(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109177
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】重合性化合物、酸発生剤、樹脂、及びフォトレジスト
(51)【国際特許分類】
C07C 381/12 20060101AFI20240806BHJP
C07C 309/06 20060101ALI20240806BHJP
C07C 311/02 20060101ALI20240806BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20240806BHJP
C08F 20/10 20060101ALI20240806BHJP
C08F 12/06 20060101ALI20240806BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20240806BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C07C381/12 CSP
C07C309/06
C07C311/02
C09K3/00 K
C08F20/10
C08F12/06
G03F7/004 503A
G03F7/039 601
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013823
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000106139
【氏名又は名称】サンアプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】柴垣 智幸
(72)【発明者】
【氏名】木津 智仁
【テーマコード(参考)】
2H225
4H006
4J100
【Fターム(参考)】
2H225AF24P
2H225AF39P
2H225AF43P
2H225AF44P
2H225AF75P
2H225AH17
2H225AH38
2H225AJ13
2H225AJ42
2H225AJ53
2H225AJ60
2H225AN39P
2H225CA12
2H225CB14
2H225CC03
2H225CC15
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB46
4H006AB92
4H006TN10
4H006TN30
4H006TN60
4H006TN90
4J100AB07P
4J100AL08P
4J100BA02P
4J100BA03P
4J100BA15P
4J100BA50P
4J100BA51P
4J100BB07P
4J100BB18P
4J100BC43P
4J100CA05
4J100JA38
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高感度且つ低LERのフォトレジストの原料として有用な新規の重合性化合物、前記化合物を含む光酸発生剤、前記重合性化合物の重合体である樹脂、及び前記樹脂を含むフォトレジストを提供する。
【解決手段】トリフェニルスルホニウム塩であって、トリフェニルスルホニウム骨格にハロゲン原子又はハロアルキル基が結合した構造を有することで、超短波長の光線に対して極めて優れた感応性を示し、超短波長の光線を照射すると速やかに分解して酸を発生すること、更に、エチレン性不飽和基を有する基を備えるため、エチレン性不飽和基との反応性を有する他のモノマーと共重合させることで、前記スルホニウム塩基が均一に導入された樹脂を得ることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される重合性化合物。
【化1】
[式(1)中、R
1、R
2はそれぞれ独立にハロゲン原子又はC
1-5ハロアルキル基を示す。R
3はハロゲン原子、C
1-5アルキル基、C
1-5アルコキシ基、C
1-5ハロアルキル基、又はC
1-5ハロアルコキシ基を示す。R
4は水素原子又はメチル基を示す。n1、n2はそれぞれ独立に1~5の整数を示し、n3は0~4の整数を示す。L
1は単結合又はフェニレン基を示す。L
2は単結合又は連結基を示し、前記連結基は、置換基を有していても良いC
1-5アルキレン基、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、及びこれらの2個以上が連結してなる2価の基から選択される基である。L
3はエーテル結合又はチオエーテル結合を示す。X
-は1価の対アニオンを示す]
【請求項2】
前記R1、R2で表される基の、ベンゼン環への結合位置が、硫黄原子が結合する位置に対してメタ位又はオルト位である請求項1に記載の重合性化合物。
【請求項3】
前記1価の対アニオンが、スルホン酸アニオン、スルホニルイミドアニオン、又はハロゲンイオンである請求項1に記載の重合性化合物。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の重合性化合物を含む酸発生剤。
【請求項5】
極端紫外線用酸発生剤又は電子線用酸発生剤である、請求項4に記載の酸発生剤。
【請求項6】
請求項1~3の何れか1項に記載の重合性化合物由来の構成単位を備える樹脂。
【請求項7】
請求項1~3の何れか1項に記載の重合性化合物由来の構成単位を備える樹脂を含むフォトレジスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸発生能を有する新規の重合性化合物、前記重合性化合物を含む酸発生剤、前記重合性化合物の重合体である樹脂、前記樹脂を含むフォトレジストに関する。
【背景技術】
【0002】
化学増幅型フォトレジストとして、特許文献1には、酸発生剤としてのトリフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネートと樹脂とを含むポジ型レジストが開示されている。そして、前記レジストは、KrFエキシマレーザー光を照射すると、微細パターンを精度良く形成できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電子デバイスの更なる小型化・高容量化・高性能化に対応するため、パターンの一層の微細化が求められているが、これは、フォトリソグラフィーに使用する光線を短波長化することにより実現可能である。
【0005】
そして、前記光線として、極端紫外線(EUV;波長13.5nm)等の超短波長の光線を使用することが検討されている。しかし、トリフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネートは、超短波長の光線に対して感度が低いことが問題であった。
【0006】
また、パターンを微細化すると線幅が小さくなるため、LERの影響が大きくなる。そのため、低LER化することが求められる。そして、低LER化するためには、樹脂中に酸発生剤を均一に分散させることが必要である。しかし、酸発生剤は溶剤溶解性が低いため、樹脂中に均一に分散させることは困難であった。
【0007】
従って、本発明の目的は、超短波長の光線に高感度且つ低LERのフォトレジストの原料として有用な新規の重合性化合物を提供することにある。
本発明の他の目的は、超短波長の光線に高感度且つ低LERのフォトレジストの原料として有用な新規の酸発生剤を提供することにある。
本発明の他の目的は、超短波長の光線に高感度且つ低LERのフォトレジストの原料として有用な新規の樹脂を提供することにある。
本発明の他の目的は、超短波長の光線に高感度且つ低LERのフォトレジストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、下記式(1)で表される重合性化合物は、アリールスルホニウム骨格にハロゲン原子又はハロアルキル基が結合した構造(下記式(1)で表される重合性化合物のうち、[-L3-L2-CO-L1-CR4=CH2]で示される基以外の部分であり、以後、「スルホニウム塩基」と称する場合がある)を有することで、超短波長の光線に対して極めて優れた感応性を示し、超短波長の光線を照射すると速やかに分解して酸を発生すること、更に、エチレン性不飽和基を有する基を備えるため、エチレン性不飽和基との反応性を有する他のモノマーと共重合させることで、前記スルホニウム塩基が均一に導入された樹脂を得ることができ、このようにして得られた樹脂をフォトレジストに使用すれば、超短波長の光線に対する感度の向上と、低LERを実現できることを見いだした。本発明はこの知見に基づいて完成させたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、下記式(1)で表される重合性化合物を提供する。
