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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109175
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20240806BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240806BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B41J2/165 203
B41J2/165 211
B41J2/165 101
B41J2/165 301
B41J2/01 451
B41J2/175 167
B41J2/175 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013821
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】名和 研人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 繁樹
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB07
2C056EB30
2C056EB34
2C056EB44
2C056EB49
2C056EC17
2C056EC18
2C056EC23
2C056EC24
2C056EC56
2C056EC57
2C056FA10
2C056HA22
2C056JA01
2C056JA13
2C056JB03
2C056JC06
2C056JC20
2C056KA01
2C056KB03
(57)【要約】
【課題】不使用ノズル列を閉塞しなくても、媒体へのインク垂れを防止する。
【解決手段】液体噴射装置は、媒体に向けて液体を噴射する印刷動作を実行可能な複数のノズル列が設けられた噴射面を有する液体噴射ヘッドと、液体噴射ヘッドへ供給するための液体を貯留する液体貯留部と、印刷動作を実行可能な制御部と、を備え、複数のノズル列は、第1ノズル列と第2ノズル列とを含み、制御部は、液体貯留部が第1ノズル列に接続されずに第2ノズル列に接続される場合、印刷動作に第1ノズル列を使用せずに第2ノズル列を使用する第1モードを実行可能であり、制御部は、第1モードを実行可能である場合、第1ノズル列に侵入した液体を第1ノズル列から排出させるクリーニングを含むシーケンスを実行する。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に向けて液体を噴射する印刷動作を実行可能な複数のノズル列が設けられた噴射面を有する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドへ供給するための液体を貯留する液体貯留部と、
前記印刷動作を実行可能な制御部と、を備え、
前記複数のノズル列は、第1ノズル列と第2ノズル列とを含み、
前記制御部は、前記液体貯留部が前記第1ノズル列に接続されずに前記第2ノズル列に接続される場合、前記印刷動作に前記第1ノズル列を使用せずに前記第2ノズル列を使用する第1モードを実行可能であり、
前記制御部は、前記第1モードを実行可能である場合、前記第1ノズル列に侵入した液体を前記第1ノズル列から排出させるクリーニングを含むシーケンスを実行する、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記クリーニングは、前記第1ノズル列から液体を吸引により排出する第1吸引クリーニングであり、
前記制御部は、前記第2ノズル列から液体を吸引により排出する第2吸引クリーニングを実行可能であり、
前記第1吸引クリーニングの強度は、前記第2吸引クリーニングの強度よりも弱い、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記噴射面に接触することにより前記噴射面との間に閉空間を形成可能なキャップと、
前記閉空間を減圧するための減圧機構と、をさらに備え、
前記キャップは、
前記第1吸引クリーニングを実行する場合、前記第1ノズル列を構成する複数のノズルが開口する第1閉空間として前記閉空間を形成し、
前記第2吸引クリーニングを実行する場合、前記第2ノズル列を構成する複数のノズルが開口する第2閉空間として前記第1閉空間と異なる位置で前記閉空間を形成し、
前記制御部は、前記第1吸引クリーニングおよび前記第2吸引クリーニングを互いに異なる期間で実行する、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記クリーニングは、前記第1ノズル列から液体を加圧により排出する第1加圧クリーニングであり、
前記制御部は、前記第2ノズル列から液体を加圧により排出する第2加圧クリーニングを実行可能であり、
前記第1加圧クリーニングの強度は、前記第2加圧クリーニングの強度よりも弱い、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記噴射面を払拭可能な払拭部材をさらに備え、
前記シーケンスは、前記払拭部材により前記噴射面の領域のうち前記第2ノズル列の領域を払拭せずに前記第1ノズル列の領域を払拭する払拭動作を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第2ノズル列から噴射された液体のショット数に基づいて、前記シーケンスを開始する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記複数のノズル列は、第3ノズル列をさらに含み、
前記第1ノズル列と前記第3ノズル列との間の距離は、前記第1ノズル列と前記第2ノズル列との間の距離よりも長く、
前記第1モードは、前記液体貯留部が前記第3ノズル列に接続される場合に前記印刷動作に前記第3ノズル列を使用し、
前記制御部は、前記第2ノズル列から噴射された液体のショット数に基づいて、前記シーケンスを開始する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1モードと、前記液体貯留部が前記第1ノズル列に接続される場合に前記印刷動作に前記第1ノズル列を使用する第2モードと、を切り替え可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1モードが選択されている場合に前記シーケンスを実行し、前記第2モードが選択されている場合に前記シーケンスを実行しない、
ことを特徴とする請求項8に記載の液体噴射装置。
【請求項10】
前記液体貯留部を装着可能な装着部をさらに備え、
前記制御部は、前記装着部への前記液体貯留部の装着状態に基づいて、前記第1モードおよび前記第2モードのうちのいずれかを選択する、
ことを特徴とする請求項9に記載の液体噴射装置。
【請求項11】
前記液体噴射ヘッドは、複数のヘッドチップを有し、
前記複数のヘッドチップのそれぞれは、1または複数のノズル列が設けられたノズルプレートを有し、
前記第1モードでは、前記液体噴射ヘッドにおいて前記印刷動作に使用されないノズル列である不使用ノズル列の数は、1つの前記ノズルプレートに設けられたノズル列の数以上であり、
前記第1モードにおいて、前記複数のヘッドチップのうち少なくとも1つのヘッドチップのすべてのノズル列は、前記不使用ノズル列である、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項12】
前記液体噴射ヘッドは、前記液体噴射ヘッドの外部から液体を導入するための複数の導入部を有し、
前記第1モードを実行する場合、前記複数の導入部は、前記第1ノズル列に連通するが液体を前記第1ノズル列へ供給しない第1導入部と、前記第2ノズル列に液体を供給する第2導入部と、を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項13】
前記第1ノズル列に連通し、前記第1ノズル列の圧力が所定の圧力よりも小さい場合に開く圧力調整弁をさらに備える、
ことを特徴とする請求項12に記載の液体噴射装置。
【請求項14】
前記第2ノズル列が噴射する液体は、水系インクである、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項15】
前記液体噴射ヘッドを収容する筐体をさらに備え、
前記制御部は、前記筐体内の温度変化に基づいて、前記シーケンスを実行するか否かを判断する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項16】
前記第1モードを実行する場合、前記制御部は、前記第2ノズル列から液体を排出するクリーニングとは異なる期間に前記シーケンスを実行する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式のプリンターに代表される液体噴射装置に設けられる液体噴射ヘッドは、一般に、インク等の液体を噴射する複数のノズル列を有する。特許文献1には、ノズルに連通する圧力室および流路のほか、ノズルに連通しないダミー圧力室およびダミー流路を備える液体噴射ヘッドが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-82412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液体噴射ヘッドの有する複数のノズル列のうち一部のノズル列だけを印刷動作に使用したいという要望がある。これは、ノズル列数を減らしたヘッドを新たに製造するよりも、既存のヘッドの必要なノズル列のみを使用したほうが製造コストを抑えられる場合があるためである。しかし、液体噴射ヘッドの有する複数のノズルのうち一部のノズル列だけを使用する場合、使用しないノズル列にインクが入り込んでしまい、このインクが予期せぬタイミングで落下して媒体を汚染してしまう虞がある。
【0005】
そこで、特許文献1のように、使用しない不使用ノズル列を閉塞することが考えられる。しかし、この場合、液体噴射ヘッドの全てのノズル列を使用したいユーザーと液体噴射ヘッドの一部のノズル列のみを使用したいユーザーとに液体噴射装置をそれぞれ提供するためには、不使用ノズル列を閉塞した液体噴射ヘッドを備える液体噴射装置と、閉塞されたノズル列を備えない、換言すれば全てのノズル列を使用できる液体噴射ヘッドを備える液体噴射装置とを別途製造し、かつ、これらの液体噴射装置を別々に在庫管理しなければならないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、本開示の液体噴射装置の一態様は、媒体に向けて液体を噴射する印刷動作を実行可能な複数のノズル列が設けられた噴射面を有する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドへ供給するための液体を貯留する液体貯留部と、前記印刷動作を実行可能な制御部と、を備え、前記複数のノズル列は、第1ノズル列と第2ノズル列とを含み、前記制御部は、前記液体貯留部が前記第1ノズル列に接続されずに前記第2ノズル列に接続される場合、前記印刷動作に前記第1ノズル列を使用せずに前記第2ノズル列を使用する第1モードを実行可能であり、前記制御部は、前記第1モードを実行可能である場合、前記第1ノズル列に侵入した液体を前記第1ノズル列から排出させるクリーニングを含むシーケンスを実行する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る液体噴射装置の構成例を示す概略図である。
図2】実施形態に係る液体噴射装置の電気的な構成を示すブロック図である。
図3】液体供給機構を説明するための図である。
図4】液体噴射ヘッドのヘッドチップの断面図である。
図5】圧力調整弁の一例を示す断面図である。
図6】メンテナンス機構の概略構成を示す図である。
図7】メンテナンス機構による吸引クリーニングを説明するための模式図である。
図8】メンテナンス機構による吸引クリーニングを説明するための模式図である。
図9】第1モードおよび第2モードの選択を説明するためのフローチャートである。
図10】第1モードにおける使用ノズル列および不使用ノズル列の一例を示す図である。
図11】第2モードにおける使用ノズル列の一例を示す図である。
図12】実施形態に係る液体噴射装置の第1モードでの動作を説明するためのフローチャートである。
図13】払拭動作を説明するための図である。
図14】不使用ノズル列に対するクリーニング動作を説明するための図である。
図15】使用ノズル列に対するクリーニング動作を説明するための図である。
図16】第1モードにおける使用ノズル列および不使用ノズル列の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら本開示に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法および縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0009】
