(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109171
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】ヒートポンプユニット
(51)【国際特許分類】
F24H 9/02 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
F24H9/02 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013809
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】橋間 隆晴
【テーマコード(参考)】
3L037
【Fターム(参考)】
3L037AA04
3L037AB07
(57)【要約】
【課題】排気による不快感を防止すると共に、結露によって外観が損なわれないようにすることができるヒートポンプユニットを提供すること。
【解決手段】箱状のケース(2)内に蒸発熱交換器(7)と送風ファン(6)を備えたヒートポンプユニット(1)において、送風ファン(6)は、蒸発熱交換器(7)に向けて空気を送風するように配設され、ケース(2)は、送風ファン(6)に対して蒸発熱交換器(7)と反対側から外部の空気を導入するための前面吸気口(3)と、この前面吸気口(3)と反対側に形成された後面開口部(9)を有し、後面開口部(9)を介して流入する空気の流動方向を変更して排気口(11a~11c)から外部に排気するための後面排気ケース(10)が、ケース(2)の後面に装着され、排気口(11a~11c)には、排気が後面排気ケース(10)よりも前方に向かうように流動方向を規制するための案内部材(12a~12c)が装備された。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱状のケース内に蒸発熱交換器と送風ファンを備えたヒートポンプユニットにおいて、
前記送風ファンは、前記蒸発熱交換器に向けて空気を送風するように配設され、
前記ケースは、前記送風ファンに対して前記蒸発熱交換器と反対側から外部の空気を導入するための前面吸気口と、この前面吸気口と反対側に形成された後面開口部を有し、
前記後面開口部を介して流入する空気の流動方向を変更して排気口から外部に排気するための後面排気ケースが、前記ケースの後面に装着され、
前記排気口には、排気が前記後面排気ケースよりも前方に向かうように流動方向を規制するための案内部材が装備されたことを特徴とするヒートポンプユニット。
【請求項2】
前記排気口は、前記後面排気ケースの上面部、左側面部又は右側面部のうちの少なくとも何れか1つに形成されたことを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプユニット。
【請求項3】
前記後面排気ケースは、この後面排気ケースに結露した水を前記ケースの底部に形成された排水口に導くための排水誘導部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のヒートポンプユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプユニットに関し、特に蓄熱又は暖房に利用されるヒートポンプユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば給湯又は温水暖房に利用する温水を貯湯タンクに貯湯する蓄熱や、空気調和機による暖房のために、空気の熱を利用して加熱するヒートポンプユニットが広く利用されている。ヒートポンプユニットは屋外に設置され、外部の空気から吸熱して冷媒を加熱する。この加熱された冷媒が、湯水の加熱又は室内の空気の加熱に利用される。ヒートポンプユニットで吸熱されて温度が低下した空気は、外部に排気される。
【0003】
一般的にヒートポンプユニットは、外部の空気を吸気する吸気側を建物の外壁に向け、この外壁に近づけて設置され、外壁と反対側に排気するように前面に排気口を備えている。このヒートポンプユニットの前方が通行可能なスペースである場合には、排気が通行人に当たって不快感を与える虞がある。そのため、例えば特許文献1のように、前方に向かう排気の流動方向を例えば斜め上方に変更する風向調整板がヒートポンプユニットの前面に装着される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の風向調整板が装着されたヒートポンプユニットの排気は、斜め上方に向かって人に当たり難くなるので、排気による不快感を軽減することが可能である。しかし、風向調整板は、排気された低温の空気が当たって冷却されるので、風向調整板の前側の空気に含まれる水分が風向調整板によって冷却され、風向調整板に結露が発生する。