【化1】
[式(1)中、R
1、R
2はそれぞれ独立にハロゲン原子又はC
1-5ハロアルキル基を示す。R
3はハロゲン原子、C
1-5アルキル基、C
1-5アルコキシ基、C
1-5ハロアルキル基、又はC
1-5ハロアルコキシ基を示す。R
4は水素原子又はメチル基を示す。n1、n2はそれぞれ独立に1~5の整数を示し、n3は0~4の整数を示す。L
1は単結合又はフェニレン基を示す。L
2は単結合又は連結基を示し、前記連結基は、置換基を有していても良いC
1-5アルキレン基、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、及びこれらの2個以上が連結してなる2価の基から選択される基である。L
3はエーテル結合又はチオエーテル結合を示す。X
-は1価の対アニオンを示す]
【0010】
本発明は、また、前記R1、R2で表される基の、ベンゼン環への結合位置が、硫黄原子が結合する位置に対してメタ位又はオルト位である前記重合性化合物を提供する。
【0011】
本発明は、また、前記1価の対アニオンが、スルホン酸アニオン、スルホニルイミドアニオン、又はハロゲンイオンである前記重合性化合物を提供する。
【0012】
本発明は、また、前記重合性化合物を含む酸発生剤を提供する。
【0013】
本発明は、また、極端紫外線用酸発生剤又は電子線用酸発生剤である前記酸発生剤を提供する。
【0014】
本発明は、また、前記重合性化合物由来の構成単位を備える樹脂を提供する。
【0015】
本発明は、また、前記重合性化合物由来の構成単位を備える樹脂を含むフォトレジストを提供する。
【発明の効果】
【0016】
上記式(1)で表される重合性化合物(以後、「重合性化合物(1)」と称する場合がある)は、波長20nm以下の光線に対して優れた感応性を有し、前記波長の光を照射すると、容易に分解して酸(H+X-:X-は式(1)中のX-に由来する)を発生することができる。
また、前記重合性化合物(1)は、エチレン性不飽和基との反応性を有する他のモノマーと共重合させることで、重合性化合物(1)由来の構成単位を含む樹脂であって、スルホニウム塩基が均一に導入された樹脂を形成することができる。
このようにして得られた樹脂は、波長20nm以下の光線に対して高感度を示し、前記樹脂を含むフォトレジストに、波長20nm以下の光線を使用したフォトリソグラフィー処理を施せば、低LERのパターンを形成することができる。
以上より、前記重合性化合物(1)を使用すれば、電子デバイスの更なる大容量化、更なる小型化を実現することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[重合性化合物(1)]
本発明の重合性化合物(1)は、下記式(1)で表される化合物であり、トリアリールスルホニウム骨格を有するカチオンと対アニオンの塩である。
【化2】
【0018】
式(1)中、R1、R2はそれぞれ独立にハロゲン原子又はC1-5ハロアルキル基を示す。R3はハロゲン原子、C1-5アルキル基、C1-5アルコキシ基、C1-5ハロアルキル基、又はC1-5ハロアルコキシ基を示す。R4は水素原子又はメチル基を示す。n1、n2はそれぞれ独立に1~5の整数を示し、n3は0~4の整数を示す。L1は単結合又はフェニレン基を示す。L2は、単結合又は連結基を示し、前記連結基は、置換基を有していても良いC1-5アルキレン基、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、及びこれらの2個以上が連結してなる2価の基から選択される基である。L3はエーテル結合又はチオエーテル結合を示す。X-は1価の対アニオンを示す。
【0019】
前記C1-5アルキル基は炭素数1~5のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。また、前記アルキル基の炭素数は、好ましくは1~3個、特に好ましくは1個又は2個である。
【0020】
前記C1-5ハロアルキル基は炭素数1~5のハロゲン化アルキル基であり、C1-5アルキル基が有する水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子で置換された基である。中でも前記アルキル基が有する水素原子の全てがハロゲン原子で置換された基(すなわち、パーハロアルキル基)が好ましい。また、前記ハロアルキル基の炭素数は、好ましくは1~3個、特に好ましくは1個又は2個である。
【0021】
従って、前記C1-5ハロアルキル基は、好ましくはC1-3ハロアルキル基、特に好ましくはC1-2ハロアルキル基である。
【0022】
前記C1-5ハロアルキル基は、好ましくはC1-3パーハロアルキル基、特に好ましくはC1-2パーハロアルキル基である。
【0023】
前記C1-5アルコキシ基は炭素数1~5のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、t-ブトキシ基等が挙げられる。また、前記アルキル基の炭素数は、好ましくは1~3個、特に好ましくは1個又は2個である。前記C1-5アルコキシ基の炭素数は、好ましくは1~3個、特に好ましくは1個又は2個である。
【0024】
前記C1-5ハロアルコキシ基は炭素数1~5のハロゲン化アルコキシ基であり、C1-5アルコキシ基が有する水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子で置換された基である。中でも前記アルコキシ基が有する水素原子の全てがハロゲン原子で置換された基が好ましい。また、前記ハロアルコキシ基の炭素数は、好ましくは1~3個、特に好ましくは1個又は2個である。
【0025】
従って、前記C1-5ハロアルコキシ基は、好ましくはC1-3ハロアルコキシ基、特に好ましくはC1-2ハロアルコキシ基である。
【0026】
前記C1-5ハロアルキル基は、好ましくはC1-3パーハロアルコキシ基、特に好ましくはC1-2パーハロアルコキシ基である。
【0027】
前記ハロゲン原子、前記C1-5ハロアルキル基、及び前記C1-5ハロアルコキシ基のハロゲン原子としては、フッ素原子又はヨウ素原子が好ましく、特にフッ素原子が好ましい。
【0028】
前記L2は単結合又は連結基を示す。そして、前記連結基は、置換基を有していても良いC1-5アルキレン基、エーテル結合(-O-)、チオエーテル結合(-S-)、エステル結合(-COO-)、チオエステル結合(-COS-)、及びこれらの2個以上が連結してなる2価の基から選択される基である。
【0029】
前記C1-5アルキレン基は炭素数1~5のアルキレン基であり、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。また、前記アルキレン基の炭素数は、好ましくは1~3個である。
【0030】
前記2個以上が連結してなる2価の基としては、例えば、-O-C1-5アルキレン-O-;-S-C1-5アルキレン-S-;-S-C1-5アルキレン-O-;-C1-5アルキレン-COO-;-C1-5アルキレン-COS-;-C1-5アルキレン-COO-C1-5アルキレン-;-C1-5アルキレン-COS-C1-5アルキレン-;-OO-;-SS-等が挙げられる。
【0031】
前記アルキレン基が有していても良い置換基としては、例えば、水酸基、-ORa基、-SRa基、-CORa基等が挙げられる。前記RaはC1-5アルキル基を示す。
【0032】
前記L
2としては、超短波長の交戦に対する感度を向上する観点から、単結合が好ましい。従って、前記重合性化合物(1)としては、下記式(1’)で表される化合物(=重合性化合物(1’))が好ましい。下記式(1’)中のR
1~R
4、n1~n3、L
1、L
3、X
-は前記に同じである。
【化3】
【0033】
上記式中、[-L3-L2-CO-L1-CR4=CH2]で示される基(好ましくは、[-L3-CO-L1-CR4=CH2]で示される基)の、ベンゼン環への結合位置としては、上記式中に示される硫黄原子が結合する位置に対してパラ位が好ましい。
【0034】