なお、以下では、説明の便宜上、互いに交差するX軸、Y軸およびZ軸が適宜に用いられる。また、以下では、X軸に沿う一方向がX1方向であり、X1方向と反対の方向がX2方向である。同様に、Y軸に沿って互いに反対の方向がY1方向およびY2方向である。また、Z軸に沿って互いに反対の方向がZ1方向およびZ2方向である。
【0010】
ここで、典型的には、Z軸が鉛直な軸であり、Z2方向が鉛直方向での下方向に相当する。ただし、Z軸は、鉛直な軸でなくともよい。また、X軸、Y軸およびZ軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、例えば、80°以上100°以下の範囲内の角度で交差すればよい。
【0011】
1.実施形態
1-1.液体噴射装置の概略構成
図1は、実施形態に係る液体噴射装置100の構成例を示す概略図である。液体噴射装置100は、「液体」の一例であるインクを液滴として媒体Mに向けて噴射するインクジェット方式の印刷装置である。媒体Mは、例えば、印刷用紙である。なお、媒体Mは、印刷用紙に限定されず、例えば、樹脂フィルムまたは布帛等の任意の材質の印刷対象でもよい。
【0012】
図1に示すように、液体噴射装置100は、液体供給機構10と、制御ユニット20と、搬送機構30と、移動機構40と、液体噴射ヘッド50と、メンテナンス機構60と、筐体70と、を備える。以下、図1に基づいて、これらを順に簡単に説明する。
【0013】
液体供給機構10は、インクを液体噴射ヘッド50に供給する機構である。図1では図示を省略するが、液体供給機構10は、インクを貯留する少なくとも1つの液体貯留部11を有し、当該液体貯留部11から液体噴射ヘッド50に向けてインクを圧送する。また、液体供給機構10は、当該液体貯留部11を着脱可能であり、当該液体貯留部11の装着状態を示す検出信号Dmを出力する。さらに、液体供給機構10は、後述の圧力調整弁54を所望時に強制開放させる機構を有する。液体供給機構10の詳細については、後に図3に基づいて説明する。
【0014】
制御ユニット20は、液体噴射装置100の各要素の動作を制御する。ここで、制御ユニット20は、液体噴射ヘッド50を駆動するための駆動信号Comと、液体噴射ヘッド50の駆動を制御するための制御信号SIと、を出力する。制御信号SIは、液体噴射ヘッド50の後述の駆動素子51fに対して駆動信号Comを供給するか否かを指定するための信号であり、印刷データImgに基づいて生成される。印刷データImgは、画像を示す情報であり、パーソナルコンピューターまたはデジタルカメラ等のホストコンピューターから制御ユニット20に供給される。
【0015】
制御ユニット20は、装着部12からの検出信号Dmに基づいて、互いに印刷動作の異なる第1モードMD1および第2モードMD2を含む複数のモードを切換可能に実行する。第1モードMD1は、液体噴射ヘッド50の有する複数のノズル列LNのうちの一部のみを印刷動作に使用可能なモードである。第2モードMD2は、液体噴射ヘッド50の有するすべてのノズル列LNを印刷動作に使用可能なモードである。また、制御ユニット20は、後述の温度センサー71の検出温度を示す検出信号Dtに基づいて、後述のカウント部21bによるカウント情報Dcを参照する。制御ユニット20の詳細については、後に図2に基づいて説明する。
【0016】
搬送機構30は、制御ユニット20による制御のもとで、媒体MをY1方向に搬送する。移動機構40は、制御ユニット20による制御のもとで、複数の液体噴射ヘッド50をX1方向とX2方向とに往復させる。図1に示す例では、移動機構40は、液体噴射ヘッド50を収容するキャリッジと称される略箱型の搬送体41と、搬送体41が固定される搬送ベルト42と、を有する。なお、搬送体41には、複数の液体噴射ヘッド50のほかに、液体供給機構10の一部、例えば、後述の液体貯留部11等が搭載されてもよい。
【0017】
液体噴射ヘッド50は、制御ユニット20による制御のもとで、液体供給機構10から供給されるインクを複数のノズルNのそれぞれからZ2方向に媒体Mに噴射する。この噴射が搬送機構30による媒体Mの搬送と移動機構40による液体噴射ヘッド50の往復移動とに並行して行われることにより、媒体Mの表面にインクによる画像が形成される。また、移動機構40は、液体噴射ヘッド50を媒体Mの搬送領域に対して幅方向に外れた位置に配置する
【0018】
図1に示す例では、液体噴射ヘッド50は、インクを噴射する複数のノズルNをそれぞれが有する複数のヘッドチップ51を有する。当該複数のヘッドチップ51のそれぞれは、図示しない管体等で構成される供給経路を介して、液体供給機構10に接続される。ヘッドチップ51の詳細については、後に図3に基づいて説明する。なお、液体噴射ヘッド50の有するヘッドチップ51の数は、図1に示す例に限定されず、任意であり、単数であってもよい。
【0019】
メンテナンス機構60は、液体噴射ヘッド50のメンテナンスを行うための機構である。本実施形態のメンテナンス機構60は、液体噴射ヘッド50のノズルNからインクを吸引により排出する吸引クリーニングを実行する機能と、液体噴射ヘッド50の後述の噴射面FNを払拭する払拭動作を実行する機能と、液体噴射ヘッド50のすべてのノズルNをキャッピングするキャッピングを実行する機能と、を有する。図1に示す例では、メンテナンス機構60は、媒体Mの搬送路から媒体Mの幅方向(X2方向)に外れた位置に配置される。当該外れた位置は、例えば、液体噴射ヘッド50の往復動の一方の端点であり、ホームポジションとも称される。メンテナンス機構60の詳細については、後に図5に基づいて説明する。
【0020】
筐体70は、液体噴射装置100の構成要素のうち、少なくとも液体噴射ヘッド50を収容する箱体である。図1に示す例では、筐体70が液体噴射装置100の構成要素のうちの液体供給機構10以外の構成要素を収容する。なお、筐体70は、液体噴射装置100の構成要素のうちの液体噴射ヘッド50以外の構成要素を収容しなくてもよいし、液体供給機構10の少なくとも一部を収容してもよい。また、筐体70には、筐体70内の温度を検出するサーミスタ等の温度センサー71が設けられる。温度センサー71は、筐体70内の検出温度を示す検出信号Dtを出力する。なお、温度センサー71の設置位置は、筐体70内の温度を検出可能であればよく、図1に示す例に限定されない。
【0021】
1-2.液体噴射装置の電気的な構成
図2は、実施形態に係る液体噴射装置100の電気的な構成を示すブロック図である。図2に示すように、液体噴射ヘッド50は、複数のヘッドチップ51と、複数の駆動回路52と、を有する。
【0022】
複数のヘッドチップ51のそれぞれは、複数の駆動素子51fを有する。本実施形態のヘッドチップ51の有する複数の駆動素子51fのそれぞれは、圧電素子であり、供給駆動信号Vinの供給を受けて逆圧電効果により駆動する。なお、ヘッドチップ51の詳細については、後に図3に基づいて説明する。複数のヘッドチップ51は、それぞれ同じ構造を有する。
【0023】
駆動回路52は、複数のヘッドチップ51に対応してヘッドチップ51ごとに設けられ、制御ユニット20による制御のもと、対応するヘッドチップ51の駆動素子51fを駆動する。具体的には、駆動回路52は、制御ユニット20による制御のもと、ヘッドチップ51の有する複数の駆動素子51fのそれぞれについて、制御ユニット20から出力される駆動信号Comを供給駆動信号Vinとして供給するか否かを切り替える。
【0024】
図2に示すように、制御ユニット20は、制御回路21と記憶回路22と電源回路23と駆動信号生成回路24とを有する。
【0025】
制御回路21は、液体噴射装置100の各部の動作を制御する機能と、各種データを処理する機能と、を有する。
【0026】
制御回路21は、例えば、1個以上のCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーを含む。なお、制御回路21は、CPUに代えて、または、CPUに加えて、FPGA(field-programmable gate array)等のプログラマブルロジックデバイスを含んでもよい。また、制御回路21が複数のプロセッサーで構成される場合、当該複数のプロセッサーが互いに異なる基板等に実装されてもよい。
【0027】
記憶回路22は、制御回路21が実行する各種プログラムと、制御回路21が処理する印刷データImg等の各種データと、を記憶する。記憶回路22は、例えば、RAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリーとROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)またはPROM(Programmable ROM)等の不揮発性メモリーとの一方または両方の半導体メモリーを含む。なお、記憶回路22の一部または全部は、制御回路21の一部として構成されてもよい。
【0028】
記憶回路22には、カウント情報Dcが記憶される。カウント情報Dcは、液体噴射ヘッド50からのインクの吐出回数であるショット数を示す情報である。当該ショット数は、後述のカウント部21bにより、更新され、所定回数ごとにリセットされる。なお、当該ショット数は、ノズルNごとまたは所定のノズルNの群ごとの吐出回数であってもよいし、ノズル列LNごとまたは所定のノズル列LNの群ごとの吐出回数であってもよい。
【0029】
電源回路23は、図示しない商用電源から電力の供給を受け、所定の各種電位を生成する。生成した各種電位は、液体噴射装置100の各部に適宜に供給される。例えば、電源回路23は、電源電位VHVとオフセット電位VBSとを生成する。オフセット電位VBSは、液体噴射ヘッド50に供給される。また、電源電位VHVは、駆動信号生成回路24に供給される。
【0030】
駆動信号生成回路24は、各駆動素子51fを駆動するための駆動信号Comを生成する回路である。具体的には、駆動信号生成回路24は、例えば、DA変換回路と増幅回路とを有する。駆動信号生成回路24では、当該DA変換回路が制御回路21からの波形指定信号dComをデジタル信号からアナログ信号に変換し、当該増幅回路が電源回路23からの電源電位VHVを用いて当該アナログ信号を増幅することで駆動信号Comを生成する。ここで、駆動信号Comに含まれる波形のうち、駆動素子51fに実際に供給される波形の信号が前述の供給駆動信号Vinである。波形指定信号dComは、駆動信号Comの波形を規定するためのデジタル信号である。
【0031】
以上の制御ユニット20では、制御回路21が、記憶回路22に記憶されるプログラムを実行することで、液体噴射装置100の各部の動作を制御する。ここで、制御回路21は、当該プログラムの実行により、液体噴射装置100の各部の動作を制御するための信号として、制御信号Sk1と制御信号Sk2と制御信号Sk3と制御信号SIと波形指定信号dComとを生成する。
【0032】
制御信号Sk1は、搬送機構30の駆動を制御するための信号である。制御信号Sk2は、移動機構40の駆動を制御するための信号である。制御信号Sk3は、メンテナンス機構60の駆動を制御するための信号である。制御信号SIは、駆動素子51fの動作状態を指定するためのデジタルの信号である。なお、制御信号SIには、駆動素子51fの駆動タイミングを規定するためのタイミング信号が含まれてもよい。当該タイミング信号は、例えば、前述の搬送体41の位置を検出するエンコーダーの出力に基づいて生成される。
【0033】
また、制御回路21は、記憶回路22に記憶されるプログラムを実行することで、制御部21aおよびカウント部21bとして機能する。
【0034】
制御部21aは、印刷動作およびメンテナンス動作を制御する。印刷動作は、液体噴射ヘッド50から媒体Mに向けてインクを噴射する。メンテナンス動作は、メンテナンス機構60を用いた後述の吸引クリーニングCLSと液体供給機構10を用いた後述の加圧クリーニングCLPとのうちの一方または両方を含む。
【0035】
特に、制御部21aは、液体噴射ヘッド50の有する後述の複数のノズル列LNのうちの一部のみを印刷動作に使用可能な第1モードMD1を実行可能である。本実施形態の制御部21aは、この第1モードMD1と、液体噴射ヘッド50の有するすべてのノズル列LNを印刷動作に使用可能な第2モードMD2と、に切替可能である。
【0036】
具体的には、制御部21aは、検出信号Dmに基づいて、液体噴射ヘッド50の有する複数のノズル列LNのうちの一部のみに液体貯留部11が接続される状態と判断される場合、第1モードMD1を実行可能とする。一方、制御部21aは、検出信号Dmに基づいて、液体噴射ヘッド50の有するすべてのノズル列LNに液体貯留部11が接続される状態と判断される場合、第2モードMD2を実行可能とする。第1モードMD1および第2モードMD2の詳細については、後に図7から図13に基づいて説明する。
【0037】
ここで、第1モードMD1および第2モードMD2のいずれにおいても、制御部21aは、液体噴射ヘッド50の有するすべてのノズル列について、メンテナンス動作を実行可能である。したがって、制御部21aは、第1モードMD1における不使用ノズル列に対してもメンテナンス動作を実行する。第1モードMD1におけるメンテナンス動作のシーケンスは、カウント情報Dcの示すショット数に基づいて開始される。このシーケンスの詳細については、後に図10から図13に基づいて説明する。
【0038】