【0006】
風向調整板の結露は、水滴となって風向調整板から落下し、ヒートポンプユニットの前方のスペースに水染み又は水溜まりができる。それ故、結露によってヒートポンプユニットだけでなくその設置環境も含めて外観を損なう虞があり、通行の妨げになる虞がある。また、落下する水滴が、排気によって飛ばされて人にかかる虞もある。
【0007】
そこで、本発明は、排気による不快感を防止すると共に、結露によって外観が損なわれないようにすることができるヒートポンプユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明のヒートポンプユニットは、箱状のケース内に蒸発熱交換器と送風ファンを備えたヒートポンプユニットにおいて、前記送風ファンは、前記蒸発熱交換器に向けて空気を送風するように配設され、前記ケースは、前記送風ファンに対して前記蒸発熱交換器と反対側から外部の空気を導入するための前面吸気口と、この前面吸気口と反対側に形成された後面開口部を有し、前記後面開口部を介して流入する空気の流動方向を変更して排気口から外部に排気するための後面排気ケースが、前記ケースの後面に装着され、前記排気口には、排気が前記後面排気ケースよりも前方に向かうように流動方向を規制するための案内部材が装備されたことを特徴としている。
【0009】
上記構成によれば、通常、後面側を建物の外壁に向けて設置されるヒートポンプユニットにおいて、前面側からケース内に空気を導入して蒸発熱交換器で熱交換させ、熱交換後の低温の空気を後面排気ケースから外部に排気する。後面排気ケースは、案内部材が装備された排気口に向かうように、後方に向かって流動してきた空気の流動方向を変更する。そして、排気口から排気される空気は、案内部材によって後面排気ケースよりも前方に向かうように案内される。ヒートポンプユニットの前面側から吸気して後面側から排気することにより、ヒートポンプユニットの前方にいる人から排気口を遠ざけられるので、その人に排気が当たり難くなり、不快感を防止することができる。また、排気口に案内部材を備えた後面排気ケースが、建物の外壁に熱交換後の低温の空気が当たることを防ぐ。それ故、この外壁に結露を発生させず、ヒートポンプユニットの後面側の後面排気ケースに結露しても目立たないので、外観が損われないようにすることができる。
【0010】
請求項2の発明のヒートポンプユニットは、請求項1の発明において、前記排気口は、前記後面排気ケースの上面部、左側面部又は右側面部のうちの少なくとも何れか1つに形成されたことを特徴としている。
上記構成によれば、排気口は、熱交換後の低温の空気がヒートポンプユニットの後面側から上方、左方又は右方のうちの少なくとも何れか1つの方向に排気されるように形成されている。従って、ヒートポンプユニットの設置環境に合わせて排気口を形成した後面排気ケースを装備させて、人や建物の外壁に低温の空気が当たらないように排気することができる。
【0011】
請求項3の発明のヒートポンプユニットは、請求項1又は2の発明において、前記後面排気ケースは、この後面排気ケースに結露した水を前記ケースの底部に形成された排水口に導くための排水誘導部を有することを特徴としている。
上記構成によれば、熱交換後の低温の空気によって冷却される後面排気ケースに結露した水は、排水誘導部によってケースの底部の排水口に誘導される。排水口は、蒸発熱交換器の着霜を除去したときの水を排水するためのものである。この排水口を利用して、ヒートポンプユニットの後面側に発生した結露の水が排水されるので、例えば水染み、水溜まりができることを防いで、ヒートポンプユニット及びその周囲の外観が損われないようにすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のヒートポンプユニットによれば、ヒートポンプユニットの前方の人に低温の空気が当たり難くすることができ、低温の空気による結露によって外観が損なわれないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例に係るヒートポンプユニットの斜視図である。
【
図3】実施例に係る後部排気ケースの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例0015】
