(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109192
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】吸収体および衛生材料製品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/534 20060101AFI20240806BHJP
A61F 13/535 20060101ALI20240806BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
A61F13/534 110
A61F13/535 100
A61F13/53 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013848
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】花之内 裕隆
(72)【発明者】
【氏名】境 賢一
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA01
3B200BB03
3B200BB17
3B200CA02
3B200CA11
3B200DB01
3B200DB02
3B200DB12
3B200DB18
(57)【要約】
【課題】
吸収特性に優れた吸収体を提供することを課題とする。
【解決手段】
第1の不織布、第1の吸水ポリマー群、第2の不織布、第2の吸水ポリマー群および第3の不織布を、この順に備えた吸収体であって、
前記第1の不織布および前記第1の吸水ポリマー群は、第1の層を形成しており、
前記第3の不織布および前記第2の吸水ポリマー群は、第2の層を形成しており、
前記第1の吸水ポリマー群は、第1の不織布に直接的または間接的に固定されており、
前記第2の吸水ポリマー群は、第3の不織布に直接的または間接的に固定されており、
少なくとも前記第2の不織布が、ポリエステル系樹脂にポリエチレングリコールを3質量%以上40質量%以下共重合した共重合ポリエステル樹脂からなる単成分繊維で構成されたスパンボンド不織布であり、
前記第2の不織布の液拡散面積が20~60cm2であり、
前記第2の不織布の液拡散面積を前記第1の層の液拡散面積で除した値が、0.3~0.9である、吸収体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の不織布、第1の吸水ポリマー群、第2の不織布、第2の吸水ポリマー群および第3の不織布を、この順に備えた吸収体であって、
前記第1の不織布および前記第1の吸水ポリマー群は、第1の層を形成しており、
前記第3の不織布および前記第2の吸水ポリマー群は、第2の層を形成しており、
前記第1の吸水ポリマー群は、第1の不織布に直接的または間接的に固定されており、
前記第2の吸水ポリマー群は、第3の不織布に直接的または間接的に固定されており、
少なくとも前記第2の不織布が、ポリエステル系樹脂にポリエチレングリコールを3質量%以上40質量%以下共重合した共重合ポリエステル樹脂からなる単成分繊維で構成されたスパンボンド不織布であり、
前記第2の不織布の液拡散面積が20~60cm2であり、
前記第2の不織布の液拡散面積を前記第1の層の液拡散面積で除した値が、0.3~0.9である、吸収体。
【請求項2】
前記第2の不織布の目付が15~40g/m2である、請求項1に記載の吸収体。
【請求項3】
前記第1の吸水ポリマー群の目付量が、50~200g/m2である、
請求項1または2に記載の吸収体。
【請求項4】
前記第2の吸水ポリマー群に含まれる吸水ポリマーの飽和吸収量が、25~70g/gである、請求項1~3のいずれかに記載の吸収体。
【請求項5】
請求項1~4の何れかの吸収体を備える、衛生材料製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
紙おむつやナプキン等の衛生材料製品は、尿や経血等(以下、尿等と称することがある)の水系液体を吸収し保水するシート状の吸収体、吸収体の一方の面に配置された表面シートおよび吸収体の他方の面に配置された裏面シートを有している。上記の表面シートは尿等の透過性を有し、上記の裏面シートは尿等の防漏性を有する。また、上記の吸収体は、パルプ繊維と吸水ポリマーの混合物が不織布またはティッシュ等で包まれた構成となっている。
【0003】
そして、衛生材料製品において、吸収体、表面シートおよび裏面シートは、上記の衛生材料製品の着用時に、着用者に近い方から表面シート、吸収体および裏面シートの順に配置されている。
【0004】
ここで、近年、紙おむつやナプキン等の衛生材料製品の普及に伴い、衛生材料製品は薄型化による着用感の向上が望まれるようになってきている。
【0005】
そこで、吸収体に嵩高いパルプ繊維を用いず、基本的な性能(尿等の速い浸透速度、十分な吸収性、少ない逆戻り量、少ない漏れ量など)に優れた薄型化吸収体として、所定量の吸水性樹脂及び所定量の接着剤が、2枚以上の不織布により挟持された構造を有する吸収体(例えば、特許文献1、2参照)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2013/099635号公報
【特許文献2】特開2018―166876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、2に開示された吸収体では、着用者にとって十分満足のいく吸収特性が発現できないという課題がある。例えば、特許文献1に開示された吸水シート構成体では、上方の不織布としてポリオレフィン繊維又はポリエステル繊維により製造される透水性不織布が用いられ、更に疎水性の合成繊維を公知の方法で親水化処理することが記載されている。また、特許文献2に開示された吸収性物品では、下層シートとしてスパンボンド層、メルトブローン層、スパンボンド層が順に積層された不織布に親水剤が含有されている。いずれの文献も疎水性の合成繊維に親水剤を塗布又は含浸など公知の方法で付与するが、複数回の尿等を吸収体が吸収すると不織布の親水剤が脱落し、不織布での拡散性や通液性が低下し、結果として、吸水ポリマーの活用効率が低下し、吸収体の全体の吸水量が低下し、吸収体の全体の吸収特性が劣ったものとなるとの課題がある。すなわち、特許文献1、2に開示された吸収体には、吸収特性の持続性に劣るとの課題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記の事情に鑑み、不織布自体を親水化することで、不織布の拡散性や通液性能を維持し、シート間に配置された吸収ポリマーの高い活用効率により吸収特性に優れた吸収体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、下記の構成からなる。
