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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109191
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】シート状のガス拡散層の検査装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/86 20060101AFI20240806BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20240806BHJP
【FI】
H01M4/86 Z
H01M4/86 M
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013847
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】久保 創資
(72)【発明者】
【氏名】清原 剛
(72)【発明者】
【氏名】石井 聖
(72)【発明者】
【氏名】山下 沙耶香
(72)【発明者】
【氏名】浦井 純一
【テーマコード(参考)】
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
5H018AA06
5H018DD08
5H018HH03
5H126BB06
(57)【要約】
【課題】ガス拡散層に存在する欠点を検出し、欠点位置へのマーキングを行い、かつ当該マーキングを検出する装置を提供する。
【解決手段】導電性多孔質基材の少なくとも片面に微多孔層を有するシート状のガス拡散層の検査装置であって、ガス拡散層の欠点を連続で検出する欠点検出装置、検出された欠点に対して位置が判別可能なマーキングを連続で行うマーキング装置、および前記マーキング装置の下流で前記マーキングを連続で検出するマーキング検出装置を備え、欠点が検出された箇所およびマーキングが検出された箇所の位置情報を記録する機能を有する検査装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性多孔質基材の少なくとも片面に微多孔層を有するシート状のガス拡散層の検査装置であって、ガス拡散層の欠点を連続で検出する欠点検出装置、検出された欠点に対して位置が判別可能なマーキングを連続で行うマーキング装置、および前記マーキング装置の下流で前記マーキングを連続で検出するマーキング検出装置を備え、欠点が検出された箇所およびマーキングが検出された箇所の位置情報を記録する機能を有する検査装置。
【請求項2】
前記欠点が検出された箇所の位置情報と、前記マーキングが検出された箇所の位置情報とを照合し、前記欠点が検出された位置と前記マーキングが検出された位置との差を算出する機能を有する請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記欠点が検出された位置と前記マーキングが検出された位置との差が、あらかじめ指定した数値範囲にあるかをチェックし、正誤判定を実施する機能を有する請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記欠点検出装置が、ガス拡散層の表面の外観検査装置、ガス拡散層の裏面の外観検査装置、およびガス拡散層中の金属欠点を検出する装置からなる群より選ばれる、少なくとも1つ以上の装置を有する請求項1に記載の検査装置。
【請求項5】
請求項1に記載の検査装置を用いて、ガス拡散層を検査する検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池などに用いられるガス拡散層の欠点を検査する装置、特に欠点を検出し、欠点が検出された位置にマーキングし、当該マーキングの位置を改めて検知する検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素と酸素を反応させて水が生成する際に生起するエネルギーを電気的に取り出す機構であり、エネルギー効率が高く、排出物が水しかないことから、クリーンエネルギーとしてその普及が期待されている。
【0003】
その一種である固体高分子型燃料電池は、高分子電解質膜を一対の触媒層で挟んだ膜電極接合体にガス拡散層を介して反応ガス(燃料ガスおよび酸化剤ガス)を供給して電気化学反応を引き起こすことにより、物質の持つ化学エネルギーを電気エネルギーに変換する。
【0004】