カウント部21bは、カウント情報Dcを生成および更新する。カウント部21bは、例えば、制御信号SI等の信号に基づいて、液体噴射ヘッド50からのインクの吐出回数をカウントし、そのカウント数を示すカウント情報Dcを生成したり、そのカウント数をカウント情報Dcの示すカウント数に加算することにより、カウント情報Dcを更新したりする。カウント部21bによるカウントは、印刷動作を実行する前に行われてもよく、印刷動作が実行された後に行われてもよい。また、詳しくは後述するが、カウント部21bは、カウント情報Dcの示すカウント数が所定回数に達するごとに、制御部21aからの指示により、カウント情報Dcの示すカウント数をリセットする。
【0039】
1-3.液体供給機構の構成
図3は、液体供給機構10を説明するための図である。図3では、液体供給機構10および液体噴射ヘッド50の構成が模式的に示されるとともに、Z1方向にみた液体噴射ヘッド50の噴射面FNが示される。
【0040】
まず、液体供給機構10の説明に先立ち、図3に基づいて、液体噴射ヘッド50におけるインクの供給経路に関する構成について説明する。
【0041】
図3に示すように、液体噴射ヘッド50は、ヘッドチップ51_A~51_Lと導入部53_1~53_12と圧力調整弁54_1~54_12とを有する。なお、ヘッドチップ51_A~51_Lのそれぞれは、図1に示すヘッドチップ51に相当しており、以下では、ヘッドチップ51_A~51_Lのそれぞれをヘッドチップ51という場合がある。導入部53_1~53_12のそれぞれを導入部53という場合がある。圧力調整弁54_1~54_12のそれぞれを圧力調整弁54という場合がある。
【0042】
ヘッドチップ51_A~51_Lのそれぞれは、インクを噴射する複数のノズルNを有する。当該複数のノズルNは、X軸に沿う方向で互いに間隔をあけて配置されるノズル列LNaとノズル列LNbとに区分される。ノズル列LNaおよびノズル列LNaのそれぞれは、Y軸に沿う方向に配列される複数のノズルNの集合である。ノズル列LNaおよびノズル列LNaの各ノズルNは、液体噴射ヘッド50のZ2方向を向く面である噴射面FNに開口する。図3に示す例では、各ヘッドチップ51において、ノズル列LNaがノズル列LNbに対してX2方向の位置に配置される。以下では、ノズル列LNaおよびノズル列LNbのそれぞれをノズル列LNという場合がある。
【0043】
本実施形態では、ヘッドチップ51_A、51_Bのノズル列LNa、LNbがインクの噴射に用いる使用ノズル列である場合とインクの噴射に用いない不使用ノズル列である場合とがある。換言すれば、使用ノズル列は印刷動作に使用されるノズル列LNであり、不使用ノズル列は印刷動作に使用されないノズル列LNである。これに対し、ヘッドチップ51_C~51_Lのノズル列LNa、LNbは、ヘッドチップ51_A、51_Bのノズル列LNa、LNbが使用ノズル列である場合と不使用ノズル列である場合とのいずれの場合においても、インクの噴射に用いる使用ノズル列である。
【0044】
なお、後に図8に基づいて詳述するが、本実施形態では、ヘッドチップ51_A、51_Bのノズル列LNa、LNbが「第1ノズル列」の一例であり、ヘッドチップ51_C、51_Dのノズル列LNa、ノズル列LNbが「第2ノズル列」の一例であり、ヘッドチップ51_E~51_Lのノズル列LNa、LNbが「第3ノズル列」の一例である。
【0045】
図3に示す例では、ヘッドチップ51_A~51_Lが千鳥状に配置される。ここで、ヘッドチップ51_A~51_Lがヘッドチップ51_A、51_B、51_C、51_D、51_E、51_F、51_G、51_H、51_I、51_J、51_K、51_Lの順でX1方向に並ぶ。ただし、ヘッドチップ51_A、51_C、51_E、51_G、51_I、51_KのY軸に沿う方向での位置は、互いに等しい。これに対し、ヘッドチップ51_B、51_D、51_F、51_H、51_J、51_LのY軸に沿う方向での位置は、ヘッドチップ51_A、51_C、51_E、51_G、51_I、51_Kに対してY2方向にずれた位置で、互いに等しい。
【0046】
導入部53_1~53_12のそれぞれは、液体噴射ヘッド50の外部からインクを導入するための開口であり、液体供給機構10に接続される。導入部53_1は、ヘッドチップ51_Aおよびヘッドチップ51_Bのノズル列LNaに圧力調整弁54_1を介して接続される。導入部53_2は、ヘッドチップ51_Aおよびヘッドチップ51_Bのノズル列LNbに圧力調整弁54_2を介して接続される。導入部53_3は、ヘッドチップ51_Cおよびヘッドチップ51_Dのノズル列LNaに圧力調整弁54_3を介して接続される。導入部53_4は、ヘッドチップ51_Cおよびヘッドチップ51_Dのノズル列LNbに圧力調整弁54_4を介して接続される。導入部53_5は、ヘッドチップ51_Eおよびヘッドチップ51_Fのノズル列LNaに圧力調整弁54_5を介して接続される。導入部53_6は、ヘッドチップ51_Eおよびヘッドチップ51_Fのノズル列LNbに圧力調整弁54_6を介して接続される。導入部53_7は、ヘッドチップ51_Gおよびヘッドチップ51_Hのノズル列LNaに圧力調整弁54_7を介して接続される。導入部53_8は、ヘッドチップ51_Gおよびヘッドチップ51_Hのノズル列LNbに圧力調整弁54_8を介して接続される。導入部53_9は、ヘッドチップ51_Iおよびヘッドチップ51_Jのノズル列LNaに圧力調整弁54_9を介して接続される。導入部53_10は、ヘッドチップ51_Iおよびヘッドチップ51_Jのノズル列LNbに圧力調整弁54_10を介して接続される。導入部53_11は、ヘッドチップ51_Kおよびヘッドチップ51_Lのノズル列LNaに圧力調整弁54_11を介して接続される。導入部53_12は、ヘッドチップ51_Kおよびヘッドチップ51_Lのノズル列LNbに圧力調整弁54_12を介して接続される。
【0047】
圧力調整弁54_1~54_12のそれぞれは、対応するノズル列LNまたはこれに連通する流路の圧力が所定の圧力よりも小さい場合に開く弁機構である。このため、圧力調整弁54の開閉により、インクの供給を受けるノズル列LNに連通する流路内のインクの圧力が所定範囲内の負圧に維持される。このため、インクの供給を受けるノズル列LNのノズルNに形成されるインクのメニスカスの安定化が図られる。この結果、インクの供給を受けるノズル列LNにおいて、ノズルN内に気泡が入り込んだり、ノズルNからインクが溢れ出したりすることが防止される。
【0048】
本実施形態の圧力調整弁54は、インクの供給を受けるノズル列LNに連通する流路内のインクの圧力に応じて開閉するだけでなく、後述の開放機構14からの外力により強制的に開状態とすることが可能に構成される。このため、後述の第1加圧クリーニングおよび第2加圧クリーニングを実行したり、インクの供給を受けないノズル列LNに連通する流路を大気開放したりすることができる。圧力調整弁54の具体的な構成例については、後に図5に基づいて説明する。
【0049】
液体供給機構10は、液体貯留部11_1~11_12と装着部12と加圧機構13_1~13_12と開放機構14とを有する。以下では、液体貯留部11_1~11_12のそれぞれを液体貯留部11という場合がある。加圧機構13_1~13_12のそれぞれを加圧機構13という場合がある。
【0050】
液体貯留部11_1~11_12のそれぞれは、インクを貯留する容器である。液体貯留部11の具体的な態様としては、例えば、装着部12に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで構成される袋状のインクパック、および、インクを補充可能なインクタンク等が挙げられる。なお、液体貯留部11の数は、図3に示す例に限定されず、任意である。また、液体貯留部11とノズル列LNとの対応関係は、図3に示す例に限定されず、任意である。
【0051】
液体貯留部11_1~11_12に貯留されるインクは、特に限定されず、例えば、染料または顔料等の色材を水系溶媒に溶解させた水系インクでもよいし、色材を有機溶剤に溶解させた溶剤系インクでもよいし、紫外線硬化型インクでもよいし、クリアインク、ホワイトインクまたは処理液でもよいし、生体材料または生体適合材料を溶媒に溶解または分散媒に分散させたバイオ系インクでもよい。なお、液体貯留部11_1~11_12に貯留されるインクの種類は、互いに同一であっても異なってもよい。
【0052】
本実施形態では、図3中の実線で示す液体貯留部11_3~11_12が装着部12に装着される。これに対し、図3中の二点鎖線で示す液体貯留部11_1、11_2が装着部12に装着されないか、または、装着部12に装着される液体貯留部11_1、11_2がダミーである場合がある。この場合、後述の第1モードMD1が実行される。一方、正規の液体貯留部11_1、11_2が装着部12に装着される場合、後述の第2モードMD2が実行される。なお、ダミーの液体貯留部11_1、11_2とは、装着部12に装着可能であるものの、液体噴射ヘッド50へ供給されるインクを貯留しない容器である。また、正規の液体貯留部11_1、11_2とは、装着部12に装着可能であり、かつ、液体噴射ヘッド50へ供給されるインクを貯留する容器である。
【0053】
装着部12は、液体貯留部11_1~11_12が個別に着脱可能に装着されるホルダーを含む構造体であり、液体貯留部11の装着状態を検出可能に構成される。例えば、装着部12は、液体貯留部11が着脱可能に装着されるホルダーのほか、液体貯留部11の装着状態を検出するための要素を有する。ここで、当該装着状態とは、装着部12に対する液体貯留部11の装着の有無のほか、装着部12に装着された液体貯留部11の種類、例えば、装着部12に装着された液体貯留部11に貯留されるインクの種類、液体貯留部11がダミーであるか正規であるか等の状態である。
【0054】
例えば、少なくとも液体貯留部11に関する情報を記憶する不揮発性メモリーと、その不揮発性メモリーと電気的に接続されるとともに液体貯留部11の外部、具体的には装着部12との電気的接点である金属端子とを少なくとも含む回路基板を、液体貯留部11が備える場合、液体貯留部11の装着状態を検出するための要素は、液体貯留部11の端子に接触する金属端子である。ここで、液体貯留部11に関する情報には、液体貯留部11に内部に貯留されるインクの種類の情報、もしくは、液体貯留部11がダミーであるか正規であるどうかの情報が含まれる。液体貯留部11の端子と装着部12の端子とが接触して電気的に導通することにより、液体貯留部11の不揮発性メモリーに記憶された液体貯留部11に関する情報を含む検出信号DMが、液体貯留部11の回路基板から制御ユニット20へ送られる。また、装着部12に正規またはダミーの液体貯留部11が装着されていない場合には、検出信号DMは制御ユニット20へ送られない。
【0055】
以上のとおり、制御ユニット20は、検出信号DMの受信の有無、及び、受信した検出信号DMに含まれる情報に基づいて、正規の液体貯留部11と接続されていない不使用のノズル列があるか否かを判断する。
【0056】
なお、装着部12は、液体貯留部11が装着されるホルダーのほか、例えば、液体貯留部11の装着の有無を検出するための要素として光学式または接触式等のセンサーを備えていてもよい。このセンサーによって装着部12に装着された液体貯留部11を検出した場合、当該装着部12に液体貯留部11が装着されている情報を含む検出信号DMを、装着部12から制御ユニット20へ送る。そして、液体貯留部11が装着部12に装着されない場合には、検出信号DMを装着部12に送信しないようにすることで、複数の装着部12に対する液体貯留部11の装着状態を検出するようにしてもよい。これにより、制御ユニット20は、検出信号DMの受信の有無に基づいて、正規の液体貯留部11と接続されていない不使用のノズル列があるか否かを判断するようにしてもよい。
【0057】
装着部12に装着された液体貯留部11に貯留されるインクは、加圧機構13の圧力により導入部53に導入される。ここで、加圧機構13_1は、制御ユニット20による制御のもとで、液体貯留部11_1に貯留されるインクを導入部53_1に導入する。加圧機構13_2~13_12は、制御ユニット20による制御のもとで、液体貯留部11_2~11_12に貯留されるインクを導入部53_2~_53_12に導入する。
【0058】
このように、加圧機構13は、制御ユニット20による制御のもとで、装着部12に装着済みの液体貯留部11内のインクを液体噴射ヘッド50に向けて加圧する。加圧機構13は、例えば、液体貯留部11に接続され、液体貯留部11内を加圧するシリンジポンプ、ダイアフラムポンプ、チューブポンプまたはコンプレッサー等のポンプである。本実施形態の加圧機構13は、制御ユニット20による制御のもとで、液体噴射ヘッド50のノズルからインクを加圧により排出する加圧クリーニングを実行可能である。なお、加圧機構13は、液体貯留部11からのインクを液体噴射ヘッド50へ向けて加圧することができればよく、液体貯留部11から液体噴射ヘッド50へインクを移送するための流路の途中に設けられてもよい。
【0059】