(1)第1の不織布、第1の吸水ポリマー群、第2の不織布、第2の吸水ポリマー群および第3の不織布を、この順に備えた吸収体であって、前記第1の不織布および前記第1の吸水ポリマー群は、第1の層を形成しており、前記第3の不織布および前記第2の吸水ポリマー群は、第2の層を形成しており、前記第1の吸水ポリマー群は、第1の不織布に直接的または間接的に固定されており、前記第2の吸水ポリマー群は、第3の不織布に直接的または間接的に固定されており、少なくとも前記第2の不織布が、ポリエステル系樹脂にポリエチレングリコールを3質量%以上40質量%以下共重合した共重合ポリエステル樹脂からなる単成分繊維で構成されたスパンボンド不織布であり、前記第2の不織布の液拡散面積が20~60cm2であり、前記第2の不織布の液拡散面積を前記第1の層の液拡散面積で除した値が、0.3~0.9である吸収体であり、
(2)前記第2の不織布の目付が20~40g/m2である、(1)の吸収体であることが好ましく、
(3)前記第1の吸水ポリマー群の目付量が、50~200g/m2である、(1)または(2)の吸収体であることが好ましく、
(4)前記第2の吸水ポリマー群に含まれる吸水ポリマーの飽和吸収量が、25~70g/gである、(1)~(3)の何れかの吸収体であることが好ましく、
(5)(1)~(4)の何れかの吸収体を備える、衛生材料製品であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、吸収特性の持続性に優れる吸収体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実態の形態について詳細に説明する。
【0012】
第1の吸水ポリマー群、第2の不織布、第2の吸水ポリマー群および第3の不織布を、この順に備えた吸収体である。また、前記第1の不織布および前記第1の吸水ポリマー群は、第1の層を形成しており、前記第3の不織布および前記第2の吸水ポリマー群は、第2の層を形成しており、前記第1の吸水ポリマー群は、第1の不織布に直接的または間接的に固定されており、前記第2の吸水ポリマー群は、第3の不織布に直接的または間接的に固定されている。また、少なくとも前記第2の不織布が、ポリエステル系樹脂にポリエチレングリコールを3質量%以上40質量%以下共重合した共重合ポリエステル樹脂からなる単成分繊維で構成されたスパンボンド不織布である。また、前記第2の不織布の液拡散面積が20~60cm2であり、前記第2の不織布の液拡散面積を前記第1の層の液拡散面積で除した値が、0.3~0.9である。そして、これらの特長の全てを具備する本発明の吸収体は、継続的な吸収特性に優れるものとなる。
【0013】
上記の効果が得られるメカニズムについては、以下の通りと推測する。すなわち、本発明の吸収体は、上記したとおりの特徴を備える。
【0014】
このような吸収体が、第1の層側が衛生材料製品の着用者側となるように配置されることで、尿等の液体は、吸収体の第1の層側から吸収体に侵入し、第1の層、第2の不織布および第2の層の順に吸収体の内部を進行することになる。
【0015】
このような構成の吸収体において、第2の不織布に、特定量のポリエチレングリコールを含有させ親水性とその持続性を向上させることで、第1の層で第1の層の面方向に拡散された尿等を、さらに適度に拡散させたうえで第2の層へ通液させることができ、第2の層が備える第2の吸水ポリマー群を有効に利用できることで本発明の吸収体の吸収特性は優れたものとなる。なお、第2の不織布に、疎水性繊維からなるスパンボンド不織布を用いた場合、第2の不織布において所望の液拡散性を得られず、吸収体の吸収特性が低下する。また、スパンボンド不織布へ親水剤を塗布又は含浸した疎水性繊維からなるスパンボンド不織布の場合、尿等が継続的に投液されると親水剤が脱落し、親水剤の脱落と共に第2の不織布における液拡散性(液拡散面積)が低下し、吸収体の吸収特性が低下する。
【0016】
つまり、吸収体の第1の層に到達した液体は、第1の層の内部にて、その面方向に、ある程度拡散されると同時に、第1の層にて、ある程度吸収される。そして、第1の層にて吸収されなかった液体は、第2に不織布に到達し、液拡散面積が特定の範囲内であり内部で体液が適度に拡散され得る第2の不織布の内部にて、その面方向に拡散される。そして、第2の不織布で吸収されなかった液体の多くは第2の層に移行し、残りの液体は第1の層に移行することになる。ここで、第2の不織布から第1の層や第2の層に移行する液体は、第2の不織布の内部で充分に拡散された上で移行するため、この移行は第1の層や第2の層の広域で行われる。このことにより、移行する液体は、第1の層や第2の層の面方向に広がって存在する吸水ポリマー群の全体に、ほぼ均等に到達することになる。よって、第1の層や第2の層が有する吸水ポリマーを効率的に利用できるのである。
【0017】
すなわち、本発明の吸収体が有する、これらの特徴により、本発明の吸収体は、多くの液体を吸収することができる、すなわち、吸収特性に優れたものとなる。
【0018】
ここで、第1の層および第2の層において、吸水ポリマー群は第1の不織布または第2の不織布に、直接的または間接的に固定されているため、吸収体において、第2の不織布の内部に存在する吸収ポリマーの量は極めて少量となる。その結果、第2の不織布の高い液拡散性が担保される。
【0019】
以上のことから、本発明の吸収体は高い吸収特性を備えるため、高い吸収特性を担保するための嵩高いパルプ繊維を含む必要がなく、結果として、薄型の吸収体とすることができる。
【0020】
(第2の不織布)
本発明に用いられる第2の不織布について説明する。
【0021】
上記の通り、第2の不織布は、ポリエステル系樹脂にポリエチレングリコールを3質量%以上40質量%以下共重合した共重合ポリエステル樹脂からなる単成分繊維で構成されたスパンボンド不織布である。ここで、ポリエチレングリコールの共重合量は、ポリエステル系樹脂100質量%に対するものである。
【0022】
不織布を構成するポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸などが挙げられるが、特にポリエチレンテレフタレートであることが好ましい態様である。ポリエチレンテレフタレートを用いることで優れた柔軟性と触感を有し、また高い紡糸速度で延伸することができるため配向結晶化が進みやすく機械強度を併せ持つ繊維とすることができる。
【0023】
また、共重合ポリエステル系樹脂の含有ポリエチレングリコールの数平均分子量は、4000以上25000以下であることが好ましい。ポリエチレングリコールの数平均分子量を4000以上、より好ましくは5000以上とすることで共重合ポリエステル系樹脂に親水性を付与することができる。またポリエチレングリコールの数平均分子量を25000以下、より好ましくは20000以下とすることで、共重合ポリエステル系樹脂としたときに優れた製糸性を有するために欠点の少ないスパンボンド不織布となる。
【0024】
また、ポリエチレングリコールの共重合量を3質量%以上、より好ましくは7質量%以上とすることにより親水性を有し、かつ親水持続性を有する不織布を得ることができる。また、ポリエチレングリコールの共重合量を40質量%以下、より好ましくは20質量%以下とすることにより、実用に耐え得る耐熱性と高い機械強度の繊維とすることができる。