式(1)又は(1’)中に示されるベンゼン環には、R1、R2、R3、及び[-L3-L2-CO-L1-CR4=CH2]で示される基(又は、[-L3-CO-L1-CR4=CH2]で示される基)で表される基以外にも、他の置換基が結合していても良い。他の置換基としては、例えば、R基、-OR基、-SR基、-COR基、シリル基等が挙げられる。前記Rは炭化水素基(例えば、C1-5アルキル基、C2-5アルケニル基、C3-10シクロアルキル基、C6-10アリール基等)を示す。前記シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基等のトリ(C1-5アルキル)シリル基が挙げられる。
【0035】
式(1)中に示されるベンゼン環の2つにそれぞれ他の置換基が結合している場合、これらの置換基は互いに連結して、隣接する炭素原子やS
+と共に環を形成していても良い。すなわち、重合性化合物(1)は、下記式(1-1)で表される重合性化合物であっても良い。
【化4】
【0036】
式(1-1)中のR1~R4、n1~n3、L1、L2、L3、X-は前記に同じである。L’は単結合、C1-3アルキレン基、-O-、-S-、-SO-、-SO2-、-CO-、-NH-、又はこれらの2個以上が連結した基を示す。
【0037】
更にまた、式(1)又は(1’)中に示されるベンゼン環には、芳香族性若しくは非芳香属性の炭化水素環又は複素環が縮合していてもよい。更に、式(1)又は(1’)中に示されるベンゼン環の1つに2個以上の他の置換基が結合している場合、これらの置換基は互いに連結して、隣接する炭素原子と共に環を形成していても良い。
【0038】
従って、前記重合性化合物(1)は、例えば、下記式(1-2)で表される重合性化合物や、下記式(1-3)で表される重合性化合物であっても良い。下記式(1-2)、(1-3)中のR
1~R
4、n1~n3、L
1、L
2、L
3、X
-は前記に同じである。
【化5】
【0039】
前記重合性化合物(1)としては、超短波長の光線に対する感度に優れる点から、上記式(1)で表される化合物であって、式(1)中に示されるベンゼン環には、R1、R2、又はR3で表される基以外に置換基を有さない化合物が好ましい。
【0040】
前記n1、n2はそれぞれ独立に1~5の整数を示し、超短波長の光線に対する感度を向上する効果が得られる点において、1又は2が好ましい。
【0041】
上記式中、R1、R2で表される基の、ベンゼン環への結合位置には特に制限が無いが、超短波長の光線に対する感度を向上する効果が得られる点において、上記式中に示される硫黄原子が結合する位置に対してメタ位又はオルト位が好ましい。また、R1、R2で表される基の数(n1、n2)が1である場合には、上記式中に示される硫黄原子が結合する位置に対してメタ位又はオルト位に結合することが好ましく、メタ位が特に好ましい。R1、R2で表される基の数(n1、n2)が2である場合には、上記式中に示される硫黄原子が結合する位置に対してメタ位に結合することが好ましい。
【0042】
前記n3は0~4の整数を示し、超短波長の光線に対する感度を向上する効果が得られる点において0~2の整数が好ましく、特に0又は2が好ましい。
【0043】
上記式中、R3で表される基の、ベンゼン環への結合位置には特に制限が無いが、上記式中に示される硫黄原子が結合する位置に対してメタ位が好ましい。
【0044】
上記式中、X-は1価の対アニオンを示し、例えば、ハロゲンイオン、ハロゲンオキソ酸アニオン、ホウ素アニオン、リン酸アニオン、硫酸アニオン、スルホン酸アニオン、スルホニルイミドアニオン、カルボン酸アニオン、ガリウム酸アニオン、メチドアニオン、アンチモンアニオン、OH-、SCN-、NO2
-、NO3
-等が挙げられる。
【0045】
前記ハロゲンイオンとしては、例えば、Cl-、Br-、I-等が挙げられる。
【0046】
前記ハロゲンオキソ酸アニオンとしては、例えば、ClO4
-、IO3
-、BrO3
-等が挙げられる。
【0047】
前記ホウ素アニオンとしては、例えば、BF4
-などの無機ホウ素アニオンや、(C6F5)4B-、((CF3)2C6H3)4B-、テトラフェニルボレート、テトラキス(モノフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート等の有機ホウ素アニオンが挙げられる。
【0048】
前記リン酸アニオンとしては、例えば、PF6
-、PF(C2F5)5
-、PF2(C2F5)4
-、PF3(C2F5)3
-、PF4(C2F5)2
-、PF5(C2F5)-、PO4
3-等の無機リン酸アニオン等が挙げられる。
【0049】
前記スルホン酸アニオンは、例えば、下記式(s1)で表される。
Rs1-SO3
- (s1)
(式中、Rs1は有機基を示す)
【0050】
Rs1における有機基としては、例えば、置換基を有していても良いC1-30炭化水素基、置換基を有していても良い複素環式基、及び前記基の2個以上が、単結合又は、-O-、-CO2-、-S-、-SO3-、及び-SO2N(Rs2)-から選択される連結基で連結された基が挙げられる。また、前記基は、後述の酸反応性化合物(或いは、後述の酸反応性化合物を構成するモノマー)に結合していても良い。すなわち、前記重合性化合物(1)を構成するアニオン部は、その構造内に、後述の酸反応性化合物(或いは、酸反応性化合物を構成するモノマー)を含んでいても良い。
【0051】
前記Rs2は水素原子又はアルキル基(例えば、C1-30アルキル基)を示す。
【0052】
前記置換基としては、例えば、フッ素原子等のハロゲン原子が挙げられる。
【0053】
前記C1-30炭化水素基には、C1-30脂肪族炭化水素基、C3-30脂環式炭化水素基、C6-30芳香族炭化水素基、及びこれらの2個が結合した基が含まれる。
【0054】
前記C1-30炭化水素基としては、C1-30アルキル基、C6-15アリール基、C6-15シクロアルキレン基、C6-15橋かけ環式炭化水素基、及びこれらの2個が結合した基が好ましい。
【0055】
前記複素環式基は複素環の構造式から1個の水素原子を除いた基である。前記複素環には、芳香族性複素環及び非芳香族性複素環が含まれる。このような複素環としては、環を構成する原子に炭素原子と少なくとも1種のヘテロ原子(例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等)を有する3~10員環(好ましくは4~6員環)、及びこれらの縮合環を挙げることができる。
【0056】
前記スルホン酸アニオンの具体例としては、CH3SO3
-(MsO-)、C4H9SO3
-、CF3SO3
-(TfO-)、C2F5C4H4SO3
-、C4F9SO3
-、ベンゼンスルホン酸アニオン、p-トルエンスルホン酸アニオン、カンファースルホン酸アニオンが挙げられる。
【0057】
前記スルホニルイミドアニオンは、例えば、下記式(n1)で表される。
(Rn1SO2)2N- (n1)
(式中、2個のRn1は同一又は異なって、有機基を示す)
【0058】
Rn1における有機基としては、Rs1における有機基と同様の例が挙げられる。
【0059】
前記スルホニルイミドアニオンの具体例としては、(FSO2)2N-、(CF3SO2)2N-、(C4F9SO2)2N-、(C2F5SO2)2N-等が挙げられる。
【0060】
前記カルボン酸アニオンは、例えば、下記式(c1)で表される。
Rc1-COO- (c1)
(式中、Rc1は有機基を示す)
【0061】
Rc1における有機基としては、Rs1における有機基と同様の例が挙げられる。
【0062】
前記カルボン酸アニオンの具体例としては、CF3CO2
-、CH3CO2
-、C2H5CO2
-、PhCO2
-等が挙げられる。
【0063】
前記ガリウム酸アニオンは、例えば、下記式(g1)で表される。
(Rg1)t(F)4-tGa- (g1)
(式中、Rg1はフルオロアルキル基、又はフルオロアリール基、又はフルオロアルキル置換アリール基を示し、tは1~4の整数を示す)
【0064】
Rg1におけるフルオロアルキル基は、アルキル基に結合する水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換された基であり、なかでもパーフルオロアルキル基が好ましく、パーフルオロC1-5アルキル基が特に好ましく、パーフルオロC1-3アルキル基が最も好ましい。
【0065】
Rg1におけるフルオロアリール基は、アリール基に結合する水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換された基である。前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6~14のアリール基が好ましく、特にフェニル基が好ましい。
