界面構造。
【請求項6】
前記二部材間に前記多孔ベース板を弾性挟持する挟持手段を備える、請求項1又は4記載の熱界面構造。
【請求項7】
請求項1~3の何れか1項に記載の熱界面構造に用いる熱界面構造体であって、
前記多孔ベース板と、
前記多孔ベース板の前記貫通孔内に充填されるとともに前記表裏の板面上にも存在し、常温(室温)において良熱伝導性の固体の状態であり且つ前記熱伝導が行われる使用温度環境下で流動性を有する熱伝導材と、
を備える熱界面構造体。
【請求項8】
請求項4記載の熱界面構造に用いる熱界面構造体であって、
前記多孔ベース板と、
150℃以下の融点を有する易融合金からなり、前記多孔ベース板の前記貫通孔内に充填されるとともに前記表裏の板面上にも存在し、常温(室温)において良熱伝導性の固体の状態である熱伝導材とを備え、
該熱伝導材の融点未満の温度環境下で使用される熱界面構造体。
【請求項9】
請求項7又は8記載の熱界面構造体の製造方法であって、
前記熱伝導材を加熱して流動化させることにより、前記多孔ベース板の前記貫通孔内に充填した後、
常温(室温)に戻して固化させる、
熱界面構造体の製造方法。
【請求項10】
請求項7又は8記載の熱界面構造体を用いた熱界面構造の形成方法であって、
前記熱界面構造体を二部材の間に設け、
少なくとも一方の部材を加熱させて熱界面構造体の前記熱伝導材を流動化させ、前記二部材の対向面に密接させた後、
常温(室温)に戻して固化させる、
熱界面構造の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二部材の間に設けられ、二部材間の熱伝導を促進する熱界面構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の熱界面構造としては、従来から、半導体チップ等の発熱体とその冷却器であるヒートシンクとの間に、熱伝導性シリコーンシートや熱伝導性テープ、熱伝導性ペーストなどの熱界面材料を設けることが用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
熱伝導性シリコーンシートや熱伝導性テープは、みずから保形性を有しており、取り扱いが容易である。しかし、発熱体やヒートシンクの対向面に微細な凹凸があると空気層ができてしまい、熱抵抗の高まりやバラつきが生じ、熱伝達効率が低下してしまうという課題がある。他方、熱伝導性ペーストは、流動性を有し、上記凹凸の存在する対向面に密着させることができるものの、たとえば塗布する厚みが不均一になれば同様に空気層が生じやすく、組み付け精度も低下する。また、このようなペーストだけでは少なくとも50~100μmの膜厚となり、大きな界面熱抵抗の発生が避けられない。さらに組み付け後にペーストが流れ落ちてしまう等の虞もあり、扱いが難しく、不安定で品質にばらつきが生じやすいという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-58591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、発熱体やヒートシンクなどの二部材の対向面に微細な凹凸があっても、該対向面に密着し、高い熱伝達効率が得られるとともに、取り扱い容易で組付け精度も維持でき、組み付け後も安定した品質が維持できる熱界面構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の発明を包含する。
(1) 二部材の間に設けられ、熱伝導を促進する熱界面構造であって、前記二部材の各々に対面する表裏の板面を有し、厚み方向に延びて表裏両板面に開口する複数の貫通孔を有する良熱伝導性の多孔ベース板と、少なくとも前記熱伝導が行われる使用温度環境下で流動性を有するものであり、前記多孔ベース板の前記貫通孔内に充填されるとともに前記二部材の対向面に密接する熱伝導材とを備えていることを特徴とする熱界面構造。
【0007】
(2) 前記熱伝導材が、前記使用温度環境下において良熱伝導性の液状体、半固体、粒子集合体、又はこれらの組み合わせの状態である、(1)記載の熱界面構造。
【0008】
(3) 前記熱伝導材が、常温(室温)において良熱伝導性の固体の状態である、(1)又は(2)記載の熱界面構造。
【0009】
(4) 二部材の間に設けられ、熱伝導を促進する熱界面構造であって、前記二部材の各々に対面する表裏の板面を有し、厚み方向に延びて表裏両板面に開口する複数の貫通孔を有する良熱伝導性の多孔ベース板と、150℃以下の融点を有する易融合金からなり、前記多孔ベース板の前記貫通孔内に充填されるとともに前記二部材の対向面に密接する熱伝導材とを備え、該熱伝導材の融点未満の温度環境下で使用される熱界面構造。