【0025】
不織布の目付量は、20~40g/m2であることが好ましい。不織布の目付量ムラの軽減によって吸水ポリマーを確実に担持することができる。また、不織布への尿等の透水性が低下するのを抑制できるとの理由から、不織布の目付量は35g/m2以下であることがより好ましい。
【0026】
また、不織布の液拡散面積は、20~60cm2であることが好ましい。不織布の液拡散面積を20~60cm2とすることにより、適度な液拡散性と通液性を有する不織布となる。不織布の液拡散性は、前記ポリエステル系樹脂にポリエチレングリコールを共重合した共重合ポリエステル樹脂を用いるだけでなく、不織布を構成する繊維の繊度や不織布の厚さ、密度など調整することが挙げられる。
【0027】
(第1の不織布、および第3の不織布)
本発明に用いられる第1の不織布、および第3の不織布について説明する。
【0028】
不織布を構成する繊維としては、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のオレフィン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維等のポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリルニトリル繊維等のアクリル繊維、綿、麻、レーヨン繊維等のセルロース系繊維を挙げることができる。これらの中でも、親水性繊維であることが好ましく、尿等の液拡散性に優れる細繊度化が容易なレーヨン繊維がより好ましい。また、尿等の液拡散性の観点からレーヨン繊維を各不織布の全体に対し50質量%以上含有することが好ましい。
【0029】
また、不織布の目付量は、何れも、15~50g/m2であることが好ましい。不織布の目付量ムラの軽減によって吸水ポリマーを確実に担持することができる、また、繊維本数が増えることによって不織布への尿等の液拡散性を向上することができるとの理由から、不織布の目付量は、20g/m2以上であることがより好ましい。一方で、不織布への尿等の透水性が低下するのを抑制できるとの理由から、不織布の目付量は45g/m2以下であることがより好ましい。
【0030】
また、不織布の種類として、バインダーレスで不織布化が可能で、針などの異物混入のリスクを抑えることができ、より衛生材料に適しているとの理由から、スパンレース不織布であることが好ましい。
【0031】
また、第1の不織布、および第3の不織布は、第2の不織布と各々同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
【0032】
(第2の不織布の製造方法)
本発明の吸収体に用いる第2の不織布を製造する方法について具体的に説明するが、本発明の吸収体で用いる第2の不織布の製造方法はこれらに限定されるものではない。
【0033】
スパンボンド不織布を製造するためのスパンボンド法は、樹脂を溶融し、紡糸口金から紡糸した後、冷却固化して得られた糸条に対し、エジェクターで牽引し延伸して、移動するネット上に捕集して不織繊維ウェブ化した後、熱接着する工程を要する製造方法である。
【0034】
用いられる紡糸口金やエジェクターの形状としては、丸形や矩形等種々のものを採用することができる。なかでも、圧縮エアの使用量が比較的少なく、糸条同士の融着や擦過が起こりにくいという観点から、矩形口金と矩形エジェクターの組み合わせを用いることが好ましい態様である。
【0035】
本発明において、共重合ポリエステル系樹脂を真空乾燥した後、共重合ポリエステル系樹脂を溶融し紡糸する際の紡糸温度は、240℃以上320℃以下であることが好ましく、より好ましくは250℃以上310℃以下であり、さらに好ましくは260℃以上300℃以下である。紡糸温度を上記範囲内とすることにより、安定した溶融状態とし、優れた紡糸安定性を得ることができる。
【0036】
共重合ポリエステル系樹脂を押出機において溶融し計量して、紡糸口金へと供給し、長繊維として紡出する。
【0037】
紡出された長繊維の糸条は、次に冷却されるが、紡出された糸条を冷却する方法としては、例えば、冷風を強制的に糸条に吹き付ける方法、糸条周りの雰囲気温度で自然冷却する方法、および紡糸口金とエジェクター間の距離を調整する方法等が挙げられ、またはこれらの方法を組み合わせる方法を採用することができる。また、冷却条件は、紡糸口金の単孔あたりの吐出量、紡糸する温度および雰囲気温度等を考慮して適宜調整して採用することができる。
【0038】
次に、冷却固化された糸条は、エジェクターから噴射される圧縮エアによって牽引され、延伸される。
【0039】
紡糸速度は、2000m/分以上であることが好ましく、より好ましくは3000m/分以上であり、さらに好ましくは4000m/分以上である。紡糸速度を2000m/分以上とすることにより、高い生産性を有することになり、また繊維の配向結晶化が進み高い強度の長繊維を得ることができる。
【0040】
続いて、得られた長繊維を、移動するネット上に捕集して不織繊維ウェブ化する。本発明においては、高い紡糸速度で延伸するため、エジェクターから出た繊維は、高速の気流で制御された状態でネットに捕集されることとなり、繊維の絡みが少なく均一性の高い不織布を得ることができる。
【0041】
続いて、得られた不織繊維ウェブを、熱接着により一体化することにより、意図するスパンボンド不織布を得ることができる。
上記の不織繊維ウェブを熱接着により一体化する方法としては、上下一対のロール表面にそれぞれ彫刻(凹凸部)が施された熱エンボスロール、片方のロール表面がフラット(平滑)なロールと他方のロール表面に彫刻(凹凸部)が施されたロールとの組み合わせからなる熱エンボスロール、および上下一対のフラット(平滑)ロールの組み合わせからなる熱カレンダーロールなど各種ロールにより、熱接着する方法が挙げられる。
【0042】
(第1の不織布、および第3の不織布の製造方法)
次に、本発明の吸収体に用いる第1の不織布、および第3の不織布を製造する方法について具体的に説明するが、本発明の吸収体で用いる第1~3の不織布の製造方法はこれらに限定されるものではない。また、第1の不織布、および第3の不織布の製造方法は、各々異なるものであってもよい。
【0043】
本発明の第1の不織布、および第3の不織布を得るために用いる短繊維をカードマシンに投入し、混繊および開繊維を行った後、ウエーバーで均一なウエッブを成形する。続いてウエッブをウォータージェット式の不織布化装置に投入し、高圧水流により交絡させて不織布とする。その後、熱風オーブンで不織布を乾燥させ不織布を得る。
【0044】
また、上記のウエッブは、構成繊維が長手方向に配向したパラレルウエッブ、または、構成繊維が長手方向に配向したパラレルウエッブを含むクリスクロスウエッブであることが好ましい。これらのウエッブから得られる不織布では、構成繊維の長手方向への繊維配向度が高くなる。なお、クリスクロスウエッブは、パラレルウエッブをクロスレイヤー等で短辺方向に配向させたクロスウエッブとパラレルウエッブとを積層してなるものである。