開放機構14は、圧力調整弁54に外力を付与することにより、圧力調整弁54を強制的に開状態とする機構である。開放機構14は、例えば、ポンプと共通流路とバッファー室と複数の分岐流路と複数の電磁弁とを有する。当該ポンプは、空気を加圧する加圧ポンプである。当該共通流路は、当該ポンプに接続される流路である。当該バッファー室は、当該共通流路の途中に設けられ、当該ポンプにより加圧された空気を一時的に貯留する。当該複数の分岐流路は、圧力調整弁54_1~54_12に対応しており、当該バッファー室よりも下流の位置で当該共通流路から分岐した流路であり、対応する圧力調整弁54に接続される。当該複数の電磁弁は、当該複数の分岐流路に対応しており、対応する分岐流路の途中に設けられる開閉弁である。このような開放機構14は、制御ユニット20による制御のもとで、対象となる圧力調整弁54の後述の圧力調整室RVを加圧することにより、対象となる圧力調整弁54を強制的に開状態とする。
【0060】
なお、開放機構14の構成は、圧力調整弁54の構成に応じて決められ、前述のような加圧空気を用いる構成に限定されず、任意である。また、開放機構14は、液体供給機構10の外部の要素であってもよい。
【0061】
1-4.ヘッドチップの構成
図4は、液体噴射ヘッド50のヘッドチップ51の断面図である。なお、ヘッドチップ51は、X軸に沿う方向で互いに略対称な構成である。ただし、ノズル列LNaの複数のノズルNとノズル列LNbの複数のノズルNとのY軸に沿う方向での位置は、互いに一致してもよいし異なってもよい。図4では、ノズル列LNaの複数のノズルNとノズル列LNbの複数のノズルNとのY軸に沿う方向での位置が互いに一致する構成が例示される。
【0062】
図4に示すように、ヘッドチップ51は、流路基板51aと圧力室基板51bとノズルプレート51cと吸振体51dと振動板51eと複数の駆動素子51fと保護板51gとケース51hと配線基板51iとを有する。
【0063】
流路基板51aおよび圧力室基板51bは、この順でZ1方向に積層されており、複数のノズルNにインクを供給するための流路を形成する。流路基板51aおよび圧力室基板51bからなる積層体よりもZ1方向に位置する領域には、振動板51eと複数の駆動素子51fと保護板51gとケース51hと配線基板51iとが設置される。他方、当該積層体よりもZ2方向に位置する領域には、ノズルプレート51cと吸振体51dとが設置される。ヘッドチップ51の各要素は、概略的にはY方向に長尺な板状部材であり、例えば接着剤により、互いに接合される。以下、ヘッドチップ51の各要素を順に説明する。
【0064】
ノズルプレート51cは、ノズル列LNaおよびノズル列LNbのそれぞれの複数のノズルNが設けられた板状部材である。複数のノズルNのそれぞれは、インクを通過させる貫通孔である。ノズルプレート51cは、例えば、ドライエッチングまたはウェットエッチング等の加工技術を用いる半導体製造技術によりシリコン単結晶基板を加工することにより製造される。ただし、ノズルプレート51cの製造には、他の公知の方法および材料が適宜に用いられてもよい。また、ノズルの断面形状は、典型的には円形状であるが、これに限定されず、例えば、多角形または楕円形等の非円形状であってもよい。ノズルプレート51cのZ2方向を向く面は、噴射面FNの一部を構成する。
【0065】
流路基板51aには、ノズル列LNaおよびノズル列LNbのそれぞれについて、空間R1と複数の個別流路Raと複数の連通流路Naとが設けられる。空間R1は、Z軸に沿う方向でみた平面視で、Y軸に沿う方向に延びる長尺状の開口である。個別流路Raおよび連通流路Naのそれぞれは、ノズルNごとに形成された貫通孔である。各個別流路Raは、空間R1に連通する。
【0066】
圧力室基板51bは、ノズル列LNaおよびノズル列LNbのそれぞれについて、キャビティと称される複数の圧力室Cが設けられた板状部材である。複数の圧力室Cは、Y軸に沿う方向に配列される。各圧力室Cは、ノズルNごとに形成され、平面視でX軸に沿う方向に延びる長尺状の空間である。流路基板51aおよび圧力室基板51bそれぞれは、前述のノズルプレート51cと同様に、例えば、半導体製造技術によりシリコン単結晶基板を加工することにより製造される。ただし、流路基板51aおよび圧力室基板51bのそれぞれの製造には、他の公知の方法および材料が適宜に用いられてもよい。
【0067】
圧力室Cは、流路基板51aと振動板51eとの間に位置する空間である。ノズル列LNaおよびノズル列LNbのそれぞれについて、複数の圧力室CがY軸に沿う方向に配列される。また、圧力室Cは、連通流路Naおよび個別流路Raのそれぞれに連通する。したがって、圧力室Cは、連通流路Naを介してノズルNに連通し、かつ、個別流路Raを介して空間R1に連通する。
【0068】
圧力室基板51bのZ1方向を向く面には、振動板51eが配置される。振動板51eは、弾性的に振動可能な板状部材である。振動板51eは、例えば、酸化シリコン(SiO)で構成される弾性膜と、酸化ジルコニウム(ZrO)で構成される絶縁膜と、を有し、これらがこの順でZ1方向に積層される。当該弾性膜は、例えば、シリコン単結晶基板の一方の面を熱酸化することにより形成される。当該絶縁膜は、例えば、スパッタ法によりジルコニウムの層を形成し、当該層を熱酸化することにより形成される。なお、振動板51eは、前述の弾性膜および絶縁膜の積層による構成に限定されず、例えば、単層で構成されてもよいし、3層以上で構成されてもよい。
【0069】
振動板51eのZ1方向を向く面には、ノズル列LNaおよびノズル列LNbのそれぞれについて、互いにノズルNに対応する複数の駆動素子51fが配置される。各駆動素子51fは、駆動信号の供給により変形する受動素子である。各駆動素子51fは、平面視でX軸に沿う方向に延びる長尺状をなす。複数の駆動素子51fは、複数の圧力室Cに対応するようにY軸に沿う方向に配列される。駆動素子51fは、平面視で圧力室Cに重なる。
【0070】
各駆動素子51fは、圧電素子であり、図示しないが、第1電極と圧電体層と第2電極とを有し、この順でこれらがZ1方向に積層される。第1電極および第2電極のうちの一方の電極は、駆動素子51fごとに互いに離間して配置される個別電極であり、当該一方の電極には、駆動信号Comが供給される。第1電極および第2電極のうちの他方の電極は、複数の駆動素子51fにわたり連続するようにY軸に沿う方向に延びる帯状の共通電極であり、当該他方の電極には、例えば、定電位が供給される。圧電体層は、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O)等の圧電材料で構成されており、例えば、複数の駆動素子51fにわたり連続するようにY軸に沿う方向に延びる帯状をなす。ただし、圧電体層は、複数の駆動素子51fにわたり一体でもよい。この場合、圧電体層には、互いに隣り合う各圧力室Cの間隙に平面視で対応する領域に、当該圧電体層を貫通する貫通孔がX軸に沿う方向に延びて設けられる。以上の駆動素子51fの変形に連動して振動板51eが振動すると、圧力室C内の圧力が変動することで、インクがノズルNから噴射される。
【0071】
保護板51gは、振動板51eのZ1方向を向く面に設置される板状部材であり、複数の駆動素子51fを保護するとともに振動板51eの機械的な強度を補強する。ここで、保護板51gと振動板51eとの間には、複数の駆動素子51fが収容される。保護板51gは、例えば、樹脂材料で構成される。
【0072】
ケース51hは、複数の圧力室Cに供給されるインクを貯留するための部材である。ケース51hは、例えば、樹脂材料で構成される。ケース51hには、ノズル列LNaおよびノズル列LNbのそれぞれについて、空間R2が設けられる。空間R2は、前述の空間R1に連通する空間であり、空間R1とともに、複数の圧力室Cに供給されるインクを貯留するリザーバーRとして機能する。ケース51hには、各リザーバーRにインクを供給するための導入口IHが設けられる。各リザーバーR内のインクは、各個別流路Raを介して圧力室Cに供給される。
【0073】
吸振体51dは、コンプライアンス基板とも称され、リザーバーRの壁面を構成する可撓性の樹脂フィルムであり、リザーバーR内のインクの圧力変動を吸収する。なお、吸振体51dは、金属製の可撓性を有する薄板であってもよい。吸振体51dのZ1方向を向く面は、流路基板51aに接着剤等により接合される。一方、吸振体51dのZ2方向を向く面には、枠体56を介して固定板55が接着剤等により接合される。枠体56は、吸振体51dの外周に沿う枠状の部材であり、例えば、金属材料で構成される。
【0074】
固定板55は、図示しないホルダーとの間で複数のヘッドチップ51を固定するための板状部材である。固定板55には、各ヘッドチップ51のノズルプレート51cを露出させる複数の開口部55aが設けられる。図4に示す例では、当該複数の開口部55aは、ヘッドチップ51ごとに個別に設けられる。固定板55は、例えば、ステンレス鋼、チタンおよびマグネシウム合金等の金属材料等で構成される。
【0075】
以上の固定板55のZ2方向を向く面は、各ヘッドチップ51のZ2方向を向く面における開口部55aから露出する部分とともに、噴射面FNの一部を構成する。
【0076】
配線基板51iは、振動板51eのZ1方向を向く面に実装されており、ヘッドチップ51と駆動回路52および制御ユニット20等とを電気的に接続するための実装部品である。配線基板51iは、例えば、COF(Chip On Film)、FPC(Flexible Printed Circuit)またはFFC(Flexible Flat Cable)等の可撓性の配線基板である。本実施形態の配線基板51iには、駆動回路52が実装される。駆動回路52は、制御信号SIに基づいて、駆動信号Comに含まれる波形のうちの少なくとも一部を駆動パルスとして駆動素子51fに供給するか否かを切り替えるスイッチング素子を含む回路である。
【0077】
以上のヘッドチップ51では、駆動信号Comにより駆動素子51fが駆動することにより、圧力室Cの圧力が変動し、その変動に伴ってノズルNからインクが噴射される。
【0078】
1-5.圧力調整弁の構成例
図5は、圧力調整弁54の一例を示す断面図である。図5に示すように、圧力調整弁54は、上流側流路RJ1および下流側流路RJ2を備えており、これらは、導入部53からヘッドチップ51へのインクの流路の一部を構成する。上流側流路RJ1には、インクの流入口DIが設けられ、下流側流路RJ2には、インクの流出口DOが設けられる。流入口DIには、液体供給機構10からのインクが流入する。流出口DOは、液体噴射ヘッド50に供給するためのインクを排出する。
【0079】
圧力調整弁54は、弁体54aと弁座54bとバネ54cとバネ54dとを備える。弁体54aは、弁座54bに対して接近したり離反したりするように、図中のW方向またはその反対方向に移動することにより、上流側流路RJ1を開閉する。
【0080】
弁座54bは、支持体54eのうち上流側流路RJ1と下流側流路RJ2との間に位置する部分であり、可撓膜54fのうち下流側流路RJ2を封止する部分に対して間隔をあけて対向する。弁座54bの略中央には、支持体54eを貫通する貫通孔Kが設けられる。上流側流路RJ1および下流側流路RJ2は、貫通孔Kを介して互いに連通する。
【0081】
弁体54aは、上流側流路RJ1内に設置される。弁体54aは、基部54a1と封止部54a2と弁軸54a3とを有する。基部54a1は、貫通孔Kの内径を上回る外径の円形状の平板部分である。基部54a1の表面には、弁軸54a3が同軸で垂直に突起しており、円環状の封止部54a2が平面視で弁軸54a3を囲むように設置される。弁軸54a3の軸線OがW方向に平行であり、弁軸54a3が弁座54bの貫通孔Kに挿入された状態で、基部54a1および封止部54a2が上流側流路RJ1内に位置する。弁座54bの貫通孔Kの内周面と弁軸54a3の外周面との間には、隙間が形成される。バネ54cは、上流側流路RJ1内において支持体54eのうち弁座54bに対向する面と弁体54aの基部54a1との間に設置されており、弁体54aを弁座54bに向けて付勢する。他方、バネ54dは、下流側流路RJ2内において弁座54bと受圧板54gとの間に設置される。弁体54aの封止部54a2は、基部54a1と弁座54bとの間に位置しており、弁座54bの封止面FSに接触することにより、貫通孔Kを閉塞するシールとして機能する。
【0082】
下流側流路RJ2には、大気圧の外部空間に連通する大気圧室RCが可撓膜54fを介して隣り合う。可撓膜54fは、可撓性の弾性膜であり、例えば、フィルム、ゴム、繊維等で構成される。図5に示すように、下流側流路RJ2内の圧力が所定の範囲内に維持されている場合、バネ54dの付勢力により弁体54aの封止部54a2が弁座54bの封止面FSに押し付けられることにより、上流側流路RJ1と下流側流路RJ2とが互いに遮断される。他方、下流側流路RJ2内の圧力が所定の負圧以下になると、バネ54cおよびバネ54dによる付勢力に抗して弁体54aの封止部54a2が弁座54bの封止面FSから離反することにより、上流側流路RJ1と下流側流路RJ2とが互いに連通する。つまり、圧力調整弁54は、ノズルNからインクを噴射可能とするインクのメニスカスがノズルN内に形成されるように、液体噴射ヘッド50内のインクの圧力を所定の負圧に設定するように構成されている。
【0083】