【0066】
Rg1におけるフルオロアリール基としては、なかでもパーフルオロアリール基が好ましく、パーフルオロC6-14アリール基が特に好ましく、パーフルオロフェニル基が最も好ましい。
【0067】
Rg1におけるフルオロアルキル置換アリール基は、アルキル基に結合する水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換された基を置換基として備えるアリール基である。
【0068】
Rg1におけるフルオロアルキル置換アリール基としては、なかでもパーフルオロアルキル置換アリール基が好ましく、パーフルオロC1-5アルキル置換アリール基がより好ましく、パーフルオロC1-3アルキル置換C6-14フェニル基が特に好ましい。
【0069】
また、Rg1におけるフルオロアルキル置換アリール基が有するフルオロアルキル基の数は、例えば1~5個、好ましくは1~3個、特に好ましくは1個又は2個である。
【0070】
式(g1)中、tは1~4の整数を示し、好ましくは2~4の整数、特に好ましくは3又は4、最も好ましくは4である。
【0071】
前記ガリウム酸アニオンとしては、例えば、テトラフルオロガリウム酸アニオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガリウム酸アニオン;テトラキス(4-フルオロフェニル)ガリウム酸アニオン等のテトラキス[フルオロフェニル]ガリウム酸アニオン;テトラキス(3,5-ジフルオロフェニル)ガリウム酸アニオン等のテトラキス[ジフルオロフェニル]ガリウム酸アニオン;トリス(ペンタフルオロフェニル)フルオロガリウム酸アニオン、ビス(ペンタフルオロフェニル)ジフルオロガリウム酸アニオン、(ペンタフルオロフェニル)トリフルオロガリウム酸アニオン;テトラキス[4-(トリフルオロメチル)フェニル]ガリウム酸アニオン等のテトラキス[(C1-5ハロアルキル)フェニル]ガリウム酸アニオン;テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ガリウム酸アニオン等のテトラキス[ビス(C1-5ハロアルキル)フェニル]ガリウム酸アニオン;トリス[4-(トリフルオロメチル)フェニル]フルオロガリウム酸アニオン等のトリス[(C1-5ハロアルキル)フェニル]フルオロガリウム酸アニオン等;トリス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]フルオロガリウム酸アニオン等のトリス[ビス(C1-5ハロアルキル)フェニル]フルオロガリウム酸アニオン等;ビス[4-(トリフルオロメチル)フェニル]ジフルオロガリウム酸アニオン等のビス[(C1-5ハロアルキル)フェニル]ジフルオロガリウム酸アニオン;ビス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ジフルオロガリウム酸アニオン等のビス[ビス(C1-5ハロアルキル)フェニル]ジフルオロジフルオロガリウム酸アニオン;[4-(トリフルオロメチル)フェニル]トリフルオロガリウム酸アニオン等の[(C1-5ハロアルキル)フェニル]トリフルオロガリウム酸アニオン;[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]トリフルオロガリウム酸アニオン等の[ビス(C1-5ハロアルキル)フェニル]トリフルオロガリウム酸アニオン等が挙げられる。
【0072】
前記メチドアニオンとしては、例えば、下記式(m1)で表されるスルホニルメチドアニオンが挙げられる。
(Rm1SO2)3C- (m1)
(式中、3個のRm1は同一又は異なって、有機基を示す)
【0073】
Rm1における有機基としては、Rs1における有機基と同様の例が挙げられる。
【0074】
前記メチドアニオンの具体例としては、例えば、(CF3SO2)3C-等が挙げられる。
【0075】
前記アンチモンアニオンとしては、例えば、SbF6
-等が挙げられる。
【0076】
前記1価の対アニオンには、上記以外にも、例えば、特開2013-47211、特開2021-81708、特開2013-80245、特開2013-80240、及び特開2013-33161に記載のアニオンが含まれる。
【0077】
前記対アニオンとしては、超短波長の光線に対する感度が向上し、且つ溶剤溶解性に優れる点において、スルホン酸アニオン、スルホニルイミドアニオン、又はハロゲンイオンが好ましい。
【0078】
(感光性)
前記重合性化合物(1)は、EUV(極紫外線)、EB(電子線)、X線などの波長20nm以下の光線に対して高い感光性を有する。そして、光増感剤を使用せずとも、前記波長の光線を照射するだけで、光エネルギーがダイレクトに重合性化合物(1)に伝播して光分解が速やかに進行し、酸(H+X-)を発生する。
【0079】
前記重合性化合物(1)は上記特性を有するため、酸発生剤(例えば、光酸発生剤)として好適に使用することができる。
【0080】
(重合性化合物(1)の製造方法)
重合性化合物(1)は、例えば下記工程[I][II][III]を経て製造することができる。下記式中、R1、R2、R3、R4、n1、n2、n3、L1、L2、L3、X-は前記に同じである。
【0081】
【0082】
【0083】
(工程I)
工程Iは、式(11)で表される化合物(=化合物(11))と式(12)で表される化合物(=化合物(12))とを反応させて、式(13)で表される化合物(=化合物(13))を得る工程である。
【0084】
前記反応に付する化合物(11)と化合物(12)のモル比(化合物(11)/化合物(12))は、例えば1/50~3/1、好ましくは1/10~2/1である。
【0085】
前記反応は脱水剤(HX1)の存在下で行うことが好ましい。脱水剤(HX1)としては、例えば、濃硫酸、無水リン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸あるいはその無水物等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0086】
(工程II)
工程IIは、工程Iを経て得られた化合物(13)にM1X(Xは1価の対アニオンを示し、M1はアルカリ金属を示す)を反応させて、式(14)で表される化合物(=化合物(14))を得る工程である。
【0087】
前記反応に付する化合物(13)とM1Xのモル比(化合物(13)/M1X)は、例えば1/3~3/1、好ましくは1/2~2/1である。
【0088】
(工程III)
工程IIIは、工程IIを経て得られた化合物(14)に式(15)で表される化合物(=化合物(15))を反応させて、重合性化合物(1)を得る工程である。
【0089】
式(15)中のX2はハロゲン原子を示す。
【0090】
前記反応に付する化合物(14)と化合物(15)のモル比(化合物(14)/化合物(15))は、例えば1/3~3/1、好ましくは1/2~2/1である。
【0091】
前記反応は、溶剤の存在下で行うことができる。前記溶剤としては、例えば、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタンなどのハロアルカン等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0092】
各工程の反応の雰囲気としては反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の何れであってもよい。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式等の何れの方法でも行うことができる。
【0093】
また、各工程の反応終了後は、得られた反応生成物を、一般的な分離精製処理(例えば、沈殿、洗浄、濾過等)に付しても良い。
【0094】
[酸発生剤]
本発明の酸発生剤は、前記重合性化合物(1)を少なくとも含有する。前記酸発生剤は、前記重合性化合物(1)の1種を単独で含有していても良いし、2種以上を組み合わせて含有していても良い。また、前記酸発生剤は、前記重合性化合物(1)以外の成分を含有していても良いが、前記酸発生剤に含まれる、光照射により分解して酸を発生する全ての化合物(100重量%)に対して、前記重合性化合物(1)の占める割合は、例えば50重量%以上であることが好ましく、より好ましくは60重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上、とりわけ好ましくは95重量%以上である。すなわち、前記酸発生剤は、前記重合性化合物(1)以外にも光照射により分解して酸を発生する化合物(=他の化合物)を含んでいても良いが、他の化合物の含有量は、前記酸発生剤に含まれる、光照射により分解して酸を発生する化合物全量(100重量%)に対して、例えば50重量%以下であることが好ましく、より好ましくは40重量%以下、更に好ましくは30重量%以下、特に好ましくは20重量%以下、最も好ましくは10重量%以下、とりわけ好ましくは5重量%以下である。