【0045】
(第1および2の吸水ポリマー群)
本発明の吸収体は、第1の吸水ポリマー群および第2の吸水ポリマー群(以下、単に「吸水ポリマー群」と称することがある。)を含む。吸水ポリマー群は吸水ポリマーから構成される。
【0046】
本発明に用いられる吸水ポリマーとしては、例えば、デンプンや架橋カルボキシメチル化セルロース、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又はその共重合体、ポリアクリル酸ナトリウムなどのポリアクリル酸塩やポリアクリル酸塩グラフト重合体等が挙げられる。これらの中でも、生産性の観点から、ポリアクリル酸ナトリウムであることが好ましい。
【0047】
また、吸水ポリマーは、製造工程などにおける取り扱い性の観点から粒子状であることが好ましい。吸水ポリマーが粒子状である場合において、その数平均粒子径は、50~800μmであることが好ましい。吸水ポリマーの数平均粒子径は、円形近似を行うことで得られた直径のことである。より詳細には、実施例の測定方法の項に記載の方法で測定されるものをいう。ここで、吸水ポリマーの数平均粒子径を50μm以上とすることで、吸水ポリマーが第1~3の不織布それぞれ内部へ侵入し、侵入した吸水ポリマーが尿等を吸収・膨潤した際に、不織布の尿等の液拡散性が阻害されるのを抑制することができる。一方で、吸水ポリマーの数平均粒子径を800μm以下とすることで、吸水ポリマーの吸水能力の低下を抑制することができる。
【0048】
第1および第2の吸水ポリマー群の目付量は、50~200g/m2であることが好ましい。吸収体の尿等の吸収量を向上することができるとの理由から、第1および第2の吸水ポリマー群の目付量は、100g/m2以上であることがより好ましい。一方で、衛生材料製品に用いた場合に通気性が低下したり、尿等を吸収した吸水ポリマーが重みで吸収体から漏れ出したりするのを抑制することができるとの理由から、第1および第2の吸水ポリマー群の目付量は、150g/m2以下であることがより好ましい。なお、第1の吸水ポリマー群の目付量および第2の吸水ポリマー群の目付量は共に50~200g/m2であることが好ましいが、第1の吸水ポリマー群の目付量および第2の吸水ポリマー群の目付量のいずれか一方が50~200g/m2であってもよい。上記の観点から、第1の吸水ポリマー群の目付量が50~200g/m2であることが好ましい。
【0049】
また、第1の吸水ポリマー群と第2の吸水ポリマー群との目付量の比率は、20:80から45:55であることが好ましい。吸水ポリマーが密に存在した状態で尿等と接した際に吸水膨張した吸水ポリマー同士が接触して、他の未吸水・未膨張の吸水ポリマーと水系液体の接触を阻害するゲルブロック現象が起こることが知られているが、第1の吸水ポリマー群と第2の吸水ポリマー群との目付量の比率が上記の範囲であることにより、第2の吸水ポリマー群で吸収された尿等が第1の吸水ポリマー群や第2の不織布へ逆戻りすることを抑制し、ゲルブロック現象を抑制することができ、結果的に吸収体全体の吸収特性を向上させることができる。上記の観点より、第1の吸水ポリマー群と第2の吸水ポリマー群との目付量の比率は、30:70から40:60であることがさらに好ましい。
【0050】
また、第1の吸水ポリマー群に含まれる吸水ポリマーのゲル通液速度は、50~350ml/分であることが好ましい。ゲル通液速度とは、荷重下において、生理食塩水によって膨潤ゲル化した吸水ポリマー間を生理食塩水が通過する速度のことである。より詳細には、実施例の測定方法の項に記載の方法で測定されるものをいう。第1の吸水ポリマー群における尿等の液拡散性を向上することができ、第2の不織布側への尿等の液送り出し量が向上することができ、また、おむつなどの衛生材料製品に使用した場合の吸収位置を改善することができるとの理由から、第1の吸水ポリマー群に含まれる吸水ポリマーのゲル通液速度は、100ml/分以上であることがより好ましい。一方で、第1の吸水ポリマーの吸収が不十分なうちに第1の吸水ポリマー群を含む第1の層から尿等の液漏れが発生するのを抑制することができるとの理由から、第1の吸水ポリマー群に含まれる吸水ポリマーのゲル通液速度は、250ml/分以下であることがより好ましい。
【0051】
また、第2の吸水ポリマー群に含まれる吸水ポリマーの飽和吸収量は、25~70g/gであることが好ましい。飽和吸収量とは、JIS K7223(1996)に規定されたティーバック法で測定されたものである。より詳細には、実施例の測定方法の項に記載の方法で測定されるものをいう。吸収体の吸収特性を向上させることができるとの理由から、第2の吸水ポリマー群に含まれる吸水ポリマーの飽和吸収量は、30g/g以上であることがより好ましく、35g/g以上であることがさらに好ましい。一方で、吸収体の形態が保持できなくなって吸水ポリマー自体が吸収体から漏れ出すのを抑制することができるとの理由から、第2の吸水ポリマー群に含まれる吸水ポリマーの飽和吸収量は、60g/g以下であることがより好ましい。
【0052】
また、第2の吸水ポリマー群に含まれる吸水ポリマーは、球状の粒子または球状粒子の凝集物を含み、球状の粒子または球状粒子の凝集物を第2の吸水ポリマー群に含まれる吸水ポリマー全体に対して60質量%以上含有することが好ましい。第3の不織布への尿等の液の送り出しを抑えることができ、第1の吸水ポリマーや第2の吸水ポリマーの吸収が不十分なうちに第3の不織布から尿等の液漏れが発生するのを抑制することができるとの理由から、球状の粒子または球状粒子の凝集物を第2の吸水ポリマー群に含まれる吸水ポリマー全体に対して80質量%以上含有することがより好ましく、95質量%以上含有することがさらに好ましい。
【0053】
(吸収体)
本発明の吸収体は、第1の不織布、第1の吸水ポリマー群、第2の不織布、第2の吸水ポリマー群および第3の不織布を、この順に備える。また、第1の不織布および第1の吸水ポリマー群が、第1の層を形成しており、第3の不織布および前記第2の吸水ポリマー群が、第2の層を形成している。また、第1の吸水ポリマー群は、第1の不織布に直接的または間接的に固定されており、第2の吸水ポリマー群は、第3の不織布に直接的または間接的に固定されている。さらに、第1の層の液拡散面積は、40~90cm2であり、第2の不織布の液拡散面積を第1の層の液拡散面積で除した値は、0.3~0.9である。
【0054】
本発明の吸収体は、第1の不織布、第1の吸水ポリマー群、第2の不織布、第2の吸水ポリマー群および第3の不織布を、この順に備える。このような構成とすることで、本発明の吸収体をおむつなどの衛生材料製品に用いた場合に、着用者から発せられた尿等が迅速に吸収体の内部に浸透し、吸水ポリマーに迅速に吸収され、保水される。よって、着用時の不快感がなく尿等の液漏れの少ない衛生材料製品とすることができる。
【0055】