上記ガス拡散層には、セパレータから供給されるガスを触媒層へと拡散するための高いガス拡散性と、電気化学反応に伴って生成する水をセパレータへ排出するための高い排水性、および発生した電流を取り出すための高い導電性が要求され、カーボンペーパー等の導電性多孔質基材が広く用いられている。また、当該ガス拡散層には、主に(1)触媒の保護、(2)目の粗い導電性多孔質基材の表面が電解質膜に転写しないようにする化粧直し効果、(3)カソードで発生する水蒸気の凝縮防止の効果などを得ることを目的に、触媒層と接する側の表面に微多孔層を設けたものが広く、用いられている。
【0005】
上記微多孔層について、その製造の間に発生し得る様々な欠点が、燃料電池の性能をも低下させ、本来要求される上記効果を充分に発揮できなくさせる問題が起こり得る。
【0006】
また、上記導電性多孔質基材においても、製造の間に発生するさまざまな欠点が電極基材としたときに悪影響を及ぼし本来要求される機能を十分に発揮できなくなるという問題がある。
【0007】
ガス拡散層に発生した欠点を検出するためにさまざまな検査が提案されている。例えば、従来の目視検査によって行われる外観検査では、連続して搬送される長尺のガス拡散層を対象とする場合には、検査対象自体が黒色である上に、外観欠点も黒色が多いため、検出が困難であったところ、特許文献1では、多種類の外観欠点を光学的手法により高精度で且つ自動的に連続検査が可能な外観欠点の自動検査方法が提案されている。
【0008】
また、特許文献2では、導電性多孔質基材の一方の面上に、導電材料からなるコーティング層が連続的に形成された長尺物の連続移送時において、多種類の外観欠点を高精度で且つ効率的に自動検査し、欠点の種類、その存在位置、大きさの検査結果を直ちに確定できる検査方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2019-28078号公報
【特許文献2】特開2018-163154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1には、ガス拡散層の微多孔層にある欠点位置の識別のためにマーキングをする記載があるが、マーキングミスなどが発生した場合に、欠点の位置を把握できなくなるおそれがある。
【0011】
また、特許文献2に、欠点位置にマーキングすることに関する記載がない。
【0012】
そこで本発明は、ガス拡散層の検査にて検出した欠点に対して、マーキングを行い、マーキングを行う装置の下流で当該マーキングを検出し、前記欠点が検出された箇所および前記マーキングが検出された箇所の位置情報を記録することで、欠点の位置情報を直ちに確認でき、マーキングが欠点の位置に対し、あらかじめ指定した範囲にあるか確認できる検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記の課題を解決するため、次のような手段を採用するものである。
(1)導電性多孔質基材の少なくとも片面に微多孔層を有するシート状のガス拡散層の検査装置であって、ガス拡散層の欠点を連続で検出する欠点検出装置、検出された欠点に対して位置が判別可能なマーキングを連続で行うマーキング装置、および前記マーキング装置の下流で前記マーキングを連続で検出するマーキング検出装置を備え、欠点が検出された箇所およびマーキングが検出された箇所の位置情報を記録する機能を有する検査装置。
(2)前記欠点が検出された箇所の位置情報と、前記マーキングが検出された箇所の位置情報とを照合し、前記欠点が検出された位置と前記マーキングが検出された位置との差を算出する機能を有する(1)に記載の検査装置。
(3)前記欠点が検出された位置と前記マーキングが検出された位置との差が、あらかじめ指定した数値範囲にあるかをチェックし、正誤判定を実施する機能を有する(2)に記載の検査装置。
(4)前記欠点検出装置が、ガス拡散層の表面の外観検査装置、ガス拡散層の裏面の外観検査装置、およびガス拡散層中の金属欠点を検出する装置からなる群より選ばれる、少なくとも1つ以上の装置を有する(1)に記載の検査装置。
(5)(1)に記載の検査装置を用いて、ガス拡散層を検査する検査方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、導電性多孔質基材の少なくとも片面に微多孔層を有するガス拡散電極において、欠点検出装置による欠点の位置情報をもとに、後工程等において、欠点の除去や補修を可能とし、また、欠点の位置情報とマーキング検出装置によるマーキングの位置情報をもとにマーキングの打ち損じがないかを確認し、欠点の見逃しを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の検査装置の側面概略の一例である。