【0095】
前記酸発生剤は、長波長側の光線はもちろん、超短波長(例えば、波長20nm以下)の光線に対しても感応性に優れ、前記光線を照射すると、容易に分解して酸(H+X-)を発生する。
【0096】
前記酸発生剤は、エチレン性不飽和基との反応性を有する他のモノマーと共重合させることで、重合性化合物(1)由来の構成単位を含む(より詳細には、重合性化合物(1)由来の構成単位を均一に含む)樹脂が得られる。
【0097】
前記酸発生剤は前記特性を有するため、光酸発生剤(特に、極端紫外線用酸発生剤、電子線用酸発生剤)として好適に使用することができる。また、フォトレジスト用酸発生剤[特に、超短波長(例えば、波長20nm以下)の光線を利用したフォトリソグラフィーに使用するフォトレジスト用酸発生剤]として好適に使用することができる。
【0098】
[樹脂]
本発明の樹脂は、上述の重合性化合物(1)由来の構成単位を備える樹脂(以後、「樹脂(1)」と称する場合がある)である。
【0099】
前記樹脂(1)は、すなわち、下記式(p1)で表される構成単位を備える樹脂である。
【化8】
【0100】
式(p1)中、R1、R2、R3、R4、n1、n2、n3、L1、L2、L3、X-は、それぞれ重合性化合物(1)のR1、R2、R3、R4、n1、n2、n3、L1、L2、L3、X-に対応する。
【0101】
前記樹脂(1)は、好ましくは、重合性化合物(1’)由来の構成単位を備える樹脂(以後、「樹脂(1’)」と称する場合がある)であって、下記式(p1’)で表される構成単位を備える樹脂である。
【化9】
【0102】
式(p1’)中、R1、R2、R3、R4、n1、n2、n3、L1、L3、X-は、それぞれ重合性化合物(1’)のR1、R2、R3、R4、n1、n2、n3、L1、L3、X-に対応する。
【0103】
式中、n4は角括弧内に示される繰り返し単位の繰り返しの数であり、例えば1以上の整数を示す。n4は好ましくは1~100の整数である。
【0104】
前記樹脂(1)は、重合性化合物(1)由来の構成単位以外にも他の構成単位を含んでいてもよく、例えば、重合性化合物(1)以外のモノマーであって、重合性化合物(1)と共重合する他のモノマー(以後、「他のモノマー」と称する場合がある)由来の構成単位を含んでいても良い。
【0105】
前記樹脂(1)が重合性化合物(1)由来の構成単位と他のモノマー由来の構成単位を含む樹脂である場合、前記樹脂はブロック共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体の何れであってもよいが、低LER性を向上する観点から、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0106】
他のモノマーは、エチレン性不飽和基との反応性基を有するモノマーである。エチレン性不飽和基との反応性基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、ビニル基、アリル基等が挙げられる。他のモノマーは、エチレン性不飽和基との反応性基以外にも他の官能基を備えていても良く、樹脂(1)の用途に応じた性能を発揮する官能基を備えることが好ましい。
【0107】
例えば、ネガ型フォトレジストに使用する場合には、重合性化合物(1)由来の構成単位と共に、アルカリ現像液に易溶解性を示す基を備えたモノマー由来の構成単位を備える樹脂(1-1)が好ましい。
【0108】
前記アルカリ現像液に易溶解性を示す基を備えたモノマーとしては、例えば、エチレン性不飽和基との反応性基と、フェノール性水酸基、カルボキシル基、及びスルホン酸基から選択される酸性官能基を含有するモノマー(例えば、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシフェニル、ヒドロキシスチレン等のフェノール性水酸基含有モノマー;(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルナフタレン等のスルホン酸基含有モノマーなど)等が挙げられる。
【0109】
例えば、ポジ型フォトレジストに使用する場合には、重合性化合物(1)由来の構成単位と共に、アルカリ現像液に難溶解性を示す基であって、酸によって、アルカリ現像液に易溶解性を示す基に変化する基を備えたモノマー由来の構成単位を備える樹脂(1-2)が好ましい。
【0110】
前記アルカリ現像液に難溶解性を示す基であって、酸によって、アルカリ現像液に易溶解性を示す基に変化する基を備えたモノマーとしては、例えば、エチレン性不飽和基との反応性基と、酸解離性を示す保護基を有する酸性官能基(例えば、フェノール性水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基)を有するモノマー等が挙げられる。また、前記酸解離性を示す保護基としては、例えば、メトキシメチル基、ベンジル基、tert-ブトキシカルボニルメチル基等の1-置換メチル基;1-メトキシエチル基、1-エトキシエチル基等の1-置換エチル基;tert-ブチル基等の1-分岐アルキル基;トリメチルシリル基等のシリル基;トリメチルゲルミル基等のゲルミル基;tert-ブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;アシル基;テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、テトラヒドロチオフラニル基等の複素環式基等が挙げられる。
【0111】
また、前記樹脂(1-1)(1-2)は、更に、疎水基含有ビニルモノマー由来の構成単位を備えていても良い。本構成単位を備えることで、半導体基板に対する密着性を向上する効果が得られる。
【0112】
疎水基含有ビニルモノマーとしては、C1-20アルキル(メタ)アクリレート、脂環基含有(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;スチレン骨格を有する炭化水素モノマーやビニルナフタレン等の芳香族炭化水素モノマー等が挙げられる。
【0113】
前記樹脂を構成する全構成単位において、重合性化合物(1)由来の構成単位の占める割合は、例えば1~30重量%であり、超短波長の光線に対する感度向上、及びLER低減の観点から、好ましくは2~25重量%、特に好ましくは3~20重量%である。
【0114】
前記樹脂全量において、スルホニウム塩基の含有量は、例えば0.1~30重量%であり、超短波長の光線に対する感度向上、及びLER低減の観点から、好ましくは0.5~20重量%、特に好ましくは1~15重量%、最も好ましくは5~15重量%、とりわけ好ましくは8~12重量%である。スルホニウム塩基の含有量は、19F-NMRから算出できる。
【0115】
前記樹脂のGPCで測定したポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、例えば1000~300000、好ましくは2000~200000である。
【0116】
前記樹脂は、例えば、熱ラジカル重合開始剤(例えば、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル等)の存在下において、重合性化合物(1)と他のモノマーと混合し、反応させることにより調製することができる。前記反応は、溶剤(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン)の存在下で行うことができる。
【0117】
使用する全モノマー(すなわち、重合性化合物(1)と他のモノマーとの合計)における重合性化合物(1)の割合は、例えば0.1~10重量%、好ましくは0.2~5重量%である。
【0118】
前記樹脂は、重合性化合物(1)由来の構成単位が導入されてなり、スルホニウム塩基が樹脂中に均一に分散した構成を有する。そのため、前記樹脂を使用すれば、高感度且つ低LERを実現可能なフォトレジストを製造することができる。
【0119】
[フォトレジスト]