図1に示すように、蓄熱用のヒートポンプユニット1は、箱状のケース2の前面に、外部から空気を導入するための前面吸気口3を備え、格子状のガード部材4が前面吸気口3を覆うようにケース2の前面に装着されている。尚、図中の矢印U、矢印F、矢印Lは、ヒートポンプユニット1の上方、前方、左方を夫々表す。
【0016】
ガード部材4は、空気の流動を妨げずに、ある程度の大きさの物体の侵入を防ぐ。ケース2の後面には、ケース2内に導入された空気を排気するための後面排気ケース10が装着されている。後面排気ケース10は、排気口11a等を備えている。ケース2の底部には、例えば架台に固定するための脚部5が装着されている。
【0017】
図2に示すように、ケース2内には、送風ファン6と蒸発熱交換器7が収容されている。送風ファン6が前面吸気口3から導入された空気を矢印A1のように蒸発熱交換器7に向けて送風するために、ケース2内の前側部分に送風ファン6が設置され、後側部分に蒸発熱交換器7が設置されている。尚、ケース2内には、湯水を加熱する図示外の凝縮熱交換器が送風ファン6の上方区画に配設され、図示外の冷媒の圧縮機、制御基板等が送風ファン6の左方区画に収容されている。
【0018】
送風ファン6は、例えば上下端部がケース2に固定された支持部材8に羽根を回転させる駆動部が固定されている。送風ファン6の駆動により蒸発熱交換器7と反対側の前面吸気口3から導入される外部の空気は、支持部材8の左右両側を後方の蒸発熱交換器7に向かって流動する。蒸発熱交換器7は、冷媒が流れるチューブに複数のフィンが装着されて形成され、上下端部がケース2に固定されている。
【0019】
送風ファン6によって蒸発熱交換器7に送風された空気は、蒸発熱交換器7を通過する際に、冷媒との熱交換によって吸熱されて低温になり、この低温の空気が蒸発熱交換器7の後方に流動する。このとき蒸発熱交換器7には、通過する空気に含まれている水分が温度の低下により凝縮して着霜する。蒸発熱交換器7の着霜は熱交換を妨げるので、一定程度の着霜が検知されると、例えば高温の冷媒を流動させることにより霜を融解させて除霜する。霜が融けて落下する水は、ケース2の底部に設けられた排水口2aを介して排水される。排水口2aには、例えば排水溝、雨水桝等に延びる図示外の排水管又は排水ホースが接続される。
【0020】
ケース2は、前面吸気口3と反対側の後面に、後面開口部9を有する。そしてケース2は、この後面に装着された後面排気ケース10に後面開口部9を介して連通する。送風ファン6によって蒸発熱交換器7の後方に流動する空気は、後面開口部9から後面排気ケース10内に流入する。そして、この後面排気ケース10内で、矢印A2のように排気口11a等に向かうように流動方向が変更され、排気口11a等から外部に排気される。後面開口部9は、蒸発熱交換器7と同程度の幅と高さに形成されている。
【0021】
図1~
図3に示すように、後面排気ケース10は、幅及び高さがケース2と同程度の大きさに形成され、前後方向の長さは例えば50~100mm程度である。この後面排気ケース10は、前面部の上辺と左辺と右辺を構成する枠部10aの内側が開口され、この枠部10aが例えばビス、磁石等によってケース2の後面に装着される。後面排気ケース10の後面部10bは閉塞され、この後面部10bの下端から前方斜め下側に向かって延びる板状の傾斜部10cが形成されている。蒸発熱交換器7を通過した空気が傾斜部10cに当たると、上方に向かうように流動方向が変更される。
【0022】
後面排気ケース10の上面部と左右の側面部には、蒸発熱交換器7を通過した空気を排気するための排気口11a~11cが設けられている。上面部の排気口11aには、矢印A3のように、排気口11aから排気される空気の流動方向を後面排気ケース10よりも前方に向かうように規制するための案内部材12aが、排気口11aの後側の縁部に装備されている。案内部材12aは、例えば後面排気ケース10の上面部をU形状に切り、このU形状内側部分を後面排気ケース10の外側に立上げて形成されているが、後面排気ケース10に案内部材12aを取り付けてもよい。案内部材12aは、上面部に対して例えば45°以上且つ90°未満の角度で立上げられ、排気が妨げられないようにすることが好ましい。
【0023】