図2】ガス拡散層上に存在する欠点と当該欠点を判別するためのマーキングの一例である。
図3】ガス拡散層上に存在する欠点と当該欠点を判別するためのマーキングの一例である。
図4】ガス拡散層上に存在する欠点と当該欠点を判別するためのマーキングの一例である。
図5】本発明の検査装置の側面概略の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、本発明の検査対象であるガス拡散層ついて説明する。本発明におけるガス拡散層は微多孔層と導電性多孔質基材からなる。
【0017】
上記導電性多孔質基材としては、一般に導電性材料からなる多孔質基材でシート状のものであれば本発明が適用可能であるが、導電性材料として炭素繊維を用いたものが好ましく用いられ、例えば炭素短繊維を含む抄紙体、炭素繊維を含む織編物や不織布、あるいは炭素繊維を一方向または多方向に引き揃えたシート状物などが挙げられる。また、上記の基材中の繊維が樹脂で結着されたものが特に好ましく用いられる。さらに、上記樹脂を不活性雰囲気中で炭素化して得られる多孔質炭素シート状物も好ましく用いられる。
【0018】
シート状物の形態としては、フィルム、織物、不織布、紙などが用いられ、特段の制限はないが、中でも、分散している炭素短繊維が樹脂および/ または有機物の炭化物で結着されてなる導電性多孔質基材は、圧縮性や曲げ弾性率に優れることから好ましく用いられる。ここで、分散とは、炭素短繊維がシート面内において顕著な配向を持たず概ねランダムな方向に存在している状態であることが好ましい。また、当該炭素短繊維の繊維長は、3~20mmが好ましく、より好ましくは5~15mmである。炭素短繊維の繊維長を上記範囲とすることにより、炭素短繊維を分散させ抄紙して炭素繊維シートを得る際に、炭素短繊維の分散性を向上させ、目付ばらつきを抑制することができる。
【0019】
上記導電性多孔質基材としては、フッ素樹脂などを付与することで撥水処理が施されたものが好適に用いられる。言い換えれば、上記導電性多孔質基材は、フッ素樹脂などの撥水性樹脂を含むことが好ましい。当該フッ素樹脂としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)(たとえば“テフロン(登録商標)”)、FEP(四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合体) 、PFA(ペルフルオロアルコキシフッ化樹脂)、ETFE(エチレン四フッ化エチレン共重合体)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PVF(ポリフッ化ビニル) 等が挙げられるが、強い撥水性を発現するPTFE、あるいはFEPが好ましい。
【0020】
上記撥水性樹脂の量は特に限定されないが、上記導電性多孔質基材を100質量%としたとき、0.1質量%以上20質量%以下含まれることが好ましい。0.1質量%より少ないと撥水性が十分に発揮されない場合があり、20質量%を超えるとガスの拡散経路あるいは排水経路となる細孔を塞いでしまったり、電気抵抗が上がったりする場合がある。
【0021】
導電性多孔質基材を撥水処理する方法としては、一般的に知られている、撥水性樹脂を含むディスパージョンに導電性多孔質基材を浸漬する方法のほか、ダイコート、スプレーコートなどによって導電性多孔質基材に撥水性樹脂を塗布する方法、フッ素樹脂のスパッタリングなどのドライプロセスによる加工も適用できる。なお、浸漬や塗布処理の後、必要に応じて乾燥工程、さらには焼結工程を加えてもよい。
【0022】
本発明では、導電性多孔質基材の少なくとも片面に微多孔層を有する。
【0023】
微多孔層は、高いガス拡散性、排水性、および導電性を有するものであり、導電性を有し、好ましくは平均細孔径が0.01~10μmの細孔を有する。
【0024】
上記微多孔層の層数は単層でも複数層でもよく、特に限定されないが、プロセスの管理、及びコストの観点から、単層又は二層が好ましい。以下、まず、微多孔層について共通的な事項を説明する。
【0025】