本発明のフォトレジストは、上述の重合性化合物(1)由来の構成単位を備える樹脂(=樹脂(1))を含む。前記フォトレジストは、その他、用途に応じて他の成分を含有することができる。
【0120】
例えば前記フォトレジストがネガ型フォトレジストである場合には、樹脂(1)として樹脂(1-1)を含有し、更に架橋剤を含有することが好ましい。
【0121】
前記架橋剤は、例えば、光照射により、樹脂(1)が備えるスルホニウム塩基から発生した酸により、樹脂(1)を架橋し得る化合物であり、例えば、ビスフェノールA系エポキシ化合物、ビスフェノールF系エポキシ化合物、ビスフェノールS系エポキシ化合物、ノボラック樹脂系エポキシ化合物、レゾール樹脂系エポキシ化合物、ポリ(ヒドロキシスチレン)系エポキシ化合物、オキセタン化合物、メチロール基含有メラミン化合物、メチロール基含有ベンゾグアナミン化合物、メチロール基含有尿素化合物、メチロール基含有フェノール化合物、アルコキシアルキル基含有メラミン化合物、アルコキシアルキル基含有ベンゾグアナミン化合物、アルコキシアルキル基含有尿素化合物、アルコキシアルキル基含有フェノール化合物、カルボキシメチル基含有メラミン樹脂、カルボキシメチル基含有ベンゾグアナミン樹脂、カルボキシメチル基含有尿素樹脂、カルボキシメチル基含有フェノール樹脂、カルボキシメチル基含有メラミン化合物、カルボキシメチル基含有ベンゾグアナミン化合物、カルボキシメチル基含有尿素化合物及びカルボキシメチル基含有フェノール化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0122】
架橋剤の含有量は、樹脂(1)中の全酸性官能基に対して、例えば10~40モル%である。
【0123】
また、樹脂(1-1)以外にも、スルホニウム塩基を有さない樹脂(=他の樹脂)を含有することができる。他の樹脂としては、アルカリ可溶性樹脂であって、架橋剤と反応してアルカリ現像液に難溶化或いは不溶化する樹脂であり、例えば、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ヒドロキシスチレンの共重合体、ヒドロキシスチレンとスチレンの共重合体、ヒドロキシスチレン、スチレン及び(メタ)アクリル酸誘導体の共重合体、フェノール-キシリレングリコール縮合樹脂、クレゾール-キシリレングリコール縮合樹脂、フェノール性水酸基を含有するポリイミド、フェノール性水酸基を含有するポリアミック酸、フェノール-ジシクロペンタジエン縮合樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0124】
他の樹脂の、GPCで測定したポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、例えば2000~20000である。
【0125】
その他、例えば、有機溶剤、顔料、染料、光増感剤、分散剤、界面活性剤、充填剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、表面改質剤、可塑剤、乾燥促進剤等を含有することもできる。
【0126】
前記有機溶剤としては、前記樹脂(1-1)を溶解させることができ、フォトレジストに良好な塗布性を付与することができる溶剤であれば良いが、なかでも、沸点が200℃以下のものを使用することが、フォトレジストを塗布後、容易に乾燥させることができる点で好ましい。このような有機溶剤としては、トルエン等の芳香族炭化水素;エタノール、メタノール等のアルコール;シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル等のエステル;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等のグリコールモノエーテルモノエステルなどが好ましい。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0127】
前記有機溶剤としては、なかでも、ケトン、エステル(特に、鎖状エステル)、及びグリコールモノエーテルモノエステルから選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0128】
例えば前記フォトレジストがポジ型フォトレジストである場合には、樹脂(1)として樹脂(1-2)を含有し、更に、スルホニウム塩基を有さない保護基導入樹脂を含有することができる。このような保護基導入樹脂としては、アルカリ可溶性樹脂中の酸性官能基に酸解離性を示す保護基が導入されてなる樹脂が挙げられる。
【0129】
保護基導入樹脂における酸解離性を示す保護基の導入率{保護基導入樹脂中の保護されていない酸性官能基と保護されている酸性官能基との合計に対する保護されている酸性官能基の割合}は、例えば10%以上、好ましくは15%以上である。尚、上限は100%である。
【0130】
保護基導入樹脂の、GPCで測定したポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、例えば1000~150000、好ましくは3000~100000である。
【0131】
保護基導入樹脂自体はアルカリ現像液に不溶性又は難溶性の樹脂であり、酸発生剤から発生した酸(H+X-)によって酸解離性を示す保護基が解離すると、アルカリ現像液に易溶解性を示すアルカリ可溶性樹脂に変化する。
【0132】
その他、有機溶剤、顔料、染料、光増感剤、分散剤、界面活性剤、充填剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、表面改質剤、可塑剤、乾燥促進剤等を含有することもできる。
【0133】
本発明のフォトレジストは、X線、電子線、EUV等の超短波長の光線に対して高い感光性を有するスルホニウム塩を含有する。また、スルホニウム塩基が樹脂中に均一に分散した構成を有する。そのため、本発明のフォトレジストを利用すれば、超短波長の光線を用いたフォトリソグラフィーにより、低LERの微細パターンを有するレジスト膜を製造することができる。
【0134】
前記フォトレジストを使用したフォトリソグラフィーによりパターン形成を行う方法としては、例えば下記工程1~3を含む方法が挙げられる。
【0135】
工程1:基板上に、前記フォトレジストの塗膜を形成する工程
工程2:前記塗膜に光照射を行ってパターンを転写する工程
工程3:アルカリ現像を行う工程
【0136】
(工程1)
本工程は、エッチング対象である基板上に、前記フォトレジストの塗膜を形成する工程である。前記フォトレジストの塗膜は、前記フォトレジストを、スピンコート、カーテンコート、ロールコート、スプレーコート、スクリーン印刷等公知の方法を用いて基板に塗布し、乾燥させて形成することができる。
【0137】
前記フォトレジストの乾燥方法としては、自然乾燥を行っても良いが、前記スルホニウム塩は熱安定性を備えるため、加熱(例えば、50℃以上130℃未満の温度で1~5分加熱)して乾燥させることもでき、作業性に優れる。
【0138】
前記塗膜の厚みは、例えば1~1000nmである。
【0139】
(工程2)
本工程は、工程1を経て得られた塗膜に、パターンを有するフォトマスクを介して光照射する等の方法で、光照射を行ってパターンを転写する工程である。
【0140】
光照射に用いる光線としては、塗膜に含まれる前記スルホニウム塩を分解して酸(H+X-;X-は対アニオンを示す)を発生させることができれば特に制限はないが、パターンをより微細化する観点から、超短波長の光線を使用することが好ましく、光線の波長は、例えば100nm以下(例えば、1~100nm)が好ましく、80nm以下が更に好ましく、50nm以下が特に好ましく、30nm以下が最も好ましく、20nm以下がとりわけ好ましい。前記光線には、例えば、X線、電子線、EUV等が含まれる。
【0141】
光照射後は、60~200℃の温度で、0.1~120分程度加熱することが、露光部と未露光部のアルカリ現像液への溶解性の差を大きくすることができる点で好ましい。
【0142】
(工程3)
本工程は、工程2を経たフォトレジストの塗膜を、アルカリ現像処理に付す工程である。
【0143】
アルカリ現像処理に使用するアルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム、テトラメチルアンモニウム塩水溶液等が挙げられる。
【0144】
前記アルカリ現像液には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、N-メチルピロリドン等を添加しても良い。
【0145】