【0010】
(5) 前記熱伝導材が、前記多孔ベース板の前記開口の周囲の板面と前記部材との間にも介在している、(1)又は(4)記載の熱界面構造。
【0011】
(6) 前記二部材間に前記多孔ベース板を弾性挟持する挟持手段を備える、(1)又は(4)記載の熱界面構造。
【0012】
(7) (1)~(3)の何れかに記載の熱界面構造に用いる熱界面構造体であって、前記多孔ベース板と、前記多孔ベース板の前記貫通孔内に充填されるとともに前記表裏の板面上にも存在し、常温(室温)において良熱伝導性の固体の状態であり且つ前記熱伝導が行われる使用温度環境下で流動性を有する熱伝導材と、を備える熱界面構造体。
【0013】
(8) (4)記載の熱界面構造に用いる熱界面構造体であって、前記多孔ベース板と、150℃以下の融点を有する易融合金からなり、前記多孔ベース板の前記貫通孔内に充填されるとともに前記表裏の板面上にも存在し、常温(室温)において良熱伝導性の固体の状態である熱伝導材とを備え、該熱伝導材の融点未満の温度環境下で使用される熱界面構造体。
【0014】
(9) (7)又は(8)記載の熱界面構造体の製造方法であって、前記熱伝導材を加熱して流動化させることにより、前記多孔ベース板の前記貫通孔内に充填した後、常温(室温)に戻して固化させる、熱界面構造体の製造方法。
【0015】
(10) (7)又は(8)記載の熱界面構造体を用いた熱界面構造の形成方法であって、前記熱界面構造体を二部材の間に設け、少なくとも一方の部材を加熱させて熱界面構造体の前記熱伝導材を流動化させ、前記二部材の対向面に密接させた後、常温(室温)に戻して固化させる、熱界面構造の形成方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の熱界面構造によれば、発熱体やヒートシンクなどの二部材の対向面に微細な凹凸があっても、熱伝導材が各対向面に密着し、該熱伝導材が熱を伝達するとともに、該熱伝導材が充填されている多孔ベース板にも熱が伝わり、良熱伝導性の多孔ベース板を通じて効率良く熱を伝達でき、トータルとして高い熱伝達効率が得られる。
【0017】
また、多孔ベース板が保形性を有する芯材として機能するため、取り扱いが容易で、且つ良好な組み付け精度が得られる。また、熱伝導材は、多孔ベース板の貫通孔に充填されるため、組み付け後の熱伝導材が流動性を有していても流れ落ちてしまうことを防止でき、安定した品質、すなわち長期にわたり優れた熱伝達効率を維持できる。また、熱伝導材は、貫通孔に入るため、多孔ベース板と部材との間に過度の厚さの熱伝導材が存在してしまうことを避け、接触熱抵抗が増大することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の熱界面構造を示す概念図。
図2】同じく熱界面構造を構成する手順を示す説明図。
図3】同じく熱界面構造を構成する他の手順を示す説明図。
図4】同じく熱界面構造を構成する更に他の手順を示す説明図。
図5】同じく熱界面構造を構成する更に他の手順を示す説明図。
図6】熱界面構造の各種サンプルについて行った熱抵抗測定実験を説明する説明図。
図7】同じく熱界面構造を構成する更に他の手順を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0020】
本発明に係る熱界面構造Sは、図1に示すように、二部材、例えば半導体チップ等の発熱体91と冷却器であるヒートシンク92との間に設けられ、両者間の熱伝導を促進するものである。具体的には、二部材(91、92)の各々に対面する表裏の板面21、22を有し、厚み方向に延びて表裏両板面に開口する複数の貫通孔20を有する良熱伝導性の多孔ベース板2と、多孔ベース板2の貫通孔20内に充填されるとともに二部材(91、92)の対向面91a、92aに密接する熱伝導材3とを備える熱界面構造体1で形成されている。本例の熱伝導材3は、少なくとも前記熱伝導が行われる使用温度環境下で流動性を維持する。
【0021】
このような本発明の熱界面構造Sは、二部材(91、92)の対向面に微細な凹凸があっても、熱伝導材3が対向面91a、92aに密着し、該熱伝導材3が熱を伝達する。また、該熱伝導材3が充填されている多孔ベース板2にも熱が伝わり、多孔ベース板2を通じて熱を効率良く伝達することができる構造とされている。本例では、取り付け部材8により二部材91、92が連結され、熱界面構造Sを間に挟み込んで面圧を作用させた状態に保持されている。図示した取り付け部材8は一例であり、板バネや線バネ等を有し、二部材91、92間に多孔ベース板2及び熱伝導材9からなる熱界面構造体1を弾性挟持する挟持手段とすることが好ましい例である。このような取り付け部材8で連結する構造であれば、取り外しが容易な構造とすることができる。もちろん、このような着脱自在な取り付け構造とする代わりに半田や溶接で固定してもよい。