圧力調整弁54では、圧力調整室RVが弾性部材54hを介して大気圧室RCに隣り合う。弾性部材54hは、可撓性を有する板状部材であり、ゴム等の弾性材料で構成される。圧力調整室RVは、気体流路口DAに連通する。気体流路口DAには、前述の図3に示す開放機構14が接続される。開放機構14が圧力調整室RVを加圧することにより、弾性部材54hを可撓膜54fに向けて押し付けるように撓み変形させることができる。この結果、バネ54cおよびバネ54dによる付勢力に抗して弁体54aの封止部54a2を弁座54bの封止面FSから離反させることができる。このように、下流側流路RJ2内の圧力によらず、開放機構14の動作により、上流側流路RJ1と下流側流路RJ2とを互いに連通させることができる。
【0084】
以上のように、圧力調整弁54は、開放機構14の動作により強制的に開状態とすることができる。ここで、使用ノズル列に対応する圧力調整弁54を強制的に開状態とすることにより、加圧機構13による加圧により、後述の第1加圧クリーニングおよび第2加圧クリーニングが実行される。
【0085】
1-6.メンテナンス機構
図6は、メンテナンス機構60の概略構成を示す図である。図7および図8は、メンテナンス機構60による吸引クリーニングを説明するための模式図である。なお、図7は、後述の図14に対応しており、不使用ノズル列に対するクリーニング動作を示す。また、図8は、後述の図15に対応しており、使用ノズル列に対するクリーニング動作を示す。
【0086】
メンテナンス機構60は、液体噴射ヘッド50のメンテナンスを行うための機構である。図6に示す例では、メンテナンス機構60は、キャップ機構61と吸引クリーニング機構62と払拭機構63とを有する。図6に示す例では、キャップ機構61と吸引クリーニング機構62と払拭機構63とがこの順でX1方向に並ぶ。なお、キャップ機構61と吸引クリーニング機構62と払拭機構63との並び順は、図6に示す例に限定されず、任意である。
【0087】
キャップ機構61は、液体噴射ヘッド50のすべてのノズルNをキャッピングする機構である。図6に示す例では、キャップ機構61がヘッドチップ51ごとにノズルNをキャッピングする。具体的には、キャップ機構61は、複数のキャップ61aと支持体61bと移動機構61cとを有する。なお、キャップ機構61は、図6に示す例に限定されず、例えば、2以上のヘッドチップ51ごとにノズルNをキャッピングしてもよいし、すべてのノズルNを一括してキャッピングしてもよい。
【0088】
各キャップ61aは、空間S1を形成する凹部を有する蓋体であり、樹脂等で構成された凹部形状の本体部と、その本体部のZ1方向の先端部に設けられた環状の縁部とを備える。縁部は、例えば、ゴム材料またはエラストマー材料等の弾性材料で構成される。キャップ61aは、縁部で噴射面FNを構成する固定板55の表面に接触することにより、ノズルプレート51cを含む噴射面FNとの間に空間S1を閉空間として形成する。これにより、ノズルN内のインクから水分が蒸発して増粘するのを防ぐことができる。つまり、キャップ61aは、ノズルNを保湿するための保湿用キャップである。図6に示す例では、当該凹部がZ1方向に向けて開放しており、キャップ61aがホームポジションの噴射面FNに対してZ2方向の位置に配置される。
【0089】
複数のキャップ61aは、液体噴射ヘッド50の有する複数のヘッドチップ51に対応しており、Z2方向にみて、前述のヘッドチップ51_A~51_Lと同様に千鳥状に配置される。具体的には、X2方向の端に配置されたキャップ61aがヘッドチップ51_Aに対応しており、X1方向の端に配置されたキャップ61aがヘッドチップ51_Lに対応している。
【0090】
支持体61bは、複数のキャップ61aを支持する構造体であり、例えば、金属等で構成される。図6に示す例では、支持体61bがZ1方向を向く面を有しており、当該面には、複数のキャップ61aのそれぞれが支持される。ここで、複数のキャップ61aのそれぞれは、支持体61bにねじ留めまたは接着剤等により固定される。
【0091】
移動機構61cは、支持体61bをZ軸に沿う方向に往復移動させる機構であり、例えば、昇降機構と、この昇降機構を駆動するモーターと、を有する。移動機構61cは、キャップ61aがホームポジションの噴射面FNに接触する接触位置と、この接触位置からZ2方向の位置である退避位置と、の間で支持体61bを移動させる。
【0092】
吸引クリーニング機構62は、液体噴射ヘッド50のノズルNからインクを吸引により排出することにより、ノズルNを吸引クリーニングする機構である。図6に示す例では、吸引クリーニング機構62が液体噴射ヘッド50の有する複数のヘッドチップ51のうちX軸に沿う方向に互いに隣り合う2個のヘッドチップ51のノズルNを吸引クリーニングする。具体的には、吸引クリーニング機構62は、2個のキャップ62aと支持体62bと移動機構62cと減圧機構62dと廃液チューブ62eと廃液タンク62fとを有する。
【0093】
各キャップ62aは、空間S2を形成する凹部を有する蓋体であり、樹脂等で構成された凹部形状の本体部と、その本体部のZ1方向の先端部に設けられた環状の縁部とを備える。縁部は、前述のキャップ61aと同様、例えば、ゴム材料またはエラストマー材料等の弾性材料で構成される。キャップ62aは、縁部で噴射面FNを構成する固定板55の表面に接触することにより、噴射面FNとの間に空間S2を閉空間として形成する。図6に示す例では、当該凹部がZ1方向に向けて開放しており、キャップ62aがホームポジションよりもX1方向に位置する噴射面FNに対してZ2方向の位置に配置される。
【0094】
2個のキャップ62aは、X軸に沿う方向に互いに隣り合う2個のヘッドチップ51に対応しており、Z2方向にみて、当該2個のヘッドチップ51と同様にX軸およびY軸の双方に沿う方向に互いにずれて配置される。
【0095】
支持体62bは、2個のキャップ62aを支持する構造体であり、例えば、金属等で構成される。図6に示す例では、支持体62bがZ1方向を向く面を有しており、当該面には、2個のキャップ62aのそれぞれが支持される。ここで、2個のキャップ62aのそれぞれは、支持体62bにねじ留めまたは接着剤等により固定される。
【0096】
移動機構62cは、支持体61bをZ軸に沿う方向に往復移動させる機構であり、例えば、昇降機構と、この昇降機構を駆動するモーターと、を有する。移動機構61cは、キャップ62aがホームポジションよりもX1方向に位置する噴射面FNに接触する接触位置と、この接触位置からZ2方向の位置である退避位置と、の間で支持体61bを移動させる。
【0097】
図7および図8に示すように、キャップ62aの凹部の底壁には、吸引口62oが開口している。吸引口62oには、キャップ62a内の空間S2と廃液タンク62fとを連通させるための廃液チューブ62eの一端が接続される。また、廃液チューブ62eの途中には減圧機構62dが設けられている。本実施形態の廃液チューブ62eは、キャップ62aと減圧機構62dとの間で分岐することで2つのキャップ62aの各吸引口62oに接続されている。減圧機構62dは、キャップ62a内の空間S2を減圧するための機構であり、例えば、チューブポンプである。なお、減圧機構62dは、廃液タンク62eに設けられていてもよく、廃液タンク62e内を減圧する真空ポンプ等であってもよい。
【0098】
図7および図8に示すように、空間S2が噴射面FNにより閉空間となる状態で減圧されることにより、キャップ62aに囲まれるノズルNからインクが吸引されて排出される。この結果、ノズルN内のインクがリフレッシュされる。ノズルNから排出されたインクは、吸引口62o及び廃液チューブ62eを介して廃液タンク62fに回収される。図7では、ヘッドチップ51_Aおよびヘッドチップ51_Bのノズル列LNa、LNbを構成する複数のノズルNが空間S2に開口するようにして、空間S2が第1閉空間S2_1として形成される状態が示される。図8では、ヘッドチップ51_Cおよびヘッドチップ51_Dのノズル列LNa、LNbを構成する複数のノズルNが空間S2に開口するようにして、空間S2が第1閉空間S2_1として形成される状態が示される。
【0099】
払拭機構63は、液体噴射ヘッド50の後述の噴射面FNを払拭する機構である。図6に示す例では、払拭機構63が液体噴射ヘッド50の有する複数のヘッドチップ51のうちX軸に沿う方向に互いに隣り合う2個のヘッドチップ51を包含する噴射面FNの領域を払拭する。具体的には、払拭機構63は、払拭部材63aと支持体63bと移動機構63cとを有する。
【0100】
払拭部材63aは、液体噴射ヘッド50の噴射面FNを払拭するための部材である。図6に示す例では、払拭部材63aが払拭部材63a1、63a2、63a3で構成される。払拭部材63a1、63a2、63a3のそれぞれは、ゴム等の弾性材料で構成され、X軸に沿う方向に延びる長尺状をなし、Z1方向に向けて突出するブレード状の弾性部材である。
【0101】
払拭部材63a1、63a2、63a3は、この順でY2方向に互いに間隔をあけて並ぶ。ただし、払拭部材63a2、63a3のそれぞれのX軸に沿う方向での長さは、払拭部材63a1のX軸に沿う方向での長さよりも短い。そして、払拭部材63a2は、払拭部材63a1のX軸に沿う方向での中央よりも、X2方向の位置に配置される。一方、払拭部材63a3は、払拭部材63a1のX軸に沿う方向での中央よりも、X1方向の位置に配置される。
【0102】
ここで、払拭部材63a1のX軸に沿う方向での長さは、X軸に沿う方向に隣り合う2個のヘッドチップ51の群のX軸に沿う方向での幅に等しい程度であるか、または、それよりも若干長い程度である。これに対し、払拭部材63a2のX軸に沿う方向での長さは、1個のヘッドチップ51の群のX軸に沿う方向での幅に等しい程度であるか、または、それよりも若干長い程度である。同様に、払拭部材63a3のX軸に沿う方向での長さは、1個のヘッドチップ51の群のX軸に沿う方向での幅に等しい程度であるか、または、それよりも若干長い程度である。
【0103】
なお、払拭部材63aは、図6に示す例に限定されず、例えば、2個以下または4個以上のブレード状の弾性部材で構成されてもよいし、織物または不織布等の繊維材またはスポンジ等の多孔質部材で構成されてもよい。
【0104】
支持体63bは、払拭部材63aを支持する構造体であり、例えば、金属等で構成される。図6に示す例では、支持体63bがZ1方向を向く面を有しており、当該面には、払拭部材63aが支持される。ここで、払拭部材63aは、支持体63bにねじ留めまたは接着剤等により固定される。
【0105】
移動機構63cは、支持体63bをY軸に沿う方向に往復移動させる機構であり、例えば、直動機構と、この直動機構を駆動するモーターと、を有する。移動機構63cは、払拭部材63aがホームポジションよりもX1方向に位置する噴射面FNに対してY1方向に外れた位置とY2方向に外れた位置との間で往復するように、支持体63bを移動させる。
【0106】
1-7.第1モードおよび第2モード
図9は、第1モードMD1および第2モードMD2の選択を説明するためのフローチャートである。液体噴射装置100は、前述の装着部12に対する液体貯留部11の装着状態に基づいて、第1モードMD1および第2モードMD2のうちのいずれかを選択する。
【0107】
具体的に説明すると、図9に示すように、まず、ステップS110において、制御部21aが装着部12に対する液体貯留部11の装着状態を検出する。この検出は、検出信号Dmを取得することにより行われる。
【0108】
次に、ステップS120において、制御部21aは、正規の液体貯留部11が接続されないノズル列LNである不使用ノズル列があるか否かを判断する。この判断は、前述したとおり、検出信号Dmに基づいて行われる。
【0109】
不使用ノズル列がある場合(ステップS120:YES)、制御部21aは、ステップS130において、第1モードMD1を選択した後、ステップS140において、後述のシーケンスSQ1を実行するためのフラグFLを設定する。
【0110】
一方、不使用ノズル列がない場合(ステップS120:NO)、または、制御部21aは、ステップS150において、第2モードMD2を選択する。この場合、制御部21aは、フラグFLを設定しない。つまり、第2モードMD2では、シーケンスSQ1は実行されない。
【0111】
図10は、第1モードMD1における使用ノズル列および不使用ノズル列の一例を示す図である。図10では、ヘッドチップ51_A、51_Bのノズル列LNa、LNbが第1モードMD1における不使用ノズル列である場合が例示される。すなわち、第1モードMD1では、図10に示すように、ヘッドチップ51_A、51_Bのノズル列LNa、LNbを使用せずにヘッドチップ51_C~51_Lのノズル列LNa、LNbが印刷動作に使用される。
【0112】
ここで、ヘッドチップ51_A、51_Bのノズル列LNa、LNbが第1ノズル列LN_1であり、ヘッドチップ51_C、51_Dのノズル列LNa、LNbが第2ノズル列LN_2であり、ヘッドチップ51_E~51_Lのノズル列LNa、LNbが第3ノズル列LN_3である。なお、第3ノズル列LN_3は、第2ノズル列LN_2よりも第1ノズル列LN_1から遠い位置にあるノズル列LNであればよい。すなわち、第1ノズル列LN_1と第3ノズル列LN_3との間の距離が第1ノズル列LN_1と第2ノズル列LN_2との間の距離よりも長ければよい。
【0113】