排気口11aと同様に、右側面部の排気口11bには案内部材12bが装備され、左側面部の排気口11cには案内部材12cが装備されている。後面排気ケース10の上面部、左側面部、右側面部に対応する排気口11a~11cが形成されているが、これらのうちの少なくとも何れか1つが形成されていればよい。後面排気ケース10には、送風ファン6によって枠部10aの内側の開口から空気が押し込まれるので、当然出口となる排気口がある方向に空気が流動して外部に排気される。
【0024】
例えば後面側を建物の外壁に近づけて設置されるヒートポンプユニット1の右方が通路である場合に、上方に排気する排気口11aと左方に排気する排気口11cが形成された後面排気ケース10、又は左方に排気する排気口11cのみが形成された後面排気ケース10を装着する。これにより、排気が建物の外壁及び人に当たらないようにすることができる。
【0025】
後面排気ケース10の傾斜部10cの下端部分は枠部10aよりも前方まで延び、下端がケース2内に入るように形成されている。傾斜部10cの下端がケース2内に入るように、ケース2の底面後端部分2bがケース2の上面部の後端よりも後方に延びていることが好ましい。傾斜部10cは、蒸発熱交換器7に当接してよいが、ケース2の底面後端部分2bには当接しない。
【0026】
後面排気ケース10は、蒸発熱交換器7を通過した低温の空気によって冷却される。それ故、後面排気ケース10の外面には、後面排気ケース10内を流動する空気よりも温度が高い外部の空気が後面排気ケース10によって冷却されて結露が発生し、水滴が付く。この水滴がある程度大きくなると、後面排気ケース10の外面を伝って流れ落ちるが、傾斜部10cによってケース2内に誘導されてケース2の底部に落下し、排水口2aから排水される。このように、傾斜部10cは、後面排気ケース10に結露した水を排水口2aに導く排水誘導部として機能する。
【0027】
上記ヒートポンプユニット1の作用、効果について説明する。
ヒートポンプユニット1は、後面側を建物の外壁に向けて設置され、前面側からケース2内に空気を導入して蒸発熱交換器7で熱交換させ、熱交換後の低温の空気を後面排気ケース10から外部に排気する。後面排気ケース10は、案内部材12a~12cが装備された排気口11a~11cに向かうように、前方から後方に流動してきた空気の流動方向を変更する。そして、排気口11a~11cから排気される空気は、案内部材12a~12cによって後面排気ケース10よりも前方に向かうように規制される。
【0028】
ヒートポンプユニット1の前面側から吸気して後面側から排気することにより、ヒートポンプユニット1の前方にいる人から排気口11a~11cを遠ざけて排気が当たり難くすることができ、排気による不快感を防止することができる。また、排気口11a~11cに案内部材12a~12cを備えた後面排気ケース10は、建物の外壁に熱交換後の低温の空気が当たることを防ぐ。それ故、この外壁に結露を発生させず、ヒートポンプユニット1の後面側の後面排気ケース10に結露しても目立たないので、外観が損われないようにすることができる。
【0029】
熱交換後の低温の空気がヒートポンプユニット1の後面側から上方、左方又は右方のうちの少なくとも何れか1つの方向に排気されるように、排気口が後面排気ケース10に形成されていればよい。ヒートポンプユニット1の設置環境に合わせて排気口が形成された後面排気ケース10を装備させて、人や建物の外壁に低温の空気が当たらないように排気することができる。
【0030】
熱交換後の低温の空気によって冷却される後面排気ケース10に結露した水は、排水誘導部として機能する傾斜部10cによってケース2の底部の排水口2aに誘導される。排水口2aは、蒸発熱交換器7の着霜を除去したときの水を排水するために形成されている。この排水口2aを利用して、ヒートポンプユニット1の後面側に発生した結露の水が排水されるので、結露によって例えば水染み、水溜まりができることを防いで、ヒートポンプユニット1及びその周囲の外観が損われないようにすることができる。
【0031】
蓄熱用のヒートポンプユニット1の例を説明したが、室内機が凝縮熱交換器を備えて暖房を行う空気調和機用のヒートポンプユニット(室外機)においても上記と同様の作用、効果が得られる。尚、空気調和機が冷房を行う場合には、冷媒による熱の輸送方向が入れ替わり、室外機には結露が発生しないが、外部の空気よりも高温の排気が人に当たらないようにすることができる。その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく上記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態を包含するものである。