【0022】
多孔ベース板2は、アルミニウムや鉄、銅など、熱伝導性に優れた金属材料やその合金を広く用いることができる。銅などの場合は、好ましくは、金属凝固法で成形された一方向に伸びた複数の気孔を有するロータス型ポーラス金属成形体を、気孔の伸びる方向に直交する方向に切断加工した多孔板が用いられる。ただし、本発明の多孔ベース板には、ドリルやレーザ等で貫通孔を設けたものも勿論含む。
【0023】
ロータス型ポーラス金属成形体は、高圧ガス法(Pressurized Gas Method)(例えば特許第4235813号公報開示の方法)や、熱分解法(Thermal Decomposition Method)など、公知の方法で成形することができる。このようにロータス型ポーラス金属成形体から切り出した多孔板の貫通孔は、前記切断加工により分断された前記気孔である。貫通孔以外に貫通していない有底の孔も存在するが(気孔の途切れた位置で切断された場合の当該孔)、このような有底の孔も熱伝導材3との接触面積を増大させる効果がある。ロータス型ポーラス金属成形体から切り出した多孔板を用いることで、多孔ベース板2を低コスト且つ容易に得ることができる。
【0024】
このような多孔ベース板2は、保形性を有する芯材として機能し、取り扱いが容易で、且つ良好な組み付け精度を得ることが可能となる。また、熱伝導材3は、多孔ベース板2の貫通孔20に充填されるため、組み付け後も熱伝導材が貫通孔20内に留め置かれ、外部に流れ落ちてしまうことを防止でき、長期にわたり優れた熱伝達効率を維持できる。
【0025】
熱伝導材3は、例えば、常温から使用温度環境下までの間、流動性を維持する良熱伝導性の液体金属などの液状体、熱伝導性ゲルシートや熱伝導グリス(熱伝導フィラーの混入を含む)などのゲル状又はゾル状の半固体、金属細粉などの粒子集合体、これらを組み合わせたもの等が該当する。フィラーとしては、グラファイトや金属粉(柱状構造を含む)、セラミック粉など公知のものを広く使用できる。すなわち本発明における「流動性」には、半固体のような変形可能なもの、粒子集合体などを含む。
【0026】
熱伝導材3は、常温で固体のものも好ましい。これによれば、図7(a)で示すように多孔ベース板2と常温で固体の熱伝導材3とからなる熱界面構造体1として構成でき、取り扱い性が飛躍的に向上する。例えば、150℃以下の融点を有する易融合金が好適であり、該熱伝導材の融点未満の温度環境下で使用することもできる。このような易融合金として、具体的にはBi(ビスマス)、Pb(鉛)、Cd(カドミウム)、Sn(スズ)、In(インジウム)及びGa(ガリウム)のうち1種類以上の低融点金属を含有する合金が好ましい。
【0027】
このような熱伝導材3は、図1の部分拡大図に示すように、多孔ベース板2の貫通孔20の開口の周囲の板面22(21)と対向する各部材の対向面92a(91a)との間にも介在させ、両面の間に微細な凹凸を起因とする空気層の形成を防止した構造が好ましい。
【0028】
次に、熱界面構造Sを形成する手順を、図2の例に基づき説明する。まず、(a)に示すように一方の部材91の上に、多孔ベース板2を置き、上面の貫通孔開口から常温で流動性を有する熱伝導材3を貫通孔20内に流し込み、充填する。この際、熱伝導材3は開口から漏れ出る程度に供給する。
【0029】
次に、(b)に示すように、他方の部材92を多孔ベース板2の上面に載置する。これにより、熱伝導材3の前記開口より上に存在する部分が部材92の下面に密着した状態となる。そして、(c)に示すように、取り付け部材8を用いて二部材91、92を連結し、熱界面構造Sを間に挟み込んで面圧を作用させた状態に保持する。これにより熱界面構造Sが安定した状態に形成される。熱伝導材3がゾル状、粉末集合体など、液状体以外に形態であっても同様に多孔ベース板2の上面から流し込むようにして形成することができる。
【0030】
また、他の方法として、図3(a)に示すように、一方の部材91の上に多孔ベース板2を載置する前に、部材91の上に、液状体、ゾル状体、粉末集合体の熱伝導材3を多孔ベース板2の下面に対応する領域に敷いておき、この上に多孔ベース板2を載せることで、多孔ベース板2の貫通孔20の下面側の開口から、熱伝導材3を貫通孔内部に充填させるようにすることも可能である。(b)、(c)の手順は、上記図2の手順と同じである。
【0031】