本実施形態の第1モードMD1では、液体噴射ヘッド50において印刷動作に使用されないノズル列LNである不使用ノズル列の数は、ノズルプレート51cに設けられたノズル列LNの数以上である。具体的には、第1モードMD1の不使用ノズル列の数は4であり、ノズルプレート51cに設けられたノズル列LNの数は2である。そして、本実施形態の第1モードMD1において、液体噴射ヘッド50の有する複数のヘッドチップ51のうち少なくとも1つのヘッドチップ51のすべてのノズル列LNが不使用ノズル列である。具体的には、ヘッドチップ51_A、51_Bのそれぞれが備えるすべてのノズル列LNは、不使用ノズル列であり、ヘッドチップ51_C~51_Lのそれぞれが備えるすべてのノズル列LNは、使用ノズル列である。このため、1つのヘッドチップ51に不使用ノズルおよび使用ノズル列が混在しない。
【0114】
図11は、第2モードMD2における使用ノズル列の一例を示す図である。第2モードMD2では、図11に示すように、ヘッドチップ51_A~51_Lのすべてノズル列LNa、LNbが印刷動作に使用される。すなわち、第2モードMD2では、第1ノズル列LN_1、第2ノズル列LN_2および第3ノズル列LN_3のいずれも印刷動作に使用される。
【0115】
以上のように、装着部12に対する液体貯留部11の装着状態に基づいて、第1モードMD1および第2モードMD2のうちのいずれかが選択的に実行される。
【0116】
ここで、噴射面FNの第1ノズル列LN_1の近傍部分には、印刷動作に使用される第2ノズル列LN_2等から噴射されるインクのミストが付着することにより液状化する。当該液状化したインクは、毛細管現象によって第1ノズル列LN_1のノズルN内に侵入してしまう。また、第1モードMD1が選択される場合、不使用ノズル列である第1ノズル列LN_1に対応する圧力調整弁54が強制開放されない限り閉状態となる。つまり、外部から第1ノズルLN_1列のノズルNに侵入したインクと圧力調整弁54とによって、第1ノズルLN_1列のノズルNと圧力調整弁54との間の流路は大気開放されない閉空間となっているため、筐体70内の温度上昇に伴って当該流路内の温度が高まると、第1ノズルLN_1に連通する流路の圧力が増大し、第1ノズル列LN_1に侵入したインクがノズルNから排出されることにより垂れ落ちてしまう。そうすると、印刷動作の実行時に媒体Mを汚染する虞がある。
【0117】
そこで、このような媒体Mの汚染を防止するため、第1モードMD1では、インクの吐出回数および筐体70内の温度が所定条件を満たす場合、第1ノズル列LN_1のメンテナンスが行われる。
【0118】
1-8.第1モードでのメンテナンス
図12は、メンテナンス機構60の動作を説明するためのフローチャートである。前述のように、第1モードMD1が選択されるとともに、フラグFLが設定されると、図12に示すように、まず、ステップS10において、制御部21aは、カウント部21bによるカウントを開始させる。これにより、印刷動作PMの実行に伴って、カウント部21bによるカウント情報Dcの生成および更新が行われる。図12の開始のタイミングは、例えば、液体噴射装置100の電源オン操作が行われたタイミング、または、第2モードMD2への選択があったタイミング等である。
【0119】
次に、ステップS20において、制御部21aは、印刷指示の有無を判断する。印刷指示がある場合(ステップS20:YES)、制御部21aは、ステップS30において、印刷動作PMを実行する。この印刷動作PMでは、前述のように、第1ノズル列LN_1を使用せずに第2ノズル列LN_2および第3ノズル列LN_3を使用する。なお、印刷動作PMおよび後述のシーケンスSQ1、SQ2の実行期間以外の期間では、必要に応じて、キャップ機構61が噴射面FNをキャッピングする。
【0120】
印刷動作PMの実行後、または、印刷指示がない場合(ステップS20:NO)、制御部21aは、ステップS31において、使用ノズル列を構成するノズルについて不良ノズルがあるか否かを判断する。
【0121】
不良ノズルがない場合(ステップS31:NO)、制御部21aは、前述のステップS20に戻る。一方、不良ノズルがある場合(ステップS31:YES)、制御部21aは、ステップS32において、シーケンスSQ2を実行する。シーケンスSQ2の詳細については、シーケンスSQ1の説明の後に説明する。
【0122】
ステップS32の後、制御部21aは、ステップS40において、筐体70内の温度変化が所定温度以上であるか否かを判断する。この判断は、検出信号Dtに基づいて行われる。当該所定温度は、例えば、15℃である。具体的には、筐体70内の温度変化は、前回シーケンスSQ1を終了したタイミング(後述のステップS70)で検出した温度に対して、ステップS40で検出した筐体70内の温度が、当該所定温度以上、上昇したかどうかを判断する。なお、ステップS40を行う以前にシーケンスSQ1を実行したことがない場合には、液体噴射装置100が行う最初の印刷動作PMを開始する際に検出した筐体内70内の温度に対して、ステップS40で検出した筐体70内の温度が、当該所定温度以上、上昇したかどうかを判断してもよい。
【0123】
筐体70内の温度変化が所定温度未満である場合(ステップS40:NO)、制御部21aは、ステップS20に戻る。一方、筐体70内の温度変化が所定温度以上である場合(ステップS40:YES)、制御部21aは、ステップS50において、カウント情報Dcの示すカウント数であるショット数が閾値を超えたか否かを判断する。ここで、当該ショット数は、第3ノズル列LN_3に比べて第1ノズル列LN_1への影響の大きい第2ノズル列LN_2から噴射されたインクのショット数であることが好ましい。
【0124】
カウント情報Dcの示すカウント数が閾値以下である場合(ステップS50:NO)、制御部21aは、ステップS20に戻る。一方、カウント情報Dcの示すカウント数が閾値を超える場合(ステップS50:YES)、制御部21aは、ステップS60において、シーケンスSQ1を実行する。ここで、制御部21aは、第3ノズル列LN_3に比べて第1ノズル列LN_1への影響の大きい第2ノズル列LN_2から噴射されたインクのショット数に基づいて、シーケンスSQ1を開始することが好ましい。シーケンスSQ1は、第1ノズル列LN_1のメンテナンスを行う。
【0125】
ステップS60は、第1払拭動作WP_1を実行するステップS61と、キャッピングCPを実行するステップS62と、クリーニングCL1を実行するステップS63と、キャッピングCPを解除するステップS64と、空吸引を実行するステップS65と、第2払拭動作WP_2を実行するステップS66と、をこの順で含む。すなわち、シーケンスSQ1は、第1払拭動作WP_1、キャッピングCP、クリーニングCL1、キャッピングCPの解除、空吸引、第2払拭動作WP_2をこの順で実行する。
【0126】
第1払拭動作WP_1および第2払拭動作WP_2のそれぞれでは、払拭機構63が噴射面FNを払拭する。この払拭については、後に図13に基づいて説明する。以下では、第1払拭動作WP_1および第2払拭動作WP_2のそれぞれを払拭動作WPという場合がある。
【0127】
キャッピングCPでは、吸引クリーニング機構62がヘッドチップ51_A、51_Bのノズル列LNをキャップ62aによりキャッピングする。このキャッピングについては、後に図14に基づいて説明する。なお、キャッピングCPは、後述の第1加圧クリーニングCLP_1を実行する場合、行われないか、または、一時的に解除される。
【0128】
クリーニングCL1は、第1ノズル列LN_1に侵入したインクを第1ノズル列LN_1から排出させる。具体的には、クリーニングCL1は、第1吸引クリーニングCLS_1および第1加圧クリーニングCLP_1のうちの一方または両方を実行する。ここで、第1吸引クリーニングCLS_1は、第1ノズル列LN_1がキャップ62aによりキャッピングされた状態で行われる。これに対し、第1加圧クリーニングCLP_1は、第1ノズル列LN_1がキャップ62aに対向する状態、すなわち、キャッピングCPが解除された状態で行われる。
【0129】
第1吸引クリーニングCLS_1では、吸引クリーニング機構62が第1ノズル列LN_1からインクを吸引により排出する吸引クリーニングを実行する。第1吸引クリーニングCLS_1の強度は、後述の第2吸引クリーニングCLS_2の強度よりも弱い。なお、吸引クリーニングの強度が弱いとは、例えば、吸引クリーニングの実行期間の長さが短い、減圧ポンプの回転数が低い等である。
【0130】
第1加圧クリーニングCLP_1では、液体供給機構10が第1ノズル列LN_1からインクを加圧により排出する加圧クリーニングを実行する。第1加圧クリーニングCLP_1の強度は、後述の第2加圧クリーニングCLP_2の強度よりも弱い。なお、加圧クリーニングの強度が弱いとは、例えば、加圧クリーニングの実行期間の長さが短い、加圧ポンプの回転数が低い等である。加圧クリーニングは、駆動素子51fの駆動によりノズル列LNからインクを排出するフラッシングとは異なり、圧力室Cよりも上流での加圧を行う加圧機構13を用いてノズル列LNからインクを排出することにより、ノズル列LNのクリーニングを行う。本実施形態の加圧クリーニングは、圧力調整弁54を外力によって強制開放させることにより、圧力調整弁54よりも上流の流路からの圧力を用いて、ノズル列LNに向かうインクへの加圧を行う。
【0131】
以上のクリーニングCL1の後、キャッピングCPが解除される。その後、キャッピングCPが解除された状態で、吸引クリーニング機構62を動作させることにより空吸引が行われる。
【0132】
以上のシーケンスSQ1では、クリーニングCL1の後に第2払拭動作WP_2が実行されることにより、クリーニングCL1の後にノズルNから染み出したインク残りが除去される。ここで、クリーニングCL1の前に第1払拭動作WP_1が実行されることにより、噴射面FNに付着したインクが除去されるので、第2払拭動作WP_2の実行により噴射面FNから不使用ノズル列にインクが入り込むことが防止される。
【0133】
以上のシーケンスSQ1の実行後、ステップS70において、制御部21aは、カウント情報Dcの示すカウント数をリセットする。このリセットは、例えば、カウント情報Dcを記憶回路22から削除するか、または、カウント情報Dcの示すカウント数をゼロに書き換えることにより行われる。
【0134】
また、以上のシーケンスSQ1の実行後、ステップS80において、制御部21aは、筐体70内の検出温度を示す検出信号Dtを取得することで、筐体70内の温度を検出し、当該温度情報を記憶回路22に書き込む。
【0135】
以上のステップS10からステップS80までの期間において、制御部21aは、所定のタイミングで、シーケンスSQ2を実行する。シーケンスSQ2は、第2ノズル列LN_2および第3ノズル列LN_3のメンテナンスを行うこと以外は、シーケンスSQ1と同様に実行される。ただし、シーケンスSQ2は、クリーニングCL1に代えてクリーニングCL2を実行する。また、シーケンスSQ2は、第1払拭動作WP_1に相当する払拭動作を省略しても構わない。
【0136】
当該所定のタイミングは、シーケンスSQ1の実行頻度よりも高い頻度のタイミングであり、不定期のタイミングであってもよいし、定期のタイミングであってもよい。例えば、印刷動作PMが終了する度に使用ノズル列に不良ノズルがないか検出し、不良ノズルがある場合、当該所定のタイミングであると判断し、シーケンスSQ2を不定期に実施してもよいし、印刷動作PMをステップS10からステップS60までの期間より短い所定時間にわたり実行した場合、当該所定のタイミングであると判断し、シーケンスSQ2を定期的に実施してもよい。
【0137】
ここで、不良ノズルとは、例えばノズルN内のインクが増粘したりノズルN内に気泡が混入したりすることで、インクを吐出できない状態、インクを吐出できる場合であっても指定された量のインクを吐出できない状態、指定された量以上のインクが吐出されてしまう状態、インクの着弾位置がずれてしまう状態、等の吐出状態のノズルNを含む。不良ノズルの検出方法は、例えば、駆動素子51fが圧電素子である場合には、当該圧電素子を駆動することで圧力室C内のインクを揺動させた際に生じる圧力室C内のインクの残留振動を圧電素子で検出する。不良ノズルの検出方法は、他の公知の方法が採用できる。
【0138】
クリーニングCL2は、第2ノズル列LN_2または第3ノズル列LN_3がキャップ62aによりキャッピングされた状態で行われる第2吸引クリーニングCLS_2、および、第2ノズル列LN_2または第3ノズル列LN_3がキャップ62aにより対向する状態で行われる第2加圧クリーニングCLP_2のうちの一方または両方を実行する。
【0139】
第2吸引クリーニングCLS_2では、吸引クリーニング機構62が第2ノズル列LN_2または第3ノズル列LN_3からインクを吸引により排出する吸引クリーニングを実行する。ただし、使用ノズル列におけるインクによる吸引負荷を考慮し、第2吸引クリーニングCLS_2では、第1吸引クリーニングCLS_1よりも強い強度で、吸引クリーニング機構62が吸引クリーニングを実行する。
【0140】
第2加圧クリーニングCLP_2では、液体供給機構10が第2ノズル列LN_2または第3ノズル列LN_3からインクを加圧により排出する加圧クリーニングを実行する。ただし、使用ノズル列におけるインクによる加圧負荷を考慮し、第2加圧クリーニングCLP_2では、第1加圧クリーニングCLP_1よりも強い強度で、液体供給機構10が加圧クリーニングを実行する。