ここで、本発明の吸収体は、厚さが3.0mm以下であることが好ましい。吸収体の厚さが3.0mm以下であることで、本発明の吸収体をおむつなどの衛生材料製品に用いた場合に、本発明の吸収体を用いた衛生材料製品が柔軟となり、ごわつき感が抑制され、さらに、着用感に優れたものとすることができる。衛生材料製品の着用感をより良くするとの理由から、吸収体は薄いほうが好ましく、吸収体の厚さは2.5mm以下であることがより好ましい。一方で、吸収体の吸収特性をより優れたものとするとの理由から、吸収体の厚さは1mm以上であることが好ましい。なお、ここで言う吸収体の厚さとはJIS L1913(1998) 6.1.2 A法に基づいて測定したものをいう。
【0056】
また、本発明の吸収体は、第1の不織布および第1の吸水ポリマー群が、第1の層を形成しており、第3の不織布および前記第2の吸水ポリマー群が、第2の層を形成している。また、第1の吸水ポリマー群は、第1の不織布に直接的または間接的に固定されており、第2の吸水ポリマー群は、第3の不織布に直接的または間接的に固定されている。以下、「第1の不織布および第1の吸水ポリマー群により形成されてなる第1の層」を単に「第1の層」と称することがある。また、以下、「第3の不織布および第2の吸水ポリマー群により形成されてなる第2の層」を単に「第2の層」と称することがある。ここで、本発明の吸収体を衛生材料製品に使用する場合、第1の層側が肌側の使用面となり、第2の層側が肌側使用面の反対の面となる。
【0057】
ここで、第1の層の液拡散面積は、40~90cm2であることが好ましい。液拡散面積とは、吸収体の第1の不織布から第3の不織布の垂直方向において第1不織布側の面から他方の面に生理食塩水5mlを通水させた後、第1の不織布から第3の不織布の垂直方向において第1不織布側の面上における生理食塩水の拡散面積のことである。より詳細には、実施例の測定方法の項に記載の方法で測定されるものをいう。吸収体において第1の層と接する第2の不織布の尿等の液拡散性をより向上することができ、また、第1の層を形成する第1の吸水ポリマーの尿等を吸収する効率をより向上することができ、また、第1の層を形成する第1の不織布自体の尿等の吸収量をより向上することができ、結果的に吸収体全体の吸収特性をより優れたものにできるとの理由から、第1の層の液拡散面積は、45cm2以上であることがより好ましく、50cm2以上であることがさらに好ましい。一方で、第2の不織布への透水量が低下するのを抑制でき、また、第1の層から尿等の液漏れが発生するのをより抑制することができるとの理由から、第1の層の液拡散面積は、85cm2以下であることがより好ましく、80cm2以下であることがさらに好ましい。また、第1の層の液拡散面積を上記の範囲とする手段としては、第1の不織布を構成する繊維の種類、第1の不織布の目付量、第1の不織布の種類、第1の不織布化における交絡条件、第1のウエッブの製法、第1の吸水ポリマーの種類、第1の吸水ポリマーの粒子径、第1の吸水ポリマー群の目付量、第1の吸水ポリマーのゲル通液速度、接着剤の種類、接着剤の使用量を調整すること等が挙げられる。
【0058】
次に、第2の不織布の液拡散面積を第1の層の液拡散面積で除した値は、0.3~0.9である。第2の不織布の液拡散面積を第1の層の液拡散面積で除した値を、0.3~0.9とすることで、第2の不織布の内部を通って拡散した尿等の液が第1の層や第2の層へ浸入し、第1の層の第1の吸水ポリマーや第2の層の第2の吸水ポリマーの尿等を吸収する効率を向上させることができることや、第2の層の第2の吸水ポリマーでの吸収が不十分なうちに第1の層から尿等の液漏れが発生するのを抑制することができることや、第1の層の第1の吸水ポリマーでの吸収が不十分なうちに第2の層から尿等の液漏れが発生するのを抑制することができること、などを調整することが可能となり、吸収体の吸収特性を優れたものとすることが可能となる。上記の効果を得ることができるとの観点から、第2の不織布の液拡散面積を第1の層の液拡散面積で除した値は、0.8以下であることが好ましい。また、第2の不織布の液拡散面積を第2の層の液拡散面積で除した値は、1.0以上であることが好ましく、1.5以下であることが好ましい。また、第2の不織布の液拡散面積を第1の層の液拡散面積で除した値、および、第2の不織布の液拡散面積を第2の層の液拡散面積で除した値を上記の範囲とする手段としては、不織布を構成する繊維の種類、不織布の目付量、不織布の種類、不織布化における交絡条件、ウエッブの製法、吸水ポリマーの種類、吸水ポリマーの粒子径、吸水ポリマー群の目付量、第1の吸水ポリマーのゲル通液速度、第2の吸水ポリマーの飽和吸収量、第2の吸水ポリマーの形状、接着剤の種類、接着剤の使用量を調整すること等が挙げられる。
【0059】
また、第1の層および第2の層を形成するために必要とする吸水ポリマー群を不織布に固定する材料としては、ホットメルト接着剤や熱融着性の樹脂パウダーが挙げられる。ホットメルト接着剤としては、衛生材料製品用途に適したスチレン系ホットメルトやオレフィン系ホットメルト接着剤を好適なものとして用いることができる。また、熱融着性の樹脂パウダーとしては、比較的、低温で熱融着を可能とすることができるとの観点から、ポリエチレンパウダーやエチレン-酢酸ビニル共重合体パウダーを好適に用いることができる。吸水ポリマー群を不織布に固定する材料としては、低目付量で固定することができるとの理由から、ホットメルト接着剤がより好ましい。
【0060】
第1の層および第2の層の各層におけるホットメルト接着剤の散布量は、0.5~3.0g/m2であることが好ましい。不織布上に吸水ポリマーを固定することができるとの理由から、ホットメルト接着剤の散布量は1.0g/m2以上であることがより好ましい。一方で、ホットメルトによる吸水ポリマーの膨張阻害を抑制することができるとの理由から、ホットメルト接着剤の散布量は、2.5g/m2以下であることがより好ましい。
【0061】
本発明の吸収体は、公知のおむつなどの衛生材料製品に用いられている吸収体と同様に、略長方形のシート状であることが好ましい。
【0062】
本発明の吸収体の吸収特性は、吸収量が60g以上であることが好ましい。本発明における吸収量とは、45°の傾斜状態で生理食塩水を滴下し、試料の下端側面から生理食塩水が漏れ出すまでに吸収体が吸収した生理食塩水の重量のことである。より詳細には、実施例の測定方法の項に記載の方法で測定されるものをいう。上記の吸収体を衛生材料製品に用いることで、液漏れ防止性に優れたものとなり、着用状態で寝位を取った際など衛生材料製品が傾斜状態になるときの漏れを抑制することができる。上記の観点から、吸収体の吸収量は、75g以上であることがより好ましい。このような吸収体を得る手段としては、例えば、実施例1等で記載の材料を用い、実施例1で記載の製造方法を採用することを挙げることができる。なお、第1の層の液拡散面積、第2の不織布の液拡散面積、第2の層の液拡散面積、第2の不織布における親水性繊維の含有量からなる群より選ばれる一種以上を適宜調整することで吸収体の吸収量を上記の範囲とすることができる。
【0063】
(吸収体の製造方法)