アルカリ現像処理は、前記塗膜に、ディップ方式、シャワー方式、スプレー方式等の方法により前記アルカリ現像液を塗布することで行われる。
【0146】
アルカリ現像液の温度は、例えば25~40℃である。また、アルカリ現像時間は、レジストの厚さに応じて適宜決定されるが、例えば1~5分程度である。
【0147】
アルカリ現像処理に際しては、フォトレジストの塗膜の、露光部と未露光部における溶解性の差が大きいことが精度良好な微細パターンを形成する観点から好ましい。現像残渣が多く存在すれば、配線形状異常などの問題が発生し易いためである。そして、本発明のフォトレジストは、上述の通りカルボキシル基を有するスルホニウム塩を含有するため、アルカリ現像時にレジストの現像性が向上し現像残渣を低減することができる。そのため、欠陥の無い製品を歩留まり良く製造することができる。
【0148】
工程3を経て、基板上に、精度良好な微細パターンを有するレジスト膜を形成することができる。このようにして得られたレジスト膜を利用して基板をエッチングすれば、高精度の電子デバイスを製造することができる。
【0149】
前記電子デバイスには、例えば、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ等の表示デバイス;タッチパネル等の入力デバイス;発光デバイス;センサーデバイス;光スキャナー、光スイッチ、加速度センサー、圧力センサー、ジャイロスコープ、マイクロ流路、インクジェットヘッド等のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイス等が含まれる。
【0150】
以上、本発明の各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において、適宜、構成の付加、省略、置換、及び変更が可能である。また、本発明は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。
【実施例0151】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0152】
製造例1
マグネシウム13.4g(0.55モル)をTHF400g中に分散させてなる分散液に、攪拌下、1-ブロモ-3,5-ジフルオロベンゼン96.5g(0.50モル)を、系内温度を40~50℃の範囲に保持しつつ滴下投入して、3,5-ジフルオロフェニルマグネシウムブロマイドのTHF溶液を調製した。
塩化チオニル28.6g(0.24モル)をTHF50gで希釈した溶液を、3,5-ジフルオロフェニルマグネシウムブロマイドのTHF溶液に、系内温度が-5℃を超えない速度で滴下した。滴下終了後、室温で1時間反応を継続し反応を完結させた。
【0153】
イオン交換水500gに、反応終了後の溶液を、系内温度が15℃を超えない速度で加え、1時間攪拌した。その後、酢酸エチル300gを投入し、1時間攪拌した。水層を除去した後、イオン交換水300gで3回洗浄した。その後、水層を除去し、有機層をシリカゲルカラムに通して脱色処理を行った。次いで、脱色処理後の有機層を脱溶剤し、シクロヘキサンで再結晶を行った。これにより、ビス(3,5-ジフルオロフェニル)スルホキシド26.0gを得た。
【0154】
得られたビス(3,5-ジフルオロフェニル)スルホキシド20.0g(0.073モル)を2,6-ジメチルフェノール22.0g(0.18モル)、トリフルオロメタンスルホン酸42.0g(0.28モル)に溶解させ、無水リン酸13.0g(0.09モル)を系内温度が25℃を超えない速度で滴下投入した。滴下終了後、室温で24時間反応を継続させて反応を完結させた。次いで、反応液をゆっくりとイオン交換水300gに投入した。すると、析出物を生じた。ここにトルエン100gを加え、30分攪拌し、その後、静置して上層のトルエン層を除去した(トルエン洗浄)。このトルエン洗浄処理をさらに2回行った。トルエン洗浄後、懸濁溶液をろ過し、結晶を回収した。これにより、中間体1[ビス(3,5-ジフルオロフェニル)(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)スルホニウムトリフラート]36.0g(0.07モル)を得た。
【0155】
製造例2
1-ブロモ-3,5-ジフルオロベンゼンを1-ブロモ-3-トリフルオロメチルベンゼンに変更し、2,6-ジメチルフェノールをフェノールに変更した以外は製造例1と同様の方法で、中間体2[ビス(3-トリフルオロメチルフェニル)(4-ヒドロキシフェニル)スルホニウムトリフラート]32.0g(0.05モル)を得た。
【0156】
製造例3
1-ブロモ-3,5-ジフルオロベンゼンを1-ブロモ-2-トリフルオロメチルベンゼンに変更した以外は製造例1と同様の方法で、中間体3[ビス(2-トリフルオロメチルフェニル)(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)スルホニウムトリフラート]24.5g(0.05モル)を得た。
【0157】
製造例4
2,6-ジメチルフェノールをチオフェノールに変更した以外は製造例1と同様の方法で、スルホニウム中間体4[ビス(2-トリフルオロメチルフェニル)(4-メルカプトフェニル)スルホニウムトリフラート]25.5g(0.04モル)を得た。
【0158】
実施例1
【0159】
(重合性化合物の調製)
製造例1で得られた中間体1にジクロロメタン360g、トリエチルアミン8.0g(0.08モル)を加えた後、氷浴下、メタクリル酸クロリド8.0g(0.08モル)を滴下し1時間攪拌した。次いで1%塩酸水溶液300mLで洗浄を行った後、ジクロロメタン層を固形分濃度60%まで濃縮した。この濃縮層にt-ブチルエーテル500mLを加え、不溶部を回収した。
回収された不溶部をジクロロメタン200gに溶解した後、ノナフルオロブタンスルホン酸カリウム25.0g(0.07モル)、およびイオン交換水150gを加え、室温で3時間攪拌して、塩交換を行った。
次いで、静置し、水層を除去した後、ジクロロメタン層を濃縮した。これにより、重合性化合物(E1)29.8g(0.04モル)を得た。
【0160】
(樹脂の調製)
窒素雰囲気のフラスコに、得られた重合性化合物(E1)1.0g、メタクリル酸2-エチル-2-アダマンタン4.5g、メタクリル酸4-ヒドロキシフェニル4.5g、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.3g、及びメチルエチルケトン25gを加え、均一になるまで溶解した。これにより、モノマー溶液を得た。
窒素雰囲気の別フラスコに10gのMEKを仕込み、攪拌しながら80℃まで加熱した。そこへ、前記モノマー溶液を滴下投入した。滴下終了後、80℃で2時間攪拌し、次いで室温まで冷却した。
冷却後の溶液を、ヘキサン100gに滴下し、析出した共重合体を濾取した。得られた重合体をヘキサン600gで2回洗浄し、50℃で20時間真空乾燥して、白色粉末固体状の樹脂(E1)(重量平均分子量:9500、スルホニウム塩基の導入量:9.9%)を得た。
【0161】
(フォトレジストの調製)
得られた樹脂(E1)をPGMEAで20倍に希釈した後、0.2μmのテフロン(登録商標)製フィルターで濾過した。これにより、フォトレジスト(E1)を得た。
【0162】
実施例2
(重合性化合物の調製)
製造例1で得られた中間体1にアセトニトリル360g、ブロモ酢酸t-ブチル17.0g(0.09モル)、炭酸カリウム25.0g(0.18モル)を加え、60℃で36時間反応を行った。その後、反応液をろ過し、ろ液を回収した。
回収されたろ液を濃縮し、その後、t-ブチルメチルエーテルで洗浄を行い、不溶部35.0gを回収した。
回収された不溶部をジクロロメタン500gに溶解した後、トリフルオロメタンスルホン酸を15g加え、室温で5時間反応させた。その後、イオン交換水200gを加え攪拌、静置し、水層を除去し、2―ヒドロキシエチルアクリレート25.0g(0.21モル)と1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩30.0g(0.15モル)を加え、室温で5時間反応した。
反応後、1%塩酸水溶液200mLで洗浄を3回行った。その後、ジクロロメタン層を固形分濃度60%まで濃縮し、t-ブチルエーテルを加え、不溶部を回収した。これにより、重合性化合物(E2)28.0g(0.04モル)を得た。
【0163】
重合性化合物(E1)を重合性化合物(E2)に変更した以外は実施例1と同様に樹脂調製及びフォトレジスト調製を行って、樹脂及びフォトレジストを得た。