上記微多孔層は、炭素材である導電性微粒子を含む層であることが好ましく、当該炭素材としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、炭素繊維のチョップドファイバー、グラフェン、黒鉛などが挙げられるが、コストの低さや製品の品質の安定性の点から、カーボンブラックが好適に用いられる。カーボンブラックとしてはアセチレンブラック、ファーネスブラック。サーマルブラック等が挙げられるが、特に不純物が少なく触媒の活性を低下させにくいという点でアセチレンブラックが好適に用いられる。
【0026】
カーボンブラックの不純物の含有量の目安として灰分が挙げられるが、灰分が1質量%以下のカーボンブラックを用いることが好ましい。なお、カーボンブラック中の灰分は少ないほど好ましく、灰分が0質量%のカーボンブラック、つまり、灰分を含まないカーボンブラックが特に好ましい。
【0027】
また、微多孔層には導電性、ガス拡散性、排水性あるいは保湿性、熱伝導性といった特性が求められるため、微多孔層は、導電性微粒子に加えて、フッ素樹脂をはじめとする撥水性樹脂を含むことが好ましい。ここで、当該撥水性樹脂としては、フッ素樹脂、シリコン樹脂などが挙げられるが、耐熱性に優れ、加熱下でも撥水効果が持続する観点からフッ素樹脂の方が好ましい。微多孔層が含むフッ素樹脂としては、導電性多孔質基材を撥水する際に好適に用いられるフッ素樹脂と同様、PTFE、FEP、PFA、ETFE、PVDF、PVF等が上げられる。撥水性が特に高いという点でPTFEあるいはFEPが好ましい。
【0028】
ガス拡散層が微多孔層を有するためには、導電性多孔質基材に、微多孔層を形成するための塗液、すなわち微多孔層塗液を塗布することが好ましい。微多孔層塗液は通常、上記導電性炭素材と水やアルコールなどの分散媒を含む。また、導電性微粒子を分散するための分散剤として、界面活性剤などが配合されることが多い。また、微多孔層に撥水性樹脂を含ませる場合には、微多孔層塗液にはあらかじめ撥水性樹脂を含ませておくことが好ましい。
【0029】
次に、本発明の検査装置で検出する、ガス拡散層の欠点に関して説明する。欠点の種類には、異物、微多孔層の突起、毛羽、凹み、クラック、微多孔層の穴、微多孔層のスジ、導電性多孔質基材の欠け、貫通孔、金属欠点などが挙げられる。これらの欠点は、導電性多孔質基材の製造時に発生し得るもの、微多孔層を塗布後に発生し得るものがあり、いずれも発電性能を低下させる要因となり得ることから、すべてを検出できることが好ましい。
【0030】
上記記載の金属欠点について説明する。金属欠点とは、鉄をはじめとする金属元素を含む箇所である。金属欠点を含むガス拡散層を燃料電池に用いると、ガス拡散層から金属イオンが溶出することで燃料電池の性能や耐久性を低下させることが知られている。このため、ガス拡散層中に含まれる金属欠点は検出して、好ましくは除外できるとよい。また、これら金属欠点の検出には、多くの種類の金属を検出可能な、X線を用いた検出装置が好ましい。当該検出装置は、0.5mm以上のサイズの金属欠点を検出できることが好ましく、より好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは0.05mm以上のサイズの金属欠点を検出できることが好ましい。
【0031】
上記の各種欠点について、前述の通り、発電性能を低下させる要因となることから、検出するだけでなく、燃料電池に組み込まれる前に欠点の補修や除去をすることが好ましい。このため、ガス拡散層を製造する工程で、欠点位置にマーキングすることで、次工程でマーキング部分を確認することができ、見逃しなく確実に、欠点の補修や除去を行うことが可能となる。
【0032】
上記マーキングは、欠点の位置を明確にするために必要であるが、このマーキングは欠点位置に対して、ガス拡散層の搬送時における長手方向(以下、単に「長手方向」と称することもある)に対して同位置かつガス拡散層の搬送時における幅方向(以下、単に「幅方向」と称することもある)にずれた位置にマーキングしたり、長手方向の上流側にずれた位置と下流側にずれた位置の2つのマーキングをして挟み込むようにしたりすることで、欠点の位置を見逃しなく確実に識別し、欠点の補修や除去を行うことが可能となり好ましい。ここでいう「ずれた位置」とは、欠点位置とは異なる位置であれば良いが、例えば10mm程度ずれていれば、マーキングが欠点に重なって視認しづらくなる等の問題を防ぐことができる場合があり、好ましい。また、長手方向の上流側にずれた位置と下流側にずれた位置の2つのマーキングで挟み込む場合においては、当該2つのマーキングの幅方向の位置は問わないが、マーキングを確認するのが容易となるので、当該2つのマーキングを幅方向で同じ位置に施すのも好ましい態様の一つであり、また当該2つのマーキングのうち、いずれが上流側でいずれが下流側であるかを見分けるのが容易となるので、当該2つのマーキングを幅方向で別の位置に施すのもまた好ましい態様の一つである。