本発明の吸収体を製造する方法について具体的に説明するが、本発明の吸収体の製造方法は下記のものに限定されるものではない。
【0064】
第1の不織布と第2の不織布、および第2の不織布と第3の不織布との間に吸水ポリマー群を固定して吸収体を得る。吸水ポリマー群を固定する方法としては、(1)第3の不織布の一方の面にホットメルト接着剤をスプレー状やスパイラル状に均一に散布する。次に、その上に第2の吸水ポリマーを均一に散布する。次に、その上に第2の不織布の一方の面を圧着する。次に、上記第2の不織布の他方の面(第2の吸水ポリマーを散布していない面)に、第1の吸水ポリマーを均一に散布する。また、第1の不織布の一方の面にホットメルト接着剤をスプレー状やスパイラル状に散布する。そして、上記第2の不織布の他方の面(第1の吸水ポリマーを散布した面)と、上記第1の不織布の一方の面(ホットメルト接着剤を散布した面)とを圧着する方法や、(2)熱融着性の樹脂パウダーと第1の吸水ポリマーを予め均一混合したものを第1の不織布の一方の面に散布した後に、第2の不織布を第1の吸水ポリマー群の上から被せて熱融着性パウダーの融点以上の温度に加熱して熱圧着させ、さらに第2の不織布の他方の面に熱融着性の樹脂パウダーと第2の吸水ポリマーを予め均一混合したものを散布した後に、第3の不織布を第2の吸水ポリマー群の上から被せて熱融着性パウダーの融点以上の温度に加熱して熱圧着させる方法が挙げられる。
【0065】
(衛生材料製品の製造方法)
本発明の吸収体を使用した、紙おむつやナプキン等の衛生材料製品の製造方法について説明する。長方形状に断裁された本発明の吸収体を、この吸収体と同じく長方形状であり、かつ、この吸収体よりも面積の大きい表面シートおよび裏面シートの間に吸収体を挟持して固定する。なお、表面シート側が肌側の使用面となり、裏面シートが肌側の使用面とは逆側の面となる。ここで、吸収体の第1の不織布が表面シートと接するように吸収体を表面シートと裏面シートとで挟持することが好ましい。第1の不織布は、第1の不織布の一方の面から他方の面に水系液体は透過し易くする特徴を有するため、表面シートが第1の不織布と接することにより、表面シート内部に浸透した水系液体は第1の不織布を迅速に透過し、吸水ポリマーに吸水され、保水されやすくなる。よって、吸収体の吸収特性を向上することができるものとなる。表面シートと吸収体、裏面シートと吸収体、および表面シートと裏面シートが、直接接する部分を固定する方法は、ホットメルト接着剤を用いる方法や熱融着性の樹脂パウダーを用いる方法を挙げることができる。また、本発明の吸収体を衛生材料製品とする際に用いる表面シートとしては、通液性や触感がより優れたものとなるとの観点から、不織布を採用することが好ましく、例えば、湿式不織布やレジンボンド式乾式不織布、サーマルボンド式乾式不織布、スパンボンド式乾式不織布、ニードルパンチ式乾式不織布、ウォータージェットパンチ式乾式不織紙布またはフラッシュ紡糸式乾式不織布等のほか、目付量や厚さが均一にできる抄紙法により製造された不織布も好ましく使用できる。中でも、人肌に触れる場所に位置するという観点から、触感に優れるサーマルボンド式乾式不織布を表面シートとして用いることが好ましい。また、本発明の吸収体を衛生材料製品とする際に用いる裏面シートとしては、衛生材料製品内部に蓄積した水蒸気を外部に逃がして着用者に快適性を与えることができるとの観点と、防水性や触感を優れたものとすることができるとの観点とから、透湿防水性フィルムと不織布との積層シートであることが好ましい。上記の透湿防水性フィルムとしては多孔質ポリエチレンフィルム、透湿性ウレタンフィルムや透湿性ポリエステルエラストマーフィルム等が挙げられる。また上記の不織布としては表面シートと同様の不織布を用いることができるが、コストと強度の観点からスパンボンド式乾式不織布が好ましい。
【0066】
なお、本発明の吸収体は、紙おむつやナプキン等の衛生材料製品に好適に用いられる。
【実施例0067】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、実施例中の性能は次の方法で測定した。
【0068】
[測定および評価方法]
(1)不織布を構成する繊維の含有量
JIS L 1030-1(2012)「繊維製品の混用率試験方法-第1部:繊維識別」、およびJIS L 1030-2(2012)「繊維製品の混用率試験方法-第2部:繊維混用率」に基づいて、正量混用率(標準状態における各繊維の質量比)を測定し、これを、不織布を構成する繊維の含有量(質量%)とした。
【0069】
(2)共重合ポリエステル樹脂中の含有ポリエチレングリコールの数平均分子量および共重合量
不織布の試料から0.05gを採取し、これに28%アンモニア水1mLを加え、120℃で5時間加熱し試料を溶解させ、常温に放冷後、精製水1mL、6mol/L塩酸1.5mLを加え、精製水で5mL定容させ、遠心分離器にかけ、メッシュ孔径0.45μmのフィルターにて濾過する。次に、濾過液をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)にて分子量分布測定を行い、既知の分子量の標準試料を用いて作成した分子量の検量線を用いて、ポリエチレングリコールの数平均分子量を算出した。また、ポリエチレングリコール水溶液にて作成した溶液濃度の検量線を用いてポリエチレングリコールを定量し、共重合ポリマー中のポリエチレングリコールの共重合量を算出した。
【0070】
ポリエチレングリコールの数平均分子量の測定、共重合量の測定において、GPCの測定装置、測定条件は以下のとおりとした。
・装置:ゲル浸透クロマトグラフGPC
・検出器:示差屈折率検出器RI(東ソー製「RI-8020」,感度128x)
・フォトダイオードアレイ検出器(島津製作所製「SPD-M20A」)
・カラム:TSKgelG3000PWXL(1本)(東ソー)
・溶媒:0.1M塩化ナトリウム水溶液
・流速:0.8mL/min
・カラム温度:40℃
・注入量:0.05mL
・標準試料:ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド。
【0071】
(3)不織布の目付量
JIS L1913(2010) 6.2に基づき、試料の単位面積(1m2)当たりの質量(g/m2)を求めた。
【0072】
(4)吸収体の厚み
JIS L1913(1998) 6.1.2 A法に基づいて測定した。具体的には不織布の試料から50mm×50mmの試験片を5枚採取し、厚さ測定器(TECLOCK社製定圧厚さ測定器、型式PG11J)を用いて標準状態で試験片に0.36kPaの圧力を10秒間かけて厚さを測定した。測定は各試験片(5枚)について行い、平均値を算出した。具体的には不織布の試料から50mm×50mmの試験片を5枚採取し、厚さ測定器(TECLOCK社製定圧厚さ測定器、型式PG11J)を用いて標準状態で試験片に0.36kPaの圧力を10秒間かけて厚さを測定した。測定は各試験片(5枚)について行い、平均値を算出した。
【0073】
(5)吸水ポリマー群の目付量