【0141】
ステップS80の後、ステップS100において、制御部21aは、終了指示があるか否かを判断する。この判断は、例えば、液体噴射装置100の電源オフ操作があったか否か、または、第2モードMD2への選択があったか否かにより行われる。
【0142】
終了指示がない場合(ステップS100:NO)、制御部21aは、ステップS10に戻る。一方、終了指示がある場合(ステップS100:YES)、制御部21aは、第1モードMD1の処理を終了する。
【0143】
図13は、払拭動作を説明するための図である。前述の第1払拭動作WP_1および第2払拭動作WP_2のそれぞれの払拭動作WPでは、図13に示すように、払拭部材63aがY軸に沿う方向に移動することにより第1ノズル列LN_1を払拭する。ここで、第1払拭動作WP_1および第2払拭動作WP_2のそれぞれでは、第2ノズル列LN_2および第3ノズル列LN_3に対する払拭は行われない。すなわち、払拭動作WPは、払拭部材63aにより噴射面FNの領域のうち第2ノズル列LN_2の領域を払拭せずに第1ノズル列LN_1の領域を払拭する。同様に、シーケンスSQ2で行われる払拭動作は、払拭部材63aにより噴射面FNの領域のうち第1ノズル列LN_1の領域を払拭せずに第2ノズル列LN_2又は第3ノズル列LN_3の領域を払拭する。
【0144】
図14は、不使用ノズル列に対するクリーニング動作を説明するための図である。前述のクリーニングCL1では、図14中の二点鎖線および前述の図7で示すように、第1ノズル列LN_1がキャップ62aによりキャッピングされる。ここで、キャップ62aの凹部と噴射面FNとの間には、第1閉空間S2_1が形成される。第1閉空間S2_1は、第1ノズル列LN_1を構成する複数のノズルNが空間S2に開口するようにして、キャップ62aが噴射面FNに接触することで形成される。ここで、クリーニングCL1では、第2ノズル列LN_2および第3ノズル列LN_3に対するキャッピングは行われない。
【0145】
図15は、使用ノズル列に対するクリーニング動作を説明するための図である。前述のクリーニングCL2では、図15中の二点鎖線および前述の図8で示すように、第2ノズル列LN_2がキャップ62aによりキャッピングされる。ここで、キャップ62aの凹部と噴射面FNとの間には、第1閉空間S2_1と異なる位置で第2閉空間S2_2が形成される。第2閉空間S2_2は、第2ノズル列LN_2を構成する複数のノズルNが空間S2に開口するようにして、キャップ62aが噴射面FNに接触することで形成される。このように、第2ノズル列LN_2の吸引クリーニングが第1ノズル列LN_1の吸引クリーニングと共通のキャップ62aを用いて個別に行われる。このため、第2吸引クリーニングCLS_2が第1吸引クリーニングCLS_1とは異なる期間で実行される。
【0146】
なお、図15および前述の図8では、第2ノズル列LN_2の吸引クリーニングの状態が例示されるが、第3ノズル列LN_3の吸引クリーニングも、閉空間となる空間S2の位置が異なること以外は、第2ノズル列LN_2の吸引クリーニングと同様に行われる。ここで、第3ノズル列LN_3の吸引クリーニングでは、第3ノズル列LN_3を構成する複数のノズルNが当該閉空間に開口する。
【0147】
以上の液体噴射装置100は、前述のように、液体噴射ヘッド50と液体貯留部11と制御部21aとを備える。液体噴射ヘッド50は、媒体Mに向けて「液体」の一例であるインクを噴射する印刷動作を実行可能な複数のノズル列LNが設けられた噴射面FNを有する。液体貯留部11は、液体噴射ヘッド50へ供給するためのインクを貯留する。制御部21aは、印刷動作を実行可能である。
【0148】
噴射面FNに設けられた複数のノズル列LNは、第1ノズル列LN_1と第2ノズル列LN_2とを含む。制御部21aは、液体貯留部11が第1ノズル列LN_1に接続されずに第2ノズル列LN_2に接続される場合、印刷動作に第1ノズル列LN_1を使用せずに第2ノズル列LN_2を使用する第1モードMD1を実行可能である。また、制御部21aは、第1モードMD1を実行可能である場合、第1ノズル列LN_1に侵入したインクを第1ノズル列LN_1から排出させるクリーニングCL1を含むシーケンスSQ1を実行する。
【0149】
以上の液体噴射装置100では、第1モードMD1を実行可能である場合、クリーニングCL1を含むシーケンスSQ1の実行により、第1ノズル列LN_1に侵入したインクが第1ノズル列LN_1から排出されるので、第1モードMD1での不使用ノズル列である第1ノズル列LN_1を閉塞しなくても、第1ノズル列LN_1に侵入したインクが媒体M上に垂れることが防止される。このように、第1モードMD1での不使用ノズル列である第1ノズル列LN_1を閉塞しなくて済むので、不使用ノズル列を閉塞した液体噴射ヘッドを備える液体噴射装置と、全てのノズル列LNを使用することができるように閉塞されたノズル列を備えない液体噴射ヘッド50を備える液体噴射装置100とを別途製造したり在庫管理したりする必要がない。つまり、本実施形態の液体噴射装置100は、第1モードMD1のように液体噴射ヘッド50が備える複数のノズル列LNの一部のみを使用する印刷動作、及び、第2モードMD2のように液体噴射ヘッド50が備える複数のノズル列LNのすべてを使用する印刷動作を実行することができる。この結果、液体噴射装置100の低コスト化を図ることができる。
【0150】
本実施形態では、前述のように、クリーニングCL1は、第1ノズル列LN_1からインクを吸引により排出する第1吸引クリーニングCLS_1を含む。クリーニングCL1が第1吸引クリーニングCLS_1である場合、制御部21aは、第2ノズル列LN_2からインクを吸引により排出する第2吸引クリーニングCLS_2を実行可能である。第1吸引クリーニングCLS_1の強度は、第2吸引クリーニングCLS_2の強度よりも弱い。不使用ノズル列のノズルN内に侵入したインク量は、シーケンスSQ2において使用ノズル列に含まれる不良ノズルを回復するために必要なノズルNからのインクの排出量よりも少ないため、第1吸引クリーニングCLS_1および第2吸引クリーニングCLS_2のそれぞれにおいてインクを過不足なく排出することができる。この結果、これらの吸引クリーニングに用いる減圧機構62dの減圧ポンプの長寿命化を図ったり、シーケンスSQ1の実行時間を短縮したりすることができる。
【0151】
また、前述のように、液体噴射装置100は、キャップ62aと減圧機構62dとをさらに備える。キャップ62aは、噴射面FNに接触することにより噴射面FNとの間に閉空間を形成可能である。減圧機構62dは、当該閉空間を減圧するための機構である。しかも、キャップ62aは、第1吸引クリーニングCLS_1を実行する場合、第1ノズル列LN_1を構成する複数のノズルNが開口する第1閉空間S2_1として当該閉空間を形成する。また、キャップ62aは、第2吸引クリーニングCLS_2を実行する場合、第2ノズル列LN_2を構成する複数のノズルNが開口する第2閉空間S2_2として、第1閉空間S2_1と異なる位置で当該閉空間を形成する。そして、制御部21aは、第1吸引クリーニングCLS_1および第2吸引クリーニングCLS_2を互いに異なる期間で実行する。
【0152】
このように、第1モードMD1での不使用ノズル列である第1ノズル列LN_1と使用ノズル列である第2ノズル列LN_2とで共通のキャップ62aを使用するため、液体噴射装置100の小型化および低コスト化を図ることができる。ここで、第1吸引クリーニングCLS_1および第2吸引クリーニングCLS_2が個別であっても、ノズル列LNから噴射されるインクのショット数に基づいてシーケンスSQ1を実行するか否かを決定することにより、スループットの低下を低減することができる。このように、ヘッドチップ51の数がキャップ62aの数よりも多いため、使用ノズル列および不使用ノズル列の両方に対して同時にメンテナンスを実行することができないが、スループットの低下を低減することができる。
【0153】
さらに、前述のように、クリーニングCL1は、第1ノズル列LN_1からインクを加圧により排出する第1加圧クリーニングCLP_1を含む。クリーニングCL1が第1加圧クリーニングCLP_1である場合、制御部21aは、第2ノズル列LN_2からインクを加圧により排出する第2加圧クリーニングCLP_2を実行可能である。第1加圧クリーニングCLP_1の強度は、第2加圧クリーニングCLP_2の強度よりも弱い。このため、第1加圧クリーニングCLP_1および第2加圧クリーニングCLP_2のそれぞれにおいてインクを過不足なく排出することができる。この結果、これらの加圧クリーニングに用いる加圧機構13の加圧ポンプの長寿命化を図ったり、シーケンスの実行時間を短縮したりすることができる。
【0154】
また、前述のように、液体噴射装置100は、払拭部材63aをさらに備える。払拭部材63aは、噴射面FNを払拭可能である。シーケンスSQ1は、払拭部材63aにより噴射面FNの領域のうち第2ノズル列LN_2の領域を払拭せずに第1ノズル列LN_1の領域を払拭する払拭動作を含む。このため、使用ノズル列である第2ノズル列LN_2の領域が必要以上に払拭されないので、噴射面FNに撥液膜等の表面処理が施される場合であっても、その表面処理の劣化を低減することができる。この結果、噴射面FNに対する記録動作時に使用ノズル列から発生したミストの付着を低減することができるため、第1モードMD1での不使用ノズル列である第1ノズル列LN_1のノズルNへ噴射面FN上で液状化したミストであるインクが侵入したり、噴射面FNにおける第1ノズル列LN_1の領域に付着したインクが印刷動作中の媒体Mに付着したりすることが低減される。また、噴射面FNの全体を一度に払拭する態様に比べて、液体噴射装置100の小型化および低コスト化を図ることもできる。
【0155】
さらに、前述のように、制御部21aは、第2ノズル列LN_2から噴射されたインクのショット数に基づいて、シーケンスSQ1を開始する。このため、当該ショット数に基づいて、第1モードMD1での噴射面FNにおける不使用ノズル列である第1ノズル列LN_1の領域に付着するミストの付着量を予測し、その予測結果に基づいて、シーケンスSQ1の実行頻度を必要十分な程度に低減することができる。したがって、第1モードMD1での不使用ノズル列である第1ノズル列LN_1の領域からインクが垂れるよりも前に、第1ノズル列LN_1の領域からインクを排除することができる。ここで、前述のように、当該ショット数のカウントは、シーケンスSQ1を実行する度にリセットされる。シーケンスSQ1を初めて行う際は、プリンターとして最初に行う印刷動作からショット数のカウントを開始する。なお、当該ショット数は、使用ノズル列のすべてのショット数の合計であってもよく、その場合には、第2ノズル列LN_2だけでなく第3ノズル列LN_3も「第2ノズル列」の一例である。
【0156】
また、前述のように、噴射面FNに設けられる複数のノズル列LNは、第3ノズル列LN_3をさらに含む。第1ノズル列LN_1と第3ノズル列LN_3との間の距離は、第1ノズル列LN_1と第2ノズル列LN_2との間の距離よりも長い。第1モードMD1は、液体貯留部11が第3ノズル列LN_3に接続される場合に印刷動作PMに第3ノズル列LN_3を使用する。制御部21aは、第2ノズル列LN_2から噴射されたインクのショット数に基づいて、シーケンスSQ1を開始する。このため、当該ショット数に基づいて、第1モードMD1での噴射面FNにおける不使用ノズル列である第1ノズル列LN_1の領域近傍に付着するミストの付着量を精度よく予測し、その予測結果に基づいて、シーケンスSQ1の実行頻度を必要十分な程度に低減することができる。したがって、第1モードMD1での不使用ノズル列である第1ノズル列LN_1からインクが垂れるよりも前に、第1ノズル列LN_1からインクをより確実に排除することができる。
【0157】
ここで、液体噴射ヘッド50が不使用ノズル列のみのヘッドチップ51を含む場合、不使用ノズル列のみのヘッドチップ51に隣り合うヘッドチップ51の使用ノズル列であるノズル列LNのショット数に基づいてシーケンスSQ1が行われる。また、1つのヘッドチップ51内で使用ノズル列および不使用ノズル列が混在する場合、当該1つのヘッドチップ51の使用ノズル列のショット数と当該1つのヘッドチップ51に隣り合うヘッドチップ51の使用ノズル列のショット数とに基づいてシーケンスが行われる。
【0158】
さらに、前述のように、制御部21aは、第1モードMD1と、液体貯留部11が第1ノズル列LN_1に接続される場合に印刷動作PMに第1ノズル列Nl_1を使用する第2モードMD2と、を切り替え可能である。このため、不使用ノズル列の有無の仕様を顧客の要望に応じて変更することができる。
【0159】
また、前述のように、制御部21aは、第1モードMD1が選択されている場合にシーケンスSQ1を実行し、第2モードMD2が選択されている場合にシーケンスSQ1を実行しない。このため、第1モードMD1を選択したとしても、第1モードMD1での不使用ノズル列である第1ノズル列LN_1からのインク垂れを防止することができる。ここで、フラグFLが設定されることにより、制御部21aは、使用ノズル列からのショット数の計測、記憶、判定を行い、その判定結果に基づいて、シーケンスSQ1を開始するか否かを判断する。