【0033】
本発明におけるマーキング装置としてはインクジェットによる装置やレーザーによる装置等を用いることができる。マーキングを検査と並行してガス拡散層を搬送しながら連続で行うため、素早く処理が可能なレーザーによる装置がより好ましい。
【0034】
本発明の検査装置で施すマーキングの形状に指定はないが、欠点の種類毎に異なるマーキングの形状とするのも好ましい態様の一つである。
【0035】
本発明の検査装置においては、マーキング装置によってされたマーキングを検知する装置を、マーキング装置の下流に備える。これによって、マーキングされた位置を確認することが可能となる。
【0036】
上記のマーキング検出装置としては、画像判別センサーやカメラ等を好ましく用いることができる。
【0037】
また、欠点検出装置によって、上記のような欠点が検出された箇所の位置情報と、上記マーキング検出装置によってマーキングが検出された箇所の位置情報とを照合し、上記欠点が検出された位置と上記マーキングが検出された位置との差を算出する機能を有することが好ましい。これによって、欠点位置に対して正しくマーキングがされているか確認することができ、欠点位置に対しかけ離れた位置にマーキングされている場合やマーキングがされていない場合に、改めてマーキングをする等して、次工程以降における欠点の見逃しを防ぐことができる。
【0038】
さらに、上記欠点が検出された位置と上記マーキングが検出された位置との差が、あらかじめ指定した数値範囲内にあるかチェックし、正誤判定を実施する機能を有することは好ましい。
【0039】
以下、本発明について、特定の実施形態を図面も参照しつつ説明するが、本発明はこれらの説明や図面によって何ら限定されるものではない。
【0040】
図1は本発明の検査装置の一例である検査装置100の側面概略である。この装置は、ガス拡散層0を支持しつつ搬送する複数の支持ローラ1と、ガス拡散層0の微多孔層面を検査する表面撮像装置11、その裏面を検査する裏面撮像装置12、ガス拡散層中に含まれている金属欠点を検査する金属検知装置13を有する。加えて、表面撮像装置11には、表面撮像結果を処理する画像処理部31を、裏面撮像装置12には、裏面撮像結果を処理する画像処理部32を、金属検知装置13には、金属欠点の検知結果を処理する情報処理部33をそれぞれに備える機構である。
【0041】
検査装置100でガス拡散層0が検査している際、表面に欠点が存在している箇所が検査装置100を通過すると、表面撮像装置11により、該当部分の画像および位置情報が検出され、画像処理部31で処理される。裏面に欠点が存在している箇所が検査装置100を通過すると、裏面撮像装置12により、該当部分の画像および位置情報が検出され、画像処理部32で処理される。金属欠点が含まれている箇所が検査装置100を通過すると、金属検知装置13により、該当部分の位置情報が検出され、情報処理部33で処理される。以上により、それぞれの装置で欠点が検出される。
【0042】
また、検査装置100は、画像処理部31、32、および情報処理部33で処理された欠点位置情報を集約する情報集約部41を備えており、ガス拡散層0に存在する欠点の情報をガス拡散層0の検査中に判断することが可能である。
【0043】
さらに、検査装置100では、例えば、導電性多孔質基材の微多孔層面に欠点が存在している位置とガス拡散層中に含まれている金属欠点の位置が同じ、あるいは近傍位置に存在している場合、情報集約部41により重複位置にあることがわかり、欠点の関連性を確認することが可能となり、前工程における欠点削減への足掛かりとすることも可能となる。
【0044】
検査装置100は、上記の撮像装置や検知装置の後に、欠点位置にマーキングするマーキング装置21を有する。このマーキング装置21は、前記情報集約部41から受け取った欠点位置の情報に基づき、ガス拡散層0にマーキングする。これにより、欠点位置の識別性を向上することができ、例えば後の工程にて、欠点が存在する領域を製品から取り除いたり、欠点の除去や補修をしたりすることが容易となる。また、前記情報集約部41により、同位置/または近傍位置に複数の欠点が存在していても、複数の欠点に対して、見逃しなく確実にマーキングすることも可能としている。
【0045】