また、とくに熱伝導材3がある程度の粘性のあるゲル状体である場合などにおいては、図4図5に示すように、熱伝導材3を板状にして用意し、これを一方の部材91の上に載置する多孔ベース板2の上下一方の面又は両面の側に配置(図4は両側、図5は上面側のみに配置)し、その上から他方の部材92を下方に押し付けることで、前記熱伝導材3を多孔ベース板2の開口から内部に充填させるようにすることも可能である。充填後の手順は上記図2と同様である。
【0032】
また、他の方法として、図7(a)に示すように、多孔ベース板2と常温で固体の熱伝導材3とからなる熱界面構造体1を作製し、(b)、(c)に示すように部材91、21の間に挟み込んだ状態で、加熱して熱伝導材3を流動化させることにより(d)に示すように熱伝導材3が部材91、92に密着した状態となる。そして、常温(室温)に戻して固化させた後、(e)に示すように、取り付け部材8を用いて二部材91、92を連結し、熱界面構造Sを間に挟み込んで面圧を作用させた状態に保持する。具体的には、例えば熱伝導材3を融点80℃の低融点金属とし、二部材であるCPUと冷却部材(例えばフィン)との間に熱界面構造体1を設置し、CPUの上限動作温度まで加熱(例えば80℃)して、低融点金属を密着流動させた後、CPU温度を融点温度より低い温度に管理することが考えられる。低融点金属は固体状態を維持するので、該材3の部材間からの漏れを抑制することができる。常温に戻す前に取り付け部材8を用いて面圧を作用させてもよい。
【0033】
ここで、熱界面構造体1は、例えば、融点80℃の低融点金属などの熱伝導材3を加熱して流動化させることにより、多孔ベース板2の貫通孔内に充填した後、常温(室温)に戻して固化させたものである。これによれば、あらかじめこのような熱界面構造体1を用意して二部材91、92間に取り付けることができ、管理や施工性、安全性などが向上する。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【実施例0035】
以下、熱界面構造の各種サンプルについて、熱抵抗測定実験を行った結果について説明する。
【0036】
(サンプル)
熱界面構造は、図6に示すように、二部材の間(ヒータと銅ブロックの間)に、本発明に係る多孔ベース板と熱伝導材とからなる熱界面構造体を介在させた実施例1と、シリコーンオイルのみを部材間に介在させた比較例1と、液体金属のみを部材間に介在させた比較例2と、上記多孔ベース板のみを部材間に介在させた比較例3とを用意した。
【0037】
実施例1、比較例3の多孔ベース板は、ロータス型ポーラス銅成形体から切り出した0.2mm厚の多孔板を用いた。実施例1、比較例2の液体金属は、Thermalright Silverking 液体金属コンパウンド(熱伝導率79W/m-k)を用いた。
【0038】
(熱抵抗測定方法)
図6に示すように、ヒータと銅ブロックの間に、熱界面構造のサンプル(実施例1/比較例1/比較例2/比較例3)を介在させた構造を形成し、所定の荷重をかけた状態で、上下の温度差と電力から熱抵抗値(R)を求めた。熱抵抗は、次の式で算出される。
【0039】
=(T-T)/(Q-QLeak
:熱抵抗(K/W)
:ヒータ温度(K)
:冷却フィン部温度(K)
Q:消費電力(W)
Leak:リーク電力(w)
【0040】
各部品の仕様は、次の通りである。
・軸流ファン:NMB 06025SA-12T-AA、外形60mm、厚さ25mm DC12V
・ヒートシンク:外形60mm×60mm×2mm、中央部受熱面30mm×30mm×2mm
・ヒータ:シースヒータ:100V-150W 3 本 リーク熱係数:0.07771
・温度センサー:ヒータ部:シース熱電対、T 型 Class 2 φ0.5、銅ブロック部:シース熱電対、T 型 Class 2 φ1.0、冷却フィンの入り口部(空気温度)ガラス被覆型熱電対、T 型、Class 2 φ0.5
・軸流ファン:DC電源 テクシオ社製PW24-1.5AQ
・ヒータ電源:DC電源 テクシオ社製PSW-720M160
・データロガー:グラフィック社製Graphtec GL840
【0041】
結果は、下記表1のように、実施例1の構造が最も低熱抵抗となり、本発明による効果が確認できた。シリコーンオイルのみの比較例1や液体金属のみの比較例2は、多孔ベース板より熱抵抗が大きく、膜厚もある程度生じることが避けられず、実施例1よりも熱抵抗が大きくなったと考えられる。多孔ベース板のみの比較例3は、二部材の間(ヒータと銅ブロックの間)に微小な隙間、すなわち空気層が生じ、他の例よりも熱抵抗が大きくなったと考えられる。
【0042】
【表1】
【符号の説明】
【0043】
1 熱界面構造体
2 多孔ベース板
3 熱伝導材
8 取り付け部材
20 貫通孔
21、22 板面
91、92 部材
91a、92a 対向面
S 熱界面構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7