【0160】
さらに、前述のように、液体噴射装置100は、液体貯留部11を装着可能な装着部12をさらに備える。制御部21aは、装着部12への液体貯留部11の装着状態に基づいて、第1モードMD1および第2モードMD2のうちのいずれかを選択する。このため、ユーザーの指示がなくても、制御部21aが当該装着状態に基づいて不使用ノズル列の有無の仕様を変更することができる。また、自動でシーケンスSQ1のフラグFLを設定することができる。なお、当該装着状態は、装着部12への液体貯留部11の装着の有無の状態ほか、装着部12に装着された液体貯留部11がダミーであるか否かの状態を含む。
【0161】
また、前述のように、液体噴射ヘッド50は、複数のヘッドチップ51を有する。複数のヘッドチップ51のそれぞれは、複数のノズル列LNが設けられたノズルプレート51cを有する。第1モードMD1では、液体噴射ヘッド50において印刷動作PMに使用されないノズル列LNである不使用ノズル列の数は、1つのノズルプレート51cに設けられたノズル列LNの数以上である。第1モードMD1において、液体噴射ヘッド50の有する複数のヘッドチップ51のうち少なくとも1つのヘッドチップ51のすべてのノズル列LNは、不使用ノズル列である。このため、1つのヘッドチップ51に不使用ノズルおよび使用ノズル列が混在しないので、ノズル列LNごとのキャップを用いる必要がなく、ヘッドチップ51ごとのキャップ62aを用いても、第1吸引クリーニングCLS_1を実行する際に使用ノズル列に対して負圧が作用しないという現象を回避することができる。なお、1つのノズルプレート51cに設けられているノズル列LNの数は、1つでもよい。
【0162】
さらに、前述のように、液体噴射ヘッド50は、液体噴射ヘッド50の外部からインクを導入するための複数の導入部53を有する。第1モードMD1を実行する場合、複数の導入部53は、第1ノズル列LN_1に連通するがインクを第1ノズル列LN_1へ供給しない「第1導入部」の一例である導入部53_1と、第2ノズル列LN_2へ液体を供給する「第2導入部」の一例である導入部53_2と、を含む。ここで、「導入部53がノズル列LNに連通する」とは、導入部53およびノズル列LNが常時に互いに連通する状態のほか、開閉可能な圧力調整弁54等の機構を介して導入部53およびノズル列LNが互いに接続されており、当該機構の動作により導入部53およびノズル列LNが所望時に互いに連通する状態を含み、接着剤で導入部53が閉塞されている状態は含まない。
【0163】
また、前述のように、液体噴射装置100は、圧力調整弁54_1をさらに備える。圧力調整弁54_1は、第1ノズル列LN_1に連通し、第1ノズル列LN_1の圧力が所定の圧力よりも小さい場合に開く。このような圧力調整弁54_1を用いる態様では、第1ノズル列LN_1が不使用ノズル列である場合、圧力調整弁54_1を強制開放しない限り、第1ノズル列LN_1に連通する流路が大気開放されない。このため、噴射面FNの領域のうち第1ノズル列LN_1の領域にインクが残存すると、当該流路の温度変化による圧力変動に伴って、第1ノズル列LN_1に侵入したインクが押し出されたりすることにより、インク垂れが生じやすい。したがって、このような態様の場合に本開示による効果が顕著となる。なお、第1ノズル列LN_1が使用ノズル列である場合、第1ノズル列LN_1のノズルNのインクのメニスカスが所望状態となるように、第1ノズル列LN_1の圧力が圧力調整弁54_1の開閉により所定範囲の負圧に維持される。
【0164】
さらに、本開示の技術は、第2ノズル列LN_2が噴射するインクが水系インクである場合に好適に用いられる。水系インクは、噴射面FNに残存すると、第1ノズル列LN_1でのインク垂れの原因となりやすい。したがって、水系インクを用いる場合に本開示による効果が顕著となる。
【0165】
また、前述のように、液体噴射装置100は、液体噴射ヘッド50を収容する筐体70をさらに備える。制御部21aは、筐体70内の温度変化に基づいて、シーケンスSQ1を実行するか否かを判断する。このため、筐体70内の温度変化に基づいて必要に応じてシーケンスSQ1が行われるので、無駄にシーケンスSQ1が行われなくて済む。
【0166】
さらに、前述のように、第1モードMD1を実行する場合、制御部21aは、第2ノズル列LN_2からインクを排出するクリーニングCL2とは異なる期間にシーケンスSQ1を実行する。
【0167】
2.変形例
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0168】
2-1.変形例1
前述の実施形態では、第1モードMD1における不使用ノズル列がヘッドチップ51_A、51_Bのノズル列LNである態様が例示されるが、不使用ノズル列の配置および数は、この態様に限定されず、任意である。また、不使用ノズル列の配置および数は、装着部12に対する液体貯留部11の装着状態に応じて変化してもよい。
【0169】
図16は、第1モードMD1における使用ノズル列および不使用ノズル列の他の例を示す図である。図16では、ヘッドチップ51_A、51_B、51_K、51_Lのノズル列LNa、LNbが第1モードMD1における不使用ノズル列である場合が例示される。すなわち、図16に示す例では、第1モードMD1において、ヘッドチップ51_A、51_B、51_K、51_Lのノズル列LNa、LNbを使用せずにヘッドチップ51_C~51_Jのノズル列LNa、LNbが印刷動作に使用される。
【0170】
ここで、ヘッドチップ51_A、51_B、51_K、51_Lのノズル列LNa、LNbが第1ノズル列LN_1であり、ヘッドチップ51_C、51_D、51_I、51_Jのノズル列LNa、LNbが第2ノズル列LN_2であり、ヘッドチップ51_E~51_Hのノズル列LNa、LNbが第3ノズル列LN_3である。
【0171】
2-2.変形例2
前述の実施形態では、温度センサー71を用いる態様が例示されるが、この態様に限定されず、温度センサー71が省略されてもよい。この場合、第1モードMD1において前述のステップS40が省略される。
【0172】
2-3.変形例3
前述の実施形態では、吸引クリーニングおよび加圧クリーニングの両方を実行可能な態様が例示されるが、この態様に限定されず、吸引クリーニングおよび加圧クリーニングのうちの一方の構成が省略されてもよい。
【0173】
2-4.変形例4
前述の実施形態では、払拭動作を実行する払拭機構63を有する態様が例示されるが、この態様に限定されず、払拭機構63が省略されてもよい。また、第1払拭動作WP_1および第2払拭動作WP_2の両方を実行する態様に限定されず、例えば、第1払拭動作WP_1が省略されてもよい。
【0174】
2-5.変形例5
前述の実施形態では、液体噴射ヘッド50からのインクのショット数に基づいてシーケンスSQ1を開始するか否かの判断を行う態様が例示されるが、この態様に限定されず、例えば、当該ショット数に関係なく、所定時間ごと、若しくは、所定枚数の媒体Mに対して印刷動作を実行する度に、シーケンスSQ1が実行されてもよい。
【0175】
2-6.変形例6
前述の実施形態では、圧力調整弁54を用いる態様が例示されるが、この態様に限定されず、圧力調整弁54が省略されてもよい。
【0176】
2-7.変形例7
前述の実施形態では、不使用ノズル列に対応する圧力調整弁54を強制的に開状態とすることにより、不使用ノズル列に連通する流路を大気開放するようにしてもよい。これにより、温度変化による当該流路の圧力の上昇が低減されるので、噴射面FNから当該不使用ノズル列内に引き込まれたインクが当該不使用ノズル列から垂れ落ちたりすることが防止される。なお、液体噴射装置100の電源がオンの状態では常に不使用ノズル列に対応する圧力調整弁54を強制的に開状態としていることが好ましいが、不使用ノズル列からインクが垂れても問題ないキャッピング中では圧力調整弁54を強制的に開状態としていなくてもよい。
【0177】
2-8.変形例8
前述の実施形態では、装着部12への液体貯留部11の装着状態に基づいて第1モードMD1および第2モードMD2のうちの一方を選択する態様が例示されるが、この態様に限定されない。例えば、液体噴射ヘッ50の有する複数のノズル列LNにおける使用ノズル列および不使用ノズル列の仕様の入力を受付可能な操作パネルまたはGUI(graphical user interface)等の入力部に対する入力結果に基づいて、第1モードMD1および第2モードMD2のうちの一方が選択されてもよい。
【0178】
2-9.変形例9
前述の実施形態で例示する液体噴射装置100は、印刷に専用される機器のほか、ファクシミリ装置やコピー機等の各種の機器に採用され得る。もっとも、本発明の液体噴射装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液または分散液を噴射する液体噴射装置は、液晶表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液または分散液を噴射する液体噴射装置は、配線基板の配線や電極を形成する製造装置として利用される。
【符号の説明】
【0179】
10…液体供給機構、11…液体貯留部、11_1~11_12…液体貯留部、12…装着部、13…加圧機構、13_1~13_12…加圧機構、14…開放機構、20…制御ユニット、21…制御回路、21a…制御部、21b…カウント部、22…記憶回路、23…電源回路、24…駆動信号生成回路、30…搬送機構、40…移動機構、41…搬送体、42…搬送ベルト、50…液体噴射ヘッド、51…ヘッドチップ、51_A…ヘッドチップ、51_B…ヘッドチップ、51_C…ヘッドチップ、51_D…ヘッドチップ、51_E…ヘッドチップ、51_F…ヘッドチップ、51_G…ヘッドチップ、51_H…ヘッドチップ、51_I…ヘッドチップ、51_J…ヘッドチップ、51_K…ヘッドチップ、51_L…ヘッドチップ、51a…流路基板、51b…圧力室基板、51c…ノズルプレート、51d…吸振体、51e…振動板、51f…駆動素子、51g…保護板、51h…ケース、51i…配線基板、52…駆動回路、53…導入部、53_1…導入部(第1導入部)、53_2…導入部(第2導入部)、53_3…導入部、53_4…導入部、53_5…導入部、53_6…導入部、53_7…導入部、53_8…導入部、53_9…導入部、53_10…導入部、53_11…導入部、53_12…導入部、54…圧力調整弁、54_1…圧力調整弁、54_2…圧力調整弁、54_3…圧力調整弁、54_4…圧力調整弁、54_5…圧力調整弁、54_6…圧力調整弁、54_7…圧力調整弁、54_8…圧力調整弁、54_9…圧力調整弁、54_10…圧力調整弁、54_11…圧力調整弁、54_12…圧力調整弁、54a…弁体、54a1…基部、54a2…封止部、54a3…弁軸、54b…弁座、54c…バネ、54d…バネ、54e…支持体、54f…可撓膜、54g…受圧板、54h…弾性部材、55…固定板、55a…開口部、56…枠体、60…メンテナンス機構、61…キャップ機構、61a…キャップ、61b…支持体、61c…移動機構、62…吸引クリーニング機構、62a…キャップ、62b…支持体、62c…移動機構、62d…減圧機構、63…払拭機構、63a…払拭部材、63a1…払拭部材、63a2…払拭部材、63a3…払拭部材、63b…支持体、63c…移動機構、70…筐体、71…温度センサー、100…液体噴射装置、C…圧力室、CL1…クリーニング、CL2…クリーニング、CLP…加圧クリーニング、CLP_1…第1加圧クリーニング、CLP_2…第2加圧クリーニング、CLS…吸引クリーニング、CLS_1…第1吸引クリーニング、CLS_2…第2吸引クリーニング、CP…キャッピング、Com…駆動信号、DA…気体流路口、DI…流入口、DO…流出口、Dc…カウント情報、Dm…検出信号、Dt…検出信号、FL…フラグ、FN…噴射面、FS…封止面、IH…導入口、Img…印刷データ、K…貫通孔、LN…ノズル列、LN_1…第1ノズル列、LN_2…第2ノズル列、LN_3…第3ノズル列、LNa…ノズル列、LNb…ノズル列、M…媒体、MD1…第1モード、MD2…第2モード、N…ノズル、Na…連通流路、Nl_1…第1ノズル列、O…軸線、PM…印刷動作、R…リザーバー、R1…空間、R2…空間、RC…大気圧室、RJ1…上流側流路、RJ2…下流側流路、RV…圧力調整室、Ra…個別流路、S1…空間、S2…空間、S2_1…第1閉空間、S2_2…第2閉空間、S10…ステップ、S20…ステップ、S30…ステップ、S40…ステップ、S50…ステップ、S60…ステップ、S61…ステップ、S62…ステップ、S63…ステップ、S64…ステップ、S65…ステップ、S66…ステップ、S70…ステップ、S80…ステップ、S90…ステップ、S100…ステップ、S110…ステップ、S120…ステップ、S130…ステップ、S140…ステップ、S150…ステップ、SI…制御信号、Sk1…制御信号、Sk2…制御信号、Sk3…制御信号、VBS…オフセット電位、VHV…電源電位、Vin…供給駆動信号、WP…払拭動作、WP_1…第1払拭動作、WP_2…第2払拭動作、dCom…波形指定信号。
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