【0164】
実施例3
(重合性化合物の調製)
4―ビニル安息香酸7.4g(0.05モル)に塩化チオニル60g(0.50モル)、およびDMFを1滴加え、50℃で2時間反応を行った後、未反応の塩化チオニルを減圧除去した。これにより、4-ビニルベンゾイルクロリドを得た。
【0165】
中間体1を製造例2で得られた中間体2に変更し、2,6-ジメチルフェノールをフェノールに変更し、メタクリル酸クロリドを4-ビニルベンゾイルクロリドに変更した以外は実施例1と同様に行って、重合性化合物(E3)20.3g(0.03モル)を得た。
【0166】
重合性化合物(E1)を重合性化合物(E3)に変更した以外は実施例1と同様に樹脂調製及びフォトレジスト調製を行って、樹脂及びフォトレジストを得た。
【0167】
実施例4
(重合性化合物の調製)
製造例3で得られた中間体3に、グリシジルメタクリレート8.5g(0.06モル)、クロロホルム300gを加え、均一に溶解させた後、1-エチルイミダゾール0.5g(0.005モル)を投入し、65℃で10時間反応を行った。
反応終了後、1%塩酸水溶液300mLで洗浄を行い、クロロホルム層を分取し、固形分濃度60%まで濃縮した。濃縮後、t-ブチルエーテル500mLを加え、不溶部を回収した。これにより、重合性化合物(E4)21.3g(0.03モル)を得た。
【0168】
重合性化合物(E1)を重合性化合物(E4)に変更した以外は実施例1と同様に樹脂調製及びフォトレジスト調製を行って、樹脂及びフォトレジストを得た。
【0169】
実施例5
(重合性化合物の調製)
中間体1を製造例4で得られた中間体4に変更し、ノナフルオロブタンスルホン酸カリウムをビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドカリウムに変更した以外は実施例1と同様に行って、重合性化合物(E5)23.8g(0.03モル)を得た。
【0170】
重合性化合物(E1)を重合性化合物(E5)に変更した以外は実施例1と同様に樹脂調製及びフォトレジスト調製を行って、樹脂及びフォトレジストを得た。
【0171】
比較例1
(重合性化合物の調製)
ビス(3,5-ジフルオロフェニル)スルホキシドをジフェニルスルホキシドに変更した以外は製造例1と同様に行って、中間体5[ジフェニル(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)スルホニウムトリフラート]を得た。
【0172】
中間体1を中間体5に変更した以外は実施例1と同様に行って、重合性化合物(E6)20.3g(0.04モル)を得た。
【0173】
重合性化合物(E1)を重合性化合物(E6)に変更した以外は実施例1と同様に樹脂調製及びフォトレジスト調製を行って、樹脂及びフォトレジストを得た。
【0174】
比較例2
1-ブロモ-3,5-ジフルオロベンゼンを1-ブロモ-4-トリフルオロメチルベンゼンに変更した以外は製造例1と同様に行って、ビス(4-トリフルオロメチルフェニル)スルホキシド13.6g(0.04モル)を得た。
得られたビス(4-トリフルオロメチルフェニル)スルホキシド13.6g(0.04モル)をベンゼン100g(1.30モル)に溶解させた後、5℃冷却下でトリフルオロメタンスルホン酸無水物13.6g(0.05モル)を投入し、室温で3時間反応を行った。
その後、ベンゼンをデカンテーションで除去した。次いで、ジクロロメタン200gに溶解し、水洗を行った。その後、ジクロロメタン層を分取し、固形分濃度60%まで濃縮した。この濃縮層に酢酸ブチル200mLを加え、不溶部を回収した。これによりスルホニウム塩(1)3g(0.03モル)を得た。
【0175】
(樹脂の調製)
重合性化合物(E1)を使用しなかった以外は、実施例1と同様に行って、白色粉末固体状の樹脂を得た。
【0176】
(フォトレジストの調製)
得られた樹脂0.9gとスルホニウム塩(1)0.1gを、PGEMA19gに溶解させた後、0.2μmのテフロン(登録商標)製フィルターで濾過した。これにより、フォトレジストを調製した。
【0177】
比較例3
比較例2と同様の方法で得られた樹脂とトリフェニルスルホニウムトリフラート0.1gを、PGEMA19gに溶解させた後、0.2μmのテフロン(登録商標)製フィルターで濾過した。これにより、フォトレジストを調製した。
【0178】
(評価)
実施例及び比較例で得られたフォトレジストについて、感光性及び低LER性を以下の方法で評価した。結果を下記表に示す。
【0179】
<感光性評価>
(レジスト膜調製)
フォトレジストを、ヘキサメチルジシラザン処理を行った基板上に、スピンコーターを用いて展開し、130℃で60秒間加熱して溶剤を除去して、約50nmの膜厚のレジスト膜を生成した。
(露光)
得られたレジスト膜を、兵庫県立大学ニュースバル放射光施設のBL-3に投入し、13.5nmの放射光を照射した。
(現像・リンス)
次いで、光線照射後のレジスト膜を110℃で90秒間加熱し、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド2.38%水溶液を用いて60秒間現像し、流水にて30秒間リンスを行った。
【0180】
現像・リンス後のレジスト膜を顕微鏡で観察し、レジスト膜が完全に除去される最小露光量(Eth)を求めた。
比較例3で得られたフォトレジストを使用した場合の最小露光量(Eth’)に対する各フォトレジストの最小露光量(Eth)の比を以下の式から算出して、これを感光性の指標とした。尚、最小露光量比は値が小さい方が感光性は良好である。
最小露光量比=Eth/Eth’
【0181】
<低LER性評価>
フォトレジストを使用して、感光性評価と同様の方法でレジスト膜を調製した。得られたレジスト膜に、ライン/スペースが90nm/90nmであるマスクを介して、13.5nmの放射光を照射した。尚、露光量は、感光性評価で求めた最小露光量の1.5倍とした。
その後、感光性評価と同様の方法で現像・リンスを行った。
現像・リンス後のレジスト膜を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、ラインパターンの長手方向のエッジ2.5μmの範囲の50地点において、基準線からエッジまでの距離を測定し、標準偏差(σ)を求め、その3倍値(3σ)をLERとして算出した。そして、比較例3で得られたフォトレジストを使用した場合のLER値を基準として、各フォトレジストのLER値低下率を算出し、下記基準で低LER性を評価した。
評価基準
◎(優):LER値低下率が15%以上
○(良):LER値低下率が10%以上、15%未満
△(可):LER値低下率が5%以上、10%未満
×(不可):LER値低下率が5%未満
【0182】
【0183】
【0184】
上記表から、本発明の重合性化合物を含むフォトレジストは、13.5nmの放射光に対する感度が高く、且つ低LER性を有することが分かる。
【0185】
以上のまとめとして、本開示の構成及びそのバリエーションを以下に付記する。
[1] 式(1)[式(1)中、R1、R2はそれぞれ独立にハロゲン原子又はC1-5ハロアルキル基を示す。R3はハロゲン原子、C1-5アルキル基、C1-5アルコキシ基、C1-5ハロアルキル基、又はC1-5ハロアルコキシ基を示す。R4は水素原子又はメチル基を示す。n1、n2はそれぞれ独立に1~5の整数を示し、n3は0~4の整数を示す。L1は単結合又はフェニレン基を示す。L2は単結合又は連結基を示し、前記連結基は、置換基を有していても良いC1-5アルキレン基、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、及びこれらの2個以上が連結してなる2価の基から選択される基である。L3はエーテル結合又はチオエーテル結合を示す。X-は1価の対アニオンを示す]で表される重合性化合物。
[2] 前記R1、R2で表される基の、ベンゼン環への結合位置が、硫黄原子が結合する位置に対してメタ位又はオルト位である[1]に記載の重合性化合物。
[3] 前記1価の対アニオンが、スルホン酸アニオン、スルホニルイミドアニオン、又はハロゲンイオンである[1]又は[2]に記載の重合性化合物。
[4] [1]~[3]の何れか1つに記載の重合性化合物を含む酸発生剤。
[5] 極端紫外線用酸発生剤又は電子線用酸発生剤である、[4]に記載の酸発生剤。
[6] [1]~[3]の何れか1つに記載の重合性化合物由来の構成単位を備える樹脂。
[7] [1]~[3]の何れか1つに記載の重合性化合物由来の構成単位を備える樹脂を含むフォトレジスト。