標準状態で24時間以上静置した吸収体の試料(10cm×10cm)10点について、各試料の吸水ポリマー群から吸水ポリマーを採取した。次に、それぞれの標準状態における質量(g)を量り、1m2当たりの質量(g/m2)を求め、10点の平均値を算出し、本発明における吸水ポリマー群の目付量(g/m2)とした。
【0074】
(6)吸水ポリマーの飽和吸収量
JIS K7223(1996)に規定されたティーバック法に準じて飽和吸収量を測定した。測定は各試料を入れたティーバック(5枚)について行い、平均値を算出し、吸水ポリマーの飽和吸収量(g/g)とした。なお、使用する生理食塩水及び測定雰囲気の温度は25±2℃であった。
【0075】
(7)吸水ポリマーのゲル通液速度
試料0.05gを150ml生理食塩水(0.90質量%塩化ナトリウム水溶液)に30分間浸漬して含水ゲル粒子を調製した。次に、垂直に立てた円筒(内径:25.4mm、長さ56cm、底部から40mlの位置及び60mlの位置に目盛り線有り)の底部に、金網(目開き106μm)と、開閉自在のコックを閉鎖した状態で、調製した含水ゲル粒子を生理食塩水とともに移した後、この含水ゲル粒子の上に円形金網(目開き150μm)が金属面に対して垂直に結合する加圧軸(重さ58.5g、長さ70cm)を金網と含水ゲル粒子とが接触するように載せた。次に、加圧軸に錘(50.5g)を載せ、1分間静置する。続けて、上記コックを開き、濾過円筒管内の液面が60ml目盛り線から40ml目盛り線になるのに要する時間(T:秒)を計測し、以下の式により、本発明におけるゲル通液速度(ml/分)を算出した。なお、使用する生理食塩水及び測定雰囲気の温度は25±2℃であった。
ゲル通液速度(ml/分)=20ml×60/T秒
(8)吸水ポリマーの粒子径
受け皿およびJIS Z8801に準拠した公称目開き106μm、212μm、300μm、425μm、500μm、1mm(1000μm)、及び1.4mmのふるいを、下からこの順に重ねて、1.7mmのふるいに吸水ポリマー5.00gを置き、自動振とう機(アズワン製水平旋回ふるい SKH-01)を用いてメモリ設定値3で10分間振とうし、各ふるいおよび受け皿上での吸水ポリマーの有無と質量を確認した。ただし、各ふるいもしくは受け皿上において、存在が確認できる吸水ポリマーが仕込み量5.00gの5%未満である場合には、当該ふるいもしくは受け皿上には吸水ポリマーが無いものとみなす。
【0076】
得られた結果から、吸水ポリマーの粒子径の上限値に関しては、吸水ポリマーの存在が仕込み量5.00gの5%以上の量で確認されるふるいのうち目開きが一番大きいものについて、そのふるいよりも1段目開きが大きいふるいの目開きを吸水ポリマーの粒子径の上限値とした。例えば、吸水ポリマーをふるいにかけた結果、吸水ポリマーの存在が仕込み量5.00gの5%以上の量で確認されるふるいのうち目開きが一番大きいものが425μmの目開きのものである場合は、そのふるいより1段目開きが大きい500μmを吸水ポリマーの粒子径の上限値とし、吸水ポリマーの粒子径は500μm以下となる。
【0077】
また下限値に関しては、吸水ポリマーの存在が仕込み量5.00gの5%以上の量で確認されるふるいのうち目開きが一番小さいものについて、そのふるいの目開きを吸水ポリマーの粒子径の下限値とした。ただし、範囲の表現において当該数値は含まない。例えば「212μmを超え300μm以下である」は表中では「212-300(μm)」と表す。なお、吸水ポリマーが目開き106μmの振るいを通過し、受け皿にも仕込み量5.00gの5%以上の量で確認された場合には、受け皿を目開き0μmのふるいと見なした。例えば、吸水ポリマーをふるいにかけた結果、吸水ポリマーの存在が仕込み量5.00gの5%以上の量で確認されるふるいのうち目開きが一番小さいものが106μmの目開きのものである場合は、106μmを吸水ポリマーの粒子径の下限値とし、吸水ポリマーの粒子径は106μmを超えるということになる。また、吸水ポリマーの存在が受け皿にも仕込み量5.00gの5%以上の量で確認された場合は、測定結果としての下限値の記載は「吸水ポリマーの粒子径は0μmを超える」ということになる。
【0078】
(9)液拡散面積
通液度試験機(Lenzing Instruments社製、型式:LISTER AC)を用いて、試料5点について、それぞれ液拡散性を測定した。より詳細には、試験機の試料セット位置に、下から濾紙(日本製紙クレシア製、キムタオル4つ折り)、金網(目開き1.5mm)、試料(10cm×10cm)の順に置いた。なお、金網に接する試料の面は、本発明における吸収体の第1の層においては第1の不織布側の面であり、第2の不織布においては吸収体としたときに第2の吸水ポリマーが配置される側の面であり、第2の層においては第3の不織布側の面である。次に、生理食塩水5ml(0.90質量%塩化ナトリウム水溶液を青色染料で着色したもの)を試験機上部の液投入口へ投入した後、試験を開始した。その後、生理食塩水5mlが試料表面に滴下され、試験機の通液検知プレートおよび通液検知電極によって通液終了が検知された。続けて、通液終了から5秒以内に、試料の生理食塩水によって青色となった部分と定規の目盛りが同じ写真内に納まるように写真を撮影した。写真内の定規の目盛りから相対比較で、上記青色となった部分の面積(cm2)を算出した。そして、試料5点の面積の平均値を算出し、本発明における液拡散面積(cm2)とした。なお、使用する生理食塩水及び測定雰囲気の温度は25±2℃であった。
【0079】
(10)吸収体の厚さ
JIS L1913(1998) 6.1.2 A法に基づき、厚さ測定器(TECLOCK社製定圧厚さ測定器、型式:PG11J)を用いて試料の厚さを測定した。測定は各試験片(5枚)について行い、平均値を算出し、吸収体の厚さ(mm)とした。
【0080】
(10)吸収体の吸収量
45°の傾斜角度を有したステンレス製の傾斜台上に、裏面シート、吸収体(試料)の順に固定した。なお、試料は長手方向が傾斜方向と一致するように、また、第3の不織布側の面が裏面シートに接するように、また、皺をなくすため伸ばした状態で固定した。ここで、裏面シートには、多孔質ポリエチレンフィルムを用いた。次に、試料の上端1cm下方の位置で、あらかじめビーカーに準備した生理食塩水(0.90質量%塩化ナトリウム水溶液を青色染料で着色したもの)を、マイクロチューブポンプから、1.5g/秒の速度で滴下し、試料の下側端面から生理食塩水の漏出が観測されるまで、生理食塩水の滴下を継続した。より詳細には、ビーカーに500gの生理食塩水を準備し、上記傾斜状態で生理食塩水を滴下し、試料の下側端面から生理食塩水の漏出が観測された時点で滴下を終了した。滴下されずにビーカーに残った生理食塩水の重量(g)を測定し、以下の式により吸収体の吸収量を算出した。なお、使用する生理食塩水及び測定雰囲気の温度は25±2℃であった。
吸収体の吸収量(g)=500g-Q
Q(g):滴下されずにビーカーに残った生理食塩水の量
なお、吸収量は高い値を示すほど、液漏れ防止性に優れている。
【0081】
[実施例]
(第1の不織布)