さらに、検査装置100は、欠点位置にマーキングするマーキング装置21の後に、マーキングしたことを確認するマーキング検出装置22を有する。マーキング検出装置22は、マーキング装置21によってガス拡散層0に行ったマーキングを検出され、マーキング位置情報が情報集約部41によって処理される。この際、画像処理部31、32、および情報処理部33で処理された欠点位置情報と、上記のマーキング位置情報とを照合し、欠点位置とマーキング位置との差を算出することによって、ガス拡散層0に存在する欠点の位置に対して、正しくマーキングされているかを確認することが可能となる。また上記の差があらかじめ指定した数値範囲にあるかをチェックし、正誤判定を行う機能を有することでマーキングの正誤を簡便に確認できる。これらにより、マーキングの打ち損じを防ぐことができ、後工程等における欠点の見逃しを防ぐことができる。
【0046】
図2は、上方から見たガス拡散層0の模式図であり、マーキング方法の一実施形態を示している。ガス拡散層0に欠点2がある場合において、欠点2と長手方向に対して同位置で、幅方向にずれた位置にマーキング3することで、マーキングが欠点と重なって不明瞭となることを防ぎ、欠点位置を正確に把握し、欠点の補修や除去を確実に行うことができる。
【0047】
この例においては、欠点2の長手方向における位置の情報と、マーキング3の長手方向における位置の情報とを照合し、両者の差を算出し、さらに当該差があらかじめ指定した範囲にあるかをチェックし、正誤判定を実施することで、欠点の長手方向位置に対し、マーキングが指定した長手方向位置にされているかを判定可能である。
【0048】
図3も、図2と同様に上方から見たガス拡散層0の模式図であり、マーキング方法の一実施形態を示している。ガス拡散層0に欠点2がある場合において、長手方向の上流側にずれた位置のマーキング4と下流側にずれた位置のマーキング5をし、両マーキングで欠点2を挟み込むようにすることで、マーキングにより欠点を含む範囲を正確に把握することができ、次以降の工程で欠点の補修や除去を確実に行うことができる。また、マーキングが長手方向に少しずれが生じた場合でも欠点2を確実に補修あるいは除去できる。
【0049】
この例においては、欠点2の長手方向における位置の情報と、マーキング4および5の長手方向における位置の情報とを照合し、両者の差を算出し、さらに当該差があらかじめ指定した範囲にあるかをチェックし、正誤判定を実施することで、欠点の長手方向位置に対し、マーキングが指定した長手方向位置にされているかを判定可能である。
【0050】
図4も、図2、3と同様に上方から見たガス拡散層0の模式図であり、マーキング方法の一実施形態を示している。ガス拡散層0に欠点2がある場合において、マーキングをガス拡散層の幅方向両側に打ち分ける場合である。欠点2が連続して発生した場合に、欠点2を長手方向にずれた2つのマーキングで挟み込む方式でマーキングを行うと、いずれのマーキングが始点あるいは終点を示すのか不明瞭になり得る。これに対して、始点を示すマーキング6の位置を幅方向いずれかの端部にずらし、終点を示すマーキング7の位置を、始点を示すマーキング6とは反対側の幅方向端部にずらすことで、いずれのマーキングが始点あるいは終点を示すかを見分けることが可能となり、欠点位置の識別性をより向上させることができる。
【0051】
この場合も、図3の場合と同様に欠点の長手方向位置に対し、マーキングが指定した長手方向位置にされているかを判定可能である。
【0052】
図5は、本発明の検査装置のさらに別の一例である検査装置500の模式図である。欠点位置にマーキングするマーキング装置21とマーキング検出装置22をそれぞれ2台有する。複数台のマーキング装置21とマーキング検出装置22を有することで、図4のように幅方向に異なる位置に、マーキングを打ち分けるケースや、ガス拡散層の幅が異なる品種にマーキングする際にも対応することが容易となり好ましい。また、最初のマーキングを打ってから、次のマーキングを打つまでの時間が短すぎると、マーキング装置の待機時間によってはマーキングし損じることがあるが、複数台のマーキング装置を有することで、連続した欠点にも対応できるようになる場合もある。
【符号の説明】
【0053】
0 ガス拡散層
1 支持ローラ
2 欠点
3 マーキング
4 マーキング
5 マーキング
6 始点を示すマーキング
7 終点を示すマーキング
11 表面撮像装置
12 裏面撮像装置
13 金属検知装置
21 マーキング装置
22 マーキング検出装置
31 画像処理部
32 画像処理部
33 情報処理部
41 情報集約部
100 検査装置
500 検査装置
1000 ガス拡散層の搬送時における長手方向
2000 ガス拡散層の搬送時における幅方向
図1
図2
図3
図4
図5