レーヨンからなる短繊維(繊維径:13μm、繊維長:51mm)からなる短繊維を、カードで開繊した後、ウエーバーで目付量20g/m2のパラレルウエッブとした。また上記のレーヨンからなる短繊維70質量%と、ポリエチレンテレフタレートからなる中空短繊維(繊維径:30μm、繊維長:51mm、以降「短繊維A」と称することがある)30質量%をカードで混繊し、開繊した後、ウエーバーで目付量20g/m2のクロスウエッブとした。得られたパラレルウエッブとクロスウエッブを重ねて(クリスクロスウエッブ)、クロスウエッブ側から高圧水流をあてて絡合させ、150℃で3分間乾燥することにより目付量40g/m2のスパンレース不織布となる第1の不織布aを得た。なお、第1の不織布aに含まれる短繊維Aの割合は、第1の不織布aの全体に対し15質量%であった。また、第1の不織布aに含まれるレーヨンからなる短繊維の割合は、第1の不織布aの全体に対し85質量%であった。
【0082】
(第2の不織布)
固有粘度が0.62dL/gであり、数平均分子量20000のポリエチレングリコール(以下、PEGと略す)を8質量%共重合したポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す)を単軸押出機にて溶融し、紡糸温度が290℃で、口金孔径が0.30mmの矩形丸孔口金から、単孔吐出量1.1g/minで紡出した。このときの剪断速度は5861sec-1であった。紡出した糸条を、冷風にて冷却固化した後、矩形エジェクターにおいて糸状の牽引速度が5320m/min、紡糸ドラフトが403となるように空気牽引した繊維ウェブを、口金中心部の鉛直方向におけるネットコンベア上での吸引風速を10.7m/secとして捕集した。得られた繊維ウェブを、上ロールに金属製で水玉柄の彫刻がなされた接着面積率16%のエンボスロールを用い、下ロールに金属製フラットロールで構成される上下一対の熱エンボスロールを用いて、線圧が50N/cmで、熱接着温度が230℃の温度で熱接着し、目付が30g/m2のスパンボンド不織布を得た。
【0083】
(第3の不織布)
レーヨンからなる短繊維(繊維径:13μm、繊維長:51mm)からなる短繊維を、カードで開繊した後、ウエーバーで目付量15g/m2のパラレルウエッブと目付量15g/m2のクロスウエッブとした。得られたパラレルウエッブとクロスウエッブを重ねて、高圧水流をあてて絡合させ、150℃で3分間乾燥することにより目付量30g/m2のスパンレース不織布となる第2の不織布aを得た。
【0084】
(吸収体)
第1の不織布のパラレルウエッブ側を第1の面として、第1の面にスチレン系ホットメルトを2g/m2となるようにスプレー状に塗布し、その上に第1の吸水ポリマー(SDPグローバル製IM930)を目付量125g/m2となるように均一に散布した。次に、その上に第2の不織布の一方の面を被せて圧着した。次に、第3の不織布の一方の面にスチレン系ホットメルトを2g/m2となるようにスプレー状に散布し、その上に第2の吸水ポリマー(SDPグローバル製IM930)を目付量125g/m2となるように均一に散布した。次に、第2の不織布の他方の面(第2の吸水ポリマー散布面とは反対の面)が第3の不織布上に散布した第2吸水ポリマーと接するように被せて圧着した。ここで、第1の吸水ポリマー群は、第1の不織布に直接的または間接的に固定されている。また、第2の吸水ポリマー群は、第3の不織布に直接的または間接的に固定されている。得られたものを長辺20cm×短辺10cmの長方形状にカットすることで長方形状の吸収体を得た。
【0085】
この吸収体の構成および性能を表1に示す。この吸収体の厚さは2.1mmであり、吸収量は71gであり、薄型で吸収特性に優れるものであった。
【0086】
[実施例2]
第2の不織布の目付量を20g/m2に変更した以外は、実施例1と同様にして吸収体を得た。この吸収体の構成および性能を表1に示す。この吸収体の厚さは2.0mmであり、吸収量は74gであり、薄型で吸収特性に優れるものであった。
【0087】
[実施例3]
第2の不織布の目付量を40g/m2に変更した以外は、実施例1と同様にして吸収体を得た。この吸収体の構成および性能を表1に示す。この吸収体の厚さは2.2mmであり、吸収量は73gであり、薄型で吸収特性に優れるものであった。
【0088】
[実施例4]
第2の不織布のPEGの共重合量を4質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして吸収体を得た。この吸収体の構成および性能を表1に示す。この吸収体の厚さは2.1mmであり、吸収量は71gであり、薄型で吸収特性に優れるものであった。
【0089】
[実施例5]
第2の不織布のPEGの共重合量を14質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして吸収体を得た。この吸収体の構成および性能を表1に示す。この吸収体の厚さは2.1mmであり、吸収量は73gであり、薄型で吸収特性に優れるものであった。
【0090】
[比較例1]
第2の不織布の目付量を10g/m2に変更した以外は、実施例1と同様にして吸収体を得た。この吸収体の構成および性能を表2に示す。この吸収体の厚さは1.9mmであり、吸収量は59gであり、吸収特性に劣るものであった。
【0091】
[比較例2]
第2の不織布の目付量を50g/m2に変更した以外は、実施例1と同様にして吸収体を得た。この吸収体の構成および性能を表2に示す。この吸収体の厚さは2.2mmであり、吸収量は57gであり、吸収特性に劣るものであった。
【0092】
[比較例3]
第2の不織布のPEGの共重合量を1質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして吸収体を得た。この吸収体の構成および性能を表2に示す。この吸収体の厚さは2.1mmであり、吸収量は56gであり、吸収特性に劣るものであった。
【0093】
[比較例4]
第2の不織布のPEGの共重合量を42質量%に変更し、紡糸の結果、長繊維の機械強度低下による糸切れ、不織布破断が生じ、安定した不織布の作製が出来なかった。
【0094】
[比較例5]
第2の不織布を疎水性スパンボンド不織布(東レ製M2028、目付量28g/m2)に変更した以外は、実施例1と同様にして吸収体を得た。この吸収体の構成および性能を表2に示す。この吸収体の厚さは2.1mmであり、吸収量は24gであり、吸収特性に劣るものであった。
【0095】
[比較例6]
第2の不織布を親水剤を塗布したスパンボンド不織布(ポリプロピレン製、目付量20g/m2)に変更した以外は、実施例1と同様にして吸収体を得た。この吸収体の構成および性能を表2に示す。この吸収体の厚さは2.0mmであり、吸収量は57gであり、吸収特性に劣るものであった。
【0096】
【0097】
本発明の吸収体は、吸収特性に優れる吸収体であり、テープタイプ紙おむつ、パンツタイプ紙おむつ、生理用ナプキン、尿取りパッド等の種々の衛生材料製品として好適に用いることができる。